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2023/04/10

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  • 雑念ユーモア短編集 (97)解釈

    物事を、どう考えるかで、その後の結果が変化する。例えば、Aだと怒られそうだからBにしよう…と雑念を巡らせて尻込みした結果、怒られた・・などという馬鹿な話もある。度胸一番、Aにしておけば、怒られなかったのか…と反省するケースだ。Aを怒られると解釈したところが間違っていたのである。会社の同僚四人で麻雀をやっていた舘岡は、次の牌(パイ)をどちらを捨てるかで悩み、少し手が止まった。相手三人のうち、島畑はテンパイしているがリーチをかけず、闇テンで三人の捨てパイを待っている。だから、何待ちなのか?は三人には分からない。当然、舘岡にも分かっていない。『まあ、これならいいだろう…』軽く解釈した舘岡は東(トン)を捨てた。「はい、ロン!泣く子も黙る字一色(ツーイーソー)!」字一色・・舘岡は解釈が甘く役満を振り込んでしまった訳...雑念ユーモア短編集(97)解釈

  • 雑念ユーモア短編集 (96)疲労

    疲れていないときと違い、疲労していれば正しい判断が出来ないこともある。疲れ・・という体調の悪さが正しい判断を鈍らせる訳だ。ただ、その程度で済めばいいが、余計な雑念が邪魔をして間違いを起こさせることもある。宝木は疲れていた。山に登ったのはいいが下山の途中、、地図[マップ]に出ていない獣道(けものみち)に迷い込んでしまったのである。「少し休むか…」宝木は獣道の脇へドッペリと腰を下ろした。荷は小リュックだけだから、そう重さを感じることはなかったが、ヨタヨタと20分ばかり歩いたため、喉が渇いていた。山小屋を出るときに補給した水筒の水は四分の一ばかりしか残っていない。この先、どうなるか分からないから、残った水は貴重である。しかし、喉の渇きは我慢できず、宝木はその貴重な水をひと口、そしてもうひと口と飲んだ。その結果、...雑念ユーモア短編集(96)疲労

  • 雑念ユーモア短編集 (95)感情

    とある中堅企業、毛瓜物産に勤める小早川は、さてどうしたものか…と、雑念に惑わされ、思い悩んでいた。毛瓜一族の一人である若い小早川に役員待遇で招聘(しょうへい)すると誘いをかけたのは毛瓜物産と競合する、ライバル会社の川徳通商だった。小速川は毛瓜一族でありながら役員になれない毛瓜物産に不満を抱いていた。「小速川さん、ということでよろしいですね。このお話は極秘裏にお願いしますよ。会長の川徳から、よろしく…という伝言です」「はあ…有難うございます」小速川の感情はこのとき、川徳通商に靡(なび)くとは、まだはっきりと決まっていなかった。小速川の脳裏に巡るのは、先々への雑念だった。『毛瓜本家からは絶縁されるかも知れない…。いや、待てよ。そうだとしても毛瓜一族としてこのまま会社に残っても重役になれる保証はない。一族の浮田...雑念ユーモア短編集(95)感情

  • 雑念ユーモア短編集 (94)貧乏

    貧乏から抜け出せない芥山(あくたやま)は、なんとか金持ちになろう…と、雑念を巡らせた。その挙句、導き出した結論は食事業でのひと儲けである。そこで芥山はまず、小規模の仕出し弁当屋を始めることにした。小規模とは平たく言えば屋台での出店である。中古で買ったキャンピングカーを知り合いの自動車屋に頼み込んで調理専門車に改造し[陸運局へのへの届け出も含む]、芥山は小規模ながら事業を展開し始めた。最初の一日は、七食分作ったが二食残ってしまったので、夕飯と朝食に回そうと考えた。この雑念には無駄がなく、五食分の儲け-(原材料費+諸経費)=一日の純利益の計算通り、幾らかのお金が芥山の手元に残った。芥山はその金を手にし、ニンマリと哂(わら)った。小金持ちになったような気がしたのである。この繰り返しをひと月ほど続けた芥山は、アル...雑念ユーモア短編集(94)貧乏

  • 雑念ユーモア短編集 (93)気になる

    人とは妙なもので、ほんの些細なことでも気になり始めると、どういう訳かそのことに執着する傾向がある。いつまでも気になる訳だ。^^亀川は朝早く、鳥の囀(さえず)る声で目覚めた。『もう朝か…。んっ?今の囀りはなんという鳥だ?聞かない鳴き声だが…』気になり始めると、その一件が納得できるないと気が済まない性分の亀川である。洗顔もそこそこに、亀川はパソコンの検索を駆使して自分が耳にした鳥の鳴き声を調べ始めた。そして泥沼に引き摺り込まれたかのように亀川は鳴き声に埋没していった。そうこうして、小一時間が経過していった。すでにいつもの朝食時間は過ぎ去っていた。「お父さん、先に食べましたよ…」「ああ…」見えない妻の声が書斎の戸口から小さく聞こえた。一年前なら通勤に追われて考えなかった雑念である。退職後は、どういう訳か小さなこ...雑念ユーモア短編集(93)気になる

  • 雑念ユーモア短編集 (92)リモコン

    倉崎はリモコンに悩まされ続けていた。というのは、視聴用の電気商品には必ず付いているリモコンのためである。新たに買ったビデオレコーダーとテレビに付属していたリモコンは、ビデオレコーダーが1つでテレビが2つの合わせて3つだった。さらに以前に買ったVHS録画をできるレコーダーのリモコンも加えれば、合計4つなのである。『コレを録画すれば、コチラも録画してしまうな…』二台のレコーダーのリモコンが連動してしまうのを嘆きながら、倉崎は、どうしたものか…と雑念を巡らせた。『仕方がない…。片方の電源を切ってもう片方で録画しよう…』単純明快な解決策を倉崎は選んだ。電源を切ったレコーダーは当然、録画をしないから、リモコンで録画ボタンを押しても連動しないだろう…という読みである。『実にリモコンは難解だ…』取り分けて難解でもない内...雑念ユーモア短編集(92)リモコン

  • 雑念ユーモア短編集 (91)慌(あわ)てる

    雑念を湧かす間もなく慌(あわ)てる場合がある。世間はそれだけ何が起きるか分からない要素含んでいる訳だが、町川も通勤の途中で思いもかけないハプニングに出食わすことになった。まあ、悪いアクシデントではなく済んだのは良かったのだが…。いつものように自転車に乗ると、町川は出勤のため家を出た。そして、いつものようにお決まりの公設駐輪場へと向かった。そこから徒歩で約五分ばかりのところに地下鉄の下り階段がある・・といった寸法だ。町川は同じ時間帯で到着する列車を駅ホームで待ち、これもまたいつものように入ってきた列車に乗った。車内は朝早いこともあり、それほど混んでいなかった。と、いうか、町川の目に入る人影は皆無だった。この二本あとの列車から急に乗客が増えることは町川が調べ尽くした結果である。だから、この状況もいつもどおりだ...雑念ユーモア短編集(91)慌(あわ)てる

  • 雑念ユーモア短編集 (90)予想外

    予想外のことが突発して起きたとき、雑念で迷うか迷わないかは、人それぞれによって違う。ドッシリと構える人もあれば、オタオタして右や左に動き回る人もある訳だ。この男、老舗うなぎ専門店の板長、大物は前者の一人で、ドッシリと腰を据えるでなく、板場で立ったままニヤけた。「だ、大丈夫なんですかっ!?板長っ!!あと、二十分しかありませんよっ!!」「ははは…何をそんなに慌(あわ)てとるんだっ、小袋」「だって、あと、二十分しか…」予想外の入った注文に、板前見習いの小袋は語尾を濁(にご)した。「二十分もありゃ、御(おん)の字だよ小袋。十五分では少しきついが…」そう言いながら大物は、やり残した厨房作業をアレヨアレヨという間に処理していった。そして、およそ七、八分を残し、注文されたノルマをすべてやり終えたのである。この日のデリバ...雑念ユーモア短編集(90)予想外

  • 雑念ユーモア短編集 (88)寿命

    有馬は湯に浸かりながら雑念を湧かせた。ああ、いい湯加減だな…という雑念ではない。^^俺は今年で七十五になる。俺の寿命はいつまでだろう…という雑念である。「いいお湯ですな、有馬さん…」一緒に来た同じ老人会の鹿尾が、隣から赤ら顔で小さく声をかけた。「ああ…いい湯加減ですな…」二人が露天風呂に浸かってから、すでに十五分ばかりが経っていた。「鹿尾さんは、今年でお幾つになられました…」「ははは…有馬さんより二つ上になります…」「といいますと、七十七ですか…」「はい、喜寿で…」「それは、お目出度い…」「お目出度いかどうか…」「ははは…『門松や三途の川の一里塚目出度くもあり目出度くもなし』ですか…」「さようで…」「お互い、今を明るく過ごしましょう。ははは…」有馬は、寿命は考えても仕方がないか…と、浮かべた雑念を忘れるこ...雑念ユーモア短編集(88)寿命

  • 雑念ユーモア短編集 (87)返金

    橘はネットで商品を購入した。ところが、その商品を使用しようと設置を業者に依頼したところ、業者が、液化天然ガス取締法のコンプライアンス強化で設置できません…と攣(つ)れなく断られてしまった。購入商品は宙に浮いてしまったのである。¥30,000近い商品だったため、橘は宙に浮かせておくのも如何(いかが)なものか…と思慮し、ネット販売先でキャンセル手続きをした。そして、手続きが業者から了承されたため宅配便で返品した。橘は、やれやれ、これで返金される…と安堵(あんど)した。ところが、である。そのひと月後、とある買い物をして預金通帳から額を引き出したところ、クレジット会社から購入商品の全額が引き去られていたのである。橘は、?と頭を傾(かし)げた。キャンセルで商品は返品したのだから引き去られるはずがない…と考えた訳だ。...雑念ユーモア短編集(87)返金

  • 雑念ユーモア短編集 (85)腹具合

    人の腹具合というのは実にデリケート[繊細]に出来ている。小堀は、今日に限ってどうも腹が減るなぁ~…と雑念を湧かせていた。いつもはそうも思わないのだが、昨日は余り食欲がなかったため、そのギャップが雑念を湧かせたのである。『どうも腹具合だけは思うに任せない…』自分の意思ではどうにもならないと小堀は深いため息を一つ吐(つ)いた。「お父さん、そろそろ夕飯ですよ…」書斎で執筆する小堀に妻がドアを開けず声をかけた。「ああ…」小堀は小さく返した。今日の原稿を出版社へ明日の朝までにネットで送る必要に迫られていたが、コレという随筆の原稿ネタが浮かばなかったこともあり、仕方なく書斎のデスクから重い腰を上げた。と、いうのは口実で、腹具合が空腹に苛(さいな)まれていた・・というのが真相だった。夕食を貪るように食べ尽くすと、ようや...雑念ユーモア短編集(85)腹具合

  • 雑念ユーモア短編集 (84)やるだけやる

    出来不出来は別として、やるだけやる!と意気込むのは必要だ。岳上(たけがみ)も、やってやる!と雑念を振り捨て意気込んでいた。ただ、相手は大手のヘッジファンド、KARASである。ヘッジファンドはハゲタカの異名を持つ投資ファンドで、この餌食(えじき)になればM&A[合併と回収]により会社は乗っ取られる運命に立たされる。岳上の会社は、まさにその餌食になろうとしている矢先だった。「岳上君、君もしくは君の部下達がファンドにその実態を知られようと当会社は一切、関知しないからそのつもりで。成功を祈る!」「…」上司の人事部長の峠にミッション・インポッシブルのように告げられた特殊任務課の課長、岳上は、沈黙したまま一礼すると部長室を出た。ミッション・インポッシブルと違うのは、直接、言われたたことである。^^彼が率いる特殊任務課...雑念ユーモア短編集(84)やるだけやる

  • 雑念ユーモア短編集 (83)アレコレ2

    (49)アレコレの別話である。アレコレとしなければならなくなった砂木は、ついつい疎(うと)ましくなる自分を戒めた。疎ましくなったのは、疲れ+処理しなければならない物事の多さ・・が原因していた。なんといっても一週間、多忙に追われ、心身ともに疲れ果てていたのである。『だが、しなければ、俺以外に誰もする者がない…』砂木の脳裏を駆け巡る雑念は次第に膨れ上がっていった。『よしっ!ともかくやろうっ!』決心して意気込んだまではよかったが、何から手を付けていいのか?の算段がつかない。砂木は、ふたたびドッシリと腰を下ろし、雑念に沈み込んだ。『アレだけでも片づけるか…』決断し、とにかくアレコレのアレだけをやることにした砂木はアレを処理し始めた。すると案に相違して物事がスンナリと運び出したのである。アレヨアレヨという間に、アレ...雑念ユーモア短編集(83)アレコレ2

