**************** 伊吹が訝しそうに眉を寄せて、ふいに気付いた。『相手は納得しなかった。状況が悪化して、私のせいだと言われた。私は手を引いて……』 ひょっとして、あの話の。 尋ねてみる
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 「…他の事件は始末が付きますが、孝さんの一件は詰められないかもしれません」 やっぱり、その辺りも心配していたのか。 そもそも伊吹に事件の解明を望んだのは京介だ。孝の
**************** 「伊吹さん……面倒な男に関わってるなあ」 ぼやきながら、まあ僕もだけどね、と肩を竦めて受話器を置いた瞬間、もう一度電話が鳴って取り上げる。「はい、真崎です」『夜分失
**************** 京介が帰宅したのを待っていたように電話が鳴った。 携帯ではない、家の電話だ。「はい、真崎ですが」『…夜分に失礼致します』 抑えて低い、あたりを憚るような声が届いた
**************** 「…どうした?」「…いえ」 源内の手の場所を眺める。京介の腰に添えられている手はしっかり当てられているが、それだけだ。「……ああ…」「ん?」「いえ……わかりました。体の動
**************** 「で、その顔は何だ」 と聞くほうが野暮か。 金曜日に源内の道場へ出向いての第一声に、京介は薄赤くなったのを自覚する。「ああ、そのえーと」「何だまたキスマーク付けら
**************** 「み…なみ…っ」 低い叫びが耳に響いて、美並は思わずほっとした。 たぶん、失わずに済む、きっとこの先も。 美並が踏み込めなければ、今みたいに真崎が踏み込んできてくれ
**************** 悲痛な声に力が抜けた。 本当はもっと、嫌がられるまでやった方がいいんだろうけど。 もうここまでが美並ができる限界。 でも、ようやく終わった。 これでもう、この先
**************** ハルが桜木通販にやって来て、襲撃と言っていいほどの猛々しさで踏み込んだ。事件のあらましを知り、美並達が何をしようとしているのかを確認し、そうして提案した一つの物
**************** 伊吹が実は密かにかなり怒っていた、とようやく気づいた。 怪我をしてないからと言ったけれど信じてくれない。 (中略)「美並?」「…ごめんなさい」「…あ…うん…」「ごめ
**************** 決心がついた。 ハルは断言した。「源内?」「わかった、止めん。と言うか、止めても無駄だろ、これまで通り」 もう何度目かになる溜め息を重ね、コーヒーを飲み、腕時計
**************** 第2会議室でこれまでの状況を聞いた源内は混乱し、ハルは何事か考え込んでいる様子だった。もう少し疑問を確認し、話を詰めていかなくてはならないだろう、それほど時間が残
**************** ほとんど口をつけずに、冷めきってしまったコーヒーを、伊吹が再度淹れ直しに行ってくれる。「美並」 唐突にハルが口を開いた。「お茶で」「…ええ」 伊吹の気遣わしげな視
**************** 京介の前で、高崎と志賀が二人でホール・イベントの問題点やら検討やらを始め、他の仕事もあるんだけど、と言ってはみたが、冷ややかな視線で高崎に睨まれスルーされて数十
**************** 「…課長」 緊張した顔で高崎が動き、京介が部屋を出て行くのか、志賀に迫るのか、何れを選んでも道を塞ごうとする。「こいつは」「高崎くん」「はいっ」 険しい顔で睨み返し
**************** 静かなノックの音が響いて京介は顔を上げる。「どうぞ」 昨日から比べれば格段に捌かなければならない案件は減ってきた。ネット社会の移ろいやすさと言うか、京介の境遇も
**************** 珍しいハルの笑顔に激しいシャッター音が鳴り響く。源内が少し驚いた顔になっている。 美並も思わずハルを眺めた。 もうここには『赤い空』の絵を破かれて怒っていた子ど
**************** 明日。 こう言うことか。「美並」 にっこり笑って桜木通販に入ってきたハルに美並は呆気にとられる。 しかも一人じゃない。背後に源内と報道陣らしいものを従えての、堂
**************** 実家から戻りながら、美並は流れる電車の風景を見つめていた。 いつもこんな風に世界を見ていた気がする。 流れ去るもの、止められないもの、自分には関係がないものとし
**************** ナイフを片付け、阿倍野を送り出して行った富崎が戻ってきた。 手にコーヒーを持っている。「はい」「ありがとう、ございます」 受け取ろうとして、京介は自分が微かに震
**************** 京介は、源内と金曜日の合気道の日に少し時間をもらう約束をした。 もし、源内の師匠が確かに『羽折』の祖父ならば、ひょっとすると指紋が残るようなものを保管していない
**************** 夕方になって京介に繋がれたのは源内からの電話だった。『えーっと、どう言えばいいのかと思うところなんだが』「…ご心配をおかけします」 『ニット・キャンパス』を諦める
**************** これは見込み違いで、断られる方だったか。 視線をPC画面に走らせ、鳴海工業の品物が来なかった場合の動きを考え始めた矢先、『あっ、おいっ』 突然電話の向こうががたが
**************** 報道が始まった。「はい、桜木通販でございます。…いえ、その件に関しましては」「はい、桜木……申し訳ありません、現在その件は」 さすがに当日は仕事にならなかった。置
**************** 報道が始まった。「はぁあ…」 美並が実家に戻った時に居合わせた明は、案じる両親に変わって美並を質問責めにした挙句、深々と溜め息をついて胡座を組んだ。「すごいことに
**************** 昼間の『羽鳥』とのやりとりを伝えると、案の定真崎はうろたえた。 そういう真崎も美並の知らないところで、大石といつの間にか距離を縮め、まるで共同戦線を張ったような
**************** 「え、えっ」 夜マンションに戻ってから伊吹に連絡し、昼間ずっとろくに会えなかった寂しさを訴えようとした京介は、ごめんなさい、京介、と謝られ、続いて聞かされた内容に
**************** 赤来がにこやかに立っていた。 如何にも大変な時に頑張っている部下を労うような振る舞いで。 柔らかい声に、整った立ち姿に、今度ははっきりと読み取ることができた。
**************** 真崎と駆け込むように出勤して、同時出勤にならないように僅かに美並が遅れて着き、石塚には遅刻寸前を詫びた。「良いのよ」 石塚は内側を話した気安さと言うのか、軽く頷
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**************** 伊吹が訝しそうに眉を寄せて、ふいに気付いた。『相手は納得しなかった。状況が悪化して、私のせいだと言われた。私は手を引いて……』 ひょっとして、あの話の。 尋ねてみる
**************** 「ふぅん……そうなんだ?」 伊吹が首を傾げて何か言った。「今でも好きなんだ」 自分の声もうまく聞こえない。「今でも伊吹さんは大石のことが好きなんだ」 悲しくて辛くて、
**************** どこまで頑張っても無駄なんだ。 京介はぼんやりと思った。 気持ちを話して、過去を打ち明けて、自分を晒してみたけれど、結局こうやって拒まれるんだ。 きっと大輔と同じよ
**************** 「あの、今なんて?」 まさか、でも、本当に? まさか、でも、ならどうして一体? すぐにそれにすがって喜ぼうとしている気持ちと、だって大石圭吾を知っているじゃないか
**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