(Op.20250425-3/Studio31,TOKYO) 日本の8mmフィルムの現像は、2000年代に終了してしまった。というわけで、この1995年撮影のフィルムは存在自体も貴重で、二十歳の動く水口イチ子が写っている。 【SeanLennon-ThisBoy】 二十歳の動く水口イチ子が写っている
このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。
みなさんに感謝: アラン・ロブ=グリエ アルベール・カミュ 伊藤整 岩科小一郎 エリック・ホッファー 尾崎喜八 金子光晴 クロード・シモン ジャック・ケルアック 田村隆一 辻邦生 辻村伊助 永井荷風 久生十蘭 フィリップ・ソレルス 船知慧 ブルース・チャトウィン ポール・ヴァレリー ミシェル・ビュトール 森鷗外 森茉莉 吉田健一 ル・クレジオ ロラン・バルト
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(Op.20250425-3/Studio31,TOKYO) 日本の8mmフィルムの現像は、2000年代に終了してしまった。というわけで、この1995年撮影のフィルムは存在自体も貴重で、二十歳の動く水口イチ子が写っている。 【SeanLennon-ThisBoy】 二十歳の動く水口イチ子が写っている
(Op.20250425-2/Studio31,TOKYO) 右の二の腕の肌が乾燥して痒かった。当初、歳のせいかと思ったが、試しに冬の保湿剤を塗ったら治まった。カサカサは歳のせいではなく、エアコンが原因かもしれない。ぼくの痒みは歳のせいと言ってイチ子さんは聞かないが...。 ぼくの痒みは歳のせいと言ってイチ子さんは聞かないが...
(Op.20250425/Studio31,TOKYO) G.W.——観光客の雑踏に紛れ込まずに町内を移動する。 G.W.——観光客の雑踏に紛れ込まずに町内を移動する
(Op.20250424-3/Studio31,TOKYO) イチ子のおじいさんが、東京オリンピック(1964)のヨット競技種目『インターナショナル・ドラゴン級』で世界と競ったのが、この葉山沖。 『インターナショナル・ドラゴン級』で世界と競った
(Op.20250424-2/Studio31,TOKYO) 南の海の、赤道をまっしぐらに越えた、とある島影の向こう —— そのコバルト・ブルーの海に、かつて、見果てぬ夢を追った人達がいたことを我々は今も忘れずにいるだろうか。*「この写真の機体は、ゼロ戦ですかね?」とカメラマン。「確かにゼロ戦に似てはいるけど、垂直尾翼と方向舵がゼロ戦より大きいという特徴がある。それとプロペラが曲がっていないところを見ると、フロート付きの水上機が正しく着水したと推測できる。つまり、この写真の機体は、ゼロ戦を水上戦闘機に改修した二式水上戦闘機と踏んだね。フロートは木製だから、もはや朽ちて、失われてしまってるけど...」「パイロットは、どうなったと思います?」と彼。「こういうふうにきれいに機体が残っているということは、撃墜され...プロペラ音まで聞こえてくるようだ
(Op.20250424/Studio31,TOKYO) 人生の転機は、それまでの生活パターンを一変するタイミングでやって来る——就学、卒業、受験、就職、結婚、転職、退職などが普遍的なそれだ。それぞれに別れ道があり、どれを選べば良いかは同時に試せないので厄介——中にはロスを取り返し辛い選択ミスもあるから人生は大変。*ところで、結婚相手が人生最初のお付き合いの相手という例は少ないから、過去のそれぞれの別れに後悔が残る。男の場合、『女のように心の清算の踏ん切りが良くない』から、過去の別れの後悔を一生引きずることもある——年をとって『自分が生涯で一番好きだった人は』と考えたとき、遙か過去の人だったりするのは極めて良くある話。 【木暮"shake"武彦×三国義貴×TheLadyShelters-Jumpin'...清算の踏ん切りが良くない
(Op.20250423-2/Studio31,TOKYO) ここでは、ゆっくり呼吸が出来る。 【CraigRuhnke-KeepTheFlame】 ここでは、ゆっくり呼吸が出来る
(Op.20250423/Studio31,TOKYO)街路を圧した界雷は遠ざかり街角には名残の西風が吹くああ五月の初め...*タイムズスクエア42丁目停止信号の交差点目前の路面に綿雲の影気温華氏七十度...いつもと変わらないノイジーな朝【TheFastbacks-GoAllTheWay】 いつもと変わらないノイジーな朝
(Op.20250422-3/Studio31,TOKYO)冬は、あきらめきって寒さに甘んじていましたが、昨日今日のように少し暖かいと、次の季節への期待が高まります。これは、いつの年だかの『梅雨明け十日』の思い出。【TheAnimals-BoomBoom】 いつの年だかの『梅雨明け十日』の思い出
(Op.20250422-2/Studio31,TOKYO) 1500万年前に海底火山から噴出した、固い溶岩塊の表面を流れ落ちる、袋田の滝 —— 規模は幅70メートル以上、落差120メートルに至るという。昔より領内で名瀑の噂高いこの滝を一度見ようと、かつて水戸黄門も訪れたとか。 1500万年前、ここは海底だった
(Op.20250422/Studio31,TOKYO) その島を地図で適確に指し示すのは、イタリア人にもたやすいことではないらしい —— 詰まるところ、観光ビジネスとは縁が無いようだ。宿泊には小さなホテルが数軒、日本でいうなら、昔、旅商いの人が泊まった宿のようとでも言おうか。すこぶる美味しい白ワインは地産地消で島から出ることは稀だ。*さて、彼女を最初に見かけたのは、あまねく晴れた午後の時間だったか —— 地肌の想像の色と体付きから、極東からの旅人を直感した。 【TheStyleCouncil-MyEverChangingMoods】 地中海、その鄙びた小島にて
(Op.20250421/Studio31,TOKYO) 凪 —— 風が止まる時間。座りこむ夏。海鳴りだけが聞こえる。*一度だけでも、きみに触れたかった。 【松尾清憲-ロング・ロング・ビーチ】 凪 —— 風が止まる時間
(Op.20250420-3/Studio31,TOKYO)古くは代々村長を務めた家系だという。今は民宿を営むその家の門構えは、島で、ひと際重厚な趣がある。本来、魔除けが目的という屏風(ひんぷん)を正面に見て、両側がガジュマルの大木、石垣に沿って雑草のようなアカバナーの群生があり、夏から秋にかけ、それらが白砂を敷き詰めた小道に濃い影を落として燃えるように咲くのに出会えば、ここが日本ではなく、どこか遠い、もっと南方の異国にいるかのような夢も見られたに違いない。宿の古老の話す、ガジュマルの古木に住む妖怪マーザ・カムラーマ(キジムナー)のことなどに旅人たちが耳を傾けたのは、あちらこちらの民宿の晩餐の席から、やおら三線の音も聴こえてこようという、琉球の小島の夏の宵のこと。*チャンプルーと泡盛とカチャーシーに縁取ら...さらなる南の島影への熱い想い
(Op.20250420-2/Studio31,TOKYO)作家・水上瀧太郎(みなかみ・たきたろう1887-1940)のデビュー作『山の手の子』の一節...。『きらきらと暑い初夏の日がだらだら坂の上から真直ぐに流れた往来は下駄の歯がよく冴えて響く。日に幾たびとなく撤水車が町角から現われては、商家の軒下までも濡らして行くが、見る間にまた乾ききって白埃になってしまう。酒屋の軒には燕の子が嘴を揃えて巣に啼いた。氷屋が砂漠の緑地のようにわずかに涼しく眺められる。一日一日と道行く人の着物が白くなって行くと柳屋の縁台はいよいよ賑やかになった。』この作家、後年の評価では小説よりも文明批評絡みのエッセイの方が質が高いというのが定説で、それらは岩波文庫の一冊『貝殻追放抄』で読むことができる。『山の手の子』は明治四十四年の作...日本の初夏を描く
(Op.202504020/Studio31,TOKYO) 手間を掛ければ掛けるほど、現実からかけ離れていく。 【しまむらテーマソング】 手間を掛ければ掛けるほど、現実からかけ離れていく
(Op.20250419-2/Studio31,TOKYO) 数年ぶりに訪れた場所などが、かつての印象とかけ離れて開発が進んでいたりすることが多い——近代では、人が住む、ほとんどの街がそうだ——ということは、進化発展するよりも過去の古い時代を留めておくことの方がどれだけ大変かが想像できる。かつて、稲村ヶ崎駅前の細い路地が、夏休みに入ると原宿のような大変な人混みになっていたのが懐かしい。海岸は、最早、海水浴場というよりサーフ・ポイントとしてのイメージの方が強くなった。 稲村ヶ崎
(Op.20250419/Studio31,TOKYO)大学では第二外国語として独逸語を選択した。理由は、当時の読書傾向がフランスよりドイツの作家に馴染みがあったというに過ぎない。当時読み込んでいた鴎外や堀辰雄の影響が大きかったと思う。だから、ハウプトマンやリルケ、ヘッセなどの作品には思い入れが深い。さて、そのドイツ語履修最初の時間のことだ。それまで講師の名前など気にも留めなかったが、その時初めて、それがマツモト・ツルオという人であると知った。それは、聞いたことが有るような無いような名前だった。何度かその名を頭の中で繰り返すうち、覚えのある、ひとりの文芸批評家が記憶の端に浮かんだ。しかし、その人の経歴からして、大学で語学教師をするような人にはとても思えなかった。自ら経歴を語るわけでもない、その四十代の寡黙...きみ、ぼくを知ってるの?
