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2020/05/25

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  • 『サラ金の歴史』小島庸平 サラ金業界の勃興から隆盛、壊滅に至るまでを概観する

    新書大賞2022大賞受賞作品 2021年刊行。筆者の小島庸平(こじまようへい)は1982年生まれの経済史学者。東京大学経済学研究科の准教授。 本書は2021年の2021年度の第43回サントリー学芸賞を受賞。更に、2020年12月~2021年11月に刊行された新書を対象とした「新書大賞2022」にて、第一位の大賞に輝いた作品である。 この書籍から得られること サラ金業界がいかにして始まり、いかにして壊滅させられたがわかる 戦前からの消費者向け金融の歴史がわかる 内容はこんな感じ 1990年代に全盛を極めた消費者金融業界。日本経済史の中でも特異な地位を占めたこの業界はいかにして生まれ、そして衰退し…

  • 『幕末単身赴任 下級武士の食日記』青木直己 食レポ日記から幕末の江戸を知る

    幕末の世相を「食」から読み解く 2005年の刊行。最初はNHK出版の生活人新書からの登場であった。 筆者の青木直己(あおきなおみ)は1954年生まれ。有名和菓子店虎屋の研究部門、虎屋文庫で和菓子に関する調査、研究に従事されていた方。虎屋クラスの企業になると、そんな研究部署があるのか。凄いな。 虎屋は既に定年で退職されており、現在は「日本菓子専門学校、東京学芸大学、立正大学などで非常勤講師をする他、時代劇ドラマなどの考証を行なう」とある。 幕末単身赴任 下級武士の食日記 (生活人新書) 作者:青木 直己 NHK出版 Amazon ちくま文庫版は2016年に刊行されている。文庫版は「増補版」と銘打…

  • 『決算書のトリセツ』前田忠志 決算書くらいは読めるようになりたいあなたに

    決算書が読めないコンプレックスをなんとかしたい 社会人一年目頃、研修の一環として簿記三級の資格を取りましょうという勉強会があった。最初の何回かだけ通ったものの、あとは日々の忙しさにかまけて脱落してしまった。同期で、ちゃんと合格したのは経理配属の子だけだった気がする。そんなトラウマがあって、会計については長年苦手意識を持っていた。もちろん決算書は読めない(お恥ずかしい)。 そんな中、本が好き!さんの献本企画に応募したところ、見事に当選!本書『決算書のトリセツ』をご恵贈頂くことが出来た(ありがとうございます!)。ということで、これを機会に勉強しなおしてみることにした次第。 『「会社の数字」がみるみ…

  • 『徒然草』兼好・島内裕子訳/校訂 日本三大随筆のひとつを現代語訳と併せて通読できる

    あけましておめでとうございます。 今週のお題「2024こんな年だった・2025こんな年にしたい」に便乗。 昨年は大河ドラマの影響で、平安時代や日本の古典文学に沼った一年だった。その影響は今年も続く予定。その一環として、本日はこちらの作品をご紹介したい。 島内裕子訳による『徒然草』 2010年刊行。兼好(けんこう)による『徒然草(つれづれぐさ)』の原文と共に、現代語訳を併録、更に詳細な解説を施したもの。ちくま学芸文庫から刊行されている。 兼好は出家後の呼び名。俗名は卜部兼好(うらべのかねよし/うらべのけんこう)。鎌倉時代末期に生まれ、室町時代前期の南北朝の頃に活躍していた歌人、随筆家。詳細な生没…

  • 『著作権ハンドブック』宮武久佳・大塚大 学校現場での著作権利用について知りたい方に

    知財の専門家が書いた学校著作権の本 2021年刊行。筆者の宮武久佳(みやたけひさよし)は1957年生まれ。共同通信の記者、デスクを経て、横浜国立大学の教授に。現在は東京理科大学教養教育研究院の教授。記者から大学教授に転身された方。もう一人の筆者、大塚大(おおつかだい)は1966年生まれの行政書士。駒沢公園行政書士事務所所属。いずれも知財の分野に強い専門性を持つ人物。 内容はこんな感じ ネットが当たり前の時代になって久しい。日々発展する技術の中で著作権の扱いも変わっていく。改正された2021年の著作権法第35条に対応。授業の中での著作物はどこまで利用が許されているのか?著作物のコピーや動画の作成…

  • 『ヨハネ受難曲』礒山雅の遺稿となった入魂の「ヨハネ」考察本

    礒山先生の遺作 2020年刊行。筆者の礒山雅(いそやまただし)は1946年生まれの音楽学者。残念ながら2018年に不慮の事故で亡くなられている。 遺稿となったのが本書で、国際基督教大学名誉教授である伊東辰彦(いとうたつひこ)が校訂し刊行にまでこぎつけている。礒山雅は『ヨハネ受難曲』に関する研究で博士論文を書いており、この論文の審査で主査を務めたのが伊東辰彦だった。 内容はこんな感じ J.S.Bachの代表作であり、西洋クラシック音楽の傑作のひとつでもある『ヨハネ受難曲』。この曲はいかなる経緯で作曲され、いかにして演奏されたのか。再演の度に改稿されたその意味はどこにあるのか。『ヨハネ受難曲』成立…

  • 『女たちの平安後期―紫式部から源平までの200年』榎村寛之 藤原詮子、彰子からはじまった女院権力の変遷

    平安時代の後期を概観 2024年刊行。筆者の榎村寛之(えむらひろゆき)は1959年生まれの研究者。三重県立斎宮歴史博物館で学芸員を務めている方。 中公新書としては2017年の『斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史』、2023年の『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』に続く、三冊目の作品となる。 『謎の平安前期』が平安時代の前半200年を概観した一冊だったが、今回の『女たちの平安後期』は、後半の200年を概観する一冊となっており、両者を通読することで、平安時代の全体像がつかめる構成となっている。『謎の平安前期』とセットで読むことをお薦めしたい。 内容はこんな感じ 藤原詮子(東三…

  • 『「働かないおじさん問題」のトリセツ』難波猛 「働かないおじさん」問題を解決する方法を考える

    「働かないおじさん」はいつごろから登場したのか 近年、目にすることが多くなったこの言葉だが、いつごろから言われ始めたのか、軽くググってみたところ、比較的古い記事では東洋経済のこちらが発見された。人事コンサルタント楠木新(くすのきあらた)による 2013年の記事。 楠木新は2014年に『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実』を上梓している。「働かないおじさん」が書籍のタイトル名に用いられたのはこれが最初かな? 働かないオジサンの給料はなぜ高いのか―人事評価の真実―(新潮新書) 作者:楠木 新 新潮社 Amazon 2014年の週刊ダイヤモンドでは『オジサン世代に増殖中!職場の「…

