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2023/04/10

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  • 雑念ユーモア短編集 (30)すること

    日々することを考えず、根島は生きていた。というより、勤めのことで頭が一杯で、毎日が惰性のように流れていたのである。朝6:00起床→駅7:20発居ノ電乗車→8:20会社ビルへ→17:30退社→駅17:50居ノ電乗車→駅18:30→夕帰宅→朝6:00起床という惰性の日々だった。このサイクルの中で根島に浮かぶ雑念といえば、山積した仕事のアレコレ以外にはなかった。根島は疲れていた。ふと、気づけば根島は定年近くになっていた。ツレアイのことも考えられない流れるような時のサイクルに飲み込まれていたのである。『しまった!!』根島はある日、仕事中の会社のデスクで、ふと、することに気づいたのである。『大失態だっ!!』そう気づいた根島だったが、時すでに遅かった。『しまった!!』明日が退社日だったのである。^^若い人々にアドバイ...雑念ユーモア短編集(30)すること

  • 雑念ユーモア短編集 (29)壊(こわ)れる

    深草は強い木枯らしで壊(こわ)れかけた古小屋を見ながら、しみじみと雑念を浮かべていた。『3次元の物は脆(もろ)いなぁ~、すぐ壊れる…』深草の雑念によれば、次元が大きくなるにつれて壊れる頻度(ひんど)は高くなる・・となる。例えば、絵に描かれた2次元のお茶碗が割れることは、まず有り得ないが、実際のお茶碗[3次元]は、落とせば割れる確率が高い・・という発想である。そう考えれば、4、5次元…と進むに従って、壊れる頻度は高くなると深草は考えたのである。『まあ、古い納屋だから仕方ないか…』心理のテンションが下がれば当然、結論はダウン[下降]する。深草もご多分に漏れなかった。夜になり、深草はまた、しみじみ考えた。『シャワーだけになった風呂だって、コンプライアンスの強化により、排気塔が不完全で使えなくなったんだからな…。...雑念ユーモア短編集(29)壊(こわ)れる

  • 雑念ユーモア短編集 (28)先読み

    いやいや、待て…と、下平は先読みをして雑念を膨(ふく)らませていた。『今は晴れているが、食べてからだと…雲が多いから時雨(しぐれ)ることもある。今は冬場だからな…』先読みした通りに行動すれば、ハズレたとしても降られることもなく安全に違いなかった。これ以上の先読みは必要ないと判断し、下平は昼食をあとにして、外の作業を優先した。下平が外の作業を終えようとしたとき、それまでは雲が多いものの晴れていた空が俄かに薄墨色へと変化し、パラバラ・・と小雨が落ちてきた。時雨だしたのである。下平は先読みした自分を褒(ほ)めてやった。下平が家の中へと入り、昼食を食べ始めたとき、ザザァ~と本降りになった。下平は誰もいないのに、したり顔になりニンマリと哂(わら)った。出来ることは、あと回しにせず、やってしまった方がいいようです。こ...雑念ユーモア短編集(28)先読み

  • 雑念ユーモア短編集 (27)麦踏み

    橘(たちばな)悠(ひさし)は雑念を浮かべていた。『そういや、あの頃は麦踏みをしていたなあ…』麦踏みとは稲の刈り入れのあと、秋に田畑をふたたび耕して麦を植え、その麦が冬の雪害でダメにならないよう、麦の茎を態(わざ)と踏みつけて伸ばさないようにする作業のことである。死語に近くなったこの言葉が悠の心にふと、浮かんだのである。『そういや、この辺りも今や一毛作になったな…』二毛作とは一年に二度、田畑に作物を植えることを意味する。二度作る稲の場合だと二期作と呼ばれる。悠の家は非農家で悠自身も公務員だったから、農業の詳しい知識は分からなかったが、四季の移り行く田園風景を見ながら育っただけに、朧(おぼろ)げながらも最小限の理解はしていた。『菜種の黄色い花畑…胡麻…休耕地にもレンゲの花が色鮮やかに咲いていたなぁ~』悠の雑念...雑念ユーモア短編集(27)麦踏み

