chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
水本爽涼
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2023/04/10

arrow_drop_down
  • 驚くユーモア短編集 (70)数値

    血糖値を計っていると、普段は正常な数値にもかかわらず、その日に限ってとんでもない数値が出て驚くことがある。何が原因だろう…と昨日の食事を思い出せば、チョコレートの食べ過ぎか…と気づき、ニンマリと哂(わら)う訳だ。まあ、一過性なら、さほど驚くこともないのだが、小心者だと、ついつい心配になってしまう。^^とある医院である。朝の開院直後から、バタバタと駆け込んだ老人がいる。「…今日は、どうされました?」常連の患者らしく、医者は欠伸(あくび)を堪(こら)えて呑気(のん)な声で訊(たず)ねた。「せ、先生っ!今朝、とんでもないことにっ!」「…とんでもない?どういうことです」「け、血糖値がっ!!」「んっ?血糖値が、どうしました?」医者は要領を得ず、もう一度、訊ねた。「今朝、とんでもない数値がっ!!」「とんでもない数値?...驚くユーモア短編集(70)数値

  • 驚くユーモア短編集 (69)化ける

    化けられて驚くのは、なにも幽霊などの怖い存在ばかりではない。ええっ!?あの女性がっ!?と思うブス女が化粧を施されたあと超美人に変身したとき、あるいはブス男が同じように化粧を施されて超イケメンに変身したときなどには、さすがに驚くに違いない。ということで、今日はお化けではない方の、化けるをテーマにした驚くお話です。^^とある撮影所である。主役の女優が、新幹線の運休で到着していなかった。「台風か…弱った!実に弱った!!」監督がそれほど弱っている風でもなく大声で弱る、を強調する。「一時間遅れになるようです、監督。今、携帯で連絡が取れました…」助監督[セカンド]が、それとなく監督に近づき、告げる。「そうか…。このカットは後ろ姿だけなんだが…」そこへ女性スタッフの一人が小走りに監督の前を通り過ぎる。「おっ!粋のいいの...驚くユーモア短編集(69)化ける

  • 驚くユーモア短編集 (68)台風

    台風に驚かされることはいろいろとあるが、中でも、無風で曇っていた天候が突然、崩れ、暴風雨に見舞われるのには驚く他はない。風も弱く、雨もそんな強くないな…などと侮(あなど)っては後々、偉い目に遭うから、注意が必要だ。二人のご隠居が敬老の日のごちそうを食べながら居間で将棋を指している。「大型で猛烈な台風だそうですが、そんな強い風も吹きませんな…」「さようで…雨も降りませんな。まあ荒れないに越したことはないんですがな…」そのとき突然、突風が吹き始め、激しい雨も降り出した。「やはり、台風ですな…大手っ!!」「うっ!!そう来ましたか、台風は…。では私は、これでっ!!」大手をかけられたご隠居は、一瞬、たじろいで驚く素振りを見せたが、その直後、かけたご隠居に逆大手をかけ、盤上に持ち駒の飛車を打ち据えた。これが詰めろの妙...驚くユーモア短編集(68)台風

  • 驚くユーモア短編集 (67)ひとめ惚(ぼ)れ

    これは男女に言えることだが、思わずひとめ惚(ぼ)れするような相手に出食わせば、誰しも驚くことだろう。まあ、そんな夢のような話は、ほとんどないのだろうが、場合によっては起こることもあり得る。^^とある繁華街である。買い物帰りで蒲丘(かばおか)は歩いて自宅へ帰る途中、橋の上で通り過ぎた一人の若い女性にひとめ惚れをしてしまった。その日から蒲丘は、寝ては夢、起きては見つつ幻(まぼろし)の・・とフラつく馬鹿丘になってしまったのである。その日も蒲丘は買い物帰りにひとめ惚れした女性と出会った同じ橋の上を歩いていた。「危ないですよっ!橋から落ちますよっ!」「あっ!どうも…」蒲丘は橋の上から欄干を踏み越え、縦方向に歩こうとしていたのである。蒲丘は思わず驚くと、注意してくれた通行人に礼を言った。ひとめ惚れすると、橋の上から落...驚くユーモア短編集(67)ひとめ惚(ぼ)れ