  • 『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』関幸彦 女真族の襲来と軍事貴族たちの台頭

    三年前の記事ですが、大河ドラマ『光る君へ』で、刀伊の入寇が映像化されるようなので、上げておきます。刀伊の入寇のようなマニアックなイベントがドラマ化されるとは!その場に紫式部が居たとは思えないけど、今年の大河ドラマは面白いです。 平安時代の異民族襲来 日本の歴史上、本土にまで外国勢力が侵入を果たした例は少ない。直近での最大の事例は言うまでもなく太平洋戦争(第二次世界大戦)になるだろう。しかしそれより前となるとどうだろうか。なんと鎌倉時代の元寇(1274年、1281年)まで遡ることになる。 では、元寇より前はどうだろうか。本日ご紹介する「刀伊の入寇(といのにゅうこう)」は平安時代(1019年)に起…

  • 『更級日記』菅原孝標女・江國香織訳 『源氏物語』に憧れた女の一生

    河出文庫古典新訳コレクションの一冊として 2016年刊行作品。先日ご紹介した『土左日記』と同様に、池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第3巻に収録されている作品。『更級日記』『土左日記』以外に、『竹取物語』『伊勢物語』『堤中納言物語』を収録していた。 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03) 作者: 河出書房新社 Amazon 「日本文学全集(全30巻)」は、河出文庫の古典新訳コレクションとして文庫化されており、本作はそのラインナップの一つ。『更級日記』は2024年に文庫化された。 文庫版には、もともと収…

  • 『ヤンキーと地元』打越正行 解体屋、風俗経営、ヤミ業者として生きる沖縄の若者たち

    文庫版が出たので情報反映しました! 社会学者の参与観察から生まれた一冊 2019年刊行。筆者の打越正行(うちこしまさゆき)は1979年生まれの社会学者。現在は、和光大学現代人間学部の専任講師、社会理論・動態研究所の研究員を務めている人物。 ヤンキーと地元 (単行本) 作者:打越 正行 筑摩書房 Amazon 『ヤンキーと地元』は初めての単著で、社会学系の書籍としては異例のヒット作となった。第六回の沖縄書店大賞の沖縄部門で大賞を受賞している。 本書がきっかけとなり、筆者は2022年5月16日(月)のテレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に出演。更に知名度を高めることになる(わたしもこれで知った…

  • 『ネット怪談の民俗学』廣田龍平 ネット怪談の生成と受容、そして新たな恐怖のカタチ

    民俗学者によるネット怪談のアプローチ 2024年刊行。筆者の廣田龍平(ひろたりゅうへい)は1983年生まれの研究者。専攻は文化人類学、民俗学。法政大学ほかの大学で非常勤講師を務めている方。 早川書房による感想まとめ記事はこちら。 廣田龍平の著作はこちら 単著 『〈怪奇的で不思議なもの〉の人類学 妖怪研究の存在論的転回 』青土社(2023年) 『妖怪の誕生 超自然と怪奇的自然の存在論的歴史人類学 』青弓社(2022年) 共著 『謎解き「都市伝説」 』彩図社(2022年) 『クィアの民俗学 LGBTの日常をみつめる 』実生社(2023年) 訳書 『日本妖怪考 百鬼夜行から水木しげるまで 』森話社(…

  • 『偽善系 やつらはヘンだ!』『偽善系II 正義の味方にご用心!』日垣隆 世に溢れる偽善者たちを叩きまくる

    2000年刊行。本日は日垣隆(ひがきたかし)が2000代の前半に上梓した二冊の社会批判本をご紹介したい。日垣隆は1958年生まれの作家、ジャーナリスト、ノンフィクションライター。 1999年の『「買ってはいけない」は嘘である」』で第61回の文藝春秋読者賞を。2004年の『そして殺人者は野に放たれる』では第3回の新潮ドキュメント賞を、それぞれ受賞している。 『偽善系 やつらはヘンだ!』 本書、『偽善系 やつらはヘンだ!』は、「本の話」「文藝春秋」等に発表されていた論評を大幅加筆。更に書き下ろしを追加して単行本化したもの。 文春文庫版は2003年に登場しているようなのだが、Amazonでのリンクが…

  • 『人口減少時代の再開発 「沈む街」と「浮かぶ街」』NHK取材班 タワマンの建設ラッシュが起きているのは何故?

    NHKスペシャルを書籍化 2024年刊行。2024年に放映されたNHKスペシャル「まちづくりの未来~人口減少時代の再開発は~」及び、クローズアップ現代「再開発はしたけれど 徹底検証・まちづくりの"落とし穴"」、首都圏情報ネタドリ内の「急増!"駅前・高層"再開発 家選び・暮らしはどう変わる?」などの放送内容をもとに、書籍として再構成したもの。NHKは社会派のドキュメント番組の中身を書籍化して売る手法を確立しており、本作もそのうちの一冊。NHK系列の出版であるNHK出版からの刊行だ。 内容はこんな感じ 高度成長期に作られた街が老朽化し、いま日本各地で再開発が進められている。タワーマンションが乱立す…

  • 『若者殺しの時代』堀井憲一郎 若者であることが決して得にはならない時代

    ゼロ年代に書かれた「若者」論 2006年刊行。筆者の堀井憲一郎(ほりいけんいちろう)は1958年生まれのライター、コラムニスト。思いっきりバブルを謳歌出来た世代だな。テレビやラジオにも時々顔を出していた人物らしい。「週刊春秋」誌に連載されていた「ホリィのずんずん調査」なる企画をベースに再構成されたの本書である。 内容はこんな感じ 1983年にクリスマスは「発明」された。1987年にディズニーランドが開園。若者たちから富を収奪するシステムが着々と整備されていく。1991年にはトレンディードラマが一世を風靡。そして携帯電話の登場は人間のライフスタイルを根底から変えてしまった。若者であることが決して…

  • 『椅子クラフトはなぜ生き残るのか』坂井素思 椅子づくりから社会経済学を考える

    放送大学の授業が書籍に 2020年刊行。筆者の坂井素思(さかいもとし)は1950年生まれの経済学者。現在は放送大学教養学部の名誉教授(刊行当時は教授)。 本書は、2020年から始まっている放送大学の講義『椅子クラフツ文化の社会経済学』の内容を書籍化したもの。だが、この講義、2024年度で残念ながら閉講となってしまう。放送大学(現在五年目)在学中のわたしとしては、今回がラストチャンスと言うことで現在履修中だったりする。 科目紹介動画はこちら。 こちらは、朝⽇新聞好書好日に掲載された、建築家長谷川逸子(はせがわいつこ)の書評。 内容はこんな感じ 現代のものづくりは機械化による大量生産の時代である。…