(Op.20250418-2/Studio31,TOKYO)だいぶ昔の話だ。ある年の春、那覇でレンタカーを借りて一週間程沖縄を旅した。海岸線に沿って反時計回りに本島を一周した最終日の夕方、右手に米軍キャンプ・キンザーを見ながら58号線を南下、勢理客(じっちゃく)の交差点を右折して国立劇場の方へ回り込んだ先に、最後の目的地『エフエム沖縄』はあった。大学時代の友人の与那嶺くんが、そこでプロデューサーをしていて、久し振りに会って飲もうじゃないかという約束になっていた。約束の時間に受付で待つと、間もなく背の低い、太い眉毛に例の浅黒い顔の、五十過ぎにしては比較的若く見える彼が現れた。「まだ、収録中なんだ。二本録りで、あと少しで終わるから、良かったらサブコンに来て、待たないか」と言う。副調整室など学生時代の番組製作演...魔法のビート
強い陽射しがギラリと濡れたアスファルトに弾んでいよいよ眩しい
(Op.20250418/Studio31,TOKYO) 四月も半ばを過ぎて『菜種梅雨』の終わりを予感させる、突然の晴れ間。強い陽射しがギラリと濡れたアスファルトに弾んでいよいよ眩しい——その刹那だ——そろそろ半袖のシャツでもいいなとイチ子は思った。 【Bridge-PoolSideMusic】 強い陽射しがギラリと濡れたアスファルトに弾んでいよいよ眩しい
(Op.20250417-4/Studio31,TOKYO) 街角に立って決してやってこない人を待つのがパワーなんだJackKerowac キング・オブ・ザ・ビート
(Op.20250417-3/Studio31,TOKYO)三月最終週の午前中、北鎌倉・円覚寺の境内を水口イチ子と巡った。その後、寺領の北のはずれを接する浄智寺脇の山道を登って葛原岡神社に至り、さらに銭洗い弁財天を経て鎌倉駅へと下った。途中、葛原岡神社に祀られている十四世紀の文人・日野俊基卿に、イチ子は、いたく感心したようだった。*昼を大分過ぎた頃、ぼく達は、鎌倉駅前商店街のとある食堂に座っていた。イチ子は生シラスを食べるのを楽しみにしていたのだが、一月から三月までは禁漁期間だと店で聞かされ、少なからずガッカリした。でも、その代わりに注文した冷凍シラスの釜揚げが揚げたてだったことを喜んだ。シラスを味わいながら、ぼく達は麦酒を飲んだ。そして今日いち日のことを話し、そしてまた麦酒を飲んだ。帰途、鎌倉駅前の豊島...鳩サブレー
(Op.20250417-2/Studio31,TOKYO)「創作って搾り出すことじゃなくて、溢れ出てくるものを記録する作業のことでしょ?」と少し酔った水口イチ子が言う。「推敲の段階で削るのに苦労してるっていうなら兎も角、初稿を書くのに苦労しているようじゃ、作家も先が思いやられるわね」とも。 【TheLeftBanke-WalkAwayRenee】水口イチ子の講義
(Op.20250417/Studio31,TOKYO) 小学生の頃の夏休みの宿題に『絵日記』があった。それがまた大変苦痛で、日々描くこと(書くこと)が見当たらない。でも、生きている以上、書くことがないなんてあるはずが無い。今、目の前にあるもののことを書けばいいだけ。「明日も一緒にいようね」 明日も一緒にいよう
(Op.20250416-2/Studio31,TOKYO)一年を通じて食べられる食材、トマト。露地物の旬というと『春先から初夏』までと『秋』だとか。盛夏の頃は、生育が速過ぎて大味になるらしい。「トマトって美味しいわよね。好きよ」とイチ子。続けて、「でもね、日本のようにトマトを加熱しないで食べる文化のある国って世界でもめずらしいんですって。トマトは茄子科だから、生だとあなたのように微かに毒があるっていう話よ。まあ、たくさん食べなければいいんでしょうけど...」「たくさん食べなければ安全なら、その辺もぼくに似てるみたいだ」【BertieHiggins-KeyLargo】 微かに毒がある
(Op.20250416/Studio31,TOKYO) 水口イチ子から木彫りの筆箱をもらった(蓋は革の細紐で締めて固定するようにできている)。書き物机の上に置いて眺めていると、昔の、遠く南方の海に生きた男達が操った丸木舟にも見えてくる。 【UkuleleOrchestraofGreatBritain-ThankYoufortheMusic】 遠く南方の海に生きた男達が操った丸木舟にも見えてくる
気泡に揺れるがままに沈みそびれた、まるでこの南海の夕陽のようじゃないか
(Op.20250415-2/Studio31,TOKYO)水口イチ子が、おやつ代わりにしようと、ポートサイドの市場で小さなフルーツトマトを買ってきた。ミネラルは豊富だが、痩せた島の土壌が理由で大きくなれないのだとか。それと引き換えに甘味は増すらしい。「冷やしたスプマンテかスプリッツァーと一緒に食べましょう」とイチ子は元気だ。*日向でグラスのソーダ水越しにその紅い小さな実を透かして見ると、それは、気泡に揺れるがままに沈みそびれた、まるでこの南海の夕陽のようじゃないか。【WilkoJohnson&RogerDaltrey-CanYorPleaseCrawlOutofYourWindow】 気泡に揺れるがままに沈みそびれた、まるでこの南海の夕陽のようじゃないか
(Op.20250415/Studio31,TOKYO)「これで髪飾りを作ると蓮華より見栄えがいいんだけど...」と言いながら、イチ子さんが庭で白い花を一本手折った。「ちょっと匂いを嗅いでみて...。ううん、花じゃなくて、折ったところ...。ニンニクみたいでしょ?髪飾りには向かない香りよね」「ノビル?」「そう。この辺の古い人達はノビローって呼ぶけど...。もはや、昔の食べものね」「子供の頃は、春にめずらしくなく食べたよ、味噌付けて...」「十年くらい前、一度、夕飯に出したの覚えてる?」「うん、おぼえてる。ぼくに掘らせたじゃないか」「あら、そうだったかしら...」髪飾りには向かない香り
(Op.20250414-3/Studio31,TOKYO) 明日から夏休み。楽しくないわけがない。 明日から夏休み。楽しくないわけがない
(Op.20250414-2/Studio31,TOKYO)夏のココア・ビーチだったか。*「シュナップスって、飲んだことある?」とイチ子。「なんでまた、そんなことを急に?」彼女が本の扉をこちらに向けて見せる——ヘミングウェイ著『最初の49の物語』。赤い表紙だからロンドンのジョナサン・ケープ版のようだ。「書いてあるのよ、それがここに...」日本では滅多に見かけない酒だ。記憶をたぐってみた。「ジンみたいな蒸留酒だよ。確か、ドイツ語圏でよく飲まれていたように思うけど...」とぼく。「で、飲んだことある?」「ああ、一、二度あるかもしれない。映画『大脱走』で捕虜達が蒸留していたジャガイモ焼酎も、そんなんだったと思う。強いのだと90度以上のがあるらしいよ。マックイーンが一気飲みして、むせ込んでたやつがそんなんだ」シュ...夏のココア・ビーチだったか
(Op.20250414/Studio31,TOKYO) 日本語でいう一世代の長さの概念は、英語の1Generationとほぼ同じで、およそ30年。一人前の現役成人の最も活躍し得る期間を指しているようだ。父、息子、孫の3世代で、凡そ100年——1Centuryという計算になる。*芸術作品が、ある世代(30年間)で散々もてはやされたとしても、その期間だけでは、芸術的価値を推し測るには余りに短い。文学史、映画史に名を残し、制作後五十年経っても読者やファンの目や手に触れる距離に作品があり続ける必要がある。そうなると、小説にしろ、映画にしろ、音楽にしろ、価値あるものの仲間入りが出来るまでには、とにかく時間と年数がかかるということだ。 価値あるものの仲間入りが出来るまでには
(Op.20250413-3/Studio31,TOKYO) 倫敦でも紐育でも東京でも、首都に生まれると、なんか得することってあるんだろうか。音楽でも芝居でも、ライヴ好きにとっては自分の街にいながら、世界中の芸術家達の方からやって来てくれるのは好都合だ、とアメリカの田舎町生まれの友人は言った。 【佐藤竹善-TokyoCitySerenade】 首都に生まれると、なんか得することってあるんだろうか
(Op.20250413-2/Studio31,TOKYO)にわか雨が通り過ぎた。 驟雨
(Op.20250413/Studio31,TOKYO)例年、梅雨と言うと、六月十日頃から七月二十日辺りまでの期間の標準的な季候を指す。日本よりもっと南の国のものとは趣は異なるが、一種の雨期である。その時期、晴れ間を挟んで雨が振ったり止んだりならともかく、数日間降り続いたりすると確かに鬱陶しく、気持ちは落ち込みがちになる。しかし、その甲斐あってか、梅雨明け後の『夏』に向けての期待や、それを待つ喜びとか、はたまた妄想などは増幅される。もし梅雨がなければ、気温の上昇に伴い、だらしなく夏を迎えることになるのだろう。そんなことから、梅雨には梅雨の役割があると感じるようになって久しい。思い起こせば誰にでも、それぞれ季節の風景と密接に関わる記憶がある。四季を持たない国に住む人達には想像も付くまい。とりわけ『夏』を背景...どういう理由によるものなのか
(Op.20250412-3/Studio31,TOKYO)Barでの身の振る舞い方...。「わたしより速く飲まなければ、そうはならないわよ」とイチ子さん。『騒がない』『泥酔しない』『長居しない』は、バーの掟というか常識 —— ところが、最近これが自分で守れない——このところ、立て続けに二度、カウンターで居眠りをした。旧知のバーだから、敢えてそっとしておいてくれるところが始末に悪い。酒場で酔って居眠りをするなど、アメリカの場末なら、大方、アルコール依存症のホームレスあたりが相場。しかし、イチ子さんと外で飲むとついついペースが速まるのは、いったいどういうわけか。【GaryRhosBand-TheNightBefore】 わたしより速く飲まなければ、そうはならないわよ
地震学者が比較的集中して住んでる地域ってニュース・ヴァリューがありそうだ
(Op.20250412-2/Studio31,TOKYO)朝、ちょっとした地震があった。イチ子さんも目を覚ましたようだったが、様子を見に起きたのはぼくだけ。*朝食時に点けたテレビでもそのニュースをやっていて、自然とぼく達もその話題に...。「少し前までは、この辺はT断層の直近だから大きな地震の時は大変な被害が出るだろうっていう話だったけど、最近は研究も進んで新しい評価があるみたいよ」とイチ子さん。「ああ、それ聞いたことがある。このあたりって小規模だけど、ニューヨークのように岩盤の上に載ってるらしいって話でしょ?ここにK電鉄の本社があるのも沿線で地震の揺れが伝統的に一番少ないところを調べたら、ここだったっていう話だよ」「フーン、だからなのね...。この間、例の国際募金の会で知り合った奥さんのご主人が地震学...地震学者が比較的集中して住んでる地域ってニュース・ヴァリューがありそうだ
(Op.20250412/Studio31,TOKYO)保健所通りという少しもロマンティックな響きのない旧街道沿いの北欧料理店で、ぼく達はスプーンが突き立てられるほどと評判の『具沢山の豆スープ』を食べていた。「久し振りにきみのアップルパイを食べたいなぁ」と思わず口から出た。「林檎は今、ちょうど旬の裏側よ。あと半年待ってて。とにかくフレッシュで酸っぱい品種が出てこないと美味しいのが作れないのよ」*夜、小さなカット画を一枚描いた。【LizPhair-Mother'sLittleHelper】 あと半年待ってて
(Op.20250411-5/Studio31,TOKYO) 夜、『東京ワンダーホテル』。『波の数だけ抱きしめて』と『東京ワンダーホテル』は、各著作権の問題でDVD等入手困難なまま。 その夢は、やがて、現実となる?