  • 驚くユーモア短編集 (66)ダイコン

    そろそろ畑に冬野菜を植える頃になったな…と気づき、荒掘り→肥料・燻炭[土量改良剤]→細粒化→天地返し→畝(うね)切りなどの作業を経て種を蒔(ま)き終えた。毎年のことながら、驚くのは収穫時のダイコンの形状である。スンナリといい形に伸びたダイコンもあれば、どれがどうなってこんな形になったのか?と、首を傾(かし)げるダイコンもある。^^ということで、今日はダイコンをテーマにしたお話です。^^収穫前の隣り合ったダイコン二本が語り合っている。『あまり出来がよくてもダメなようですよっ!』『なぜですっ!?』『値が下がるから、だそうですっ!』『なるほどっ!そういや、いつだったかキャベツさんが出来過ぎて、畑で生ゴ処分にされた年もありましたね』『困った飽食の時代ですよ、ほんとにっ!終戦直後の食べものがない時代の人がタイムスリ...驚くユーモア短編集(66)ダイコン

  • 驚くユーモア短編集 (65)川

    あれだけ穏やかに流れていた川が濁流となり堤防を決壊させる豹変ぶりには、ただただ驚くだけだ。とある有名な川である。天気がいいこともあって、多くの釣り人が川が流れる中、浅瀬で釣りをやっている。獲物はアユだ。釣り人ならよくご存じの友釣り・・というやつである。「今日の釣果(ちょうか)はこれだけです…」一人の釣り人が、釣り上げた魚籠(びく)の中のアユを自慢げに見せる。本人にしてみれば、『多いだろっ!?』くらいの気分だ。「なんだ、少ないですね。私はこれだけです…」魚籠を見せられた釣り人が自慢するでなく魚籠の中を見せる。自慢して見せた釣り人の倍の釣果のアユが見える。最初に自慢して見せた釣り人は負けを認めたくないものだから話題を変える。「今日の川は、いい流れですな…」「えっ!?はあ、まあ…」突然の話題転換に驚かされ、最初...驚くユーモア短編集(65)川

  • 驚くユーモア短編集 (64)町並み

    最近の町並みの変貌ぶりには目を見張り、思わず驚くことがある。今日は、そんなどぉ~~でもいいような驚くお話です。^^朝の八時前である。とある商店街の通路を一人の男が右に左と眺(なが)めながら何やら探している。そこへシャッターを上げて開店準備をしようと埃叩(ほこりはた)きを片手に出てきた店のご主人が男に気づいた。「…どこか、お探しですかいのう?」「ああ…こりゃ、ちょうどいい!つかぬことをお訊(たず)ねしますが、この辺(あた)りに四天王寺屋という金物店はございませんか?…確か、二十年前にはあったんですが…」「四天王寺屋さんですか?ありました、ありましたっ!いや、何かの都合で引っ越されたんですが、もう、かれこれ十五年前になりますかいのう…」「そうでしたか。いや、街並みが驚くほど奇麗になったもんで、さっぱり分かりま...驚くユーモア短編集(64)町並み

  • 驚くユーモア短編集 (63)枯れた人

    生きていると、どうしても欲が出てしまう。だが、枯れた人になれば、少々のことでは動じない。動じなければ当然、驚くこともなく、風に柳と受け流すことになる。では、枯れた人が驚くことはないのか?と問えば、神様や仏様ではない人である以上、そんなことはない。今日は、そんな枯れた人のお話です。とある古刹(こさつ)の大僧正、朴念は九十八の老齢ながら、今日も勤行を続けていた。「#$%~~~%$#%~~!”#”#$%%&##”$%…」お付きの僧正、懸想は大僧正の健康を絶えず案じて心が休まることがなかった。というのも、いつお倒れになるか…という心配が付き纏(まと)っていたからである。そのとき突然、一匹のアマガエルがどこから現れたのか、朴念の頭の上に飛び乗った。だがその次の瞬間、朴念の頭髪のない頭に滑(すべ)り、ポトン!と木魚の...驚くユーモア短編集(63)枯れた人

