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きみの靴の中の砂 (サヨナラ —— 旧goo blog版) https://blog.goo.ne.jp/disinfectant1953

このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。

みなさんに感謝: アラン・ロブ=グリエ アルベール・カミュ 伊藤整 岩科小一郎 エリック・ホッファー 尾崎喜八 金子光晴 クロード・シモン ジャック・ケルアック 田村隆一 辻邦生 辻村伊助 永井荷風 久生十蘭 フィリップ・ソレルス 船知慧 ブルース・チャトウィン ポール・ヴァレリー ミシェル・ビュトール 森鷗外 森茉莉 吉田健一 ル・クレジオ ロラン・バルト

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多摩市
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2022/04/07

  • ロバート・デ・ニーロと体脂肪の一件

    海から上がって飲むミルクは、口に残る塩気ですこぶる甘く感じる—— 出来れば冷やし過ぎてないのがいい。普段は牛乳好きではないけれど、夏の海遊びには欠かせなくなった。ところで昔、ロバート・デ・ニーロが役作りで、体重を増やすには牛乳が一番だと言ったと映画雑誌で読んだのを忘れずにいるところからすると、体脂肪について見過ごせないところかがあるのだろう。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>ロバート・デ・ニーロと体脂肪の一件

  • 開け放った窓の外の六月

    日本の平安時代にあたる西暦800年代の中国に于武陵(うぶりょう)という放浪詩人がいた。もとは国家公務員試験に合格する程度に勉強した人のようだが、のちに公務員生活がアホらしくなって辞職。それからは、好きな本と琴(古い時代の七弦琴で、凡そ1.3mほどの長さ。今で言うならギターと思って良い)を携え、旅の空の下に生きた。彼の著作『于武陵集』が残されている。日本ではその中にある五言絶句が井伏鱒二の名訳で知られる。『花に嵐のたとえもあるぞさよならだけが人生だ』開け放った窓の外の六月

  • 風が停まる

    夕凪。風が停まる時間。  <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>風が停まる

  • 一番好きで使い易いもの

    あるブログで『持ち物は、一番好きで使い易いものを揃えるのが大事』という一文をみつけた時、ちょうど傍らに西村書店から出た『作家の家------創作の現場を訪ねて(原書は仏文)』という写真集があった。いつだったかの新聞の書評欄にも採り上げられていたから、すでに全国の公立図書館の棚にはあるはずだ。明治大学の鹿島教授が訳文を監修していて、カバーの折り返しにこんなことを書いている。文体は作家なり、家も作家なり。作家の家を見るということは、作家の作品を読む以上に、作家の本質に触れるということなのだ。存命の作家の家や書斎を紹介した本は日欧米とも過去に多くある中、この写真集で採り上げられた作家は、すでに鬼籍に入った作家ばかりで、日本で有名なところをピックアップすると、デュラス、コクトー、フォークナー、ヘミングウェイ、ヘッ...一番好きで使い易いもの

  • 夏の気配

    驟雨がちの街に時折薄日が差すと、肩先を夏の気配が通り過ぎていく。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>夏の気配

  • 書けない

      人は一生に同じ表現方法を無数回行なう——日常の会話文、普通文でならそれは問題ないが、文芸となるとそうはいかず、仮に繰り返される陳腐な表現を読者が許しても、作家本人が(見た目とは違って)生真面目だとそうはいかない。 納得のいく表現方法が見つからないとなると、結局、読者に見せるべきものが書けない、ということになる。  <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>書けない

  • 赤道祭

    楽園へ五千マイル。長い長い船旅だった。さて、赤道祭の思い出話をしようじゃないか。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>赤道祭

  • 同じ色の空

    夏が来てイチ子さんのスカートの青と同じ色の空<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>同じ色の空

  • 北回帰線の南

    ふたりで暮らすようになる前からイチ子さんにもぼくにもオートミールを食べる習慣があった。オートミール——日本ではそう呼ぶけれど、欧米ではポリッジとかカーシャ。呼び方は違っても雑穀を水やミルクで煮たもので日本の粥に相当すると言っていい。ぼくはそれに『塩味』を付け、随時、主食として食べるけれど、彼女はミルクと砂糖あるいは蜂蜜にバナナの輪切りをトッピングして、甘く味付けたものを時折朝ご飯にしている。ぼくの味付けはスコットランドで、彼女のはイングランドで一般的らしい。今朝はふたりしてオートミールを食べながら、イチ子さんが執筆中の久々の大作『北回帰線の南』という旅行記の話を聞いた。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsr...北回帰線の南

  • アラビア海か地中海か

    昔、まだ海外航路の船便が健在だった頃、神戸とフランスのリヨン間をひと月ほどの船旅に費やしたことがある。日中、自室かデッキの陰で過ごすには大した問題はないが、注意が必要なのは、紅海からスエズ運河を抜ける頃に肩や背中を見せる服を着て、日長、船外で過ごすと、アフリカの陽射しは容赦なく肌を焼き、しばらくの間は船室の天井を見上げて眠れなくなる。今、後ろ姿の水口イチ子が見ている海の色は、まだ海そのものの色だから、紅海に入る前のアラビア海かスエズ運河を抜けたあとの地中海のようだ。紅海は、海底に藻が繁殖した沿岸部は海が紅い。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.c...アラビア海か地中海か

  • 自分のためだけにする作業

    歳をとると次第に根気がなくなってくる。飽きっぽくなると言うか、段々物事が面倒臭くなってくる。芸術家が歳をとると、大作を避けるようになる理由はそれで、人はそれを『才能が涸れた』などと言うが、実は涸れてもいなけりゃ、枯れてもいない。毎日チョットずつ、何年かけて創ってもイイというのなら兎も角、一気にやれと言われると歳をとってまでそんな苦労は嫌だから、カメラを持って小旅行にでも出たくなる。旅の後、写真のデータを整理して遊ぶくらいがちょうど良く、面白味も多い。そういった、自分のためだけにする作業の質が上がるのは当然の話で、世の中常識の『締切』の存在が作品の質を低下させる。自分のためだけにする作業

  • 六月の蜃気楼

    梅雨入り前の猛暑――熱気に景色も揺れて、まるで海市のよう。<fontcolor="#ff9900">*</font>昨日、人づてに、きみがぼくに逢いたいって言ってたとか...。ホントだろうか?なんだかそれもまた夏の蜃気楼のよう。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>六月の蜃気楼

  • 暖かい日々の思い出

    日曜ギャラリー『寒い日には、かつての暖かい日々の思い出が役に立つ。#1』<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>暖かい日々の思い出

