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2023/04/10

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  • 雑念ユーモア短編集 (57)連絡

    受付でアポを取ってらっしゃいますか?と訊(たず)ねられた村雲は、いいえ…と返さざるを得なかった。どうもアポを取ってないとダメなように瞬間、村雲には思えた。ところが、そうですか、まあ、いいですよ…と返されたのには驚かされた。それなら初めから訊(き)くなよ…という雑念が村雲の脳裏を掠(かす)めた訳である。しばらくすると、村雲が連絡したのは携帯で、直接、本人と話していたから、すぐ会える…と村雲は軽く考えていたのである。ところが、受付での厳しいチェックが待っていた。村雲は、受付が内線で連絡している間、カンファレンスのロビーに置かれた長椅子で借り物の猫のように小さくなって座って待った。「お待たせしました…」しばらくして、エレベーターで降りてきたのは、この会社の会長で93才のおばあさんだった。どうも耳が遠いらしく、村...雑念ユーモア短編集(57)連絡

  • 雑念ユーモア短編集 (56)熱はいる

    人体は適度な熱を必要とする。体内では〇〇〇カロリーのエネルギーが体細胞に伝達され、体細胞はそのエネルギーを得て生命活動を継続する訳だが、そのとき発生するのが熱である。だが、悪性ウイルスや悪性菌の炎症を抑えようと細胞がフル回転すれば熱が異常発生して高熱を発するから、逆に危険となる。身体に熱はいるが、多過ぎても少な過ぎても困る訳だ。中年女性、竹松幸美は寒さに震えながら熱を欲していた。「寒いわ…}大雪の停電でマンションに敷設された床暖房のセントラル・ヒーティングがダウンし、冷え込んだダイニングのフロアで幸美は、袋入りのホッカイロを数個、服の下に潜ませながら溜息を漏らした。つい数日前までは風邪の高熱に悩まされ、ベッドで寝込んでいた幸美だった。「すみません…風邪で数日、休ませていただきます」『そうなの?インフルエン...雑念ユーモア短編集(56)熱はいる

  • 雑念ユーモア短編集 (55)凍った雪

    困ったことに凍った雪は重くなって樹々を痛める。雪にまた食われたか…と雑念を巡らせながら箱宮は雪折れした枝を手に取りテンションを下げた。前日に降った雪が融け切らず、凍った場合は悪者の雪・・と箱宮は定義づけていた。今回も二日前に降った豪雪が融け切らず凍っていた。『まあ、仕方ないか…』凍った雪にブツブツと語りかけて怒ってみても、これはもうお馬鹿さん以外の何物でもない…と、これくらいの道理は箱宮にも分かっていたが、どうも怒りが治まらなかった。箱宮は箒を逆にして叩き、凍った雪を取り除くことにした。凍った雪の下には丹精して育てたアイリス[アヤメ科]の茎葉が埋まっていた。それは恰(あたか)もツアースキーで危険なコースを滑り、雪崩に巻き込まれたスキー客に似ていなくもないな…と箱宮は雑念を増幅させた。司法試験を一発合格した...雑念ユーモア短編集(55)凍った雪

  • 雑念ユーモア短編集 (54)鬼は外ぉ~福は内ぃ~

    見事、国立大学に一発合格した心底(しんそこ)冷(ひえる)は、「鬼は外ぉ~福は内ぃ~」と、家の出入口で豆を撒(ま)きながら、ふと、雑念を巡らせた。『また今年も豆を撒いている。いったい、何故なんだろう…』と。どうも俺は、パブロフの犬だな…と思え、冷は思わず含み笑いをした。パブロフの犬とは考えもせず、条件反射で物事を繰り返しやってしまう・・という生物学の言葉である。冷は、そしてまた雑念を巡らせた。そうかっ!ひょっとすれば、したことで悪い出来事が最小限に食い止められているのかも知れない…と。ということは、今年も悪い出来事が最小限に食い止められるよう続けているのかも知れないと冷には思えたのである。『冷ぅ~!夕飯だから降りて来なさい~~』豆を撒き終え、二階の自室へ戻った途端、階下のキッチンにいる母親の声が聞こえた。『...雑念ユーモア短編集(54)鬼は外ぉ~福は内ぃ~

  • 雑念ユーモア短編集 (53)信用力

    何がなくても信用があれば食べられる…と、豆尾は雑念を巡らせて思った。季節は五月(さつき)で、鯉の吹き流しがあちらこちらの人家に見える。青空の中、心地よいそよ風に頬を撫でられながら豆尾は堤防伝いの土手道を歩いていた。川の中州では草野球の試合が行われている。よく見れば、カンバスを立て、絵を描く人もいた。しばらく歩いていると、豆尾は急に腹が減ってきた。家を出るとき、硬貨が入った小さめの財布は持って出たが、中身をよく見れば、百円硬貨が一枚と十円硬貨が三枚ほどしかなかった。これではパン+牛乳パックを買えない…と豆尾は困った。前方にパンの直売所が見えたところで、豆尾は堤防の土手を降り、店へと近づいていった。「やあ、豆尾さん。どうされたんです?今日は、やけに早いですね」店員は訝(いぶか)しげに訊(たず)ねた。「天気がい...雑念ユーモア短編集(53)信用力

  • 雑念ユーモア短編集 (52)スパイラル[螺旋{らせん}]

    最近は、どうも沈滞気味だ…と、梅川は歩きながら雑念を巡らせていた。キョロキョロと右横左、さらに右上左上と見回しながら辺りの景色に目をやれば、歩道、道路、中規模ビル、かろうじて残っているアーケード商店街・・と景観は変化していく。数年前に通ったときは人の姿が多く、ザワついていたが…と梅川は思った。景気が沈滞気味だと見て取ったのである。通る人も疎(まば)らで、マスク姿ばかりである。『負のスパイラル[螺旋{らせん}]か…』梅川は、どうも人類は危うい…と神様か仏様にでもなった気分で雑念を増幅させた。そのとき、いい匂いが梅川の鼻を擽(くすぐ)った。道路を挟んだ左前方に目を凝らせば、美味(うま)そうなスイートポテトを売る店が見えた。その店の前だけ黒山の人だかりが出来ている。どうも、いい匂いはその店から漂ってくるように思...雑念ユーモア短編集(52)スパイラル[螺旋{らせん}]

  • 雑念ユーモア短編集 (51)予定 2

    (16)でもタイトルにした予定の別話です。^^予定は未定で確定にあらず…と、竹岡は沈思黙考して雑念を巡らせていた。というのも、竹岡がすること成すことの全てが様々な事情で変化し、出来なかったからである。これは稀有(けう)な現象と言えた。本人がやろうとしていることが出来ないのだから、竹岡に限らず誰だって歯がゆく、イライラするに違いない現象に違いなかった。その日も竹岡は朝から一日の予定を頭に描いていた。ただ、いつも思うようにいかないのだから、どうせ出来ないだろう…とは頭の片隅で思っていたが、それでもアグレッシブに取りかかろうとしていた。その前には、まず腹ごしらえだ…と竹岡は思った。朝はいつも、ハム・エッグに野菜サラダ+トースト1枚[1斤の5分の1]と決めていたから、そのとおり準備にかかった、ところがである。冷蔵...雑念ユーモア短編集(51)予定2

  • 雑念ユーモア短編集 (50)中途半端

    物事をしたとき、中途半端がいい場合と悪い場合がある…と長崎は雑念を巡らせた。いい場合だと物事がスゥ~っと順調に進むが、悪い場合には滞留して進まず、しなかった方がよかった…と後悔する結果になる・・と長崎には思えた。そんな雑念を巡らせたのは、一獲千金を夢見て空売りした株の過去だった。長崎は株取引で億単位を僅(わず)か三日で稼いだのである。そして数日後には一億の大損を出し、結局手元に残ったのは二億の儲けだった。長崎は、また雑念を募らせた。一億の大損をしたのは中途半端な捨て売りだった。僅か三日で三億を稼いだときは…と想い出せば、このときも中途半端な捨て買いだった。底値をつけたな…と判断した長崎は、買う資金がないのに株を捨て買いしたのである。『あの頃は激動の時代だった…』長崎は証券取引の現役を退き、豪勢な別荘で余生...雑念ユーモア短編集(50)中途半端

  • 雑念ユーモア短編集 (49)アレコレ

    野原はアレコレ…と、明日の行動計画に雑念を巡らせていた。『アレが先か、コレが先か?だが…。やはり、コレからか…』野原はコレからにしようと心に決めた。ところが世間はそう甘くない。コレからにしようと野原はコレの関係へ電話をかけた。『ああ、コレですか…。誠に申し訳ないんですが、コレはナニで…と言いますのは、国のコンプライアンス強化で出来んのですわ』「ええっ!そんな馬鹿なっ!!工事されたのはオタクなんですから、出来ん訳がないでしょっ!!」『はあ、それはそうなんですが…。なにせ国の締めつけが厳(きび)しいもんでして、過去のお客様には大変、ご迷惑をおかけ致してますが…』そう電話声が聞こえたとき、野原は絵入りの道路工事看板を、ふと思い出した。[大変、ご迷惑をおかけいたしますm_m]看板の中にはヘルメットを被って立ち、頭...雑念ユーモア短編集(49)アレコレ

  • 雑念ユーモア短編集 (48)いよいよ

    大相撲の本場所も、あれよあれよ…という間に終わってしまったテレビ中継を見ながら、大事な一番に臨んだ力士の心境は、いったいどんなものだろう…と、飼葉は野次馬気分で雑念を巡らせた。『{前奏に引き続き御唱和を…}か。先場所は{心の中で御唱和下さい…}だったな…』それだけコロナが和らいだ・・ということか?と飼葉は関係ないことに雑念を向けた。『それにしても、呆気(あっけ)なかったな…』呆気なかった・・とは、優勝が決定する最後の一番である。その一番を思い出した飼葉の雑念だった。『呆気なかった・・ということは、負けた力士は、いよいよという立ち合いのとき、気持が昂って冷静さを欠いた・・ということになる。結果、それが相撲内容に出てしまった・・と、まあ、こうなるんだろう…』飼葉にとっては人ごとだから、人知が及ばない自然の節理...雑念ユーモア短編集(48)いよいよ

  • 雑念ユーモア短編集 (47)貧乏者の経済観測調査

    侘毛(わびしげ)憐(あわれ)は、なぜ自分が貧乏なのか?…と、残り少ない頭髪を片手で優しく撫でながら雑念を巡らせていた。『一生懸命、働いてきたんだから、俺は当然、裕福になる権利はあるんだが…』侘毛は理詰めで、そう考えながら、新聞を広げ読み始めた。ふと、目についた記事に侘毛は、また雑念を巡らせた。『だが、待てよっ!数億も競馬に賭けた、か…。遊び人でも裕福なんだな。働いてきた俺のところへ金が流れないのは、いったいどういう訳だっ!』侘毛は妙な発想で憤(いきどお)りを感じた。そのとき、侘毛の脳裏は年金暮らしを始める前の自分の姿を思い出した。『そうそう、40年間かけていた国民年金に未納部分がある・・と社会保険庁に言われて決定額を減額されたな…』さらに侘毛は雑念を加速させて巡らせた。『…そのあと、入力の機械化とかで、さ...雑念ユーモア短編集(47)貧乏者の経済観測調査

  • 雑念ユーモア短編集 (45)人と機械

    人が機械を作り出したんだから当然、人がご主人だろう…と雲上は雑念を巡らせて考えた。待てよっ!だが、昨日もパソコンの助けがなかったら課長に怒られるか徹夜だったぞ…と、雲上は最初の雑念を撤回した。課長に言われた予算要求書の作成に取りかかったまではよかったのだ。ところが、前年度に組んだ当初予算が新型コロナの影響で大きく変化し、年度末までに補正予算を二度作る破目になったのである。パソコンのデータ入力によるシミュレーション予測以外に先行き不透明な現実を直視した額は要求出来なかったのである。それが、パソコンを駆使したお蔭で、いとも簡単に要求書を作成出来たのだった。雲上にとって、これはもう、偏(ひとえ)にパソコン様々だったのである。『やはり、機械がご主人か…。ということは、俺達は機械を大事にしないといけない・・というこ...雑念ユーモア短編集(45)人と機械