  • 『科学的根拠に基づく 最高の勉強法』安川康介 アクティブリコールと分散学習、そして精緻的質問と自己説明

    Youtubeで370万回以上再生された勉強法 2024年刊行。筆者の安川康介(やすかわこうすけ)は慶應の医学部卒で、日本とアメリカ両国での医師国家試験に合格。しかもアメリカの医師国家試験では上位1%以内の高得点をで合格し、数名しか選ばれない米ミネソタ大学の外国人枠にも採用されている優秀過ぎる人物。 Youtubeチャンネル「米国内科専門医 安川康介の医学チャンネル」は登録者数16万人越え。 特に人気を博しているのが370万再生を超えている「最高の勉強法・効率的な覚え方」だ。本書はこの動画の内容を更に深掘りしたものとなっている。 内容はこんな感じ テキストを何度も繰り返し読む。ノートに書いて綺…

  • 『土左日記』紀貫之・堀江敏幸訳 虚と実の間をたゆたう五十五日の船旅

    河出文庫古典新訳コレクションから! 2016年刊行作品。池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第3巻として刊行された。『土左日記』以外に、『竹取物語』『伊勢物語』『堤中納言物語』『更級日記』を収録していた。 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03) 作者: 河出書房新社 Amazon 池澤夏樹版「日本文学全集」は、2023年より河出文庫の古典新訳コレクションとして、単巻売りが始まっている。河出文庫版の書影はこちら。 巻末には全集版のあとがきに加えて、文庫版のあとがき、更に西山秀人(にしやまひでひと)による解…

  • 『なぜガザは戦場になるのか イスラエルとパレスチナ攻防の裏側』高橋和夫

    高橋先生のガザ本が出た! 2024年刊行。筆者の高橋和夫(たかはしかずお)は1951年生まれの国際政治学者。放送大学の元教授(現在は名誉教授)。中東領域を主な研究対象としている。昨今のパレスチナ情勢を踏まえ、解説者としてテレビ出演されていることも多いので、ご存じの方も多いのではなかろうか。 わたしは2021年から放送大学の学生となった(コロナで自宅での時間が増えたので)。高橋先生はいくつか放送大学での講義を持っており、わたしは『国際理解のために』『中東の政治』の二科目を履修させていただいた。『中東の政治』は残念ながら閉講となってしまったが、『国際理解のために』はまだ開講しているので、放送大学の…

  • 『死者の花嫁 葬送と追憶の列島史』佐藤弘夫 死後、人はどこにいくのか?

    日本人の死生観って? 2015年刊行。筆者の佐藤弘夫(さとうひろお)は1953年生まれの、歴史、宗教学者、思想家。東北大学の名誉教授。 死生観について考える、同著者の関連本としてはこちらの三冊がある。 人は死んだらどこへ行けばいいのか: 現代の彼岸を歩く(2021年) 激変する日本人の死生観: 人は死んだらどこへ行けばいいのか(2024年) だれをも仏や神にする死生観: 人は死んだらどこへ行けばいいのか(2024年) インタビュー記事はこちら。 内容はこんな感じ 中世までの日本では死者は、死後直ちに彼岸に旅立つとされた。死体の処理も埋めればそのまま。埋めることすらなく埋葬地に遺棄されることもあ…

  • 『50歳からのむなしさの心理学』榎本博明 「むなしさ」をきっかけに前を向く方法

    中高年を襲う「むなしさ」 40代後半~50代前半の方に伺いたいのけれども、近頃こんなむなしい思いに囚われたことはないだろうか。 やる気が出なくなった 仕事への情熱がなくなった 自分に自信が持てなくなった このままでいいのか焦る 自分らしく生きていないような気がする 恥ずかしながら、ここ数年のわたしがこのパターンで、とにかく仕事にモチベーションを見いだせずに困っている。淡々と作業をこなすだけ。時間が来れば止めてしまうし、より精度を高めよう、完璧に仕上げようとという気持ちも薄れ、ほどほどの完成度でやめてしまう。つまらないミスも多くなってきている。このままでは不味いなとは思うものの、なかなか改善でき…

  • 『方丈記(全)』鴨長明・武田友宏編 角川のビギナーズ・クラシックスで古典を読む

    ビギナーズ・クラシックスを知っているか? 2007年刊行。角川ソフィア文庫からの刊行。同レーベルはKADOKAWAの角川学芸出版ブランドの取り扱い。主として古典文学関連の作品を多数出版している。 ビギナーズ・クラシックスは、角川ソフィア文庫から出ている、古典文学の初学者向けシリーズで日本の古典が34冊、中国の古典が22冊、近代文学編が7冊まで発売されている。原文に加えて、現代語訳が併記されている点が特徴。解説文も豊富で、古典世界のビギナーにとってはありがたいシリーズとなっているのだ。 編者の武田友宏(たけだともひろ)は、1943年生まれ。國學院大學の文学研究科で博士号を取り、同大学の講師、また…

  • 『ヴィクトリア朝時代のインターネット』トム・スタンデージ モールス符号による即時の情報伝達が世界を変えた

    トム・スタンデージの第一作 オリジナルの英国版は1998年に刊行されており、原題は『The Victorian Internet』。筆者のトム・スタンデージ(Tom Standage)は1969年生まれのジャーナリスト。本作が初著作となる。他にも、『謎のチェス指し人形「ターク」』や『世界を変えた6つの飲み物』が邦訳されている。 最初の邦訳は2011年にNTT出版から刊行されている。訳者の服部桂(はっとりかつら)は1951年生まれで、元は朝日新聞科学部の記者。 ヴィクトリア朝時代のインターネット 作者:トム・スタンデージ NTT出版 Amazon ハヤカワ文庫版は2024年に登場している。文庫化…

  • 『大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代』氏家幹人 大都市江戸のアンダーワールド

    江戸のアンダーワールドを知る 1999年刊行。筆者の氏家幹人は1954年生まれの歴史学者。朝日カルチャーセンター掲載のプロフィールによると国立公文書館で勤務されていた方らしい。講談社現代新書の『武士道とエロス』『江戸の性風俗』など、江戸時代についての著作を多く書かれている。 大江戸死体考: 人斬り浅右衛門の時代 (平凡社新書 16) 作者:氏家 幹人 平凡社 Amazon 本書については、2016年に『増補 大江戸死体考』として平凡社ライブラリー版が登場している(わたしは未読)。現在手に入るのはこちらの版であろう。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 江戸時代…

  • 『枕草子』清少納言・酒井順子訳 ほとばしる定子への賛美、中関白家のこぼれ話も愉しい!