  • 雑念ユーモア短編集 (82)いい国

    この国ほどいい国はない…と、今年から社会人となった崖下は勤務後、駅へ続く歩道を歩きながら、雑念を浮かべていた。目の前にはポイ捨てられたタバコの吸い殻が、そしてしばらく歩くと空になったペットボトル、空き缶が転がっていた。崖下は捨てた人の心境が知りたくなった。『たぶん、何も思わず捨てたんだろうが…』崖下は捨てた人の心を善意に解釈した。誰もいい国を汚くしよう…などと考える人はいない…と思えたからである。ところが、崖下がまたしばらく歩いていると、走り去った車の窓が開き、火が点いたままのタバコが投げ捨てられる光景が目に入ったのである。『いい国だが、残念ながらそう長くはないな…』崖下はまた敗戦前の日本に戻る雑念を本能的に浮かべた。そして五十年の月日が流れ去った。崖下は、すっかり老いぼれ、地下都市で暮らしていた。地上は...雑念ユーモア短編集(82)いい国

  • 雑念ユーモア短編集 (81)夢のような話

    夢のような話が現実になることがある。ただ、その現実はなんとも不安定で変化し易(やす)く壊れ易い・・という欠点を持っている。だから、夢のような話が現実になったときの処し方が問題となる。「た、棚橋さん…当たってますよっ!!」会社のデスクに座り、パソコンで事務処理をしている棚橋に手が空いた隣のデスクの後輩社員、諸崎が新聞紙面と宝くじ券を比較しながら声を震わせて言った。手が空いた棚橋に諸崎が番号確認を頼んだのだ。「ははは…5等の1万円でも当たったか…」「と、とんでもないっ!!1等の前後賞ですよっ!!」「またまたまたっ!私を担(かつ)ごうたって、その手は桑名の焼き蛤(はまぐり)だっ!」「なに言ってんですかっ!み、見て下さいよっ!!」震える手で諸崎は新聞と宝くじ券を棚橋に手渡した。「そんな夢のような話が…どれどれっ!...雑念ユーモア短編集(81)夢のような話

  • 雑念ユーモア短編集 (80)いいこと

    当たり前と言えば当たり前の話だが、人は生きていく上で、いいことを求める。誰も悪いことを求めて生きる人なんかいないだろう!と言われればそれまでだが、この若い女性、坂宮もそんな女性の一人だった。今年、二十一になる大手商社に勤めるOLで、顔もそうブスではなかったから、それが返って坂宮にとって災いしていた。坂宮は日夜、自分にいいことはないものか…と憑(つ)きものが憑いたように雑念を巡らせながら生きていた。まず、奇麗に見せることで若い男性社員達からチヤホヤされたいと高額の化粧品で厚く塗りたくった。結果、塗らない方がいいのに…と、男性社員達に蔭で謗(そし)られ嘲笑された。それでも坂宮はいっこう気にすることなく、いいことを求めて塗りたくった。結果、坂宮の出費は嵩(かさ)んでいった。余り受けが良くないわ…と、ようやく気づ...雑念ユーモア短編集(80)いいこと

  • 雑念ユーモア短編集 (79)自業自得

    世の中は実に上手(うま)く出来ている…と野蕗(のぶき)は唸(うな)った。なぜ野蕗がそう思ったかを説明すれば話が長くなるが、概要を短く言えば、野蕗を陥(おとしい)れた生節(なまぶし)が、ものの見事に自分が仕掛けた策略で失脚し、出向として地方へ左遷されたからである。早い話、出世コースから完全に見放された片道切符の島流しだった。その一部始終を話せば、これも長引くから次のフラッシュに纏(まと)めたドラマを読んでいだたければ、分かって戴けることと思う次第だ。松の内も終わった一月下旬、人事部第一課長の生節と第二課長の野蕗は次の人事部長ポストを巡り、熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げていた。とはいえ、それは飽くまでも心理合戦であり、表面的には見えない戦いだった。生節は露骨な心理戦を展開し、人事部長の鮨尾(すしお)にプライべ...雑念ユーモア短編集(79)自業自得

  • 雑念ユーモア短編集 (78)付け足し作業

    長い作業を終えた川萩(かわはぎ)は一心地つこうと庭に置かれたテーブル椅子に座りコーヒーを啜(すす)った。昨日、スーパーで買おうとした焙煎豆入りのブルマン[ブルーマウンテン]が陳列棚に無かったため、仕方なく買ったブレンド豆の粉で淹(い)れたコーヒーだ。一口、二口と啜っていると、最近はどうも買おうとする品が不如意だ、二月か…如月(きさらぎ)も大したことがないぞ…という雑念が川萩の心に芽生えた。買おうとしている物がない・・これ即ち、川萩に言わせれば不如意なのである。如来さんも忙(いそが)しいのか…いやいや、どうも世の中の景気がよくないのかも知れん…と、川萩は雑念を益々、増幅させていった。そして、飲み終えたコーヒー茶碗を持ち、庭からキッチンへ上がろうと足踏み石に片足を乗せたとき、川萩の目に作業の不備な部分が目に映...雑念ユーモア短編集(78)付け足し作業

  • 雑念ユーモア短編集 (77)信仰

    人々が個人で見えない力を信仰するのは自由だが、その信仰の対象が個人ではなく複数の人になると、次第にその信仰は組織化され、増幅して問題となっていく。人類の歴史でもこの手の問題は政治や社会に大きな影を落とし、ここ最近でも我が国の国会で問題視されているくらいだ。この男、一小市民の禿尾はこの問題を解きほぐす解決策はないものか?…と、日夜、総理大臣にでもなった気分で偉そうに考えていた。そして雑念を重ね、ようやく辿り着いた結論が浮かんだのは、それから一年後だった。『そうだっ!』何が、そうだっ!なのかは、知る人もない禿尾だけの閃(ひらめ)きだった。そこで、館川のそうだっ!と浮かんだ結論を掻い摘んで箇条書きにしてみよう。[1]信仰の見えない力をプラス{+}と捉えれば、必ずマイナス{-}も起こり得るという信仰のデメリットと...雑念ユーモア短編集(77)信仰

  • 雑念ユーモア短編集 (76)謎

    推理する小説やドラマは真相が知りたくなり興味が湧くところだが、この傾向は次第に増幅するある種の依存症に似ていなくもない。館川も推理好きで、謎を知りたくなる傾向が強く、この手のドラマや小説にドップリと嵌(は)まり込んでいた。この夜、館川(たちかわ)が観ているドラマは、ほぼ真ん中辺りまで進行していた。『いやいや、そう思わせておいて、実は身近な第一発見者が犯人だった・・なんて筋だろう…』館川はドラマを観ながら、CMで中断している間、パーコレーダーで淹(い)れた焙煎コーヒーを啜りながら、そう思った。ところが、である。新たな人物がどんどん登場し、館川は何が何だか分からなくなっていった。ただ、謎を知りたい気分だけは益々、膨れ上がっていた。『Bは、ほぼ白に近いから関係がない。Bの友人のCもタバコを吸わないから関係がない...雑念ユーモア短編集(76)謎

  • 雑念ユーモア短編集 (75)世の中

    世の中の動きは本人の意思に関係なく動いていく。その動きに抗(あらが)う者は挫折し、従う者だけが世の中に溶け込んでいくのである。抗うこともなく、かといって従う訳でもない者は、ただ世の中の流れの中で浮かぶ木の葉のように流されていくだけだ。鏑矢(かぶらや)も流れに浮かぶ木の葉のように、ただ流されて生きる男だった。『鏑矢さん、専務がお呼びです…』内線が課長席に座る鏑矢の耳に聞こえた。秘書課の藤尾美香からだった。美人の美香は若い男性社員達の中でマドンナ的存在として獲得合戦の的になっているOLだった。「分かりました…」いつもの図太い鏑矢の声が緊張で高くなっていた。鏑矢もすでに三十路に入り、そろそろ身を固めるか…と思う年齢になっていた。そうは思う鏑矢だったが、世の中の流れは鏑矢のそんな思いとは関係なく、日々の仕事の雑念...雑念ユーモア短編集(75)世の中

  • 雑念ユーモア短編集 (74)思いつく

    ふと、思いつくことがある。それは、その瞬間まで考えてもいなかった考えで、矢橋は、さて、どうしたものか…と迷う雑念に苛(さいな)まれた。やらなくてもいい…と考えれば確かに今、やらなくてもいいことなのである。ただ、してしまった方が明日はどうなるか分からないから、やっておいた方が賢明といえば賢明だ…とも思えた。そんな雑念に苛まれた矢橋の動きはピタリと止まってしまった。矢橋は居間で茶でも飲むか…と思いながら取り敢えず台所へ行った。思いついた内容をするには材料が一つ足りないことにふと、矢橋は気づいた。矢橋はそのことに気づいたとき、茶を飲むことを忘れていた。材料が足りなければ思いついたことも出来ない。そんなことで、矢橋は、まあ、いいか…と、思いついたことを先延ばしにすることにした。それから半年が経過したが、矢橋が思い...雑念ユーモア短編集(74)思いつく

  • 雑念ユーモア短編集 (73)限界

    水で柔らかくした干し柿を一週間ほど食べ続けていた篠塚は、まだ食べられるだろう…と、夕食後、一つ齧(かじ)った。味は甘く、少しもダメになっていないように篠塚は感じた。『なんだ…ちっとも傷んでないじゃないか』そう心で呟(つぶや)くと、篠塚は二つ目の干し柿を齧った。『まあ、今日はこれくらいにしておくか…』篠塚は、そう思うでなく湯飲みの茶をガブリと飲んだ。その十分後、篠塚の腹は少し鬱陶しくなってきた。痛くはなかったが、トイレへ行きたいような感覚が篠塚を襲ったのである。仕方なく篠塚はトイレでコトを済ませた。少し緩くなっていた大便だったが下痢ほどではなかったから、さほど気にせず篠塚はトイレから出た。『二粒ほど飲んでおくか…』雑念を感じた篠塚は、念のため丸薬を二粒飲んだ。就寝したあとは何事も起こらなかった。翌日の夕方、...雑念ユーモア短編集(73)限界

  • 雑念ユーモア短編集 (72)右往左往(うおうさおう)

    人は前後不覚に陥(おちい)ったとき、右往左往(うおうさおう)する。この女性、坂山朋美も右往左往していた。事の発端は上司の副部長、静川の陰謀によるものだった。その理由は、キャリア・ウーマンの朋美が何かにつけて部長の大凧(おおだこ)に告げ口していたのを知り、その腹いせを画策したのだ。『フフフ…これで、あいつも部長に告げ口は出来ないだろう』静川はニヒルに嗤(わら)い捨てた。長年の恨みを晴らしたかのような悪辣(あくらつ)な陰謀だった。その陰謀とはトイレの紙を密かに持ち去り、生理的欲求が果たせないようにしたのである。静川は密かに一人のメンテナンスの作業者に多額の金を渡し、陰謀に加担させたのだった。「…か、紙がないわっ!」朋美は雑念を湧かす間もなくトイレの便座に座り続けねばならなかった。その頃、すでにタイム・リミット...雑念ユーモア短編集(72)右往左往(うおうさおう)

  • 雑念ユーモア短編集 (71)どうしたものか…

    いつもは迷わない鉾宮だったが、その日に限り、どうしたものか…と迷う雑念に悩まされていた。鉾宮とすれば、しようとする物事の時間が少し足りないように思えたのである。ただ、足りないようには思えたが、やろうとすればやれないこともない、なんとも紛(まぎ)らわしい時間が残されていたのである。そのあとのスケジュールは詰まっていて、ドコソコへ出かける手筈になっていた。そのどうしても行かねばならないならない物事は、しようとしている予定をしなければ、なんてことはなく、ゆとりをもって間に合うのだった。どうしたものか…と雑念に沈んでいる場合ではなかった。刻々と過ぎていく時間に鉾宮はついに決断を下した。『よしっ!なろうとままよ…、やろうっ!』鉾宮は、やろうとしている物事に取りかかった。火事場のバカ力・・というが、人には秘められた力...雑念ユーモア短編集(71)どうしたものか…