(Op.20250411-4/Studio31,TOKYO)ぼくはさっきから、行方不明のもう片っぽのソックスを探している。*さて、気まぐれに読もうとしているのは『マルテの手記』——多々ある翻訳の中で、どれを手にするかは重要な問題。まず引用されることの少ないレアな翻訳がひとつ頭に浮かび、さっき、それを書庫から引っ張り出して来た。重いので、外出時に携えるには不向き。訳本『マルテの手記』—— 昭和三十年八月三十日発行、新潮社版堀辰雄全集第六巻より(単行本未収録)、昭和九年十月から順次『四季』に収録『マルテ・ロオリッツ・ブリッゲの手記』。*ソックスは、水口イチ子からもらった帆布のトートーバッグの中から見つかった。洗濯ものをたたむときに紛れ込んだようだ。【CaroleKing-ItMightAsWellRainUn...もう片っぽのソックス
(Op.20250411-3/Studio31,TOKYO)昼下がり、大日堂へ続く山門の階段を上ってくる水口イチ子。ここまでは、街路の喧噪も容易には届かない。【TheBrothersFour/TrytoRemember】 大日堂へ続く山門の階段を上ってくる水口イチ子
(Op.202504011-2/Studio31,TOKYO) 趣味は、いつでも好きなときに止められる。そう簡単に止められないのが仕事。趣味からの収入で生活が成り立つ人もいれば、仕事からの収入だけでは、なにかと立ち行かない人もいる。若い頃から生産的な趣味もなく、仕事一筋に生き、定年後の有り余るほどの余暇を目の前にして茫然とするのは避けたい。その茫然を解消する目的で老後の資金を消耗するなど惨めの極み。 趣味からの収入で生活が成り立つ人
(Op.202504011/Studio31,TOKYO) 時間を気にしないで暮らすことに慣れてしまったのかもしれない。 <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>時間を気にしないで暮らすことに慣れてしまったのかもしれない
(Op.202504010-3/Studio31,TOKYO) シャーウッド・アンダーソン(SherwoodAnderson,1876年9月13日-1941年3月8日)というアメリカ人作家の名を聞いたことがある人は、大学で米文学を学んだ人でもない限り、ほとんどいないだろう。多少興味をもったらネット検索してみるといい。彼の文体は、後続の多くのアメリカ人作家に影響を与えている——ネットには、アーネスト・ヘミングウェイ、ジョン・スタインベック、トーマス・ウルフ、レイモンド・カーヴァー等の名があげられている。日本で言うなら、過去の時代の文語体一辺倒の文体を、口語体を用いることにより、それまでの常識を根底から覆す動機になった作家泉鏡花が近いか。 【TheDonays-DevilInHisHeart】 シャーウッド・アンダーソン
(Op.202504010-2/Studio31,TOKYO)原作者は『廃市』を架空の町としたが、映画の舞台は、運河の町福岡県柳川。*美しい姉妹の物語。三角関係の誤解の淵に潜む憎悪。*原作者の叙情的な作風は、同郷の詩人白秋の影響か。【大林宣彦-廃市(1984)予告編】 美しい姉妹の物語
(Op.202504010/Studio31,TOKYO) お金の使い方は人それぞれ。形に残るものを買う人もあれば、思い出や写真にしか残らないものに使う人...。イチ子さんやぼくのような旅好きは後者だ。永く旅していると、当然、再訪したくなる場所がある。住んでもいいと思うような場所もある。「何度行っても飽きない場所ってある?」とイチ子さんが聞く。「中善寺湖畔だな」と今は答えられる——一年中いつでも良いというわけではない。夏休みが済んで人通りが絶え、次のピークを迎えるのが九月半ばのシルバーウィークの頃。その間の人通りが絶える期間が最高だ。「九月の前半がいい。日光は、もう半袖じゃあ寒い風が吹く頃だけど...。その間の二週間なら、伊太利大使館別荘記念公園界隈で毎日過ごしていたい」「訪れる時期を決められる人って、...何度行っても飽きない場所
(Op.20250409-3/Studio31,TOKYO) 写真家の友人が学生だった頃によく言っていたこと——『見たとおりに写真が撮れないもんだろうか』。「見たとおりに写真が撮れたら世話はない」——今ならそう答える。*その友人は、もう亡くなってしまったけれど、晩年は、トイ・カメラやピンホールカメラの写真家になっていた。 【ShonenKnife-Don'tHurtMyLittleSister】 見たとおりに写真が撮れたら世話はない
(Op.20250409-2/Studio31,TOKYO) 四月以降に旬を迎える果物のうち、イチ子さんが領有権を主張する庭で収穫できるものに『枇杷』がある。イチ子さんの権利の及ぶ枇杷の収穫時期はまだ先だが、あまり悠長に構えていると鳥に先を越され略奪されるので、実が小さくても早めに収穫して果実酒かジャムに仕立てる。収穫については、イチ子さんは指図するだけで、概ねぼくが労働に従事することになる。 【BillyJKramerwiththeDakotas-Fromawindow】 イチ子さんは指図するだけ
(Op.20250409/Studio31,TOKYO)水口イチ子は写真を撮られるとき、首を向かって左に僅かに傾ける癖がある。だから、カメラを彼女に向けてシャッターを切る瞬間、ぼくの平衡感覚は同時に3°ほどオートマチックに左に傾くようになった。イチ子のフォトグラフは、だから、たびたび地球に対して斜め。【TheBuffaloSpringfield-RockandRollWoman】 だから、たびたび地球に対して斜め
(Op.20250408-5/Studio31,TOKYO)定期考査中の放課後。教室の掃除。水口イチ子に映画に行こうと誘われる——同じクラスになって以来、試験が始まるといつもこうだ —— 毎度、有無を言わせず連れ出される。結果、合格点に至らず、追試や課題を提出させられるのは決まってぼくの方だけ。確かにあの日に観た『あらかじめ失われた恋人たちよ』は思い出に残ったけれど、現代国語の落第者用の課題『新聞(三大紙のうちのどれか)の社説を原稿用紙に十日分書き写し、それを製本して提出せよ』の苦労を考えると、なにもわざわざあの日に観に行かなくても良かったのではなかったかと、今も思うのではあるが...。【TheCowsills-TellMeWhy】 あらかじめ失われた恋人たちよ
(Op.20250408-4/Studio31,TOKYO) プラタナスの並木が、夏の舗道に強いコントラストの影をおとす。日盛りに陽射しが燃えて、目を細めずには見られない視界の情景。古い思い出が重なる。<palign="center"><fontcolor="#ff9900">*</font></p>あー、暑い、暑いな。歩く人の影はまばらにして、車列も途切れがちな午後。あの日、目の前にいた、眩しさイッパイのぼくの夏の妹達は、今はいったいどこへ行ってしまったのだろう。 <palign="center">【AnneMurray-YouWon'tSeeMe】</p> ぼくの夏の妹達は、今はいったいどこへ行ってしまったのだろう
(Op.20250408-3/Studio31,TOKYO) 夏を描く-海からの風が強い一日。長谷の鎌倉文学館にて。 【TheYoungRascals-Groovin'】夏を描く-海からの風が強い一日
(Op.20250408-2/Studio31,TOKYO) 陽射しが輝きを増す季節。薄いカーテン越しの光がハレーションを起こす部屋。イチ子に、早くも夏の気配。 【TheBeachBoys-Dance,Dance,Dance】 イチ子に、早くも夏の気配
(Op.20250408/Studio31,TOKYO) 庭の芝生に寝転んで、薄曇りの空を見上げていた(雲ばかりの空。その雲の上に陽射しがあるのがわかる)。「だから、そういうのが波長が合うってことなのよ」とイチ子さん——ああ、話は、まだ終わってなかったのか...。*ポラロイドは、速写向きじゃないところが好きだ。 【TheBeachBoys-Wendy】 ああ、話は、まだ終わってなかったのか...