    河出の「日本文学全集」版が文庫化 2016年刊行作品。池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第7巻として刊行された。『枕草子(まくらのそうし)』だけではなく、『方丈記(ほうじょうき)』(高橋源一郎訳)、『徒然草(つれづれぐさ)』(内田樹訳)を併録。日本三大随筆を一冊で読める意欲的な一冊だった。 この全集では日本文学の古典を、人気作家による現代語訳で読むことができるのがウリ。累計50万部を突破する大きな成果を残している。 枕草子/方丈記/徒然草 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集07) 作者:酒井 順子 (翻訳),高橋 源一郎 (翻訳),内田 樹 (翻訳) 河出…

  • 『13歳からのアート思考 「自分だけの答え」がみつかる』末永幸歩 VUCA時代を生き抜くために

    発行部数17万部超のベストセラー本 2020年刊行。筆者の末永幸歩(すえまつゆきほ)は武蔵野美術大学を経て、東京学芸大学の教育学研究科へ。現在は、東京学芸大学の個人研究員兼、中学・高校の美術教諭として活躍している人物。 帯の「薦」には、藤原和博、山口周、中原淳といった錚々たる顔ぶれが並ぶ。現在の帯表記では16万部突破!とある。昨年もっとも売れた一般書のひとつといって差し支えないだろう。 この本で得られること 複雑な現在社会を生き抜くための「アート思考」を身につけることができる アートの見方について考えることができる 20世紀アートの歴史、意義について知ることができる 内容はこんな感じ いま、も…

  • 『日本の偽書』藤原明 荒唐無稽なものに人は魅せられる

    六冊の偽書をとりあげる 2004年刊行。筆者の藤原明(ふじわらあきら)は1958年生まれのノンフィクションライター。古今有名な六つの偽書を題材に、怪しげな文献が制作者の意図すらも越えていつのまにか一人歩きしていく謎について、新書のボリュームでコンパクトにまとめた一冊。 日本の偽書 (文春新書 379) 作者:藤原 明 文藝春秋 Amazon 2019年には河出文庫版が登場。現在読むならこちらの方かな。 内容はこんな感じ 偽書は何故人々の心を惹き付けて止まないのか。記紀以前の書として古くから喧伝されてきた、「上記(うえつふみ)」「竹内文献(たけうちぶんけん)」「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐん…

  • 『「働き手不足1100万人」の衝撃』古屋星斗+リクルートワークス研究所 2040年の日本が直面する危機と“希望”

    2024年刊行。筆者の古屋星斗(ふるやしょうと)は一橋大学大学院社会学研究科を経て、経済産業省に入り、その後リクルートワークス研究所の主任研究員に転じている人物。 本書は2023年3月にリクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーションの結果をもとに更に考察を深めた一冊。 PRESIDENT Onlineの紹介記事はこちら。 本書以外の、古屋星斗作品はこちら。 ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由:中公新書ラクレ(2022年) なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか:日本経済新聞出版(2023年) 内容はこんな感じ 2040年。働き手は1100万人も足りなくなる。少子高齢化に…

  • 『土葬の村』高橋繁行 滅びゆく弔いの習慣

    筆者は死と弔いに豊富な知見を持つ 2021年刊行。筆者の高橋繁行(たかはししげゆき)は1954年生まれのルポライター。『ドキュメント現代お葬式事情』『葬祭の日本史』など、人間の死、葬式、葬祭儀礼に関連した著作を何冊か他にも上梓している。 この本で得られること 日本の土葬文化について知ることができる 失われてしまった不思議な葬祭習慣について知ることができる 内容はこんな感じ かつては日本全国、どこでもあたりまえに行われていた土葬。しかし戦後、急速な火葬化が進行する。どうして土葬は廃れ、火葬に置き換わっていったのか。平成、令和に入っても、未だ土葬の習慣が残る地域を取材。30年にわたって土葬の習俗を…

  • 『体験格差』今井悠介 子どもたちの間に「体験」の格差が広がっている

    2024年刊行。筆者の今井悠介(いまいゆうすけ)は1986年生まれ。東日本大震災をきっかけに、生活困窮家庭の子どもたちの学びを支援する公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンを設立。今回の『体験格差』が初めての著作となる。 Webメディアの現代ビジネスに、いくつか記事を執筆しているようなのでリンクを貼っておく。 内容はこんな感じ スポーツ活動や、文化的なお稽古ごと。週末のイベントや、家族揃っての宿泊旅行。子どもたちの間で「体験」の格差が広がっている。望めばいつでも「体験」を与えられる子どもたちと、望んでも「体験」を与えられない子どもたち。その差はどこにあって、背景にはいかなる事情があるのか。子…

  • 『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』スズキナオ なんでもない日々を少しぐらいは楽しく

    スズキナオ初の単著 2019年刊行。筆者のスズキナオは1979年生まれ。Webメディア「デイリーポータルZ」「メシ通」などでの活躍が知られる、大阪在住のフリーライター。 同業者との共著で、『"よむ"お酒』『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』『酒の穴』がある。本作、『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』は初めての単著ということになる。 内容はこんな感じ 友人の家に行って、友人の家ならではの「家系ラーメン」を食べてみる。いま、巷で流行っている「昼スナック」に突撃してみる。「たこせんべい」を食べるためだけに淡路島を訪れる。スーパーの半額肉だけを集めて焼肉パーティを開く。友人の…

  • 『国のために死ぬのはすばらしい?』ダニー・ネフセタイ イスラエルからきたユダヤ人家具作家の平和論

    イスラエルから日本にやってきたユダヤ人の平和論 2016年刊行。筆者のダニー・ネフセタイ(Dany Nehushtai)は1957年生まれのイスラエル人。イスラエルの高校を卒業後、徴兵でイスラエル空軍に三年間所属。その後、来日、日本人女性と結婚。日本で家具職人となった方。 本業は家具職人だが、反戦、反原発についての活動を積極的行っている。その他の著作に2023年に刊行された『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』。 イスラエル軍元兵士が語る非戦論 (集英社新書) 作者:ダニー・ネフセタイ,永尾 俊彦 集英社 Amazon また、2024年刊行の『どうして戦争しちゃいけないの? 元イスラエル兵ダニーさ…

  • 『猫語の教科書』ポール・ギャリコ ネコが書いた、ネコのための本

    猫のためのマニュアル本? オリジナルの米国版の原題は『The silent miaow』(原題からして既にかわいい)で、1964年の刊行。こちらの書影はペーパーバック版で1985年刊行。 Silent Miaow 作者:Gallico, Paul Three Rivers Press Amazon 日本語版は1995年に刊行されている。まずは筑摩書房から単行本で登場。 猫語の教科書 作者:ポール・ギャリコ,灰島 かり,Gallico,Paul 筑摩書房 Amazon ちくま文庫版は1998年に刊行。四半世紀以上も前の作品になるが未だに書店で見ることが出来る。非常に息の長い作品となっている。 筆…