  • 驚くユーモア短編集 (62)物価高

    誰もが物価高に驚く昨今である。政府も生活支援と称して援助金の交付を決定し、必死にインフレ阻止に努めているが、どうも焼け石に水・・の感が否めない。日銀などは相も変わらずゼロ金利政策を維持しようとしていて、まったく庶民の実態が分かっていないように思える。しっかりして欲しいと国民は思っていることだろう。ご隠居二人が散歩帰りの喫茶店で話し合っている。「どうなるんでしょうな、この先?」「年金も減りましたからな…。まあ、私らは心配するほどのこともありませんが、住民税非課税世帯とか生活保護を受けておられるご家庭なんかは大変でしょうな…」「この物価高には驚かされますな」「コロナからの経済失速ですから驚く前の経済政策が必要でしたな」「さようで…」「まあ、小市民の私達が、とやかく言ったところで、どうしようもありませんが…」「...驚くユーモア短編集(62)物価高

  • 驚くユーモア短編集 (61)人柄(ひとがら)

    えっ!?あの人が…と思えるような人の豹変ぶりに驚くことが時々ある。穏やかな人だと思っていた人が突然、激しく怒るような姿に接したとき、人は神でも仏でもないんだ…と思う訳だ。事実、私だって怒るときには激しく怒ることがある。ただ、年老いたからか、その勢いは若いときほどではない。そこに老いを感じて驚き、テンションを自ら下げる訳だ。^^とある町役場である。「おいっ!課長の禿村(はげむら)さんが怒ってるぞっ!」「ああ…」課の前の通路を偶然、通りかかった別の課の二人の職員がチラ見しながら足早に立ち去った。管財課の課長、禿村は人柄がいい温厚な人として役場の全員から慕われていた。その禿村が今日に限って激高していたのである。怒られていたのは同じ課の増毛(ますげ)だった。「今日は返すって言ってたじゃないかっ!!家内になんて説明...驚くユーモア短編集(61)人柄(ひとがら)

  • 驚くユーモア短編集 (60)メカニズム

    人が驚くメカニズムを探るのも面白い。ただ、人によって驚くメカニズムは違うから、ある人は驚いても別の人は全然、驚かない・・という程度の差はある。真夏の夕暮れである。すでに陽は西山へと没し、暗闇のベールが辺(あた)りを覆おうとしている。二人の老人が寺の法事を済ませ、夕暮れ前の庫裏(くり)から境内(けいだい)へ出ようとしている。「暑いですなぁ~」「ええ、まあ…。夏ですからな…」「暑いですが、不気味ですな…」「ええ、まあ…。寺ですからな…」そのとき、どこからともなく冷んやりとした風が二人の後方をスゥ~っと通り抜けた。気が弱い老人は、ゾクッ!と身震(みぶる)いし、『ばあさんが迎えに来たか…』と思い、驚いた。一方、もう一人の老人は、驚く素振りも見せず、『そろそろ秋か…』と驚かず、受け流した。しかし、木に止まった蝉にオ...驚くユーモア短編集(60)メカニズム

  • 驚くユーモア短編集 (59)お年寄り

    もう、そんな年になったんだ…と人に言わず、驚くことなくしみじみと心の底で噛(か)みしめる。辛いが、これも長々と生きてきたあとの自分の姿なのだから仕方がない。すでにお年寄りに仲間入りしているのである。^^ここは、とある温泉旅館のエントランスである。「お金、いいですよ…。市の優待券が使えるお年ですから…」当然のように窓口係の女性が風呂崎(ふろさき)に言った。「ええっ!タダですかっ!?」「はい。それが何か…」「いいんです、いいんですっ!」風呂崎は、こりゃ儲(もう)かったぞ、シメシメ…と思いながら、外っ面(つら)では美辞麗句を並べた。否定しても、よくよく考えれば、自分も一端(いっぱし)のお年寄りなのである。風呂崎は、別に驚くことでもないか…と思い返し、年を意識しないでスルーすることにした。誰でも年を重ねればお年寄...驚くユーモア短編集(59)お年寄り