  • シャルルジョルダンの靴の箱

    詳しいことは知らないけれど、シャルルジョルダンは、水口イチ子お気に入りのシューズ・メーカーらしい。余所行きは、このブランドのものしか持っていないようだ。ということで、この靴の箱は、彼女の空き箱のストックから分けてもらった。横にHANDKERCHIEFSと印字されたシールが貼ってあるから、もとはハンカチの収納に使われていたのがわかる。今は、ぼくがストーリーのアイデアを入れている——5×8インチのリーガルパッドを収めるのにちょうどいい。というわけで、シャルルジョルダンの靴の箱は、『イチ子のいるストーリー』のアイデアが詰まった箱。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.bl...シャルルジョルダンの靴の箱

  • なんになるんだろう

    『嫌気が差す』とはどういうことか。飽きるとかマンネリズムに陥ることを言うのだが、下手なことを言うと「飽きっぽい人だ」などと見当違いな評価をされたりするから口に出すのがはばかられる。言い方を変えれば『こんなことをしていて、一体なんになるんだろう』と気付いたときの気持ちだ。広辞苑第六版によれば『一定の技法や形式を反復慣用し、固定した型にはまって独創性や新鮮さを失うようになる傾向』とある。西洋美術史から転用された言葉だが、世の中のあらゆる場面で使い勝手がいい。『ツガイを好む哺乳類の研究』では三年がひとつのスパンで、少しずつでも変化させていかないと『この相手と一緒にいて、この先、一体なんになるんだろう』という不信感が生じることになる。なんになるんだろう

  • 枇杷

    濡れ縁に座り、南天の白い花の一群を眺めながら、房洲からの到来物――冷水に浸し置いた枇杷の実を口に運べば、弥が上にも夏に身を置く今日この頃の自分の存在が嬉しくなる。午後には雷注意報が出てたっけ。あと一旬日ほどで、陽は早くも夏至点に至るという。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>枇杷

  • 思い出し笑い

    その思い出し笑いは、なに? 別段興味があるってわけじゃないけど、少しは気になるよ。それにぼくは関わってるの?いったい何を思い出したの?<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>思い出し笑い

  • 夏を生きる

    今朝、里山に今年初めてのウグイスを聴く――繁殖期の証し。 彼等は、早くも夏を生きる。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>夏を生きる

  • ノースリーブの季節

    きみの誕生日の夜。取って置きのスプマンテに酔って、イチ子さんは気持ち良さそうにテーブルで眠ってしまった。*初夏、きみにノースリーブが似合う季節。ノースリーブの季節

  • 初めての夏時間

    ふたりで過ごす、初めての夏時間。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>初めての夏時間

  • 例えば、二人の夏は…

    【深夜ギャラリー】例えば、二人の夏は…。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>例えば、二人の夏は…

  • 午睡の夢 —— カリブの風

    夏。午睡の夢。大汗をかいて目覚める。傍らの時計を見れば、昼寝に費やした時間は小一時間ほど。短いながら、不思議な次元を生きたようだ。<fontcolor="#ff9900">*</font>きみの肌の色はぼくと違って、スペインとインディオのハーフ・ブラッドらしいカフェ・オ・レ色。きみは、その豊満な褐色の太ももを作業台代わりにしてハバナ葉の葉巻を巻いていた——まだ、きみの体温が残っているよう。その巻き立ての一本をぼくに手渡しながら、「お昼、何か作りますか?」なんて日本語で聞いてくれたりする。傍らの開け放った窓から、レースのカーテンを大きく揺らして、熱く湿った南風が吹き込んでいた。あれはきっとカリブの風だったのだろう。遠く、街の喧噪も聞こえていた。<ahref="https://blogmura.com/pro...午睡の夢——カリブの風

  • 英領ヴァージン諸島

    英領ヴァージン諸島。首都ロードタウン郊外のホテル。プール・サイドに張られた白いキャンバス地のオーニングの下。赤く染められた手織りの麻のテーブル・クロスの上に、アジアからの旅人らしきその女性は、クラッシュド・アイスを入れたジン・ソーダのハイボール・グラスを置き、時折、それを陽の光にかざして見るのだが一向に口に運ぼうとはしない。ラジオから聞こえているのはジャマイカ・クレオール語の時報——トルトーラ・ショッピングモールが午後2時をお知らせします。カリブ海の湿気を含んだ風がゆったりと吹き抜ける午后。「日本の方ですか?」と彼女に声をかけるなど訳のないことではあったのだが…。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="...英領ヴァージン諸島

  • スポット・ライト

    あるプロフェッショナルのバンドマンを知っている。ビッグバンドの花形テナーサックス吹きだった。彼の話では、テナーサックス奏者として、ある曲のあるフレーズを一息で吹けなくなったら、プロとして一線を退くという不文律があるそうだ。また、楽器ごとにそういったフレーズがあるとも聞いた。引退し、写真集配の仕事を得て夫婦暮らしを支えた。車持ち込みでルートをいち日ふた回り。渋滞がなければ九時五時の仕事で、早々と大好きな家飲みが始められたようだ。ウイスキーを水割りで毎日ボトル半分弱。一週間に二本以上飲む計算になる。つまみは、飽きるまで同じものを通すのがスタイルで、例えば大きくなくてもいいから、ステーキと決めたらズーッとステーキ。ふた月でもみ月でも続く。口に合ったのか、とりわけその期間が長かったのが豚足だったとか...。「普通...スポット・ライト

  • 乱反射

    朝の雨が上がって、薄日が差し始めていた。庭のテラスに続く縁側のガラス戸が開け放つ音が遠くで聞こえる。 「チューリップも、もう見納めよー」と呼ぶようなイチ子さんの声。 洗面所の窓から庭を見遣ると、さっきまでの雨の雫が至るところで乱反射している。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>乱反射

  • 量よりクォリティ!

    今日は二十四時間、久々に何も書いていないいち日。恐らく、今週は何も書かないような気がする。無理して書くと、やっ付け仕事になる予感。年に何回かは思い返すことがある。それは、『重要なのは量よりクォリティ!』<fontcolor="#ff9900">*</font>何をブツブツ言ってるの、と振り向きざまにイチ子さん。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>量よりクォリティ!