  • 『ぼくの村は壁で囲まれた』高橋真樹 パレスチナ問題についての入門書として

    パレスチナ問題の入門書として 2017年刊行。筆者の高橋真樹(たかはしまさき)は1973年生まれのノンフィクション作家。エネルギー問題、SDGs関連等、環境についての著作多数。 帯には放送大学教授(現在は退官されて名誉教授)の高橋和夫の推薦文が掲載されている。筆者のプロフィールを読む限り、放送大学で非常勤講師をされていたキャリアがあるようなので、その際のご縁なのかな? パレスチナ問題を扱った作品としては、他に2002年刊行の『イスラエル・パレスチナ平和への架け橋』がある。こちらは高橋和夫が監修まで行っている。 イスラエル・パレスチナ平和への架け橋 作者:高橋 真樹 高文研 Amazon 内容は…

  • 『紫式部の父親たち 中級貴族たちの王朝時代へ』繁田信一 書簡集『雲州消息』から平安朝を読み解く

    繁田先生の本が面白い 2010年刊行。筆者の繁田信一(しげたしんいち)は1991年生まれの歴史学者。 2004年に吉川弘文館から出た『陰陽師と貴族社会』が最初の著作。以後、平安朝に関連した著作を二十作以上、世に送り出している。 大河ドラマ『光る君へ』にハマっているわが家。他の時代と比べて圧倒的に足りていない平安時代の知識を求めて、あれこれ関連書籍を読みふけっている。 先日このブログでも紹介した『殴り合う貴族たち』が面白かったので、引きつづき繁田信一作品を読んでみることにした次第。 内容はこんな感じ 紫式部の父親、藤原為時のような中級貴族たちはどのような日々を過ごしていたのか。受領の職を求めて奔…

  • 『現代アラブを知るための56章』松本弘・編著 アラブの各国を概観できるエントリー本

    明石書店のエリア・スタディーズシリーズ 2013年刊行。編著者である松本弘(まつもとひろし)は1960年生まれの政治学者。大東文化大学、国際関係学部の教授。同氏をはじめとして二十名を超える中東地域の研究者たちが執筆陣として名を連ねている。 本書は明石書店の「エリア・スタディーズ」シリーズの一冊。「エリア・スタディーズ」は「世界の国と人を知るための知的ガイド」として、旅行ガイドブックよりも、より突っ込んだエリア解説をしてくれる地域紹介本だ。1998年から刊行が開始され、現在では300冊を超える膨大なラインナップを構成している。 既刊の一覧はこちら。特定の地域について知識を得たい時には便利なシリー…

  • 『ある行旅死亡人の物語』武田惇志・伊藤亜衣 他者の人生を覗き見る罪深さを考える

    1200万PVをたたき出した記事の書籍化 2022年刊行。筆者のふたりは共同通信社の記者。そのうちのひとり武田惇志が、記事になるネタはないかと官報を読んでいた本件にぶち当たった。 書籍化される前にネットでも記事になり、とても話題になったので、記憶に残っている方も多いのではないだろうか。 内容はこんな感じ 2020年4月。兵庫県尼崎市のアパートで高齢女性が孤独死した。死因はくも膜下出血。身寄り無し。知人無し。事件性はないと思われたが身元が分からない。住民票は抹消。無年金。無保険。残されたのは3,400万もの現金。右手の全指が欠損。数十枚の写真。珍しい姓の印鑑。社会との接触を避けて生きてきたこの女…

  • 『へろへろ 雑誌『よれよれ』と「宅老所よりあい」の人びと』鹿子裕文 楽しもう。もがきながらも

    唯一無二の特別養護老人ホームが出来るまで 2015年刊行。単行本版はナナロク社から出ている。 筆者の鹿子裕文(かのこひろふみ)は1965年生まれの編集者、作家。その他の著作に2020年の『ブードゥーラウンジ』、2021年の『はみだしルンルン』がある。 表紙イラストはモンドくんこと、奥村門人(おくむらもんど)によるもの。モンドくんは2003年生まれなので、本書刊行時でなんと12歳!絵だけではなく、最近では俳優としても活動しているらしくマルチな才能を発揮している。これからが楽しみな方。 へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 作者:鹿子 裕文 ナナロク社 Amazon ちくま文庫版は…

  • 『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』 昭和30年代をカラー写真で楽しめる

    昭和30年代の光景をカラーで見ることが出来る 今回紹介するのは、昭和30年代の日本の光景を切り取った貴重なカラー写真集。この時代の写真といえば、ほぼモノクロ写真であっただけに、カラー写真の表現力、再現力の凄さを感じさせてくれる一冊だ。 このシリーズは人気があったのであろう、2019年に『続・秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』が刊行されている。こちらは未読なので、いずれ読むつもり。 続・秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本 (光文社新書) 作者:J・ウォーリー・ヒギンズ 光文社 Amazon おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 昭和30年代の風景を…

  • 『天井のない監獄 ガザの声を聴け』清田明宏 UNRWA保健局長による2010年代のガザの実情

    UNRWAの保健局長が書いたガザの実情 集英社のWebメディア「集英社新書プラス」に2017年7月~2018年9月にかけて連載された「ガザの声を聴け!」をベースに書籍化したもの。 2019年刊行。筆者の清田明宏(せいたあきひろ)は1961年生まれの医師。世界保健機関(WHO)で十五年中東他、二十二の国々で結核やエイズの対策に尽力。2010年からは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長。 いくつか筆者を紹介している記事があったのでリンクしておく。 内容はこんな感じ 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は2019年で創設から70年を迎えた。当初の活動予定期間は三年だった。7…

  • 『芝園団地に住んでいます』大島隆 団地住民の半数が外国人になったらどうなるのか?

