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2023/04/10

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  • 雑念ユーモア短編集 (57)連絡

    受付でアポを取ってらっしゃいますか?と訊(たず)ねられた村雲は、いいえ…と返さざるを得なかった。どうもアポを取ってないとダメなように瞬間、村雲には思えた。ところが、そうですか、まあ、いいですよ…と返されたのには驚かされた。それなら初めから訊(き)くなよ…という雑念が村雲の脳裏を掠(かす)めた訳である。しばらくすると、村雲が連絡したのは携帯で、直接、本人と話していたから、すぐ会える…と村雲は軽く考えていたのである。ところが、受付での厳しいチェックが待っていた。村雲は、受付が内線で連絡している間、カンファレンスのロビーに置かれた長椅子で借り物の猫のように小さくなって座って待った。「お待たせしました…」しばらくして、エレベーターで降りてきたのは、この会社の会長で93才のおばあさんだった。どうも耳が遠いらしく、村...雑念ユーモア短編集(57)連絡

  • 雑念ユーモア短編集 (56)熱はいる

    人体は適度な熱を必要とする。体内では〇〇〇カロリーのエネルギーが体細胞に伝達され、体細胞はそのエネルギーを得て生命活動を継続する訳だが、そのとき発生するのが熱である。だが、悪性ウイルスや悪性菌の炎症を抑えようと細胞がフル回転すれば熱が異常発生して高熱を発するから、逆に危険となる。身体に熱はいるが、多過ぎても少な過ぎても困る訳だ。中年女性、竹松幸美は寒さに震えながら熱を欲していた。「寒いわ…}大雪の停電でマンションに敷設された床暖房のセントラル・ヒーティングがダウンし、冷え込んだダイニングのフロアで幸美は、袋入りのホッカイロを数個、服の下に潜ませながら溜息を漏らした。つい数日前までは風邪の高熱に悩まされ、ベッドで寝込んでいた幸美だった。「すみません…風邪で数日、休ませていただきます」『そうなの?インフルエン...雑念ユーモア短編集(56)熱はいる

  • 雑念ユーモア短編集 (55)凍った雪

    困ったことに凍った雪は重くなって樹々を痛める。雪にまた食われたか…と雑念を巡らせながら箱宮は雪折れした枝を手に取りテンションを下げた。前日に降った雪が融け切らず、凍った場合は悪者の雪・・と箱宮は定義づけていた。今回も二日前に降った豪雪が融け切らず凍っていた。『まあ、仕方ないか…』凍った雪にブツブツと語りかけて怒ってみても、これはもうお馬鹿さん以外の何物でもない…と、これくらいの道理は箱宮にも分かっていたが、どうも怒りが治まらなかった。箱宮は箒を逆にして叩き、凍った雪を取り除くことにした。凍った雪の下には丹精して育てたアイリス[アヤメ科]の茎葉が埋まっていた。それは恰(あたか)もツアースキーで危険なコースを滑り、雪崩に巻き込まれたスキー客に似ていなくもないな…と箱宮は雑念を増幅させた。司法試験を一発合格した...雑念ユーモア短編集(55)凍った雪

  • 雑念ユーモア短編集 (54)鬼は外ぉ~福は内ぃ~

    見事、国立大学に一発合格した心底(しんそこ)冷(ひえる)は、「鬼は外ぉ~福は内ぃ~」と、家の出入口で豆を撒(ま)きながら、ふと、雑念を巡らせた。『また今年も豆を撒いている。いったい、何故なんだろう…』と。どうも俺は、パブロフの犬だな…と思え、冷は思わず含み笑いをした。パブロフの犬とは考えもせず、条件反射で物事を繰り返しやってしまう・・という生物学の言葉である。冷は、そしてまた雑念を巡らせた。そうかっ!ひょっとすれば、したことで悪い出来事が最小限に食い止められているのかも知れない…と。ということは、今年も悪い出来事が最小限に食い止められるよう続けているのかも知れないと冷には思えたのである。『冷ぅ~!夕飯だから降りて来なさい~~』豆を撒き終え、二階の自室へ戻った途端、階下のキッチンにいる母親の声が聞こえた。『...雑念ユーモア短編集(54)鬼は外ぉ~福は内ぃ~