  • 雑念ユーモア短編集 (44)どうでもいい…

    某テレビ局の大河ドラマではないが、雑念に惑い、どうするっ!などと力まず、どうでもいい…と、軽く物事を往(い)なせば、割合と物事は首尾よく終わる・・としたものだ。^^この男、田力(たぢから)もそんな男で、余り物事を重く考えず、雑念に迷わない男だった。「田力さん、課長が及びですよっ!」とある町役場の商工観光課に勤務する田力は、同僚の後輩職員に心配そうな眼差しで言われた。「ああ、そうなの…」田力は、またかっ!と動じる素振りも見せず、どうでもいいや…といった気分で課長席へと足を運んだ。他の課員達は怖い課長の雷(いかずち)には絶えずビクビクで、呼ばれることに恐怖を感じていたから、心配そうに田力の後ろ姿を見遣(みや)った。「あの…課長、お呼びでしょうか?」「ああ、田力君か…。すまんが、例の一件、いつものように頼むよ」...雑念ユーモア短編集(44)どうでもいい…

  • 雑念ユーモア短編集 (43)活着

    活着・・とは、挿し木、接ぎ木、取り木をした植物が根づいて生命力を得るように、無→生へと変化する現象を指す。これは何も植物に限ったお話ではない。^^「中崎君、このファイル、岡本官房長のところへ…」「はいっ!」人事院搭載名簿により、今年からとある中央省庁へ採用された中崎は、課長の八木山に指示され、大臣官房室へと向かった。中崎が美人だということは関係ないと思うが、^^一種試験をトップで通過した中崎は、人事院でも高く評価され、どこの省庁でも引く手が数多(あまた)だった。ということで、でもないが、今朝も八木山に猫撫で声で柔らかく指示されたのである。氷川には、早くこの課へ活着してもらいたい…という雑念が巡ったに違いなかった。それだけ中崎が有能で、しかも美人となれば、他の中央省庁も黙ってそのままにはしておかない。氷川の...雑念ユーモア短編集(43)活着

  • 雑念ユーモア短編集 (42)尾畑の正月行事

    尾畑は正月が過ぎた頃、今年もやり終えたな…と、淹(い)れた茶を啜(すす)りながら一人、悦(えつ)に入っていた。むろんそれは、心で思う尾畑だけの雑念で、他人はどぉ~とも思わないことだった。尾畑がやり終えたな…と思うのは、例年、慣性のように繰り返される尾畑独自の正月行事である。<1>正月ものの準備[物品、食品など、すべてのものを含む]→<2>注連(しめ)飾り→3<>仏壇・神棚飾り→<4>若水汲み→<5>元旦供え→<6>七草供え→<7>宵戎飾り→<8>小豆正月供え→<9>注連縄外し→<10>正月飾りの左義長持参→<11>仏壇・神棚飾り終い…と続いた。誰が、そうしろっ!と命じた訳でもなく、歳末ともなれば、しなければ…と尾畑が思う彼独自の慣性で繰り返される雑念だった。しなければ、何か悪いことが起きそうな…とか、熟(...雑念ユーモア短編集(42)尾畑の正月行事

  • 雑念ユーモア短編集 (41)俳句

    鳥波田(とりはだ)は乾燥した冬の室内で首筋をボリボリ掻きながら俳句作りに雑念を巡らせていた。『チェッ!こう痒(かゆ)いと、いい句が浮かばん…』いい句が浮かばないのを身体の痒みに転嫁させ、鳥波田は都合のいい理由で暈(ぼか)した。結論を先に言えば、鳥波田はまったくの凡人で、いい俳句づくりなど百年、いや千年先も早かったのである。^^才能の無さに気づかない鳥波田はペンを机に置くと、畳の上で仰向けになり身体を横たえた。そして、いつの間にかスゥ~ピィ~…と、心地いい寝息を立てながら深い眠りへと誘(いざな)われていった。夢の中は春三月だった。梅が綻(ほころ)ぶ庭の床几に腰を下ろしながら、鳥波田は筆と短冊を手に持ち、超有名俳人になったつもりで俳句づくりをしていた。「ダメだな、こりゃ…」眠たくなった鳥波田は勢いよく床几を立...雑念ユーモア短編集(41)俳句

  • 雑念ユーモア短編集 (40)快晴

    どういう訳か、快晴だと浮かぶ雑念も明るくなる。悪い方向に進んでる諸事でも、いい解決法が浮かんだりして明るい方向へ進むのは不思議と言えば不思議な現象だ。これも偏(ひとえ)に、お日さまの輝くような陽光のお蔭(かげ)・・と考えれば得心もいく。野薔薇(のばら)もそう感じる普通人の若いOLだった。「華木さん、コレ30部、お願いします…」「はぁ~~いっ!」ポカポカと暖かい日射しが事務室側面にあるサッシの大ガラスから射し込み、野薔薇の心はいつもよりテンションが上がっていた。加えて、普通の天気ならともかく、今日は雲一つない快晴である。『そんなにっ!』といつもの雑念が浮かぶことなく、野薔薇は愛想いい笑顔で課長補佐の禊萩(みそはぎ)から数枚のA4書類を受け取った。それから数十分後、いつもより早くコピーを終えた野薔薇はルンルン...雑念ユーモア短編集(40)快晴

  • 雑念ユーモア短編集 (39)鳥インフルエンザ

    鳥インフルエンザが猛威を振るい、二十三道県で五十六例もの発生か…。寺崎は新聞を読みながら、困ったものだ…と、さも自分が、国のトップ役人にでもなった気分で雑念を湧かせた。^^その夜、寺崎は夢を見た。━養鶏場のニワトリがバタバタと死んでいく。そのニワトリが人の姿になった。バタバタと倒れていくのはニワトリではなく人だ。━余りにも悲惨な夢の進行に、寺崎はハッ!と目覚めた。冷や汗で顔や背筋がビッショリと濡れていた。昨日観た映画が悪かった…と、寺崎は思った。ところが、その映画のラストがどうしても思い出せない。観たのは昨日である。それが思い出せないのである。寺崎は自分はどうかしている…と、ベッドに横たわりながらまた雑念に沈んだ。鳥インフルエンザはニワトリが感染しただけで死に至る病気である。それがもし、人になれば…。寺崎...雑念ユーモア短編集(39)鳥インフルエンザ

  • 雑念ユーモア短編集 (38)怠惰

    小説家の舘岡は最近の自分が怠惰になっている…と、感じていた。雑念を巡らせ、その原因は何なのか?を探るのだが、コレといって思い当たる節(ふし)がない。正月だからか…と、一度は思ったが、去年の正月は書いていたのである。だとすれば、他に原因がある…と、舘岡は、また雑念を巡らせた。すると、昨年とは違い、今年は風呂に入れなくなった…という生活の変化に気づかされた。液化石油ガス取締法の法令強化により、保安基準が厳(きび)しくなり、排気設備不全でガス会社にガスを止められてしまったのである。結果、今はシャワーのみの侘(わび)しい生活になっていた。舘岡は思った。民を主としてその自由を守るのが政府与党なんじゃないかっ!政府与党は死に体なんだ…と。舘岡は無性に怒りが込み上げてきた。ただ、その怒りを鎮める術(すべ)はなかった。ど...雑念ユーモア短編集(38)怠惰

  • 雑念ユーモア短編集 (37)年

    年が暮れ、そしてまた年が明けようとしていた。その瞬間を見つめながら、桧山は考えていた。『いったい、どこが違うんだ?』と。静かに除夜の鐘が撞(つ)かれる中、深々と夜が更けていった。この光景は前年も、そしてその前年も同じ感覚で迎えていたが、何の変化もなかった…。桧山は正月を迎えた喜びなど欠片(かけら)も感じなかったが、それでも条件反射のように今まで繰り返してきた動きを見せていた。桧山は思った。『ああしろっ!こうしろっ!と命じる雑念より、新たな年を迎えようとする慣性の動きは強い…』と。テレビ画面には、とある局の、とある有名歌手によるニューイヤー・ライブ・コンサートの中継が映し出されていた。桧山はまた、思った。『有名になればなるで、大変なんだな…』と。そして桧山は、またまた思った。『俺はのんびりと毎年、気楽に年越...雑念ユーモア短編集(37)年

  • 雑念ユーモア短編集 (35)待ち時間

    待ち時間をどう過ごすか?は、人によって異なる。神経質に考える人は、大してすることもないのにアレコレと雑念を浮かべ、イライラするに違いない。またある人は、混んでるな…などと、右から左へ受け流し、前もって持参した本を広げ、読み始めることだろう。要するに、性格による差異を露呈するのである。これだけは、生まれ持った性分だけに仕方がない。ただ、のんびり構えた人の方が得をする傾向にある・・という結論は導ける。この男、釜岡も、混んだとあるファミレスへ入り、雑念を浮かべた。というより、混んだとあるファミレスへ踏み込んだ・・と表現した方がいいかも知れない。^^『ここは、突入だなっ!』釜岡は、サッカーのカウンター攻撃へ打って出た。ロングパスのボールを的確に受け、相手ディフェンス陣が戻る前にゴールめざしてひた走ったのである。相...雑念ユーモア短編集(35)待ち時間

  • 雑念ユーモア短編集 (36)判断ミス

    判断ミスは、人である以上、誰だってあるだろう。猪口(いのぐち)もご多分に漏れなかった。『妙だなぁ~、地元の人はアア言ってたが全然、バスが来ないぞ…』猪口は田園が広がる中、誰もいないバス停で雑念を浮かべながらバスを待っていた。地元の人とは、バス停近くの田を耕す老人だったが、少しボケが来ていて、わずか一日に2本しか通らないバスが通ってしまった後だということを忘れていた。猪口はその日はもう来ないバスを待っていたのである。待てど暮らせど来ないバスに、猪口はついにブチ切れた。「全然、来んじゃないかっ!!」猪口はバス停の古びた木製の長椅子から立つと、訊(たず)ねた老人にもう一度、訊ねた。「あの…大分、経ちますが、バスが来ないんですが…」「えっ!ああ、そうかね…。今、何時だがや?」「三時過ぎです…」「あっ!!もう、そん...雑念ユーモア短編集(36)判断ミス

  • 雑念ユーモア短編集 (34)違い

    本物と偽物の違いはどこにあるんだ?…と、縞馬(しまうま)は雑念を浮かべていた。縞馬の考えによれば、本物だと信じたモノが本物で、人が偽物だと言おうと、本物そのモノに思えたからである。ただ、そう考えれば、世間の常識が否定されることになる。縞馬の雑念は益々、増幅されていった。「島馬さん、お車ですよ…」ホテルのロビーの受付係からそう言われ、縞馬は慌てて応接椅子から立ち、ホテルのエントランスを出た。玄関にはタクシーが今か今かと縞馬を待っていた。「お客さん、どちらまで…」「駅までお願いします…」そう返すのが、縞馬にとっては関の山だった。浮かぶ雑念は本物と偽物の違い・・である。「へへへ…私ね、運転歴、三十年の本物の運転手です…」そういった途端、危うく信号ミスでタクシーは十字路を横切りかけ、寸前で急停車した。縞馬は、『本...雑念ユーモア短編集(34)違い

  • 雑念ユーモア短編集 (33)どうするっ!

    国営放送の大河ドラマではないが、人は予想もしていなかったことが突発して起こったとき、さて弱ったぞ…どうするっ!と、瞬時の解決策を求められることがある。「長考に入られましたね…」囲碁の対局が大盤解説で進んでいる。[先手番・黒]の将羽(しょうう)九段が虚(きょ)十段[後手番・白]に大悪手を打ってしまったところだ。解説者の深(しん)九段はそれが分かっているから、心配そうな声で小さく言った。「どうなんですか?」女性の解説助手をする月会(つきあい)二段は打たれた手が妙手か悪手か?を確かめるべく、朴訥(ぼくとつ)に訊(たず)ねた。「何がです?」「今の手です…」シカトされたのが少し癪(しゃく)に障(さわ)ったのか、月会二段は怒りぎみの声で返した。それでも、『それを訊(き)くっ!』とはテレビ中継もあってか、絶対に言えない...雑念ユーモア短編集(33)どうするっ!