  • 驚くユーモア短編集 (58)部品

    この程度なら修理してもらえるだろう…などと考えるのは、今の時代、甘い。^^「部品がありませんから…」「えっ!ダメなんですかっ!?」などと、予想外の言葉に私達は驚くことになる。販売元にすれば、自社製品のケアよりも買い替えてもらうことによる利益を優先する時代に立ち至っている訳だ。涙が出るような品々との別れに、ぅぅぅ…と涙することも少なくない。使い捨ての物質文明を進め過ぎた報(むく)いに違いない。映画じゃないが、エクスペンタブルズなのである。^^「まあ、仕方ないか…。買ってから随分、経つからなぁ…」竪堀(たてぼり)は故障した電気製品を残念そうに眺(なが)めながら呟(つぶや)いた。故障した電気製品は平成初期の製品で、部品保有期間10年を優に過ぎていた。「ジャパニーズ・スピリットが消えたな…」竪堀は、第二次大戦敗戦...驚くユーモア短編集(58)部品

  • 驚くユーモア短編集 (57)植物

    植物は人知れず緩慢(かんまん)[スロー]に動いている。知らないうちに飛んできた種が芽を出していて、驚くことがある。植物の生命力の逞(たくま)しさに驚く瞬間だ。最たる例が雑草である。除草したはずが一週間後には、また同じ程度に生えている。ただただ、この現実には驚く以外にない。^^とあるご隠居が、心配そうに盆栽鉢に植えられた竹の寄せ植えを見ている。鉢の竹の寄せ植えは元気なく、勢いがない。そこへ、茶飲み友達で顔見知りのご隠居がひょっこりと裏の垣根から顔を出した。「…植え替えた方がいいですぞ、その鉢…。まだ、間に合います。なんなら私がやって差し上げますが…」「ああこれは、お隣の…。ひとつ、よろしくお願いします」お隣のご隠居は垣根の戸から入り、ゴチャゴチャと手作業をし始めた。「やはり、水はけが悪くなっとります。このま...驚くユーモア短編集(57)植物

  • 驚くユーモア短編集 (56)塵(ちり)も積もれば…

    塵(ちり)も積もれば…山となる・・と昔から言われる。何げなく暮らしていて、ふと、気づけば塵が山となっていて、驚く訳である。^^まあ、こんなどぉ~~しようもない人間には誰もがなりたくはないのだろうが、手間と暇(ひま)がなければ、必然的に塵も積もる。これは致し方ないが、手間も暇もあるのに塵が積もるような人物は話にならない。^^「田所君、この前言ってた資料は出来上がってるかね?」「はい、毎年のことですから、抜かりなく…」「そう!それを聞いて安心したよ、ははは…」予算執行調査前の、財務省主計局のとある予算担当職員とある上司の会話である。「償還金利子の二次国債、また増額です…」「そうだな。毎年毎年、雪だるま式に膨(ふく)らむばかりだから嫌になるよ、ははは…。まあ、政府与党に物申す党が無いから、スンナリと国会は通るが...驚くユーモア短編集(56)塵(ちり)も積もれば…

  • 驚くユーモア短編集 (55)風

    風にもいろいろあるが、驚く風は嫌だろう。暴れまくる台風の風がそれに代表されるが、秋の微風ように楚々と吹けば、同じ風でもランクはかなり上となり、神仏に近いと推察される。十五夜の月が煌々と蒼白い光を縁側に映している。お月見の団子、芒(すすき)・・舞台設定は出来ていて、ご隠居は一人優雅に満月を愛(め)でながら冷酒をグビリっ!とひと口飲み、薄塩で茹(ゆ)でた鞘豆(さやまめ)を頬張る。秋の風情が漂い、実にいい感じだ。と、そこへ一匹の子狸がお団子目当てに近づいてくる。ご隠居は少し驚くが、秋風に心を落ち着かせ、三宝の上に飾られたお団子の数個を子狸に与えようと庭へ撒(ま)く。子狸は美味しそうにその団子を頬張り、どこへとなく消え去る。遠くで子狸の腹鼓(はらつづみ)がポンポコ・・と聞こえる。実はご隠居の耳鳴りである。秋の夜は...驚くユーモア短編集(55)風

