エターナル・アイズ

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「知りたくもない話を色々と聞かされた」 不愉快そうな声音だった。「元々赤来と付き合っていたこと、パスケースの写真を見つけて、見覚えがあるような気がするから、また探

2019/04/30 13:46

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「顧客離れがどこまで防げるかですね。事件に関する広報は」 会議を思い返した真崎に、「任せて」 元子が微笑む。指のダイヤは元より、資産でどうにかなりそうなものは早々

2019/04/29 07:17

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 朝の会議にはかろうじて間に合った。「珍しいわね、あなたが遅刻ぎりぎりだなんて」 それこそ珍しく黒のパンツスーツの元子に突っ込まれて、京介は僅かに顔が熱くなる。

2019/04/28 09:13

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 声が蘇る。 美並が大事だなー。 …あきくん。 ずっと一人でいく気か？。いい人はいないの？ …お父さん、お母さん。 知らないはずも、なかったか。 気づかぬはずも、な

2019/04/27 09:13

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…っ」 切なげな悲鳴を耳に蘇らせて顔が熱くなる。 ああもう、どうしよう、あんな声を聞かされたら、忘れるわけにはいかなくなる。 瞬時に乾いた喉に、ベッドを抜け出した

2019/04/26 08:55

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 冷たい。 美並は目を覚まして瞬きする。 あれ？「…」 周囲は薄明るい。明け方だと言うのは、空気が冷えてきているのでわかる。暖房をつけていても、今の二人は裸で毛布

2019/04/25 11:46

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(8)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…」 気が付いたのは真夜中だった。「……美並？」 いなくなってしまったかと呼んでみれば、静かな寝息が届いた。起こした自分の体は丁寧に拭かれていて、伊吹はベッドの端に

2019/04/24 06:49

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 戻って来てくれた伊吹は、夕飯の買い物をしていてくれて嬉しくて。準備するところから、食事中も、終わってからも、ただ伊吹がそこに居ることを確かめたくて味わいたくて、

2019/04/23 08:54

1800000ヒットありがとうございました！

​たくさんのご訪問、ありがとうございます。 おかげさまで1800000ヒットを重ねました。 今は『闇を闇から』を連載しておりますが、第5章が終わったら『ラズーン』か『これはハッピーエンドにしかならないラブスト

2019/04/22 16:56

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ カレーを煮込みながら、おじやじゃなくて玉子丼でもいけると言われたので、美並は準備を進めて行く。 以前は部屋になかった炊飯器が湯気を上げ、増えた二人分の色々な形の

2019/04/22 16:48

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 夕飯の買い物を済ませ、真崎のマンションに戻った。「おかえり」「…ただいま」 出迎えてくれた真崎はずいぶん早くから起きていたのだろう、玄関を入った美並を抱き寄せ、鼻

2019/04/21 08:51

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 宇野みさとは『さわやかルーム』に通っていた。 一人暮らし、73歳。まだまだこれからよねと笑う顔は、子ども二人を事故で亡くし、夫を数年前に見送ったとは思えないほど穏

2019/04/20 07:09

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「覚えておられますか、あのコンビニ」「あの…って、あのコンビニですか」 驚きに尋ね返す。「そうです、あなたを捕まえかけて、『羽鳥』を逃がしたあのコンビニ」 有沢が楽

2019/04/19 08:51

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…伊吹さん」 病院の一室に、有沢は薄緑の寝間着のようなものを着て横たわっていた。窓が開け放されていて、晴れ上がった空を眺めていたらしい。気配に振り向いた顔が微かに

2019/04/18 06:56

『闇を闇から』第5章 5.過去からのトロフィ(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 真崎のマンションの前には一台の車が止まっていた。手持ち無沙汰な顔で携帯を弄っていた檜垣が伊吹が出て来たのに目を上げる。「乗りなよ、オカルト巫女さん」「ありがとう

2019/04/17 16:20

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ふいに意識が醒めかけてかろうじて堪えた。 本当は恵子に喋らないで欲しいけど、そういう訳にもいかない。 一度大輔に対して似たようなことを仕掛けた。あの時は大輔側か

2019/04/16 07:05

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 『なあに、京ちゃん』 響いた声に集中する。 目を凝らすまでもなく、京介と同じようにベッドに座る恵子の姿が浮かんだ。 耳が恵子が姿勢を変えることで軋む微かなベッドの

2019/04/15 17:39

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ペットボトルは目覚めればすぐ気がつく場所に、体を起こして飲もうとすればちょうどいい場所に置かれていた。 だから京介は伊吹が京介のことを配慮してくれたのだと感じ、

2019/04/14 12:46

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 京介はベッドの中で目を開けた。 高山の家に石塚が来たことも驚きだったが、彼女がボランティア・グループ『ゆえの会』に属していること、仲間の娘である結衣を赤来が巻き

2019/04/13 13:15

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 遅い昼ご飯はどうかと誘われたが、辞退して二人で真崎のマンションに戻った。「何とか力を貸してくれそうですね」「うん…」 頷いた真崎が一瞬よろめき、壁に凭れた。「ごめ

2019/04/10 17:15

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「まず、赤来と言う男は、『羽鳥』と言う別名を持っていて、その名前の元に大学時代に女性を食い物にするサークルを運営管理していた。真崎大輔もその一味だ。但し、今表沙汰

2019/04/09 09:06

『闇を闇から』第5章 4.アングルシューター(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「信じられんな」 高山は美並の話を一蹴した。「とんでもないことを話しているという自覚はあるか」 冷静に詰られた。「会社で熱くなれないからって、ここで熱くならないで

2019/04/08 08:55

『闇を闇から』第5章 3.爪と牙(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「京介！」 飛びついてくれた伊吹の熱がなければ、きっと崩れていただろう、姿形を失って。 どれほど便器にしがみついていたのか、ようやく自分が喘ぎながら体を起こしてい

2019/04/07 07:11

『闇を闇から』第5章 3.爪と牙(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「何だ」「今お聞きした内容は、一介の人事が把握するには詳細すぎませんか？」「……どう言う意味だ」「なぜ、赤来課長の幼少期のことまで調べたんですか、高山課長」「…」「あ

2019/04/06 09:05

『闇を闇から』第5章 3.爪と牙(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「ああ、来たのか、社長から聞いている……どうした？」 明るい日差しが当たる穏やかな気配のマンションで、扉を開いて京介を迎えた高山は訝しむように眉を寄せた。「いいこと

2019/04/05 19:51

『闇を闇から』第5章 3.爪と牙(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…」 京介は薄く目を開ける。真夜中近くに届いたメールで、明日の予定は決まった。 けれどまだ、伊吹には話していない。 温まったベッドの中、目の前に甘い香りがして、柔

2019/04/04 07:40

『闇を闇から』第5章 3.爪と牙(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ この能力が何なのか、ずっと知りたかった。 なぜこの能力があるのか、どうやって役に立てればいいのか、この能力に何の意味があるのか。 誰もが信じず、否定し、認めない

2019/04/03 07:11

『闇を闇から』第5章 3.爪と牙(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 戻された指輪は奇跡のようだった。「伊吹さん？」「あ、はい」 マンションの鍵を開けながら、真崎が振り向く。「どうしたの、怖くなった？」「あ、いえ」 指輪を見ていた

2019/04/02 13:10

『闇を闇から』第5章 2.ダブル・ベリー・バスター(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 二人が話し込んでいる間に、客は一人減り二人減りして、もう二人だけになってしまっていた。 村野は急かさない。真崎から言い含められているのか、特別料金が支払われたの

2019/04/01 08:53