    朝日新聞記者による現地レポート 2019年刊行。筆者の大島隆(おおしまたかし)は1972年生まれ。現役の朝日新聞記者。テレビ東京ニューヨーク支局記者、朝日新聞ワシントン特派員等を経て、現在は英語メディアThe Asahi Shimbun AJWのデスク。アメリカでの滞在歴が長い。他の著作に『アメリカは尖閣を守るか 激変する日米中のパワーバランス』がある。 筆者自身による関連記事はこちら。 内容はこんな感じ 埼玉県川口市。UR(旧日本住宅公団)の川口芝園団地では、高齢化により日本人入居者が減少し、替わって、中国人を主とした外国籍の住民が激増している。総入居者約5,000人のうち、その半分が外国人…

  • 『殴り合う貴族たち』繁田信一 藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

    素行の悪い平安の貴公子たち 筆者の繁田信一(しげたしんいち)は1068年生まれの歴史学者。神奈川大学の日本常民文化研究所で特別研究員をされている方。 単行本版は2005年刊行。この時は副題として「平安朝裏源氏物語」が付されていた。 殴り合う貴族たち: 平安朝裏源氏物語 作者:繁田 信一 柏書房 Amazon 角川ソフィア文庫版は2008年に登場。現在セール中(2024/4/27現在)とあり、電子版であれば259円で買えるみたい。 殴り合う貴族たち (角川ソフィア文庫) 作者:繁田 信一 KADOKAWA Amazon 更に文春学藝ライブラリー版が2018年に刊行されている。 二度も文庫化される…

  • 『しょぼい起業で生きていく』えらいてんちょう リスクを取らない起業スタイル

    えらいてんちょうの一作目 2018年刊行。筆者の「えらいてんちょう」こと矢内東紀(やうちはるき)は1990年生まれ。慶大卒の高学歴者だが、朝起きるのが苦手なばかりに就職活動を諦め、計画も経験もないままなし崩し的に起業。初の実店舗であるリサイクルショップを皮切りに、数々のビジネスを成功に導き現在の地位を築いた人物。 出版不況の昨今、本書は初版から14,000部!しかも三週間で重版となっている。すげー。 あっ、こんなタイミングでなんですが、拙著「しょぼい起業で生きていく」の重版が決まりました!初版14000部刷ったのに3週間で重版!みんなありがとう!まだ買ってないやつは買えよ!!https://t…

  • 『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』榎村寛之

    2023年刊行。筆者の榎村寛之(えむらひろゆき)は1959年生まれの研究者。三重県立斎宮歴史博物館で学芸員を務めている方。 勤め先からも想像がつくとおり、伊勢斎宮研究の専門家で、関連著作がいくつもある。当ブログでは中公新書から出ている『斎宮』を以前にご紹介している。 内容はこんな感じ 藤原氏が権力中枢を独占した平安中期以降と異なり、平安前期には驚くほど多様な可能性が存在していた。実名で記録に残る女官たちの活躍。門閥に生れなくても学問で身を立てることができた時代。斎宮と内親王の関係性の変化。そして摂関家はいかにして成立したのか。桓武天皇から『源氏物語』誕生まで、知られざる平安「前期」の200年を…

  • 『進化する勉強法』竹内龍人 心理学が裏付ける科学的な勉強法

    漢字学習から算数、英語、プログラミングまで 2019年刊行。筆者の竹内龍人(たけうちたつと)は1964年生まれの心理学研究家。日本女子大学人間心理学部心理学科の教授。実験心理学を主要な研究分野としている人物である。 サブタイトルには「漢字学習から算数、英語、プログラミングまで」とあるが、内容的には大人でも全く問題なく当てはまる内容となっているので、勉強法に悩まれているビジネスパーソンの方にもおススメである。 なお本書は2014年に刊行された『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!』をベースとして、構成を含め大幅にリライトしたものとなっている。 実験…

  • 『「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから』飯田朔 生きていくのが少し楽になる考え方

    飯田朔、初の著作集 2024年刊行。Webメディア「集英社新書プラス」に連載されていた記事をまとめたもの。筆者の飯田朔(いいださく)は1989年生まれ。本書が初めての著作となる。 早稲田大学在学中に引きこもりとなり、卒業後は学習塾で七年働き、その後一年間スペインに留学。帰国後はの文筆家として活躍されている方。 本書の発売に伴い、ライターの武田砂鉄との対談記事がネットにあがっていたので、併せてご紹介しておく。 このインタビューで気になった一節を引用しておこう。本書のコンセプトが語られている。 今回書いた「おりる」思想って、競争や「何者か」っていう発想から完全に脱け出して仙人みたいになろうという提…

  • 『壱人両名 江戸日本の知られざる二重身分』尾脇秀和 身分制度の常識を覆す

    江戸時代の秩序観を知る一冊 2019年刊行。筆者の尾脇秀和(おわきひでかず)は1983年生まれ。神戸大学経済経営研究所の研究員。佛教大学の非常勤講師。専門は日本近世史。 その他の著作に、2014年の『近世京都近郊の村と百姓 』、2018年の『刀の明治維新: 「帯刀」は武士の特権か?』、2020年の『近世社会と壱人両名ー身分・支配・秩序の特質と構造― 』がある。 内容はこんな感じ ある時は百姓、またある時は武士である。町人なのに百姓。武士なのに町人。厳格に固定化されていたかに見える江戸時代の身分制度だが、実際には多くの例外が存在していた。二重身分はいかにして発生し、幕府はどうしてこれを黙認したの…

  • 『江戸の町は骨だらけ』鈴木理生 「骨」から読み解く江戸の歴史

    江戸の歴史は「骨」からわかる 2002年刊行。筆者の鈴木理生(すずき まさお)は1926年生まれの歴史研究家。2015年に亡くなられている。『江戸の川・東京の川』『図説 江戸・東京の川と水辺の事典』『江戸はこうして造られた』など、「江戸」について数多くの著作を持つ。 江戸の町は骨だらけ 作者:鈴木 理生 桜桃書房 Amazon ちくま学芸文庫版は2004年に登場。いずれも少し前の著作なので、Amazonでも新刊の取り扱いは無し。古本で探すしかないと思う。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 日本史の中では江戸時代が一番好きな方、家康国替え以前の江戸の歴史について…

  • 『ガザに地下鉄が走る日』岡真理 「絶望の山」から「希望の石」を切り出す鑿として

    パレスチナの歴史を知るために 2018年刊行。筆者の岡真理(おかまり)は1960年生まれの学者。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズム思想。京都大学名誉教授、早稲田大学文学学術院文化構想学部教授。 東京外大のアラビア語科を卒業後、同大の大学院へ。その後エジプトのカイロ大学に留学。若いころから中東地域を訪れ、現地と強いネットワークを築いている人物。 著作は以下の通り。 記憶/物語(2000年/岩波書店) 彼女の「正しい」名前とは何か:第三世界フェミニズムの思想(2000年/青土社) 棗椰子の木陰で:第三世界フェミニズムと文学の力(2006年/青土社) アラブ、祈りとしての文学…

  • 『書評の仕事』印南敦史 読者のニーズに応え、的確な要約を書く技術とは?

