作家を目指しているわけではありませんが、いつか自分の書いた物語が本になってたくさんの人に読んで欲しいなと思っています。 好きなジャンルは、ミステリー、歴史小説、しっかりとした世界観があるファンタジー。
僕はファンタジー作品が好きだが、好きなファンタジー作品には共通点がある。 それは、深い知識とその作者ならではの新しい要素がきちんと折り合って、奥深い世界観が構築されているかということである。 例えばファンタジーと言えば魔法であり、火の魔法、雷の魔法、水の魔法、いろいろある。 でも単にそういう魔法があるというのではなく、例えばそこに陰陽五行説の考え方を組み入れると、その魔法体系がいっきにリアルに感じられる。 火は水に弱い、水は土に弱い、土は木に弱いと、まあ、そんな感じだが、そうした考え方はおそらく世界中に共通するんじゃないかと思う。 熱に関しても物理法則に基づけば、 「龍が吐いた真っ赤な炎は周囲…
書くことに定年はない。 70過ぎた方が新人賞を受賞することもあり、そういうニュースを聞くと大いに励みにも感じる。ぜんぜん焦る必要なんかなく、まだまだ時間はたっぷり残されているんだと思っている。 ただそういうこととは別に、やっぱり文学の歴史、いや、あらゆる分野において、新しいうねりを作っていくのは若者なんだと思う。 若い人の新しい感性、情熱が古くさい常識やら、固まり切ったしがらみを断ち切っていく。 そう言う意味で、僕は若い人の書く物語の方に興味がある。 興味というか、若い人には熱い物語を書いて欲しい。 激しい恋愛をし、友情を深め合い、理想に燃えて、挫折して、苦悩して、泣いて、笑って、怒って、叫ん…
以前、好きな時代と書きたい時代は違うみたいな話をしましたが、それと同様に、書きたいジャンルと読みたいジャンルの違いということを書いてみたいと思います。 僕が書きたいものは何度も取り上げているように、人間の叫び声が文章の中から聞こえてくるんじゃないかっていうぐらいの物語です。 当然、そういう物語が好きで読みもしますが、読者の立場となると、実は一番好きなのはミステリーです。それも、少しホラーなりオカルト要素が入ったもの。そういうのが凄く好きです。 映画の方が皆さん分かると思いますので、映画で言うと「セブン」とか。「エクソシスト3」という映画があります。僕はあんまり続編は好まないんですが、これは「エ…
【小説の書き方について考える】いつまでも心の中に残り続けるもの
「ぐりとぐら」という絵本がある。 その中で、ぐりとぐらがリュックを背負い、大きなフライパンを持って森の中でパンケーキをつくるという話がある。 大きなボールに卵と牛乳と小麦粉を入れて、持ってきた大きなフライパンで焼き上げるのだ。 そうするといい匂いが森中に漂ってきて動物たちが集まってくる。 みんな、どんな美味しい食べ物ができるのかと期待しながら待っている。 ようやく出来上がったパンケーキ。 まっ黄色くて、フライパンからあふれんばかりにふっくらして。 僕は今でもその絵を鮮明に覚えている。 大人になって、美味しいパンケーキやホットケーキもたくさん食べたが、やっぱり僕の中では、あのパンケーキ以上のもの…
最近、お笑いにはまっている。 一時、内輪ネタばっかりで盛り上がる風潮に飽き飽きして、全く見なくなっていたが、嫁さんと娘が「有吉の壁」という番組が好きで、毎回見せられるたびにはまってしまった。 この番組の何がいいって、よくある順繰りに出てきてコントや漫才披露っていうのではなく、毎回ロケ場所を変えてそこにあるもので笑わせるという芸人の臨機応変さがみられるところや、コンビ間のコラボにより新しい魅力が出てくるところ、いろんな企画があってその芸人の意外な面白さを感じられるところだ。 みんな面白いけど、とりわけチョコレートプラネットやシソンヌ、ジャングルポケット、パンサー、友近さんなどは本当に面白い。 こ…
「(省略)ぼくはただ自分の根本思想を信じているだけです。それはつまり、人間は自然の法則によって二つの層に大別されるということです。つまり低い層(凡人)と、これは自分と同じような子供を生むことだけをしごとにしているいわば材料であり、それから本来の人間、つまり自分の環境の中で《新しい言葉》を発言する天分か才能をもっている人々です。それを更に細分すれば、むろんきりがありませんが、二つの層の特徴はかなりはっきりしています。第一の層、つまり生殖材料は、一般的に言うと、保守的で、行儀がよく、言われるままに生活し、服従するのが好きな人々です。ぼくに言わせれば、彼らは服従するのが義務なのです、だってそれが彼ら…
書きたい時代というのがある。 でも、それは好きな時代とは少し違う。 どういうことかというと、例えば僕は例にもれず戦国時代が好きだ。 特に信長に憧れる。 幕末も好きだ。 新選組、特に土方歳三の大ファンだ。 でも、その時代を舞台に書きたいとはあまり思わない。 まあ、その時代はすでにたくさんの作家が書いていて名作も多いし、いまさら僕が書いてもなという気が起こってしまう。 というわけではないが、僕が書きたい時代として一番にあがるのは奈良飛鳥、平安時代だ。 どういうわけかこの時代に憧れる。 なんというか、豪奢な平安貴族がいる一方で道端に腐った死体が転がっているような妙なアンバランス。統治能力がまったく感…
昨日書いたテーマですが、ちょっと言葉足らずだったような気がするので、少し補足したいと思います。 昨日の文章の最後の方で、僕はこう書きました。 エロでも妄想でもざまあでも、そりゃどんな物語を書いたっていい。 でも少なくてもそんなものが、文学の潮流になどなって欲しくない。 だから僕は人間賛歌を書く。 ただのアマチュアがそんなもん書いたからどうなるんだ、そんなことをしてもエネルギーの無駄だろうと思うかもしれない。 それでも、僕は書きたい。 それは、わずかでも読んでもらい、人間の善性の向上に寄与したいという思いも確かにあることはある。 でもそればかりじゃない。 まず僕自身が、そういう風潮に戦いを挑みた…
僕が物語を書く理由の一つが、内面から湧き上がる怒りだということは、先日話したかもしれない。 不条理な社会や自分勝手な人間に対する凄まじいまでの怒りだ。 だが、物語を書く理由はそれだけではない。 もし、僕がそれだけを理由に書いたとしたら、僕の書く物語は、ただの暴力賛美小説か、それこそ今流行りのざまあみろ的な妄想小説となんら変わらないかもしれない。 でも僕はそんなものを書きたいとは思わない。 そんなものが本屋に堂々と並べられていることに嫌悪すら感じる。 日本人って、こんなに下劣になったんだろうかと感じる。 こんなものを日本を背負うべき若者たちが読んでいるのかと思うと悲しくてしょうがない。 僕が物語…
今日はカクヨムで書いている人にとって非常に関心の高い「注目の作品」コーナーへの掲載条件に関する考察をしてみたいと思います。 読者にとって唯一の導線といってもいい「注目の作品」コーナー。 ここに載る条件は、前日に★をもらうことというのが定説のようですが、カクヨムで1年ほど書いてきて、もう少し複雑な条件があるような気がしているので、今日は僕の仮説を述べてみたいと思います。 まず、カクヨムには通常のデスクトップ画面と、スマホアプリ用の画面があると思います。 通常の画面は、トップページにでかでかと注目の作品が11個並んでいるのは誰でも知っていると思います。とりわけ上の2つは大きいので相当インパクトあり…
昨日、ある方からこんなコメントを頂戴した。 ……世の中に山ほどあることから百個を選んでそのウチの一つを著者が面白そうだと思う。 世の中に山ほどあることから百個を選んでそのウチの一つを読者の一人が面白そうだと思う。 著者の面白そうと読者の面白そうが一致する確率は 1/100 X 1/100 = 1/10000 一万に一つ。…… 一万人いて一人にしか読まれないか。 だが、意外とそんなものかなと思った。 ベストセラーと呼ばれるものは、だいたい10万部くらいか。だが、それは宣伝の効果もかなりある。 大抵の新人作家の初版は5千部か、よほど大きいところなら1万部も刷るのか。 日本人の中で赤ちゃんや病気の方…