  • 蜜月楼

    『蜜月楼』という、その中華料理店のような屋号のレストランは都会なら兎も角、この海沿いの田舎道にポツンとあるのも場違いな景観で、増してや看板の『フランス田園料理』とあるのには、どこか怪しさがあった。これには用心深い食道楽でなくても、足を運ぶには多少の勇気がいるだろう。日本では滅多にメニューに見ない『トリッパ(牛の二番目の胃で日本ではハチノスという)のパン粉焼き』が食べられるかも知れないと思った。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"...蜜月楼

  • 朝からアップルパイ

    今日もまた、朝からアップルパイ。 白黒フィルム時代のアメリカ西部劇映画(時代背景は今から200年位前か)で、未だに印象深い台詞がある。若い、まだ子のない夫婦が営む小さな牧場に通りすがりの来客。農場主が言う。「今、アップルパイが焼き上がったところだ。どうだい、食べていくかい。こう見えても林檎の季節にゃ、パイぐらい食べられる身分なんだぜ」文献に当たると、当時の米国庶民の平均的な経済状況を示す目安は、林檎の実る季節にパイを焼けるかどうか辺りだったようだ。江戸時代の日本人に例えるなら、「こんな百姓家でも、正月だけは、腹一杯餅を食えるんだぜ」と言ったところか。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https:/...朝からアップルパイ

  • ランボーやメルヴィル、或いはサリンジャーやピンチョン

    あるひとつのイメージがあって、その内容の要約は平易な文章で説明し得る。しかし、それは芸術作品ではない。それを芸術の領域に止揚するのが文学的行為。作家のスランプは『書くことが見つからない』のではなく、『納得がいく表現方法が見つけられない』というのが的確だ——陳腐な表現方法を採用するくらいなら『書かない』、というのも『書けない』と同じ範疇にされているが、このふたつは全く別物。文学的スランプを前者の意味で使うなら、文業を突然中止したランボーやメルヴィル、或いはサリンジャーやピンチョンなどの寡作の理由も説明できる。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.co...ランボーやメルヴィル、或いはサリンジャーやピンチョン

  • きみのために、丁寧に髭を剃った朝。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>朝

  • 今日は、書かないの?

    日本では、文筆家が、何かしら思い詰めて執筆しない期間を思慮もなく単にスランプと呼ぶが、英語圏ではWriter'sBlockといって研究対象である。これについては、Wikipedia日本語版がよく書けている。ちゃんとお勉強して、しっかり研究した人が書いてくれているようだ。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>今日は、書かないの?

  • 蓮(れん)という名の女

    『蓮(れん)』は伝統的に粋な名前で、自分が女なら仮にでも普段から名乗りたいほどだ。昨今、『教養ある時代錯誤の粋人』もいなくなったのか、そんな名は次第に命名されることも減り、遂には廃れたようだ。 人生で今のところ、ぼくは、たったひとりしか知らない。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>蓮(れん)という名の女

  • あの人のどこがいいの、なんて聞かないで❗️

    生涯続く、好きな音楽の傾向や色、食べもの——異性の好みもそうかもしれない——などは、いずれも十代から二十二、三歳までの間の生活環境・経験に基づくという。あの人のどこがいいの、なんて聞かないで❗️アタシの趣味なんだから…。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>あの人のどこがいいの、なんて聞かないで❗️

  • 恋には弱いの

    深夜画廊『なんだか夜更かししたいカンジ#3』——「お酒は弱くないけど、恋には弱いの」<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>恋には弱いの

  • 誰にも年にたったいち日しか巡ってこない

    ほぼ創作物全般に言えることだが、作家本人が好きな作品と、受け手側が評価する人気作品とは必ずしも一致しない。また、受け手側の評価も一作に集中することはなく、複数作に分かれるのが通例。その違いは、人それぞれに過去の行動や行為、記憶や思い出の差からくる、言わば感受性の土台が異なるからに他ならない。<fontcolor="#ff9900">*</font>この梅雨明け直後の終業式帰りのスナップ・ショット——明日から夏休みという、この場面、この一枚が、我ながら何故か見飽きない。明日から夏休みという日は、誰にも年にたったいち日しか巡ってこない——貴重な喜びのいち日の記憶が、ぼくの頭の中では、余りにも濃厚なのに違いない。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_c...誰にも年にたったいち日しか巡ってこない

  • カシスのジェラート

    当てにならない天気予報…。怪しい雲行きながら、時折、陽射しが乱反射する。 朝の風——長者ヶ崎を越えて来る。 今、今年初めてカシスのジェラートを食べたい気持ち。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>カシスのジェラート

  • 風のいち日

    今日、風のいち日。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>風のいち日

  • 今から三十年も前の話なのだから

    一瞬すれ違ったような出会いではあったが、今にして思えば、せめて名前くらいは聞いておけばよかったと思う——今更そんなことを言っても仕方の無いことなのだが...。紅茶のアールグレイが好きだと聞いた(ベルガモットの薫りは気持ちを落ち着かせるのだとか)——そんな些細なことを覚えているのに肝心な面影だけが次第に薄れていくような気がして...。まあ、それも仕方のないことか、何しろ今から三十年も前の話なのだから。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブロ...今から三十年も前の話なのだから

  • いつもパイナップル入り

    イチ子さんが休日のブランチに用意するサラダは、いつもパイナップル入り。それと、この頃じゃめずらしくなくなったけれど、モヤシの妹分のような豆野菜アルファルファも...。かつては、どこででも手に入らなかったらしく、出かけたついでに例えば麻布十番あたりのマーケットで買ってきていたようだ。ドレッシングは、決まってサワークリーム。それがダイエットのためなのか健康のためなのかは、まだ尋ねたことはない。 サワークリームは日本人の味覚からすれば酸っぱいだけで甘くなく、なんとも味気ないけれど、ぼくはイチ子さんの前で美味しくなさそうに食べたことはないと思っている——もちろん、美味しそうに食べたこともなかっただろうけれど...。 以前、なにが切っかけだったか「アメリカにはサワークリーム好きが沢山いるわよ」とイチ子さんがキッパリ...いつもパイナップル入り

  • サトウキビ畑の道

    なだらかに下っていく道。先を海風除けのフクギ林が遮る。 春植えのサトウキビは、一年が過ぎて2メートルほどに伸び、収穫も近そう。 今は、まだ誰もいないサトウキビ畑の道。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>サトウキビ畑の道