  • 驚くユーモア短編集 (54)突然

    予想していない物事が突然、出来たときは驚くことになり狼狽(うろた)えるだろう。泰然自若(たいぜんじじゃく)として、ああ、そう…と冷静に受け止められる人は少ないに違いない。何が起ころうと驚くことがない、こんな人になりたいものです。^^柿沼は疲れていた。やっと残業が終わり、帰宅したのは深夜の十時だった。「ただいま…」『お帰りなさぁ~~い…』玄関で出迎えた妻の美登里は、いつもと違い、どことなく顔色が悪い。それに声も弱々しい。「どうしたんだ?お前…」『少し前にね…。私、階段から落ちて死んだの…』「なにっ!!」柿沼は驚き、玄関の上がり框(かまち)へ思わず腰を落とした。『でも、大丈夫。元気に死んでるから…』「元気に死んでるって、お前っ!」そこで柿沼は、ハッ!と目覚めた。職場のデスク机に上半身を俯(うつぶ)せ、夢を見て...驚くユーモア短編集(54)突然

  • 驚くユーモア短編集 (53)お札(さつ)

    発行されているにもかかわらず、使用頻度(しようひんど)が低いお札(さつ)に二千円札がある。なぜ人々に人気が出ないのか?は分からないが、お札仲間の間で、『あいつは、どこか俺達と違わないか?』などと呟(つぶや)かれ、『そうなのよねぇ~~!』と、お姐(ねえ)言葉で同調されるようなお札なのである。^^そういえば、他のお札は人物像だが、二千円札だけは建物の守礼の門になっている点もお札仲間の間で異端児扱いされる原因なのかも知れない。そんなあまり出回らないお札が手元に入れば、少しは驚くだろう。今日は、そんなどぉ~~でもいいようなお話です。^^「おいっ!船崎(ふなさき)君、ちょっとこの札、前の銀行で千円札2枚に換えてきてくれっ!」「はいっ!珍しいですねぇ~、2千円札ですか…」課長の波止場(はとば)に頼まれた船崎は、手にし...驚くユーモア短編集(53)お札(さつ)

  • 驚くユーモア短編集 (52)鍛錬(たんれん)

    ちょっとしたことで驚く人でも、鍛錬(たんれん)することによって少しは驚かなくのではないか?というお話です。^^中学一年の谷山は気が小さい男で、誰からもお前は男かっ!と、からかわれていた。谷山としては、僕は男だっ!と言い返したかったが、気が小さいからそうとは言えず、黙って聞き流していた。だが、谷山としては、このまま言われっぱなしというのも癪(しゃく)に障(さわ)るから、よしっ!鍛錬して男を証明してやるっ!と思うようになった。谷山の思考の導火線に火が点いたのである。谷山はその日から驚かないよう訓練することにした。まず(1)として、驚くことが起きたときを思って目を閉じ、沈思黙考した。目を閉じれば驚くことを避けられるからである。(2)として、木の枝の棒を刀に見立てて剣道のように素振りすることにした。一日に1,00...驚くユーモア短編集(52)鍛錬(たんれん)