  • 雑念ユーモア短編集 (32)クリスマス・ケーキ経済観測調査

    省庁統廃合により現在は廃庁となった組織に経済企画庁がある。一部が事務分掌され内閣府・国民生活局に組織規模の縮小を余儀なくされた省庁である。内部部局だから当然、官房を持たない組織だ。で、閣議にも列席できず、国での発言力は相当、小さい。^^さて、前置きはこの辺にして、タイトルの経済観測調査に言及したい。この経済観測調査は過去の短編集[短編集が多すぎて、どの短編集だったか忘れました。すみません。--私の作品集の中にありますから調べて下さい。^^]でも取り上げたが、トイレット・ぺーパーの巻き幅による経済観測調査がある。今回はクリスマスということもあり、とある菓子店で購入したクリスマス・ケーキによる経済観測調査を試みよう…と雑念を湧かした次第である。^^^^^^と、お呵(わら)い下さい。^^魚乃目(うおのめ)は、今...雑念ユーモア短編集(32)クリスマス・ケーキ経済観測調査

  • 雑念ユーモア短編集 (31)捌(は)け口

    雑念を巡らすのも少しくらいならいいが、一定の限度を超えればトラウマとなり、心理的な異常をきたすらしい。皆瀬もその一人で、雑念の捌(は)け口を日夜、探していた。皆瀬の雑念は、誰もが気にしないような些細(ささい)なことだった。皆瀬は通勤電車に揺られていた。幸いにもその日は空き席があったから座れたが、いつもはギュ~ギュ~詰めの状態の中で押しくら饅頭(まんじゅう)を余儀なくされてたのである。皆瀬は天の救いか…と大仰に考えた。そして、この日に限ってなぜだろう?…と考えた。乗車から降車するまでの時間はおよそ40分あった。皆瀬は目を閉じ、いつもとは違う解き放たれたような感覚の中、目を閉じて考えた。これがいけなかった。どうしても原因が分からないまま降車する駅が近づいてきた。となれば、雑念を浮かべている場合ではない。原因が...雑念ユーモア短編集(31)捌(は)け口

  • 雑念ユーモア短編集 (30)すること

    日々することを考えず、根島は生きていた。というより、勤めのことで頭が一杯で、毎日が惰性のように流れていたのである。朝6:00起床→駅7:20発居ノ電乗車→8:20会社ビルへ→17:30退社→駅17:50居ノ電乗車→駅18:30→夕帰宅→朝6:00起床という惰性の日々だった。このサイクルの中で根島に浮かぶ雑念といえば、山積した仕事のアレコレ以外にはなかった。根島は疲れていた。ふと、気づけば根島は定年近くになっていた。ツレアイのことも考えられない流れるような時のサイクルに飲み込まれていたのである。『しまった!!』根島はある日、仕事中の会社のデスクで、ふと、することに気づいたのである。『大失態だっ!!』そう気づいた根島だったが、時すでに遅かった。『しまった!!』明日が退社日だったのである。^^若い人々にアドバイ...雑念ユーモア短編集(30)すること

  • 雑念ユーモア短編集 (29)壊(こわ)れる

    深草は強い木枯らしで壊(こわ)れかけた古小屋を見ながら、しみじみと雑念を浮かべていた。『3次元の物は脆(もろ)いなぁ~、すぐ壊れる…』深草の雑念によれば、次元が大きくなるにつれて壊れる頻度(ひんど)は高くなる・・となる。例えば、絵に描かれた2次元のお茶碗が割れることは、まず有り得ないが、実際のお茶碗[3次元]は、落とせば割れる確率が高い・・という発想である。そう考えれば、4、5次元…と進むに従って、壊れる頻度は高くなると深草は考えたのである。『まあ、古い納屋だから仕方ないか…』心理のテンションが下がれば当然、結論はダウン[下降]する。深草もご多分に漏れなかった。夜になり、深草はまた、しみじみ考えた。『シャワーだけになった風呂だって、コンプライアンスの強化により、排気塔が不完全で使えなくなったんだからな…。...雑念ユーモア短編集(29)壊(こわ)れる

  • 雑念ユーモア短編集 (28)先読み

    いやいや、待て…と、下平は先読みをして雑念を膨(ふく)らませていた。『今は晴れているが、食べてからだと…雲が多いから時雨(しぐれ)ることもある。今は冬場だからな…』先読みした通りに行動すれば、ハズレたとしても降られることもなく安全に違いなかった。これ以上の先読みは必要ないと判断し、下平は昼食をあとにして、外の作業を優先した。下平が外の作業を終えようとしたとき、それまでは雲が多いものの晴れていた空が俄かに薄墨色へと変化し、パラバラ・・と小雨が落ちてきた。時雨だしたのである。下平は先読みした自分を褒(ほ)めてやった。下平が家の中へと入り、昼食を食べ始めたとき、ザザァ~と本降りになった。下平は誰もいないのに、したり顔になりニンマリと哂(わら)った。出来ることは、あと回しにせず、やってしまった方がいいようです。こ...雑念ユーモア短編集(28)先読み

  • 雑念ユーモア短編集 (27)麦踏み

    橘(たちばな)悠(ひさし)は雑念を浮かべていた。『そういや、あの頃は麦踏みをしていたなあ…』麦踏みとは稲の刈り入れのあと、秋に田畑をふたたび耕して麦を植え、その麦が冬の雪害でダメにならないよう、麦の茎を態(わざ)と踏みつけて伸ばさないようにする作業のことである。死語に近くなったこの言葉が悠の心にふと、浮かんだのである。『そういや、この辺りも今や一毛作になったな…』二毛作とは一年に二度、田畑に作物を植えることを意味する。二度作る稲の場合だと二期作と呼ばれる。悠の家は非農家で悠自身も公務員だったから、農業の詳しい知識は分からなかったが、四季の移り行く田園風景を見ながら育っただけに、朧(おぼろ)げながらも最小限の理解はしていた。『菜種の黄色い花畑…胡麻…休耕地にもレンゲの花が色鮮やかに咲いていたなぁ~』悠の雑念...雑念ユーモア短編集(27)麦踏み

  • 雑念ユーモア短編集 (26)理想

    日々を暮らしていれば、どうしても欲が出がちとなる。アアだったら…とか、コウだったら…といった理想を求める雑念が沸々と沸き出る訳だ。^^梢(こずえ)翠(みどり)もそんな若い女性の一人だった。晴れ渡ったとある春の朝、翠は目的もなく旅に出た。要するに行き当たりばったりの旅である。前日の夜、ふと、そう思った翠は、ベッドの横に最低限必要な物をバックに詰めて目覚ましをセットしておいた。いつもは寝坊する翠だったが、その朝はどういう訳かセットした時間の一時間ばかり前に自然と目覚めた。気持が昂(たかぶ)っていた・・ということもある。『新幹線は、つまらないわ、各停にしようっと…』翠は思わなくてもいいのに、そう思った。各停とは各駅停車の普通列車である。予約もなく列車に飛び乗った翠の旅が始まった。翠の理想は景色がよく、のんびりと...雑念ユーモア短編集(26)理想

  • 雑念ユーモア短編集 (25)宝物(たからもの)

    誰にも大切にしているものはあるに違いない。要するに、自分にとっての宝物(たからもの)である。この宝物は自分だけの宝物だから、他人が、『そんな物が?…』と不思議に思おうと、本人にとっては宝物なのだ。楽原も子供の頃から宝物として大切に保管しているビー玉があった。子供の頃、ビー玉遊びで他の遊び仲間からせしめたビー玉が増えるにつれ、楽原にふと、ビー玉に魅了される雑念に取り憑かれるようになったのである。それ以来、楽原は新しいビー玉が増えるにつれ、ニンマリと哂(わら)うことが多くなった。さて、ビー玉が増えると保管場所を確保しなければならない。楽原は家から少し離れた家の所有地である雑木林の一角に穴を掘り、密かに収納するようになった。『これは少し模様が違ういいビー玉だな…』大人になってからも楽原はガラス玉の中に模様が入っ...雑念ユーモア短編集(25)宝物(たからもの)

  • 雑念ユーモア短編集 (24)快晴

    快晴の朝だとアレコレと雑念が湧く。というのも、アレもしたいコレもしたいと外の晴れ渡った外景を見ながら思うからだ。守藤もそんな一人の、しがない中年男だった。『いやいやいや、アアしてからコウしよう。アアする方が簡単に済むから手間取らないから時間も取らない。コウする方は、どうもかなり手間取りそうだからな…』明日は快晴になると予報を知ったその前の夜、守藤は、どうなるか分からない先々のことを、アアでもないコウでもない…と、雑念を浮かべながら思い描いていた。所謂(いわゆる)、取らぬ狸の皮算用である。^^前夜、算段していたことを、さて実行に移すかっ!と守藤は朝食を済ませたあと動き始めた。ところが、である。算段していたことを、どうしても思い出せない。『…ナニをしようと思っていたんだ?』守藤は考え始めた。時は瞬く間に過ぎ、...雑念ユーモア短編集(24)快晴

  • 雑念ユーモア短編集 (23)先手必勝!

    ここは、なにがなんでも勝たないと…と、ラーメン店へ入れなかった宮崎は小市民的な雑念を巡らしていた。昨日は同じ会社の同僚、堀田に先を越され、美味(うま)いラーメン店に人数制限で入れなかったのだ。課が違うこともあり、昼食休憩のタイミングはそれぞれ違ったから、どちらが先に並ぶかは日によって異なった。宮崎は曜日別のラーメン店へ並ぶ人数の統計データを、こともあろうに課のシミュレーション・ソフトを駆使して解析していた。『…と、いうことは、今日は水曜だから、コレくらいの人数か…。よしっ!今日は課長に頼まれたファイル整理もないから店に入れる確率は高い。堀田に勝てるなっ!』宮崎はデスクに座り、自分の職分を熟(こな)しながらニンマリ哂顔(えがお)で、今か今か…と待っていた。やがて、正午を告げるチャイムが社屋に響き渡った。宮崎...雑念ユーモア短編集(23)先手必勝!

  • 雑念ユーモア短編集 (22)お金

    お金とは不思議な生き物で、欲しい貧乏人のところからは離れ、お金などどうでもいいような大富豪のところへ舞い込む・・といった性格を持つ不思議な生き物のようだ。鶏冠(とさか)は年越しを前に、コケコッコォ~![クックドゥ~ドゥ~ドゥ~!]と、お金の支払いに苦しむ貧乏人の一人であった。^^『鶏冠さん、これが最後ですよっ!次、寄せてもらったとき、半年分のお金、支払っていただかないと出ていってもらいますからねっ!』三日前、アパートの管理人に渋面(しぶづら)でそう言われた言葉が、鶏冠の脳裏を駆け巡っていた。いくら気長な人でも半年も待たされた日にゃ、渋面になるのも当然なのだが…。管理人が出て行ったあと、しばらくして鶏冠に雑念が湧いた。昨日(きのう)、ネット記事で読んだ記憶がふと、残り毛が少ない鶏冠の頭に甦(よみがえ)らなく...雑念ユーモア短編集(22)お金

  • 雑念ユーモア短編集 (21)失(な)くす

    アレコレと必要のない雑念を湧かせたばっかりに、いつの間にか大事なものを失(な)くす・・ということがある。課長補佐の梅下はその日も用事を済ませ、勤める町役場へ向かおうとしていた。「すみません。やむを得ぬ急用が出来ましたので、昼まで休ませて戴けないでしょうか?」「んっ?ああ、いいよ。有給休暇の紙、書いといて…」町民の苦情処理をする、年間を通して暇(ひま)な雑務課ということもあり、課長兼係長の竹川は笑顔で快諾した。『これで、ようやく完成した庭池に念願の鯉が泳ぐぞ…』庭池で錦鯉を飼い、橋の上から餌となる麩を撒く・・というのが梅下の念願だった。その念願が庭池の完成で現実のものとなった訳である。ただ、購入した錦鯉は高額のため、一匹だけだった。^^それでも購入代金を支払って帰る梅下の気分はウキウキだった。腕を見れば、昼...雑念ユーモア短編集(21)失(な)くす

  • 雑念ユーモア短編集 (20)時雨(しぐれ)

    照る照る坊主を吊(つ)るしておいたから、次の日は晴れていた。『よかった、よかった…』と、心の内で平坂(ひらさか)澄斗(すみと)はホッ!と安堵(あんど)の息を漏らした。ところが、である。喜び勇んで家を飛び出したまではよかったが、空に暗雲が立ち込め、瞬く間にパラパラと時雨(しぐれ)出した。『よくない、よくない…』平坂の喜びは一転し、テンションは俄かにガタ落ちになり始めたのである。ただ、空を見上げれば暗雲が立ち込めているのは上空のほんの一部で、天空のほとんどは青空だった。平坂は、妙な天気だな…と思いながら、しばらくの間、上空を見上げていた。その所為(せい)か、首を下げると首筋に鈍痛が走った。『ははは…さっぱりだっ!』苦笑いした平坂だったが、テンションは、さらに下降していった。雑念に沈みながら歩道を歩くうちに、い...雑念ユーモア短編集(20)時雨(しぐれ)