  • タンポポのサラダ

    いつだったか、ノースショアの手前にクレオール料理のレストランがあるのに気付いた。 COVID-19絡みでシティの繁華街では食事をするのがはばかられ、街外れならと、車を走らせ、ランチに出かけた。 * 定食は、ひと口大に乱切りにしたラム肉を低温のバタークリームソースで煮て、平皿の中央にたっぷりのソースと供に装い、ソースが染み込み易いようにと、生地の細かいブールのようなパンの小片でラム肉を取り囲むようにデコレーションされていた。 サラダはタンポポの若葉に固ゆで卵の微塵切りが飾られ、ドレッシングは典型的なヴィネグレット——レモンをたっぷり絞って至極爽やか。 タンポポのサラダには日本の蕗の薹に通じる苦味がある。どちらもともに春を告げる味だ。 昔よく散歩がてら、土手のタンポポの若葉を摘んできてはサラダにしていたことが...タンポポのサラダ

  • 遠く、近く、『夏』の声が聞こえる

    そろそろ、南緯10度の陽が南中にかかる時間。 強い海風に飛ばされぬよう、慌てて押さえるストロー・ハット。 * 遠く、近く、『夏』の声が聞こえる。<ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>遠く、近く、『夏』の声が聞こえる

  • 緑陰の午後

    初夏。緑陰の午後。 夢はモノクロームというけれど、午睡の夢くらい天然色でもいいとは思うのだが…。緑陰の午後

  • 軽蔑

    その五つか六つ年上の女の人の愛車は、葉山に住む彼女の叔父さんからのお下がりという古いアルファ・ロメオのジュリエット・スパイダー——どこか昔の日野コンテッサに似ている。車が車だけにメンテナンスに費用がかさむらしく、彼女は普段から、結構、節約のオーラをまき散らしていた。最早日本では手に入らなくなった部品は、知り合いの鋳物工場に頼んで一点ものとして作ってもらっているらしい——小さな部品でもひとつ十万円は下らないと噂で聞いた。ところが、お金がないという割りには、車のダッシュボードにコクトーの『ポトマック』の原書なんかが雑に放り出してあったりするから、ぼくらとはお金の使い方が違うのは明らかだった。あの頃、週末に森戸海岸のドライブインシアターへ行けば、彼女の車は必ず見つけられたし、そのあと、ユージさんのビーチクラブで...軽蔑

  • シャンプー

    二十年前のきみの髪の匂いをまだ思い出せるよ。シャンプーの銘柄は遂に聞かなかったけれど…。シャンプー

  • ガラスの動物園

    アメリカ東部で『田舎』と同意語が『アイオワ州』。そのさらに片田舎の大学に短期留学制度を使って来て以来、本当のところ、授業にあまり身が入りません。方言も概ねわかるので不自由はないのですが、そんなことも理由なのか、講義に面白味が感じられなくて困っているところです。それで、日本にいるきみのことばかり考えて暮らしています。ところで、こちらのBarは日中は喫茶・軽食屋も兼ねるので、日本の飲食店同様、遅くても午前11時半には店が開きます。最近、講義をサボっては”Kenny's”というBarに入り浸っています。五十代後半と覚しきバーテンダーと親しくなりました(Kennyというのは創業者である彼の祖父の名前だとか)。ぼくが、あまりに入り浸るので、彼にとうとう言われました。「ぼくの爺さんが若かった頃、つまり、ここに爺さんが...ガラスの動物園

  • 80点以下になることなどあり得ない

    ①授業が始まる前までに、教科書のその日学ぶ予定範囲に目を通す(読むだけだから五分もかからない)。読みながら直感的に大事そうな行(沢山付けることはなく、精々数箇所)にマーカーを付ける。②授業が始まったら、ノートは取っても取らなくてもどちらでもいいが、先生が話の中で強調しているように感じた部分(話だけはちゃんと聞いていないとイケない)に相当する教科書の行に予習の時とは違う色でマーカーを付ける。③試験の前日、『講義中に教科書に付けたマーカーのある行の総て』と『予習時に自分で付けたマーカーとそれが重なっている部分』とをノートに書き写す。二、三度書き写せば充分。これだけでテストが80点以下になることなどあり得ない。勉強時間は短いくせに、これでいつもクラスで上から五番以内の成績。余った時間は、晴れていればボードを抱え...80点以下になることなどあり得ない

  • ベーカリー・ハーヴェイズのイングリッシュ・マフィン

    「ノースダコタ州の州都を答えなさい、と質問されるのと、ビスマルクはアメリカのどこの州の州都か答えなさい、と質問されるのとでは、どっちがクイズらしく感じる?」とイチ子さん。どういう事情からの質問なのか謎だが、「あとの方かな」とぼく。「やっぱりそうよね…」と思案顔。さて今は、どんな仕事を引き受けているのやら。旅行作家のイチ子さんとしては、一応、その仕事の範疇だとは思うのだが...。 時計を見れば、間もなく十六時。ベーカリー・ハーヴェイズで、明日の朝食用のイングリッシュ・マフィンが焼き上がる頃。 ハンガーフックからアウターを取ると、ぼくは、「マフィンを買いに行ってくる」と言ってアパートメントを出る。 2ブロック先(日本の感覚だと二百メートルと言ったところか)まで歩く間に、昨夜、イチ子さんが、モーツァルトの『ジュ...ベーカリー・ハーヴェイズのイングリッシュ・マフィン

  • 人参畑が続く道

    温かな、遅い春の雨が降った翌朝に蒔かれた種は、初夏に白い花をつける。 * 今はまだ誰もいない、人参畑が続く道。人参畑が続く道

  • 見渡す限り家一軒ない土地ではあったものだから...

    アリゾナ州をアルバカーキから国道40号線で西海岸へ向かう途中、コロラド川を渡る手前の湖水地帯に添ってオートマン=トポック・ハイウェイを北上する。全くなにもない荒野の一本道。日中の気温が摂氏43度にもなる風土だ。途中、置き忘れられたかのようにポツンと小さなドライブインが一軒——給油所を兼業する食堂『トポック・マリーナ』とサインボードにある。ランチ・タイム。メキシコ料理ケサディーヤ、11ドル61セント。メニューによると、それはビーフのミンチをチーズと共にトルティーヤで二つ折りにして挟み、よくわからない少量の油で焼いてある。言わば、お好み焼きに似た挟み焼きである。若いウエイトレスのAmberさんにミンチの部位を尋ねるとリブ・ロースだと言う。ついでに、彼女が、この砂漠のような職場にどこから通ってくるのかも聞きたい...見渡す限り家一軒ない土地ではあったものだから...