  • 雑念ユーモア短編集 (53)信用力

    何がなくても信用があれば食べられる…と、豆尾は雑念を巡らせて思った。季節は五月(さつき)で、鯉の吹き流しがあちらこちらの人家に見える。青空の中、心地よいそよ風に頬を撫でられながら豆尾は堤防伝いの土手道を歩いていた。川の中州では草野球の試合が行われている。よく見れば、カンバスを立て、絵を描く人もいた。しばらく歩いていると、豆尾は急に腹が減ってきた。家を出るとき、硬貨が入った小さめの財布は持って出たが、中身をよく見れば、百円硬貨が一枚と十円硬貨が三枚ほどしかなかった。これではパン+牛乳パックを買えない…と豆尾は困った。前方にパンの直売所が見えたところで、豆尾は堤防の土手を降り、店へと近づいていった。「やあ、豆尾さん。どうされたんです?今日は、やけに早いですね」店員は訝(いぶか)しげに訊(たず)ねた。「天気がい...雑念ユーモア短編集(53)信用力

  • 雑念ユーモア短編集 (52)スパイラル[螺旋{らせん}]

    最近は、どうも沈滞気味だ…と、梅川は歩きながら雑念を巡らせていた。キョロキョロと右横左、さらに右上左上と見回しながら辺りの景色に目をやれば、歩道、道路、中規模ビル、かろうじて残っているアーケード商店街・・と景観は変化していく。数年前に通ったときは人の姿が多く、ザワついていたが…と梅川は思った。景気が沈滞気味だと見て取ったのである。通る人も疎(まば)らで、マスク姿ばかりである。『負のスパイラル[螺旋{らせん}]か…』梅川は、どうも人類は危うい…と神様か仏様にでもなった気分で雑念を増幅させた。そのとき、いい匂いが梅川の鼻を擽(くすぐ)った。道路を挟んだ左前方に目を凝らせば、美味(うま)そうなスイートポテトを売る店が見えた。その店の前だけ黒山の人だかりが出来ている。どうも、いい匂いはその店から漂ってくるように思...雑念ユーモア短編集(52)スパイラル[螺旋{らせん}]

  • 雑念ユーモア短編集 (51)予定 2

    (16)でもタイトルにした予定の別話です。^^予定は未定で確定にあらず…と、竹岡は沈思黙考して雑念を巡らせていた。というのも、竹岡がすること成すことの全てが様々な事情で変化し、出来なかったからである。これは稀有(けう)な現象と言えた。本人がやろうとしていることが出来ないのだから、竹岡に限らず誰だって歯がゆく、イライラするに違いない現象に違いなかった。その日も竹岡は朝から一日の予定を頭に描いていた。ただ、いつも思うようにいかないのだから、どうせ出来ないだろう…とは頭の片隅で思っていたが、それでもアグレッシブに取りかかろうとしていた。その前には、まず腹ごしらえだ…と竹岡は思った。朝はいつも、ハム・エッグに野菜サラダ+トースト1枚[1斤の5分の1]と決めていたから、そのとおり準備にかかった、ところがである。冷蔵...雑念ユーモア短編集(51)予定2

  • 雑念ユーモア短編集 (50)中途半端

    物事をしたとき、中途半端がいい場合と悪い場合がある…と長崎は雑念を巡らせた。いい場合だと物事がスゥ~っと順調に進むが、悪い場合には滞留して進まず、しなかった方がよかった…と後悔する結果になる・・と長崎には思えた。そんな雑念を巡らせたのは、一獲千金を夢見て空売りした株の過去だった。長崎は株取引で億単位を僅(わず)か三日で稼いだのである。そして数日後には一億の大損を出し、結局手元に残ったのは二億の儲けだった。長崎は、また雑念を募らせた。一億の大損をしたのは中途半端な捨て売りだった。僅か三日で三億を稼いだときは…と想い出せば、このときも中途半端な捨て買いだった。底値をつけたな…と判断した長崎は、買う資金がないのに株を捨て買いしたのである。『あの頃は激動の時代だった…』長崎は証券取引の現役を退き、豪勢な別荘で余生...雑念ユーモア短編集(50)中途半端

  • 雑念ユーモア短編集 (49)アレコレ

    野原はアレコレ…と、明日の行動計画に雑念を巡らせていた。『アレが先か、コレが先か?だが…。やはり、コレからか…』野原はコレからにしようと心に決めた。ところが世間はそう甘くない。コレからにしようと野原はコレの関係へ電話をかけた。『ああ、コレですか…。誠に申し訳ないんですが、コレはナニで…と言いますのは、国のコンプライアンス強化で出来んのですわ』「ええっ!そんな馬鹿なっ!!工事されたのはオタクなんですから、出来ん訳がないでしょっ!!」『はあ、それはそうなんですが…。なにせ国の締めつけが厳(きび)しいもんでして、過去のお客様には大変、ご迷惑をおかけ致してますが…』そう電話声が聞こえたとき、野原は絵入りの道路工事看板を、ふと思い出した。[大変、ご迷惑をおかけいたしますm_m]看板の中にはヘルメットを被って立ち、頭...雑念ユーモア短編集(49)アレコレ

