ほのぐらき水族館に浮かびゐる無数の貌のなかのわが貌小島ゆかり『憂春』 小島ゆかりの第七歌集『憂春』(2005年)に収められた一首です。 普段生活している中で、自分の顔を見つめる時間は一体どれくらいあるでしょうか。 朝起きて洗面台の鏡で見る、
日本の伝統詩型である「短歌」。五七五七七の三十一音からなるこの詩型は実に魅力にあふれています。 短歌のある日々は実に豊かで、その魅力を広く発信したいです!
ストローをせり上がりくるコーヒーの見えざる黒きストローなれば染野太朗『初恋』 染野太朗の第三歌集『初恋』(2023年)に収められた一首です。 ストローを使って飲んでいるところから想像すると、アイスコーヒーでしょうか。 ストローは白ではなく黒
生くるとは慣れぬことがらに出会ふこと熟こなしていくこと羊雲みあぐ秋山佐和子『豊旗雲』 秋山佐和子の第八歌集『豊旗雲』(2020年)に収められた一首です。 生きるということのある定義が示された歌で、この歌では二つが並列されています。 ひとつは
もう若くないと思えど死には若き齢よわいを生きて朝鵙あさもずに遇う吉川宏志『鳥の見しもの』 吉川宏志の第七歌集『鳥の見しもの』(2016年)に収められた一首です。 人はいつまでを若いと思い、いつからを若くないと感じるのでしょうか。 掲出歌は「
ノー・ウンチ、ノー・ライフ、ああ、この先の百年をウンチせよかし、おまへ大松達知『ゆりかごのうた』 大松達知の第四歌集『ゆりかごのうた』(2014年)に収められた一首です。 「おまへ」とは自分の子どものことを指しており、この歌が収められた一連
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈どうしても書く気の出ない夜があり【 ① 】にて原稿を書く〉 (大松達知) A. サングラス B. 片イヤフォン C. 蝶ネクタイ D. 野球帽 答えを表示する 解答
問題 - Question 〈こころ憂き春のカバンはぶんぶんと振り子のやうにわれを歩ます〉という巻頭歌で始まる、大松達知の第四歌集は何? 答えを表示する 解答 - Answer 『ゆりかごのうた』 解説 『ゆりかごのうた』は2014年(平
死ぬまでにせぬこと出来ぬままのこと考へてゐる箸洗ひつつ近藤かすみ『雲ケ畑まで』 近藤かすみの第一歌集『雲ケ畑まで』(2012年)に収められた一首です。 人生は長いといえば長いでしょうし、短いといえば短いものです。それは人生の捉え方、どの視点
棒切れかなにかのごとき一生も棒切れに長さありてわれ泣く渡辺松男『歩く仏像』 渡辺松男の第三歌集『歩く仏像』(2002年)に収められた一首です。 一生はいろんなものに喩えられます。一生を何に喩えますかという質問を受けた方もいるかもしれませんが
(はじめから間違いだとしてひきつづき間違うとしても)生きなければね野樹かずみ『路程記』 野樹かずみの第一歌集『路程記』(2006年)に収められた一首です。 "なぜ生きているのか"。 人生において、この問いを自分自身に投げかけたくなるのは、う
今日もまた前回までのあらすじを生きてるみたい 雨が止まない鈴木美紀子『風のアンダースタディ』 鈴木美紀子の第一歌集『風のアンダースタディ』(2017年)に収められた一首です。 日々を重ねることは、日々経験を積むことであるでしょうし、新しい何
自販機に〈なまぬるい〉のボタン見つけたらわたしはきっと次の段階ステージ鈴木美紀子『風のアンダースタディ』 鈴木美紀子の第一歌集『風のアンダースタディ』(2017年)に収められた一首です。 通常、自動販売機のボタンは"つめた~い"か"あったか
カップ麵にお湯注ぐとき思うんだこうやってお湯降ってくるでしょ大前粟生『柴犬二匹でサイクロン』 大前おおまえ粟生あおの第一歌集『柴犬二匹でサイクロン』(2018年)に収められた一首です。 カップ麺を詠った歌ですが、この歌が何を伝えようとしてい
いまはただ春の麒麟にあいたくて卵サンドをつくっています岸原さや『声、あるいは音のような』 岸原さやの第一歌集『声、あるいは音のような』(2013年)に収められた一首です。 一読、明るさに満ちていて、わくわくうきうきする歌です。 「春」のやわ