  • 驚くユーモア短編集 (51)騒ぎ

    周辺で騒ぎがあればコトの大小に関わらず、多かれ少なかれ驚くことになる。ふ~~ん…とか、なんだ、そんなことか…などと思う方はそう騒ぐこともないのだろうが、神経が細やかな方は、いろいろとメンタル[心理]面でデフォルメ[誇張]され、騒ぐことなるだろう。^^大都心のとある有名百貨店である。一人の客らしき男がバタつき、アチラコチラとフロアを探している。「ど、とこへ落としたんだっ!」男は自分が歩いてきた経路を逆方向へと辿(たど)り、フロアに視線を落としながら必死の形相で右へ左へと探し続ける。通行する客は、何事だ…とチラ見しながら、コトなかれ主義で避(さ)けるように通り過ぎていく。そこへ売り場の女性係員が売り場へと戻ってきて、フロア前で探し回る男に気づいた。「あの…どうされました?お探し物ですか?」男は、見りゃ分かるだ...驚くユーモア短編集(51)騒ぎ

  • 驚くユーモア短編集 (50)遅刻

    ついうっかり寝過ぎた鮭川は寝布団近くに置いた目覚ましを見た。寝ぼけ眼(まなこ)だったから単針と分針を逆に見たことには気づかず、まだ、こんな時間か…と安心し、鮭川はまた眠ってしまった。この時の正確な時間は七時十五分だったのだが、鮭川には三時三十五分…だった。いつも起きる時間は七時半だから、少しは早い時間なのだが、そうゆとりがある時間でもなかった。そんなこととは気づかない鮭川は、深い眠りへと誘(いざな)われていった。勤める村役場は八時半の開庁だったが、いつもの癖で七時頃に目が覚めたから目覚ましセットはしていなかった。悪いことに、その前日に限って先輩職員が退職する送別会があり、鮭川はつい深酒をしてしまっていた。目覚めるだろう…と踏んで、そう深く考えず眠りについたのがいけなかった。その日は、晴れて新任課長として初...驚くユーモア短編集(50)遅刻

  • 驚くユーモア短編集 (49)祁魂(けたたま)しい

    生活短編集(97)でもタイトルに取り上げたが、この[けたたましい]という漢字表記を辿(たど)れば実に疑問が多く、著名な作家などは[消魂しい]とか[喧しい]などと表記されておられる。まあ、それはさて置き、文句を言われる筋合いもないから、敢(あ)えて私は[祁魂しい]と勝手に表記することにしている。^^さて、騒音が祁魂しいからといって直接、影響が身に及ばなければ、取り分けて驚くこともないだろうが、突然、身に迫るような音なら驚くことになる。振動とともに窓ガラスの外を俄(にわ)かに祁魂しい音が走り去った。「なんですっ!今の音はっ!!」「ああ、今の音ですか…。窓の外を電車が走ってるんです…」初めて訪れて驚く刺身(さしみ)に、部屋の住人、煮魚(にうお)は涼しげな顔で返した。煮魚のアパートのすぐ前は江ノ電で、路面電車が走...驚くユーモア短編集(49)祁魂(けたたま)しい

  • 驚くユーモア短編集 (48)原因

    たぶん…と思える原因なら驚くことはないだろうが、予想もしていなかった原因なら、程度の差こそあれ、誰だって驚くことだろう。「川蝉(かわせみ)さん、申し訳ないんですが、明日は出社してもらえませんか?」「えっ!?ああ、はい…」「いや、何か予定があれば結構なんですが…」「はあ、これといって…」「そうですか。それじゃ、お願いいたします。その代わりと言っては何ですが、明後日と次の日の二日は休んでいただいても結構ですから…」「はい、分かりました…」課長の川蝉(かわせみ)に呼ばれた目白(めじろ)は、嬉(うれ)しいような悲しいような意味不明な顔をしながら承諾した。というのも、川蝉には約束した同じ課のOL、小鳩(こばと)とのデイトがあったのだ。さらに、二日も休める…というもう一つの美味(おい)しい条件も付いたためである。デイ...驚くユーモア短編集(48)原因

  • 驚くユーモア短編集 (47)身体(からだ)