  • 雑念ユーモア短編集 (26)理想

    日々を暮らしていれば、どうしても欲が出がちとなる。アアだったら…とか、コウだったら…といった理想を求める雑念が沸々と沸き出る訳だ。^^梢(こずえ)翠(みどり)もそんな若い女性の一人だった。晴れ渡ったとある春の朝、翠は目的もなく旅に出た。要するに行き当たりばったりの旅である。前日の夜、ふと、そう思った翠は、ベッドの横に最低限必要な物をバックに詰めて目覚ましをセットしておいた。いつもは寝坊する翠だったが、その朝はどういう訳かセットした時間の一時間ばかり前に自然と目覚めた。気持が昂(たかぶ)っていた・・ということもある。『新幹線は、つまらないわ、各停にしようっと…』翠は思わなくてもいいのに、そう思った。各停とは各駅停車の普通列車である。予約もなく列車に飛び乗った翠の旅が始まった。翠の理想は景色がよく、のんびりと...雑念ユーモア短編集(26)理想

  • 雑念ユーモア短編集 (25)宝物(たからもの)

    誰にも大切にしているものはあるに違いない。要するに、自分にとっての宝物(たからもの)である。この宝物は自分だけの宝物だから、他人が、『そんな物が?…』と不思議に思おうと、本人にとっては宝物なのだ。楽原も子供の頃から宝物として大切に保管しているビー玉があった。子供の頃、ビー玉遊びで他の遊び仲間からせしめたビー玉が増えるにつれ、楽原にふと、ビー玉に魅了される雑念に取り憑かれるようになったのである。それ以来、楽原は新しいビー玉が増えるにつれ、ニンマリと哂(わら)うことが多くなった。さて、ビー玉が増えると保管場所を確保しなければならない。楽原は家から少し離れた家の所有地である雑木林の一角に穴を掘り、密かに収納するようになった。『これは少し模様が違ういいビー玉だな…』大人になってからも楽原はガラス玉の中に模様が入っ...雑念ユーモア短編集(25)宝物(たからもの)

  • 雑念ユーモア短編集 (24)快晴

    快晴の朝だとアレコレと雑念が湧く。というのも、アレもしたいコレもしたいと外の晴れ渡った外景を見ながら思うからだ。守藤もそんな一人の、しがない中年男だった。『いやいやいや、アアしてからコウしよう。アアする方が簡単に済むから手間取らないから時間も取らない。コウする方は、どうもかなり手間取りそうだからな…』明日は快晴になると予報を知ったその前の夜、守藤は、どうなるか分からない先々のことを、アアでもないコウでもない…と、雑念を浮かべながら思い描いていた。所謂(いわゆる)、取らぬ狸の皮算用である。^^前夜、算段していたことを、さて実行に移すかっ!と守藤は朝食を済ませたあと動き始めた。ところが、である。算段していたことを、どうしても思い出せない。『…ナニをしようと思っていたんだ?』守藤は考え始めた。時は瞬く間に過ぎ、...雑念ユーモア短編集(24)快晴

  • 雑念ユーモア短編集 (23)先手必勝!

    ここは、なにがなんでも勝たないと…と、ラーメン店へ入れなかった宮崎は小市民的な雑念を巡らしていた。昨日は同じ会社の同僚、堀田に先を越され、美味(うま)いラーメン店に人数制限で入れなかったのだ。課が違うこともあり、昼食休憩のタイミングはそれぞれ違ったから、どちらが先に並ぶかは日によって異なった。宮崎は曜日別のラーメン店へ並ぶ人数の統計データを、こともあろうに課のシミュレーション・ソフトを駆使して解析していた。『…と、いうことは、今日は水曜だから、コレくらいの人数か…。よしっ!今日は課長に頼まれたファイル整理もないから店に入れる確率は高い。堀田に勝てるなっ!』宮崎はデスクに座り、自分の職分を熟(こな)しながらニンマリ哂顔(えがお)で、今か今か…と待っていた。やがて、正午を告げるチャイムが社屋に響き渡った。宮崎...雑念ユーモア短編集(23)先手必勝!