僕の中には鬼がいる。 その鬼は普段は出てこないが、自分勝手なやつや、理不尽なものを見ると腹の底からじわじわ昇ってきて、僕を凶暴なまでに一変させる。 そういう心に巣くう鬼が、自分に物語を書かせているような気がする。 おかしいだろ! こんなんで本当にいいのかよ! こんな腐った社会、ぶち壊した方がましだ! 振り返ってみると僕の書いた物語の根底には、こういう思いが必ずある。 せっかくなのではっきり言うが、僕は努力もしないで甘え切ってる奴が大嫌いだ。 人の悪口や愚痴ばかり言って、自分の力で前に進もうとしない奴も大嫌いだ。 現実を無視して、理想ばかり語る政治家や批評家もどきも大嫌いだ。 いろんな国の人と話…
★★★ Excellent!!! カクヨムビギナーの必読エッセイ カクヨムビギナーでPVの少なさに落ち込み、カクヨム辞めようかなと思っている人がいたら(数日前の私です)、まずこのエッセイを読むことをお勧めします。 カクヨム歴長めの方も勇気付けられる内容かもしれませんね。 個人的には、たくさん勇気と知恵をいただきました。作者のぶんちくさんに心からお礼を言いたいです。 昨日、ある方(Kさん)から、こんなレビューをいただきました。 なんでこんなPV少ないんだ、やめようかな…… みんなそう思ったことあると思います。僕も初めてもらったMさんからの応援マークがなかったら、やめていたと思います。 人間はずっ…
目的? どういう意味? って思うかもしれませんね。 でも、これって物凄く大事です。 つまり、あなたは何のためにカクヨムで書いているんですかってことです。 読んでもらうために書いているに決まっているじゃないか! みんなそういうでしょうね。 じゃあ、何人に読んでもらえば満足するんですか? 百人のフォロワーがつけば満足しますか、それとも千人ですか。 一万PVまでいけば満足ですか、十万までいかないとダメですか。 ★が100あれば満足ですか、それとも300は欲しいですか。 それはとめどない欲望の海です。 どこまでいってもキリはありません。 仕事の合間に物語を書くのが好きなだけなので、誰かに読んでもらえた…
一般文芸書いている人がカクヨムで読まれたいというなら、まあ、これに尽きるでしょう。 その前に、一つ大事なことを言っておきます。 いい作品を書けば読んでくれるだろうなどという甘い幻想は捨てなさい。 カクヨムでは良い作品を書いたところで基盤がなければ全く読まれません。 唯一カクヨムで何もしなくても読まれる可能性があるのは、エロラブコメと妄想系異世界ものだけです。つまり妄想好きな中高生のハートをがっちり掴んだ作品だけがガンガン読まれます。だって、そういう人がユーザーの圧倒的多数を占めているんだから。 じゃあ、一般文芸作家が読まれるためにはどうすればいいか。 同じく読んで欲しいと思ってる作者同士が仲間…
カクヨムを始めた直後は継続的に投稿した方がいいと以前に書いたと思うが、ストックがないならとにかく書くしかない。 ここで一つ忠告だが、いきなり長編を書くのはやめた方がいい。 長編は大変なエネルギーを要求されるし、読まれないときの心的ダメージは計り知れない。幸い僕はある程度読者を確保してから長編を書き始めたので、今連載中の長編はどれもフォローしてくれる人が結構いるが、これがフォロワー数0になって、PVまで0になったらさすがに心が折れると思う。小説なんて二度と書くかという気にすらなってしまうかもしれない。 そういうリスクがあるので、最初はとにかく短編を書くべきだ。 その際には、同題異話ということで、…
今日たまたま文芸ニュースを読んでいたら、芥川賞や直木賞作品よりも、本屋大賞受賞作品の方が圧倒的に売れるというような記事があって興味深く読んだ。 そもそも本屋大賞が創設されたきっかけの一つは、2002年に横山秀夫さんの書いた「半落ち」という作品が、圧倒的な読者支持を得ていたにも関わらず、直木賞を受賞することができなかったことらしい。横山さんは、この選考結果に納得がいかず、今後直木賞とは決別するとして大きな話題になったようだ。そして、同じくこの結果に納得できなかった書店員さんたちの思いが、本屋大賞を創ったそうだ。 本屋大賞が売れる理由は、自分たちが選んだ本だということで、当然、販売コーナーも目を引…
僕はカクヨムのユーザー層に対して一つの仮説を持っています。 カクヨムのユーザーは2種類に大別される。 書く人と書かないで読む人の2種類だ。 書く人というのは、それぞれいろいろな動機を持っているとは思うが、この連載で何度も取り上げているように、誰もが少なからず読まれたいという秘められた欲望を抱えている。 だから自分の作品を読んでくれる人、自分と交流している人の作品は読むが、そうでなければよほど自分にためになるか、共感できる作品でないと積極的に読むことは少ないんだろうと感じる。 もう一つのタイプ、すなわち書かないで読む人だが、僕はこの層の大半が10~30代だと感じる。 まあ、もっとぶっちゃけて言え…
「犬神家の一族」、皆さんも見たことはなくても聞いたことはあるでしょう。 この作品は何回もリメイクされいますが、もし見るなら、1976年の市川崑監督の作品が断トツでトップです。 自分でも小説まがいのものを書いていると、絶世の美女とか貫禄がある女性というのをイメージするときがありますが、絶世の美女は「犬神家の一族」の野々宮珠代こと島田陽子さん、貫禄ある女性は犬神松子こと高峰三枝子さんが真っ先に頭に浮かんできます。 それくらい、この映画のこの二人の存在感は圧倒的で、主人公の石坂浩二さんがかすんでしまうくらい素晴らしい演技だと思います。 島田陽子さんの美しさと言ったら、ほとんど空前絶後です。こんな人が…
今、執筆中の長編で僕の中で課題にしていることがある。それはキャラの個性を書き分けられるかということだ。 人にはいろいろな個性がある。 勇敢、賢い、優しい、元気、そういういわゆる誰からも好かれるような性格もあるが、頑固、臆病、ずる賢い、自分勝手、傲慢というようなどちらかと言えばマイナスの性格もある。 僕はこの長編で6人の少年少女をメインキャラとして扱っているが、この6人にも当然性格の違いがあり、その違いをしっかりと書き分けたいと思っているのだ。 さらに付け加えていけば、主人公と敵役というポジションすら無くしてしまいたい。どちらが正しくて、どちらが悪かということすら固定せずそれぞれのキャラたちを書…
長編をどこで終わらせるかということは、いろいろ議論があるだろう。 ちゃんと終わりを見据えているのであれば何も問題ないが、マンネリになってしまうことも少なくない。 たとえば、北斗の拳という漫画がある。 あくまでも僕個人の意見だが、あれはやっぱりラオウの死で終わった方が良かったのではないかと思う。 カイオウ編がだめだと言うのではない。ただ、ラオウの死までがあまりに完璧すぎて、そこで終わればまさに伝説となっただろうなと思うのだ。 だがそんなことを思いつつ、カイオウ編が始まったとき、まだ続くんだと喜んだ記憶も自分の中には確かにあったのだ。 つまり僕の言っていることは、全部終わったあとにあそこで終わって…
今、僕が書いている物語は群像劇的な性格を持たせている。 メインキャラは確かにいるのだが、そのキャラの視点だけでない別なキャラの視点での世界観を描きたいと思っているからだ。 だがそういう群像劇を成立させるためには、主人公以外のキャラにもメインキャラに匹敵するくらいの存在感と存在理由を与える必要がある。 そういう書き方はある意味でかなり難しい作法であることは確かだと思う。 一人の人生を書くのですら大変なのに、複数の人間のドラマを並行的に書かなければならないのだから。だが上手くいけば、それぞれのキャラが一つの楽器のように音を奏ではじめ、まさにオーケストラのような重奏的な調べを生み出し始める。 複数の…
小説のネタというのは至る所に転がっているが、やはり自分が経験したことが一番リアルに書きやすい。 でも、そんな小説のネタになるような体験なんてしてないしなあという人がいるかもしれないが、それは物事を表層的にしか見ないからそういう発想になるんだと思う。 以前、自分の恋愛体験をもとに女は謎だというテーマのエッセイを書いたが、意外と好評だったようで、男は謎だという逆パターンを書かれた書き手さんもいた。やはり恋愛ものは多かれ少なかれ万人が興味を持つテーマだと思うし、男と女が織りなす最高の駆け引きであり、人間ドラマの縮図だと思う。どんな恋愛だって、そこには人と人との心の交錯があり、ネタにならないはずがない…
