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花より男子二次小説。大人になった司とつくしの物語。いくらかの涙と幸福を感じていただければ幸いです。

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2015/11/08

1件〜100件

  • 幸せのレシピ

    「遅くなってごめん!」玄関の扉を開けた恋人は部屋の中に駆け込んでくると鞄の中からエプロンを取り出した。そして、「それにしても鬼のかく乱ってこういう事を言うのかもね?」と言って笑った。司は恋人の言葉に反論を返すことなく唸った。海外出張から戻った司は風邪をひいた。高熱というほどではないにしても熱がある。そして声が出ない。だから言葉で意思を示すことができず唸ったのだ。この状況を鬼のかく乱と言うのならそう...

  • 分水嶺

    <分水嶺 (ぶんすいれい)>最果ての場所はどこですか。私たちはそこに行きたいんです。もしあなたが一組の男女にそう言われたらどう答えますか?私はその時こう思った。このふたりは禁断の恋をしている。刹那の恋をしていて、何かを捨ててきた。そして終らぬ恋を終えようとしている。永遠に隣り合って眠るための場所を探しに、この島を訪れたのだと。ここは日帰りするには勿体ないと言われる景色を持つ南の島。だから、この島を...

  • 夏はドラマチック 14

    沈黙が流れた。司は言葉を失っていた。まさかとは思ったが、王女は司によって動物的な本能が刺激されたようだ。「私が王女だからって、遠慮しないで欲しいの。あなたには、これまで他の女性としてきたように私に接して欲しいの」と言った王女の頬は赤味が増したが、黒い瞳はたじろぐことなく視線は逸らさなかった。つまり大胆なことを口にする王女は本気だということ。だから司はそんな王女に、ささやくように声を低め言った。「わ...

  • 夏はドラマチック 13

    司はしばらく、その言葉について考えた。それは司を拒んでいた女が口にした自分の知らない世界を見せて欲しいと言う言葉。そしてその世界とは男と女の世界。「なあ、俺がここに呼ばれたのは_」「私、経験がないの…..男性経験が」司は発せられたその言葉に不意を突かれ息を呑んだ。それから、うめいた。王女は司にお願いがあると言ったが、この話の流れからすると司に相手になれと言っているのか?だがそれは司の勝手な思い込みの...

  • 夏はドラマチック 12

    司は広い部屋の中央にいたが、この部屋が居間などではないことは明らかだ。何しろ壁に飾られているのは、この国の歴代の王と妃の肖像画。つまりここは謁見の間ということだが、いずれ次の国王となる彼女の肖像画もここに飾られることになる。そして隣には王配の肖像画が飾られる。本来なら司の恋は身分違いと一蹴されてもおかしくない。だが王女の側近の西田は王女が司と恋に落ちることを望んでいる。けれど司は地位や名誉が欲しい...

  • 夏はドラマチック 11

    司が王女の唇の端に付いたクリームを舐めた日から1ヶ月が過ぎた。あのとき王女の目は丸くなり言葉を失った。そして食べ掛けのパフェを置いて逃げだすように店を出て行ったが、司の親指が触れた唇は柔らかかった。それに唇は少しだけ開いた。司はあの日から毎日王女に手紙を書いた。そしてそれを王女の側近である西田に渡していた。西田は司が王女に恋心を抱いていることを知っている。それに西田は王女が結婚することを望んでいる...

  • 金持ちの御曹司~背広の下のロックンロール~<後編>

    司は用意された髭剃りを手にバスルームの背景幕の前にいた。そしてカメラのレンズを見つめていた。いや。カメラの向こうにいる女を見つめていた。「ええっと、あなたの名前は__」「道明寺司だ」「では道明寺さん。あなたの状況は朝起きて下着を付けて髭を剃っているところよ」と言った女はファインダーを覗いた。だから司は言われた通り髭を剃るポーズを取った。すると女はシャッターを切り始めた。「なあ」司は髭剃りを顎に当て...

  • 金持ちの御曹司~背広の下のロックンロール~<中編>

    「くそったれめ」司は言語道断の下着に毒づいた。が、再び箱の中に手を突っこみ、ヒョウ柄のブリーフを摘まみ上げるとニヤリと笑った。「おもしろそうだ」司は牧野という女のカメラマンとしてのキャリアがどれくらいあるのか分からなかったが、年は30歳くらい。そしてその女が裸に近い男に慣れてない。男のセクシーな姿に慣れてないと見た。それは司が下着を手にしたとき、頬を赤らめたからだ。つまり女は平然を装ってはいたが、...