  • 雑念ユーモア短編集 (19)買い物

    買い物は雑念が湧きやすい行為の一つである。若い今風ギャルの下房(しもふさ)里美は食品の買い物に家を出た。出たまではよかったのだが、スーパーへ入って買い始めた途端、雑念に悩まされ、半時間ばかり過ぎたというのに買い物のトレーの中は二、三の食品しか入っていなかった。というのも、里美はダイエット中だったからである。『コレを買ったら、たぶん3キロはオーバーになりそう…。やっぱり、やめとこ…』これが里美の辛(つら)く切実な心理である。そんなことで里美は、手にした美味(おい)しそうなスイーツのパックを未練っぽく元の商品棚へ戻した。このスイーツは、里美が店内へ入ってから三度目の戻しだったが、最初の二度、戻した記憶がどういう訳か里美の脳裏から飛んで消えていたのである。里美は恰(あたか)も電車線路の環状線のようにスーパーの中...雑念ユーモア短編集(19)買い物

  • 雑念ユーモア短編集 (18)決断

    決断を鈍(にぶ)らせるのは雑念以外の何物でもない。その雑念さえ湧かさなければ、岳海(たけうみ)が思い描いたコトはスムーズにいくはずだった。それが、である。いらぬ雑念を湧かしたばかりに、岳海の決断は遅れ、描いた構想は大幅に遅れた。その雑念とは、次のようなものだ。(1)とにかく何か食おう。まずアンパンを買い、そのあと牛乳を買った方がいいか…。(2)いやいや、距離からしてあの牛乳屋は遠い…。(3)とすれば、パン屋だが、この時間だとまだ開店していない。(4)そこへいくと、牛乳屋は朝が早いから開いていることは間違いない。。これからすぐ動くなら、やはり遠くても牛乳屋か…。(5)待て待てっ!牛乳屋へ行く途中に、うどんがすぐ食べられる自動販売機があったな…。(6)自動販売機があるなら、うどんにするか…。だが、暖かいお茶も...雑念ユーモア短編集(18)決断

  • 雑念ユーモア短編集 (17)修理

    簡単な修理であれば、手間暇(てまひま)と材料をかければ誰だって出来るに違いない。もちろん、個人の技量には差があるから、自分で出来る範囲に限られるが…。^^この男、藪下も修理出来る技量もないのにアレコレと雑念を湧かしていた。『いやいや、それは無理だろう…。と、なれば、アアするしかないか…』結論から言えば、アアしたとしても薮下の技量では無理だった。^^だが薮下は、そのことに気づかず、自分の雑念のまま行動した。そうこうして数日が過ぎたが、修理は薮下の思うに任せず、手間暇をかけ、散財した挙句、頓挫(とんざ)してしまったのである。『妙だな?上手くいかん…』技量が乏(とぼ)しい薮下に修理できる訳がなかった。『仕方がない。修理を依頼しよう…』ようやく薮下は修理業者に電話をかけ、事無きを得た。初めからそうすれば、何の問題...雑念ユーモア短編集(17)修理

  • 雑念ユーモア短編集 (16)予定

    個人が予定を立てたとしても社会にも予定があり、個人の予定が成立する訳ではない。岬珠代は、休日の朝早くから雑念を膨らませ、アレコレと予定を立てていた。『アソコへ寄って、アレを買ってからナニへ行こうかしら…。でも、それでは間に合わないわね…。とにかくナニへ行くことにしましょう』珠代のアレ→ナニの予定は、女性に有りがちな美しく見せよう…という欲が邪魔をした寄り道の予定だった。徳川秀忠公が、父上にお褒めに預かろう…という欲により、予定を遅らせて関ヶ原に遅参した失敗に似ていなくもなかった。^^正解はアソコへ寄らずアレを買うことなくナニへ行けばよかったのである。かくして、珠代の予定は雑念に歪(ゆが)められ、成就することなく予定通りにいかなくなってしまったのである。理由は、[1]アソコが閉店日で、アレが買えなくなった。...雑念ユーモア短編集(16)予定

  • 雑念ユーモア短編集 (15)天気

    天気は人の力でどうにもならない自然現象だ。そうは言っても、次の日に予定があれば、やはり晴れる方がいいに決まっている。とある町役場に勤める尾羽もそんな思いを胸に、晴れ渡った青空を眺(なが)めながら明日の天気を案じていた。今日が晴れだからといって明日も晴れという保証はないのだ。明日は尾羽にとって人生で初めてデートする日だった。「…」晴れてくれ…という当然の雑念は湧いたが、よく考えれば、晴れたからといってデートが上手(うま)くいくとは限らない訳だ。天気と同じか…という結論を出した尾羽は、毛繕(けずくろ)いをしながらピィ~ピィ~!と鳴いた・・ということはなく、スヤスヤと眠りに落ちた。次の朝は快晴だった。尾羽はワクワクしながらいつものように朝食を食べ、ふと、考えた。「俺はいったい、誰とデートするんだ…?」尾羽がそう...雑念ユーモア短編集(15)天気

  • 雑念ユーモア短編集 (14)選択

    とある冬の二月上旬である。今の春から高校二年に進級する両角(もろずみ)清斗(きよと)は雑念に悩まされていた。理科系に舵(かじ)を切るか、文科系に切るか…の選択で、である。理科系で受験する学部は言わずと知れた、工学、医学、理学、農学などの学部で、文系は経済学、文学などの学部だ。しかし、両角は百手先を読んで決断し、その雑念から解き放たれた。「どうするんだ、両角?」「理科系にします、先生…」進路指導の教師、飛崎(とびさき)からそう言われた両角は、即座にそう答えた。「理科系か…。お前、それでいいのか?こんなこと言っちゃなんだが、お前、おそらく全部落ちるぞ」「えっ!?なぜです、先生?」「なぜって、お前。物理がコノ点で数学がソノ点なんだぞ。こんな点で受かると思ってるのか?」「受けてみないと分からないじゃないですか…」...雑念ユーモア短編集(14)選択

  • 雑念ユーモア短編集 (13)検査

    山郡(やまごおり)は時折り通う病院の検査が嫌になってきていた。もちろん、検査をすることで病気の進行を事前に治療出来ることは理解していた。ただ、検査を受けたあとの医者との面談が嫌だったのである。何事も言われなければそれでよいのだが、もし、悪い結果を言われたときは…と考えれば怖かった訳だ。そんな、ビクビクさせられる検査を何度も受ければ、これはもう、恐怖の雑念の虜(とりこ)にならざるを得なかった。そんなに肝(きも)が据(す)わっている訳ではない山郡とすれば、針の筵(むしろ)に座った気分だったのである。陽気で明るい医者ならまだしも、今通う病院の医者は陰気で余り笑顔を見せず暗かったから、余計に山郡を悩ませていた。「まあ、悪くはないので、お薬を出すほどのことでもありません…」暗い顔で事務的に説明されれば、誰だっていい...雑念ユーモア短編集(13)検査

  • 雑念ユーモア短編集 (12)意味不明

    雑念にもいろいろとあり、ときには意味不明な雑念がふと、湧くことがある。緒宮登美も、そんな女性の一人だった。「私…どうかしたのかしら?」筆が進まなくなった著名作家の緒宮は日々、意味不明な雑念に悩まされるようになった。アレコレと原因を探るのだが、コレといって思い当たることもない。『あの…先生。お頼みしておりました締め切り原稿の方は…』痺(しび)れを切らした緒宮付きの番記者の鳥打から督促(とくそく)の電話が入ったのは、そのときだった。「それがね…。あなた、聞いてくれるっ!」『はあ、お聞きします…』鳥打としては、何が何でも書いてもらわなければ困るのだ。書いてもらわなければ、番記者である鳥打の地位が危うかった。「どうしても書けないのよっ!なぜなのっ!」『はあ…』意味不明な質問をされても、鳥打に答えられる訳がなかった...雑念ユーモア短編集(12)意味不明

  • 雑念ユーモア短編集 (11)トラウマ

    トラウマとはトラとウマではありません。雑念の塊(かたま)りのようなものが引き起こす心の風邪のようなものです。尾水もこのトラウマにここ半年ばかり悩まされていた。職場では日々、「お前は夜から出勤じゃないのか?」と冷やかされていたからである。尾水という苗字は別の意味で水商売を意味し、夜から酒で接客する職業を指す。早い話、バー、スナック、キャパレーなどの類(たぐい)の職業を指すのである。尾水の出勤=オミズの出勤というダジャレの冷やかし言葉だった。最初の頃は笑って受け流していた尾水だったが、冷やかす同僚が増えるにつれ、心理的な負担となっていった。ついには、トイレへ駆け込み、ぅぅぅ…と泣くまでになった。こうして、雑念が高じた尾水は、とうとう病院へ通う破目になった。「尾水さん…」若く奇麗な看護師にそう呼ばれたとき、尾水...雑念ユーモア短編集(11)トラウマ

  • 雑念ユーモア短編集 (10)天水(てんすい)

    W杯120分を戦いぬき、引き分けた末にPK戦で敗退したチームを思い、お通夜のように打ちひしがれた隠れサポーターの崖下は、居間で放心状態に陥(おちい)っていた。そのとき、彼の父親が襖(ふすま)を開け、スゥ~っと幽霊のように入ってきた。「…どうかしたのか、登?」父親はションボリと落胆した息子を見て、ひと言、声をかけた。「なんだ、父さんか。いや、何でもないよ…」「そうか…なら、いいんだが。早く寝ろよ」「ああ…」「そうそう、ベスト8、ダメだったそうじゃないか…」父親の言葉が、まさに自分が落ち込んでいる原因だったから、崖下は心を見透かされたようで、驚いた。「…よく知ってるな、父さん?」「いや、なに…。俺の友人がサポーターで現地へ飛んでるんだ。さっき、電話が入ったのさ」崖下は父親の人脈の広さに、またまた驚いた。「そう...雑念ユーモア短編集(10)天水(てんすい)

  • 雑念ユーモア短編集 (9)騒音

    気になり出せば、どうにもならない雑念が湧くのが騒音だ。とある大手メーカーに勤めるキャリア・ウーマンの若葉もそんな女性の一人だった。今年で三十路の半ばになった若葉も、二十代の頃は雑音が気になるようなことは少しもなかったのだが、ここ最近、どういう訳か雑音が気になるようになっていた。それも、普通人なら気にならないような雑音に、である。『どうしてかしら…?』雑音が気になり出し、心のテンションが下がるたびに若葉はそう思うようになった。その雑念は日を追うごとに強くなっていき、若葉を悩ませた。ある日、若葉は思い切って町の医院へ行ってみることにした。「鬱(うつ)病ですね…」医師は、はっきりと病名を告げた。「あのう…どれくらいで治るんでしょう、先生?」若葉は気がかりになり、訊(たず)ねた。「ははは…鬱病は症状にもよりますが...雑念ユーモア短編集(9)騒音

  • 雑念ユーモア短編集 (8)寄り道

    とある大工店を一人で営む小山は、いつもより早く仕事が終わったことで、寄り道をしよう…と、湧かせなくてもいい雑念を湧かせた。その日は寒く、一杯ひっかけから帰ろう…と思った訳である。^^だが、その雑念がいけなかった。久しぶりの飲み屋ということもあり、ついつい杯(さかずき)が進んだのである。「旦那っ!もうそろそろ店を閉めやすんで、このくらいで…」店の親父は、いい辛(づら)そうに、遠まわしで小山を追い出しにかかった。「なにっ!!もう、そんな時間かっ!?な、なんだ…まだ、こんな時間じゃねえかっ!ウイッ!まあ、親父も一杯いけっ!!」「へい、どうも…」猪口を赤ら顔の客にグイッ!と目の前へ突き出されれば、店主としては断ることも出来ない。ほんの一杯だけのつもりで受けた杯が、親父が酒好だったこともあり、一杯が二杯、二杯が三杯...雑念ユーモア短編集(8)寄り道