  • 雑念ユーモア短編集 (48)いよいよ

    大相撲の本場所も、あれよあれよ…という間に終わってしまったテレビ中継を見ながら、大事な一番に臨んだ力士の心境は、いったいどんなものだろう…と、飼葉は野次馬気分で雑念を巡らせた。『{前奏に引き続き御唱和を…}か。先場所は{心の中で御唱和下さい…}だったな…』それだけコロナが和らいだ・・ということか?と飼葉は関係ないことに雑念を向けた。『それにしても、呆気(あっけ)なかったな…』呆気なかった・・とは、優勝が決定する最後の一番である。その一番を思い出した飼葉の雑念だった。『呆気なかった・・ということは、負けた力士は、いよいよという立ち合いのとき、気持が昂って冷静さを欠いた・・ということになる。結果、それが相撲内容に出てしまった・・と、まあ、こうなるんだろう…』飼葉にとっては人ごとだから、人知が及ばない自然の節理...雑念ユーモア短編集(48)いよいよ

  • 雑念ユーモア短編集 (47)貧乏者の経済観測調査

    侘毛(わびしげ)憐(あわれ)は、なぜ自分が貧乏なのか?…と、残り少ない頭髪を片手で優しく撫でながら雑念を巡らせていた。『一生懸命、働いてきたんだから、俺は当然、裕福になる権利はあるんだが…』侘毛は理詰めで、そう考えながら、新聞を広げ読み始めた。ふと、目についた記事に侘毛は、また雑念を巡らせた。『だが、待てよっ!数億も競馬に賭けた、か…。遊び人でも裕福なんだな。働いてきた俺のところへ金が流れないのは、いったいどういう訳だっ!』侘毛は妙な発想で憤(いきどお)りを感じた。そのとき、侘毛の脳裏は年金暮らしを始める前の自分の姿を思い出した。『そうそう、40年間かけていた国民年金に未納部分がある・・と社会保険庁に言われて決定額を減額されたな…』さらに侘毛は雑念を加速させて巡らせた。『…そのあと、入力の機械化とかで、さ...雑念ユーモア短編集(47)貧乏者の経済観測調査

  • 雑念ユーモア短編集 (45)人と機械

    人が機械を作り出したんだから当然、人がご主人だろう…と雲上は雑念を巡らせて考えた。待てよっ!だが、昨日もパソコンの助けがなかったら課長に怒られるか徹夜だったぞ…と、雲上は最初の雑念を撤回した。課長に言われた予算要求書の作成に取りかかったまではよかったのだ。ところが、前年度に組んだ当初予算が新型コロナの影響で大きく変化し、年度末までに補正予算を二度作る破目になったのである。パソコンのデータ入力によるシミュレーション予測以外に先行き不透明な現実を直視した額は要求出来なかったのである。それが、パソコンを駆使したお蔭で、いとも簡単に要求書を作成出来たのだった。雲上にとって、これはもう、偏(ひとえ)にパソコン様々だったのである。『やはり、機械がご主人か…。ということは、俺達は機械を大事にしないといけない・・というこ...雑念ユーモア短編集(45)人と機械

  • 雑念ユーモア短編集 (44)どうでもいい…

    某テレビ局の大河ドラマではないが、雑念に惑い、どうするっ!などと力まず、どうでもいい…と、軽く物事を往(い)なせば、割合と物事は首尾よく終わる・・としたものだ。^^この男、田力(たぢから)もそんな男で、余り物事を重く考えず、雑念に迷わない男だった。「田力さん、課長が及びですよっ!」とある町役場の商工観光課に勤務する田力は、同僚の後輩職員に心配そうな眼差しで言われた。「ああ、そうなの…」田力は、またかっ!と動じる素振りも見せず、どうでもいいや…といった気分で課長席へと足を運んだ。他の課員達は怖い課長の雷(いかずち)には絶えずビクビクで、呼ばれることに恐怖を感じていたから、心配そうに田力の後ろ姿を見遣(みや)った。「あの…課長、お呼びでしょうか?」「ああ、田力君か…。すまんが、例の一件、いつものように頼むよ」...雑念ユーモア短編集(44)どうでもいい…