  • 雑念ユーモア短編集 (57)連絡

    受付でアポを取ってらっしゃいますか?と訊(たず)ねられた村雲は、いいえ…と返さざるを得なかった。どうもアポを取ってないとダメなように瞬間、村雲には思えた。ところが、そうですか、まあ、いいですよ…と返されたのには驚かされた。それなら初めから訊(き)くなよ…という雑念が村雲の脳裏を掠(かす)めた訳である。しばらくすると、村雲が連絡したのは携帯で、直接、本人と話していたから、すぐ会える…と村雲は軽く考えていたのである。ところが、受付での厳しいチェックが待っていた。村雲は、受付が内線で連絡している間、カンファレンスのロビーに置かれた長椅子で借り物の猫のように小さくなって座って待った。「お待たせしました…」しばらくして、エレベーターで降りてきたのは、この会社の会長で93才のおばあさんだった。どうも耳が遠いらしく、村...雑念ユーモア短編集(57)連絡

  • 雑念ユーモア短編集 (56)熱はいる

    人体は適度な熱を必要とする。体内では〇〇〇カロリーのエネルギーが体細胞に伝達され、体細胞はそのエネルギーを得て生命活動を継続する訳だが、そのとき発生するのが熱である。だが、悪性ウイルスや悪性菌の炎症を抑えようと細胞がフル回転すれば熱が異常発生して高熱を発するから、逆に危険となる。身体に熱はいるが、多過ぎても少な過ぎても困る訳だ。中年女性、竹松幸美は寒さに震えながら熱を欲していた。「寒いわ…}大雪の停電でマンションに敷設された床暖房のセントラル・ヒーティングがダウンし、冷え込んだダイニングのフロアで幸美は、袋入りのホッカイロを数個、服の下に潜ませながら溜息を漏らした。つい数日前までは風邪の高熱に悩まされ、ベッドで寝込んでいた幸美だった。「すみません…風邪で数日、休ませていただきます」『そうなの?インフルエン...雑念ユーモア短編集(56)熱はいる

  • 雑念ユーモア短編集 (55)凍った雪

    困ったことに凍った雪は重くなって樹々を痛める。雪にまた食われたか…と雑念を巡らせながら箱宮は雪折れした枝を手に取りテンションを下げた。前日に降った雪が融け切らず、凍った場合は悪者の雪・・と箱宮は定義づけていた。今回も二日前に降った豪雪が融け切らず凍っていた。『まあ、仕方ないか…』凍った雪にブツブツと語りかけて怒ってみても、これはもうお馬鹿さん以外の何物でもない…と、これくらいの道理は箱宮にも分かっていたが、どうも怒りが治まらなかった。箱宮は箒を逆にして叩き、凍った雪を取り除くことにした。凍った雪の下には丹精して育てたアイリス[アヤメ科]の茎葉が埋まっていた。それは恰(あたか)もツアースキーで危険なコースを滑り、雪崩に巻き込まれたスキー客に似ていなくもないな…と箱宮は雑念を増幅させた。司法試験を一発合格した...雑念ユーモア短編集(55)凍った雪

  • 雑念ユーモア短編集 (54)鬼は外ぉ~福は内ぃ~

    見事、国立大学に一発合格した心底(しんそこ)冷(ひえる)は、「鬼は外ぉ~福は内ぃ~」と、家の出入口で豆を撒(ま)きながら、ふと、雑念を巡らせた。『また今年も豆を撒いている。いったい、何故なんだろう…』と。どうも俺は、パブロフの犬だな…と思え、冷は思わず含み笑いをした。パブロフの犬とは考えもせず、条件反射で物事を繰り返しやってしまう・・という生物学の言葉である。冷は、そしてまた雑念を巡らせた。そうかっ!ひょっとすれば、したことで悪い出来事が最小限に食い止められているのかも知れない…と。ということは、今年も悪い出来事が最小限に食い止められるよう続けているのかも知れないと冷には思えたのである。『冷ぅ~!夕飯だから降りて来なさい~~』豆を撒き終え、二階の自室へ戻った途端、階下のキッチンにいる母親の声が聞こえた。『...雑念ユーモア短編集(54)鬼は外ぉ~福は内ぃ~

  • 雑念ユーモア短編集 (53)信用力

    何がなくても信用があれば食べられる…と、豆尾は雑念を巡らせて思った。季節は五月(さつき)で、鯉の吹き流しがあちらこちらの人家に見える。青空の中、心地よいそよ風に頬を撫でられながら豆尾は堤防伝いの土手道を歩いていた。川の中州では草野球の試合が行われている。よく見れば、カンバスを立て、絵を描く人もいた。しばらく歩いていると、豆尾は急に腹が減ってきた。家を出るとき、硬貨が入った小さめの財布は持って出たが、中身をよく見れば、百円硬貨が一枚と十円硬貨が三枚ほどしかなかった。これではパン+牛乳パックを買えない…と豆尾は困った。前方にパンの直売所が見えたところで、豆尾は堤防の土手を降り、店へと近づいていった。「やあ、豆尾さん。どうされたんです?今日は、やけに早いですね」店員は訝(いぶか)しげに訊(たず)ねた。「天気がい...雑念ユーモア短編集(53)信用力

  • 雑念ユーモア短編集 (52)スパイラル[螺旋{らせん}]

    最近は、どうも沈滞気味だ…と、梅川は歩きながら雑念を巡らせていた。キョロキョロと右横左、さらに右上左上と見回しながら辺りの景色に目をやれば、歩道、道路、中規模ビル、かろうじて残っているアーケード商店街・・と景観は変化していく。数年前に通ったときは人の姿が多く、ザワついていたが…と梅川は思った。景気が沈滞気味だと見て取ったのである。通る人も疎(まば)らで、マスク姿ばかりである。『負のスパイラル[螺旋{らせん}]か…』梅川は、どうも人類は危うい…と神様か仏様にでもなった気分で雑念を増幅させた。そのとき、いい匂いが梅川の鼻を擽(くすぐ)った。道路を挟んだ左前方に目を凝らせば、美味(うま)そうなスイートポテトを売る店が見えた。その店の前だけ黒山の人だかりが出来ている。どうも、いい匂いはその店から漂ってくるように思...雑念ユーモア短編集(52)スパイラル[螺旋{らせん}]

  • 雑念ユーモア短編集 (51)予定 2

    (16)でもタイトルにした予定の別話です。^^予定は未定で確定にあらず…と、竹岡は沈思黙考して雑念を巡らせていた。というのも、竹岡がすること成すことの全てが様々な事情で変化し、出来なかったからである。これは稀有(けう)な現象と言えた。本人がやろうとしていることが出来ないのだから、竹岡に限らず誰だって歯がゆく、イライラするに違いない現象に違いなかった。その日も竹岡は朝から一日の予定を頭に描いていた。ただ、いつも思うようにいかないのだから、どうせ出来ないだろう…とは頭の片隅で思っていたが、それでもアグレッシブに取りかかろうとしていた。その前には、まず腹ごしらえだ…と竹岡は思った。朝はいつも、ハム・エッグに野菜サラダ+トースト1枚[1斤の5分の1]と決めていたから、そのとおり準備にかかった、ところがである。冷蔵...雑念ユーモア短編集(51)予定2

  • 雑念ユーモア短編集 (50)中途半端

    物事をしたとき、中途半端がいい場合と悪い場合がある…と長崎は雑念を巡らせた。いい場合だと物事がスゥ~っと順調に進むが、悪い場合には滞留して進まず、しなかった方がよかった…と後悔する結果になる・・と長崎には思えた。そんな雑念を巡らせたのは、一獲千金を夢見て空売りした株の過去だった。長崎は株取引で億単位を僅(わず)か三日で稼いだのである。そして数日後には一億の大損を出し、結局手元に残ったのは二億の儲けだった。長崎は、また雑念を募らせた。一億の大損をしたのは中途半端な捨て売りだった。僅か三日で三億を稼いだときは…と想い出せば、このときも中途半端な捨て買いだった。底値をつけたな…と判断した長崎は、買う資金がないのに株を捨て買いしたのである。『あの頃は激動の時代だった…』長崎は証券取引の現役を退き、豪勢な別荘で余生...雑念ユーモア短編集(50)中途半端

  • 雑念ユーモア短編集 (49)アレコレ

    野原はアレコレ…と、明日の行動計画に雑念を巡らせていた。『アレが先か、コレが先か?だが…。やはり、コレからか…』野原はコレからにしようと心に決めた。ところが世間はそう甘くない。コレからにしようと野原はコレの関係へ電話をかけた。『ああ、コレですか…。誠に申し訳ないんですが、コレはナニで…と言いますのは、国のコンプライアンス強化で出来んのですわ』「ええっ!そんな馬鹿なっ!!工事されたのはオタクなんですから、出来ん訳がないでしょっ!!」『はあ、それはそうなんですが…。なにせ国の締めつけが厳(きび)しいもんでして、過去のお客様には大変、ご迷惑をおかけ致してますが…』そう電話声が聞こえたとき、野原は絵入りの道路工事看板を、ふと思い出した。[大変、ご迷惑をおかけいたしますm_m]看板の中にはヘルメットを被って立ち、頭...雑念ユーモア短編集(49)アレコレ

  • 雑念ユーモア短編集 (48)いよいよ

    大相撲の本場所も、あれよあれよ…という間に終わってしまったテレビ中継を見ながら、大事な一番に臨んだ力士の心境は、いったいどんなものだろう…と、飼葉は野次馬気分で雑念を巡らせた。『{前奏に引き続き御唱和を…}か。先場所は{心の中で御唱和下さい…}だったな…』それだけコロナが和らいだ・・ということか?と飼葉は関係ないことに雑念を向けた。『それにしても、呆気(あっけ)なかったな…』呆気なかった・・とは、優勝が決定する最後の一番である。その一番を思い出した飼葉の雑念だった。『呆気なかった・・ということは、負けた力士は、いよいよという立ち合いのとき、気持が昂って冷静さを欠いた・・ということになる。結果、それが相撲内容に出てしまった・・と、まあ、こうなるんだろう…』飼葉にとっては人ごとだから、人知が及ばない自然の節理...雑念ユーモア短編集(48)いよいよ

  • 雑念ユーモア短編集 (47)貧乏者の経済観測調査

    侘毛(わびしげ)憐(あわれ)は、なぜ自分が貧乏なのか?…と、残り少ない頭髪を片手で優しく撫でながら雑念を巡らせていた。『一生懸命、働いてきたんだから、俺は当然、裕福になる権利はあるんだが…』侘毛は理詰めで、そう考えながら、新聞を広げ読み始めた。ふと、目についた記事に侘毛は、また雑念を巡らせた。『だが、待てよっ!数億も競馬に賭けた、か…。遊び人でも裕福なんだな。働いてきた俺のところへ金が流れないのは、いったいどういう訳だっ!』侘毛は妙な発想で憤(いきどお)りを感じた。そのとき、侘毛の脳裏は年金暮らしを始める前の自分の姿を思い出した。『そうそう、40年間かけていた国民年金に未納部分がある・・と社会保険庁に言われて決定額を減額されたな…』さらに侘毛は雑念を加速させて巡らせた。『…そのあと、入力の機械化とかで、さ...雑念ユーモア短編集(47)貧乏者の経済観測調査

  • 雑念ユーモア短編集 (45)人と機械

    人が機械を作り出したんだから当然、人がご主人だろう…と雲上は雑念を巡らせて考えた。待てよっ!だが、昨日もパソコンの助けがなかったら課長に怒られるか徹夜だったぞ…と、雲上は最初の雑念を撤回した。課長に言われた予算要求書の作成に取りかかったまではよかったのだ。ところが、前年度に組んだ当初予算が新型コロナの影響で大きく変化し、年度末までに補正予算を二度作る破目になったのである。パソコンのデータ入力によるシミュレーション予測以外に先行き不透明な現実を直視した額は要求出来なかったのである。それが、パソコンを駆使したお蔭で、いとも簡単に要求書を作成出来たのだった。雲上にとって、これはもう、偏(ひとえ)にパソコン様々だったのである。『やはり、機械がご主人か…。ということは、俺達は機械を大事にしないといけない・・というこ...雑念ユーモア短編集(45)人と機械