  • 雑念ユーモア短編集 (7)異性

    異性に雑念を抱く年頃は幾つくらいか?…と雑念を浮かべる♂の吉岡は、自分が馬鹿なのではないか?と嫌になり、何も思わないことにした。ところがである。次の瞬間、最初に好きになった美代ちゃんのことが、ふと頭を過(よぎ)った。『あの頃は、好きになっただけだなぁ…』幼馴染(おさななじみ)の美代ちゃんの家は、前の小道を挟み、斜め向こうの家だった。『あのときは、アンナコトやコンナコトは思わなかったなぁ~』吉岡は幼い当時の気持が、ただ好きな感情だけだったことを思い出した。青年の頃に感じ始めた色欲が当時は全くなく、ムラムラしなかった訳である。^^『ムラムラして随分、難儀したなぁ~』雑念は益々、膨(ふく)らみ、吉岡は好きになることと色欲を感じることの違いが、よく分からなくなった。吉岡は、ふたたび考えないことにした。ところが、で...雑念ユーモア短編集(7)異性

  • 雑念ユーモア短編集 (6)狐の嫁入り

    (2)で書いた数日前のサッカー内容の短編が、まさか現実になろうとは思ってもいませんでした。好結果の予選突破に感激しつつ、馬鹿のように、ぅぅぅ…と思うお馬鹿なのです。それにしても、よかった、よかった…。^^私は神様でも仏様でもないから先々のことは分かりませんから、以降の決勝トーナメントの結果に関しては、例によって、君の応援するチームが勝とうと負けようと一切、関知しないからそのつもりで…。なお、この短編も自動的には消滅しません。昼過ぎになり、晴れて日射しがあるにもかかわらず小雨がパラつきだした空を見上げ、富高は雑念を湧かせていた。『狐の嫁入りは、お目出度いんだろうか…』そんな富安の心の雑念を知ってか知らずか、空は一時的に小雨がパラついただけで、すぐに晴れてきたのである。『こういう場合の狐の嫁入りは成立するんだ...雑念ユーモア短編集(6)狐の嫁入り

  • 雑念ユーモア短編集 (5)座禅

    雑念を払おう…と思えば、その方法を探ることになる。最も手っ取り早い方法が座禅だが、辺りがまだ暗い早朝から、とある禅寺の前では一人のサラリーマンが山門を潜(くぐ)っていた。「お願い致します…」男は本堂近くの庫裏(くり)前で箒(ほうき)を手に落ち葉を掃いている老僧に声をかけた。老僧は男を窺(うかが)うでなく見据え、朴訥(ぼくとつ)に返した。「…はい、何ですかな?」「あの…座禅をさせて戴きたくお参りさせていただいた者ですが…」「ほう、左様でしたかな…。受付は九時からとなっております。しばらくは庫裏にてお待ち下され。白湯(さゆ)などをお出し致しますれば…」男は老僧の言葉を聞き、劇場の開演待ちのようなものだな…と、思うでなく思った。男が庫裏へ入ると受付があり、若い禅僧がウトウトしながら机を前に惰眠を貪(むさぼ)って...雑念ユーモア短編集(5)座禅

  • 雑念ユーモア短編集 (4)決断力

    雑念が湧くと、どうしても決断力が鈍(にぶ)りやすくなる。この男、とある町役場の市民課に勤める都筑(つつく)も、出勤前の朝ご飯を食べながら雑念で迷っている一人だった。『いやいや、ソレをしてから課長補佐に伺(うかが)いを立てた方がいいか…』そう思いながら椀(わん)の味噌汁をグビッ!と喉(のど)へ流し込んだ。すると次の瞬間、別の雑念が、ふと浮かんだ。『待て待て…ソレをしてからだと、課長に朝一に頼まれたアレが後(あと)回しになるな…』都筑にすれば当然、課長の方が課長補佐より優先権があるように思えた。なんといっても人事異動前の二月半ばだったからである。決断力が回復した都筑は、よしよし、課長のアレからだな…と決断ながら味付け海苔に醤油を少しつけた瞬間、また別の雑念が湧いてきた。『待てよ…そうすると、部長に頼まれたナニ...雑念ユーモア短編集(4)決断力

  • 雑念ユーモア短編集 (3)流動的

    物事が固定せず、流動的だと雑念が湧きやすい。この男、北岡も、そんな男の一人だった。「今日は混んでるわね。北岡さん、まだ当分、かかるわよ、この調子だと…」社員食堂で並んでいた北岡は、同じ課のキャリア・ウーマン南尾明代に後ろから声をかけられ、ギクッ!として振り返った。「なんだ、南尾さんか…。いつもは外で食べてるから分からないんだよ。どれくらいかかるの?」「そうね…。これくらいの並びなら20分ってとこね」「そんなに?」「ええ、急いでるの?」「ああ、まあ…」北岡は昼食を早く済ませ、部長の東山にヨイショ!しようと雑念を湧かせていたのだ。ヨイショ!するとは、東山がするゴルフの自慢話を聞くだけだったが、これがどうしてどうして、結構な効果があり、北岡はこの春の人事異動で課長代理代行に昇格したのである。それまでは課長代理代...雑念ユーモア短編集(3)流動的

  • 雑念ユーモア短編集 (2)禍福(かふく)

    サッカーのW杯、カタール[ドーハ]大会が華やかに開催されている。サッカー好きの蹴鞠(けまり)はドイツ戦の劇的勝利に酔いしれていた。ところが、である。その喜びも束(つか)の間(ま)、二日後に何気なく見たパソコンのネット記事で代表チームがコスタリカに敗れたことを知りたくもないのに知らされ、すっかりショボくなった。蹴鞠には劇的勝利によって予選突破は確実…という決まりもしていないこの先の大会予測の雑念が、すでに脳裏に刻まれていたからである。『そ、そんな…ば、馬鹿なっ!!ぅぅぅ…』これが代表チームの敗戦を知ったときの蹴鞠の心情である。だが、予選敗退はまだ決まっていない…という心情もほんの僅(わず)かだが残されていた。『禍福(かふく)は糾(あざな)える縄(なわ)の如し・・と言うじゃないかっ!だとすれば、次は勝ちだっ!...雑念ユーモア短編集(2)禍福(かふく)

  • 雑念ユーモア短編集 (1)危険

    人には108の煩悩(ぼんのう)があると言われている。それらの煩悩が生まれるのも、世知辛い社会で暮らす私達の生活の厳(きび)しさから何とか逃れようとする人々の雑念から派生しているのかも知れない。この短編集では、そうした人々の雑念から生まれる成否を面白可笑しく描こうと思っているところです。^^霜川は、晴れたこの日も漁船に乗り、漁に出ていた。そんな魚川に、いつもなら浮かばない雑念が、ふと浮かんだ。『今日は少し多めに…』少し多めに…とは、漁獲量を指した。漁獲量を増すためには、網を入れるいつものエリアを変えねばならない。隣家の漁師、霧岡が言っていた言葉を思い出した霜川は、言われたエリアの方角へと舵(かじ)を切った。そのエリアの位置は、いつものエリアから小一時間かかる距離にあり、さほど危険とも思われなかった。数十分後...雑念ユーモア短編集(1)危険

  • 驚くユーモア短編集 (100)アイデア

    アイデアとは妙なもので、必死に考えるときは浮かばず、何も考えていないときに、ふと浮かぶのだから驚く。久しぶりに快晴となった今日の朝、食べたものを最後に体内から出すトイレでの作業中、ふと浮かんだのがアイデアというタイトルです。^^ここは大手食品企業の本社ビルである。とある階にある開発事業部では、ここ数年の業績悪化を食い止めようと日夜、事業立て直しのアイデアを模索(もさく)していた。「案山子田(かかしだ)君、まだいいアイデアは浮かんばんのかね?」少しも進まない事業立て直し策に業(ごう)を煮やした部長の稲﨑(いなざき)が開発課の課長、案山子田の課長席へ部長室から早足でやって来た。「はあ部長。課員には叱咤(しった)しておるのですが、いまのところ…」「いまのところって、君ねぇ~!」稲﨑は今にも美味(おい)しく食べれ...驚くユーモア短編集(100)アイデア

  • 驚くユーモア短編集 (99)明日(あす)

    あっ!明日(あす)だったと思い出し、月日の巡りの速さに驚くことがある。とくに、余り気にしていなかったときは、したくもないのにバタバタするに違いない。^^「お、おいっ!い、如何(いかが)致すっ!九月十日…九月十日は明日ではないかっ!!」上田攻めの負け戦(いくさ)に時を過ごされた秀忠公は、家康公からの早馬の密書をお読みになり、驚く様相でそう言われたらしい。「こうは、しておられんぞっ!」「御意(ぎょい)っ!殿、お急ぎをっ!!」急遽(きゅうきょ)、上田を出立された秀忠公率いる精鋭三万五千有余ではあったが、かかる長雨に進軍ままならず、関ヶ原の戦いにはついに間に合わなかった。このように、いつの時代でも急に差し迫った事態を知ったときは、驚くことになるのです。皆さん、驚くことのないよう、明日のスケジュールは確認しておきま...驚くユーモア短編集(99)明日(あす)

  • 驚くユーモア短編集 (98)原因2

    (48)でタイトルにした原因の別話である。そんなことが…と、考えてもみなかったところにコトの原因があったことで驚くことがある。そうなった原因を考えてはみたが、どうしても分からなかったとき、特にその驚く度合いは大きくなるだろう。ということで、今日は見過ごされた些細な原因に驚くお話にしてみました。^^とある市役所の財務課である。「妙だな…。どうしても額が合わない…。それも一円だ…。おいっ!!楢林(ならばやし)君っ!!」課長の樫岡(かしおか)は、前のデスクで仕事をする担当係の楢林を大声で呼んだ。楢林はギクッ!として手を止めると、恐る恐る席を立って課長席の樫岡に近づいた。いつもカミナリを落とされていたからである。「あの…なにか?」「なにか?じゃないよっ!この額、一円違ってるじゃないかっ!」「いや、そんなことはない...驚くユーモア短編集(98)原因2

  • 驚くユーモア短編集 (97)知らず知らず

    知らず知らず、日々、創作していると、驚くことにこの短編集も百話完結の残りが四話となった。本作を除けば残りが三話だから、知らず知らずの心身の条件反射的動きは恐ろしいものだと気づかされる。心身が惰性で動くというのは、いい場合も当然あるが、悪い場合も否応なく生じるから注意を必要とする。とある国会の衆議院本会議場である。申し合わせたように議員の一人がスクッ!と立ち、いかにも目立ちたいような出さなくてもいい驚く大声を張り上げた。議事進行係である。明治期の帝国議会から続く習慣らしく、知らず知らずのうちに現在に至るまで踏襲されているというから驚く。「議長ぉ~~~!!」「〇〇君…」「ホニャララのホニャララはホニャララとし、本日は、これにて散会することを求めまぁ~~~す!!」「○○君の動議に御異議ございませんか?」『異議な...驚くユーモア短編集(97)知らず知らず

  • 驚くユーモア短編集 (96)時

    なんだ、まだこんな時間か…と時計を見ながら驚くときと、しまった!もうこんな時間かっ!…と時計を見て驚く瞬間の違いがある。むろん、前者の場合はゆとりの時間がある訳だが、時とはこのように見えず得体が知れない存在なのである。とある高校のとある教室のホームルームの時間である。このクラスを受け持つ担任の潮(うしお)が出席点呼を行っている。「提山(さげやま)っ!…」返事がなく、潮は出席簿から視線を上げ、教壇から一段下の生徒達を見回した。「先生、提山は今日、休んでます…」「ほう!珍しいな。あいつが休むとは…」「なんでも、身内の結婚式らしいですよ」「それは、お目出度いじゃないか…。よしっ!今日はコロナ禍で世の中が冷え切ってるから、お目出度い話を一つ先生がしようっ!」語り出した潮は時の経つのも忘れ、ゴチャゴチャとしたお目出...驚くユーモア短編集(96)時

  • 驚くユーモア短編集 (95)意志

    なにがなんでもやり遂げるんだっ!という強い意志があれば、驚くような成果を上げることが出来る。これは、人が持ち合わせた不思議な力である。(91)で馬鹿力(ばかぢから)というタイトルのお話を掲載させて戴いたが、その力も強い意志が齎(もたら)す人の潜在力に違いない。とある町役場の、とある課である。「コレとコレ、明日までに頼むよ…。まあ、余り期待してないがね…。ひと月先は人事だよっ!分かってるねっ!」「はい…」とある課の課長、大席(おおぜき)に念を押された係長の小結(おむすび)は否応なく小声の返事をした。とても一人でやり切れる量とは思えなかったこともある。「ははは…分かってりゃいいんだ、分かってりゃ!」大席は分かってりゃ!を繰り返して強調した。小結にしてみれば、『フンッ!偉そうに…』くらいの気分である。ただ、この...驚くユーモア短編集(95)意志