  • 雑念ユーモア短編集 (43)活着

    活着・・とは、挿し木、接ぎ木、取り木をした植物が根づいて生命力を得るように、無→生へと変化する現象を指す。これは何も植物に限ったお話ではない。^^「中崎君、このファイル、岡本官房長のところへ…」「はいっ!」人事院搭載名簿により、今年からとある中央省庁へ採用された中崎は、課長の八木山に指示され、大臣官房室へと向かった。中崎が美人だということは関係ないと思うが、^^一種試験をトップで通過した中崎は、人事院でも高く評価され、どこの省庁でも引く手が数多(あまた)だった。ということで、でもないが、今朝も八木山に猫撫で声で柔らかく指示されたのである。氷川には、早くこの課へ活着してもらいたい…という雑念が巡ったに違いなかった。それだけ中崎が有能で、しかも美人となれば、他の中央省庁も黙ってそのままにはしておかない。氷川の...雑念ユーモア短編集(43)活着

  • 雑念ユーモア短編集 (42)尾畑の正月行事

    尾畑は正月が過ぎた頃、今年もやり終えたな…と、淹(い)れた茶を啜(すす)りながら一人、悦(えつ)に入っていた。むろんそれは、心で思う尾畑だけの雑念で、他人はどぉ~とも思わないことだった。尾畑がやり終えたな…と思うのは、例年、慣性のように繰り返される尾畑独自の正月行事である。<1>正月ものの準備[物品、食品など、すべてのものを含む]→<2>注連(しめ)飾り→3<>仏壇・神棚飾り→<4>若水汲み→<5>元旦供え→<6>七草供え→<7>宵戎飾り→<8>小豆正月供え→<9>注連縄外し→<10>正月飾りの左義長持参→<11>仏壇・神棚飾り終い…と続いた。誰が、そうしろっ!と命じた訳でもなく、歳末ともなれば、しなければ…と尾畑が思う彼独自の慣性で繰り返される雑念だった。しなければ、何か悪いことが起きそうな…とか、熟(...雑念ユーモア短編集(42)尾畑の正月行事

  • 雑念ユーモア短編集 (41)俳句

    鳥波田(とりはだ)は乾燥した冬の室内で首筋をボリボリ掻きながら俳句作りに雑念を巡らせていた。『チェッ!こう痒(かゆ)いと、いい句が浮かばん…』いい句が浮かばないのを身体の痒みに転嫁させ、鳥波田は都合のいい理由で暈(ぼか)した。結論を先に言えば、鳥波田はまったくの凡人で、いい俳句づくりなど百年、いや千年先も早かったのである。^^才能の無さに気づかない鳥波田はペンを机に置くと、畳の上で仰向けになり身体を横たえた。そして、いつの間にかスゥ~ピィ~…と、心地いい寝息を立てながら深い眠りへと誘(いざな)われていった。夢の中は春三月だった。梅が綻(ほころ)ぶ庭の床几に腰を下ろしながら、鳥波田は筆と短冊を手に持ち、超有名俳人になったつもりで俳句づくりをしていた。「ダメだな、こりゃ…」眠たくなった鳥波田は勢いよく床几を立...雑念ユーモア短編集(41)俳句

  • 雑念ユーモア短編集 (40)快晴

    どういう訳か、快晴だと浮かぶ雑念も明るくなる。悪い方向に進んでる諸事でも、いい解決法が浮かんだりして明るい方向へ進むのは不思議と言えば不思議な現象だ。これも偏(ひとえ)に、お日さまの輝くような陽光のお蔭(かげ)・・と考えれば得心もいく。野薔薇(のばら)もそう感じる普通人の若いOLだった。「華木さん、コレ30部、お願いします…」「はぁ~~いっ!」ポカポカと暖かい日射しが事務室側面にあるサッシの大ガラスから射し込み、野薔薇の心はいつもよりテンションが上がっていた。加えて、普通の天気ならともかく、今日は雲一つない快晴である。『そんなにっ!』といつもの雑念が浮かぶことなく、野薔薇は愛想いい笑顔で課長補佐の禊萩(みそはぎ)から数枚のA4書類を受け取った。それから数十分後、いつもより早くコピーを終えた野薔薇はルンルン...雑念ユーモア短編集(40)快晴