  • 金持ちの御曹司~背広の下のロックンロール~<前編>

    「ねえ。このモデル。カッコいいと思わない?」「そう?顏がクドイと思うんだけど」「そんなことないわよ。この顏のどこがクドイのよ?」「だってほら阿部寛っぽいじゃない?あの顏がクドクないって言うなら誰をクドイって言うのよ」「確かに阿部寛はクドイと思うわよ?でもこのモデルは阿部寛ほどクドクないわよ」「じゃあ誰レベルよ?」「そうねえ…..北村一輝じゃない?」「北村一輝?北村一輝も阿部寛も似たり寄ったりの顏の濃...

  • 夏はドラマチック 10

    彼女の目の前に差し出したクリームが乗ったスプーン。司は彼女がスプーンを受け入れるかどうか口元をじっと見つめているが、彼女の両手は膝の上に降ろされている。だからあの時のように殴られることはないはずだ。「私は朝からこれを食べるのを楽しみにしてきたわ。だからその時間を邪魔しないで欲しいの」彼女はそう言うと司の手からスプーンを奪い取って自分で口へ入れた。そして、きれいにクリームを舐めとったスプーンをテーブ...

  • 夏はドラマチック 9

    彼女がゆっくりとまばたきをした。だがすぐに顏をしかめ呟いた。「まさか….あなたあの時の顏だけがいいバカ男?」司は彼女があの時と同じ言葉を口にしたことに笑いだしそうになった。それは彼女が司のことを覚えていることを知ったからだ。「でもどうして?何故あなたがここに?」と、言った彼女は表情が険しくなったが、その反応に司は笑った。「どうしてだと思う?」「どうしてって、そんなこと聞かれても分かるわけないでしょ?...

  • 夏はドラマチック 8

    覚えていない___思っていた通りの答えが返ってきた。だが口調は丁寧で柔らか。しかしそれは王女の立場がそうさせているのだろう。司はあのとき彼女の右手が腹に加えた衝撃を忘れてはいない。あれは力強いパンチで司が一瞬息を呑んだ隙に彼女は走って逃げたが、その逃げ足も速く見失った。つまり王女は優雅に見える外見とは違い本来は元気で威勢のいいということ。そして司はそれまで自分に興味を示さない女に会ったことがなかっ...

  • 夏はドラマチック 7 

    王女であるつくしは、生きるために働くことはないが王室の唯一の後継者となったことから、こなさなければならない多くの公務を抱えていた。昨日の午前中は慈善団体や教育関連団体の代表者との面会。午後からは宮殿に迎えた外国からの賓客をもてなすため常に笑顔でいた。そして夜は晩餐会だったが、それらの公務はこれまで何度も繰り返してきたこと。だから慣れていた。それに公務に対しては国民の幸せのためという信念をもって臨ん...

  • 夏はドラマチック 6

    罠にかけられるのが嫌で女と長続きしたことがない。それに自分から女を口説いたことがない。そんな司が酒を浴びるほど飲んで口にしたという一度くらい女を口説いてみたいの言葉。だが司はそんな言葉を口にした記憶はない。けれど、もしかするとそれは心の奥にあった王女に対する思いがそう言わせたのかもしれない。何しろ相手は王女。司が容易に近づくことが出来ない相手。だから初恋は叶わないものだと諦めていたからだ。だがしか...

  • 夏はドラマチック 5

    「こちらが王女様のお気に入りのお店です。王女様はこの店のパフェが大好物です。ですから2週間に一度の割合で店を訪問してお召し上がりになられます」渡されたのは王女のお気に入りの店の地図司は西田の王女を誘惑して欲しいという頼みを引き受けた。それは今でも初恋の相手である王女のことが好きだから。だから他の誰かに代わりをさせることなど出来なかった。「それから、こちらが王女様のスケジュールです」次に渡されたのは...

  • 夏はドラマチック 4

    自宅に戻った司は強い酒を飲み、頭の中を整理しようとした。バーで西田の口から王女を誘惑して欲しいという言葉を訊き、むせそうになった。そして親友たちから、お前がその立場にピッタリだと言われ脇腹を殴られたような気がした。「まさかな…….」親友たちには話さなかったが司は王女を知っていた。いや。少し言葉を交わしただけでは知っているとは言えない。それに王女は司のことを覚えていないだろう。司が王女と会ったのは17...