  • 驚くユーモア短編集 (94)人の心

    女心と秋の空・・とかなんとか言われるが、人の心ほど複雑で変わりやすいものはない。突然の豹変ぶりに、なにっ!と驚くことも数多くあるに違いない。とある料亭である。背広姿の二人が意味深に杯を傾けている。「まあ、そこのところを一つよろしく…」「フフフ…分かっています。いつものだね…」「はあ、いつものようにお願いを…」とある省庁のお役人と、とある大企業のトップとの間で、数億の取引の認可がまた了承された瞬間である。その取引の事実は検察庁特捜部の極秘裏の調査ですでに解き明かされようとしていた。ただ、この料亭で杯を傾ける二人は、この段階でその動きを知らなかった。数日後、この大企業に特捜部の強制捜査のメスが入った。その結果、大企業のトップは、いとも簡単に贈賄の疑いで逮捕されたのである。「私は、そんな人物は知らんよ…。〇〇が...驚くユーモア短編集(94)人の心

  • 驚くユーモア短編集 (93)嘘(うそ)から出たまこと

    嘘(うそ)から出たまことに驚くことがある。その嘘が途方もなく大きい嘘であればあるほど、その驚く程度も大きくなる。ということで、でもないのですが書きたいと思います。正確には、苦手な[誤字入力の多さには泣かされています^^]キーを叩(たた)くことになります。^^とある近い未来の一日である。二人の男が通勤バス中で話をしている。「核戦争が起こるって話だっ!!」「なんだとっ!お前、その話、誰から聞いたっ!」「誰とは言わんが、そう言ってたぜっ!」「そうかっ!こりゃ偉いことになったぞっ!急いで核シェルターを買わにゃならんっ!高くつくな…。そうなると、住宅ローンもあるから、毎日、食パン一枚の生活か…。ああ侘(わび)しいっ!実に侘しいっ!!」「おいっ!核が落ちてからの食糧はどうするんだっ!」「そうか…。今から多量に買い込ん...驚くユーモア短編集(93)嘘(うそ)から出たまこと

  • 驚くユーモア短編集 (92)予想

    予想していたことがスムーズに運ぶ場合、首尾よくいかない場合は当然、出てくるだろう。自分では何もしていないのにトントン拍子に進行したり、逆に何をしても全然、進まない場合は、妙だな…と思うに違いない。そして、その訳が、ほんの小さな内容だったりした場合は驚くことになる。とある家の前の舗装路で必死に独楽(こま)を回しているこの家の主人がいる。幸い、その家の前は車が通れない程度の細道で、歩くか自転車でしか通行が出来ない。その細道を偶然、対向から二軒先のご主人が買い物帰りに自転車で通りかかり、ギギィ~!っとブレーキをかけた。「ははは…独楽ですか。懐かしいですなぁ~。子供の頃はコレでよく遊んだもんです…」「さようで…。いやね、天気がいいもんで虫干ししようと部屋の押入れを開けてみましたら、コレが出てきましてな。、し回して...驚くユーモア短編集(92)予想

  • 驚くユーモア短編集 (91)馬鹿力(ばかぢから)

    火事場の馬鹿力(ばかぢから)などと言われるが、いざというとき、いつもは出なかった力が出るのには驚く以外にない。ということで、余り時間がないのですが、馬鹿力を出して(91)を書きたいと思います。正確には入力で、打ち間違いがないか心配なのですが…。^^とある家事現場である。「おいっ!消防はまだかっ!!」「妙ですねぇ~?もう着きそうな筈(はず)なんですがっ!」「全然、着かないじゃないかっ!!音も聞こえんぞっ!!」「はあ…」「はあ、じゃないっ!!益々、炎が強くなるじゃないかっ!!」そこへ一人の野次馬が話しかけた。「そりゃ、来ませんよっ!ここへの道は一本ですが、この前の台風で橋は流されましたから…」そう聞かされ、家人の二人は青ざめた。「よしっ!!バケツリレーだっ!!」「はいっ!!」「皆さんもお手伝い、お願いしますっ...驚くユーモア短編集(91)馬鹿力(ばかぢから)

  • 驚くユーモア短編集 (90)それでも、やる

    人は負けると分かっていて、それでも、やる・・という不屈の精神を持ち合わせている。むろん、諦(あきら)めが早い人も多い訳だが、やはり人として生まれたからには、負けると分かっていても努力して欲しいものだ。私も微力ながらその精神を心がけている一人である。ものすごく微力です。^^とある病院の診察室である。「本当のところ、先生、どうなんでしょ!!」「どうしても!とおっしゃるなら、お話しますが…」「是非、お願い致しますっ!」「そうですか?なら言いますが、このままですと…いい場合で、あと数ヶ月ってとこでしょうか。今のうちにやれることはやって、会いたい人には会っておくことですな…」患者に執拗(しつよう)に訊(き)かれ、病状を告知した。「このままだということは、手術をすれば?」「ええ。手術が成功すれば、また話は変わります。...驚くユーモア短編集(90)それでも、やる

  • 驚くユーモア短編集 (89)アイデア

    アイデアはとんでもないときに浮かぶから驚く。とある銀行に勤める本店営業部融資課長、山堀は悩んでいた。どうしても出資した債券、数億円を芋坂物産から回収出来なかったのである。山堀は、その日も常務の登呂路(とろろ)から嫌味を言われていた。「ははは…山堀君。君ねぇ~、あと三日だよ。あと三日で回収出来なかったら、もう終わりぃ~~っ!君の銀行人生っ!」「……」山堀はその言葉を苦虫(にがむし)を噛(か)み潰(つぶ)したような顔でジィ~~っと耐えて聞く他はなかった。課へ戻(もど)った山堀は席に着くやいなや、急に腹痛に襲われた。食べたものが悪かったか…とトイレに駆け込みながら考えたが、思いつく原因はなかった。便座に座り、用を足していると、なんとなく気分は落ち着き、ふと、山堀の脳裏に一つのアイデアが閃(ひらめ)いた。その一日...驚くユーモア短編集(89)アイデア

  • 驚くユーモア短編集 (88)まさか…

    まさか…と、本当のことを知って驚くことがある。まあ、この場合は、知っていいことと悪いことがある訳だが、どうせ驚くなら、いい方がいいに決まっている。^^事件は迷宮入りしようとしていた。警察の懸命の捜査にもかかわらず、時効が残り十日に迫っていた。「もう、ダメですかね、熊さんっ!」「…まだ十日あるっ!諦(あきら)めるな、鮭尾(さけお)っ!」「はあ、それは分かってんですが…」鮭尾は熊川(くまかわ)に叱咤(しった)され一応は頷(うなず)いたが、心の底ですでに諦めていた。「どうも、最初に聞き込んだときの現場にいた目撃者の証言が気になる…」「最初というと…20年ばかり前になりますね」「ああ、傷害致死だからな…」「確か…爪割(つめさき)とかいう人でしたね」「まさかとは思うが、鮭尾。ひょっとすると、俺達は灯台、下(もと)暗...驚くユーモア短編集(88)まさか…

  • 驚くユーモア短編集 (87)展開

    ほんの些細(ささい)な出来事が綻(ほころ)びを見せて発覚し、あれよあれよという間に大きな事件として広まれば、当事者は驚くことだろう。その広まりは噂(うわさ)によって齎(もたら)される訳だが、その齎す人物とは?を考えれば、女性の噂のしたがり屋さんが多いことが統計学上は別として傾向があると分かってきている。その手合はペチャクチャ雀(すずめ)と呼ばれるが、女性が多いというだけで、なにも女性だけだということではない。この点、ハラスメントではないとだけ断言しておきたい。^^とある中堅規模の会社ビル最上階にある食堂で、昼食後のOL二人が小声で話をしている。「あら、そうなのっ!?豚尾さん、栄転するのっ!?」「そうなのよっ!私、秘書課の草代さんから聞いたんだけどね…」「草代さんって、あのベチャクチャ雀の牛川さんっ!?」「...驚くユーモア短編集(87)展開

  • 驚くユーモア短編集 (86)どうでもいい

    そんなことを…と他人が驚くことを、どうでもいいとスルーする人がいる。他人は驚いているがその人は少しも驚くことがないのである。とある深夜である。飲んで電車で帰ってきた一人の男が、駅前で自分の家の方向が異常に明るいことに気づいた。どうも火事らしい…と、その男が気づいたのは駅前の自転車屋から自転車で帰宅する途中だった。自宅に近づくにつれ、次第に明るくなっていく。それに、焼ける臭気も臭いだした。それでも男は驚くことなく自転車を漕ぎ続けた。そして家まで数分の所へ来た時である。「稲崎さん、あなたの家、火事ですよっ!!」数軒先の麦田が驚く声で叫んで知らせた。「ははは…そうですか。家(うち)が火事で燃えてるんだ…」稲崎は少しも驚く気配を見せなかった。さて、ここで皆さんに質問です。稲崎はなぜ驚く気配を見せなかったのでしょう...驚くユーモア短編集(86)どうでもいい

  • 驚くユーモア短編集 (85)部外者

    部外者なのに、いかにも関係者のような顔をして首を突っ込む人には驚く以外にない。その人の性格だから…と考えればそれまでだが、関係者にすればいい迷惑になる場合だって多々あるだろう。まあ、そういうことで、今日は部外者で驚くお話です。^^とある結婚式場である。「おいっ!新婦はまだ来ないのかっ!あと20分しかないんだぞっ!!」息巻いているのは新郎の父親である。「そんなこと言ったって、携帯の話じゃ渋滞に巻き込まれたそうなんだから仕方がないじゃないのっ!!」新郎の母親が必死に父親を宥(なだ)める。そこへ、披露宴を終えた家族が、しゃしゃり出た。完全な部外者である。^^「あの…なんでしたら、うちの息子の嫁をこの場だけ代理にされるというのは…」「はあ!?家の息子の嫁をっ!?なんなんですか、あなたはっ!?」「はあ、今、披露宴が...驚くユーモア短編集(85)部外者

  • 驚くユーモア短編集 (84)隠しごと

    隠しごとが、予想もしていなかった、ひょんな拍子に発覚すれば誰だって驚くだろう。ということで、今日は秋晴れのいい天候の中、他にすることがないのかっ!とお叱りを頂戴する読者もおられると思うが、そんなお話を綴(つづ)りたいと思います。^^日曜の朝、正也は水場で野菜の洗い物を手伝っていた。そこへ、台所の戸を開け、未知子が訊(たず)ねた。「正也、この戸棚に入れておいたお団子、知らないっ!?」『んっ!?僕は知らないよ…』「またまた…。隠しごとしたって、すぐ分かるんだから、正直におっしゃい!」『母さんはそういうけど、僕、ほんとに知らないんだから…』「怪(おか)しいわねぇ~。お義父さまがお食べになったのかしら…?」そこへ、出てこなくてもいいのに、離れからご隠居の恭之介が現れた。「未知子さん、そろそろ昼ですな…」いつもの恭...驚くユーモア短編集(84)隠しごと

  • 驚くユーモア短編集 (83)辞任会見

    とある時代の、とある国会の会見場である。多くの記者団とテレビ中継関係者が見守る中、参議院議長が深々と頭を下げたあと、壇上に設置された幾本ものマイクロホンに向かい、辞任会見を語り始めた。世の中が驚くテレビの実況中継が始まろうとしていた。「国権の最高機関である国会の議長を拝命しながら、かく不祥事を招きました責任は誠に重く、本日、ここに参議院議長の任を辞したく、本会見に臨んだものであります。本来、国会議員は国民の負託に応(こた)えるべく、その責務を全うする地位にあります。当然ながらその任は重く、政教分離は無論のこと、様々な軋轢(あつれき)に屈することのないよう努めるのが責務であります。このような不祥事を招きました責任は誠に大きく、参議院議長の重責を汚す者として辞職の決断に至った次第でございます。と同時に離党届を...驚くユーモア短編集(83)辞任会見

  • 驚くユーモア短編集 (82)あれよあれよ…

    社会の物事は良くも悪くも、あれよあれよ…と、加速度的に進む場合がある。当然、当事者は驚くことになるが、止めようもなくあれよあれよ…と進む現実を誰も食い止めることは出来ない。悪い例だと、強い台風があれよあれよ…という間に接近し、被害を出したあと、あれよあれよ…という間に衰退して遠ざかるといったようなものだ。むろん、よい例もある訳で、残った残金で当たらないと思いながら買った宝くじが、なんとっ!一等3千万円に当たり、その一部で買った証券が、あれよあれよ…という間に高値を呼び、あれよあれよ…という間に大富豪になった、などという場合である。^^この男、田所誠次もそのような一人で、最初は、しがない小市民の一人だった。「あああ…国葬かっ!お偉い人はいいよな…。俺なんか先々、行き倒れて野ざらしさ、ははは…」田所は歯を磨き...驚くユーモア短編集(82)あれよあれよ…