(Op.20250407-2/Studio31,TOKYO) グリンデルヴァルトに程近い、ベルナーオーバーラント鉄道のとある駅前広場に、花を抱えた沢山の娘達がいて...。尋ねてみれば、毎年五月最初の水曜日は、『アルプスの花祭り』の日なのだと言う。フランソワーズと名乗った金髪を三つ編みにした小学四年生位のその娘は、列車から降りてくる観光客に、自分のおじいさんが作った花束を配るのだと頬を紅潮させて話すのだった。 【GratefulDead-It'sAllOverNow,BabyBlue】 花を抱えた沢山の娘達がいて...
(Op.20250407/Studio31,TOKYO)横浜みなとみらいクイーンズタワー、『ハードロックカフェ』。大きな観覧車がそびえて見える。週日の昼も過ぎて人影もまばらな午後だ。スピーカーからエリック・バードンの声が聞こえている。水口イチ子と半月振り程に会った。席に着くなり、「最近、書いてる!?」とイチ子。「うん、短いものばかりだけど...」「今でもたまには、あたしも出演してる?」「うん、2時間サスペンスの山村紅葉ほどの頻度でお出まし頂いております」「止めてよ!それじゃあ、出突っ張りじゃないの」と小さく笑う。注文。きみはまた『サンタフェ・スプリングロール』——『サンタフェの生春巻き』のどこが好きなんだろう。ぼくに言わせれば『旨からずも不味からず』、よくわからない。まあ、今日のところは『サンタフェの春巻...値段は聞かないでおこう
きみへの手紙の下書きが、ところどころに挟んであるのもなつかしい
(Op.20250406-2/Studio31,TOKYO) 『四月に収穫の秋を迎え、十月に春の花咲く国がある』という堀内茂男の一節を冒頭に掲げた一冊の画帳——とは言ってもスケッチはわずか数葉で、あとは日記めいたことや記事の切り抜きなどが貼り混ぜてある。時代が今世紀に変わって間もない頃、ひとり、豪州を旅したときに携えていたものだ。伊藤整の『林で書いた詩』や吉田健一の『辰三の場合』からの書き抜き、他には或るフランス文学者の新聞コラムの切り抜き、エリック・フォッファー、尾崎喜八らの肖像写真なども貼ってある。きみへの手紙の下書きが、ところどころに挟んであるのもなつかしい。 【JamesTaylor-You'veGotAFriend】 きみへの手紙の下書きが、ところどころに挟んであるのもなつかしい
(Op.20250406/Studio31,TOKYO)今年もまた桜の頃。神田川に掛かる橋の上からお花見中の水口イチ子(後ろ姿)。*「桜餅は関東と関西で違うの知ってる?」とイチ子。「桜の葉っぱでくるんであれば、全部桜餅かと思ってた」とぼく。 桜の葉っぱでくるんであれば、全部桜餅
(Op.20250405-4/Studio31,TOKYO) 眠り損ねた夜明ければ何事もなかったような初夏の朝午前九時カフェのオープンテラスなんの制約もない一日の始まり*あの日からいつも一緒の『夏の妹』 【AlessiBrothers-IWishThatIWasMakingLove(ToYouTonight)】 1982年5月
(Op.20250405-3/Studio31,TOKYO) 日やけは嫌だと言って、きみはその夏の間、長袖のシャツと手作りの帽子を手放すことはなかった。二百十日も近い八月の終わり、きみと出かけた美術館の帰り、あのやけに長い桜並木の情景ばかりが記憶に濃い。*その遊歩道の並木が満開の桜の花で空を覆う次の春まで、ぼく達の恋は予想を違えて続くことはなかったけれど、何の気まぐれからか、それからも時折ひとりで訪ねる美術館の帰途、季節がまた同じ夏の終わりでもあれば、きみもまた偶然に歩いてはいないだろうかと、つい辺りを見まわしてしまうぼくではあるのだが...。もう戻らない、なつかしい人。 【NatalieWilliams&SoulFamily-Heatwave】 なつかしい人
(Op.20250405-2/Studio31,TOKYO) 染井吉野が終わると次に控えているのが海棠。*春先から、梅、桃、桜、海棠と花盛りを迎える順に花弁のあしらいが華やかになるのが興味深い。ところで、端午の節句を迎える頃に、海棠が満開になる妙本寺へお花見に行こうときみとした約束は、まだ有効だろうか。とにかく、きみと一緒でなくては、重い腰がなかなかあがらない春この頃。【GeorgeMartinOrchestra-Allmyloving】 きみと一緒でなくては、重い腰がなかなかあがらない春この頃
(Op.20250405/Studio31,TOKYO)そんなわけで、ぼくと水口イチ子は、深夜の同じ時間帯に日比谷のバーでたびたび顔を合わすことになった。ぼくは、いつもフォア・ロゼズをストレートでやりながら小さなノートに掌篇のプロットを思い付き次第に書き込み、イチ子は、ハムサンドなどを摘まんではビールで飲み込み、ギャビン・ライアルやジョン・ル・カレを読みふけっていた。【Chad&Jeremy-Before&After】ギャビン・ライアルやジョン・ル・カレ
(Op.20250404-4/Studio31,TOKYO) 水口イチ子の『萬年サマーガール』。 【CoconutBoys-SummerGirl】 水口イチ子の『萬年サマーガール』
(Op.20250404-3/Studio31,TOKYO)『ボクは「創っている時」が一番たのしい。創る——これはプロセスだ。完成したものは、もうボクの所有物ではない。プロセスこそが創造だ。杉山登志』(昭和四十二年『宣伝会議』四月号「怒れ、怒れ」より)【杉山登志-資生堂シフォネットCM1973】 帰ってきた『30秒の狙撃兵』
(Op.20250404-2/Studio31,TOKYO)リップクリームを週に一本消費するって可能なんだろうか。逢うたびに違うブランドのリップクリームをきみは使ってるけど、ぼくには、それをきみが食べてるようにしか思えない。 リップクリーム
(Op.20250404/Studio31,TOKYO)その秋、週末の夜も遅くなって、頼まれていた原稿がようやく書き上がったときのことだ。ぼくは、突然、大阪にいる水口イチ子に逢いたいと思った。かれこれ、もうふた月ほど顔を見ていない。こんなことなら、イチ子が東京にいるうちに、もっと一緒にいる時間を作っておくんだった。後悔が募る。Macintoshのディスプレイの右上、時計のデジタル表示は22時07分。ぼくは思い立って、取材用にいつでも出かけられるようにと準備しているバッグをつかむとオフィスの灯を消してエレベーターに走った。東京駅八重洲口は目と鼻の先。まだ、トラベルプラザは開いているだろうか。大阪行きの新幹線の最終は、もう二時間も前に発車してしまっている。幸い、トラベルプラザは、まだ営業していた。「今夜の『銀...深夜急行(2007)
(Op.20250403-3/Studio31,TOKYO) 去年の秋、ある記念に水口イチ子から小さなナイフをもらった。いつも持ち歩いていたかったのだが、ポケットに入れたままだと急に飛行機に乗ることになったときなど——機長に預けて頂かないとお乗せできません——という例のハイジャック防止のための不愉快な問答をするのが嫌で、止むなくオフィスのデスクの見えるところに置いておいたつもりだったのだが、いつの間にかなくなってしまった。それから半年以上経った今日、ナイフは、冬の間スタジオで防寒に使っていたシュラーフの中から見つかった——それを陽に干して、仕舞おうとしていたときのことだ。なんでそんなところから...。そして、ある日の午後のことを、ぼくは懐かしく思い出すのだった。 【NicoletteLarson-Lo...ある日の午後のことを、ぼくは懐かしく思い出すのだった
(Op.20250403-2/Studio31,TOKYO) 水口イチ子が、シドニーから成田に戻って来たのは午後2時過ぎ。それから自分の部屋には寄らずに、ぼくの芝公園のマンションに着いたのが4時少し前。イチ子の携帯に今夜の計画案はあらかじめ送っておいたから、ここまでの時間に無駄はない。支度を済ませて食事に出かけるとして、イチ子の服は、ぼくの部屋にいつも何着か置いてあるから手抜かりはない。彼女がシャワーを浴びている間、お土産だから開けてみてと言われた箱を開けると、出てきたのはPenfoldsSt.HenriShiraz2001という赤ワイン。ラベルにブドウの品種はシラーとあるから、もしかしたら以前飲んだことのあるシャトー・ラフィット・ロートシルトに似ているかも知れないと思った。だとすれば、当然、鴨。表参道...鴨のソテー、チョコレートソース
(Op.20250403/Studio31,TOKYO)サンフランシスコ。フィッシャーマンズ・ワーフの夕暮れは、思いのほか遅い時間にやって来る。沈みかねている夕日をながめながら、一軒のシーフード・レストランの、海に突き出た少し肌寒い硝子張りのテラスに腰掛け、熱く真っ赤に茹で上がるはずのロブスターとナパ渓谷産のシャルドネを注文する。ところで、せっかくのロブスターの、そのセクシーなまでにはち切れそうな豊満な肉の塊を、どうしてアングロ‐サクソン人達は単調な溶かしバターのみで食べるのか。ぼくは、ウイスキーのミニチュア壜に入れて持ち込んだ醤油をその溶かしバターと合わせ、これから熱く真っ赤になって登場してくる『彼女』を謹んで頂くことにしよう——今夜、ホテルの部屋から水口イチ子へ送るメールの、気の利いた書き出しの一行で...フィッシャーマンズ・ワーフの夕暮れ
(Op.20250402-4/Studio31,TOKYO) 早朝の弓ヶ浜で拾ったいくつものシーグラスを家で磨いていると、いつもポケットに入れて持ち歩いていたくなるほど気に入ってしまうものがある。元はと言えば出所不明の硝子壜の破片だったりするのだが、それが、だんだん何ものにも代え難い宝石に変わっていく。掛けがえのない人というのも、きっとそんなようなものなんだろう。 【国分友里恵-恋の横顔】 元はと言えば出所不明の硝子壜の破片だったりするのだが...
