警察庁長官官房人事課長の肩書を持つ鳩村豆男は、疲れ果てた挙句、片足をベッドの下に垂れ、夢の中で足掻(あが)いていた。刑事部と公安部の捜査上の衝突にその原因があることは夢の中だけに当然、誰も知らない。^^まあまあ、お二方・・とはいかない公安警察Vs.刑事警察という組織上の問題があった。加えて、次期公安部長の呼び声が高かったこともある。^^話は数年前に遡(さかのぼ)る。この頃、鳩村は制服組幹部の道を目指し、現場捜査の長として指揮を執っていた。掃き溜めに鶴・・とはよく言うが、掃溜めに鳩の鳩村もその一人で、一年後には現場を去り、本庁へ返り咲くことは、ほぼ確実視されていた。鳩村に限らず、過去の人事異動はそうした方向で発令されていたのである。制服組の若いトップの署長就任は年功を重ねた現場のベテラン刑事達にとっては痛し...ユーモア推理サスペンス小説無い地点<1>