  • 驚くユーモア短編集 (81)本心

    人とは怖ろしい。えっ!?嘘(うそ)だろっ!…と、その人の本心を知り、思わず驚くことがある。悪人だと思っていた人が実は善人で、善人だと思っていた人が実は悪人だった・・というような場合である。今日は、そんな驚くお話です。^^男性Aは女性Bと付き合っていた。男性Cは女性Dと付き合っていた。ところが女心と秋の空で、女性Bは男性Cと裏でコッソリ付き合っていた。二人は相思相愛だったのである。そんなことになっていようとは露ほども知らない男性Aは女性Bにある日、思い切ってプロポーズをした。「すみません。私、近々、Cさんと結婚するの…」女性Bは驚くほど攣(つ)れない言葉を男性Aに返した。男性Aは女性Bの本心を知り、騙(だま)されていた口惜しさに思わず心が崩壊した。一方その頃、女性Dは男性Eと裏でコッソリ付き合っていた。二人...驚くユーモア短編集(81)本心

  • 驚くユーモア短編集 (80)三次元

    学校の授業で皆さんも習われたと思うが、次元にはゼロ次元、一次元、二次元、そして私達が暮らす三次元の世界がある。さらに四次元や五次元と次元は増え続けて存在するらしい。点がゼロ次元だとすれば、点が時間で動き、線となれば一次元、さらにその線が時間で動き、面となれば二次元、さらにさらに、その面が時間で動き、立体となれば三次元の私達の世界になるということだ。次元が増せば増すほど脆(もろ)く崩れやすくなるという。そんなことで、でもないが、今日は私達が暮らす三次元の脆さに驚くお話です。^^とあるフツゥ~家庭の一コマである。夕飯が済んだご主人が、しなくてもいいのにキッチンの洗面台で珍しく食器洗いを始めた。「あっ!やっちまったよっ!」驚くほどド派手な音とともに一枚のお皿がフロアに落ち、割れてしまった。「あなた、どうしたのよ...驚くユーモア短編集(80)三次元

  • 驚くユーモア短編集 (79)解決策

    ここ数年、新型コロナが巷(ちまた)に蔓延(はびこ)り、人々は否応なく不自由を強(し)いられている。誰の責任か?と問えば、それは文明・・と木霊(こだま)は帰ってくるに違いない。ただ、起きたことには必ず結びがあるということも事実だ。起承転結の四字熟語がそのことを示している。結びとなる解決策が見出されれば結構だが、なかなかそうはいっていないのも事実である。なぁ~んだ、そうすればいいのか…といった驚くほど簡単な解決策があるにもかかわらず、人々はそれに気づかないのだから困ったものだ。^^とある研究所である。「先生っ!!」「どうした、禿尾君っ!!」「終息の解決策が見つかりましたっ!!」「なんだってっ!!そりゃ君、凄(すご)いぞっ!!で、どうしたんだ?」「しまった!!メモるの忘れてましたっ!どうしたんだっけ…」「なんだ...驚くユーモア短編集(79)解決策

  • 驚くユーモア短編集 (78)成績

    驚くほど成績が悪いからといって入学試験に合格出来ない・・ということではない。現に私だって、小学生の頃の通知簿は5段階評価で2や3、たまに4くらいだったものが、こうして大学を卒業し、教職免許まで取得している訳である。ということで、驚くほど悪い成績の諸君でも受験に受からないということはないから頑張って欲しいものだ[ただし、勉強努力は必要です^^]。さらにこの際、付け加えさせてもらえるなら、社会に貢献できることは頭の良い悪いに関係がない・・ということです。長い間、このことが一度、言いたかったので、ああ、気分がいいっ!^^秋のとある高校の教室である。教師が生徒と対峙して進路指導をしている。「この成績じゃな…」「ダメでしょうか、先生!」「ああ、まあな…。お前の場合はダメ以前の成績だからな。それにしても、よくこの成績...驚くユーモア短編集(78)成績

  • 驚くユーモア短編集 (77)道路工事

    最近の道路工事は交通量が多いにもかかわらず、昼日中(ひるひなか)から堂々とやっておられる。ゲートルを両足に巻き、鶴嘴(つるはし)片手に穴が開いた道を平坦(へいたん)にしておられた舗装前の道路工事の時代とは偉い変わりようだ。土埃(つちぼこり)には困らされたが、車も走らず長閑(のどか)だった昭和三十年代初期・・ああ、いい時代だった!…と思わず回想に耽(ふけ)ってしまう。今の時代、そんな悠長なことを言ってられないのかも知れないが、なぜか日々の道路工事を見ていると、物悲しくなってしまうのは私だけだろうか。^^とある道が突然の道路工事で通行出来なくなっている。自転車で通りかかった男性が交通整理をする作業員に行く手を遮(さえぎ)られ、それとなく訊(たず)ねた。「あの…通れないんですか?」「ええ、申し訳ないんですが通れ...驚くユーモア短編集(77)道路工事

  • 驚くユーモア短編集 (76)取り組み

    とある大相撲の本場所が国技館で賑(にぎ)やかに開催されている。国技館の中で観戦する、とある二人の観客の会話である。「次の取り組みは…と?」「…霜馬山と表だろっ?」「そうそう、そうだな…」「それにしても、取り組みってのは誰が決めるんだっ?」「そりゃ、役員の親方衆だろ…」「兄弟力士でも取り組みになるのかねぇ~?」「ああ、若友春と若低影だろっ?」「まあ、そんなことになりゃ驚くがな…」「誰がっ!?」「俺が…」「お前が驚いても、他に驚く人はいないと思うぜ…」「ああ、そうか…」取り組みは観客が驚くことがないよう、冷静に決定されるようです。^^完驚くユーモア短編集(76)取り組み

  • 驚くユーモア短編集 (75)事実

    事実は小説よりも奇なり・・とは、よく言われるが、予想もしていないような事実が含まれていたことを知らされ、驚くことがある。とある山裾(やますそ)にある新築の民家である。降り続いた雨で地盤が弱り、いつ崩れ出すか分からない状態だ。そんなご家庭から聞こえてくる会話の一部である。「だから、こんなとこ買っちゃダメって言ったのよっ!」この家の奥さんらしき女性が怒っている。「だってお前、定年まで住宅ローン返すのも辛(つら)いだろっ!」「そりゃまあ、そうだけど…」「んっ!?窓の景色が変わってないかっ!?」「…そういや、そうね。あの木は家の下に植わってたわよね、確か…」「だろっ!?」「ええ…」ご主人らしき男の声に奥さんらしき女性が同調した。事実は、基礎から家全体が傾いて横滑りし、数m下へ移動していたのだ。「気のせいだろ…。雨...驚くユーモア短編集(75)事実

  • 驚くユーモア短編集 (74)騙(だま)し討(う)ち

    今の世の中、一寸(いっすん)先は闇(やみ)・・などと言われる。信頼していた部下や組織に裏切られれば、これはもう、驚く程度のことでは済まず、原が煮えくり返ることだろう。騙(だま)し討(う)ちと呼ばれる裏切り行為だが、雨がシトシト降る勤労感謝の日にめげず、そんなお話をしたいと思います。^^とある大企業で人事異動が発表されようとしている。すでに内示はされていて、主(おも)だった役員は役員会の了承時にすでに知っているが、役員以外の管理者達は全く知らず、どうのこうの・・と、社内で憶測を呼んでいるから安心感がなく、目も虚(うつ)ろだ。専務の平町は専務派の部長、田村を常務に押していた。だが、取り入っていた副社長の市坂に騙し討ちに合い、田村どころか自分の地位も危うくなっていた。「おのれぇ~~!!市坂ぁ~~~!!!」騙し討...驚くユーモア短編集(74)騙(だま)し討(う)ち

  • 驚くユーモア短編集 (73)流行(はや)り

    世の中の流行(はや)りという目に見えない動きは素速(すばや)い。これには驚く以外にはない。とある地方の衣料販売専門店ブティック・イカタマである。一人の客が店員の主人と話している。「えっ!?もうないんですかっ!?」店員に訊(たず)ねた葱川(ねぎかわ)は、流行りの速さに驚く他はなかった。「はい、ふた月ほど前はあったんですがね。新しいデザインの商品が発売されましたので入荷しなくなりまして…」「そうですか…。残念だなぁ~。アレを買おうと給料から別にして蓄えておいたんですが…」「そうですか、それは残念でした。…コレなんかどうでしょう?売れ残りなんで、少し古くなりますが…。お安くしときますよ」「あっ!コ、コレいいですねっ!コレ下さいっ!!おいくらですかっ!」「…そうですね。¥〇,▽□◎で、どうでしょう!」「はい、それ...驚くユーモア短編集(73)流行(はや)り

  • 驚くユーモア短編集 (72)待つ

    目的を果たそうと出てはみたが、驚くほど人が多いときは当然、待つことになる。ということで、今日は根気を要する待つこと・・をテーマにしたお話です。^^「おいっ!どうなってるんだっ!!」とある市役所の生活環境課である。窓口で怒っているのは三時間以上待たされている市民の男性である。「す、すいません!今しばらくお待ち下さいっ!今日に限って機械の調子が…」「機械の調子っ!!機械の調子が悪けりゃ、手で書けっ!手でっ!!」「す、すいません。もう少しですので…」「もう少しもう少しって、一時間前にもそう言ったぞっ!もう、昼じゃないかっ!」「すいません…」「そう思うんだったら、水の一杯でも出したらどうだっ!」これは悪い市民に当たったな…と内心で思う職員だったが、とてもそうは言えず、慌(あわ)てて厨房(ちゅうぼう)へと戻り、トレ...驚くユーモア短編集(72)待つ

  • 驚くユーモア短編集 (71)伝達

    人から人へと言葉が伝達される間に、何がどう間違ったのか、とんでもない別の物や事に内容が変化しているのには驚く。話を聞いた個人個人の思い込みが違うことで伝達が食い違った結果だが、その辺(あた)りをお話にしてみようと思います。^^とある中堅の会社である。朝から営業二課に鳴り響く電話音が鳴り止まない。課員達は次々とかかる電話の応対に、十時過ぎにはすでに疲れ切っている。「課長っ!!どうしますっ!!電話線、引きちぎりますかっ!!」「馬鹿なことを言うなっ!だが弱ったな、これじゃ仕事にならん…。いったい原因は何だっ、梅尾君っ!?」「どうも、鶴山に伝えた内容が食い違ったようですっ!」「食い違ったって、君はどう言ったんだっ!」「どうもこうも、課長が言ってらしたように、『ホニャララしろっ!』と言っただけですっ!」「なにっ!!...驚くユーモア短編集(71)伝達

  • 驚くユーモア短編集 (70)数値

    血糖値を計っていると、普段は正常な数値にもかかわらず、その日に限ってとんでもない数値が出て驚くことがある。何が原因だろう…と昨日の食事を思い出せば、チョコレートの食べ過ぎか…と気づき、ニンマリと哂(わら)う訳だ。まあ、一過性なら、さほど驚くこともないのだが、小心者だと、ついつい心配になってしまう。^^とある医院である。朝の開院直後から、バタバタと駆け込んだ老人がいる。「…今日は、どうされました?」常連の患者らしく、医者は欠伸(あくび)を堪(こら)えて呑気(のん)な声で訊(たず)ねた。「せ、先生っ!今朝、とんでもないことにっ!」「…とんでもない?どういうことです」「け、血糖値がっ!!」「んっ?血糖値が、どうしました?」医者は要領を得ず、もう一度、訊ねた。「今朝、とんでもない数値がっ!!」「とんでもない数値?...驚くユーモア短編集(70)数値

  • 驚くユーモア短編集 (69)化ける

    化けられて驚くのは、なにも幽霊などの怖い存在ばかりではない。ええっ!?あの女性がっ!?と思うブス女が化粧を施されたあと超美人に変身したとき、あるいはブス男が同じように化粧を施されて超イケメンに変身したときなどには、さすがに驚くに違いない。ということで、今日はお化けではない方の、化けるをテーマにした驚くお話です。^^とある撮影所である。主役の女優が、新幹線の運休で到着していなかった。「台風か…弱った!実に弱った!!」監督がそれほど弱っている風でもなく大声で弱る、を強調する。「一時間遅れになるようです、監督。今、携帯で連絡が取れました…」助監督[セカンド]が、それとなく監督に近づき、告げる。「そうか…。このカットは後ろ姿だけなんだが…」そこへ女性スタッフの一人が小走りに監督の前を通り過ぎる。「おっ!粋のいいの...驚くユーモア短編集(69)化ける