  • 雑念ユーモア短編集 (44)どうでもいい…

    某テレビ局の大河ドラマではないが、雑念に惑い、どうするっ!などと力まず、どうでもいい…と、軽く物事を往(い)なせば、割合と物事は首尾よく終わる・・としたものだ。^^この男、田力(たぢから)もそんな男で、余り物事を重く考えず、雑念に迷わない男だった。「田力さん、課長が及びですよっ!」とある町役場の商工観光課に勤務する田力は、同僚の後輩職員に心配そうな眼差しで言われた。「ああ、そうなの…」田力は、またかっ!と動じる素振りも見せず、どうでもいいや…といった気分で課長席へと足を運んだ。他の課員達は怖い課長の雷(いかずち)には絶えずビクビクで、呼ばれることに恐怖を感じていたから、心配そうに田力の後ろ姿を見遣(みや)った。「あの…課長、お呼びでしょうか?」「ああ、田力君か…。すまんが、例の一件、いつものように頼むよ」...雑念ユーモア短編集(44)どうでもいい…

  • 雑念ユーモア短編集 (43)活着

    活着・・とは、挿し木、接ぎ木、取り木をした植物が根づいて生命力を得るように、無→生へと変化する現象を指す。これは何も植物に限ったお話ではない。^^「中崎君、このファイル、岡本官房長のところへ…」「はいっ!」人事院搭載名簿により、今年からとある中央省庁へ採用された中崎は、課長の八木山に指示され、大臣官房室へと向かった。中崎が美人だということは関係ないと思うが、^^一種試験をトップで通過した中崎は、人事院でも高く評価され、どこの省庁でも引く手が数多(あまた)だった。ということで、でもないが、今朝も八木山に猫撫で声で柔らかく指示されたのである。氷川には、早くこの課へ活着してもらいたい…という雑念が巡ったに違いなかった。それだけ中崎が有能で、しかも美人となれば、他の中央省庁も黙ってそのままにはしておかない。氷川の...雑念ユーモア短編集(43)活着

  • 雑念ユーモア短編集 (42)尾畑の正月行事

    尾畑は正月が過ぎた頃、今年もやり終えたな…と、淹(い)れた茶を啜(すす)りながら一人、悦(えつ)に入っていた。むろんそれは、心で思う尾畑だけの雑念で、他人はどぉ~とも思わないことだった。尾畑がやり終えたな…と思うのは、例年、慣性のように繰り返される尾畑独自の正月行事である。<1>正月ものの準備[物品、食品など、すべてのものを含む]→<2>注連(しめ)飾り→3<>仏壇・神棚飾り→<4>若水汲み→<5>元旦供え→<6>七草供え→<7>宵戎飾り→<8>小豆正月供え→<9>注連縄外し→<10>正月飾りの左義長持参→<11>仏壇・神棚飾り終い…と続いた。誰が、そうしろっ!と命じた訳でもなく、歳末ともなれば、しなければ…と尾畑が思う彼独自の慣性で繰り返される雑念だった。しなければ、何か悪いことが起きそうな…とか、熟(...雑念ユーモア短編集(42)尾畑の正月行事

  • 雑念ユーモア短編集 (41)俳句

    鳥波田(とりはだ)は乾燥した冬の室内で首筋をボリボリ掻きながら俳句作りに雑念を巡らせていた。『チェッ!こう痒(かゆ)いと、いい句が浮かばん…』いい句が浮かばないのを身体の痒みに転嫁させ、鳥波田は都合のいい理由で暈(ぼか)した。結論を先に言えば、鳥波田はまったくの凡人で、いい俳句づくりなど百年、いや千年先も早かったのである。^^才能の無さに気づかない鳥波田はペンを机に置くと、畳の上で仰向けになり身体を横たえた。そして、いつの間にかスゥ~ピィ~…と、心地いい寝息を立てながら深い眠りへと誘(いざな)われていった。夢の中は春三月だった。梅が綻(ほころ)ぶ庭の床几に腰を下ろしながら、鳥波田は筆と短冊を手に持ち、超有名俳人になったつもりで俳句づくりをしていた。「ダメだな、こりゃ…」眠たくなった鳥波田は勢いよく床几を立...雑念ユーモア短編集(41)俳句

  • 雑念ユーモア短編集 (40)快晴

    どういう訳か、快晴だと浮かぶ雑念も明るくなる。悪い方向に進んでる諸事でも、いい解決法が浮かんだりして明るい方向へ進むのは不思議と言えば不思議な現象だ。これも偏(ひとえ)に、お日さまの輝くような陽光のお蔭(かげ)・・と考えれば得心もいく。野薔薇(のばら)もそう感じる普通人の若いOLだった。「華木さん、コレ30部、お願いします…」「はぁ~~いっ!」ポカポカと暖かい日射しが事務室側面にあるサッシの大ガラスから射し込み、野薔薇の心はいつもよりテンションが上がっていた。加えて、普通の天気ならともかく、今日は雲一つない快晴である。『そんなにっ!』といつもの雑念が浮かぶことなく、野薔薇は愛想いい笑顔で課長補佐の禊萩(みそはぎ)から数枚のA4書類を受け取った。それから数十分後、いつもより早くコピーを終えた野薔薇はルンルン...雑念ユーモア短編集(40)快晴

  • 雑念ユーモア短編集 (39)鳥インフルエンザ

    鳥インフルエンザが猛威を振るい、二十三道県で五十六例もの発生か…。寺崎は新聞を読みながら、困ったものだ…と、さも自分が、国のトップ役人にでもなった気分で雑念を湧かせた。^^その夜、寺崎は夢を見た。━養鶏場のニワトリがバタバタと死んでいく。そのニワトリが人の姿になった。バタバタと倒れていくのはニワトリではなく人だ。━余りにも悲惨な夢の進行に、寺崎はハッ!と目覚めた。冷や汗で顔や背筋がビッショリと濡れていた。昨日観た映画が悪かった…と、寺崎は思った。ところが、その映画のラストがどうしても思い出せない。観たのは昨日である。それが思い出せないのである。寺崎は自分はどうかしている…と、ベッドに横たわりながらまた雑念に沈んだ。鳥インフルエンザはニワトリが感染しただけで死に至る病気である。それがもし、人になれば…。寺崎...雑念ユーモア短編集(39)鳥インフルエンザ

  • 雑念ユーモア短編集 (38)怠惰

    小説家の舘岡は最近の自分が怠惰になっている…と、感じていた。雑念を巡らせ、その原因は何なのか?を探るのだが、コレといって思い当たる節(ふし)がない。正月だからか…と、一度は思ったが、去年の正月は書いていたのである。だとすれば、他に原因がある…と、舘岡は、また雑念を巡らせた。すると、昨年とは違い、今年は風呂に入れなくなった…という生活の変化に気づかされた。液化石油ガス取締法の法令強化により、保安基準が厳(きび)しくなり、排気設備不全でガス会社にガスを止められてしまったのである。結果、今はシャワーのみの侘(わび)しい生活になっていた。舘岡は思った。民を主としてその自由を守るのが政府与党なんじゃないかっ!政府与党は死に体なんだ…と。舘岡は無性に怒りが込み上げてきた。ただ、その怒りを鎮める術(すべ)はなかった。ど...雑念ユーモア短編集(38)怠惰

  • 雑念ユーモア短編集 (37)年

    年が暮れ、そしてまた年が明けようとしていた。その瞬間を見つめながら、桧山は考えていた。『いったい、どこが違うんだ?』と。静かに除夜の鐘が撞(つ)かれる中、深々と夜が更けていった。この光景は前年も、そしてその前年も同じ感覚で迎えていたが、何の変化もなかった…。桧山は正月を迎えた喜びなど欠片(かけら)も感じなかったが、それでも条件反射のように今まで繰り返してきた動きを見せていた。桧山は思った。『ああしろっ!こうしろっ!と命じる雑念より、新たな年を迎えようとする慣性の動きは強い…』と。テレビ画面には、とある局の、とある有名歌手によるニューイヤー・ライブ・コンサートの中継が映し出されていた。桧山はまた、思った。『有名になればなるで、大変なんだな…』と。そして桧山は、またまた思った。『俺はのんびりと毎年、気楽に年越...雑念ユーモア短編集(37)年

  • 雑念ユーモア短編集 (35)待ち時間

    待ち時間をどう過ごすか?は、人によって異なる。神経質に考える人は、大してすることもないのにアレコレと雑念を浮かべ、イライラするに違いない。またある人は、混んでるな…などと、右から左へ受け流し、前もって持参した本を広げ、読み始めることだろう。要するに、性格による差異を露呈するのである。これだけは、生まれ持った性分だけに仕方がない。ただ、のんびり構えた人の方が得をする傾向にある・・という結論は導ける。この男、釜岡も、混んだとあるファミレスへ入り、雑念を浮かべた。というより、混んだとあるファミレスへ踏み込んだ・・と表現した方がいいかも知れない。^^『ここは、突入だなっ!』釜岡は、サッカーのカウンター攻撃へ打って出た。ロングパスのボールを的確に受け、相手ディフェンス陣が戻る前にゴールめざしてひた走ったのである。相...雑念ユーモア短編集(35)待ち時間

  • 雑念ユーモア短編集 (36)判断ミス

    判断ミスは、人である以上、誰だってあるだろう。猪口(いのぐち)もご多分に漏れなかった。『妙だなぁ~、地元の人はアア言ってたが全然、バスが来ないぞ…』猪口は田園が広がる中、誰もいないバス停で雑念を浮かべながらバスを待っていた。地元の人とは、バス停近くの田を耕す老人だったが、少しボケが来ていて、わずか一日に2本しか通らないバスが通ってしまった後だということを忘れていた。猪口はその日はもう来ないバスを待っていたのである。待てど暮らせど来ないバスに、猪口はついにブチ切れた。「全然、来んじゃないかっ!!」猪口はバス停の古びた木製の長椅子から立つと、訊(たず)ねた老人にもう一度、訊ねた。「あの…大分、経ちますが、バスが来ないんですが…」「えっ!ああ、そうかね…。今、何時だがや?」「三時過ぎです…」「あっ!!もう、そん...雑念ユーモア短編集(36)判断ミス

  • 雑念ユーモア短編集 (34)違い

    本物と偽物の違いはどこにあるんだ?…と、縞馬(しまうま)は雑念を浮かべていた。縞馬の考えによれば、本物だと信じたモノが本物で、人が偽物だと言おうと、本物そのモノに思えたからである。ただ、そう考えれば、世間の常識が否定されることになる。縞馬の雑念は益々、増幅されていった。「島馬さん、お車ですよ…」ホテルのロビーの受付係からそう言われ、縞馬は慌てて応接椅子から立ち、ホテルのエントランスを出た。玄関にはタクシーが今か今かと縞馬を待っていた。「お客さん、どちらまで…」「駅までお願いします…」そう返すのが、縞馬にとっては関の山だった。浮かぶ雑念は本物と偽物の違い・・である。「へへへ…私ね、運転歴、三十年の本物の運転手です…」そういった途端、危うく信号ミスでタクシーは十字路を横切りかけ、寸前で急停車した。縞馬は、『本...雑念ユーモア短編集(34)違い

  • 雑念ユーモア短編集 (33)どうするっ!

    国営放送の大河ドラマではないが、人は予想もしていなかったことが突発して起こったとき、さて弱ったぞ…どうするっ!と、瞬時の解決策を求められることがある。「長考に入られましたね…」囲碁の対局が大盤解説で進んでいる。[先手番・黒]の将羽(しょうう)九段が虚(きょ)十段[後手番・白]に大悪手を打ってしまったところだ。解説者の深(しん)九段はそれが分かっているから、心配そうな声で小さく言った。「どうなんですか?」女性の解説助手をする月会(つきあい)二段は打たれた手が妙手か悪手か?を確かめるべく、朴訥(ぼくとつ)に訊(たず)ねた。「何がです?」「今の手です…」シカトされたのが少し癪(しゃく)に障(さわ)ったのか、月会二段は怒りぎみの声で返した。それでも、『それを訊(き)くっ!』とはテレビ中継もあってか、絶対に言えない...雑念ユーモア短編集(33)どうするっ!