(Op.20250402-3/Studio31,TOKYO) 季節限定を『深夜のおめざ』に...。「飲物は、ロンドン・ドライ・ジンで...」 深夜のおめざ
(Op.20250402-2/Studio31,TOKYO) 冬の新宿御苑、ポプラ並木。 冬の新宿御苑、ポプラ並木
(Op.20250402/Studio31,TOKYO)驟雨?あるいは小雨のいち日かも知れない。もう出掛けるのはやめにして、ふたりでダーク・ラムを飲もう—— というのが水口イチ子の提案だった。【HumanNatureperform-BeMyBaby】 驟雨?あるいは小雨のいち日かも知れない
(Op.20250401-3/Studio31,TOKYO)「夕子というのは、夕方に生まれたから...」と言って彼女は笑った。歳は三十を少し越えたくらいか。知り合ったのは、去年の夏。明け方まで看板に灯りをを灯す『シェード(木陰)』という行きつけのバーでのことであった。【TheTurtles-We'llMeetAgain】 木陰にて
メガネを忘れた近眼や老眼の人の目には、レーゾンデートルはないのか
(Op.20250401-2/Studio31,TOKYO) 近すぎて、ピントが合っていない。ところで、ピントは、合っていないとイケないのか。メガネを忘れた近眼や老眼の人の目には、レーゾンデートルはないのか。 <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>メガネを忘れた近眼や老眼の人の目には、レーゾンデートルはないのか
ライム・カラーの陽射しがレースのような薄い若葉を透かして落ちていた
(Op.20250401/Studio31,TOKYO)聖橋から湯島聖堂へ。石造りの階段を下った先の舗道に、ライム・カラーの陽射しがレースのような薄い若葉を透かして落ちていた。あれはきみが十代最後の年。2005年のことだ。道すがら、スライド写真を何枚か撮ったのに、今、手元に残るのはたった一枚——この間、古いスペイン語のテキストの頁の間にみつけた。それをキャンバスに投影して、オイル・ペインティングに仕立てたのがこの絵。我ながら、想い出の詰まった、なかなか良い作品に仕上がったと思ってはいるのだが...。【BarryGibb-FirstofMay】 ライム・カラーの陽射しがレースのような薄い若葉を透かして落ちていた
(Op.20250331-2/Studio31,TOKYO) 「プエルトリコにだって、雨くらい降るわよ」 【GloriaEstefan&JoséFeliciano-TengoQueDecirteAlgo】 プエルトリコにだって、雨くらい降るわよ
白いクーペのように見えたのは、崖下の岩場に砕けた波しぶきだろうか
(Op.20250331/Studio31,TOKYO) 「『ソングライン』は、大分読み進んだ?」出来上がったパスタを皿に盛りつけながら、水口イチ子が聞く——昼の陽射しが南向きの窓から差し込むキッチンでのことだ。「原書だからなかなか速読を許してくれず、まだ最初から五分の一位のところかな」とぼく。さっき、キッチンに蜂が入ってきたとイチ子が騒いでいたが、その蜂も今はどこかへ行ってしまったようだ。「『ソングライン』の大命題『人は、なにゆえ旅に出るのか?』は、今のところ、まだ解明されていないらしい。でも、それが解ると旅は終わってしまうのかも知れない。ところで、そのスカート、似合ってるね」そう言ってぼくは、パスタを口に運び、オレンジを絞り込んだ赤ワインのグラスに手を伸ばす。「あら、嬉しいわ、アリガト」自分の皿にチ...白いクーペのように見えたのは、崖下の岩場に砕けた波しぶきだろうか
(Op.20250330-5/Studio31,TOKYO) 今年最初の夏日。半袖・長袖の境目は摂氏二十五度だとか。桜も咲いて、次は海棠の開花が待ち遠しい。 今年最初の夏日
(Op.20250330-4/Studio31,TOKYO) 江ノ島へイチ子さんとサイクリングがてらランチに出かけた。三月中は、まだ禁猟期間で、生シラスは売り切れ表示。ふたりで冷凍シラスの釜揚げ定食を食べた。 【LosRiosRockSchool-IGetAround】 生シラスは売り切れ
(Op.20250330-3/Studio31,TOKYO)夕方、キッチンにあるイチ子のオーディオから懐かしい歌が聞こえていた。食卓に着いて、「ザ・グッバイ、好きだったの?」と聞くと、「うん。大学生の頃ね。当時、日本じゃコレはコレで斬新なサウンドだったわよね」とイチ子。夕飯の後片付けが済んでからも、キッチンからは、日付が変わる頃まで、そのマージービートは聞こえていた。【TheGood-Bye-マージービートで抱きしめたい】 マージービートが聞こえる
(Op.20250330-2/Studio31,TOKYO) 二月二十五日。この時期の、この河津桜の価値。何もない山の中の田舎町を巨大観光地に変える魔法。『綺麗に撮りたい』ならスペックの良いカメラを百万円以上払って買えば概ね誰でも達成できる。でも、その逆の『ただ綺麗には撮りたくない!』という変態思考者の場合となると、今度は、お金でなく頭を使わないと撮れない——さて、お金を使うか、頭を使うか? 何もない山の中の田舎町を巨大観光地に変える魔法
(Op.20250330/Studio31,TOKYO) 朝。夏の初め——早くも積雲が発達している。引き潮のさ中の、そのさざ波の乱反射——向こうの岬まで、海を歩いていけそうな気がしたとイチ子が言う。 【LarryLee-Don'tTalk】 海を歩いていけそうな気がしたとイチ子が言う
(Op.20250329-2/Studio31,TOKYO) 今朝届いた新刊に目を通す。出版の世界では、早くも5月号——G.Wの頃に読んでも不自由のない、季節感先取りの編集内容(当然・当たり前・常識)。故に、この業界は、性格・体質によっては不向きな人もいる。 性格・体質によっては不向きな人もいる
(Op.20250329/Studio31,TOKYO)春は、『新しい恋の季節?』——そんな俗説を今迄気にも留めたことはありませんでしたが、思い出してみるとここ数年、誰かとお花見に行くこともなく、この季節をひとりぼっちで過ごしていました。でも、実は口に出さないまま、新しい恋を待っていたのかもしれません。今週の日曜、東京は晴れて、お花見日和?——恋もお花見も、春の嵐には御用心。 【大瀧詠一-あの娘に御用心】 恋もお花見も、春の嵐には御用心
春が藤棚の上で磊落な笑い声をあげていた休日の昼下がりのことだ
(Op.20250329/Studio31,TOKYO)遠くで雲雀のさえずりが聞こえ、春が藤棚の上で磊落な笑い声をあげていた休日の昼下がりのことだ。時期的には少し早いと思えたが、水口イチ子が今年初めて半袖を着ている。ぼく達ふたりは、彼女の家の庭に賑やかにテーブルを運び出し、簡単なトーストや砂糖菓子の他、ナッツやジェリーを盛りつけた大皿を水色のテーブル・クロスの上に置く。ベルガモットで香りを添えた『グレイ伯爵』のアイス・ティーも辺りに薫っているに違いない。バターがほど良く染みて絶好の焼き色のイングリッシュ・マフィン——イチ子は、その欠片を二本の指で用心深く摘まんで口に押し込むと、氷のせいで水滴の汗をタップリかいた大きなグラスをつかみ、その『グレイ伯爵』を少しだけ静かに飲む。その液体が彼女の喉を通る時、かすか...春が藤棚の上で磊落な笑い声をあげていた休日の昼下がりのことだ
(Op.2025032-3/Studio31,TOKYO) 毎年七月二十日には、湘南は海開きする。ビーチハウスも営業を始める。ここからが外来の海水浴客にとってのハイ・シーズンで、八月が終わるまでは『地元』のマリン・スポーツをする者は、外来客に場所を譲る責任が生じる。浜辺での優先順位。一位、水産業者。二位、外来の海水浴客。三位、やっとマリン・スポーツをする者。結局、このシーズンにマリン・スポーツをする人は、なるべく海水浴客のいない、つまり、海水浴に不向きな海岸まで出張することを強いられる。 【StatusQuo-FunFunFun】 浜辺の優先順位
(Op.20250328-2/Studio31,TOKYO) 都市の高層——見下ろす街並みが、癒やしや慰めになるときだってある。 【jean-michelantolin-HelloGoodbye】 都市の高層
(Op.20250328/Studio31,TOKYO)さて、沈んだような冬の陽射しの印象が漸くやわらいだ四月初旬——ある晴れた日の昼下がりのことだ。【TheLovin'Spoonful-YouDidn'tHaveToBeSoNice】 ある晴れた日の昼下がりのことだ