  • 雑念ユーモア短編集 (22)お金

    お金とは不思議な生き物で、欲しい貧乏人のところからは離れ、お金などどうでもいいような大富豪のところへ舞い込む・・といった性格を持つ不思議な生き物のようだ。鶏冠(とさか)は年越しを前に、コケコッコォ~![クックドゥ~ドゥ~ドゥ~!]と、お金の支払いに苦しむ貧乏人の一人であった。^^『鶏冠さん、これが最後ですよっ!次、寄せてもらったとき、半年分のお金、支払っていただかないと出ていってもらいますからねっ!』三日前、アパートの管理人に渋面(しぶづら)でそう言われた言葉が、鶏冠の脳裏を駆け巡っていた。いくら気長な人でも半年も待たされた日にゃ、渋面になるのも当然なのだが…。管理人が出て行ったあと、しばらくして鶏冠に雑念が湧いた。昨日(きのう)、ネット記事で読んだ記憶がふと、残り毛が少ない鶏冠の頭に甦(よみがえ)らなく...雑念ユーモア短編集(22)お金

  • 雑念ユーモア短編集 (21)失(な)くす

    アレコレと必要のない雑念を湧かせたばっかりに、いつの間にか大事なものを失(な)くす・・ということがある。課長補佐の梅下はその日も用事を済ませ、勤める町役場へ向かおうとしていた。「すみません。やむを得ぬ急用が出来ましたので、昼まで休ませて戴けないでしょうか?」「んっ?ああ、いいよ。有給休暇の紙、書いといて…」町民の苦情処理をする、年間を通して暇(ひま)な雑務課ということもあり、課長兼係長の竹川は笑顔で快諾した。『これで、ようやく完成した庭池に念願の鯉が泳ぐぞ…』庭池で錦鯉を飼い、橋の上から餌となる麩を撒く・・というのが梅下の念願だった。その念願が庭池の完成で現実のものとなった訳である。ただ、購入した錦鯉は高額のため、一匹だけだった。^^それでも購入代金を支払って帰る梅下の気分はウキウキだった。腕を見れば、昼...雑念ユーモア短編集(21)失(な)くす

  • 雑念ユーモア短編集 (20)時雨(しぐれ)

    照る照る坊主を吊(つ)るしておいたから、次の日は晴れていた。『よかった、よかった…』と、心の内で平坂(ひらさか)澄斗(すみと)はホッ!と安堵(あんど)の息を漏らした。ところが、である。喜び勇んで家を飛び出したまではよかったが、空に暗雲が立ち込め、瞬く間にパラパラと時雨(しぐれ)出した。『よくない、よくない…』平坂の喜びは一転し、テンションは俄かにガタ落ちになり始めたのである。ただ、空を見上げれば暗雲が立ち込めているのは上空のほんの一部で、天空のほとんどは青空だった。平坂は、妙な天気だな…と思いながら、しばらくの間、上空を見上げていた。その所為(せい)か、首を下げると首筋に鈍痛が走った。『ははは…さっぱりだっ!』苦笑いした平坂だったが、テンションは、さらに下降していった。雑念に沈みながら歩道を歩くうちに、い...雑念ユーモア短編集(20)時雨(しぐれ)

  • 雑念ユーモア短編集 (19)買い物

    買い物は雑念が湧きやすい行為の一つである。若い今風ギャルの下房(しもふさ)里美は食品の買い物に家を出た。出たまではよかったのだが、スーパーへ入って買い始めた途端、雑念に悩まされ、半時間ばかり過ぎたというのに買い物のトレーの中は二、三の食品しか入っていなかった。というのも、里美はダイエット中だったからである。『コレを買ったら、たぶん3キロはオーバーになりそう…。やっぱり、やめとこ…』これが里美の辛(つら)く切実な心理である。そんなことで里美は、手にした美味(おい)しそうなスイーツのパックを未練っぽく元の商品棚へ戻した。このスイーツは、里美が店内へ入ってから三度目の戻しだったが、最初の二度、戻した記憶がどういう訳か里美の脳裏から飛んで消えていたのである。里美は恰(あたか)も電車線路の環状線のようにスーパーの中...雑念ユーモア短編集(19)買い物

