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GMの発達過程における機能の推測:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第4章メモ3
乳児のジェネラルムーブメント(GM)の発達過程をどう解釈するか、という話が続いてます。以下、だいたいの要約です。乳児のGMは一度単純になった後でふたたび複雑になるという傾向を示します。事実として、新生児の大脳皮質は解剖学的には十分発達が進んでいません。それに対して脳幹や脊髄はかなり成熟しており、CPGなどの神経回路網が周期的で規則的な活動を作り出していると考えられます。一方で新生児のGMのパターンはカオス...
新生児のジェネラルムーブメント:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第4章メモ2
今回は新生児に見られる自発的な運動についてです。新生児にはジェネラルムーブメント(GM)と名付けられた全身による多様な運動が見られるそうです。その機能などはよくわかっていないですが、仮説として、GMがその後見られる多様なパターンを包含していて、そこから特定の運動が分化していって分化の終わりには消失する、というものが挙げられます。乳児の機嫌により動きが違ったりするので、5つに分類されています。このうち機...
統合状態からモジュール化する可能性:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第3章メモ5
第3章のメモ最後です。まずここまでモジュール性を前提で話がされていましたが、モジュールの統合ではなく、統合された状態からモジュール化されるという可能性が言及されています。脳波の生後発達の実験結果から、「初期には、脳全体が遅い時間スケールで同期した状態であるが、発達が進むとより速い時間スケールの活動が生じると同時に、空間的な場所に応じた活動の変化が生じると考えられる。」ここでも「動的な自由度の凍結と...
バインディング問題:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第3章メモ4
今回の内容は認識と脳神経系との関係をどう考えるか、という話と関係してます。で、この人の解釈が不適切にしか思えなくって、今回は普通に要約するよりは自分の意見を述べる感じでいきたいと思います。まず局在論と非局在論(全体論?)の話から始まってて、非局在論が全体論のことを指してるのなら多賀が全体論の考え方をそもそも知らないのがわかるんですが、まあ、それはいいでしょう。次いで出てくる話題が脳領域のモジュール...
自由度の凍結と解放による運動パターン形成:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第3章メモ3
前回、歩行の発達には自由度の一時的な凍結と解除が関係しているのではないか、と述べられてました。今回はその考え方になった実験結果についてです。以下、だいたいの要約です。CPGの基本となる神経振動子の周期的活動は、発生初期の非常に早い時期に始まります。ラットでは左右の同期したリズム活動は胎生15.5日から誘発され、17.5日になると左右の交代性のリズム活動へと変化することが実験により示されています。またこの変化...
自由度の凍結と歩行モデルの関係:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第3章メモ2
今回は原始歩行から大人の歩行形式の成立までを神経系の視点でモデル化したい、という感じの内容です。以下、だいたいの要約です。新生児に見られる原始歩行がCPGによると考えるのは自然な流れです。フォスベリ(Forssberg, 1985)によると、筋電位に関しては、原始歩行および独立歩行開始時では成人の複雑なパターンに比べ、「共同筋だけでなく拮抗筋を含むすべての筋が同期して活動する傾向が強い」です。運動軌跡では「遊脚の関...
身体制御の多自由度の問題:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第3章メモ1
第3章に入ります。3章のタイトルからは、ベルンシュタインの多自由度の中で運動が制御されているのはどのようにしてか、という問いに関する内容であることがうかがえます。ざっと見るかぎり後半で表象の多層的な生成についても述べられてる感じで、今のところ運動制御の話とどうつながっていくかまだ読めてません。とりあえず5、6ページずつメモをとっていきます。以下、だいたいの要約です。Ⅲ章 身体の自由度問題と脳のバインデ...