  • 夏はドラマチック 3

    「それってつまり王女様を誘惑して欲しいという意味ですか?」あきらは真剣な顏で訊いた。「はい。王女様は今年の12月で26歳になられます。しかしご結婚の意思がございません。つまりこのままでは直系の子孫が生まれることがないということです」西田はひと呼吸おくと言葉を継いだ。「我が国は直系の方が国を継ぐことが決められています。王子であった弟君が亡くなられた今、王女様が結婚をなさならいということは、この先この...

  • 夏はドラマチック 2

    男はバーに入ると足を止め店内を見回した。男は柔らかな音楽が流れるこの店の常連客。そして同じくこの店の常連の四人組を見つけると近づいた。「あれ?西田さん、最近見ないと思ったけど、お久し振りですね」まず初めに西田に声をかけたのは、ストレートパーマがかかった長めの髪にシャギーを入れている男。美作あきらという男は明るく親しみやすく、誰にでも親切なのが信条。「本当だ。暫くお会いしませんでしたがお元気ですか?...

  • 夏はドラマチック 1

    つくしは中庭を取り囲んでいる長い回廊を歩いていた。すると後ろから男の声が聞えた。「つくし様!つくし王女様お待ち下さい!」だがつくしは待たなかった。だから男は走ってつくしに追いつくと言った。「王女様!どうかわたくしの話をお聞きください!王女様は今年26歳になられます。ですから先日も申し上げたように、そろそろご結婚を考えていただけませんでしょうか?そうしなければ我が国は__」「嫌よ!前にも言ったけど私...

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  • この素晴らしき世界

    「ねえ、祐(たすく)お兄ちゃん。お父さんってああなることを望んでいたの?」「ああ。父さんらしいと思わないか?」「でも……」「いいか、葵。父さんは何でも自分の思い通りにならなきゃ気が済まない人間だ。だからあれで良かったんだ。あれが父さんの望みだったはずだ」「だけど……ねえ英(すぐる)お兄ちゃんもそう思うの?」「葵。俺は祐兄さんの言う通りだと思う。父さんは、あの場所でああなることを望んでいたんだと思う。そ...

  • さよなら記念日

    俺はホテルのコーヒーラウンジで女性を待っていた。俺がその女性と出会ったのはクリスマスイブの日。日本一の女子高生を決める大会で彼女の虜になった。つまり彼女は俺の初恋の人。だが5歳の俺とは12の年の差があった。そして彼女には心に思う男がいた。その男性は日本を代表する財閥の後継者。だが俺も資産数百億を擁する会社の後継者。だから俺は男性に対抗意識を燃やした。だがどんなに俺が自分をアピールしても12の年の差...

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  • バトンを渡す日

    私は毎日非常に神経を使っています。それは私が人に仕える仕事をしているからにほかなりません。そんな私は石頭と言われることがあります。学級委員長を務めた優等生がそのまま大人になったと言われる私に冗談は通じないと思われているようです。しかし、私自身は自分のことをユーモアのある人間だと思っています。何故なら銀縁眼鏡の奥にある瞳から感情を読み取ることは不可能だと言われてはいても、私が仕える方と、その方の奥様...

  • 金持ちの御曹司~業務命令~<後編>

    司は酔いつぶれた女をベッドに降ろした。そして服を脱がせると、女の身体を楽々と裏返し枕元に置かれているロープを掴んだ。『しぼりたて生しょうゆ』が『しばりたて生しょうゆ』に見えてしまう男は、マンションの部屋にロープを用意していた。だから酔って寝てしまった女を自宅まで連れ帰ると、これまで自覚することがなかった自身の性的嗜好を満足させることにした。だが相手が誰でもいいという訳ではない。相手は好きな女でなけ...

  • 金持ちの御曹司~業務命令~<中編>

    「道明寺店長。本日はご同行、ありがとうございました」「いえ。こちらこそ」「それにしてもその変装。よくお似合いです」「そうですか。どうもありがとうございます」司はエリアマネージャーである彼女と近隣のライバル店のリサーチに出掛けていた。だが眉目秀麗と言われる司の面はライバル店に割れている。それにその容貌はひと目を惹く。実際店長の司は女性客に人気があり、店内を巡回すれば、「あの…おすすめ商品買いました」...