今日も聖書ネタから。 僕が聖書に興味を持ち始めた最初のきっかけは、たぶん20世紀の終わりのころだったと思います。その頃、世界が滅びるとかそんな本がたくさん出てましたが(ノストラダムスの大予言とか日本沈没とか)、その中に聖書の黙示録があったのです。 僕は黙示録の世界に引き込まれました。 七つのラッパを吹く天使、四人の騎士、龍(サタン)、666の獣、バビロンの大淫婦、新しい天と地…… 最初は、こうした謎めいた言葉や世界観に引き込まれましたが、今は、まさに現代と黙示録の世界との対比という視点で関心が深まっています。 四人の騎士がというものがいます。 黙示録には、こう書かれています。 「小羊がその七つ…
国破れて山河在り 城春しろはるにして草木深し 時に感じて花にも涙を濺そそぎ 別れを恨んで鳥にも心を驚かす 峰火ほうか三月に連なり 家書萬金ばんきんに抵あたる 白頭はくとう掻かいて更に短かし 渾すべて簪しんに勝たえざらんと欲す 引用:『春望』(作:杜甫) この有名な詩は中学の時、僕が初めて学んだものであり、いまだに最も心惹かれる漢詩です。 戦により荒廃した街並み、しかし山や川は何も変わらぬようにそこにあり、春を前に草花もいよいよ深く生い茂っている。 戦争を知らない僕ですら、ありありとその情景を感じられ、おそらく戦争に負けて帰ってきた日本兵も、焼け野原と化した故郷とともに変わらぬ姿で聳える山々や、…
聖書は面白い話の宝庫なので、今日も少し取り上げてみたいと思います。 創世記にカインとアベルという兄弟が出てきます。この二人はエデンを追放されたアダムとイブが生んだ最初の子どもたちです。 このうちカインは畑を耕し、アベルは羊を飼うものとなります。ところが神はアベルの捧げものは受け取ったのにカインの捧げものには見向きもしません。これに腹を立てたカインは野原にアベルを呼び出して、殺してしまいます。 そして神が「アベルはどこにいるか?」とカインに尋ねると、カインは「知りません。私は弟の見張り番なのですか」と神に対して嘘をつきます。 神はこの罪に対して、カインを荒れ野に追放するのです。 つまりカインは人…
僕は別にキリスト教信者でもないし、聖書に造詣があるわけでもありませんが、意外と僕の書く作品には聖書を題材にしたものが多いです。 僕が聖書に惹かれるのは神と呼ばれる存在にあまりに理不尽な点が多いことと、それに振り回される人間たちのドラマが物凄く魅力的だからです。 例えば、アブラハムという人がいます。 アブラハムはいわばユダヤ人の始祖みたいな人で、神はアブラハムに約束の地を与え、お前の子孫を星の数ほど増やそうと言われた。 ところがそう言っているにも関わらず、神はアブラハムに試練を与えます。 ある日、神の声が聞こえて、大事な一人息子のイサクを神への捧げものとして、燔祭(いけにえの動物を祭壇上で焼き殺…
今、書き終わった作品の推敲に時間をかけているのですが本当に難しいです。改めて見ると、だめなところがたくさんありすぎて嫌になります。 今日はどういうところが駄目なのか、少し一般化してご紹介したいと思います。 その一 接続詞が多すぎる これはついつい使っちゃんですが、文芸作品として見たときにほんと余計。「そして」なんて、相当省きました。 結局、話し言葉の感覚で地の文で書いちゃうから、なんとなく書いちゃうんですが、改めて見ると邪魔な感じが物凄くあります。 その二 意味の分からない喩えを使っている 作家マニュアルには陳腐な形容詞を使うななどとありますけど、それを真に受けて、意味不明な喩えをすると読みに…
小説を書くときにWeb向けと紙向けとでは全然違います。 特に横書きと縦書きの差というのは歴然としてあります。 このことについても少し旧エッセイに書いたのでご紹介します。 最近、書き方を紙向けの仕様に戻している。 一時、WEBで読みやすいように敢えて間隔をあけたり、段落を早めに変えたりしたが、やめた。 なので皆さんが僕の作品を見たときに、うわっ、字いっぱいで見ずらいっていう方もいるだろう。でもまあ、それは勘弁してくださいという言うほかはない。 いずれどこかの新人賞に出そうするならば、やはり縦書きの作品として形になるような体裁を取りたいと思うし、そういう表現にしたいと思っているからだ。 もちろんW…
昨日女性キャラのことを書いたので、今日は魅力的な脇役について考えてみます。 面白いエンタメ小説の鉄則として、主人公と同じくらい、いや、それ以上に魅力的な脇役が存在するというのがあります。 漫画の方が分かりやすいので適当に並べてみますが、 『機動戦士ガンダム』の赤い彗星のシャア『北斗の拳』の世紀末覇者ラオウ『ジョジョの奇妙な冒険』の悪の帝王ディオ『進撃の巨人』の人類最強の兵士リヴァイ 僕がちょっと思いついただけでもこれだけ出てきますが、皆さんの中にも、いやあいつだ! こいつもいるぞ! と百家争鳴、山のように出てくるでしょう。 ルパン三世などはルパンの魅力もさることながら、次元大介、石川五右衛門、…
昨日女性のことを書いたので、関連して、女性キャラの書き方について考えてみたいと思います。 僕は男です。 当然、女性の心理などはまったく分かりません。 女性の心理が分かっていたら、あんなにふられることもなかったろうな……そんなことはどうでもいい。 とにかく、僕は男なので女性キャラを書くのにいつも難しさを感じます。 長編では、だいたいヒロイン的なキャラを配置することが多いのですが、それは、人生において男と女の関係というものは切っても切れないし、それが抜け落ちたものは人間ドラマとして完全ではないと思っているからです。 まあ、常に恋愛に発展させるわけではありませんが、男として、女としての感情はなるべく…
皆さんは、どういう方に読んでもらおうとして書いているでしょうか。 これは意識してない人もいるかもしれませんが、実は、うっすらとは心の中にあるはずだと思うのです。 女性、男性、学生、中年、エロい人、妄想好きなWeb住民…… 僕が最初想定していたのは若者でした。 僕が書くのはほとんどが人生ドラマであり、その中で一番言いたいのは、夢や希望を持って欲しい、困難なことであっても挑戦する気概を忘れて欲しくない、生きることはやっぱり素晴らしいんだということをまさに現代の若者たちにぶつけたいと思っているからです。 ただ、カクヨムで書き始めてから感じてきたのは、意外と女性の方が読んでくれているような気がするので…
僕は、常に何かにはまってないとだめなタイプで、しかも、はまった以上は結構突き詰めるまで頑張るタイプなんです。 学生時代はギター、麻雀、そして狂ったようにビリヤードにはまりましたし、仕事についてからは、サッカー、マラソン、そして今はまっているのが小説を書くことなんです。 そして、自分がはまったこと全てに共通するのは、自分が納得するまでとことんやるってことなんです。負けたからとか、上手くできないとか、そういう理由では辞めない。とにかく、頑張って練習する。 そうしているうちに、自分の器が見えてくるんですよね。 自分はこのくらいかなと。 そこまでたどり着いて、ようやく納得するんです。まあ、このくらいで…
面白い小説、読まれる小説に欠かせない要素に「謎」があります。 ミステリーにとどまらず、現代ドラマであれ、ファンタジーであれ、恋愛であれ、謎がなくては面白くありません。 僕たちが小説を読む理由はいろいろあると思いますが、知的好奇心を満たしてくれるという要素は非常に大きいと感じます。 知的好奇心を満たす小説――つまり謎が解き明かされていく面白さを持った小説ということです。 たとえば恋愛で考えてみましょう。 ある女性と男性がいたとして、その女性には何か謎めいたところがある。そんな女性に男性は惹かれていく。でも、どうしてもその女性は、男性の想いを受け取ってくれない。 いったい、彼女が抱えているものは何…