  • 雑念ユーモア短編集 (18)決断

    決断を鈍(にぶ)らせるのは雑念以外の何物でもない。その雑念さえ湧かさなければ、岳海(たけうみ)が思い描いたコトはスムーズにいくはずだった。それが、である。いらぬ雑念を湧かしたばかりに、岳海の決断は遅れ、描いた構想は大幅に遅れた。その雑念とは、次のようなものだ。(1)とにかく何か食おう。まずアンパンを買い、そのあと牛乳を買った方がいいか…。(2)いやいや、距離からしてあの牛乳屋は遠い…。(3)とすれば、パン屋だが、この時間だとまだ開店していない。(4)そこへいくと、牛乳屋は朝が早いから開いていることは間違いない。。これからすぐ動くなら、やはり遠くても牛乳屋か…。(5)待て待てっ!牛乳屋へ行く途中に、うどんがすぐ食べられる自動販売機があったな…。(6)自動販売機があるなら、うどんにするか…。だが、暖かいお茶も...雑念ユーモア短編集(18)決断

  • 雑念ユーモア短編集 (17)修理

    簡単な修理であれば、手間暇(てまひま)と材料をかければ誰だって出来るに違いない。もちろん、個人の技量には差があるから、自分で出来る範囲に限られるが…。^^この男、藪下も修理出来る技量もないのにアレコレと雑念を湧かしていた。『いやいや、それは無理だろう…。と、なれば、アアするしかないか…』結論から言えば、アアしたとしても薮下の技量では無理だった。^^だが薮下は、そのことに気づかず、自分の雑念のまま行動した。そうこうして数日が過ぎたが、修理は薮下の思うに任せず、手間暇をかけ、散財した挙句、頓挫(とんざ)してしまったのである。『妙だな?上手くいかん…』技量が乏(とぼ)しい薮下に修理できる訳がなかった。『仕方がない。修理を依頼しよう…』ようやく薮下は修理業者に電話をかけ、事無きを得た。初めからそうすれば、何の問題...雑念ユーモア短編集(17)修理

  • 雑念ユーモア短編集 (16)予定

    個人が予定を立てたとしても社会にも予定があり、個人の予定が成立する訳ではない。岬珠代は、休日の朝早くから雑念を膨らませ、アレコレと予定を立てていた。『アソコへ寄って、アレを買ってからナニへ行こうかしら…。でも、それでは間に合わないわね…。とにかくナニへ行くことにしましょう』珠代のアレ→ナニの予定は、女性に有りがちな美しく見せよう…という欲が邪魔をした寄り道の予定だった。徳川秀忠公が、父上にお褒めに預かろう…という欲により、予定を遅らせて関ヶ原に遅参した失敗に似ていなくもなかった。^^正解はアソコへ寄らずアレを買うことなくナニへ行けばよかったのである。かくして、珠代の予定は雑念に歪(ゆが)められ、成就することなく予定通りにいかなくなってしまったのである。理由は、[1]アソコが閉店日で、アレが買えなくなった。...雑念ユーモア短編集(16)予定