    人の身体(からだ)は実に巧妙に出来ている。というのも、怪我をした箇所が知らず知らずのうちに気づかなくなり、ふと見た拍子に完治している事実を知るに及んでは、ただただ驚く他はないからだ。ここはミクロの世界である。この世界から見れば、人などは宇宙以上の大きさである。「それじゃ、行ってきます…」いつものように細菌家族のご主人は玄関で奥さんに出がけの言葉を身体を振るわせて伝えた。「気をつけてね…」最近、巷(ちまた)では、悪いウイルス族がミクロ世界を席巻(せっけん)しようとしていた。ご主人も襲われれば一溜(ひとた)まりもなく消滅させられる恐ろしい集団で、すでにその規模は身体のミクロ世界に名を知らしめていた。取り締まり警察であるナチュラル・キラー細胞もこのウイルス族には手も足も出なかった。世に言う新型コロナ族である。「...驚くユーモア短編集(47)身体(からだ)

  • 驚くユーモア短編集 (46)怪我

    誰だって怪我はしたくないに違いない。この男、田村は夏のクソ暑い昼下がり、しなくてもいいのに上半身裸で洗車をしていた。勢いよく蛇口につないだホースから出る水を車に向けたとき、田村はハッ!と驚いた。驚くには驚くだけの理由がある。車内が暑く蒸すからという理由で、ついうっかりウインドウを開けていたからだ。当然、蛇口の水は車内に入ってしまいビショ濡れになった。田村は、しまった!と悔(く)やんだが、もうあとの祭りである。とはいえ、気づくのが早かったから濡れ具合も軽かった。まあ、いいか…と、田村は車の後部にあったワックス用の布切れで拭いてコト無きを得た。だが、正確に言えば、事なきを得ていなかったのである。というのも、蛇口から出る水は出しっぱなしになっていたからである。田村はそのことに気づいたとき、慌(あわ)ててパワーウ...驚くユーモア短編集(46)怪我

  • 驚くユーモア短編集 (45)偶然

    前日、夏の終わりを告げる夕立が降った。そして日が変わった朝、機田(はただ)が裏口を開けると小さな稲穂(いなほ)が裏口の戸の下に落ちていた。機田は少し驚いたが、まあ、夕立の風も強かったから、それもアリか…と、稲穂が切れて風に吹き飛ばされたんだ…と平静に戻った。しばらくはコトもなかったが、機田が裏口の戸の下に何げなく視線を落としたとき、一匹の生きた蚯蚓(みみず)が横たわっていた。機田は少し驚いたが、まあ、夕立の雨も強かったからそれもアリか…と、蚯蚓が這(は)って上がったんだ…と平静に戻り、水を少し与え、濡れた土下へ弱った蚯蚓を帰してやった。このような驚くことは時折りある…と機田は、思うでなくまた思った。そのとき、二羽の白鷺(しらさぎ)が空を旋回しながら裏口の上空へ近づいて飛び去った。機田は普段は見ない偶然に少...驚くユーモア短編集(45)偶然

  • 驚くユーモア短編集 (44)その場しのぎ

    木の葉を掃(は)いていた武隈(たけくま)は、近づいてきた見知らぬ相手にバッタリと正面で出会い、声をかけられた。「やあ、武隈さん…」驚くことはなかったが、突然のことだったから、武隈はアングリした気分になった。アングリとは、何とも言えない呆然(ぼうぜん)とした気分である。その場しのぎは家庭内の場合ならいいのだろうが、一度(ひとたび)家の外へ出れば、許されない態度なのである。右か左か、白か黒か・・の判断を社会は問う訳だ。その場は「はあ…」と暈(ぼか)してコトなく応じ、しばらくして武隈は職場へと出かけた。武隈が勤める県事務所は徒歩で数分のところにあった。自宅に近いこともあってか急ぐ要もなく、武隈は通勤に何かと重宝していた。ところがその日に限り、歩道で見知らぬ相手にまた声をかけられたのである。「やあ、武隈さん…」武...驚くユーモア短編集(44)その場しのぎ