カクヨムで楽しむためには、何人かの仲間が必要ですよと以前書きました。 でも、自分の作品のレベルがどのくらいなのかを知るには、別な人たちのことを考える必要があります。 それは、読み専門のユーザーさんのことです。 カクヨムである程度経験を積んでくると、ペンネームなどつけないIDアカウント丸出しのユーザーさんが見てくれるようになります。 この人たちは、純粋に小説を読むためだけにカクヨムに参加している方々で、まあ簡単に言えば、この人たちにどれだけ読まれるかが、書籍化されるかどうかの一つの判断基準になるんだと思います。 もちろんジャンルによって、読み専門のユーザーの絶対数は全然違います。 おそらく異世界…
本が売れるか売れないかというのは、作品の出来よりも時代のニーズに沿ったものかどうかということが往々にあります。 ある意味、生前は全然売れなかったけど、死後に評価されるなんてことは文学だけでなく、あらゆる分野でざらにあることでしょう。 あのゴッホが書いた絵だって、生前中に売れたのはたった一枚ですよ! 近代文学の歴史でも、写実主義、ロマン派、私小説、戦後派など、時代時代によっていろいろな文学が一世を風靡してきました。 結局、そういう流行ってのは今でもあって、時代を反映したものがやっぱり売れるんですよね。 そういう意味では、現代の異世界転生やハーレム系ラブコメの人気なんてのは、現代の流行ということな…
初めに オチ 一話目の重要性 キャラクターの重要性 ストーリーとテーマ 風景描写 ハッピーエンドとバッドエンド 感動 B6ノート 魅力的な世界観 終わりに 初めに 小説を書くということは、自分自身の中にあるものを絞り出すことだと思う。だから、自分の中にないものは書けない。誰かの真似をして書き始めても、絶対に途中で筆が止まる。 自分の中にあるもの、だが決してそれは特別なものである必要はない。特別な体験など何も必要ない。肝心なことは、自分が何を感じ、どう伝えるかだ。 そうは言っても、小説という枠組みの中で表現する以上、小説を書くための一定の作法は知らなければならない。 視点や人称、言葉の重なりの回…
僕がお金払って小説買うかどうかを決める大きな要素の一つに、その作品又は作者に魅力的な世界観があるかどうかということがあります。 魅力的な世界観? 首を傾げる人もいるかもしれないし、これは僕しか思ってないかもしれないので、少し説明が必要かもしれません。 小説とはいわば作者が創造する世界です。 つまり作者と言うのはその小説を支配する神であり創造主でもあります。 だから小説には、その作者のこれまで培ってきた経験、知識、そして信念や想いが凝縮されているはずだと思うのです。 そうしたものが全て注ぎ込まれているのが小説だと思うのです。 当然そこには作者の個性が滲み出てきます。 成就されない恋愛を好む作者。…
僕はいつもB6のノートを持ち歩いています。 リング綴で、しかもリングの輪の中に三色ボールペンをつっこめるくらいリングが大きな奴です。 そこに、小説のアイデアやら場面やら思いついたことをぐちゃぐちゃと書いています。 なんですが、とても他の人が読めるような代物ではありません。個人的な話で恐縮ですが、僕は左利きであまり字が上手じゃありません。しかも、速記するので、何が書いてあるのか自分でも読めないときがあります。 ただ、大事なところはぐるぐると丸をつけたり、赤字で書いたりしているので、おぼろげながら、ああそうだったなと思い出せます。 いま、書いている長編も、そんなB6ノートから生まれました。 ちらっ…
カクヨムに小説を投稿する皆さんは、いろいろな動機があるんでしょうね。 昔から物語を作るのが好きだった、単なる気晴らしに、誰にも言えない思いを吐き出したいんだ、いやいやとにかく作家になりたいんだ――なんだっていんです。創作とは人間の持つ欲求の一つである想像力の発露ですから、それだけで目的は果たされているんです。 ところが、人には評価されたい、承認されたいというこれまた困った欲求があるんですよね。これが抑えきれないと、読まれたい、★が欲しい、と心を焦がすことになってしまいます。 僕が思うに、承認されたい、評価されたいという気持ちは誰だって絶対にあるし、それもまた人間の欲求であるから無理に抑える必要…
僕は物凄く涙もろいです。 感動すると、すぐに目頭が熱くなってしまいます。 一度泣いた映画は、何度見ても同じ場面で涙が溢れそうになります。 そんな僕は、自分の書いた物語でも泣いてしまうのです。 その場面を読み返すと、自分が書いたはずなのに涙が出てくるのです。 そういう場面は、実は書いてる最中から目頭が熱くなって、思わず涙が出ることが多々あるのです。 今執筆中の長編があるんですが、書いていたら思わず涙が出てしまい、ティッシュで目頭を拭う羽目になってしまいました。 なにやってんだと笑われそうですが、実は僕にはどうしても譲れない一つの信念があるんです。 そんなことを旧エッセイに書いたので、ご紹介します…
小説を書く時間って、皆さんいつなんでしょう。 朝書く人もいるでしょうし、睡眠時間を削って書いている人もいるでしょう。週末に鬼のようになって書いている人もいるでしょう。 まあ、それはその人が一番書きやすい方法で書けばいいと思います。 僕は仕事もあるので、書くのは朝方、だいたい五時から七時くらいまでが多いです。夜は一日の疲れもあるし、早く酒を飲みたいので、ほとんど書いたことがないです。 土日も意外とおんなじで、日中はいろいろあって、あんまり書きません。 じゃあ、朝のその時間はよほど根詰めて書いてるんだろうと思われるかもしれませんが、そうでもなく意外とすらすら書いています。 実は僕は、次の朝に書くべ…
カクヨムにはキャッチコピーがありますね。 色も選べて、あの題名よりでかでかと表示される奴です。 ところが、キャッチコピーをつけない人がいます。 僕にはそれが信じられません。 そのことについても旧エッセイに書いたので、それを紹介します。 カクヨムではキャッチコピーの効果は大きい。 たぶんカクヨムさんは、作品を書くことに加えてセルフプロデュースも作者にとって必要なことと考えているのだろう。なので題名よりでかでかと表示される。 そんなことなので、皆、なんとかして人を惹きつけるものをと頭を悩ます。 そんな中、キャッチコピーを付けない作品(人)がある(いる)。 僕はその心理が理解できない。 キャッチコピ…
僕は基本的にはハッピーエンドの物語が好きです。 特に心が弱ると、エネルギーを補充するかのようにハッピーエンドの物語を求めてしまいます。 だからではありませんが、僕はジブリシリーズの大ファンです。 特に初期の作品は何十回見たか数えきれません。 疲れているときは、「となりのトトロ」か「魔女の宅急便」 力をもらいたいときは、「天空の城 ラピュタ」か「もののけ姫」 のんびりしたいときは、「紅の豚」か「耳をすませば」 あと、純粋なジブリではありませんが、宮崎駿作品のルパン三世の「カリオストロの城」も大のお気に入りです。 でも僕が求める、いいハッピーエンドの物語って、主人公が苦しまないとダメなんですよね。…
小説を書く上で風景描写は大事な要素ですが、実は僕は風景描写が苦手です。 そんなことも旧エッセイに書いたので、ちょっと拝借します。 自分でいうのもなんですが、僕は会話文は結構、サクサク書けます。反面、物凄い苦労するのが風景描写です。 全く詩的センスがなく、風景描写を二、三行書くだけで、一時間以上かかることがあります。 なので時折トレーニングのつもりで、目の前の風景を口に出して表現することがありますが、さっぱり上手になりません。 ほんと、詩や俳句を上手に書ける方がうらやましいです。 そんなふうなので、最近では風景描写は諦めて、ドストエフスキー流に心理描写メインで書こうかななどと不埒なことを考えてま…
カクヨムでは、小説を投稿する際にジャンルを選択する必要があります。 皆さん、どう決めてます。 意外とそれの影響って大きいんですよね。 これも、以前のエッセイで書いたことを少し引用してみます。 おそらく、皆さんも新しい作品を書いてジャンルを選ぶときに幾分か悩むことでしょう。 ジャンル選択の影響は意外と大きい。 ミステリーなど、一回★をもらうだけで、一週間近くトップ画面に食い込める。これは自分の実体験だ。 現代ドラマも狙い目だが、同時期に強力な作品があると、トップに食い込むのは難しい。 異世界ファンタジーやラブコメなどは僕が語るまでもなく、★が千を超える作品が、トップ100の中にうようよしているの…