  • 雑念ユーモア短編集 (15)天気

    天気は人の力でどうにもならない自然現象だ。そうは言っても、次の日に予定があれば、やはり晴れる方がいいに決まっている。とある町役場に勤める尾羽もそんな思いを胸に、晴れ渡った青空を眺(なが)めながら明日の天気を案じていた。今日が晴れだからといって明日も晴れという保証はないのだ。明日は尾羽にとって人生で初めてデートする日だった。「…」晴れてくれ…という当然の雑念は湧いたが、よく考えれば、晴れたからといってデートが上手(うま)くいくとは限らない訳だ。天気と同じか…という結論を出した尾羽は、毛繕(けずくろ)いをしながらピィ~ピィ~!と鳴いた・・ということはなく、スヤスヤと眠りに落ちた。次の朝は快晴だった。尾羽はワクワクしながらいつものように朝食を食べ、ふと、考えた。「俺はいったい、誰とデートするんだ…?」尾羽がそう...雑念ユーモア短編集(15)天気

  • 雑念ユーモア短編集 (14)選択

    とある冬の二月上旬である。今の春から高校二年に進級する両角(もろずみ)清斗(きよと)は雑念に悩まされていた。理科系に舵(かじ)を切るか、文科系に切るか…の選択で、である。理科系で受験する学部は言わずと知れた、工学、医学、理学、農学などの学部で、文系は経済学、文学などの学部だ。しかし、両角は百手先を読んで決断し、その雑念から解き放たれた。「どうするんだ、両角?」「理科系にします、先生…」進路指導の教師、飛崎(とびさき)からそう言われた両角は、即座にそう答えた。「理科系か…。お前、それでいいのか?こんなこと言っちゃなんだが、お前、おそらく全部落ちるぞ」「えっ!?なぜです、先生?」「なぜって、お前。物理がコノ点で数学がソノ点なんだぞ。こんな点で受かると思ってるのか?」「受けてみないと分からないじゃないですか…」...雑念ユーモア短編集(14)選択

  • 雑念ユーモア短編集 (13)検査

    山郡(やまごおり)は時折り通う病院の検査が嫌になってきていた。もちろん、検査をすることで病気の進行を事前に治療出来ることは理解していた。ただ、検査を受けたあとの医者との面談が嫌だったのである。何事も言われなければそれでよいのだが、もし、悪い結果を言われたときは…と考えれば怖かった訳だ。そんな、ビクビクさせられる検査を何度も受ければ、これはもう、恐怖の雑念の虜(とりこ)にならざるを得なかった。そんなに肝(きも)が据(す)わっている訳ではない山郡とすれば、針の筵(むしろ)に座った気分だったのである。陽気で明るい医者ならまだしも、今通う病院の医者は陰気で余り笑顔を見せず暗かったから、余計に山郡を悩ませていた。「まあ、悪くはないので、お薬を出すほどのことでもありません…」暗い顔で事務的に説明されれば、誰だっていい...雑念ユーモア短編集(13)検査

  • 雑念ユーモア短編集 (12)意味不明

    雑念にもいろいろとあり、ときには意味不明な雑念がふと、湧くことがある。緒宮登美も、そんな女性の一人だった。「私…どうかしたのかしら?」筆が進まなくなった著名作家の緒宮は日々、意味不明な雑念に悩まされるようになった。アレコレと原因を探るのだが、コレといって思い当たることもない。『あの…先生。お頼みしておりました締め切り原稿の方は…』痺(しび)れを切らした緒宮付きの番記者の鳥打から督促(とくそく)の電話が入ったのは、そのときだった。「それがね…。あなた、聞いてくれるっ!」『はあ、お聞きします…』鳥打としては、何が何でも書いてもらわなければ困るのだ。書いてもらわなければ、番記者である鳥打の地位が危うかった。「どうしても書けないのよっ!なぜなのっ!」『はあ…』意味不明な質問をされても、鳥打に答えられる訳がなかった...雑念ユーモア短編集(12)意味不明