(Op.20250327-2/Studio31,TOKYO)いち日の最初の陽の光は『向ノ岡』のさらにその向こう、連光寺・旧農林省鳥獣実験場辺りの山並みを越え、この多摩川縁の街へ届く。*それぞれの季節の気持ちのいいいち日、もし散歩に出かけるなら陽射しの美しさから道筋を選びたい。春、陽気が溢れる四月の午前九時なら、旧多摩聖蹟記念館下の『大谷戸公園』。額に汗の滲む初夏、六月の午前十一時なら和田原の『昔道』——畑道の途中に『あっち小野路こっち三澤』という小さな石柱を見つけられる。そして盛夏、八月の午後一時なら、関戸坂下『原峰公園』の木陰が爽やかだ。しかし、きみとふたりで歩くなら、例大祭の後の秋十月、午後三時の東寺方『山神社』の杜を忘れるわけにはいかない。晩秋の夕暮れ、市立交通公園から眺めると、大栗川の上流、遥か宝...それぞれの季節の気持ちのいいいち日
(Op.20250327/Studio31,TOKYO)書き言葉——例えば手紙やメールのやり取り —— が、時折、ふたりを不安定な関係に導くことがある。きみの分析では、互いにGimmickでTrickyな文章を書くからだとか...。ぼく達はお互いに、使う言葉が常に誤解を孕んでいることに気付いている。【KathyMattea,AlisonKrauss&SuzyBoggusWithChetAtkins-TeachYourChildren】 常に誤解を孕んでいることに気付いている
(Op.20250326-3/Studio31,TOKYO) 午後、夏の雨がひとしきり降って、それが日暮近くにあがると、風はいつもより早く陸風に変わった。そのせいで、雨で湿った大気は海へ押し出され、この日は、わりかし爽やかな夕暮れがやってきた。*キッチンでイチ子さんが、隣に住む、アルゼンチン人のコスタさんから頂いたというオイル・サーディンの缶詰を十個程見せながら、「こんなに沢山、どうしよう」と半ば困ったような顔をしている。「心配しなくてもサーディンの調理法は、いくらでもあるよ」とぼく。「今夜はとりあえず、これで前菜を作りましょ」とイチ子さん。「そうだね。カナッペにすれば、夕食も兼ねられるし...。久しぶりに白ワインを開けようか?」「そうと決まれば、話は早いわよ」彼女は、早くも缶詰の蓋を開けると中身を取り出...元町の杵屋でディスカウントされていた
(Op.20250326-2/Studio31,TOKYO) イチ子さんが知り合いの農家から、神奈川県が開発した蜜柑の新品種『湘南ゴールド』の間引いたやつをもらってきた。蜜柑とレモンのイイとこ取りのようで、今までに無い『味と薫り』。「庭木として一本欲しいわね」と果実系の木が好きなイチ子さんは言うが、どうせ面倒臭い果実の世話はぼくがすることになるのが慣例だから、余り気乗りはしない。放ったらかしておいても勝手に育つ木が好きだ。 【JU!iE-OrangeSea】 湘南ゴールド
(Op.20250326/Studio31,TOKYO) 『BARランプ・シェード』の深夜の常連の間で、週に一、二度、午前零時近くに来る『彼女』の仕事が頻繁に噂話の種になっていた。しかし、それらのどれもが正解から遠いことを、ぼくは、もう随分早いうちから知っていた。 【MarianneFaithfull-It'sAlloverNowBabyBlue】 もう随分早いうちから知っていた
(Op.20250325/Studio31,TOKYO)その頃のぼくと水口イチ子の音楽趣味は、クラスの中では異端だった。当時、音楽を好きか嫌いかと言ったら、そりゃあティーンエイジャーなのだから大方の高校一年生なら好きだと答えただろう。さらに邦楽と洋楽のどちらが好きかと問えば、まだまだGSブームの名残で、邦楽好きが多かった時代、洋楽一辺倒はクラスでは精々二割ほど。そんな洋楽好きにしても、本当にそれが好きなのか嫌いなのかよくわからず、時流に乗ったサイケデリック・ミュージックをファッションのように聴いているに過ぎなかった。もちろんぼくとイチ子もその手の音楽が嫌いなわけではなかったが、せいぜいクラスで仲間はずれにならない程度に、それこそファッションとして聴いているようなものだった。その頃のぼく達の会話というと、音...村の緑地保護組合
(Op.20250324-2/Studio31,TOKYO) 人は、新しい物事に手を染めるとき、自ら充分な試行錯誤もせず、他人の意見・通説だけで不本意な未来を選択・決定することがある。特に身内からの進言は、時代の変化を考慮しないものがほとんどで、昔の常識のまま意見するため、ほとんど時代錯誤。それでも、在り来たりの普通の人にはなれる。仕事上の失敗は、将来的に取り返しが付くことも多いが、人生の選択ミスの後悔は一生尾を引きがち。 【jean-michelantolin-Pennylane】 それでも、在り来たりの普通の人にはなれる
(Op.20250324/Studio31,TOKYO) 水口イチ子からのメールによれば、カナリア諸島でも、州都サンタ・クルスなら日本食が食べられるという。『今日も、アフリカの風が熱い』と結んであった。 【PetulaClark-MyLove】 カナリア諸島から...
(Op.20250323-2/Studio31,TOKYO) 東京国際空港・真冬の恋人達。 【sina-drums-LikeaRollingStone】 東京国際空港・真冬の恋人達
(Op.20250323/Studio31,TOKYO) 栽培中に袋がけの手間は要らず、収穫期も長く、味は酸味と甘味のバランスが良く、ここまでは林檎として理想的な品種なのだが、開発された当初、農林省は品種登録を見合わせた。理由は、サメ肌でソバカスだらけで人目にさらすには美しくないということらしい。その後永らく、十把一絡げで青リンゴと呼ばれる時期が続く。中身は最高なのに、ルックス、ヴィジュアルで落とされるなど、芸能プロダクションのオーディションのようだ。この林檎、今は全国三位の生産量があり、海外でも生産されている——名は王林という。 サメ肌でソバカスだらけ
(Op.20250322/Studio31,TOKYO)三月最後の週末の朝。昨夜、眠る前に、明日はゆっくり寝ていようとイチ子から言っておきながら、まだ眠っているぼくを揺り動かす『その目的は何か...』。*ベッドから出て、厚いカーテンを引く。途端に、二重になったその下のレースのカーテン越しに、淡い朝の光が部屋を満たす。チェストの上のFMラジオ。スイッチを入れると、古いポップスが聴こえてくる。*せがまれて焼いたパンケーキ。横浜で見つけてきた、カナダのクリアリーのメイプル・シロップをかける。ぼくにミルク・ティー、イチ子にはいつものカフェ・オーレを入れ、「さあ、起きよ!食べよう!」という今、まさか、イチ子は二度寝など始めてはいるまいな。【TheStonePoneys-DifferentDrum】 その目的は何か...
(Op.20250321/Studio31,TOKYO)イチ子さんがオムスビを握る手付きは、ぼくの祖母のそれに似ている。それを明かすと、「へぇ、そうなんだぁ」と妙に感心した口調で答える。「で、どっちが美味しいの?」不用意な返事はもってのほか。「おばあさんのは、もう少しふんわり握っていたかもしれない」「だったら、あと三十年くらい待ってくれたら、アタシも手の力が抜けて、おんなじように握れるかも知れない」と言って小さく笑う。 不用意な返事はもってのほか
(Op.20250320-3/Studio31,TOKYO) どうなってるの? 【TheTributes-WhatGoesOn】 どうなってるの?
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(Op.20250425-3/Studio31,TOKYO) 日本の8mmフィルムの現像は、2000年代に終了してしまった。というわけで、この1995年撮影のフィルムは存在自体も貴重で、二十歳の動く水口イチ子が写っている。 【SeanLennon-ThisBoy】 二十歳の動く水口イチ子が写っている
(Op.20250425-2/Studio31,TOKYO) 右の二の腕の肌が乾燥して痒かった。当初、歳のせいかと思ったが、試しに冬の保湿剤を塗ったら治まった。カサカサは歳のせいではなく、エアコンが原因かもしれない。ぼくの痒みは歳のせいと言ってイチ子さんは聞かないが...。 ぼくの痒みは歳のせいと言ってイチ子さんは聞かないが...