僕が考える面白い小説の要素の一つは、起伏のあるしっかりとしたストーリー構成です。 ただ、これはいろいろな書き方があると思います。人によっては全部の場面をあらかじめ考えてから書く人もいるし、とにかく書き始めて筆の勢いに任せていく人もいるらしい。そういう人はラストもよく分かってないこともあるそうです。純文学だと後者でもよさそうな気もしますが、エンタメではそれはかなり危ないでしょう。 僕はエンタメ系の作品が多いので、一応は、ある程度のプロットを決めてから書きます。 でも、それはかなりアバウトです。本当にアバウト。 前回、キャラになり切ると書きましたが、キャラがプロットの方に進んでいかないこともままあ…
今回はキャラクターについて考えてみたい。 物語を作るにあたって、魅力あるキャラクターができると、それだけでその物語は輝きを増します。 極端な話、面白いストーリーだけどキャラがイマイチというのと、ストーリーは平凡だけどキャラが立ってるとなれば、断然後者の方が読まれると思う。 それじゃ、魅力あるキャラクターとはどんなものだということになるが、まずは個性があるということが第一条件になるでしょう。 つまり、読者の頭にありありと想像できるくらい、分かりやすいキャラということです。 ここで勘違いしないで欲しいのが、例えば、学園一の美少女とか、イケメン高校生などというのは全く個性にはならないということです。…
小説投稿サイトで連載作品を投稿すると、絶対面白いのにと自信があるのに、最初のつかみが悪くて、読んでもらえないことがままあります。 これはWeb小説全般に言えるんじゃないかと思うんですが、一話目でその作品を読むかどうか決める人って結構いるんじゃないでしょうか。 新人賞の一次選考などでも、最初の10枚でだいたい合否が決まるらしいです。原稿用紙10枚と言えば3000から3500字程度。WEB小説ではだいたい一話分に相当します。 実はWEB小説では、このくらいの長さが大きな意味を持っています。なぜなら、WEB小説を読む大半の人は、通勤時間の合間に、ランチ後のひと時に、授業で先生の目を盗んで(おいおい……
今日からは少し、面白い小説とは何かみたいなことを考えてみたいと思います。 ただ僕はプロの作家でもなんでもないし、文章関係の仕事をしているわけでもないので、あくまでも読者の視点に立って、論じてみたいと思います。 面白い小説、読み応えのある小説にはいくつか共通する要素がありますが、その中に僕が大事だと思う要素としてオチというのがあります。 オチ? と思われる方のために、僕のいうオチを少し説明したいと思いますが、昔書いたエッセイにその部分を語ったものがありますので、それを紹介したいと思います。 どんな小説にもオチが必要だ。 そう言うことを言うと、いや、純文学にオチなんて必要ないという人がいるかもしれ…
初めに カクヨム体験記 1 読まれない 2 初めての★、初めてのコメント、初めてのレビュー 3 二作目を投稿 4 承認欲求の恐ろしさ 5 『SEX』 6 ライブで書く楽しさ 7 長編執筆の大変さ 8 ロイヤリティプログラム 9 カクヨムコンテスト 初心者の戦略 10 目的の明確化と取るべき手段 11 ★の意味 終わりに 初めに カクヨムという小説投稿サイトがある。 僕はかつてそこで小説を書いて投稿していたことがある。 そこで過ごした時間は、僕にとってはかけがえのない時間だった。 同じ趣味を持つ人たちと出会い、交流し、作品を読み合い、自分の作品のレベルがいったいどれくらいのものなのかをある程度知…
私はこれでカクヨムやめました 前回は何人か気の合う仲間を作ろうという話をしました。 でも、じゃいったい何人作ればいいんだという人がいるかもしれません。 僕はこう答えます。そんな人が一人でもいればそれで十分だと。 もっと、はっきり言います。一人作るだけでも本当に大変なんですよと。 数を増やすことに目がいってるとしたら、あなたの目的はもう変わっています。それは、自分に都合の良い人を増やしたいというだけになっています。 そんなのは相手に絶対に伝わります。誰だって、そんな人と深い付き合いをしたいとは思わないでしょう。 でも、一人でもそういう人ができたとしたら、不思議ですけど、また一人、また一人となぜか…
これまで生きてきた中で触れたたくさんの小説、詩歌、随筆。 その中で、僕の人生に大きな影響を与えた、どうしても忘れられない本、心に残る言葉や文章があります。 今回、そんな言葉たちを紹介していきたいと思います。 小説(日本) 『蜘蛛の糸』(著:芥川龍之介) 『人間失格』(著:太宰治) 『破戒』(著:島崎藤村) 『門』(著:夏目漱石) 『かのように』(著:森鴎外) 『なめとこ山の熊』(著:宮沢賢治) 『悟浄出世』(著:中島敦) 『鬼平犯科帳(七 寒月六間掘)』(著:池波正太郎) 小説(世界) 『カラマーゾフの兄弟』(著:ドストエフスキー 訳:江川卓) 『ツァラトゥストラはこう言った』(著:ニーチェ …
今回からは、カクヨムで読まれるためのテクニックについていくつか感じたことを綴っていきます。 私はこれでカクヨムやめました 前回までで僕がカクヨムでどういう経緯をたどってきたか、皆さんよくお分かりのことと思います。 ここからは、僕が感じたカクヨムライフのアドバイスというか、創作論みたいなものをちょこちょこ書いていこうかと思いますので、もし興味があれば引き続き、よろしくお願いします。 さて、お前の体験談はよく分かった。それよりも最初はどうしたらいいんだという人がいるかもしれません。 それに対する答えは、あなたがカクヨムで何を求めているかによります。 もしあなたが作家を目指している、とにかく書籍化し…
私はこれでカクヨムやめました ロイヤリティプログラムから始まった変化に対して、幾ばくかの不信感は生まれつつありましたが、それでも僕はまだカクヨムが好きでした。それはひとえに、仲良くしてもらっている人たちとの交流によるものでした。ある意味それはSNS的といってもいいかもしれません。 そのときの気持ちを書いたものも旧エッセイにありますので、ご紹介します。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ カクヨムって、ある意味SNS的だと思う。 それを良いと思う人もいれば、面倒だと思う人もいるだろう。 単に、小説を読んで欲しいだけなんだ! と言う人もたくさんいると思う。 それは、全然否定しない。僕も最初そうだった。 だけ…
カクヨムライフを満喫していたその頃、カクヨムに新たな風が吹き始め、僕にも大きな影響を及ぼし始めます…… 私はこれでカクヨムやめました 結局、僕は読者の支えに助けられて、再び書き始めることとしました。 そして、少し新しいことにも挑戦してみようと、現代ドラマばっかりじゃなくて、昔話風の短編やエッセイ、パロディなんかも書いてみたのです。 特にエッセイでは今までコメントでしか会話できなかった人たちとかなり親しくお付き合いさせていただいて、本当に楽しい日々を送っていました。 そんな中、カクヨムに大きな変化が生まれようとしていました。 ロイヤリティプログラム*1。の開始でした。 そして、いざそれが始まると…
『カクヨムの天使』、『SEX』、『42.195キロ』と立て続けに短編を投稿し、たくさんの評価をもらった僕は調子に乗って、新たな試みとして長編執筆に挑むことにしました。ところが…… 私はこれでカクヨムやめました ここまで、手持ち作と思い付き短編で予想もしなかった反響を得た僕は、今度は長編を書いてみようかと思い立ち、『42.195キロ』を書き終えた翌日から、考えなしに新しい新作長編『鎮魂の唄』を書き始めてしまいました。 ですが、プロットだけ決めて適当に書くようになっていた僕は、この物語を書くのに物凄い苦労をするはめになったのです。 そして、小説を書くのはやめようとさえ思うようになってしまったのでし…
