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ハイデガーの「存在と時間」はよくできた本で、素人の私でもそれなりに大筋の論旨を追うことができるんだけど、細かいところがモヤーッとして分からない。そこで分からないところを各論点として自分なりの理解を整理しておく。 論点1 現象は知覚対象か? ハイデガーは存在が現象だと言う...
理念の衣に覆い隠された生活世界:木田元『現象学』第3章メモ2
フッサールの後期思想の続きです。以下、だいたいの要約です。ヨーロッパ諸科学の危機とも呼べる状況は、学問についての実証主義的な考え方からきているとフッサールは考えています。ヨーロッパ的学問の真の理想は、それ以上遡ることのできない絶対的な洞察によって、諸学問の普遍的な統一体を実現することです。しかし近代科学においては、こうした原理的な根拠づけよりも、実用的な効果を追い、学の理想を失ってしまいました。そ...
フッサールはまず、明証の種類として「十全的明証」と「必当然的明証」を区別しているんだけど、この区別はたいへん重要で、違いが分からないと先験的現象学が分からないと言っても過言ではない。だいたいフッサールはワイエルシュトラスの助手をしていたぐらいのガチの数学者だったから、書き...
フッサールが現象学的還元後の本質世界を探索するとき、彼自身が言っているように、当面「必当然性」の及ぶ範囲を不問に付して、あたかも自然科学者が経験世界を探索するのと同様の「自然的明証」で探索すると述べている。 現象学でいう「地平」とは、意識対象は対象だけでなく常に対象より...
現象学の他我問題といえば、ああ、例の感情移入で説明するヤツね、としか思ってなかったんだけど、それは大いなる誤解であって、先験的現象学にとって他我は死活問題でもあるんだな。 先験的領域というバーチャル空間においては、経験的私の存在は判断中止されるんだけど、「かのような経験...
現象学と言えば意識中心主義だからオワコンであって、スピノザとは無関係と思われるかもしれない。だけど私見では一つ共通点がある。それは両者がともに意識(コギト)を「志向性」として捉えていることだ。スピノザの「デカルトの哲学原理」とフッサールの「デカルト的省察」は、ともにデカル...
現象学的還元により恢復される自然的態度:木田元『現象学』第3章メモ1
第Ⅲ章に入って、フッサールの後期思想についてです。後期において確立された現象学的還元に関する結論がいきなり来てて、重要そうなところを抜き出して終わりになりそうです。以下、だいたいの要約です。Ⅲ 生活世界の現象学 -フッサールの後期思想-フッサールは1916年以降、『イデーン』第一巻で確立したはずの超越論的現象学の構想を掘りかえし、反省を深めていきます。『イデーン』第一巻では現象学的還元と自然的態度について...
2章メモ最後です。以下、だいたいの要約です。フッサールに自信を与えたのは「現象学的還元」と思われます。認識する当の主体に真の意味で与えられていない対象や事態を「ある」と決めてかかる断定、こうした超越的断定の保留を、フッサールは「現象学的還元」と呼んでいます。現象学的還元は「形相的還元」と「超越論的還元」に区別されますが、ここでは超越論的還元について考えてみます。我々は我々の生きる世界を、さまざまな...
心理学主義および歴史主義に対比される現象学:木田元『現象学』第2章メモ2
引き続きフッサール『厳密学としての哲学』についてです。以下、だいたいの要約です。十九世紀の思想的動向のうち、自然主義が目指しているのは結局のところ方法的抽象にもとづく数学的な「精密性」です。ここでの「自然」とは「まず空間的時間的な物理存在であり、次いでその物理的なものに付随して変化するかぎりでの心理的存在である。」「当然そこでは、一方において意識の自然化が、他方においてはイデア的なものや実践的規範...
Ⅱ章に入ります。サブタイトルにフッサール成熟期とあって、後期は含まず中期の思想についてみたいです。以下、だいたいの要約です。Ⅱ 超越論的現象学の展開 -フッサール成熟期の思想-『論理学研究』公刊から論文『厳密学としての哲学』発表までのおよそ10年間は、彼の輝かしい経歴とは対照的に、彼にとっては失意の時期だったようです。一方この10年間は「かつて『論理学研究』で企てた「心理学主義批判」と「純粋論理学の現象学...
前回に続き、フッサールの『論理学研究』の背景についてで、第二巻での立場の変化についてです。以下、だいたいの要約です。第二巻の主題は「イデア的対象性(論理学的諸概念)と認識体験(思考作用)との相関関係、つまり論理学と心理学との関係」です。これは「イデア的諸対象がなんらかのかたちで不可分に結びつけられている心的諸体験についての記述的諸研究」のことで、一見かつての心理学主義への逆戻りに見えます。フッサー...
フッサールの『論理学研究』の背景:木田元『現象学』第1章メモ2
今回はフッサールの『論理学研究』の背景についてです。以下、だいたいの要約です。『算術の哲学』以降、フッサールの関心は数学から論理学へ移ったように見えます。当時、「数学を、数とか空間的延長といった特殊領域やさらには量的関係の領域からさえも開放し、それが適用される対象の内容とはかかわりなくいかなる対象にも適用しうる形式的で普遍的な学問たらしめようとする努力、いわば数学の形式化の努力」がペアノやフレーゲ...
フッサールの心理学主義的な最初の著作:木田元『現象学』第1章メモ1
第1章に入ります。フッサール初期の数学の哲学から現象学の提案までの経緯がまとめてあります。この辺りの経緯がまとめてある本は珍しいんじゃないでしょうか。自分が読んだフッサールの紹介の本ではだんとつでこの本が詳しいです。1 フッサールと時代の思想的状況1920年代のフッサールの授業の様子から始まっています。彼の授業は何度も彼の提唱した概念や立場の反省を反復しており、まったくといっていいほど話が進まないので...
本章の前に、当時の現象学を取り巻く環境だったり、この本の目的が序章としてまとめてあります。序章 現象学とは何かドイツからフランスに現象学が渡るときに、サルトルなど当時のフランスの青年たちに熱烈に歓迎されたそうで、日本でも1960年代あたりではそうだったそうです。現象学は「厳密な学としての哲学」を目指して出発したのに、ハイデガーやサルトルの名と結びついて実存哲学の不可欠な方法とみなされるようになったよう...
現象学 (岩波新書) [ 木田 元 ]価格:924円(2023/7/10 11:05時点)感想(1件)木田元の『現象学』のメモをとっていくことにします。 読んだのは10年前くらいでしょうか。手書きのメモが残ってて、何が何だかさっぱりだったのがこのブログのきっかけだったりします。すごくいい本を読んだという感慨は残ってるけど内容はよく覚えてません。まあこれから読み返すのだからその辺はもういいでしょう。ホームページの哲学ページに現象学...
フラクタル心理カウンセラーのサヤカです。土日と講習会でした。現象学図解レベル1です。難しい話ですが一色先生が自分の体験を交えて、分かりやすくお話ししてくれます。途中で質問タイムが十分あり、なんでも質問できます。私も質問をいくつかさせて頂きま
現代の哲学 (講談社学術文庫) [ 木田 元 ]価格:990円(2022/4/1 11:40時点)感想(0件) 木田元『現代の哲学』評価: 日本の現象学研究の第一人者、木田元による現代(1960ごろ)哲学の入門書です。木田元の最初の著作らしくて、「あとがき」にもあるようにかなりの筆の勢いで疾走感が通底して感じられます。木田元の著作なので、やはり現象学分野が一番詳細ではあるんですが、フロイトやソシュール、レヴィ=ストロー...