  • 雑念ユーモア短編集 (32)クリスマス・ケーキ経済観測調査

    省庁統廃合により現在は廃庁となった組織に経済企画庁がある。一部が事務分掌され内閣府・国民生活局に組織規模の縮小を余儀なくされた省庁である。内部部局だから当然、官房を持たない組織だ。で、閣議にも列席できず、国での発言力は相当、小さい。^^さて、前置きはこの辺にして、タイトルの経済観測調査に言及したい。この経済観測調査は過去の短編集[短編集が多すぎて、どの短編集だったか忘れました。すみません。--私の作品集の中にありますから調べて下さい。^^]でも取り上げたが、トイレット・ぺーパーの巻き幅による経済観測調査がある。今回はクリスマスということもあり、とある菓子店で購入したクリスマス・ケーキによる経済観測調査を試みよう…と雑念を湧かした次第である。^^^^^^と、お呵(わら)い下さい。^^魚乃目(うおのめ)は、今...雑念ユーモア短編集(32)クリスマス・ケーキ経済観測調査

  • 雑念ユーモア短編集 (31)捌(は)け口

    雑念を巡らすのも少しくらいならいいが、一定の限度を超えればトラウマとなり、心理的な異常をきたすらしい。皆瀬もその一人で、雑念の捌(は)け口を日夜、探していた。皆瀬の雑念は、誰もが気にしないような些細(ささい)なことだった。皆瀬は通勤電車に揺られていた。幸いにもその日は空き席があったから座れたが、いつもはギュ~ギュ~詰めの状態の中で押しくら饅頭(まんじゅう)を余儀なくされてたのである。皆瀬は天の救いか…と大仰に考えた。そして、この日に限ってなぜだろう?…と考えた。乗車から降車するまでの時間はおよそ40分あった。皆瀬は目を閉じ、いつもとは違う解き放たれたような感覚の中、目を閉じて考えた。これがいけなかった。どうしても原因が分からないまま降車する駅が近づいてきた。となれば、雑念を浮かべている場合ではない。原因が...雑念ユーモア短編集(31)捌(は)け口

  • 雑念ユーモア短編集 (30)すること

    日々することを考えず、根島は生きていた。というより、勤めのことで頭が一杯で、毎日が惰性のように流れていたのである。朝6:00起床→駅7:20発居ノ電乗車→8:20会社ビルへ→17:30退社→駅17:50居ノ電乗車→駅18:30→夕帰宅→朝6:00起床という惰性の日々だった。このサイクルの中で根島に浮かぶ雑念といえば、山積した仕事のアレコレ以外にはなかった。根島は疲れていた。ふと、気づけば根島は定年近くになっていた。ツレアイのことも考えられない流れるような時のサイクルに飲み込まれていたのである。『しまった!!』根島はある日、仕事中の会社のデスクで、ふと、することに気づいたのである。『大失態だっ!!』そう気づいた根島だったが、時すでに遅かった。『しまった!!』明日が退社日だったのである。^^若い人々にアドバイ...雑念ユーモア短編集(30)すること

  • 雑念ユーモア短編集 (29)壊(こわ)れる

    深草は強い木枯らしで壊(こわ)れかけた古小屋を見ながら、しみじみと雑念を浮かべていた。『3次元の物は脆(もろ)いなぁ~、すぐ壊れる…』深草の雑念によれば、次元が大きくなるにつれて壊れる頻度(ひんど)は高くなる・・となる。例えば、絵に描かれた2次元のお茶碗が割れることは、まず有り得ないが、実際のお茶碗[3次元]は、落とせば割れる確率が高い・・という発想である。そう考えれば、4、5次元…と進むに従って、壊れる頻度は高くなると深草は考えたのである。『まあ、古い納屋だから仕方ないか…』心理のテンションが下がれば当然、結論はダウン[下降]する。深草もご多分に漏れなかった。夜になり、深草はまた、しみじみ考えた。『シャワーだけになった風呂だって、コンプライアンスの強化により、排気塔が不完全で使えなくなったんだからな…。...雑念ユーモア短編集(29)壊(こわ)れる

  • 雑念ユーモア短編集 (28)先読み

    いやいや、待て…と、下平は先読みをして雑念を膨(ふく)らませていた。『今は晴れているが、食べてからだと…雲が多いから時雨(しぐれ)ることもある。今は冬場だからな…』先読みした通りに行動すれば、ハズレたとしても降られることもなく安全に違いなかった。これ以上の先読みは必要ないと判断し、下平は昼食をあとにして、外の作業を優先した。下平が外の作業を終えようとしたとき、それまでは雲が多いものの晴れていた空が俄かに薄墨色へと変化し、パラバラ・・と小雨が落ちてきた。時雨だしたのである。下平は先読みした自分を褒(ほ)めてやった。下平が家の中へと入り、昼食を食べ始めたとき、ザザァ~と本降りになった。下平は誰もいないのに、したり顔になりニンマリと哂(わら)った。出来ることは、あと回しにせず、やってしまった方がいいようです。こ...雑念ユーモア短編集(28)先読み

  • 雑念ユーモア短編集 (27)麦踏み

    橘(たちばな)悠(ひさし)は雑念を浮かべていた。『そういや、あの頃は麦踏みをしていたなあ…』麦踏みとは稲の刈り入れのあと、秋に田畑をふたたび耕して麦を植え、その麦が冬の雪害でダメにならないよう、麦の茎を態(わざ)と踏みつけて伸ばさないようにする作業のことである。死語に近くなったこの言葉が悠の心にふと、浮かんだのである。『そういや、この辺りも今や一毛作になったな…』二毛作とは一年に二度、田畑に作物を植えることを意味する。二度作る稲の場合だと二期作と呼ばれる。悠の家は非農家で悠自身も公務員だったから、農業の詳しい知識は分からなかったが、四季の移り行く田園風景を見ながら育っただけに、朧(おぼろ)げながらも最小限の理解はしていた。『菜種の黄色い花畑…胡麻…休耕地にもレンゲの花が色鮮やかに咲いていたなぁ~』悠の雑念...雑念ユーモア短編集(27)麦踏み

  • 雑念ユーモア短編集 (26)理想

    日々を暮らしていれば、どうしても欲が出がちとなる。アアだったら…とか、コウだったら…といった理想を求める雑念が沸々と沸き出る訳だ。^^梢(こずえ)翠(みどり)もそんな若い女性の一人だった。晴れ渡ったとある春の朝、翠は目的もなく旅に出た。要するに行き当たりばったりの旅である。前日の夜、ふと、そう思った翠は、ベッドの横に最低限必要な物をバックに詰めて目覚ましをセットしておいた。いつもは寝坊する翠だったが、その朝はどういう訳かセットした時間の一時間ばかり前に自然と目覚めた。気持が昂(たかぶ)っていた・・ということもある。『新幹線は、つまらないわ、各停にしようっと…』翠は思わなくてもいいのに、そう思った。各停とは各駅停車の普通列車である。予約もなく列車に飛び乗った翠の旅が始まった。翠の理想は景色がよく、のんびりと...雑念ユーモア短編集(26)理想

  • 雑念ユーモア短編集 (25)宝物(たからもの)

    誰にも大切にしているものはあるに違いない。要するに、自分にとっての宝物(たからもの)である。この宝物は自分だけの宝物だから、他人が、『そんな物が?…』と不思議に思おうと、本人にとっては宝物なのだ。楽原も子供の頃から宝物として大切に保管しているビー玉があった。子供の頃、ビー玉遊びで他の遊び仲間からせしめたビー玉が増えるにつれ、楽原にふと、ビー玉に魅了される雑念に取り憑かれるようになったのである。それ以来、楽原は新しいビー玉が増えるにつれ、ニンマリと哂(わら)うことが多くなった。さて、ビー玉が増えると保管場所を確保しなければならない。楽原は家から少し離れた家の所有地である雑木林の一角に穴を掘り、密かに収納するようになった。『これは少し模様が違ういいビー玉だな…』大人になってからも楽原はガラス玉の中に模様が入っ...雑念ユーモア短編集(25)宝物(たからもの)

  • 雑念ユーモア短編集 (24)快晴

    快晴の朝だとアレコレと雑念が湧く。というのも、アレもしたいコレもしたいと外の晴れ渡った外景を見ながら思うからだ。守藤もそんな一人の、しがない中年男だった。『いやいやいや、アアしてからコウしよう。アアする方が簡単に済むから手間取らないから時間も取らない。コウする方は、どうもかなり手間取りそうだからな…』明日は快晴になると予報を知ったその前の夜、守藤は、どうなるか分からない先々のことを、アアでもないコウでもない…と、雑念を浮かべながら思い描いていた。所謂(いわゆる)、取らぬ狸の皮算用である。^^前夜、算段していたことを、さて実行に移すかっ!と守藤は朝食を済ませたあと動き始めた。ところが、である。算段していたことを、どうしても思い出せない。『…ナニをしようと思っていたんだ?』守藤は考え始めた。時は瞬く間に過ぎ、...雑念ユーモア短編集(24)快晴

  • 雑念ユーモア短編集 (23)先手必勝!

    ここは、なにがなんでも勝たないと…と、ラーメン店へ入れなかった宮崎は小市民的な雑念を巡らしていた。昨日は同じ会社の同僚、堀田に先を越され、美味(うま)いラーメン店に人数制限で入れなかったのだ。課が違うこともあり、昼食休憩のタイミングはそれぞれ違ったから、どちらが先に並ぶかは日によって異なった。宮崎は曜日別のラーメン店へ並ぶ人数の統計データを、こともあろうに課のシミュレーション・ソフトを駆使して解析していた。『…と、いうことは、今日は水曜だから、コレくらいの人数か…。よしっ!今日は課長に頼まれたファイル整理もないから店に入れる確率は高い。堀田に勝てるなっ!』宮崎はデスクに座り、自分の職分を熟(こな)しながらニンマリ哂顔(えがお)で、今か今か…と待っていた。やがて、正午を告げるチャイムが社屋に響き渡った。宮崎...雑念ユーモア短編集(23)先手必勝!

  • 雑念ユーモア短編集 (22)お金

    お金とは不思議な生き物で、欲しい貧乏人のところからは離れ、お金などどうでもいいような大富豪のところへ舞い込む・・といった性格を持つ不思議な生き物のようだ。鶏冠(とさか)は年越しを前に、コケコッコォ~![クックドゥ~ドゥ~ドゥ~!]と、お金の支払いに苦しむ貧乏人の一人であった。^^『鶏冠さん、これが最後ですよっ!次、寄せてもらったとき、半年分のお金、支払っていただかないと出ていってもらいますからねっ!』三日前、アパートの管理人に渋面(しぶづら)でそう言われた言葉が、鶏冠の脳裏を駆け巡っていた。いくら気長な人でも半年も待たされた日にゃ、渋面になるのも当然なのだが…。管理人が出て行ったあと、しばらくして鶏冠に雑念が湧いた。昨日(きのう)、ネット記事で読んだ記憶がふと、残り毛が少ない鶏冠の頭に甦(よみがえ)らなく...雑念ユーモア短編集(22)お金

  • 雑念ユーモア短編集 (21)失(な)くす

    アレコレと必要のない雑念を湧かせたばっかりに、いつの間にか大事なものを失(な)くす・・ということがある。課長補佐の梅下はその日も用事を済ませ、勤める町役場へ向かおうとしていた。「すみません。やむを得ぬ急用が出来ましたので、昼まで休ませて戴けないでしょうか?」「んっ?ああ、いいよ。有給休暇の紙、書いといて…」町民の苦情処理をする、年間を通して暇(ひま)な雑務課ということもあり、課長兼係長の竹川は笑顔で快諾した。『これで、ようやく完成した庭池に念願の鯉が泳ぐぞ…』庭池で錦鯉を飼い、橋の上から餌となる麩を撒く・・というのが梅下の念願だった。その念願が庭池の完成で現実のものとなった訳である。ただ、購入した錦鯉は高額のため、一匹だけだった。^^それでも購入代金を支払って帰る梅下の気分はウキウキだった。腕を見れば、昼...雑念ユーモア短編集(21)失(な)くす

  • 雑念ユーモア短編集 (20)時雨(しぐれ)

    照る照る坊主を吊(つ)るしておいたから、次の日は晴れていた。『よかった、よかった…』と、心の内で平坂(ひらさか)澄斗(すみと)はホッ!と安堵(あんど)の息を漏らした。ところが、である。喜び勇んで家を飛び出したまではよかったが、空に暗雲が立ち込め、瞬く間にパラパラと時雨(しぐれ)出した。『よくない、よくない…』平坂の喜びは一転し、テンションは俄かにガタ落ちになり始めたのである。ただ、空を見上げれば暗雲が立ち込めているのは上空のほんの一部で、天空のほとんどは青空だった。平坂は、妙な天気だな…と思いながら、しばらくの間、上空を見上げていた。その所為(せい)か、首を下げると首筋に鈍痛が走った。『ははは…さっぱりだっ!』苦笑いした平坂だったが、テンションは、さらに下降していった。雑念に沈みながら歩道を歩くうちに、い...雑念ユーモア短編集(20)時雨(しぐれ)

