エターナル・アイズ

『闇を闇から』第5章 9.祝宴(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…他の事件は始末が付きますが、孝さんの一件は詰められないかもしれません」 やっぱり、その辺りも心配していたのか。 そもそも伊吹に事件の解明を望んだのは京介だ。孝の

2019/05/31 12:27

『闇を闇から』第5章 9.祝宴(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「伊吹さん……面倒な男に関わってるなあ」 ぼやきながら、まあ僕もだけどね、と肩を竦めて受話器を置いた瞬間、もう一度電話が鳴って取り上げる。「はい、真崎です」『夜分失

2019/05/30 09:03

『闇を闇から』第5章 9.祝宴(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 京介が帰宅したのを待っていたように電話が鳴った。 携帯ではない、家の電話だ。「はい、真崎ですが」『…夜分に失礼致します』 抑えて低い、あたりを憚るような声が届いた

2019/05/29 06:54

『闇を闇から』第5章 9.祝宴(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…どうした？」「…いえ」 源内の手の場所を眺める。京介の腰に添えられている手はしっかり当てられているが、それだけだ。「……ああ…」「ん？」「いえ……わかりました。体の動

2019/05/28 22:36

『闇を闇から』第5章 9.祝宴(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「で、その顔は何だ」 と聞くほうが野暮か。 金曜日に源内の道場へ出向いての第一声に、京介は薄赤くなったのを自覚する。「ああ、そのえーと」「何だまたキスマーク付けら

2019/05/27 14:13

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(12)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「み…なみ…っ」 低い叫びが耳に響いて、美並は思わずほっとした。 たぶん、失わずに済む、きっとこの先も。 美並が踏み込めなければ、今みたいに真崎が踏み込んできてくれ

2019/05/23 07:10

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(11)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 悲痛な声に力が抜けた。 本当はもっと、嫌がられるまでやった方がいいんだろうけど。 もうここまでが美並ができる限界。 でも、ようやく終わった。 これでもう、この先

2019/05/22 13:45

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(10)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ハルが桜木通販にやって来て、襲撃と言っていいほどの猛々しさで踏み込んだ。事件のあらましを知り、美並達が何をしようとしているのかを確認し、そうして提案した一つの物

2019/05/21 16:19

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(9)

​​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 伊吹が実は密かにかなり怒っていた、とようやく気づいた。 怪我をしてないからと言ったけれど信じてくれない。 （中略）「美並？」「…ごめんなさい」「…あ…うん…」「ごめ

2019/05/20 07:15

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(8)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 決心がついた。 ハルは断言した。「源内？」「わかった、止めん。と言うか、止めても無駄だろ、これまで通り」 もう何度目かになる溜め息を重ね、コーヒーを飲み、腕時計

2019/05/19 07:13

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 第2会議室でこれまでの状況を聞いた源内は混乱し、ハルは何事か考え込んでいる様子だった。もう少し疑問を確認し、話を詰めていかなくてはならないだろう、それほど時間が残

2019/05/18 08:54

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ほとんど口をつけずに、冷めきってしまったコーヒーを、伊吹が再度淹れ直しに行ってくれる。「美並」 唐突にハルが口を開いた。「お茶で」「…ええ」 伊吹の気遣わしげな視

2019/05/17 14:23

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 京介の前で、高崎と志賀が二人でホール・イベントの問題点やら検討やらを始め、他の仕事もあるんだけど、と言ってはみたが、冷ややかな視線で高崎に睨まれスルーされて数十

2019/05/16 07:10

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(4)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「…課長」 緊張した顔で高崎が動き、京介が部屋を出て行くのか、志賀に迫るのか、何れを選んでも道を塞ごうとする。「こいつは」「高崎くん」「はいっ」 険しい顔で睨み返し

2019/05/15 07:04

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊   静かなノックの音が響いて京介は顔を上げる。「どうぞ」 昨日から比べれば格段に捌かなければならない案件は減ってきた。ネット社会の移ろいやすさと言うか、京介の境遇も

2019/05/14 06:51

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 珍しいハルの笑顔に激しいシャッター音が鳴り響く。源内が少し驚いた顔になっている。 美並も思わずハルを眺めた。 もうここには『赤い空』の絵を破かれて怒っていた子ど

2019/05/13 14:36

『闇を闇から』第5章 8.ウォーク・イン・ポーカー(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 明日。 こう言うことか。「美並」 にっこり笑って桜木通販に入ってきたハルに美並は呆気にとられる。 しかも一人じゃない。背後に源内と報道陣らしいものを従えての、堂

2019/05/12 07:05

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(9)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 実家から戻りながら、美並は流れる電車の風景を見つめていた。 いつもこんな風に世界を見ていた気がする。 流れ去るもの、止められないもの、自分には関係がないものとし

2019/05/11 07:08

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(8)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ナイフを片付け、阿倍野を送り出して行った富崎が戻ってきた。 手にコーヒーを持っている。「はい」「ありがとう、ございます」 受け取ろうとして、京介は自分が微かに震

2019/05/10 07:05

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 京介は、源内と金曜日の合気道の日に少し時間をもらう約束をした。 もし、源内の師匠が確かに『羽折』の祖父ならば、ひょっとすると指紋が残るようなものを保管していない

2019/05/09 07:03

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 夕方になって京介に繋がれたのは源内からの電話だった。『えーっと、どう言えばいいのかと思うところなんだが』「…ご心配をおかけします」 『ニット・キャンパス』を諦める

2019/05/08 22:27

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(5)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ これは見込み違いで、断られる方だったか。 視線をPC画面に走らせ、鳴海工業の品物が来なかった場合の動きを考え始めた矢先、『あっ、おいっ』 突然電話の向こうががたが

2019/05/07 09:00

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(4)

​​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 報道が始まった。「はい、桜木通販でございます。…いえ、その件に関しましては」「はい、桜木……申し訳ありません、現在その件は」 さすがに当日は仕事にならなかった。置

2019/05/06 13:26

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(3)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 報道が始まった。「はぁあ…」 美並が実家に戻った時に居合わせた明は、案じる両親に変わって美並を質問責めにした挙句、深々と溜め息をついて胡座を組んだ。「すごいことに

2019/05/05 09:11

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(2)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 昼間の『羽鳥』とのやりとりを伝えると、案の定真崎はうろたえた。 そういう真崎も美並の知らないところで、大石といつの間にか距離を縮め、まるで共同戦線を張ったような

2019/05/04 07:03

『闇を闇から』第5章 7.夢見たものは(1)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「え、えっ」 夜マンションに戻ってから伊吹に連絡し、昼間ずっとろくに会えなかった寂しさを訴えようとした京介は、ごめんなさい、京介、と謝られ、続いて聞かされた内容に

2019/05/03 09:06

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(8)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 赤来がにこやかに立っていた。 如何にも大変な時に頑張っている部下を労うような振る舞いで。 柔らかい声に、整った立ち姿に、今度ははっきりと読み取ることができた。

2019/05/02 08:53

『闇を闇から』第5章 6.ノー・リミット(7)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 真崎と駆け込むように出勤して、同時出勤にならないように僅かに美並が遅れて着き、石塚には遅刻寸前を詫びた。「良いのよ」 石塚は内側を話した気安さと言うのか、軽く頷

2019/05/01 17:42