  • 金持ちの御曹司~業務命令~<前編>

    「ねえ里美。美味しいパンケーキを出すお店が新しくオープンしたらしいんだけど、食べにいかない?」「パンケーキ?」「うん。パンケーキ」「マリトッツォじゃなくて?」「うん。マリトッツォじゃなくてパンケーキ!」「ねえ、なんか今更感があるんだけどパンケーキの流行はもう終わってるんじゃないの?」 「里美。今更も何も好きな物に流行は関係ないわ。あたしはただパンケーキが好きなだけ。だから一緒に…..ね?」「そうねえ……...

  • 花束に添えて 最終話

    花束を手に教会の通路を歩くウエディングドレス姿の四十路の花嫁。その姿を誰にはばかることなく、可愛らしいと言う人間がいるとすれば、それは司くらいなものだ。何しろ花嫁はこの年で恥ずかしいと言い、息子の駿は母親のウエディングドレス姿に一瞬ぽかんとした表情になったが、その奥にあるのは、まさかその年でその恰好?といったところだろう。だが司は彼女が純白のドレスを着ることを望んだ。何故なら本来20年前に行わなけ...

  • 花束に添えて 10

    人の幸福は惚れた相手と一緒になること。だから司は本来なら20年前に彼女に告げるはずだった言葉を言った。そしてそれは思いの全てを込めた言葉。だが彼女は黙って首を横に振った。「アンタとは結婚できない」司は彼女の言葉にハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。それは二人の息子である駿は椿から司が彼女のことを忘れても、彼女は司のことがずっと好きだったと訊いていたから。だから司もその言葉を信じていただけに、...

  • 幸せな瞬間

    「司!早く!遅れるわ!」「心配するな。時間は充分ある」司はネクタイを締めながら答えた。「充分って言うけど、あの子の学校まで車で30分かかるのよ?それなのにあと35分しかないのよ!道が混んでたら間に合わないわ!」妻は慌てていた。そして司を急かしていた。「安心しろ。ヘリで行けば5分だ」「ヘリって….まさか学校までヘリで行くつもりなの?」「ああ。そうだ」「そうだって…..」「英徳には俺が寄附したヘリポートが...

  • 花束に添えて 9

    彼女が息子に雑誌を買いに行かせたのは、司とふたりきりの時間を作るためだと分かっている。そして息子もそれを承知した様子なのは、「分かった。もしその雑誌が売店になかったら外の本屋に行ってくる。だからすぐには戻れないと思う」と言ってから司に目配せしたから。だから司は病室のドアが閉まると言った。「あいつ。俺がどれだけ心配したか分かって__」「ごめんなさい。駿の態度は許してやって」司の言葉を遮るように発せら...

  • 花束に添えて 8

    言葉がその人の人生を支え続けることがある。苦難の日々も、その言葉があれば乗り越えることができると言うが、司が最愛の人に言った愛してる言葉は彼女を支え続けた。それなのに、その言葉を口にした当の本人は不覚にも生涯に一度きりの恋を忘れてしまった。だから心臓の手術をするという彼女のため、どんなことでもするつもりでいた。だが医者から「ご安心下さい。手術は成功です。牧野さんの心臓はこの先も問題なく鼓動を刻み続...

  • 花束に添えて 7

    人生は一回限りの旅。その旅を無事に終えることを誰もが望む。だがやむを得ず途中で止めなければならないこともある。もし司が旅を終えることになるなら何を思う?何をする?何週間か、何か月後に命が終ることを知ったとき、これは仕方がないことであり運命なのだと、その日が訪れるのをひたすら待つか。それとも可能性を信じて前を向くか。司の人生は豊かであり、何不自由なかった。幸福は金で買えると思っていた。そして自分の命...

  • 花束に添えて 6

    看護師から「ご家族の方は病室。もしくはこちらでお待ち下さい」と言われた司と駿は手術患者家族のための待合室にいたが、部屋が静かなのは他に誰もいなかったから。そして窓の外には、北海道の冬独特の低い位置にかかった太陽が見えた。「父さん。母さんは大丈夫だよ。それにここの病院の先生は優秀だから」司は隣に座った駿にそう言われたが気が気ではなかった。人工心肺を使う手術を受ける彼女を自家用ジェットで東京の道明寺系...