  • そんな夜のことだ

    このところの夜半にトッキョキョカキョク(特許許可局)とやかましく鳴いていたホトトギスは、なんの気まぐれからか河岸を変えたようで、入れ替わりに近くの土手の茂みでウシガエルが鳴きはじめた。そんな夜のことだ。いつものように浅い眠りから何度か覚め、枕頭の富永太郎詩画集をパラパラとめくっていて、ふと思った——この詩人は、詩も書いたから詩人に分類されているけど、一度は絵描きを目指してもいたし、本質的には画家なのかもしれないと…。そんな夜のことだ

  • アボガドの種

    農協の売店に野菜の種を買いに来た帰りに寄った、と言う。最近、人に話したくなるような事って、何かあった❓と聞くと、遊び半分でアボガドの種を鉢にいけといたら芽が出て、今、30センチ位に伸びたと嬉しそうに話す。アボガドの種

  • カレーライス

    「昔、フランスでコニャック地方へ行った時、街のビストロで、隣にいた酔っぱらって鼻が赤いおじさんに、この辺で一番人気のあるコニャックの飲み方って何ですかって聞いたの。そうしたら、若い奴等はコカコーラで割って飲んでるよ、だって。びっくりしちゃった」 それには、ふたりとも笑った。 「まあ、好きなように飲めばいいってことだよ。日本なら高価な大吟醸酒でも、少しくらい加水して飲む人がいてもいいってことじゃないかな」<fontcolor="#ff9900">*</font> 「お昼はカレーライスよ」お盆休みにどこにも行かない代わりに、今日の日曜日は、もう昼からパーティー気分。 カレーライス——なぜだか急に遠藤賢司を思い浮かべた。初めて聴いたのはいつだったっけ...。1968年12月の渋谷公会堂だったような気がする。そん...カレーライス

  • 三差路、五差路のある街

    なんで渋谷の街が好きなのか...。いつだったか水口イチ子に尋ねたことがある。 答えは、都会らしく区画整理された規則正しい街並みに、突然、それに則らない三差路、五差路が出現するところだという。できるなら、そくな街に住んでみたいとも言う。 確かに三差路、五差路などはには、古い街の歴史が染み込んでいるようだ。そんなところには、昔は地蔵尊などが祀られていて、行く人が手を合わせていたに違いない。三差路、五差路のある街

  • 誰も起きてなさそうな日曜午前三時

    絵のストックはあっても、適当なテキストのストックが無いときの深夜絵画館『なんだか夜更かししたいカンジ#1』——誰も起きてなさそうな日曜午前三時。誰も起きてなさそうな日曜午前三時

  • Once Upon a Time

    OnceUponaTime——遙か昔にあった夏休み中のでごとを思い出してみないか。OnceUponaTime

  • 葉山港近くの海岸で読書する水口イチ子

    図書館で日本文学史を手に取り(勿論買ってもいい)、昭和時代以降、詩人として認定を受けた人は数十人いるが、詩人自らによる朗読を聴いたことのある一般人はそんなに多くないだろう。YouTubeの無かった時代は、詩人の自作朗読を聴くには肉声しかなく(極めて稀にレコード)、朗読会も仲間内に限定されたもの以外は存在しない時代背景があった。一般人が交通費や会費を払ってわざわざ詩の朗読を聴きに行くことなどあり得なかったわけだ。ぼくは、大学の詩歌論の最初の講義で神保光太郎先生が自作詩、もうひとつ、音源で尾崎喜八が自作『ある晴れた安息日の夕暮れに』の朗読を聴いたことがある。それらの朗読は、テレビなどで『プロの歌手』が歌うのと『シロウトがカラオケで歌う』のとほど違いがあった。具体的には抑揚、強弱があり、まさに歌い上げるような音...葉山港近くの海岸で読書する水口イチ子

  • 随分長い間疑うことはなかった

    水口イチ子は、以前から自分の背が高いことを気にしていた。例えば雑踏で他人の視線に曝されるときなど、彼女には、それをことさら気にする様子がうかがえた。 そんな時だ、少しでも背を低く見せようと、屈み加減に少し背中を丸めるという悪い癖が出るのは...。 そんなこともあって、彼女が踵の高い靴を履いたのをこれまで見たことはなかったし、ロウ・ヒールの靴しか持っていないのだとぼくは随分長い間疑うことはなかった。 ところが今、目の前で「お待たせしました」と笑うイチ子の足もとにはハイ・ヒール。それに加え、服装もシンプルではあるがHipな色使いで、以前にも増して晴れやかなチョイス——だから、とりわけ目をひく。 水口イチ子は、なぜにイメージを変えるに至ったのか。随分長い間疑うことはなかった

  • 国家太平、家内安全を祈願す

    令和六年初午の日(20240212)、東京ドームシティ内鎮座、錦秋稲荷社に陶製稲荷神を奉納。国家太平、家内安全を祈願す。国家太平、家内安全を祈願す

  • One Too Many Mornings

    OneTooManyMornings——たくさんの朝の、ひとつOneTooManyMornings

  • ローマまで二十六時間

    昔、水口イチ子とイタリアへ初めて旅したときのことだ。「あの頃、(ぼく達にはお金がなくて)アリタリアの直行便には乗れなくて、オール・ニッポンだったかジャパン・エアだったかは忘れたけど、それで羽田からニューデリーまで行って、そこから確かエア・インディアのハンブルク行きに乗り継いだんじゃなかったっけ?それでもまだローマは遠くて、ハンブルクからさらにルフトハンザでやっとローマ。直行便なら十七時間くらいで行けたんじゃなかったかなぁ。ぼく達は、二十六時間くらいかかっちゃったけど…」「そうそう、それに航空会社にも段取りの良し悪しとかがあるのか、すぐに乗換便に乗せてくれることもあれば、三時間くらいほったらかしにされて、積み残して行かれちゃったのかと思ったこともあったよね」ローマまで二十六時間

  • 夜が更ける頃

    空腹を感じたら、それを満たすだけのなるたけ少量の粗食を摂り、陽の高いうちに眠くなれば、しばし居眠りをする。目覚めていれば、こぢんまりした一文をどこからか見つけてきて、ノートに書き写し、幾度か声に出して読み上げてみる。画家で言うデッサンのようなものだろうか…。 そうするうちに夜が更ける。 その過程でなにか閃くものがあって、なにかできそうな予感がしたら、チューブ入り生ワサビのように、きみのための新たな一行をギューッと搾り出す。夜が更ける頃

  • 好きな歌を聴いて過ごす朝

    春。 雨の安息日。 スーパーで見つけた季節はずれの林檎——旬に一番よくできたものを選別して、翌年の収穫まで地道に保存販売されたと聞いた(たいした保存技術!)。って言うわけで、こんな季節はずれにも林檎が食べられる。*好きな歌を聴いて過ごすイチ子さんの朝。好きな歌を聴いて過ごす朝