  • 驚くユーモア短編集 (43)当選

    当選・・いい響きの言葉である。落選は気分的に戴けない言葉だが…。^^とある国政選挙である。恐らく無理だろうと目(もく)されていた議員候補の落谷(おちや)だったが、今回も出馬した。「先生、地盤は固めました…」「そう…ご苦労さん。有難う…」選対本部長の崖下(がけした)に力強く言われた落谷だったが、心なしか返す言葉は弱く、顔色も優(すぐ)れなかった。それもそのはずで、前回、出馬したときも同じ言葉を崖下に言われたからである。『やはり、今回もダメか…』それが落谷の本音だった。「後援会とアノ方は?」「はあ、後援会はOKだったんですが、協会の方は迷惑だからと蹴(け)飛ばされました…」落谷には、蹴飛ばされたんなら、こりゃダメだな…と思えた。協会は巷(ちまた)で物議を醸(かも)し出し問題視されている団体ながら、政治方面では...驚くユーモア短編集(43)当選

  • 驚くユーモア短編集 (42)骨董(こっとう)

    何度か登場して戴いた骨董(こっとう)屋の店先である。「これはこれは、いつぞやの…」暖簾(のれん)を上げようと表戸を店主が開けたときである。朝早くから店の前で待っていた客に店主は気づき、声をかけた。「朝早くから、どうも…。いやなに、この前、テレビで話しておられた一件が気になりまして…」「ああ、この前の放送、見て下さったですかな。お恥ずかしい話ですが、不調法にも気づきませんでしたあの掛け軸、国のお買い上げになりましてな。それからというもの、取材やら何やらで、よくマスコミの方がお見えになるようになりました。その中の出演依頼のお話でテレビに出たようなことで…」「そうでしたか…。で、この前のような品は?」「ははは…あれは奇跡ですな。業者から買い取りました安掛け軸の中に、たまたま紛(まぎ)れ込んでおったというだけの話...驚くユーモア短編集(42)骨董(こっとう)

  • 驚くユーモア短編集 (41)揚羽蝶(あげはちょう)の幼虫さん

    夕方、パセリの葉を何げなく見ていると、揚羽蝶(あげはちょう)の幼虫さんがスタスタと長閑(のどか)に歩いておられた。さらに茎や葉を見ていると、停止状態の小さな幼虫さんなんかもいて、食糧確保にご苦労さんなことだ…と、つい思えてしまった。さらに見続けていると、驚くことにその幼虫さんの数が尋常でなく多いことに気づかされた。これでは食糧が足らないだろう…と思えたから、小プランターごとスコップに乗せ、葉が茂っている地植えパセリのところへ引っ越しをしてもらった。朝になり、もう一度見てみると、上手(うま)くしたもので幼虫さん達は地植えパセリの方へと移動しておられた。大発生した幼虫さんの生命力の不思議さに、驚く昨日、今日となった訳である。『どうも、御馳(ごち)になります…』そんな声が、どこからともなく聞こえてくる。揚羽蝶の...驚くユーモア短編集(41)揚羽蝶(あげはちょう)の幼虫さん

  • 驚くユーモア短編集 (40)不意

    不意を衝(つ)かれれば誰だって驚く。人によって大小の差こそあるだろうが、驚くことに変わりはない。驚かない人は恐らく、この世の様子を見に来られた神様か仏様に違いない。^^とある鉄道の駅構内である。ホームを動き出した列車に、ウトウトしていた法螺(ほら)は驚いて目覚めた。『次は鴨志田です。目玉線にお乗りの方は乗り換えとなります…』馴れた名調子のアナウンスが車内に流れた。法螺は目玉線の羽牟(はむ)で降りるつもりだったから、眠ってしまったか…と背筋を伸ばし、鞄を手にした。次の鴨志田で降りねばならないからだ。そのとき、不意に前の立った乗客に声をかけられた。「法螺さんじゃないですか、お元気で…」「…はあ」法螺は見覚えの人物ではなかったから、不意に話しかけられて言葉を濁した。「私ですよ、一年ほど前にお会いした…」「…あっ...驚くユーモア短編集(40)不意

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、水本爽涼さんをフォローしませんか?

ハンドル名
水本爽涼さん
ブログタイトル
水本爽涼 歳時記
フォロー
水本爽涼 歳時記

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用