  • 花束に添えて 5

    司は名札が掛けられている病室の前に立つと、名前を確かめてドアをノックした。すると中から「どうぞ」と声がした。だからドアを開けた。「道明寺……」それは懐かしい声。懐かしい呼び名。愛しい人の口から出た呼び名は、あの頃と同じ苗字の呼び捨て。「牧野…….」司が彼女を呼ぶのも苗字の呼び捨て。ふたりともあの頃と同じ呼び方をするのは、他の呼び方をしたことがないから。司は、じっと彼女を見つめたが、小さめの頭を縁取る髪...

  • 花束に添えて 4

    司は病院の中にある喫茶室にいた。「はじめまして。牧野駿です。あなたが僕の父親なんですね。よかった。宇宙人じゃなくて」牧野駿は自然な表情でそう言ったが、司が答えないでいると再び口を開いた。「道明寺さん?あなたが僕の父親なんですよね?」司は彼女の面影を宿す息子を見つめていた。だから駿の言葉にハッとして「あ、ああ。私が君の父親だ」と答えた。タバコが吸える年まで成長した息子。眉や目は司に似ているが、鼻から...

  • 花束に添えて 3

    新千歳空港には11時過ぎに着いた。ロビーには先に北海道入りしていた西田がいて、司が手にしていたコートを預かった。「ご子息様は、駿様はつくし様が入院している病院にいらっしゃいます」ロビーから一歩外に出た司は、車までの短い距離だったが頬に冷たい風を感じた。だが空は北の大地に相応しい大きな青空が広がっていた。そして肺に吸い込んだ空気は東京とは違い澄んでいた。司は車の後部座席で目を閉じた。そして姉の言葉を...

  • 花束に添えて 2

    自分に子供がいる。それも大学生の息子が。司は暴漢に刺され記憶の一部を失っていると言われていた。だが失われた記憶が何であるかは分からなかった。ただ、時々夢の中にひとりの女性の姿を見ることがあった。それは焼け付く陽射しの中で揺れる人影。その人影が誰であるか認識したのは3日前。そして姉の口から突然こぼれた言葉で、はじめて自分に子供がいることを知った。「司。私もこの事実を知ったのは、つい最近よ。だけど今日...

  • 花束に添えて 1

    「お前のかーちゃん、出ぇべーそ!」「うるせぇ!俺の母ちゃんは出べそなんかじゃねぇ!俺の母ちゃんの腹はスベスベしてキレイだ!」「へえ~そうかよ、でもなんでお前。母ちゃんの腹がスベスベしてるって知ってんだよ?」「知ってるって……そりゃ風呂に入ってるとき見たんだよ!」「お前4年生なのにまだ母ちゃんと一緒に風呂入ってんのかよ?乳離れ出来ねえガキだな!」「うるせぇ!一緒に風呂なんか入ってねえよ!俺が見たのは昔...

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  • 金持ちの御曹司~純愛ラプソディ~

    「あたし。昨日きのこの山を買ったの」「え?もしかしてあんた、きのこ派?」「うん。軸のカリッとした食感が大好きなの!」「へえ、そうなんだ。あたしは断然たけのこの里。子供の頃からあのサクサク感に手が止まらなくなるわ!」司は恋人の部署を訪ねたが彼女に会えなかった。そして執務室に戻る途中で女性社員の会話を耳にした。それは社員の中には、きのこ栽培の山や、たけのこを育てるための土地を持つ人間がいるということ。...

  • 記念日 最終話

    「おばあ様とおじい様の馴れ初めって、おばあ様のアプローチから始まったのね」「ええ。そう。おじい様と顏を合わせたのはこの部屋。仕組まれたお見合いだったけれど、今のあなたと同じ年で大学生だったわたくしが、おじい様にひとめ惚れしたの。そして出会ったその日に結婚を前提とした話をしたわ」孫の澪を前にした楓はそう言うとアルバムを捲った。「それから昔のおじい様はキザだったわ」「キザ?」「ええ、そう。あなたのお父...