  • 雑念ユーモア短編集 (11)トラウマ

    トラウマとはトラとウマではありません。雑念の塊(かたま)りのようなものが引き起こす心の風邪のようなものです。尾水もこのトラウマにここ半年ばかり悩まされていた。職場では日々、「お前は夜から出勤じゃないのか?」と冷やかされていたからである。尾水という苗字は別の意味で水商売を意味し、夜から酒で接客する職業を指す。早い話、バー、スナック、キャパレーなどの類(たぐい)の職業を指すのである。尾水の出勤=オミズの出勤というダジャレの冷やかし言葉だった。最初の頃は笑って受け流していた尾水だったが、冷やかす同僚が増えるにつれ、心理的な負担となっていった。ついには、トイレへ駆け込み、ぅぅぅ…と泣くまでになった。こうして、雑念が高じた尾水は、とうとう病院へ通う破目になった。「尾水さん…」若く奇麗な看護師にそう呼ばれたとき、尾水...雑念ユーモア短編集(11)トラウマ

  • 雑念ユーモア短編集 (10)天水(てんすい)

    W杯120分を戦いぬき、引き分けた末にPK戦で敗退したチームを思い、お通夜のように打ちひしがれた隠れサポーターの崖下は、居間で放心状態に陥(おちい)っていた。そのとき、彼の父親が襖(ふすま)を開け、スゥ~っと幽霊のように入ってきた。「…どうかしたのか、登?」父親はションボリと落胆した息子を見て、ひと言、声をかけた。「なんだ、父さんか。いや、何でもないよ…」「そうか…なら、いいんだが。早く寝ろよ」「ああ…」「そうそう、ベスト8、ダメだったそうじゃないか…」父親の言葉が、まさに自分が落ち込んでいる原因だったから、崖下は心を見透かされたようで、驚いた。「…よく知ってるな、父さん?」「いや、なに…。俺の友人がサポーターで現地へ飛んでるんだ。さっき、電話が入ったのさ」崖下は父親の人脈の広さに、またまた驚いた。「そう...雑念ユーモア短編集(10)天水(てんすい)

  • 雑念ユーモア短編集 (9)騒音

    気になり出せば、どうにもならない雑念が湧くのが騒音だ。とある大手メーカーに勤めるキャリア・ウーマンの若葉もそんな女性の一人だった。今年で三十路の半ばになった若葉も、二十代の頃は雑音が気になるようなことは少しもなかったのだが、ここ最近、どういう訳か雑音が気になるようになっていた。それも、普通人なら気にならないような雑音に、である。『どうしてかしら…?』雑音が気になり出し、心のテンションが下がるたびに若葉はそう思うようになった。その雑念は日を追うごとに強くなっていき、若葉を悩ませた。ある日、若葉は思い切って町の医院へ行ってみることにした。「鬱(うつ)病ですね…」医師は、はっきりと病名を告げた。「あのう…どれくらいで治るんでしょう、先生?」若葉は気がかりになり、訊(たず)ねた。「ははは…鬱病は症状にもよりますが...雑念ユーモア短編集(9)騒音

  • 雑念ユーモア短編集 (8)寄り道

    とある大工店を一人で営む小山は、いつもより早く仕事が終わったことで、寄り道をしよう…と、湧かせなくてもいい雑念を湧かせた。その日は寒く、一杯ひっかけから帰ろう…と思った訳である。^^だが、その雑念がいけなかった。久しぶりの飲み屋ということもあり、ついつい杯(さかずき)が進んだのである。「旦那っ!もうそろそろ店を閉めやすんで、このくらいで…」店の親父は、いい辛(づら)そうに、遠まわしで小山を追い出しにかかった。「なにっ!!もう、そんな時間かっ!?な、なんだ…まだ、こんな時間じゃねえかっ!ウイッ!まあ、親父も一杯いけっ!!」「へい、どうも…」猪口を赤ら顔の客にグイッ!と目の前へ突き出されれば、店主としては断ることも出来ない。ほんの一杯だけのつもりで受けた杯が、親父が酒好だったこともあり、一杯が二杯、二杯が三杯...雑念ユーモア短編集(8)寄り道