(Op.20250425/Studio31,TOKYO) G.W.——観光客の雑踏に紛れ込まずに町内を移動する。 G.W.——観光客の雑踏に紛れ込まずに町内を移動する
(Op.20250424-3/Studio31,TOKYO) イチ子のおじいさんが、東京オリンピック(1964)のヨット競技種目『インターナショナル・ドラゴン級』で世界と競ったのが、この葉山沖。 『インターナショナル・ドラゴン級』で世界と競った
(Op.20250424-2/Studio31,TOKYO) 南の海の、赤道をまっしぐらに越えた、とある島影の向こう —— そのコバルト・ブルーの海に、かつて、見果てぬ夢を追った人達がいたことを我々は今も忘れずにいるだろうか。*「この写真の機体は、ゼロ戦ですかね?」とカメラマン。「確かにゼロ戦に似てはいるけど、垂直尾翼と方向舵がゼロ戦より大きいという特徴がある。それとプロペラが曲がっていないところを見ると、フロート付きの水上機が正しく着水したと推測できる。つまり、この写真の機体は、ゼロ戦を水上戦闘機に改修した二式水上戦闘機と踏んだね。フロートは木製だから、もはや朽ちて、失われてしまってるけど...」「パイロットは、どうなったと思います?」と彼。「こういうふうにきれいに機体が残っているということは、撃墜され...プロペラ音まで聞こえてくるようだ
(Op.20250424/Studio31,TOKYO) 人生の転機は、それまでの生活パターンを一変するタイミングでやって来る——就学、卒業、受験、就職、結婚、転職、退職などが普遍的なそれだ。それぞれに別れ道があり、どれを選べば良いかは同時に試せないので厄介——中にはロスを取り返し辛い選択ミスもあるから人生は大変。*ところで、結婚相手が人生最初のお付き合いの相手という例は少ないから、過去のそれぞれの別れに後悔が残る。男の場合、『女のように心の清算の踏ん切りが良くない』から、過去の別れの後悔を一生引きずることもある——年をとって『自分が生涯で一番好きだった人は』と考えたとき、遙か過去の人だったりするのは極めて良くある話。 【木暮"shake"武彦×三国義貴×TheLadyShelters-Jumpin'...清算の踏ん切りが良くない
(Op.20250423-2/Studio31,TOKYO) ここでは、ゆっくり呼吸が出来る。 【CraigRuhnke-KeepTheFlame】 ここでは、ゆっくり呼吸が出来る
(Op.20250423/Studio31,TOKYO)街路を圧した界雷は遠ざかり街角には名残の西風が吹くああ五月の初め...*タイムズスクエア42丁目停止信号の交差点目前の路面に綿雲の影気温華氏七十度...いつもと変わらないノイジーな朝【TheFastbacks-GoAllTheWay】 いつもと変わらないノイジーな朝
(Op.20250422-3/Studio31,TOKYO)冬は、あきらめきって寒さに甘んじていましたが、昨日今日のように少し暖かいと、次の季節への期待が高まります。これは、いつの年だかの『梅雨明け十日』の思い出。【TheAnimals-BoomBoom】 いつの年だかの『梅雨明け十日』の思い出
(Op.20250422-2/Studio31,TOKYO) 1500万年前に海底火山から噴出した、固い溶岩塊の表面を流れ落ちる、袋田の滝 —— 規模は幅70メートル以上、落差120メートルに至るという。昔より領内で名瀑の噂高いこの滝を一度見ようと、かつて水戸黄門も訪れたとか。 1500万年前、ここは海底だった
(Op.20250422/Studio31,TOKYO) その島を地図で適確に指し示すのは、イタリア人にもたやすいことではないらしい —— 詰まるところ、観光ビジネスとは縁が無いようだ。宿泊には小さなホテルが数軒、日本でいうなら、昔、旅商いの人が泊まった宿のようとでも言おうか。すこぶる美味しい白ワインは地産地消で島から出ることは稀だ。*さて、彼女を最初に見かけたのは、あまねく晴れた午後の時間だったか —— 地肌の想像の色と体付きから、極東からの旅人を直感した。 【TheStyleCouncil-MyEverChangingMoods】 地中海、その鄙びた小島にて
(Op.20250421/Studio31,TOKYO) 凪 —— 風が止まる時間。座りこむ夏。海鳴りだけが聞こえる。*一度だけでも、きみに触れたかった。 【松尾清憲-ロング・ロング・ビーチ】 凪 —— 風が止まる時間
(Op.20250420-3/Studio31,TOKYO)古くは代々村長を務めた家系だという。今は民宿を営むその家の門構えは、島で、ひと際重厚な趣がある。本来、魔除けが目的という屏風(ひんぷん)を正面に見て、両側がガジュマルの大木、石垣に沿って雑草のようなアカバナーの群生があり、夏から秋にかけ、それらが白砂を敷き詰めた小道に濃い影を落として燃えるように咲くのに出会えば、ここが日本ではなく、どこか遠い、もっと南方の異国にいるかのような夢も見られたに違いない。宿の古老の話す、ガジュマルの古木に住む妖怪マーザ・カムラーマ(キジムナー)のことなどに旅人たちが耳を傾けたのは、あちらこちらの民宿の晩餐の席から、やおら三線の音も聴こえてこようという、琉球の小島の夏の宵のこと。*チャンプルーと泡盛とカチャーシーに縁取ら...さらなる南の島影への熱い想い
(Op.20250420-2/Studio31,TOKYO)作家・水上瀧太郎(みなかみ・たきたろう1887-1940)のデビュー作『山の手の子』の一節...。『きらきらと暑い初夏の日がだらだら坂の上から真直ぐに流れた往来は下駄の歯がよく冴えて響く。日に幾たびとなく撤水車が町角から現われては、商家の軒下までも濡らして行くが、見る間にまた乾ききって白埃になってしまう。酒屋の軒には燕の子が嘴を揃えて巣に啼いた。氷屋が砂漠の緑地のようにわずかに涼しく眺められる。一日一日と道行く人の着物が白くなって行くと柳屋の縁台はいよいよ賑やかになった。』この作家、後年の評価では小説よりも文明批評絡みのエッセイの方が質が高いというのが定説で、それらは岩波文庫の一冊『貝殻追放抄』で読むことができる。『山の手の子』は明治四十四年の作...日本の初夏を描く
(Op.202504020/Studio31,TOKYO) 手間を掛ければ掛けるほど、現実からかけ離れていく。 【しまむらテーマソング】 手間を掛ければ掛けるほど、現実からかけ離れていく
(Op.20250419-2/Studio31,TOKYO) 数年ぶりに訪れた場所などが、かつての印象とかけ離れて開発が進んでいたりすることが多い——近代では、人が住む、ほとんどの街がそうだ——ということは、進化発展するよりも過去の古い時代を留めておくことの方がどれだけ大変かが想像できる。かつて、稲村ヶ崎駅前の細い路地が、夏休みに入ると原宿のような大変な人混みになっていたのが懐かしい。海岸は、最早、海水浴場というよりサーフ・ポイントとしてのイメージの方が強くなった。 稲村ヶ崎
(Op.20250419/Studio31,TOKYO)大学では第二外国語として独逸語を選択した。理由は、当時の読書傾向がフランスよりドイツの作家に馴染みがあったというに過ぎない。当時読み込んでいた鴎外や堀辰雄の影響が大きかったと思う。だから、ハウプトマンやリルケ、ヘッセなどの作品には思い入れが深い。さて、そのドイツ語履修最初の時間のことだ。それまで講師の名前など気にも留めなかったが、その時初めて、それがマツモト・ツルオという人であると知った。それは、聞いたことが有るような無いような名前だった。何度かその名を頭の中で繰り返すうち、覚えのある、ひとりの文芸批評家が記憶の端に浮かんだ。しかし、その人の経歴からして、大学で語学教師をするような人にはとても思えなかった。自ら経歴を語るわけでもない、その四十代の寡黙...きみ、ぼくを知ってるの?
(Op.20250418-2/Studio31,TOKYO)だいぶ昔の話だ。ある年の春、那覇でレンタカーを借りて一週間程沖縄を旅した。海岸線に沿って反時計回りに本島を一周した最終日の夕方、右手に米軍キャンプ・キンザーを見ながら58号線を南下、勢理客(じっちゃく)の交差点を右折して国立劇場の方へ回り込んだ先に、最後の目的地『エフエム沖縄』はあった。大学時代の友人の与那嶺くんが、そこでプロデューサーをしていて、久し振りに会って飲もうじゃないかという約束になっていた。約束の時間に受付で待つと、間もなく背の低い、太い眉毛に例の浅黒い顔の、五十過ぎにしては比較的若く見える彼が現れた。「まだ、収録中なんだ。二本録りで、あと少しで終わるから、良かったらサブコンに来て、待たないか」と言う。副調整室など学生時代の番組製作演...魔法のビート
(Op.20250418/Studio31,TOKYO) 四月も半ばを過ぎて『菜種梅雨』の終わりを予感させる、突然の晴れ間。強い陽射しがギラリと濡れたアスファルトに弾んでいよいよ眩しい——その刹那だ——そろそろ半袖のシャツでもいいなとイチ子は思った。 【Bridge-PoolSideMusic】 強い陽射しがギラリと濡れたアスファルトに弾んでいよいよ眩しい
(Op.20250417-4/Studio31,TOKYO) 街角に立って決してやってこない人を待つのがパワーなんだJackKerowac キング・オブ・ザ・ビート
その五つか六つ年上の女の人の愛車は、葉山に住む彼女の叔父さんからのお下がりという古いアルファ・ロメオのジュリエット・スパイダー——どこか昔の日野コンテッサに似ている。車が車だけにメンテナンスに費用がかさむらしく、彼女は普段から、結構、節約のオーラをまき散らしていた。最早日本では手に入らなくなった部品は、知り合いの鋳物工場に頼んで一点ものとして作ってもらっているらしい——小さな部品でもひとつ十万円は下らないと噂で聞いた。ところが、お金がないという割りには、車のダッシュボードにコクトーの『ポトマック』の原書なんかが雑に放り出してあったりするから、ぼくらとはお金の使い方が違うのは明らかだった。あの頃、週末に森戸海岸のドライブインシアターへ行けば、彼女の車は必ず見つけられたし、そのあと、ユージさんのビーチクラブで...軽蔑