  • 雑念ユーモア短編集 (39)鳥インフルエンザ

    鳥インフルエンザが猛威を振るい、二十三道県で五十六例もの発生か…。寺崎は新聞を読みながら、困ったものだ…と、さも自分が、国のトップ役人にでもなった気分で雑念を湧かせた。^^その夜、寺崎は夢を見た。━養鶏場のニワトリがバタバタと死んでいく。そのニワトリが人の姿になった。バタバタと倒れていくのはニワトリではなく人だ。━余りにも悲惨な夢の進行に、寺崎はハッ!と目覚めた。冷や汗で顔や背筋がビッショリと濡れていた。昨日観た映画が悪かった…と、寺崎は思った。ところが、その映画のラストがどうしても思い出せない。観たのは昨日である。それが思い出せないのである。寺崎は自分はどうかしている…と、ベッドに横たわりながらまた雑念に沈んだ。鳥インフルエンザはニワトリが感染しただけで死に至る病気である。それがもし、人になれば…。寺崎...雑念ユーモア短編集(39)鳥インフルエンザ

  • 雑念ユーモア短編集 (38)怠惰

    小説家の舘岡は最近の自分が怠惰になっている…と、感じていた。雑念を巡らせ、その原因は何なのか?を探るのだが、コレといって思い当たる節(ふし)がない。正月だからか…と、一度は思ったが、去年の正月は書いていたのである。だとすれば、他に原因がある…と、舘岡は、また雑念を巡らせた。すると、昨年とは違い、今年は風呂に入れなくなった…という生活の変化に気づかされた。液化石油ガス取締法の法令強化により、保安基準が厳(きび)しくなり、排気設備不全でガス会社にガスを止められてしまったのである。結果、今はシャワーのみの侘(わび)しい生活になっていた。舘岡は思った。民を主としてその自由を守るのが政府与党なんじゃないかっ!政府与党は死に体なんだ…と。舘岡は無性に怒りが込み上げてきた。ただ、その怒りを鎮める術(すべ)はなかった。ど...雑念ユーモア短編集(38)怠惰

  • 雑念ユーモア短編集 (37)年

    年が暮れ、そしてまた年が明けようとしていた。その瞬間を見つめながら、桧山は考えていた。『いったい、どこが違うんだ?』と。静かに除夜の鐘が撞(つ)かれる中、深々と夜が更けていった。この光景は前年も、そしてその前年も同じ感覚で迎えていたが、何の変化もなかった…。桧山は正月を迎えた喜びなど欠片(かけら)も感じなかったが、それでも条件反射のように今まで繰り返してきた動きを見せていた。桧山は思った。『ああしろっ!こうしろっ!と命じる雑念より、新たな年を迎えようとする慣性の動きは強い…』と。テレビ画面には、とある局の、とある有名歌手によるニューイヤー・ライブ・コンサートの中継が映し出されていた。桧山はまた、思った。『有名になればなるで、大変なんだな…』と。そして桧山は、またまた思った。『俺はのんびりと毎年、気楽に年越...雑念ユーモア短編集(37)年

  • 雑念ユーモア短編集 (35)待ち時間

    待ち時間をどう過ごすか?は、人によって異なる。神経質に考える人は、大してすることもないのにアレコレと雑念を浮かべ、イライラするに違いない。またある人は、混んでるな…などと、右から左へ受け流し、前もって持参した本を広げ、読み始めることだろう。要するに、性格による差異を露呈するのである。これだけは、生まれ持った性分だけに仕方がない。ただ、のんびり構えた人の方が得をする傾向にある・・という結論は導ける。この男、釜岡も、混んだとあるファミレスへ入り、雑念を浮かべた。というより、混んだとあるファミレスへ踏み込んだ・・と表現した方がいいかも知れない。^^『ここは、突入だなっ!』釜岡は、サッカーのカウンター攻撃へ打って出た。ロングパスのボールを的確に受け、相手ディフェンス陣が戻る前にゴールめざしてひた走ったのである。相...雑念ユーモア短編集(35)待ち時間

  • 雑念ユーモア短編集 (36)判断ミス

    判断ミスは、人である以上、誰だってあるだろう。猪口(いのぐち)もご多分に漏れなかった。『妙だなぁ~、地元の人はアア言ってたが全然、バスが来ないぞ…』猪口は田園が広がる中、誰もいないバス停で雑念を浮かべながらバスを待っていた。地元の人とは、バス停近くの田を耕す老人だったが、少しボケが来ていて、わずか一日に2本しか通らないバスが通ってしまった後だということを忘れていた。猪口はその日はもう来ないバスを待っていたのである。待てど暮らせど来ないバスに、猪口はついにブチ切れた。「全然、来んじゃないかっ!!」猪口はバス停の古びた木製の長椅子から立つと、訊(たず)ねた老人にもう一度、訊ねた。「あの…大分、経ちますが、バスが来ないんですが…」「えっ!ああ、そうかね…。今、何時だがや?」「三時過ぎです…」「あっ!!もう、そん...雑念ユーモア短編集(36)判断ミス