  • 雑念ユーモア短編集 (7)異性

    異性に雑念を抱く年頃は幾つくらいか?…と雑念を浮かべる♂の吉岡は、自分が馬鹿なのではないか?と嫌になり、何も思わないことにした。ところがである。次の瞬間、最初に好きになった美代ちゃんのことが、ふと頭を過(よぎ)った。『あの頃は、好きになっただけだなぁ…』幼馴染(おさななじみ)の美代ちゃんの家は、前の小道を挟み、斜め向こうの家だった。『あのときは、アンナコトやコンナコトは思わなかったなぁ~』吉岡は幼い当時の気持が、ただ好きな感情だけだったことを思い出した。青年の頃に感じ始めた色欲が当時は全くなく、ムラムラしなかった訳である。^^『ムラムラして随分、難儀したなぁ~』雑念は益々、膨(ふく)らみ、吉岡は好きになることと色欲を感じることの違いが、よく分からなくなった。吉岡は、ふたたび考えないことにした。ところが、で...雑念ユーモア短編集(7)異性

  • 雑念ユーモア短編集 (6)狐の嫁入り

    (2)で書いた数日前のサッカー内容の短編が、まさか現実になろうとは思ってもいませんでした。好結果の予選突破に感激しつつ、馬鹿のように、ぅぅぅ…と思うお馬鹿なのです。それにしても、よかった、よかった…。^^私は神様でも仏様でもないから先々のことは分かりませんから、以降の決勝トーナメントの結果に関しては、例によって、君の応援するチームが勝とうと負けようと一切、関知しないからそのつもりで…。なお、この短編も自動的には消滅しません。昼過ぎになり、晴れて日射しがあるにもかかわらず小雨がパラつきだした空を見上げ、富高は雑念を湧かせていた。『狐の嫁入りは、お目出度いんだろうか…』そんな富安の心の雑念を知ってか知らずか、空は一時的に小雨がパラついただけで、すぐに晴れてきたのである。『こういう場合の狐の嫁入りは成立するんだ...雑念ユーモア短編集(6)狐の嫁入り

  • 雑念ユーモア短編集 (5)座禅

    雑念を払おう…と思えば、その方法を探ることになる。最も手っ取り早い方法が座禅だが、辺りがまだ暗い早朝から、とある禅寺の前では一人のサラリーマンが山門を潜(くぐ)っていた。「お願い致します…」男は本堂近くの庫裏(くり)前で箒(ほうき)を手に落ち葉を掃いている老僧に声をかけた。老僧は男を窺(うかが)うでなく見据え、朴訥(ぼくとつ)に返した。「…はい、何ですかな?」「あの…座禅をさせて戴きたくお参りさせていただいた者ですが…」「ほう、左様でしたかな…。受付は九時からとなっております。しばらくは庫裏にてお待ち下され。白湯(さゆ)などをお出し致しますれば…」男は老僧の言葉を聞き、劇場の開演待ちのようなものだな…と、思うでなく思った。男が庫裏へ入ると受付があり、若い禅僧がウトウトしながら机を前に惰眠を貪(むさぼ)って...雑念ユーモア短編集(5)座禅

  • 雑念ユーモア短編集 (4)決断力

    雑念が湧くと、どうしても決断力が鈍(にぶ)りやすくなる。この男、とある町役場の市民課に勤める都筑(つつく)も、出勤前の朝ご飯を食べながら雑念で迷っている一人だった。『いやいや、ソレをしてから課長補佐に伺(うかが)いを立てた方がいいか…』そう思いながら椀(わん)の味噌汁をグビッ!と喉(のど)へ流し込んだ。すると次の瞬間、別の雑念が、ふと浮かんだ。『待て待て…ソレをしてからだと、課長に朝一に頼まれたアレが後(あと)回しになるな…』都筑にすれば当然、課長の方が課長補佐より優先権があるように思えた。なんといっても人事異動前の二月半ばだったからである。決断力が回復した都筑は、よしよし、課長のアレからだな…と決断ながら味付け海苔に醤油を少しつけた瞬間、また別の雑念が湧いてきた。『待てよ…そうすると、部長に頼まれたナニ...雑念ユーモア短編集(4)決断力