  • 雑念ユーモア短編集 (19)買い物

    買い物は雑念が湧きやすい行為の一つである。若い今風ギャルの下房(しもふさ)里美は食品の買い物に家を出た。出たまではよかったのだが、スーパーへ入って買い始めた途端、雑念に悩まされ、半時間ばかり過ぎたというのに買い物のトレーの中は二、三の食品しか入っていなかった。というのも、里美はダイエット中だったからである。『コレを買ったら、たぶん3キロはオーバーになりそう…。やっぱり、やめとこ…』これが里美の辛(つら)く切実な心理である。そんなことで里美は、手にした美味(おい)しそうなスイーツのパックを未練っぽく元の商品棚へ戻した。このスイーツは、里美が店内へ入ってから三度目の戻しだったが、最初の二度、戻した記憶がどういう訳か里美の脳裏から飛んで消えていたのである。里美は恰(あたか)も電車線路の環状線のようにスーパーの中...雑念ユーモア短編集(19)買い物

  • 雑念ユーモア短編集 (18)決断

    決断を鈍(にぶ)らせるのは雑念以外の何物でもない。その雑念さえ湧かさなければ、岳海(たけうみ)が思い描いたコトはスムーズにいくはずだった。それが、である。いらぬ雑念を湧かしたばかりに、岳海の決断は遅れ、描いた構想は大幅に遅れた。その雑念とは、次のようなものだ。(1)とにかく何か食おう。まずアンパンを買い、そのあと牛乳を買った方がいいか…。(2)いやいや、距離からしてあの牛乳屋は遠い…。(3)とすれば、パン屋だが、この時間だとまだ開店していない。(4)そこへいくと、牛乳屋は朝が早いから開いていることは間違いない。。これからすぐ動くなら、やはり遠くても牛乳屋か…。(5)待て待てっ!牛乳屋へ行く途中に、うどんがすぐ食べられる自動販売機があったな…。(6)自動販売機があるなら、うどんにするか…。だが、暖かいお茶も...雑念ユーモア短編集(18)決断

  • 雑念ユーモア短編集 (17)修理

    簡単な修理であれば、手間暇(てまひま)と材料をかければ誰だって出来るに違いない。もちろん、個人の技量には差があるから、自分で出来る範囲に限られるが…。^^この男、藪下も修理出来る技量もないのにアレコレと雑念を湧かしていた。『いやいや、それは無理だろう…。と、なれば、アアするしかないか…』結論から言えば、アアしたとしても薮下の技量では無理だった。^^だが薮下は、そのことに気づかず、自分の雑念のまま行動した。そうこうして数日が過ぎたが、修理は薮下の思うに任せず、手間暇をかけ、散財した挙句、頓挫(とんざ)してしまったのである。『妙だな?上手くいかん…』技量が乏(とぼ)しい薮下に修理できる訳がなかった。『仕方がない。修理を依頼しよう…』ようやく薮下は修理業者に電話をかけ、事無きを得た。初めからそうすれば、何の問題...雑念ユーモア短編集(17)修理

  • 雑念ユーモア短編集 (16)予定

    個人が予定を立てたとしても社会にも予定があり、個人の予定が成立する訳ではない。岬珠代は、休日の朝早くから雑念を膨らませ、アレコレと予定を立てていた。『アソコへ寄って、アレを買ってからナニへ行こうかしら…。でも、それでは間に合わないわね…。とにかくナニへ行くことにしましょう』珠代のアレ→ナニの予定は、女性に有りがちな美しく見せよう…という欲が邪魔をした寄り道の予定だった。徳川秀忠公が、父上にお褒めに預かろう…という欲により、予定を遅らせて関ヶ原に遅参した失敗に似ていなくもなかった。^^正解はアソコへ寄らずアレを買うことなくナニへ行けばよかったのである。かくして、珠代の予定は雑念に歪(ゆが)められ、成就することなく予定通りにいかなくなってしまったのである。理由は、[1]アソコが閉店日で、アレが買えなくなった。...雑念ユーモア短編集(16)予定

  • 雑念ユーモア短編集 (15)天気

    天気は人の力でどうにもならない自然現象だ。そうは言っても、次の日に予定があれば、やはり晴れる方がいいに決まっている。とある町役場に勤める尾羽もそんな思いを胸に、晴れ渡った青空を眺(なが)めながら明日の天気を案じていた。今日が晴れだからといって明日も晴れという保証はないのだ。明日は尾羽にとって人生で初めてデートする日だった。「…」晴れてくれ…という当然の雑念は湧いたが、よく考えれば、晴れたからといってデートが上手(うま)くいくとは限らない訳だ。天気と同じか…という結論を出した尾羽は、毛繕(けずくろ)いをしながらピィ~ピィ~!と鳴いた・・ということはなく、スヤスヤと眠りに落ちた。次の朝は快晴だった。尾羽はワクワクしながらいつものように朝食を食べ、ふと、考えた。「俺はいったい、誰とデートするんだ…?」尾羽がそう...雑念ユーモア短編集(15)天気

  • 雑念ユーモア短編集 (14)選択

    とある冬の二月上旬である。今の春から高校二年に進級する両角(もろずみ)清斗(きよと)は雑念に悩まされていた。理科系に舵(かじ)を切るか、文科系に切るか…の選択で、である。理科系で受験する学部は言わずと知れた、工学、医学、理学、農学などの学部で、文系は経済学、文学などの学部だ。しかし、両角は百手先を読んで決断し、その雑念から解き放たれた。「どうするんだ、両角?」「理科系にします、先生…」進路指導の教師、飛崎(とびさき)からそう言われた両角は、即座にそう答えた。「理科系か…。お前、それでいいのか?こんなこと言っちゃなんだが、お前、おそらく全部落ちるぞ」「えっ!?なぜです、先生?」「なぜって、お前。物理がコノ点で数学がソノ点なんだぞ。こんな点で受かると思ってるのか?」「受けてみないと分からないじゃないですか…」...雑念ユーモア短編集(14)選択

  • 雑念ユーモア短編集 (13)検査

    山郡(やまごおり)は時折り通う病院の検査が嫌になってきていた。もちろん、検査をすることで病気の進行を事前に治療出来ることは理解していた。ただ、検査を受けたあとの医者との面談が嫌だったのである。何事も言われなければそれでよいのだが、もし、悪い結果を言われたときは…と考えれば怖かった訳だ。そんな、ビクビクさせられる検査を何度も受ければ、これはもう、恐怖の雑念の虜(とりこ)にならざるを得なかった。そんなに肝(きも)が据(す)わっている訳ではない山郡とすれば、針の筵(むしろ)に座った気分だったのである。陽気で明るい医者ならまだしも、今通う病院の医者は陰気で余り笑顔を見せず暗かったから、余計に山郡を悩ませていた。「まあ、悪くはないので、お薬を出すほどのことでもありません…」暗い顔で事務的に説明されれば、誰だっていい...雑念ユーモア短編集(13)検査

  • 雑念ユーモア短編集 (12)意味不明

    雑念にもいろいろとあり、ときには意味不明な雑念がふと、湧くことがある。緒宮登美も、そんな女性の一人だった。「私…どうかしたのかしら?」筆が進まなくなった著名作家の緒宮は日々、意味不明な雑念に悩まされるようになった。アレコレと原因を探るのだが、コレといって思い当たることもない。『あの…先生。お頼みしておりました締め切り原稿の方は…』痺(しび)れを切らした緒宮付きの番記者の鳥打から督促(とくそく)の電話が入ったのは、そのときだった。「それがね…。あなた、聞いてくれるっ!」『はあ、お聞きします…』鳥打としては、何が何でも書いてもらわなければ困るのだ。書いてもらわなければ、番記者である鳥打の地位が危うかった。「どうしても書けないのよっ!なぜなのっ!」『はあ…』意味不明な質問をされても、鳥打に答えられる訳がなかった...雑念ユーモア短編集(12)意味不明

  • 雑念ユーモア短編集 (11)トラウマ

    トラウマとはトラとウマではありません。雑念の塊(かたま)りのようなものが引き起こす心の風邪のようなものです。尾水もこのトラウマにここ半年ばかり悩まされていた。職場では日々、「お前は夜から出勤じゃないのか?」と冷やかされていたからである。尾水という苗字は別の意味で水商売を意味し、夜から酒で接客する職業を指す。早い話、バー、スナック、キャパレーなどの類(たぐい)の職業を指すのである。尾水の出勤=オミズの出勤というダジャレの冷やかし言葉だった。最初の頃は笑って受け流していた尾水だったが、冷やかす同僚が増えるにつれ、心理的な負担となっていった。ついには、トイレへ駆け込み、ぅぅぅ…と泣くまでになった。こうして、雑念が高じた尾水は、とうとう病院へ通う破目になった。「尾水さん…」若く奇麗な看護師にそう呼ばれたとき、尾水...雑念ユーモア短編集(11)トラウマ

  • 雑念ユーモア短編集 (10)天水(てんすい)

    W杯120分を戦いぬき、引き分けた末にPK戦で敗退したチームを思い、お通夜のように打ちひしがれた隠れサポーターの崖下は、居間で放心状態に陥(おちい)っていた。そのとき、彼の父親が襖(ふすま)を開け、スゥ~っと幽霊のように入ってきた。「…どうかしたのか、登?」父親はションボリと落胆した息子を見て、ひと言、声をかけた。「なんだ、父さんか。いや、何でもないよ…」「そうか…なら、いいんだが。早く寝ろよ」「ああ…」「そうそう、ベスト8、ダメだったそうじゃないか…」父親の言葉が、まさに自分が落ち込んでいる原因だったから、崖下は心を見透かされたようで、驚いた。「…よく知ってるな、父さん?」「いや、なに…。俺の友人がサポーターで現地へ飛んでるんだ。さっき、電話が入ったのさ」崖下は父親の人脈の広さに、またまた驚いた。「そう...雑念ユーモア短編集(10)天水(てんすい)

  • 雑念ユーモア短編集 (9)騒音

    気になり出せば、どうにもならない雑念が湧くのが騒音だ。とある大手メーカーに勤めるキャリア・ウーマンの若葉もそんな女性の一人だった。今年で三十路の半ばになった若葉も、二十代の頃は雑音が気になるようなことは少しもなかったのだが、ここ最近、どういう訳か雑音が気になるようになっていた。それも、普通人なら気にならないような雑音に、である。『どうしてかしら…?』雑音が気になり出し、心のテンションが下がるたびに若葉はそう思うようになった。その雑念は日を追うごとに強くなっていき、若葉を悩ませた。ある日、若葉は思い切って町の医院へ行ってみることにした。「鬱(うつ)病ですね…」医師は、はっきりと病名を告げた。「あのう…どれくらいで治るんでしょう、先生?」若葉は気がかりになり、訊(たず)ねた。「ははは…鬱病は症状にもよりますが...雑念ユーモア短編集(9)騒音

  • 雑念ユーモア短編集 (8)寄り道

    とある大工店を一人で営む小山は、いつもより早く仕事が終わったことで、寄り道をしよう…と、湧かせなくてもいい雑念を湧かせた。その日は寒く、一杯ひっかけから帰ろう…と思った訳である。^^だが、その雑念がいけなかった。久しぶりの飲み屋ということもあり、ついつい杯(さかずき)が進んだのである。「旦那っ!もうそろそろ店を閉めやすんで、このくらいで…」店の親父は、いい辛(づら)そうに、遠まわしで小山を追い出しにかかった。「なにっ!!もう、そんな時間かっ!?な、なんだ…まだ、こんな時間じゃねえかっ!ウイッ!まあ、親父も一杯いけっ!!」「へい、どうも…」猪口を赤ら顔の客にグイッ!と目の前へ突き出されれば、店主としては断ることも出来ない。ほんの一杯だけのつもりで受けた杯が、親父が酒好だったこともあり、一杯が二杯、二杯が三杯...雑念ユーモア短編集(8)寄り道

  • 雑念ユーモア短編集 (7)異性

    異性に雑念を抱く年頃は幾つくらいか?…と雑念を浮かべる♂の吉岡は、自分が馬鹿なのではないか?と嫌になり、何も思わないことにした。ところがである。次の瞬間、最初に好きになった美代ちゃんのことが、ふと頭を過(よぎ)った。『あの頃は、好きになっただけだなぁ…』幼馴染(おさななじみ)の美代ちゃんの家は、前の小道を挟み、斜め向こうの家だった。『あのときは、アンナコトやコンナコトは思わなかったなぁ~』吉岡は幼い当時の気持が、ただ好きな感情だけだったことを思い出した。青年の頃に感じ始めた色欲が当時は全くなく、ムラムラしなかった訳である。^^『ムラムラして随分、難儀したなぁ~』雑念は益々、膨(ふく)らみ、吉岡は好きになることと色欲を感じることの違いが、よく分からなくなった。吉岡は、ふたたび考えないことにした。ところが、で...雑念ユーモア短編集(7)異性