運動を引き起こす下行性の指令を含む機構のモデル:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ8
第2章最後のメモです。運動を引き起こす下行性の指令を含む機構をどう考えるか、ということについてです。以下、だいたいの要約です。障害物を回避するモデルでは、障害物に関する情報は何かしらの形で得られ利用できると仮定しています。視覚情報を利用する場合に次の二通りの方法が考えられます。一つは「障害物が環境のどこにあるかという位置座標として知覚する」というもので、もう一つは「環境中を動き回ると、自分と障害物...
過渡状態の制御:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ7
前回の内容で、自己組織的なパターン生成での歩行モデルは可能だが、意図のような心的現実との折り合いをどうするか、というところで話が終わってました。もうちょっと神経回路的に対応モデルを考えてみようという内容が続いていて、今回はその前の基盤となる歩行モデルについてです。以下、だいたいの要約です。まず、歩行中に任意の場所に任意の高さの障害物が現れ、それを片足ずつまたいで、歩きつづけるという課題を、二足歩行...
自己組織的パターン生成と随意運動:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ6
第3節に入って、これまでのグローバルエントレインメントモデルが随意運動の説明を与えうるか、という感じの内容です。個人的に関心の高いところなので、ここは詳しく見ていこうと思います。以下、だいたいの要約です。3 合目的性と自己組織性これまでの非線形科学の対象だった流体系や化学反応系と違って、非線形系歩行モデルでは歩行の「失敗」といった概念が入ってきています。生命システムのデザインにはこういった目的論的...
歩行におけるゆらぎと歩行パターンの関係:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ5
第2章2節のメモ後半です。歩行におけるゆらぎ、ヒトのCPG、障害がある場合の歩行パターンの順に続きます。以下、だいたいの要約です。ヒトが定常歩行を行うときの周期は一定ではなく「ゆらぎ」があります。ゆらぎの性質を調べる場合、フーリエ解析で周波数ごとの振幅を得て、さらにパワースペクトルをみることで時系列がもつ統計的な性質がわかります。特定の周波数を持つときはパワースペクトルが鋭いピークを持ち、白色ノイズな...
不可制御自由度下での二足歩行:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ4
第二章の2節に入ります。1節に続いてグローバルエントレインメントモデルをもっと現実に近づけていく、という内容です。ここまでのモデルはかなり単純化したものなので、単純化により現実にそぐわなくなっているのではないかという疑念が生じます。脳神経系にこのモデルを近づけるのは難しいのですが、筋骨格系はより実体に近いモデルを作ることができるので、そちらから接近していこう、というのが2節の内容のようです。2 ヒト...
歩行パターン間の移行:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ3
神経振動子による二足歩行モデルの話が続いています。今回も図は省略します。まず「神経振動子から構成される歩行モデルのCPGは、主に脊髄の機構をあらわしていると考えられるが、CPG全体の活動を非特異的に変化させる定常入力のパラメータは、中脳歩行誘発野に対応していると考えられる」とされています。続いてパラメータを大きくしていくと歩行から走行に切り替わったとのことです。ここでパラメータを大きくしていったと書いて...
外乱に対する歩行の安定性と受動歩行:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ2
前回は神経系に引き込みによる自己組織性を与えて実験してみた、というところまででした。今回はそれに続いて、外乱に対する歩行の安定性や受動歩行を、非線形科学の用語を使って説明しよう、という内容です。以下、だいたいの要約ですが、今回も図は省略します。「グローバルエントレインメント」モデルでのシミュレーション実験をいくつか行いました。体の一部をおしても何歩かよろけたあともとに戻ることや、斜面の傾斜に合わせ...
大域的引き込みモデルによる二足歩行:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』第2章メモ1
第Ⅱ章に入ります。図がたくさんあるんですが、もう面倒くさいので省略させてもらいます。自分の知ってるところもたくさんあって、そこもまた省略させてもらって気になるところだけ拾い上げていこうと思います。Ⅱ章 歩行における脳と環境の強結合1 グローバルエントレインメント生体は自分を取り巻く多様な環境の中で、どうやって適切な動作が取れるのか、というのが2章の主題みたいです。行動じゃなくて、歩行とかの動作が適切...