二十年前のきみの髪の匂いをまだ思い出せるよ。シャンプーの銘柄は遂に聞かなかったけれど…。シャンプー
アメリカ東部で『田舎』と同意語が『アイオワ州』。そのさらに片田舎の大学に短期留学制度を使って来て以来、本当のところ、授業にあまり身が入りません。方言も概ねわかるので不自由はないのですが、そんなことも理由なのか、講義に面白味が感じられなくて困っているところです。それで、日本にいるきみのことばかり考えて暮らしています。ところで、こちらのBarは日中は喫茶・軽食屋も兼ねるので、日本の飲食店同様、遅くても午前11時半には店が開きます。最近、講義をサボっては”Kenny's”というBarに入り浸っています。五十代後半と覚しきバーテンダーと親しくなりました(Kennyというのは創業者である彼の祖父の名前だとか)。ぼくが、あまりに入り浸るので、彼にとうとう言われました。「ぼくの爺さんが若かった頃、つまり、ここに爺さんが...ガラスの動物園
①授業が始まる前までに、教科書のその日学ぶ予定範囲に目を通す(読むだけだから五分もかからない)。読みながら直感的に大事そうな行(沢山付けることはなく、精々数箇所)にマーカーを付ける。②授業が始まったら、ノートは取っても取らなくてもどちらでもいいが、先生が話の中で強調しているように感じた部分(話だけはちゃんと聞いていないとイケない)に相当する教科書の行に予習の時とは違う色でマーカーを付ける。③試験の前日、『講義中に教科書に付けたマーカーのある行の総て』と『予習時に自分で付けたマーカーとそれが重なっている部分』とをノートに書き写す。二、三度書き写せば充分。これだけでテストが80点以下になることなどあり得ない。勉強時間は短いくせに、これでいつもクラスで上から五番以内の成績。余った時間は、晴れていればボードを抱え...80点以下になることなどあり得ない
「ノースダコタ州の州都を答えなさい、と質問されるのと、ビスマルクはアメリカのどこの州の州都か答えなさい、と質問されるのとでは、どっちがクイズらしく感じる?」とイチ子さん。どういう事情からの質問なのか謎だが、「あとの方かな」とぼく。「やっぱりそうよね…」と思案顔。さて今は、どんな仕事を引き受けているのやら。旅行作家のイチ子さんとしては、一応、その仕事の範疇だとは思うのだが...。 時計を見れば、間もなく十六時。ベーカリー・ハーヴェイズで、明日の朝食用のイングリッシュ・マフィンが焼き上がる頃。 ハンガーフックからアウターを取ると、ぼくは、「マフィンを買いに行ってくる」と言ってアパートメントを出る。 2ブロック先(日本の感覚だと二百メートルと言ったところか)まで歩く間に、昨夜、イチ子さんが、モーツァルトの『ジュ...ベーカリー・ハーヴェイズのイングリッシュ・マフィン
温かな、遅い春の雨が降った翌朝に蒔かれた種は、初夏に白い花をつける。 * 今はまだ誰もいない、人参畑が続く道。人参畑が続く道
アリゾナ州をアルバカーキから国道40号線で西海岸へ向かう途中、コロラド川を渡る手前の湖水地帯に添ってオートマン=トポック・ハイウェイを北上する。全くなにもない荒野の一本道。日中の気温が摂氏43度にもなる風土だ。途中、置き忘れられたかのようにポツンと小さなドライブインが一軒——給油所を兼業する食堂『トポック・マリーナ』とサインボードにある。ランチ・タイム。メキシコ料理ケサディーヤ、11ドル61セント。メニューによると、それはビーフのミンチをチーズと共にトルティーヤで二つ折りにして挟み、よくわからない少量の油で焼いてある。言わば、お好み焼きに似た挟み焼きである。若いウエイトレスのAmberさんにミンチの部位を尋ねるとリブ・ロースだと言う。ついでに、彼女が、この砂漠のような職場にどこから通ってくるのかも聞きたい...見渡す限り家一軒ない土地ではあったものだから...
このところの夜半にトッキョキョカキョク(特許許可局)とやかましく鳴いていたホトトギスは、なんの気まぐれからか河岸を変えたようで、入れ替わりに近くの土手の茂みでウシガエルが鳴きはじめた。そんな夜のことだ。いつものように浅い眠りから何度か覚め、枕頭の富永太郎詩画集をパラパラとめくっていて、ふと思った——この詩人は、詩も書いたから詩人に分類されているけど、一度は絵描きを目指してもいたし、本質的には画家なのかもしれないと…。そんな夜のことだ
農協の売店に野菜の種を買いに来た帰りに寄った、と言う。最近、人に話したくなるような事って、何かあった❓と聞くと、遊び半分でアボガドの種を鉢にいけといたら芽が出て、今、30センチ位に伸びたと嬉しそうに話す。アボガドの種
「昔、フランスでコニャック地方へ行った時、街のビストロで、隣にいた酔っぱらって鼻が赤いおじさんに、この辺で一番人気のあるコニャックの飲み方って何ですかって聞いたの。そうしたら、若い奴等はコカコーラで割って飲んでるよ、だって。びっくりしちゃった」 それには、ふたりとも笑った。 「まあ、好きなように飲めばいいってことだよ。日本なら高価な大吟醸酒でも、少しくらい加水して飲む人がいてもいいってことじゃないかな」<fontcolor="#ff9900">*</font> 「お昼はカレーライスよ」お盆休みにどこにも行かない代わりに、今日の日曜日は、もう昼からパーティー気分。 カレーライス——なぜだか急に遠藤賢司を思い浮かべた。初めて聴いたのはいつだったっけ...。1968年12月の渋谷公会堂だったような気がする。そん...カレーライス
なんで渋谷の街が好きなのか...。いつだったか水口イチ子に尋ねたことがある。 答えは、都会らしく区画整理された規則正しい街並みに、突然、それに則らない三差路、五差路が出現するところだという。できるなら、そくな街に住んでみたいとも言う。 確かに三差路、五差路などはには、古い街の歴史が染み込んでいるようだ。そんなところには、昔は地蔵尊などが祀られていて、行く人が手を合わせていたに違いない。三差路、五差路のある街
絵のストックはあっても、適当なテキストのストックが無いときの深夜絵画館『なんだか夜更かししたいカンジ#1』——誰も起きてなさそうな日曜午前三時。誰も起きてなさそうな日曜午前三時
OnceUponaTime——遙か昔にあった夏休み中のでごとを思い出してみないか。OnceUponaTime
図書館で日本文学史を手に取り(勿論買ってもいい)、昭和時代以降、詩人として認定を受けた人は数十人いるが、詩人自らによる朗読を聴いたことのある一般人はそんなに多くないだろう。YouTubeの無かった時代は、詩人の自作朗読を聴くには肉声しかなく(極めて稀にレコード)、朗読会も仲間内に限定されたもの以外は存在しない時代背景があった。一般人が交通費や会費を払ってわざわざ詩の朗読を聴きに行くことなどあり得なかったわけだ。ぼくは、大学の詩歌論の最初の講義で神保光太郎先生が自作詩、もうひとつ、音源で尾崎喜八が自作『ある晴れた安息日の夕暮れに』の朗読を聴いたことがある。それらの朗読は、テレビなどで『プロの歌手』が歌うのと『シロウトがカラオケで歌う』のとほど違いがあった。具体的には抑揚、強弱があり、まさに歌い上げるような音...葉山港近くの海岸で読書する水口イチ子
水口イチ子は、以前から自分の背が高いことを気にしていた。例えば雑踏で他人の視線に曝されるときなど、彼女には、それをことさら気にする様子がうかがえた。 そんな時だ、少しでも背を低く見せようと、屈み加減に少し背中を丸めるという悪い癖が出るのは...。 そんなこともあって、彼女が踵の高い靴を履いたのをこれまで見たことはなかったし、ロウ・ヒールの靴しか持っていないのだとぼくは随分長い間疑うことはなかった。 ところが今、目の前で「お待たせしました」と笑うイチ子の足もとにはハイ・ヒール。それに加え、服装もシンプルではあるがHipな色使いで、以前にも増して晴れやかなチョイス——だから、とりわけ目をひく。 水口イチ子は、なぜにイメージを変えるに至ったのか。随分長い間疑うことはなかった
令和六年初午の日(20240212)、東京ドームシティ内鎮座、錦秋稲荷社に陶製稲荷神を奉納。国家太平、家内安全を祈願す。国家太平、家内安全を祈願す
OneTooManyMornings——たくさんの朝の、ひとつOneTooManyMornings
昔、水口イチ子とイタリアへ初めて旅したときのことだ。「あの頃、(ぼく達にはお金がなくて)アリタリアの直行便には乗れなくて、オール・ニッポンだったかジャパン・エアだったかは忘れたけど、それで羽田からニューデリーまで行って、そこから確かエア・インディアのハンブルク行きに乗り継いだんじゃなかったっけ?それでもまだローマは遠くて、ハンブルクからさらにルフトハンザでやっとローマ。直行便なら十七時間くらいで行けたんじゃなかったかなぁ。ぼく達は、二十六時間くらいかかっちゃったけど…」「そうそう、それに航空会社にも段取りの良し悪しとかがあるのか、すぐに乗換便に乗せてくれることもあれば、三時間くらいほったらかしにされて、積み残して行かれちゃったのかと思ったこともあったよね」ローマまで二十六時間
空腹を感じたら、それを満たすだけのなるたけ少量の粗食を摂り、陽の高いうちに眠くなれば、しばし居眠りをする。目覚めていれば、こぢんまりした一文をどこからか見つけてきて、ノートに書き写し、幾度か声に出して読み上げてみる。画家で言うデッサンのようなものだろうか…。 そうするうちに夜が更ける。 その過程でなにか閃くものがあって、なにかできそうな予感がしたら、チューブ入り生ワサビのように、きみのための新たな一行をギューッと搾り出す。夜が更ける頃
春。 雨の安息日。 スーパーで見つけた季節はずれの林檎——旬に一番よくできたものを選別して、翌年の収穫まで地道に保存販売されたと聞いた(たいした保存技術!)。って言うわけで、こんな季節はずれにも林檎が食べられる。*好きな歌を聴いて過ごすイチ子さんの朝。好きな歌を聴いて過ごす朝