  • 記念日 7

    楓は長い廊下を歩く男の後ろ姿を見ていた。男は結婚するなら好きな人と、と言ったがそういった女性がいるのだろうか。楓は恋をしたことがない。それに好きな人もいない。だから人を好きになる気持が分からなかった。だが今、奇妙なことに目の前を歩く男に興味を持った。楓の周りにはいないタイプの男に未知の世界を感じた。胸の奥が熱くなるのを感じた。そして短い笑いだったが、男の笑顔に引き込まれた。「あの!」「何?」男は立...

  • 記念日 6

    「久我楓です」と名乗った楓は礼をした。「道明寺慶です」男は頭を下げなかった。そして発せられたのは力のある声。道明寺亘の孫は非の打ちどころがないほど整った顏に猛禽類の目で楓をじっと見ていた。やがて視線は頭のてっぺんから足先へと降ろされたが、品定めでもしているのか。その態度は不躾だ。それに男は見るからに前へ前へと行くタイプの人間。だから楓の視界の中で遠くにいたと思われた男が、すぐ近くまで来たとき思わず...

  • 記念日 5

    「楓さん。我が家にも鳥がいるんだが、放し飼いが過ぎてほとんど戻ってこない。だがその鳥が三日前に戻って来た。外国から羽根を休めに戻ってきたようだが、楓さん。会っていただけないだろうか?」放し飼いをしている鳥に会う?楓は道明寺亘が言っている意味が分からなかった。すると男性は楓の胸の内を読み取ったかのように言った。「いや。分かりにくいたとえで申し訳ない。我が家の放し飼いになっている鳥とは孫です。その孫は...

  • 記念日 4

    「楓さん」「はい」「あなたは勘違いをされている。私の話を聞いて物事を悪い方へと考えているのでは?」「え、ええ……」道明寺亘の言う通りで楓の脳裏に浮かぶのは、祖母が目の前の男性を裏切り楓の祖父に走る姿。だから裏切られた道明寺亘は祖母を恨んでいたのではないかということ。「楓さん、それは違う。私とあなたのお祖父さんは仲が悪いということはありません。それに私は敦子さんを恨んではいません」そう言った男性の目元...

  • 記念日 3

    「これは…..」男性はその箱に見覚えがあるようだ。手に取ると懐かしそうに眺めてから楓に視線を向けた。「楓さん。あなたはおじい様から、この箱を元の持ち主届けるように言われたそうですが、理由は教えられましたか?それから中を見ましたか?」「いいえ。祖父は何も言いませんでした。それに祖父から直接言われたのではなく、執事から言われたのです。それに中は見ていません」箱の中が何であるか興味はあった。好奇心から開け...

  • 記念日 2

    車が向かった先は日本の三大財閥のひとつである道明寺財閥当主の一族が暮らす邸。道明寺家は江戸時代の豪商だが元は武士。その武士を廃業して始めたのが両替商。そして今は商社、金融、不動産、鉱業、エネルギーなど多岐にわたる事業を展開する経済界の名門。そんな家を約束もなくいきなり訪ねて行ったが、楓が名前を名乗ると閉じられていた大きな鉄の門は音もなく開いた。車は広大な敷地の中をゆっくりと進んだ。暫く走ると洋風建...

  • 記念日 1

    テーブルの上には手のひらに収まる小さな箱が置かれていた。「宮本。どうしてわたくしがこの箱を届けなければならないの?」「楓様。わたくしはおじい様から、楓様にそちらの箱を先方に届けるように伝えろと申し付けられましたので、そのことをお伝えしたまでです」「おじい様が?」「はい」「でも何故わたくしが?」「わたくしは、ただの執事でございますので理由は存じません。ただ、おじい様はこちらの箱を楓様の手で元の持ち主...

  • 母ちゃんの恋人

    俺の母ちゃんには恋人がいる。その男は昔付き合っていた男。男の顏は目鼻立ちがハッキリとしていて、髪の毛はクルクルしている。そして背が高い。だから男は、いつもはるか上から俺を見下ろす。そんな男は、まさか母ちゃんの傍に俺という存在がいるとは思わなかったのだろう。初めて俺を見たとき俺にどう接すればいいのか分からないといった態度を取った。ちなみに母ちゃんは、その男と高校生の頃に付き合っていて、なんらかの理由...