  • 雑念ユーモア短編集 (6)狐の嫁入り

    (2)で書いた数日前のサッカー内容の短編が、まさか現実になろうとは思ってもいませんでした。好結果の予選突破に感激しつつ、馬鹿のように、ぅぅぅ…と思うお馬鹿なのです。それにしても、よかった、よかった…。^^私は神様でも仏様でもないから先々のことは分かりませんから、以降の決勝トーナメントの結果に関しては、例によって、君の応援するチームが勝とうと負けようと一切、関知しないからそのつもりで…。なお、この短編も自動的には消滅しません。昼過ぎになり、晴れて日射しがあるにもかかわらず小雨がパラつきだした空を見上げ、富高は雑念を湧かせていた。『狐の嫁入りは、お目出度いんだろうか…』そんな富安の心の雑念を知ってか知らずか、空は一時的に小雨がパラついただけで、すぐに晴れてきたのである。『こういう場合の狐の嫁入りは成立するんだ...雑念ユーモア短編集(6)狐の嫁入り

  • 雑念ユーモア短編集 (5)座禅

    雑念を払おう…と思えば、その方法を探ることになる。最も手っ取り早い方法が座禅だが、辺りがまだ暗い早朝から、とある禅寺の前では一人のサラリーマンが山門を潜(くぐ)っていた。「お願い致します…」男は本堂近くの庫裏(くり)前で箒(ほうき)を手に落ち葉を掃いている老僧に声をかけた。老僧は男を窺(うかが)うでなく見据え、朴訥(ぼくとつ)に返した。「…はい、何ですかな?」「あの…座禅をさせて戴きたくお参りさせていただいた者ですが…」「ほう、左様でしたかな…。受付は九時からとなっております。しばらくは庫裏にてお待ち下され。白湯(さゆ)などをお出し致しますれば…」男は老僧の言葉を聞き、劇場の開演待ちのようなものだな…と、思うでなく思った。男が庫裏へ入ると受付があり、若い禅僧がウトウトしながら机を前に惰眠を貪(むさぼ)って...雑念ユーモア短編集(5)座禅

  • 雑念ユーモア短編集 (4)決断力

    雑念が湧くと、どうしても決断力が鈍(にぶ)りやすくなる。この男、とある町役場の市民課に勤める都筑(つつく)も、出勤前の朝ご飯を食べながら雑念で迷っている一人だった。『いやいや、ソレをしてから課長補佐に伺(うかが)いを立てた方がいいか…』そう思いながら椀(わん)の味噌汁をグビッ!と喉(のど)へ流し込んだ。すると次の瞬間、別の雑念が、ふと浮かんだ。『待て待て…ソレをしてからだと、課長に朝一に頼まれたアレが後(あと)回しになるな…』都筑にすれば当然、課長の方が課長補佐より優先権があるように思えた。なんといっても人事異動前の二月半ばだったからである。決断力が回復した都筑は、よしよし、課長のアレからだな…と決断ながら味付け海苔に醤油を少しつけた瞬間、また別の雑念が湧いてきた。『待てよ…そうすると、部長に頼まれたナニ...雑念ユーモア短編集(4)決断力

  • 雑念ユーモア短編集 (3)流動的

    物事が固定せず、流動的だと雑念が湧きやすい。この男、北岡も、そんな男の一人だった。「今日は混んでるわね。北岡さん、まだ当分、かかるわよ、この調子だと…」社員食堂で並んでいた北岡は、同じ課のキャリア・ウーマン南尾明代に後ろから声をかけられ、ギクッ!として振り返った。「なんだ、南尾さんか…。いつもは外で食べてるから分からないんだよ。どれくらいかかるの?」「そうね…。これくらいの並びなら20分ってとこね」「そんなに?」「ええ、急いでるの?」「ああ、まあ…」北岡は昼食を早く済ませ、部長の東山にヨイショ!しようと雑念を湧かせていたのだ。ヨイショ!するとは、東山がするゴルフの自慢話を聞くだけだったが、これがどうしてどうして、結構な効果があり、北岡はこの春の人事異動で課長代理代行に昇格したのである。それまでは課長代理代...雑念ユーモア短編集(3)流動的

  • 雑念ユーモア短編集 (2)禍福(かふく)

    サッカーのW杯、カタール[ドーハ]大会が華やかに開催されている。サッカー好きの蹴鞠(けまり)はドイツ戦の劇的勝利に酔いしれていた。ところが、である。その喜びも束(つか)の間(ま)、二日後に何気なく見たパソコンのネット記事で代表チームがコスタリカに敗れたことを知りたくもないのに知らされ、すっかりショボくなった。蹴鞠には劇的勝利によって予選突破は確実…という決まりもしていないこの先の大会予測の雑念が、すでに脳裏に刻まれていたからである。『そ、そんな…ば、馬鹿なっ!!ぅぅぅ…』これが代表チームの敗戦を知ったときの蹴鞠の心情である。だが、予選敗退はまだ決まっていない…という心情もほんの僅(わず)かだが残されていた。『禍福(かふく)は糾(あざな)える縄(なわ)の如し・・と言うじゃないかっ!だとすれば、次は勝ちだっ!...雑念ユーモア短編集(2)禍福(かふく)

  • 雑念ユーモア短編集 (1)危険

    人には108の煩悩(ぼんのう)があると言われている。それらの煩悩が生まれるのも、世知辛い社会で暮らす私達の生活の厳(きび)しさから何とか逃れようとする人々の雑念から派生しているのかも知れない。この短編集では、そうした人々の雑念から生まれる成否を面白可笑しく描こうと思っているところです。^^霜川は、晴れたこの日も漁船に乗り、漁に出ていた。そんな魚川に、いつもなら浮かばない雑念が、ふと浮かんだ。『今日は少し多めに…』少し多めに…とは、漁獲量を指した。漁獲量を増すためには、網を入れるいつものエリアを変えねばならない。隣家の漁師、霧岡が言っていた言葉を思い出した霜川は、言われたエリアの方角へと舵(かじ)を切った。そのエリアの位置は、いつものエリアから小一時間かかる距離にあり、さほど危険とも思われなかった。数十分後...雑念ユーモア短編集(1)危険

  • 驚くユーモア短編集 (100)アイデア

    アイデアとは妙なもので、必死に考えるときは浮かばず、何も考えていないときに、ふと浮かぶのだから驚く。久しぶりに快晴となった今日の朝、食べたものを最後に体内から出すトイレでの作業中、ふと浮かんだのがアイデアというタイトルです。^^ここは大手食品企業の本社ビルである。とある階にある開発事業部では、ここ数年の業績悪化を食い止めようと日夜、事業立て直しのアイデアを模索(もさく)していた。「案山子田(かかしだ)君、まだいいアイデアは浮かんばんのかね?」少しも進まない事業立て直し策に業(ごう)を煮やした部長の稲﨑(いなざき)が開発課の課長、案山子田の課長席へ部長室から早足でやって来た。「はあ部長。課員には叱咤(しった)しておるのですが、いまのところ…」「いまのところって、君ねぇ~!」稲﨑は今にも美味(おい)しく食べれ...驚くユーモア短編集(100)アイデア

  • 驚くユーモア短編集 (99)明日(あす)

    あっ!明日(あす)だったと思い出し、月日の巡りの速さに驚くことがある。とくに、余り気にしていなかったときは、したくもないのにバタバタするに違いない。^^「お、おいっ!い、如何(いかが)致すっ!九月十日…九月十日は明日ではないかっ!!」上田攻めの負け戦(いくさ)に時を過ごされた秀忠公は、家康公からの早馬の密書をお読みになり、驚く様相でそう言われたらしい。「こうは、しておられんぞっ!」「御意(ぎょい)っ!殿、お急ぎをっ!!」急遽(きゅうきょ)、上田を出立された秀忠公率いる精鋭三万五千有余ではあったが、かかる長雨に進軍ままならず、関ヶ原の戦いにはついに間に合わなかった。このように、いつの時代でも急に差し迫った事態を知ったときは、驚くことになるのです。皆さん、驚くことのないよう、明日のスケジュールは確認しておきま...驚くユーモア短編集(99)明日(あす)

  • 驚くユーモア短編集 (98)原因2

    (48)でタイトルにした原因の別話である。そんなことが…と、考えてもみなかったところにコトの原因があったことで驚くことがある。そうなった原因を考えてはみたが、どうしても分からなかったとき、特にその驚く度合いは大きくなるだろう。ということで、今日は見過ごされた些細な原因に驚くお話にしてみました。^^とある市役所の財務課である。「妙だな…。どうしても額が合わない…。それも一円だ…。おいっ!!楢林(ならばやし)君っ!!」課長の樫岡(かしおか)は、前のデスクで仕事をする担当係の楢林を大声で呼んだ。楢林はギクッ!として手を止めると、恐る恐る席を立って課長席の樫岡に近づいた。いつもカミナリを落とされていたからである。「あの…なにか?」「なにか?じゃないよっ!この額、一円違ってるじゃないかっ!」「いや、そんなことはない...驚くユーモア短編集(98)原因2

  • 驚くユーモア短編集 (97)知らず知らず

    知らず知らず、日々、創作していると、驚くことにこの短編集も百話完結の残りが四話となった。本作を除けば残りが三話だから、知らず知らずの心身の条件反射的動きは恐ろしいものだと気づかされる。心身が惰性で動くというのは、いい場合も当然あるが、悪い場合も否応なく生じるから注意を必要とする。とある国会の衆議院本会議場である。申し合わせたように議員の一人がスクッ!と立ち、いかにも目立ちたいような出さなくてもいい驚く大声を張り上げた。議事進行係である。明治期の帝国議会から続く習慣らしく、知らず知らずのうちに現在に至るまで踏襲されているというから驚く。「議長ぉ~~~!!」「〇〇君…」「ホニャララのホニャララはホニャララとし、本日は、これにて散会することを求めまぁ~~~す!!」「○○君の動議に御異議ございませんか?」『異議な...驚くユーモア短編集(97)知らず知らず

  • 驚くユーモア短編集 (96)時

    なんだ、まだこんな時間か…と時計を見ながら驚くときと、しまった!もうこんな時間かっ!…と時計を見て驚く瞬間の違いがある。むろん、前者の場合はゆとりの時間がある訳だが、時とはこのように見えず得体が知れない存在なのである。とある高校のとある教室のホームルームの時間である。このクラスを受け持つ担任の潮(うしお)が出席点呼を行っている。「提山(さげやま)っ!…」返事がなく、潮は出席簿から視線を上げ、教壇から一段下の生徒達を見回した。「先生、提山は今日、休んでます…」「ほう!珍しいな。あいつが休むとは…」「なんでも、身内の結婚式らしいですよ」「それは、お目出度いじゃないか…。よしっ!今日はコロナ禍で世の中が冷え切ってるから、お目出度い話を一つ先生がしようっ!」語り出した潮は時の経つのも忘れ、ゴチャゴチャとしたお目出...驚くユーモア短編集(96)時

  • 驚くユーモア短編集 (95)意志

    なにがなんでもやり遂げるんだっ!という強い意志があれば、驚くような成果を上げることが出来る。これは、人が持ち合わせた不思議な力である。(91)で馬鹿力(ばかぢから)というタイトルのお話を掲載させて戴いたが、その力も強い意志が齎(もたら)す人の潜在力に違いない。とある町役場の、とある課である。「コレとコレ、明日までに頼むよ…。まあ、余り期待してないがね…。ひと月先は人事だよっ!分かってるねっ!」「はい…」とある課の課長、大席(おおぜき)に念を押された係長の小結(おむすび)は否応なく小声の返事をした。とても一人でやり切れる量とは思えなかったこともある。「ははは…分かってりゃいいんだ、分かってりゃ!」大席は分かってりゃ!を繰り返して強調した。小結にしてみれば、『フンッ!偉そうに…』くらいの気分である。ただ、この...驚くユーモア短編集(95)意志