  • その理由

    人を好きになったり嫌いになったりする理由は、精々ひとつかふたつあれば充分という説もあれば、それは全く不要で直感だけでいい!という現実もある。その理由

  • 港近く —— 横浜市中区海岸通り

    横浜市中区海岸通り——まだ携帯電話なんてない頃のきみから来た封書にあった住所だ。 その頃、そこをぼくは一度だけ訪ねたことがある。 住所にあった建物——砂岩造りの古い三階建てのビルは、既に割と瀟洒なオフィスビルに内装が改められ、きみのフラットがあったはずの三階の一角は、洋酒を輸入する商社がこぢんまりとした事務所を構えていた。 きみがもう住んでいるはずもないのを知りながら、もしかしたら…という妄想が頭の中を漂う。 * ふと立ち止まった大岡川にかかる小さな橋の上で耳をすますと、桜木町の駅も近く、辺りの騒音が川筋に反響している。 あの日、きみは世界のどこかにいて、ぼくのことなどとっくに忘れてしまっていたかもしれない。 振返れば、港湾事務所の屋上に掲げられた大きな電光掲示板に『F』のサイン——港湾内異常なく、船舶は...港近く——横浜市中区海岸通り

  • その夏へ向けて

    浜松町から羽田行のモノレールが目黒川と京浜運河の合流点を過ぎ、水面にその姿を映しながら対岸に八潮北公園が見えてくれば、モノレールが北部陸橋の上を通過するのは間もない。  自転車で家を出て、運河まで七、八分のサイクリング。  日曜の朝の午前七時、水口イチ子はコンクリートの堤防にあがり、久し振りに穏やかな運河を見おろしていた。初夏の熱気が早くも水面に漂うのがわかる。  就職もしなければ進学もしない。この決定ついて父は「オレに金があるうちだけだぞ」と笑ってはくれるのだが…。 この春が終ろうとしていた頃、進路指導の先生は、こんな調子の父娘を前にして、ただただ呆れていた顔が記憶に残る。 イチ子にとって知りうる大人の世界は、まだ想像の域を出るものではなかったが、自分の行動に責任を感じながら顔を上げて生きていく自信があ...その夏へ向けて

  • 敗者復活戦

    きみは何でも一番が好きだったから、ぼくはそこのところをきみに譲って、これからはずっと二番でいいと思った。ところがそれは思い違いで、ふたりしかいないから二番は常に敗者で、その日以来、ぼくは毎日、敗者復活戦を戦うことになった。敗者復活戦からゴールド・メダリストになった話は、ぼくは今のところ聞いたことがない。敗者復活戦

  • 337キロメートル

    夏の初め、久しぶりに帰省したというきみを、偶然、街で見かけた。 「しばらく会わないうちに太ったでしょ」ときみ。「そう?」とぼく。「二十代の頃は、お腹だってペッタンコだったの、あなた、よく知ってるじゃない」きみが気になる辺りをさすりながら言う。 この四半世紀、きみは、たった一度の結婚に失敗して、今も嫁いだ先の街に一人で暮らしていると言った。 小柄なきみに見上げられながら、結婚しているのかと小声で聞かれ、縁が薄いようでまだだと明かす——この四半世紀、ぼくは、結婚に至らない恋愛を三回した。 わずかな時間の立ち話——連絡先も聞かないまま彼女と別れて、またしてもそれっきり。 昔、きみが、煮え切らないぼくをあきらめて他の人と結婚したあとも、ぼくは時折、申し訳ない気持ちできみを思い出しては無性に会いたくなることがあった...337キロメートル

  • 人生を多少変えてもいい

    好きな人の趣味や生き方、芸術家なら好きな作家の作風などを真似したくなるのは自然な行為らしい。心理学ではモデリングと呼ぶそうだ。 さて、恋したら、気になる人のために自分の人生を多少変えてもいいと思うのも、実はそんなことなのかもしれない。人生を多少変えてもいい

  • 朝から夏の陽射し...

    朝から夏の陽射し...朝から夏の陽射し...

  • 角砂糖

    海から上がるたびに、タオルや着替えを入れたバッグに隠した(家の台所からタッパーに分けて持ってきた)角砂糖を、ランチ代わりに二つ三つ口に放り込むくらいで、今にして思えば、あの夢のような夏の時代は、お昼を食べる時間も惜しがって遊んでたっけ。角砂糖

  • この石の階段をのぼった先

    最早、ジャン・コクトーの全集は古書肆からしか手に入らない。上梓された全集は、今から半世紀程前の東京創元社版が最後だったと思う。もっとも、主要作品さえ読めればいいというなら今でも文庫に数多ある。なにしろ日本では1920年代から翻訳されているほどの人気者。 日本の翻訳者も錚々たるもので、これだけの陣容であれば彼の墓参りをしたことのあるのはひとりやふたりで済むはずはない。*フランス、ミィイ=ラ=フォレにあるサン=ブレーズ=レ=サンプル礼拝堂。そこにある彼の墓には、”Jeresteavecvous”と刻まれている。 それはもう、この石の階段をのぼった先のこと。この石の階段をのぼった先

  • 一本のペーパーナイフを買おうかと決めかけているのだが...

    広い公園の一角にある赤いレンガ積みの図書館の大窓を額縁にして、落ち葉をかぶったパティオに水の止まった噴水の天使が寒そうに立ち尽くす。 今はもうここに来る必要がなくなったと見えるきみの面影を、今も閲覧室のあちらこちらに探すのだが、どうやら徒労に終わるばかりのこの頃。 きみを初めて見かけたのはいつだったか。 きみが調べものの合間に、時折、書棚から選んでいたのと同じ本を今こうして手に取ると、突然きみの手に触れたような錯覚を覚える。レイモン・ラディゲ、『肉体の悪魔』——きみはこの本のどこを拾い読みしていたのだろう。はたまた、それを知りたいと願うこの気持ちは、いったいどこからやって来るのか。 ぼくは今、この想い出の記念に、ラディゲが書いたように、一本のペーパーナイフを買おうかと決めかけているのだが...。一本のペーパーナイフを買おうかと決めかけているのだが...