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈うれしくてなんべんひとに言つただらう【 ① 】の同じなること〉 (染野太朗) A. 血液型 B. 生年月日 C. 出身校 D. 漢字氏名 答えを表示する 解答 - A
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ほのぐらき水族館に浮かびゐる無数の貌のなかのわが貌小島ゆかり『憂春』 小島ゆかりの第七歌集『憂春』(2005年)に収められた一首です。 普段生活している中で、自分の顔を見つめる時間は一体どれくらいあるでしょうか。 朝起きて洗面台の鏡で見る、
海上にかろき頭痛を運びつつ無数の波の襞を見下ろす大辻隆弘『汀暮抄』 大辻隆弘の第七歌集『汀暮抄』(2012年)に収められた一首です。 船に乗っている場面でしょうか。 かすかに頭痛がするのは、船に乗っているからでしょうか、それとも船とは直接関
ちょっと良いポン酢を買えば良い帰路で春の宵など俯瞰しながら小俵鱚太『レテ/移動祝祭日』 小俵鱚太の第一歌集『レテ/移動祝祭日』(2024年)に収められた一首です。 季節は春。休みの日に外出した帰りでしょうか、それとも仕事帰りでしょうか。 陽
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈ほそながい【 ① 】だと渡されるわずかに湿る線香花火〉 (小俵鱚太) A. 栞紐 B. 常備薬 C. 熱帯魚 D. 未来予想図 答えを表示する 解答 - Answer
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈【 ① 】のご褒美としていいだらう大人は毎日電車に乗れる〉 (山木礼子) A. 昇進 B. 深考 C. 早起き D. 長生き 答えを表示する 解答 - Answer
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈いつせいに【 ① 】ひらかれて風ふく朝の野をおもひたり〉 (大辻隆弘) A. 解答用紙 B. 回転扉 C. 千羽折鶴 D. 白色織布 答えを表示する 解答 - Ans
したいことたくさんあるけどわたしって「したいね」「したいね」でいいみたい伊藤紺『気がする朝』 伊藤紺の第三歌集『気がする朝』(2023年)に収められた一首です。 "死ぬまでにやりたいことリスト100"みたいなものをつくるとよいといった話もよ
トーストを朝なさな置く丸皿を洗はず捨てるやうに生きたい山木礼子『太陽の横』 山木礼子の第一歌集『太陽の横』(2021年)に収められた一首です。 「朝なさな」は毎朝という意味の言葉ですが、主体は毎朝トーストを丸皿にのせているようです。毎朝トー
とは言えど走って走って走り抜く若さ眩しと思うときあり三枝昻之『遅速あり』 三枝昻之の第十三歌集『遅速あり』(2019年)に収められた一首です。 「若さ」とはまぶしいものなのでしょうか。 年齢的にもう若くないと自分が感じたとき、そこから見える
日曜のひとりぼっちは思いのほか幸せなんだ 歯磨きはしないカン・ハンナ『まだまだです』 カン・ハンナの第一歌集『まだまだです』(2019年)に収められた一首です。 「日曜のひとりぼっち」はさびしいのでしょうか、それともうれしいのでしょうか。「
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈新緑が金色に見える朝 ひとはなぜ【 ① 】が好きなんだろう〉 (伊藤紺) A. 驚嘆 B. 不可思議 C. 特別 D. 想像 答えを表示する 解答 - Answer
いのりといふもろき柱に身を寄する死からながむる生短くて森井マスミ『まるで世界の終りみたいな』 森井マスミの第二歌集『まるで世界の終りみたいな』(2015年)に収められた一首です。 一生を長いと感じる人もいれば、短いと感じる人もいるでしょう。