『SEX』でカクヨムの中に確固たる地位を築いた僕は、新たな作品へと取り掛かります…… 私はこれでカクヨムやめました 『SEX』を公開して、曲がりながりにも、月間一位という勲章を得ることになった僕は自信がついてきました。 自分の書く物語は見てもらえるんだ、それなりに評価してもらえるんだという自信でした。 それは、もう小説を書くのなんかやめようかと思っていた自分にとっては物凄く大きな変化でした。 そしてもう一つ、作品を書くことに対して、それほど構えることがなくなりました。 最初の頃は、最初から最後まで書ききってから出さないと、それでもここが違うんじゃないか、この表現でいいだろうかと、ずっと悩んだも…
今日もカクヨム体験録の続きです。 『カクヨムの天使』という作品で、信じられないような★をもらった僕ですが、★への欲求は際限なく大きくなっていきます…… 私はこれでカクヨムやめました 『カクヨムの天使』は、大好評で毎日のように★が入り、いつの間にか週間ランキング一位になっていました。 そして、その頃僕は完全にカクヨム中毒になっていたのです。 暇を見つけては、カクヨムのトップ画面を見て、通知ボタンが赤く光っているかどうか確認するのが癖になっていました。 だが当然、勢いは落ちます。 トップ画面を見て、通知ボタンが赤く光っている頻度はじわじわと落ちていきました。 それが僕には耐えられませんでした。 あ…
今日も引き続き、カクヨム体験録です。 カクヨムでのスタートダッシュに成功した僕ですが、次第に僕は承認欲求に苛まれるようになります…… 私はこれでカクヨムやめました 2作を投稿し終え、思いもかけぬ反応に僕は完全に有頂天になっていました。 それとともに、僕の中にもっと評価されたい、もっと読んでもらいたいという凄まじい承認欲求の渦が巻き起こってきました。しかし僕に残された作品は残り一作だけ。しかもそれはある賞に応募中であり、結果が出るまでは公開することができません。 どうすることもできない僕は、人の作品を見てハートマークつけたり、★をつけたりしたが、それはひとえに自分の作品を見てもらいたい、たぶん、…
【カクヨム執筆体験録 ③】調子に乗った僕は、すかさず二作目を投稿
今日も、カクヨムでの体験記をお届けします。 順調すぎるカクヨムライフ、僕はすっかりカクヨムの虜になっていきます。 私はこれでカクヨムやめました さて、一作目の『田舎暮らし』を完結した僕は、間髪おかず手持ち作品の二作目の『閻魔の裁定』の投稿を始めました。 これは、原稿用紙100枚程度の物語で、まあ、公募でよくある長さの作品ですが、これも19話に分けて、同じように毎日毎朝投稿したんです。 やっぱり続けざまということで関心をもってもらえたのか、その日のうちに、一作目の『田舎暮らし』にハートマークや★をつけてくれた人が見てくれたみたいで、PV0とか1なんてことにはなりませんでした。 そして、さっそくそ…
【カクヨム執筆体験録 ②】初めての★、初めてのコメント、初めてのレビュー
昨日から連載を開始した、過去にカクヨムという小説投稿サイトで書いたエッセイの続きになります。 初めてハートをもらって有頂天になった僕はいよいよカクヨムの世界にのめりこんでいくことになります。 私はこれでカクヨムやめました 皆さん、★をもらったら、凄くうれしいですよね。僕も『田舎暮らし』という短編を掲載し始めて6日目(6話目)のこと、とうとう初の★をいただいたのです!(初めて★をいただいたのも、一番最初にハートマークをいただいたMさんからでした。ありがとうございます、一生忘れません!) その翌日のことでした。またまたびっくりしたことがありました。 なんと初めて、応援コメントなるものが入っていたの…
カクヨムという小説投稿サイトがある。 僕はかつてそこで小説を書いて投稿していたことがある。 そこで過ごした時間は、僕にとってはかけがえのない時間だった。 同じ趣味を持つ人たちと出会い、交流し、作品を読み合い、自分の作品がいったいどれくらいのものなのかをある程度知ることができた。 書くことが楽しくて、交流することが楽しくて、日に何度もサイトを訪れたものだった。 そうした時間を過ごすうち、物語を書くということが自分にとって最も夢中になれる、最も心地よい時間であることに気づき、ついに本気で書くことを決意し、仲間たちに別れを告げて、カクヨムを卒業した。 そういう意味においては、カクヨムというサイトには…
3月は小説を書いているアマチュア作家にとって、結構大事な月だ。 文藝賞、小説すばる新人賞、すばる文学賞、新潮新人賞、新潮ミステリー大賞、いわゆる大手出版社の新人賞が目白押しだからだ。 僕は、これらの新人賞に出したことはないが、個人的に新潮社と集英社さんに興味があるので、まだどちらに出すかは決めてないが、中編程度の小説を書いている。 プロットは既にできており、今のところ原稿用紙100枚くらいまで書いた。おそらく150枚くらいの物語になるかなという感じだ。 個人的にはまずまずかなと思っているが、新人賞は新しさがないと受賞までいかないそうなので、そこがポイントかと思う。 この点はいろいろと思うところ…
三界の狂人は狂せることを知らず 四生の盲者は盲なることを識らず 生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く 死に死に死に死んで死の終りに冥くらし 引用:『秘蔵宝鑰』(著:空海) この文章、非常に印象的なフレーズで、一度読んだら忘れられないんじゃないだろうか。 空海和尚は密教の祖というだけでなく、筆や歌もよくし、文章にも通じた当代きっての才人であり、なんと日本初の小説ではないかと個人的に思っている三教指帰さんごうしいきという書物までも書いているが、この文章を見ると、改めて空海の凄さ、人を惹きつけてやまないその言葉の魅力に圧倒させられる。 人というのは、自分たちがどこから生まれたのかも知らず、自分た…
心に残る言葉 『I Have a Dream』(演説:マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)より
I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.I have a dream that one day even the state of Mississippi, a state sweltering with the heat of injustice, sweltering wi…
臣亮りょう言す。 先帝創業未だ半ばならずし、中道に崩殂せり。 今 天下三分して、益州疲弊す。 此れ誠に危急存亡の秋ときなり。 然れども侍衛の臣、内に懈おこたらず、 忠志の士、身を外に亡わするるは、 蓋し先帝の殊遇を追いて、之を陛下に報いたてまつらんと欲すればなり。 誠に宜しく聖聴を開張して、以て先帝の遺徳を光おおいにし、 志士の気を恢おおいにしたまふべし 。 宜しく妄りに自ら菲薄し、喩えを引き義を失いて、 以て忠諫の路を塞ぎたまふべからざるなり。 宮中府中は、倶もとに一体為たり、 臧否ぞうひを陟罰ちょくばつして、宜しく異同あるべからず。 若し姦を作なし科とがを犯し、及び忠善を為す者有らば、 宜…
やまとうたは、人の心を種として、万よろずの言ことの葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざ繁しげきものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり。 花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける。 力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神きしんをもあはれと思はせ、男女の中をも和らげ、猛たけき武士の心をも慰むるは歌なり。 引用:『古今和歌集仮名序』(著:紀貫之) 古今和歌集。日本初の勅撰和歌集として紀貫之らによって編纂された和歌の書。 ここには、当時の優れた歌人たちが詠んだ歌が集められており、学校でも習うのでそのいくつかはご存じのこと…
お釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっとみていらっしゃいましたが、やがて犍陀多かんだたが血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうなお顔をなさりながら、またぶらぶらお歩きになり始めました。自分ばかり地獄から抜け出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、お釈迦様のお目から見ると、あさましく思し召されたのでございましょう。 しかし極楽の蓮池の花は、少しもそんなことにはとんじゃくいたしません。その玉のような白い花は、お釈迦様の御足のまわりに、ゆらゆらうてなを動かして、その真ん中にある金色の蕊ずいからは、なんとも言えないよ…
心に残る言葉 『ツァラトゥストラはこう言った』(著:ニーチェ 訳:氷上英廣)より
「それにしても聖者は、森の中で何をしておられるのですか?」とツァラトゥストラはたずねた。 聖者は答えた。「わしは歌をつくって、それを歌う。歌をつくるとき、わしは笑い、泣き、唸る。こうしてわしは神を讃えるのだ。歌を歌い、泣き、笑い、唸ることによって、わしはわしの神である神を讃える。ところであなたはわれわれにはなんの贈物をしてくれるのかね?」 このことばを聞いたとき、ツァラトゥストラは聖者に一礼して言った。「あなたにさしあげるような何者があるでしょう! いまはあなたから何物も取らせないように、わたしをさっそく立ち去らせてください!」 こうしてこの老者と壮者とは、さながらふたりの少年が笑うように笑い…
或ひと曰く、「天道に親無し。常に善人に与す」と。 伯夷はくい・叔斉しゅくせいの若きは善人と謂いふべき者か非か。 仁を積み行ひの絜きこと此くの如くにして餓死せり。 且つ七十子の徒、仲尼ちゅうじは独り顔回がんかいを薦めて学を好むと為す。 然るに顔回や屡しばしば空しく、糟糠そうこうすら厭かずして、卒ついに蚤夭ようせいせり。 天の善人に報施ほうせすること、其れ何如ぞや。 盜蹠とうせきは日に不辜ふこを殺し、人の肉を肝にし、暴戻恣雎ぼうれいしき、党を聚あつること数千人、天下に横行するも、竟ついに寿を以て終はる。 是れ何の徳に遵したがふや。 此れその尤ゆうも大いに彰明較著しょめいこうちょなる者なり。 近世に…
「しかし、お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」 世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、「世間というのは、君じゃないか」 という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。(それは世間が、ゆるさない)(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)(世間じゃない。あなたでしょう?)(いまに世間…
これはこの世の事ならず 死出の山路の裾野なる 賽の河原の物語 聞くにつけても哀れなり 二つ三つや四つ五つ 十にも足らぬみどり子が 賽の河原に集まりて 父上恋し母恋し 恋し恋しと泣く声は この世の声とはこと変わり 悲しさ骨身を通すなり かのみどり子の所作として 河原の石を取り集め これにて廻向《えこう》の塔を組む 一重組んでは父のため 二重組んでは母のため 三重組んでは故郷の 兄弟我身と廻向して 昼は一人で遊べども 陽も入相《いりあい》のその頃は 地獄の鬼が現れて やれ汝等はなにをする 娑婆に残りし父母は 追善作善《ついぜんさぜん》の勤めなく ただ明け暮れの嘆きには むごや悲しや不憫やと 親の嘆…
「書物を読むのはごく悪うございます。有体に云うと、読書ほど修業の妨になるものは無いようです。私共でも、こうして碧巌《へきがん》などを読みますが、自分の程度以上のところになると、まるで見当がつきません。それを好加減に揣摩《しま》する癖がつくと、それが坐る時の妨になって、自分以上の境界を予期して見たり、悟を待ち受けて見たり、充分突込んで行くべきところに頓挫ができます。大変毒になりますから、御止しになった方がよいでしょう。もし強いて何か御読みになりたければ、禅関策進というような、人の勇気を鼓舞したり激励したりするものが宜しゅうございましょう。それだって、ただ刺戟の方便として読むだけで、道その物とは無…
心に残る言葉 『鬼平犯科帳(七 寒月六間掘)』(著:池波正太郎)より
「つまりは、人間というもの、生きて行くにもっとも大事なことは……たとえば、今朝の飯のうまさはどうだったとか、今日はひとつ、なんとか暇を見つけて、半刻か一刻を、ぶらりとおのれの好きな場所へ出かけ、好きな食物でも食べ、ぼんやりと酒など酌みながら……さて、今日の夕餉には何を食おうかなどと、そのようなことを考え、夜は一合の寝酒をのんびりとのみ、疲れた躰を床に伸ばして、無心にねむりこける。このことにつきるな」 引用:『鬼平犯科帳(七 寒月六間掘)』(著:池波正太郎) ドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳。 大抵、小説を映像化すると矮小化する傾向が強いが、このドラマは原作の良さを余すことなく伝えて、さらに、新規…
心に残る言葉 『1945年6月6日夜の大本営海軍次官宛ての電文-第062016番電-』(発:大田実中将)より
「-左の電を、次官にご通報方、取り計らい得たし。沖縄県民の実情に関しては、県知事より報告せらるべきも、県にはすでに通信力なく、三十二軍司令部もまた通信の余力なしと認められるにつき、本職県知事よりの依頼を受けたるにあらざれど、現状を看過するに忍びず、これに代わって緊急ご通知申しあぐ。沖縄県に敵攻略を開始以来、陸海方面とも防衛戦闘に専念し、県民に関してはほとんど顧るに暇なかりき。しかれども、本職の知れる範囲においては、県民は青壮年の全部を防衛召集にささげ、残る老幼婦女子のみが、相次ぐ砲爆撃に家屋と財産の全部を焼却せられ、わずかに身をもって、軍の作戦に差し支えなき場所の小防空壕に避難、なお砲爆下をさ…
いくら物価の安いときだって熊の毛皮二枚で二円はあんまり安いと誰でも思う。実に安いしあんまり安いことは小十郎でも知っている。けれどもどうして小十郎はそんな町の荒物屋なんかへでなしにほかの人へどしどし売れないか。それはなぜか大ていの人にはわからない。けれども日本では狐けんというものもあって狐は猟師に負け猟師は旦那に負けるときまっている。ここでは熊は小十郎にやられ小十郎が旦那にやられる。旦那は町のみんなの中にいるからなかなか熊に食われない。けれどもこんないやなずるいやつらは世界がだんだん進歩するとひとりで消えてなくなっていく。僕はしばらくの間でもあんな立派な小十郎が二度とつらも見たくないようないやな…
心に残る言葉 『隠された十字架 -法隆寺論-』(著:梅原猛)より
私はこの原稿を書きながら、恐ろしい気がする。人間というものが恐ろしいのである。仏様の頭に釘を刺し、しかもそれを何らかの技術的必要のように見せかけて、けろりとしている人間の心が恐ろしいのである。このような恐ろしいことなしに。政治は可能ではなかったのか。このような恐ろしいことなしに、日本の国造りは可能ではなかったのか。 引用:『隠された十字架 -法隆寺論-』(著:梅原猛) この著者のことを知らない人は多いかもしれない。 この人は作家ではない。哲学者であり仏教学者だ。 だがこの人は歴史に対する多くの仮説を打ち立てて、日本の歴史学界に波紋を呼んだ。 そのうちの一つがこの著書で、おおまかにいえば、法隆寺…
心に残る言葉 『カラマーゾフの兄弟』(著:ドストエフスキー 訳:江川卓)より