  • 驚くユーモア短編集 (68)台風

    台風に驚かされることはいろいろとあるが、中でも、無風で曇っていた天候が突然、崩れ、暴風雨に見舞われるのには驚く他はない。風も弱く、雨もそんな強くないな…などと侮(あなど)っては後々、偉い目に遭うから、注意が必要だ。二人のご隠居が敬老の日のごちそうを食べながら居間で将棋を指している。「大型で猛烈な台風だそうですが、そんな強い風も吹きませんな…」「さようで…雨も降りませんな。まあ荒れないに越したことはないんですがな…」そのとき突然、突風が吹き始め、激しい雨も降り出した。「やはり、台風ですな…大手っ!!」「うっ!!そう来ましたか、台風は…。では私は、これでっ!!」大手をかけられたご隠居は、一瞬、たじろいで驚く素振りを見せたが、その直後、かけたご隠居に逆大手をかけ、盤上に持ち駒の飛車を打ち据えた。これが詰めろの妙...驚くユーモア短編集(68)台風

  • 驚くユーモア短編集 (67)ひとめ惚(ぼ)れ

    これは男女に言えることだが、思わずひとめ惚(ぼ)れするような相手に出食わせば、誰しも驚くことだろう。まあ、そんな夢のような話は、ほとんどないのだろうが、場合によっては起こることもあり得る。^^とある繁華街である。買い物帰りで蒲丘(かばおか)は歩いて自宅へ帰る途中、橋の上で通り過ぎた一人の若い女性にひとめ惚れをしてしまった。その日から蒲丘は、寝ては夢、起きては見つつ幻(まぼろし)の・・とフラつく馬鹿丘になってしまったのである。その日も蒲丘は買い物帰りにひとめ惚れした女性と出会った同じ橋の上を歩いていた。「危ないですよっ!橋から落ちますよっ!」「あっ!どうも…」蒲丘は橋の上から欄干を踏み越え、縦方向に歩こうとしていたのである。蒲丘は思わず驚くと、注意してくれた通行人に礼を言った。ひとめ惚れすると、橋の上から落...驚くユーモア短編集(67)ひとめ惚(ぼ)れ

  • 驚くユーモア短編集 (66)ダイコン

    そろそろ畑に冬野菜を植える頃になったな…と気づき、荒掘り→肥料・燻炭[土量改良剤]→細粒化→天地返し→畝(うね)切りなどの作業を経て種を蒔(ま)き終えた。毎年のことながら、驚くのは収穫時のダイコンの形状である。スンナリといい形に伸びたダイコンもあれば、どれがどうなってこんな形になったのか?と、首を傾(かし)げるダイコンもある。^^ということで、今日はダイコンをテーマにしたお話です。^^収穫前の隣り合ったダイコン二本が語り合っている。『あまり出来がよくてもダメなようですよっ!』『なぜですっ!?』『値が下がるから、だそうですっ!』『なるほどっ!そういや、いつだったかキャベツさんが出来過ぎて、畑で生ゴ処分にされた年もありましたね』『困った飽食の時代ですよ、ほんとにっ!終戦直後の食べものがない時代の人がタイムスリ...驚くユーモア短編集(66)ダイコン

  • 驚くユーモア短編集 (65)川

    あれだけ穏やかに流れていた川が濁流となり堤防を決壊させる豹変ぶりには、ただただ驚くだけだ。とある有名な川である。天気がいいこともあって、多くの釣り人が川が流れる中、浅瀬で釣りをやっている。獲物はアユだ。釣り人ならよくご存じの友釣り・・というやつである。「今日の釣果(ちょうか)はこれだけです…」一人の釣り人が、釣り上げた魚籠(びく)の中のアユを自慢げに見せる。本人にしてみれば、『多いだろっ!?』くらいの気分だ。「なんだ、少ないですね。私はこれだけです…」魚籠を見せられた釣り人が自慢するでなく魚籠の中を見せる。自慢して見せた釣り人の倍の釣果のアユが見える。最初に自慢して見せた釣り人は負けを認めたくないものだから話題を変える。「今日の川は、いい流れですな…」「えっ!?はあ、まあ…」突然の話題転換に驚かされ、最初...驚くユーモア短編集(65)川

  • 驚くユーモア短編集 (64)町並み

    最近の町並みの変貌ぶりには目を見張り、思わず驚くことがある。今日は、そんなどぉ~~でもいいような驚くお話です。^^朝の八時前である。とある商店街の通路を一人の男が右に左と眺(なが)めながら何やら探している。そこへシャッターを上げて開店準備をしようと埃叩(ほこりはた)きを片手に出てきた店のご主人が男に気づいた。「…どこか、お探しですかいのう?」「ああ…こりゃ、ちょうどいい!つかぬことをお訊(たず)ねしますが、この辺(あた)りに四天王寺屋という金物店はございませんか?…確か、二十年前にはあったんですが…」「四天王寺屋さんですか?ありました、ありましたっ!いや、何かの都合で引っ越されたんですが、もう、かれこれ十五年前になりますかいのう…」「そうでしたか。いや、街並みが驚くほど奇麗になったもんで、さっぱり分かりま...驚くユーモア短編集(64)町並み

  • 驚くユーモア短編集 (63)枯れた人

    生きていると、どうしても欲が出てしまう。だが、枯れた人になれば、少々のことでは動じない。動じなければ当然、驚くこともなく、風に柳と受け流すことになる。では、枯れた人が驚くことはないのか?と問えば、神様や仏様ではない人である以上、そんなことはない。今日は、そんな枯れた人のお話です。とある古刹(こさつ)の大僧正、朴念は九十八の老齢ながら、今日も勤行を続けていた。「#$%~~~%$#%~~!”#”#$%%&##”$%…」お付きの僧正、懸想は大僧正の健康を絶えず案じて心が休まることがなかった。というのも、いつお倒れになるか…という心配が付き纏(まと)っていたからである。そのとき突然、一匹のアマガエルがどこから現れたのか、朴念の頭の上に飛び乗った。だがその次の瞬間、朴念の頭髪のない頭に滑(すべ)り、ポトン!と木魚の...驚くユーモア短編集(63)枯れた人

  • 驚くユーモア短編集 (62)物価高

    誰もが物価高に驚く昨今である。政府も生活支援と称して援助金の交付を決定し、必死にインフレ阻止に努めているが、どうも焼け石に水・・の感が否めない。日銀などは相も変わらずゼロ金利政策を維持しようとしていて、まったく庶民の実態が分かっていないように思える。しっかりして欲しいと国民は思っていることだろう。ご隠居二人が散歩帰りの喫茶店で話し合っている。「どうなるんでしょうな、この先?」「年金も減りましたからな…。まあ、私らは心配するほどのこともありませんが、住民税非課税世帯とか生活保護を受けておられるご家庭なんかは大変でしょうな…」「この物価高には驚かされますな」「コロナからの経済失速ですから驚く前の経済政策が必要でしたな」「さようで…」「まあ、小市民の私達が、とやかく言ったところで、どうしようもありませんが…」「...驚くユーモア短編集(62)物価高

  • 驚くユーモア短編集 (61)人柄(ひとがら)

    えっ!?あの人が…と思えるような人の豹変ぶりに驚くことが時々ある。穏やかな人だと思っていた人が突然、激しく怒るような姿に接したとき、人は神でも仏でもないんだ…と思う訳だ。事実、私だって怒るときには激しく怒ることがある。ただ、年老いたからか、その勢いは若いときほどではない。そこに老いを感じて驚き、テンションを自ら下げる訳だ。^^とある町役場である。「おいっ!課長の禿村(はげむら)さんが怒ってるぞっ!」「ああ…」課の前の通路を偶然、通りかかった別の課の二人の職員がチラ見しながら足早に立ち去った。管財課の課長、禿村は人柄がいい温厚な人として役場の全員から慕われていた。その禿村が今日に限って激高していたのである。怒られていたのは同じ課の増毛(ますげ)だった。「今日は返すって言ってたじゃないかっ!!家内になんて説明...驚くユーモア短編集(61)人柄(ひとがら)

  • 驚くユーモア短編集 (60)メカニズム

    人が驚くメカニズムを探るのも面白い。ただ、人によって驚くメカニズムは違うから、ある人は驚いても別の人は全然、驚かない・・という程度の差はある。真夏の夕暮れである。すでに陽は西山へと没し、暗闇のベールが辺(あた)りを覆おうとしている。二人の老人が寺の法事を済ませ、夕暮れ前の庫裏(くり)から境内(けいだい)へ出ようとしている。「暑いですなぁ~」「ええ、まあ…。夏ですからな…」「暑いですが、不気味ですな…」「ええ、まあ…。寺ですからな…」そのとき、どこからともなく冷んやりとした風が二人の後方をスゥ~っと通り抜けた。気が弱い老人は、ゾクッ!と身震(みぶる)いし、『ばあさんが迎えに来たか…』と思い、驚いた。一方、もう一人の老人は、驚く素振りも見せず、『そろそろ秋か…』と驚かず、受け流した。しかし、木に止まった蝉にオ...驚くユーモア短編集(60)メカニズム

  • 驚くユーモア短編集 (59)お年寄り

    もう、そんな年になったんだ…と人に言わず、驚くことなくしみじみと心の底で噛(か)みしめる。辛いが、これも長々と生きてきたあとの自分の姿なのだから仕方がない。すでにお年寄りに仲間入りしているのである。^^ここは、とある温泉旅館のエントランスである。「お金、いいですよ…。市の優待券が使えるお年ですから…」当然のように窓口係の女性が風呂崎(ふろさき)に言った。「ええっ!タダですかっ!?」「はい。それが何か…」「いいんです、いいんですっ!」風呂崎は、こりゃ儲(もう)かったぞ、シメシメ…と思いながら、外っ面(つら)では美辞麗句を並べた。否定しても、よくよく考えれば、自分も一端(いっぱし)のお年寄りなのである。風呂崎は、別に驚くことでもないか…と思い返し、年を意識しないでスルーすることにした。誰でも年を重ねればお年寄...驚くユーモア短編集(59)お年寄り

  • 驚くユーモア短編集 (58)部品

    この程度なら修理してもらえるだろう…などと考えるのは、今の時代、甘い。^^「部品がありませんから…」「えっ!ダメなんですかっ!?」などと、予想外の言葉に私達は驚くことになる。販売元にすれば、自社製品のケアよりも買い替えてもらうことによる利益を優先する時代に立ち至っている訳だ。涙が出るような品々との別れに、ぅぅぅ…と涙することも少なくない。使い捨ての物質文明を進め過ぎた報(むく)いに違いない。映画じゃないが、エクスペンタブルズなのである。^^「まあ、仕方ないか…。買ってから随分、経つからなぁ…」竪堀(たてぼり)は故障した電気製品を残念そうに眺(なが)めながら呟(つぶや)いた。故障した電気製品は平成初期の製品で、部品保有期間10年を優に過ぎていた。「ジャパニーズ・スピリットが消えたな…」竪堀は、第二次大戦敗戦...驚くユーモア短編集(58)部品

  • 驚くユーモア短編集 (57)植物

    植物は人知れず緩慢(かんまん)[スロー]に動いている。知らないうちに飛んできた種が芽を出していて、驚くことがある。植物の生命力の逞(たくま)しさに驚く瞬間だ。最たる例が雑草である。除草したはずが一週間後には、また同じ程度に生えている。ただただ、この現実には驚く以外にない。^^とあるご隠居が、心配そうに盆栽鉢に植えられた竹の寄せ植えを見ている。鉢の竹の寄せ植えは元気なく、勢いがない。そこへ、茶飲み友達で顔見知りのご隠居がひょっこりと裏の垣根から顔を出した。「…植え替えた方がいいですぞ、その鉢…。まだ、間に合います。なんなら私がやって差し上げますが…」「ああこれは、お隣の…。ひとつ、よろしくお願いします」お隣のご隠居は垣根の戸から入り、ゴチャゴチャと手作業をし始めた。「やはり、水はけが悪くなっとります。このま...驚くユーモア短編集(57)植物

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