**************** 伊吹が訝しそうに眉を寄せて、ふいに気付いた。『相手は納得しなかった。状況が悪化して、私のせいだと言われた。私は手を引いて……』 ひょっとして、あの話の。 尋ねてみる
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 「知りたくもない話を色々と聞かされた」 不愉快そうな声音だった。「元々赤来と付き合っていたこと、パスケースの写真を見つけて、見覚えがあるような気がするから、また探
**************** 「顧客離れがどこまで防げるかですね。事件に関する広報は」 会議を思い返した真崎に、「任せて」 元子が微笑む。指のダイヤは元より、資産でどうにかなりそうなものは早々
**************** 朝の会議にはかろうじて間に合った。「珍しいわね、あなたが遅刻ぎりぎりだなんて」 それこそ珍しく黒のパンツスーツの元子に突っ込まれて、京介は僅かに顔が熱くなる。
**************** 声が蘇る。 美並が大事だなー。 …あきくん。 ずっと一人でいく気か?。いい人はいないの? …お父さん、お母さん。 知らないはずも、なかったか。 気づかぬはずも、な
**************** 「…っ」 切なげな悲鳴を耳に蘇らせて顔が熱くなる。 ああもう、どうしよう、あんな声を聞かされたら、忘れるわけにはいかなくなる。 瞬時に乾いた喉に、ベッドを抜け出した
**************** 冷たい。 美並は目を覚まして瞬きする。 あれ?「…」 周囲は薄明るい。明け方だと言うのは、空気が冷えてきているのでわかる。暖房をつけていても、今の二人は裸で毛布
**************** 「…」 気が付いたのは真夜中だった。「……美並?」 いなくなってしまったかと呼んでみれば、静かな寝息が届いた。起こした自分の体は丁寧に拭かれていて、伊吹はベッドの端に
**************** 戻って来てくれた伊吹は、夕飯の買い物をしていてくれて嬉しくて。準備するところから、食事中も、終わってからも、ただ伊吹がそこに居ることを確かめたくて味わいたくて、
たくさんのご訪問、ありがとうございます。 おかげさまで1800000ヒットを重ねました。 今は『闇を闇から』を連載しておりますが、第5章が終わったら『ラズーン』か『これはハッピーエンドにしかならないラブスト
**************** カレーを煮込みながら、おじやじゃなくて玉子丼でもいけると言われたので、美並は準備を進めて行く。 以前は部屋になかった炊飯器が湯気を上げ、増えた二人分の色々な形の
**************** 夕飯の買い物を済ませ、真崎のマンションに戻った。「おかえり」「…ただいま」 出迎えてくれた真崎はずいぶん早くから起きていたのだろう、玄関を入った美並を抱き寄せ、鼻
**************** 宇野みさとは『さわやかルーム』に通っていた。 一人暮らし、73歳。まだまだこれからよねと笑う顔は、子ども二人を事故で亡くし、夫を数年前に見送ったとは思えないほど穏
**************** 「覚えておられますか、あのコンビニ」「あの…って、あのコンビニですか」 驚きに尋ね返す。「そうです、あなたを捕まえかけて、『羽鳥』を逃がしたあのコンビニ」 有沢が楽
**************** 「…伊吹さん」 病院の一室に、有沢は薄緑の寝間着のようなものを着て横たわっていた。窓が開け放されていて、晴れ上がった空を眺めていたらしい。気配に振り向いた顔が微かに
**************** 真崎のマンションの前には一台の車が止まっていた。手持ち無沙汰な顔で携帯を弄っていた檜垣が伊吹が出て来たのに目を上げる。「乗りなよ、オカルト巫女さん」「ありがとう
**************** ふいに意識が醒めかけてかろうじて堪えた。 本当は恵子に喋らないで欲しいけど、そういう訳にもいかない。 一度大輔に対して似たようなことを仕掛けた。あの時は大輔側か
**************** 『なあに、京ちゃん』 響いた声に集中する。 目を凝らすまでもなく、京介と同じようにベッドに座る恵子の姿が浮かんだ。 耳が恵子が姿勢を変えることで軋む微かなベッドの
**************** ペットボトルは目覚めればすぐ気がつく場所に、体を起こして飲もうとすればちょうどいい場所に置かれていた。 だから京介は伊吹が京介のことを配慮してくれたのだと感じ、
**************** 京介はベッドの中で目を開けた。 高山の家に石塚が来たことも驚きだったが、彼女がボランティア・グループ『ゆえの会』に属していること、仲間の娘である結衣を赤来が巻き
**************** 遅い昼ご飯はどうかと誘われたが、辞退して二人で真崎のマンションに戻った。「何とか力を貸してくれそうですね」「うん…」 頷いた真崎が一瞬よろめき、壁に凭れた。「ごめ
**************** 「まず、赤来と言う男は、『羽鳥』と言う別名を持っていて、その名前の元に大学時代に女性を食い物にするサークルを運営管理していた。真崎大輔もその一味だ。但し、今表沙汰
**************** 「信じられんな」 高山は美並の話を一蹴した。「とんでもないことを話しているという自覚はあるか」 冷静に詰られた。「会社で熱くなれないからって、ここで熱くならないで
**************** 「京介!」 飛びついてくれた伊吹の熱がなければ、きっと崩れていただろう、姿形を失って。 どれほど便器にしがみついていたのか、ようやく自分が喘ぎながら体を起こしてい
**************** 「何だ」「今お聞きした内容は、一介の人事が把握するには詳細すぎませんか?」「……どう言う意味だ」「なぜ、赤来課長の幼少期のことまで調べたんですか、高山課長」「…」「あ
**************** 「ああ、来たのか、社長から聞いている……どうした?」 明るい日差しが当たる穏やかな気配のマンションで、扉を開いて京介を迎えた高山は訝しむように眉を寄せた。「いいこと
**************** 「…」 京介は薄く目を開ける。真夜中近くに届いたメールで、明日の予定は決まった。 けれどまだ、伊吹には話していない。 温まったベッドの中、目の前に甘い香りがして、柔
**************** この能力が何なのか、ずっと知りたかった。 なぜこの能力があるのか、どうやって役に立てればいいのか、この能力に何の意味があるのか。 誰もが信じず、否定し、認めない
**************** 戻された指輪は奇跡のようだった。「伊吹さん?」「あ、はい」 マンションの鍵を開けながら、真崎が振り向く。「どうしたの、怖くなった?」「あ、いえ」 指輪を見ていた
**************** 二人が話し込んでいる間に、客は一人減り二人減りして、もう二人だけになってしまっていた。 村野は急かさない。真崎から言い含められているのか、特別料金が支払われたの
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**************** 伊吹が訝しそうに眉を寄せて、ふいに気付いた。『相手は納得しなかった。状況が悪化して、私のせいだと言われた。私は手を引いて……』 ひょっとして、あの話の。 尋ねてみる
**************** 「ふぅん……そうなんだ?」 伊吹が首を傾げて何か言った。「今でも好きなんだ」 自分の声もうまく聞こえない。「今でも伊吹さんは大石のことが好きなんだ」 悲しくて辛くて、
**************** どこまで頑張っても無駄なんだ。 京介はぼんやりと思った。 気持ちを話して、過去を打ち明けて、自分を晒してみたけれど、結局こうやって拒まれるんだ。 きっと大輔と同じよ
**************** 「あの、今なんて?」 まさか、でも、本当に? まさか、でも、ならどうして一体? すぐにそれにすがって喜ぼうとしている気持ちと、だって大石圭吾を知っているじゃないか
**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