「真理をあがなうために必要な苦しみの一定量が定まっているとして、その量を補うために子供たちの苦しみが必要だということになら、ぼくはあらかじめ断言しておくよ、一切の真理もそんな代償には値しないとね。要するにぼくは、例の母親に、自分の息子を犬に噛みちぎらせたあの加害者と抱き合ってもらいたくないんだよ。彼女が彼を赦すなんてもってのほかだ! もしそうしたいのなら、自分の分だけ赦すがいい、自分の母親としてのかぎりない苦悩の分だけ、加害者を赦してやればいい。しかし八つ裂きにされた子供の苦しみについては、たとえ子供自身が赦すと言っても、彼女には赦す権利がないんだ、加害者を赦すわけにはいかないんだ! だが、も…
「これから将来、五年十年と経つて、稀に皆さんが小学校時代のことを考へて御覧なさる時に――あゝ、あの高等四年の教室で、瀬川といふ教員に習つたことが有つたツけ――あの穢多《えた》の教員が素性を告白けて、別離を述べて行く時に、正月になれば自分等と同じやうに屠蘇《とそ》を祝ひ、天長節《てんちょうせつ》が来れば同じやうに君が代を歌つて、蔭ながら自分等の幸福を、出世を祈ると言つたツけ――斯《こ》う思出して頂きたいのです。私が今斯ういふことを告白けましたら、定めし皆さんは穢しいといふ感想を起すでせう。あゝ、仮令《たとえ》私は卑賤しい生れでも、すくなくも皆さんが立派な思想を御持ちなさるやうに、毎日其を心掛けて…
僕は人間の前途に光明を見て進んで行く。祖先の霊があるかのように背後を顧みて、祖先崇拝をして、義務があるかのように、徳義の道を踏んで、前途に光明を見て進んで行く。そうして見れば、僕は事実上極蒙昧な、極従順な、山の中の百姓と、なんの択ぶ所もない。只頭がぼんやりしていないだけだ。極頑固な、極篤実な、敬神家や道学先生と、なんの択ぶところもない。只頭がごつごつしていないだけだ。ねえ、君、この位安全な、危険でない思想はないじゃないか。神が事実でない。義務が事実でない。これはどうしても今日になって認めずにはいられないが、それを認めたのを手柄にして、神を涜す。義務を蹂躙する。そこに危険は始て生じる。 引用:『…
戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。人間は結局処女を刺殺せずにはいられず、武士道をあみださずにはいられず、天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。だが他人の処女でなしに自分自身の処女を刺殺し、自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。そして人の如くに日本も亦堕ちることが必要であろう。堕ちる道を堕ちきる…
僕の前に道はない僕の後ろに道は出來るああ、自然よ父よ僕を一人立ちにさせた廣大な父よ僕から目を離さないで守る事をせよ常に父の氣魄を僕に充たせよこの遠い道程のためこの遠い道程のため 日本人でこの詩を知らない人がいるんだろうか。 僕は、この詩を生み出した高村光太郎と同じ日本人であることを本当に誇りに思う。 この詩の一行一行に、人間のあるべき姿が刻まれている。 この詩の背後から薫り高い香気のようなものが立ち昇っている。 この詩を読むだけで、魂が震えるような感動を覚える。 この詩を見ただけで、新たな一歩を踏み出す勇気が湧いている。 この詩はあらゆる人にとって価値があると思うが、とりわけ、10代、20代の…
渓流が流れて来て断崖の近くまで来ると、一度渦巻をまき、さて、それから瀑布となって落下する。悟浄よ。お前は今その渦巻の一歩手前で、ためらっているのだな。一歩渦巻にまき込まれてしまえば、那落までは一息。その途中に思索や反省や低徊のひまはない。臆病な悟浄よ。お前は渦巻きつつ落ちて行く者どもを恐れと憐れみとをもって眺めながら、自分も思い切って飛込もうか、どうしようかと躊躇しているのだな。遅かれ早かれ自分は谷底に落ちねばならぬとは十分に承知しているくせに。渦巻にまき込まれないからとて、けっして幸福ではないことも承知しているくせに。それでもまだお前は、傍観者の地位に恋々として離れられないのか。物凄い生の渦…
以前、カクヨムという投稿サイトで活動していた時、「心に残る言葉」というエッセイを書きました。 これまでの人生の中で読んできた小説、詩歌、随筆の中で、どうしても忘れられない言葉を紹介する内容のエッセイでした。 カクヨムを卒業すると同時にアカウントも削除してしまいましたが、せっかくブログを立ち上げたので、その時のエッセイの内容を復活させ、自分の記録として残しておきたいと思います。 心に残る言葉 自分の命を愛しすぎても憎んでもいけない。だが、生きてる限りは生命を大切にするがよい。長く生きるか短命に終るかは、天に委ねるがよい。 引用:『失楽園』(著:ミルトン 訳:平井正穂) 思えば、僕はこの小説を読ん…
僕の現在の仕事は少し変わっていて、いわゆるトップ直轄のポジションで、他社と交渉したり、データ分析したり、方針や計画を定めたり、様々なプロジェクトに参加してトップの意向を伝えたり、プロジェクトの進捗をトップに伝えたりしている。 そういう立場にいるおかげで、物事を俯瞰的に見れるようになった。 いわゆるセクショナリズムが消えて、全体としての最適解が何かということに意識が向く。 そうしたことが影響しているのか、今の仕事をするようになってから、執筆の仕方もだいぶ変わってきたような気がする。 これまでは自分の書きたいことをがむしゃらに書いてきたが、今では読者視点を考えながら書いている。どうしたら読者にとっ…
僕は聖書を愛読している。 そう書くと、僕がキリスト教を信仰しているのかと思うかもしれないが、そんなことはない。 聖書を読む理由は、聖書がまさに人間ドラマの縮図であるからだ。 一つ例を出せば、聖書の一番最初の物語である「創世記」の第4章にカインとアベルの兄弟の話がある。 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。時を経て、カインは土の実りを主のもとに捧げものとして持って来た。アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主は、アベルとその捧げ物には目…
欲しいものって、手に入るとひどくあっけないことが多い。 猥褻な喩えで恐縮だが、SEXも知らない頃は妄想がとんでもなかったが、体験してみると、こんなものなんだとひどく冷めた記憶がある。 作家になるということも同じなんじゃないかと思ったりする。 作家という言葉に何かものすごいステータスを感じるが、いざ蓋を開けてみれば、とにかく売れる本を書き続けなければ、すぐにでもお払い箱の世界。 一冊、本を世に出したからといって、手に入るのは雀の涙ほどの印税。 作家になれると知って、いったいどれだけの人が有頂天になり、うちでは出せませんと言われ、どれだけの人が挫折を感じながら消え去っていったのだろう。 極端な話、…
先日、某出版社の編集者さんと話をした。 その方曰く、小説を書きたい人はたくさんいるけど、小説として完成させることができる人はなかなかいない。 その中でも、10万字以上の小説を書きあげる人はもっといない。 その数少ない中で、客観的な視点で小説として成り立っているものを書ける人はほとんどいない。 と、そんなことを言っていた そうなんだと素直に思った。 言われてみれば、カクヨムという小説投稿サイトで書いていた時も、作家を目指す人はたくさんいたが、お金を払っても読みたいと思わせるような作品は、なかなかなかった。 自分が書いたものはどうなんだろう。 その方は僕の作品を褒めてくれたが、話半分でもうれしく感…
そう問われるとはたと困ってしまう。 だって、僕は正業があって、大きな仕事も任されている。 平均くらいの収入はあるし、家族もいて、まあ平凡だけど、それなりに充実した人生を送っているんじゃないかと思っている。 でも昔から小説が好きだった僕は、ある日突然、小説を書いてみたくなり、いざ書き始めてみたら、こんなに楽しく、こんなに夢中になれることがあるんだと、誇張じゃなく、本当に稲妻に打たれたような衝撃を受けてしまった。 それ以来、書き続けている。 すでに、10作以上書いたが、書いても書いても、次から次へと新しい構想が沸き上がってくる。 ところが、書けば書くほど欲が出てきた。 前は単に書いていただけで夢中…
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