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈一枚ずつラッピングして食パンを凍らせる日は【 ① 】がしたい〉 (カン・ハンナ) A. 遠出 B. 結婚 C. 瞑想 D. 戴冠 答えを表示する 解答 - Answe
自賛する言葉は卑しかりしかどそれにしも支へらるる生もありなむ大辻隆弘『汀暮抄』 大辻隆弘の第七歌集『汀暮抄』(2012年)に収められた一首です。 「自賛」とは自分で自分を褒めることを意味します。 人から褒められることはいいことだが、自分で自
自販機へのぼる誰もがつま先をお釣りの穴にいったんいれて伊舎堂仁『感電しかけた話』 伊舎堂仁の第二歌集『感電しかけた話』(2022年)に収められた一首です。 自販機にのぼること、またのぼるのを見たことはあまり経験がありませんが、この歌では、自
この世には赤いきつねはいそうだがいそうにもない緑のたぬき松木秀『親切な郷愁』 松木秀の第三歌集『親切な郷愁』(2013年)に収められた一首です。 東洋水産株式会社がマルちゃんブランドで販売している「赤いきつね」と「緑のたぬき」。「赤いきつね
エレベーターの一階ボタンくすんでる 僕らは羽を持たないゆえに伊波真人『ナイトフライト』 伊波真人の第一歌集『ナイトフライト』(2017年)に収められた一首です。 エレベーターの階ボタンの中で一番押されているのは「一階ボタン」ではないでしょう
エレベーター一人で乗っている時もわたしは私を数え忘れる鈴木晴香『心がめあて』 鈴木晴香の第二歌集『心がめあて』(2021年)に収められた一首です。 「乗っている時も」の「も」に注目したいと思いますが、この「も」から、エレベーターに一人ではな
エレベーター上へ上へと進みゆき下ばかり見る君と私は川島結佳子『感傷ストーブ』 川島結佳子の第一歌集『感傷ストーブ』(2019年)に収められた一首です。 この歌に登場するエレベーターが、シースルーエレベーターなのか、それともいわゆる通常のエレ
三分の電車の遅延・エフェクトで馬鹿っぽいパン買ってしまった宇野なずき『しかし世界はあなたではない』 宇野なずきの歌集『しかし世界はあなたではない』(2023年)に収められた一首です。 通勤途中の駅のホームにいる場面でしょうか。出勤日に毎日電
煙草吸う友は煙草の自販機の場所に詳しいそれだけのことだ松村正直『駅へ』 松村正直の第一歌集『駅へ』(2001年)に収められた一首です。 自動販売機は、飲み物を売る販売機のイメージが強いですが、販売するものは何も飲み物に限っているわけではあり
空き缶をいくつも飾り自販機は夜の路地裏明るく照らす伊波真人『ナイトフライト』 伊波真人の第一歌集『ナイトフライト』(2017年)に収められた一首です。 初句「空き缶」と詠われています。 なぜ主体は、自動販売機に陳列されている缶に液体が入って
わが裡に常描きゐる線ありてあるところよりゆるくカーブす三宅霧子『霧子』 三宅霧子の第一歌集『霧子』(1974年)に収められた一首です。 「裡」は、"うら"と呼んで裏側を意味する場合と、"うち"と呼んで内側や心の中を意味する場合がありますが、
もう少しゆけばかならず楽になる楽になるとぞ歩み来たれる内藤明『薄明の窓』 内藤明の第六歌集『薄明の窓』(2018年)に収められた一首です。 生きているとどこかでつらい、しんどいと思うときがやってきます。 そのときに何もかも投げ出してしまえば
今日眠るふとんあります明日食べるパンもあります祈りのゆびも岸原さや『声、あるいは音のような』 岸原さやの第一歌集『声、あるいは音のような』(2013年)に収められた一首です。 眠る前の場面でしょうか。 この歌は、ひとことでいってしまえば"感
なにもくれなくていいから種明かししながら手品をやってほしいの安田茜『結晶質』 安田茜の第一歌集『結晶質』(2023年)に収められた一首です。 手品は「種明かし」をしないからこそ、手品として成立するものだと思います。手品の種を研究している者以