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  • 金持ちの御曹司~Make my day~<後編>

    目覚めた司は病室にいた。そして担当医である牧野つくしが来るのを待っていた。だが現れたのは男の医者。だから司は訊いた。「牧野つくしはどうした?」「牧野先生はフリーランスのドクター、つまりアルバイトで当医院の正式な医者ではありません」「だからそれがどうした?」司は鋭い目と口調で医者に言った。すると訊かれた医者は言葉に詰まりながら答えた。「は、はい。で、ですからアルバイトの牧野先生は昨日付けで病院を辞め...

  • 金持ちの御曹司~Make my day~<中編>

    そうだ。失敗しないと言いながら故意に失敗して司を亡き者にしようとしているのではないか。だがもしそうなら、それほど司に忘れられたことが許せなかったということになるが、「私、失敗しないので」、という腕を持つ医者なら腹から石を取り出す手術を失敗させる方が難しいのではないか。つまり唇の端を上げたように見えたのは、司の見間違いであり笑みではなかったのかもしれない。だが司は長い間彼女のことを忘れ他の女と結婚し...

  • 金持ちの御曹司~Make my day~<前編>

    「世の中に本当にあんな凄いお医者さんがいたら凄いわね?」恋人の言葉は医療ドラマを見た感想。舞台は、かつては白い巨塔と呼ばれていた大学病院の医局。何シーズン目かのそのドラマの主人公はフリーランスの女医。すなわち一匹狼。そしてその女医の決め台詞は、「私、失敗しないので」恋人はそのドラマを見終わると主人公の女医を「カッコいい」と言った。司はそのとき思った。もし恋人が医者だったら、どんな医者になるのかを。...

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  • 作文

    司は仕事を終えると子供たちが寝ている時間に帰宅した。「お帰り司!ねえ、訊いて!凄いのよ。巧(たくみ)が作文コンクールで入賞したの!」「作文コンクール?」「そうなの。新聞社が主催する子供作文コンクールで入賞したの!商品は賞状と図書カード1万円分!これで巧は好きな乗り物図鑑が買えるって大喜びよ!」英徳の初等部に通う巧は乗り物が大好きだ。それは道明寺家のジェットから街中を走るバスまで。とにかく幼い頃から...

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  • コーヒーの味

    車が世田谷の邸を出ると司はプルタブを引いた。「社長。そちらの缶コーヒーはまだ沢山あるんですか?」「ああ。ある。沢山ある。毎日飲んでもまだ暫くはある」「そうですか……社長のお気に入りのコーヒーはドリップされたブルーマウンテンのブラックだということは存じております。それに社長は缶コーヒーがあまり好きではないことも訊いております」2週間の休暇を取らせた西田の代わりの若い秘書は気の毒そうに言ったが、その通り...

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  • 金持ちの御曹司~あなたへのおすすめ~<後編>

    「おいお前ら!俺たちは鬼退治に来たんだぞ!それなのに何を楽しく鬼と酒飲んでんだ!」司は他の三人が楽しそうにグラスを傾けている様子に腹が立って言いました。しかし三人は司のことを無視しました。「お前ら……俺たちの友情よりその鬼と飲む方が大事なのか?」すると総二郎が言いました。「ああ。つくしちゃんとこうして飲む方が楽しい」「そうだ。総二郎の言う通りだ。少なくとも野郎ばっかで飲むより楽しい。それにつくしちゃ...

  • 金持ちの御曹司~あなたへのおすすめ~<中編>

    おじいさんとおばあさんは、赤ん坊に桃太郎と名前を付けて大切に育てました。やがて20歳になった桃太郎は眉目秀麗な青年に成長しました。そして自分の名前の桃太郎はダサイからと司に変えました。そして司に名前を変えた桃太郎は鬼ヶ島に住む悪い鬼の話を聞いて、その鬼を退治するため鬼ヶ島を目指すことになりました。「じいさん、ばあさん。俺は鬼ヶ島にいる鬼を退治に行く。そこで鬼が持っている宝物を持ち帰る」そう言った司...

  • 金持ちの御曹司~あなたへのおすすめ~<前編>

    目から入れる薬物と言われる男が今その目で見ているのは、インターネットの動画共有サイト。そこに「あなたへのおすすめ」といって表示されたのは「桃太郎」というタイトルの動画だが、桃太郎と言えば『むかしむかしあるところに、おじいさんと、おばあさんがいました』で始まる司でも知っている日本の昔話だ。だが昔話というのは生物的にも科学的にも….いや、どう考えても全てに於いて納得がいかない話ばかりだが、それを恋人に言...

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