  • 雑念ユーモア短編集 (3)流動的

    物事が固定せず、流動的だと雑念が湧きやすい。この男、北岡も、そんな男の一人だった。「今日は混んでるわね。北岡さん、まだ当分、かかるわよ、この調子だと…」社員食堂で並んでいた北岡は、同じ課のキャリア・ウーマン南尾明代に後ろから声をかけられ、ギクッ!として振り返った。「なんだ、南尾さんか…。いつもは外で食べてるから分からないんだよ。どれくらいかかるの?」「そうね…。これくらいの並びなら20分ってとこね」「そんなに?」「ええ、急いでるの?」「ああ、まあ…」北岡は昼食を早く済ませ、部長の東山にヨイショ!しようと雑念を湧かせていたのだ。ヨイショ!するとは、東山がするゴルフの自慢話を聞くだけだったが、これがどうしてどうして、結構な効果があり、北岡はこの春の人事異動で課長代理代行に昇格したのである。それまでは課長代理代...雑念ユーモア短編集(3)流動的

  • 雑念ユーモア短編集 (2)禍福(かふく)

    サッカーのW杯、カタール[ドーハ]大会が華やかに開催されている。サッカー好きの蹴鞠(けまり)はドイツ戦の劇的勝利に酔いしれていた。ところが、である。その喜びも束(つか)の間(ま)、二日後に何気なく見たパソコンのネット記事で代表チームがコスタリカに敗れたことを知りたくもないのに知らされ、すっかりショボくなった。蹴鞠には劇的勝利によって予選突破は確実…という決まりもしていないこの先の大会予測の雑念が、すでに脳裏に刻まれていたからである。『そ、そんな…ば、馬鹿なっ!!ぅぅぅ…』これが代表チームの敗戦を知ったときの蹴鞠の心情である。だが、予選敗退はまだ決まっていない…という心情もほんの僅(わず)かだが残されていた。『禍福(かふく)は糾(あざな)える縄(なわ)の如し・・と言うじゃないかっ!だとすれば、次は勝ちだっ!...雑念ユーモア短編集(2)禍福(かふく)

  • 雑念ユーモア短編集 (1)危険

    人には108の煩悩(ぼんのう)があると言われている。それらの煩悩が生まれるのも、世知辛い社会で暮らす私達の生活の厳(きび)しさから何とか逃れようとする人々の雑念から派生しているのかも知れない。この短編集では、そうした人々の雑念から生まれる成否を面白可笑しく描こうと思っているところです。^^霜川は、晴れたこの日も漁船に乗り、漁に出ていた。そんな魚川に、いつもなら浮かばない雑念が、ふと浮かんだ。『今日は少し多めに…』少し多めに…とは、漁獲量を指した。漁獲量を増すためには、網を入れるいつものエリアを変えねばならない。隣家の漁師、霧岡が言っていた言葉を思い出した霜川は、言われたエリアの方角へと舵(かじ)を切った。そのエリアの位置は、いつものエリアから小一時間かかる距離にあり、さほど危険とも思われなかった。数十分後...雑念ユーモア短編集(1)危険

  • 驚くユーモア短編集 (100)アイデア

    アイデアとは妙なもので、必死に考えるときは浮かばず、何も考えていないときに、ふと浮かぶのだから驚く。久しぶりに快晴となった今日の朝、食べたものを最後に体内から出すトイレでの作業中、ふと浮かんだのがアイデアというタイトルです。^^ここは大手食品企業の本社ビルである。とある階にある開発事業部では、ここ数年の業績悪化を食い止めようと日夜、事業立て直しのアイデアを模索(もさく)していた。「案山子田(かかしだ)君、まだいいアイデアは浮かんばんのかね?」少しも進まない事業立て直し策に業(ごう)を煮やした部長の稲﨑(いなざき)が開発課の課長、案山子田の課長席へ部長室から早足でやって来た。「はあ部長。課員には叱咤(しった)しておるのですが、いまのところ…」「いまのところって、君ねぇ~!」稲﨑は今にも美味(おい)しく食べれ...驚くユーモア短編集(100)アイデア

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