  • 自分で読みたくなるような文章

    かつてキャリフォルニアのアルコール漬けのイカレたライター(ここだけの話だがチャールズ・ブコウスキー)が言っていた——自分の文章に自信が持てなくなったら誰か他人の文章を読むといい、そうすると自信が甦ってくる、だって。 <fontcolor="#ff9900">*</font>自分で読みたくなるような文章を書くことを目差す——これは地味な意見だが大切なこと。自分で読みたくなるような文章

  • それを撮った場所は覚えていて

    部屋の本棚を整理。偶然、高校生の頃に使っていた教科書の頁の間に、写真が一枚挟んであるのを見つけた。いつ挟んだのか記憶にはないけれど、それを撮った場所は覚えていて、撮ったその日の午後の出来事もまた去年の夏の事のように思い出せた。それを撮った場所は覚えていて

  • 何が起きているか

    世間で何が起きているかなんて興味がなくなって以来、煩わしさを感じることが減った。最近は、ニュースもネットの見出しを一瞥する程度。総理大臣が替わったっていうくらいのことしか記憶に残らない。<fontcolor="#ff9900">*</font>知らないで済むニュースが世の中には多すぎる。何が起きているか

  • 鳥のように空へ向かう?

    昔、鳥を神と崇めた人達がいた——彼等には、死がひとつの憧れだったことを裏付ける痕跡があるという。 人は死んでから後、鳥のように空へ向かう?*『天国や極楽、或いは、あの世』なんていうよく分からない場所よりも、『空』の方が具体的で分かり易く、行ってみたくもなる。鳥のように空へ向かう?

  • 遅い猫の足取りで…

    昔、横浜で買ったのだとイチ子さんが言う。その猫の柄を見てたらサンドバーグの詩の一節を思い出したと言うと、彼女はそれを遮るように、「『霧が来る、遅い猫の足取りで…』って言うやつでしょ!?」正解!これまたイチ子さんの謎の読書体験。遅い猫の足取りで…

  • 晴れて西風の吹かない日

    四月初旬の菜種梅雨が終わって、本格的な梅雨に入るまでのふた月程が一年で一番好きだ。湿度が高くないのがいい。晴れて西風の吹かない日の、カリフォルニアの陽気のようだ。晴れて西風の吹かない日

  • 35万画素

    35万画素のデジカメで撮った写真で現存するのは三枚(多分)。元の画素数が画素数だけに、どんなに手を施しても画質はこの程度止まり。35万画素

  • 妄想癖のある人

    写真と絵画の決定的な違いは、文章芸術同様、絵画は実在しないものを描ける点。妄想癖のある人には絵画は持って来いだ。目の前にモデルも必要なければ、ロケに出かける手間もいらない。妄想癖のある人

  • えっ? 飲み込んだの?

    「朝ごはん食べた?」「ガム食べただけ」「えっ?飲み込んだの?」えっ?飲み込んだの?

  • 上には上がいる

    芸術系の大学がいいのは、季節休暇が長いところ。入学してみて驚いたのは、(選択科目にもよるが)ぼくの最初の夏休みは、6月の最終週から始まって9月初旬まで続いた。休みが長いといっても、ただ長いだけではなく、宿題と言うか課題が昔の小学生のようにあった。例えば『文芸創作』を選択すると、四百字詰め原稿用紙40枚程度の短編小説のプロットを三十作分考えて提出、とか。これなど、中途半端な気持ちで入学してきた者(クラスのほとんど)には死にたくなるような分量だ。もっとも、一学年百人ほどいる学生のうち二人くらいは三十作に留まらずに四、五十作を捻り出し、そのうち出来のいいものを三十作選んで提出する、というようなレベルの学生もいる——どんな分野にも上には上がいるもんだ。夏休みの宿題

  • 雨が似合う人

    気象学の定義にピッタリの今の天候――『気温が低く、雨がちの日々が続く』、これが菜種梅雨。更に古くは催花雨と称す。長雨は好かないが、呼称はいずれも雅で好ましい。快晴が似合う人は多いが、雨が似合う人もいい。雨が似合う人

  • イチ子、透かさず欲張る

    「いつまでも若い頃の気分でいられる方法ってあるんだろうか。勿論、歳を取れば容姿が劣化するのは仕方ないにしても、気の持ち方くらいはどうにかならないもんかな」ぼくが言うのをイチ子は頷きながら聞いている。ぼくは続けて、「今の人が持つ疑問や悩みへの解答とか対処方法は、二千年前のギリシアやローマの哲学者が既に著作に書いてるって読んだことがあるけど、この問題についてはどうなんだろう」「そうね、あたし達が知らないだけで既に誰か偉い人が書いてるかもね。そう言えば、さっき聴いていたクリストファー・クロスの歌にもなんかそんな感じの歌詞があったような気がするけど...。確か有名な映画主題歌だったやつよ」「"ARTHUR"かな?」「そう、それ!」 iPhoneで検索した歌詞の中に、それらしいところを見つけてイチ子に示しながら言っ...イチ子、透かさず欲張る

  • 海を着てるみたいだ

    この夏、腰越の家で見つけた古写真。そのうちの一枚…。「干したTシャツは、潮風の匂いがして海を着てるみたいだ」と言って、庭先できみがはしゃいでいたのを思い出す。海を着てるみたいだ

  • 古い8ミリフィルムに映るコップの水の向こう

    気温が上がるに連れて、飲物も次第に温かいものから冷たいものに移っていく。そうするうちに夏。アイスティーも飲み飽きた頃、やっぱり冷たい水が美味しいと思う瞬間が来る。体重の60%は水だというから、一番馴染みある水分が”Water”というのは理屈に合う。<fontcolor="#ff9900">*</font>古い8ミリフィルムに映るコップの水の向こうにきみが映っていたら、一気に飲み干してしまいたくなるだろうな。古い8ミリフィルムに映るコップの水の向こう

  • どの靴を履いていくかも決められないのに...

    今週末、食事に誘われている――しかも三人から。 手が空かないのを理由に、まだ誰にも返事をしていない。第一、どの靴を履いていくかを決められないのに、どうすれば食事の相手を決められるのか。どの靴を履いていくかも決められないのに...

  • あと8秒あるかなしか...

    ところで、太陽は時速160万キロメートルという、ちょっと想像し難いスピードで銀河系宇宙を楕円を描きながら回っていると言われている。でも、そんな速さでも一周するのに2億年もかかるとか…。*人が宇宙を研究する時、そのままの数字では桁が膨大で扱いづらい。そこで偉い人達が、その2億年を2億分の1にスケールダウンして、1宇宙年と呼んでいること聞いた。大雑把な計算をすれば、1宇宙秒は、およそ6.3年。例えば西暦零年は、たった5分30秒前ということになる。 ぼくが水口イチ子を知ったのは、宇宙秒に換算すると、今からおよそ5秒前。この先50年一緒にいたとしても、残りは、あと8秒あるかなしか…。 つまり、人生はそう長くはないということだ。あと8秒あるかなしか...