  • 雑念ユーモア短編集 (34)違い

    本物と偽物の違いはどこにあるんだ?…と、縞馬(しまうま)は雑念を浮かべていた。縞馬の考えによれば、本物だと信じたモノが本物で、人が偽物だと言おうと、本物そのモノに思えたからである。ただ、そう考えれば、世間の常識が否定されることになる。縞馬の雑念は益々、増幅されていった。「島馬さん、お車ですよ…」ホテルのロビーの受付係からそう言われ、縞馬は慌てて応接椅子から立ち、ホテルのエントランスを出た。玄関にはタクシーが今か今かと縞馬を待っていた。「お客さん、どちらまで…」「駅までお願いします…」そう返すのが、縞馬にとっては関の山だった。浮かぶ雑念は本物と偽物の違い・・である。「へへへ…私ね、運転歴、三十年の本物の運転手です…」そういった途端、危うく信号ミスでタクシーは十字路を横切りかけ、寸前で急停車した。縞馬は、『本...雑念ユーモア短編集(34)違い

  • 雑念ユーモア短編集 (33)どうするっ!

    国営放送の大河ドラマではないが、人は予想もしていなかったことが突発して起こったとき、さて弱ったぞ…どうするっ!と、瞬時の解決策を求められることがある。「長考に入られましたね…」囲碁の対局が大盤解説で進んでいる。[先手番・黒]の将羽(しょうう)九段が虚(きょ)十段[後手番・白]に大悪手を打ってしまったところだ。解説者の深(しん)九段はそれが分かっているから、心配そうな声で小さく言った。「どうなんですか?」女性の解説助手をする月会(つきあい)二段は打たれた手が妙手か悪手か?を確かめるべく、朴訥(ぼくとつ)に訊(たず)ねた。「何がです?」「今の手です…」シカトされたのが少し癪(しゃく)に障(さわ)ったのか、月会二段は怒りぎみの声で返した。それでも、『それを訊(き)くっ!』とはテレビ中継もあってか、絶対に言えない...雑念ユーモア短編集(33)どうするっ!

  • 雑念ユーモア短編集 (32)クリスマス・ケーキ経済観測調査

    省庁統廃合により現在は廃庁となった組織に経済企画庁がある。一部が事務分掌され内閣府・国民生活局に組織規模の縮小を余儀なくされた省庁である。内部部局だから当然、官房を持たない組織だ。で、閣議にも列席できず、国での発言力は相当、小さい。^^さて、前置きはこの辺にして、タイトルの経済観測調査に言及したい。この経済観測調査は過去の短編集[短編集が多すぎて、どの短編集だったか忘れました。すみません。--私の作品集の中にありますから調べて下さい。^^]でも取り上げたが、トイレット・ぺーパーの巻き幅による経済観測調査がある。今回はクリスマスということもあり、とある菓子店で購入したクリスマス・ケーキによる経済観測調査を試みよう…と雑念を湧かした次第である。^^^^^^と、お呵(わら)い下さい。^^魚乃目(うおのめ)は、今...雑念ユーモア短編集(32)クリスマス・ケーキ経済観測調査

  • 雑念ユーモア短編集 (31)捌(は)け口

    雑念を巡らすのも少しくらいならいいが、一定の限度を超えればトラウマとなり、心理的な異常をきたすらしい。皆瀬もその一人で、雑念の捌(は)け口を日夜、探していた。皆瀬の雑念は、誰もが気にしないような些細(ささい)なことだった。皆瀬は通勤電車に揺られていた。幸いにもその日は空き席があったから座れたが、いつもはギュ~ギュ~詰めの状態の中で押しくら饅頭(まんじゅう)を余儀なくされてたのである。皆瀬は天の救いか…と大仰に考えた。そして、この日に限ってなぜだろう?…と考えた。乗車から降車するまでの時間はおよそ40分あった。皆瀬は目を閉じ、いつもとは違う解き放たれたような感覚の中、目を閉じて考えた。これがいけなかった。どうしても原因が分からないまま降車する駅が近づいてきた。となれば、雑念を浮かべている場合ではない。原因が...雑念ユーモア短編集(31)捌(は)け口

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