    書評ブログで何を書いていいかわからないあなたへ ブログで主として書評を書かれている皆さま(わたしのことである)。思ったような文章が書けているだろうか。そして狙ったような反応は得られているだろうか。何を書いていいのか分からない。書いても全く読まれない。検索順位も上がらない。そんな方は多いのではないだろうか。 当ブログもかれこれ運営開始から一年となるが、別ブログ(小説感想ブログ)ほどの手ごたえは得られていない。このブログは非小説系の新書、ビジネス書等を専門に運営しているのだが、小説の感想とは明らかに違うベクトルの書き方が必要なのではないかと痛感している。 そろそろ方向修正が必要だなと感じていた時、…

  • 『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』八木仁平 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド

    自己理解の専門家が教える「やりたいこと」の見つけ方 2020年刊行。筆者の八木仁平(やぎじんぺい)は1993年生まれ。学生時代には人気ブロガーとして知られる。当時のインタビュー記事があったのでリンクしておこう。 ブロガーとしては成功者の部類に入ると思うのだが、モチベーションが「お金」であったその活動は精神的に行き詰る。その後、「自己理解」をテーマとした発信にビジネスを切り替え事業化してこれが大成功。本書も2021年4月時点で18万部を超えるヒット自己啓発書となっている。 内容はこんな感じ 今の仕事を続けていいのか。「何か」をしたいがその「何か」が分からない。「やりたいこと」の探し方にはメソッド…

  • 『平安貴族の仕事と昇進』井上幸治 熾烈な任官争いとブラックな環境

    貴族の仕事について知りたい方に 2023年刊行。筆者の井上幸治(いのうえこうじ)は1971年生まれ。佛教大学歴史学部の非常勤講師。京都市歴史資料館館員。その他の著作として2016年の『古代中世の文書管理と官人』がある。 ちなみに歴史文化ライブラリーは、創業安政4(1857)年!の老舗出版社、吉川弘文館(よしかわこうぶんかん)による、日本史を中心とした専門書レーベル。本書のナンバリングを見ると「570」となっており歴史の長さを感じさせる。 内容はこんな感じ 平安貴族は雅やかに恋愛を謳歌し、和歌を吟じてのんびりと過ごしていたわけではない。任官をめぐる熾烈な競争。年に二回の除目をめぐる悲喜劇。宮中で…

  • 『不安のしずめ方40のヒント』加藤諦三 人生や仕事の不安を解消する考えかた

    『テレフォン人生相談』のパーソナリティが書いた不安のしずめ方 私事で恐縮だが、コロナ対応によるテレワーク生活がかれこれ一年半になろうとしている。当初は出社しなくてよい気軽さを喜んでいたものだが、これがいざ仕事をしてみるとさまざまな問題が出てくる。 とにかくコミュニケーションがうまくいかないのだ。相手の顔が見えない、空気感がわからないから、意思の疎通が食い違っていく。誤解から相手を怒らせてしまうようなこともあった。すっかり、気が滅入ってしまい、不安になったときに出会ったのが本書である。 本書は2016年刊行。筆者の加藤諦三(かとうたいぞう)は1938年生まれ。東大卒の社会学者で、早稲田大学の名誉…

  • 『機会不平等』斎藤貴男 格差を意図的に広げていこうとする層が存在する

    「機会」の不平等を描く 2000年刊行。筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれのジャーナリスト。 機会不平等 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2004年に登場。わたしが読んだのはこちら。文庫化にあたり加筆が施されている。 機会不平等 (文春文庫 さ 31-2) 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon その後、なんと2016年に岩波現代文庫版が刊行されている。ずいぶん息の長い作品となったものである。こちらでは、経年によって変化があった部分の加筆修正に加えて、森永卓郎との対談が巻末に収録されている。 内容はこんな感じ グローバリゼーションの名の下に人知れず進行し…

  • 『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない』三宅香帆 好きなことを自分のコトバで発信しよう!

    自分のコトバでつくるオタク文章術 2023年刊行。筆者の三宅香帆(みやけかほ)は1994年生まれの書評家、作家。京都大学文学部、同大大学院修士課程、博士前期課程修了。現在は京都市立芸術大学の非常勤講師も務めている人物。 古典や文章術についての著作を多数上梓しており、本ブログでは以前に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』をご紹介している。 内容はこんな感じ アニメ、マンガ、小説、アイドル、バンド、舞台。あなたの「推し」は何ですか?SNSや、ブログで、推しについて、大好きな対象についてその愛を語りたい!でも、いざ文字にしてみると哀しいくらい何も書けない。その理由はどこにあるのか?どうすれば書…

  • 『椿井文書(つばいもんじょ)』馬部隆弘 日本最大級の偽文書の正体

    偽史が発生するメカニズムを知る 2020年刊行。筆者の馬部隆弘(ばべたかひろ)は1976年生まれの歴史学者。大阪大谷大学の准教授で、戦国期権力論、城郭史、偽文書研究で知られる人物。本書で一気に知名度があがった。やはり中公新書で出てくると影響力が大きい。 お名前は、馬「部」隆弘であって、馬「場」隆弘ではないので注意が必要である(ずっと間違って覚えてたごめんなさい)。 内容はこんな感じ 江戸時代末期、近畿一円に流布した偽文書が存在した。制作者の名は椿井政孝。系図、由来書、境内図。数百点を超える膨大な偽文書は、地域のニーズに合致したことから正史として継承され、現代にも大きな影響を与えている。椿井政孝…

  • 『中流危機』NHKスペシャル取材班 中流層没落の原因と再生のための処方箋は?

    NHKスペシャルを書籍化 2023年刊行。2022年9月に放映された「NHKスペシャル”中流危機”を超えて」をベースに、書籍としてまとめたもの。最近はこの手の、テレビで放映した内容を本にしました!的なものが多くなってきた気がする。 映像はNHKオンデマンドで現在でもみられるみたい。 “中流危機”を越えて 「第1回 企業依存を抜け出せるか」 Amazon 内容はこんな感じ 結婚できない、正社員になれない、車が買えない、趣味にお金をかける余裕がない、持ち家に住めない、旅行にも行けない。かつて「一億総中流社会」と呼ばれたのも過去の話。バブル崩壊から30年を経て、日本の中流層は見る影もなくやせ細ってし…

  • 『カルト資本主義』斎藤貴男 オカルトにハマった日本の大企業

    オカルトが支配する日本の企業社会 筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれの、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。 本書はまず、1997年に文藝春秋から単行本として上梓された。その後、2000年に文春文庫化版が刊行されている。 カルト資本主義 (文春文庫) 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon 更に、2019年に入り、ちくま文庫版が登場している。こちらは、新たに序章と最終章が新章として追加されている。 内容はこんな感じ ソニーのエスパー研究室。「永久機関」。科学技術庁のオカルト研究。「万能」微生物EM。オカルトビジネスのドン「船井幸雄」。米国政府が徹底して擁護するアムウェイ商法…