  • 1991年の夏が始まった頃

    「外国に身を置いて初めて見えてくるものってあるよ」と水口イチ子が言った場面を、ぼくは、今も覚えている。それは、ふたりして横浜の本牧ストリートにある"MOONCafe"に出没しはじめた年のことだから、1991年の夏が始まった頃のことだ。1991年の夏が始まった頃

  • 七の倍数で生まれ変われる

    人間の細胞って六、七年で全部入れ替わるって聞いた。だからそれ以来、人は、もちろんアタシも含めて、七の倍数で生まれ変われるって信じてるんだけど...。七の倍数で生まれ変われる

  • わからない

    違うふたつの話題を交互に話すから、どっちの話題に相づちを打っているのかわからない。わからない

  • 黄色い浮き袋

    夏の想い出1994黄色い浮き袋

  • とにかく黄色好き

    ぼく達の黄色好きは、いったい、いつの頃からだったか。 古い記憶をたどれば、黄色好きの本家はぼくで、イチ子は確かショッキング・ピンクなんかを好んでいたような覚えがある。 高校に入って気付くと、イチ子は進んで黄色を身に付けるようになっていて、以来、彼女は自称黄色好きを通しているけれど、もしかして『好み』をぼくに合わせているのかも知れない。確かめることもないまま、ぼく達は、今日も黄色を身に付ける。とにかく黄色好き

  • 海棠、そしてアヤメ、花菖蒲...

    「鎌倉の駅から歩いてほんの数分のところに、こんな静かな花のお寺があるのをどうしてみんな知らないのかしらね」言い終わると水口イチ子は山門をくぐって、ひとりで先に行ってしまった。 「ここはね、桜が終わるとすぐに海棠、そしてアヤメ、花菖蒲...」とぼくが言いかけたのもろくに聞かないまま…。 ここ妙本寺に咲く海棠は、四月半ば過ぎからが見頃。その花の柔らかな色は、毎年、中世の、日本の春の情景をぼくに思い描かせる。 * 「ねぇー、ランチは材木座へ行きましょうよ!海の見えるテラス席のあるレストランが沢山あるわよ」離れた本堂の一段上がった外縁から、イチ子の声は、妙に暖かく境内に響いた。海棠、そしてアヤメ、花菖蒲...

  • 相づちを打つはずもなく

    珊瑚をあしらい、南海に見立てたウォーター・タンク(水槽)の中で、熱帯魚が昇降運動を繰り返すのをふたりで見詰めていた。 「きみたちは、なぜ水平に泳ぐのが嫌いなのかな?」とイチ子さんが硝子越しにクマノミに話しかける。「大昔から珊瑚礁のイソギンチャクと仲がいいから、横方向に行動範囲を広げる必要がなかったからじゃないか!?」 ぼくのいい加減な答えに、きみが相づちを打つはずもなく…。相づちを打つはずもなく

  • いつまでもここに居られそう

    「右手が豊後水道、その先はもう太平洋よ」とイチ子さん。「それと、霞んでしまってるけど、向こうに長~く見えるのが佐田岬...」湿った夏の大気がのし掛かる昼下がり。かすかに軽飛行機のエンジン音が聞こえる。「夏の旅もそろそろオシマイだね」とぼく。「仕事はテレワークだし、支払いはiDで済んじゃうし、居ようと思えばいつまでもここに居られそうよ」と言ってイチ子さんは笑う。いつまでもここに居られそう

  • 古いカセットテープ

    昔、自分が倉庫代わりに使っていた階段下の物置部屋で、何を詰め込んだか、もうすっかり忘れてしまったダンボール箱を見つけた。開けてみると、分解された現像機やトランジスタラジオ、赤い小さなラジカセなど、古道具が詰め込んである。四十年くらい前のもののようだ。見れば、ラジカセにテープが一本入ったまま...。見覚えがある。当時、乗っていた中古のアルファ・ロメオにはラジオしか付いてなく、遠出のときなど好きな曲を聴きたいときは、好きな曲をカセットテープにダビングして、ラジカセを車に持ち込んで聴いていたのが懐かしい。ラジカセのハンドルに結んだままのコードをほどいてコンセントに繋いでみる。ラジカセも中のテープも、まだ生きているだろうか...。スイッチを入れる——最初の曲が聞こえてきた。このテープをいつ、誰のために作ったのか、...古いカセットテープ

  • バナナチップス日和

    ところで、首都ワシントンD.C.のコロンビア・ハイツに、太古に隆起した海岸段丘があって、昔そこに暮らしたインディアン達は自分達の部落をマンナハッタと呼んだそうだ。それが所を移し、なまって、今日のニューヨーク・マンハッタンになったという。さて、今日、休日の午後、ピクニックがてらセントラルパークまで足を伸ばした。先週、アパートメントの隣に住む、ロシアの文豪トルストイ似の爺さんが自ら揚げたという『バナナのチップス』と、アメリカン航空でパイロットをしている友人コールくんのフライト土産、ケニヤ産の『緑のお茶』という名前ながら煮出せば真っ赤な色のお茶をサーモスに入れて持ってきた。味から推測するに南アフリカの一部に自生するルイボスを移植したもののようだ。多少酸味は抑えられている。セントラルパークもこの辺りには、マンナハ...バナナチップス日和

  • 少女がパン屋の店先に姿を見せようかという朝の時間

    イチ子さんの今月は、フランスで取材。画家でエコール・デ・ボザールの学生でもある女友達のパリのアパルトマンを頼って、モンマルトルでひと月に渡り滞在中。*アパルトマンの筋向かいには伝統あるパン屋。イチ子さんがパリに着いてこの方、年の頃なら十二、三歳の、金色の髪が朝日に美しく映える少女が、毎日早い時間にパンを買いに来るとメールにあった——イチ子さんが階上の窓辺に起き抜けのカフェ・オ・レを飲む頃、その少女は現れるという——メールに添付された写真には、友人が描いたという朝のパン屋の店先の絵。壁の時計に目をやれば、東京は午後二時。パリとの時差は東京がプラス七時間。モンマルトルでは、そろそろ例の少女がパン屋の店先に姿を見せようかという朝の時間である。少女がパン屋の店先に姿を見せようかという朝の時間

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