  • 驚くユーモア短編集 (94)人の心

    女心と秋の空・・とかなんとか言われるが、人の心ほど複雑で変わりやすいものはない。突然の豹変ぶりに、なにっ!と驚くことも数多くあるに違いない。とある料亭である。背広姿の二人が意味深に杯を傾けている。「まあ、そこのところを一つよろしく…」「フフフ…分かっています。いつものだね…」「はあ、いつものようにお願いを…」とある省庁のお役人と、とある大企業のトップとの間で、数億の取引の認可がまた了承された瞬間である。その取引の事実は検察庁特捜部の極秘裏の調査ですでに解き明かされようとしていた。ただ、この料亭で杯を傾ける二人は、この段階でその動きを知らなかった。数日後、この大企業に特捜部の強制捜査のメスが入った。その結果、大企業のトップは、いとも簡単に贈賄の疑いで逮捕されたのである。「私は、そんな人物は知らんよ…。〇〇が...驚くユーモア短編集(94)人の心

  • 驚くユーモア短編集 (93)嘘(うそ)から出たまこと

    嘘(うそ)から出たまことに驚くことがある。その嘘が途方もなく大きい嘘であればあるほど、その驚く程度も大きくなる。ということで、でもないのですが書きたいと思います。正確には、苦手な[誤字入力の多さには泣かされています^^]キーを叩(たた)くことになります。^^とある近い未来の一日である。二人の男が通勤バス中で話をしている。「核戦争が起こるって話だっ!!」「なんだとっ!お前、その話、誰から聞いたっ!」「誰とは言わんが、そう言ってたぜっ!」「そうかっ!こりゃ偉いことになったぞっ!急いで核シェルターを買わにゃならんっ!高くつくな…。そうなると、住宅ローンもあるから、毎日、食パン一枚の生活か…。ああ侘(わび)しいっ!実に侘しいっ!!」「おいっ!核が落ちてからの食糧はどうするんだっ!」「そうか…。今から多量に買い込ん...驚くユーモア短編集(93)嘘(うそ)から出たまこと

  • 驚くユーモア短編集 (92)予想

    予想していたことがスムーズに運ぶ場合、首尾よくいかない場合は当然、出てくるだろう。自分では何もしていないのにトントン拍子に進行したり、逆に何をしても全然、進まない場合は、妙だな…と思うに違いない。そして、その訳が、ほんの小さな内容だったりした場合は驚くことになる。とある家の前の舗装路で必死に独楽(こま)を回しているこの家の主人がいる。幸い、その家の前は車が通れない程度の細道で、歩くか自転車でしか通行が出来ない。その細道を偶然、対向から二軒先のご主人が買い物帰りに自転車で通りかかり、ギギィ~!っとブレーキをかけた。「ははは…独楽ですか。懐かしいですなぁ~。子供の頃はコレでよく遊んだもんです…」「さようで…。いやね、天気がいいもんで虫干ししようと部屋の押入れを開けてみましたら、コレが出てきましてな。、し回して...驚くユーモア短編集(92)予想

  • 驚くユーモア短編集 (91)馬鹿力(ばかぢから)

    火事場の馬鹿力(ばかぢから)などと言われるが、いざというとき、いつもは出なかった力が出るのには驚く以外にない。ということで、余り時間がないのですが、馬鹿力を出して(91)を書きたいと思います。正確には入力で、打ち間違いがないか心配なのですが…。^^とある家事現場である。「おいっ!消防はまだかっ!!」「妙ですねぇ~?もう着きそうな筈(はず)なんですがっ!」「全然、着かないじゃないかっ!!音も聞こえんぞっ!!」「はあ…」「はあ、じゃないっ!!益々、炎が強くなるじゃないかっ!!」そこへ一人の野次馬が話しかけた。「そりゃ、来ませんよっ!ここへの道は一本ですが、この前の台風で橋は流されましたから…」そう聞かされ、家人の二人は青ざめた。「よしっ!!バケツリレーだっ!!」「はいっ!!」「皆さんもお手伝い、お願いしますっ...驚くユーモア短編集(91)馬鹿力(ばかぢから)

  • 驚くユーモア短編集 (90)それでも、やる

    人は負けると分かっていて、それでも、やる・・という不屈の精神を持ち合わせている。むろん、諦(あきら)めが早い人も多い訳だが、やはり人として生まれたからには、負けると分かっていても努力して欲しいものだ。私も微力ながらその精神を心がけている一人である。ものすごく微力です。^^とある病院の診察室である。「本当のところ、先生、どうなんでしょ!!」「どうしても!とおっしゃるなら、お話しますが…」「是非、お願い致しますっ!」「そうですか?なら言いますが、このままですと…いい場合で、あと数ヶ月ってとこでしょうか。今のうちにやれることはやって、会いたい人には会っておくことですな…」患者に執拗(しつよう)に訊(き)かれ、病状を告知した。「このままだということは、手術をすれば?」「ええ。手術が成功すれば、また話は変わります。...驚くユーモア短編集(90)それでも、やる

  • 驚くユーモア短編集 (89)アイデア

    アイデアはとんでもないときに浮かぶから驚く。とある銀行に勤める本店営業部融資課長、山堀は悩んでいた。どうしても出資した債券、数億円を芋坂物産から回収出来なかったのである。山堀は、その日も常務の登呂路(とろろ)から嫌味を言われていた。「ははは…山堀君。君ねぇ~、あと三日だよ。あと三日で回収出来なかったら、もう終わりぃ~~っ!君の銀行人生っ!」「……」山堀はその言葉を苦虫(にがむし)を噛(か)み潰(つぶ)したような顔でジィ~~っと耐えて聞く他はなかった。課へ戻(もど)った山堀は席に着くやいなや、急に腹痛に襲われた。食べたものが悪かったか…とトイレに駆け込みながら考えたが、思いつく原因はなかった。便座に座り、用を足していると、なんとなく気分は落ち着き、ふと、山堀の脳裏に一つのアイデアが閃(ひらめ)いた。その一日...驚くユーモア短編集(89)アイデア

  • 驚くユーモア短編集 (88)まさか…

    まさか…と、本当のことを知って驚くことがある。まあ、この場合は、知っていいことと悪いことがある訳だが、どうせ驚くなら、いい方がいいに決まっている。^^事件は迷宮入りしようとしていた。警察の懸命の捜査にもかかわらず、時効が残り十日に迫っていた。「もう、ダメですかね、熊さんっ!」「…まだ十日あるっ!諦(あきら)めるな、鮭尾(さけお)っ!」「はあ、それは分かってんですが…」鮭尾は熊川(くまかわ)に叱咤(しった)され一応は頷(うなず)いたが、心の底ですでに諦めていた。「どうも、最初に聞き込んだときの現場にいた目撃者の証言が気になる…」「最初というと…20年ばかり前になりますね」「ああ、傷害致死だからな…」「確か…爪割(つめさき)とかいう人でしたね」「まさかとは思うが、鮭尾。ひょっとすると、俺達は灯台、下(もと)暗...驚くユーモア短編集(88)まさか…

  • 驚くユーモア短編集 (87)展開

    ほんの些細(ささい)な出来事が綻(ほころ)びを見せて発覚し、あれよあれよという間に大きな事件として広まれば、当事者は驚くことだろう。その広まりは噂(うわさ)によって齎(もたら)される訳だが、その齎す人物とは?を考えれば、女性の噂のしたがり屋さんが多いことが統計学上は別として傾向があると分かってきている。その手合はペチャクチャ雀(すずめ)と呼ばれるが、女性が多いというだけで、なにも女性だけだということではない。この点、ハラスメントではないとだけ断言しておきたい。^^とある中堅規模の会社ビル最上階にある食堂で、昼食後のOL二人が小声で話をしている。「あら、そうなのっ!?豚尾さん、栄転するのっ!?」「そうなのよっ!私、秘書課の草代さんから聞いたんだけどね…」「草代さんって、あのベチャクチャ雀の牛川さんっ!?」「...驚くユーモア短編集(87)展開

  • 驚くユーモア短編集 (86)どうでもいい

    そんなことを…と他人が驚くことを、どうでもいいとスルーする人がいる。他人は驚いているがその人は少しも驚くことがないのである。とある深夜である。飲んで電車で帰ってきた一人の男が、駅前で自分の家の方向が異常に明るいことに気づいた。どうも火事らしい…と、その男が気づいたのは駅前の自転車屋から自転車で帰宅する途中だった。自宅に近づくにつれ、次第に明るくなっていく。それに、焼ける臭気も臭いだした。それでも男は驚くことなく自転車を漕ぎ続けた。そして家まで数分の所へ来た時である。「稲崎さん、あなたの家、火事ですよっ!!」数軒先の麦田が驚く声で叫んで知らせた。「ははは…そうですか。家(うち)が火事で燃えてるんだ…」稲崎は少しも驚く気配を見せなかった。さて、ここで皆さんに質問です。稲崎はなぜ驚く気配を見せなかったのでしょう...驚くユーモア短編集(86)どうでもいい

  • 驚くユーモア短編集 (85)部外者

    部外者なのに、いかにも関係者のような顔をして首を突っ込む人には驚く以外にない。その人の性格だから…と考えればそれまでだが、関係者にすればいい迷惑になる場合だって多々あるだろう。まあ、そういうことで、今日は部外者で驚くお話です。^^とある結婚式場である。「おいっ!新婦はまだ来ないのかっ!あと20分しかないんだぞっ!!」息巻いているのは新郎の父親である。「そんなこと言ったって、携帯の話じゃ渋滞に巻き込まれたそうなんだから仕方がないじゃないのっ!!」新郎の母親が必死に父親を宥(なだ)める。そこへ、披露宴を終えた家族が、しゃしゃり出た。完全な部外者である。^^「あの…なんでしたら、うちの息子の嫁をこの場だけ代理にされるというのは…」「はあ!?家の息子の嫁をっ!?なんなんですか、あなたはっ!?」「はあ、今、披露宴が...驚くユーモア短編集(85)部外者

  • 驚くユーモア短編集 (84)隠しごと

    隠しごとが、予想もしていなかった、ひょんな拍子に発覚すれば誰だって驚くだろう。ということで、今日は秋晴れのいい天候の中、他にすることがないのかっ!とお叱りを頂戴する読者もおられると思うが、そんなお話を綴(つづ)りたいと思います。^^日曜の朝、正也は水場で野菜の洗い物を手伝っていた。そこへ、台所の戸を開け、未知子が訊(たず)ねた。「正也、この戸棚に入れておいたお団子、知らないっ!?」『んっ!?僕は知らないよ…』「またまた…。隠しごとしたって、すぐ分かるんだから、正直におっしゃい!」『母さんはそういうけど、僕、ほんとに知らないんだから…』「怪(おか)しいわねぇ~。お義父さまがお食べになったのかしら…?」そこへ、出てこなくてもいいのに、離れからご隠居の恭之介が現れた。「未知子さん、そろそろ昼ですな…」いつもの恭...驚くユーモア短編集(84)隠しごと

  • 驚くユーモア短編集 (83)辞任会見

    とある時代の、とある国会の会見場である。多くの記者団とテレビ中継関係者が見守る中、参議院議長が深々と頭を下げたあと、壇上に設置された幾本ものマイクロホンに向かい、辞任会見を語り始めた。世の中が驚くテレビの実況中継が始まろうとしていた。「国権の最高機関である国会の議長を拝命しながら、かく不祥事を招きました責任は誠に重く、本日、ここに参議院議長の任を辞したく、本会見に臨んだものであります。本来、国会議員は国民の負託に応(こた)えるべく、その責務を全うする地位にあります。当然ながらその任は重く、政教分離は無論のこと、様々な軋轢(あつれき)に屈することのないよう努めるのが責務であります。このような不祥事を招きました責任は誠に大きく、参議院議長の重責を汚す者として辞職の決断に至った次第でございます。と同時に離党届を...驚くユーモア短編集(83)辞任会見

  • 驚くユーモア短編集 (82)あれよあれよ…

    社会の物事は良くも悪くも、あれよあれよ…と、加速度的に進む場合がある。当然、当事者は驚くことになるが、止めようもなくあれよあれよ…と進む現実を誰も食い止めることは出来ない。悪い例だと、強い台風があれよあれよ…という間に接近し、被害を出したあと、あれよあれよ…という間に衰退して遠ざかるといったようなものだ。むろん、よい例もある訳で、残った残金で当たらないと思いながら買った宝くじが、なんとっ!一等3千万円に当たり、その一部で買った証券が、あれよあれよ…という間に高値を呼び、あれよあれよ…という間に大富豪になった、などという場合である。^^この男、田所誠次もそのような一人で、最初は、しがない小市民の一人だった。「あああ…国葬かっ!お偉い人はいいよな…。俺なんか先々、行き倒れて野ざらしさ、ははは…」田所は歯を磨き...驚くユーモア短編集(82)あれよあれよ…

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