マジックの種たねを一式詰め込みし革の鞄は何処にゆきし内藤明『薄明の窓』 内藤明の第六歌集『薄明の窓』(2018年)に収められた一首です。 マジックグッズには、本当にさまざまなものがあります。カード、コイン、ロープ、花、ハンカチ、リング、ステ
手品師の右手から出た万国旗がしづかに還りゆく左手よ石川美南『裏島』 石川美南の歌集『裏島』(2011年)に収められた一首です。 手品師は何もないように見えるところからさまざまなものを登場させますが、「万国旗」もそのひとつでしょう。 万国旗は
ビル風に髪がおどってくれたからとてもちいさな決心をした安田茜『結晶質』 安田茜の第一歌集『結晶質』(2023年)に収められた一首です。 何かをしようと心に決めることは、少なからず心に負荷を伴うものでしょう。決心をせず、昨日と同じような毎日を
問題 - Question 次の歌の【 ① 】に入る言葉は何? 〈【 ① 】をふるまいたいな【 ① 】と口にするのが気持ちいいから〉 (安田茜) A. カフェオレ B. 葡萄酒 C. ピスターシュ D. 揚げ餅 答えを表示する 解答
問題 - Question 〈雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること〉という巻頭歌で始まる、安田茜の第一歌集は何? 答えを表示する 解答 - Answer 『結晶質』 解説 『結晶質』は2023年(令和5年)に出版された
徹夜明け傘をさすには微妙なる雨降る中を茫々とゆく松木秀『5メートルほどの果てしなさ』 松木秀の第一歌集『5メートルほどの果てしなさ』(2005年)に収められた一首です。 夜勤を終えた後でしょうか、それとも仕事が終わらず朝までかかってしまった
湾というやさしい楕円朝あさにその長径をゆく小舟あり松村由利子『耳ふたひら』 松村由利子の第四歌集『耳ふたひら』(2015年)に収められた一首です。 「長径」という見慣れぬ語が登場しますが、これは「楕円」に関わる用語です。 楕円には焦点が二つ
なだらかな曲線描く眼鏡入れ書架の片隅に置かれてゐたり山田航『さよならバグ・チルドレン』 山田航の第一歌集『さよならバグ・チルドレン』(2012年)に収められた一首です。 「眼鏡入れ」が「書架の片隅」に置かれているということを詠った歌で、特に
かがまりてもやしのひげ根をとる厨 些事にこだはる日は平和なれ蒔田さくら子『標のゆりの樹』 蒔田さくら子の第十一歌集『標のゆりの樹』(2000年)に収められた一首です。 料理にもやしを使うとき、「もやしのひげ根」をとる人とそうでない人がいると
やわらかな曲線である 新入学児なみなみ載せたプラットホーム安藤美保『水の粒子』 安藤美保の第一歌集『水の粒子』(1992年)に収められた一首です。 「プラットホーム」という語にはいくつか意味がありますが、この歌では駅のプラットホームを指して
白鳥の首のカーヴのあの感じ、細い手すりに手を添えている鈴木加成太『うすがみの銀河』 鈴木加成太の第一歌集『うすがみの銀河』(2022年)に収められた一首です。 この一首を読むと、「白鳥の首」と「細い手すり」とがイメージの中で重ね合わさり、ど
丁寧に落ち葉を吸っていく機械が曲線の多いフォルムをしていた鈴木ちはね『予言』 鈴木ちはねの第一歌集『予言』(2020年)に収められた一首です。 落ち葉を片づける場合、量にもよりますが、箒とちりとりでは大変なケースがあります。そのようなとき、
水引を指でなぞれば曲線の果てにとつぜん取り残されて櫻井朋子『ねむりたりない』 櫻井朋子の第一歌集『ねむりたりない』(2021年)に収められた一首です。 一連の前後の歌から想像すると、友人の結婚式に関連した歌だと思います。 婚礼関係に使用する
使い捨てコンタクトレンズひからびて記憶のカーブをぐんにゃり描く俵万智『チョコレート革命』 俵万智の第三歌集『チョコレート革命』(1997年)に収められた一首です。 主体は、使い捨てコンタクトレンズを普段使用しているのでしょうか。 そのコンタ