  • 『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』後藤宗明 今すぐはじめられるリスキリングの実践術

    「リスキリング」本の第二弾が登場 2023年刊行。一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事を務める後藤宗明(ごとうむねあき)二冊目の著作となる。 2002年に上梓され「読者が選ぶビジネス書グランプリ」2023年版の総合部門で第4位、更に部門賞である「イノベーション部門」を受賞した『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』の続篇とも言える内容となっている。 内容はこんな感じ リスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」である。昨今、この言葉の知名度が上がっているが、果たして個人として出来ることは何なのか?リスキリ…

  • 『勘定奉行の江戸時代』藤田覚 勘定奉行で学ぶ江戸幕府の財政史

    勘定奉行から江戸時代を読み解く 2018年刊行。筆者の藤田覚は1946年生まれ。東京大学の史料編纂所の教授を2010年に定年で退官し、現在は同大の名誉教授。専門は日本近世史。江戸時代に関する著作が20冊ほど刊行されている。 内容はこんな感じ 江戸時代に活躍した勘定奉行は、財政だけでなく、農政、交通、司法など幕府の幅広い業務を主管する重要な役職であった。求められる能力の高さから、勘定奉行は旗本だけでは人材がまかなえなかった。御家人でも実力さえあれば、たたき上げで勘定奉行に昇進できるシステムが存在していた。江戸時代の著名な勘定奉行らを紹介しつつ、時代時代における幕府の財政事情を読み解いていく一冊。…

  • 『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり 平安の格差社会を生き抜いた紫式部が『源氏物語』に込めた想い

    大塚ひかりの「源氏本」が出た! 2023年刊行。筆者の大塚ひかりは1961年生まれの古典エッセイスト。 わたしが初めて大塚作品を読んだのは草思社の『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』から。新潮新書の『女系図でみる驚きの日本史』はこのブログでも紹介している。 得意分野は平安時代、特に『源氏物語』であるようで、本書以前にも『『源氏物語』の身体測定』『源氏物語愛の渇き』『カラダで感じる源氏物語』『源氏の男はみんなサイテー 親子小説としての源氏物語』など、『源氏物語』に関する著作をいくつも書いている。 内容はこんな感じ 『源氏物語』には作者紫式部の、強い嫉妬と階級意識が反映されている。祖先は…

  • 『イスラムと仲よくなれる本』森田ルクレール優子 学校で、職場で、もし隣の席にイスラム教徒がいたら?

    小学生でも読めるイスラムの入門書 2023年刊行。筆者の森田ルクレール優子(もりた Leclerl ゆうこ)は1980年生まれ。20年程前にイスラム教に改宗。2年前(本書刊行時点)にSNSで知り合ったフランス人男性と交際ゼロ日で結婚。渡仏。夫と先妻との間に出来た子四人に加えて、自身でも四人を出産。現在は八人の子の母として多忙な日々を送りつつ、イスラム教のシンプルライフを広める専門家として活動されている方。波乱万丈すぎる。 内容はこんな感じ 日本人にはちょっと縁が遠い存在だったイスラム教。しかし近年、日本国内にも、イスラム教を信仰する外国人が居住するようになってきている。イスラム教はどんな宗教で…

  • 『大津絵』クリストフ・マルケ 江戸時代の人々に愛された庶民画の世界

    フランス人研究者による「大津絵」ガイドブック 2016年刊行。筆者のクリストフ・マルケ(Christophe Marquet)は1965年生まれ。フランス人で、日本近世・近代美術史と、出版文化史の研究者である。 オリジナルのフランス版は2015年に刊行されている。フランスで書かれたガイドブックが日本に逆輸入されているわけである。 Otsu-e : Imagerie populaire du Japon Amazon 内容はこんな感じ 江戸時代、東海道の宿場町大津で売られていた「大津絵」。無名の絵師たちによって描かれた庶民画は、旅の土産として庶民に絶大な人気を博していた。神々や仏の姿、鬼、動物、…

  • 2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

    既に2024年の1月も後半に入っている状況で、遅きに失した感が無きにしもあらずだが、恒例の〇〇年に読んで面白かった本企画をお届けしたい。 なお、あくまでも2023年に読んだ本が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご容赦を。 では、今回のラインナップは以下の10冊。 歴史編 足利将軍たちの戦国乱世(山田康弘) 「民都」大阪対「帝都」東京(原武史) 日本民俗学概論(福田アジオ・宮田登/編) ミュージック・ヒストリオグラフィー(松本直美) ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち(川本静子) ノンフィクション編 荒野へ(ジョン・クラカワー) 千葉からほとんど出ないひきこ…

  • 『心の傷を癒すということ』安克昌 阪神淡路大震災ではどのような心のケアが行われたのか

    阪神大震災で自らも罹災した精神科医 1996年刊行。筆者の安克昌(あんかつまさ)は1960年生まれの精神科医。残念ながら2000年に、肝細胞癌のため、39歳の若さで他界されている。神戸大学医学部精神神経科で助手として勤務していた1995年に阪神淡路大震災に罹災。自身も被災者でありながら、避難所等での精神医療に従事し多くの実績を残した。本書はその当時の記録を書籍化したもの。本作は第18回のサントリー学芸賞の社会・風俗部門を受賞している。 心の傷を癒すということ―神戸…365日 作者:安 克昌 作品社 Amazon 角川ソフィア文庫版は2001年に刊行されている。解説は産経新聞記者の河村直哉が書い…

  • 『50代からの人生戦略』佐藤優 いまある武器をどう生かすか

    50代をどうすごすかで人生は決まる! 2020年刊行。筆者の佐藤優(さとうまさる)は1960年生まれ。元外務省勤務で主任分析官。ロシア事情に精通し、鈴木宗男に関する一連の事件で逮捕、起訴。有罪判決を受け退職。その後作家業に転身し、多くのヒット作を生み出す。 名前だけ聞くと誰だっけ?と思われる方も多いかと思うが、書籍帯の筆者ビジュアルを見て頂ければ、インパクトの強い顔立ちなだけに「ああ、この人か」と記憶が甦ってこないだろうか。 内容はこんな感じ 焦らない、無理しない。でもあきらめない。これからの生き方は「残り時間」から考える。50代に入ってから出来ることは何があるのか。そしてすべきではないことは…

  • 『ただしい暮らし、なんてなかった』大平一枝 時間の経過で考え方も生き方も変わっていい

    暮らしを見つめ直す一冊 2021年刊行。筆者の大平一枝(おおだいらかずえ)は長野県出身の作家、ライター。「市井の生活者を独自の目線で描く」エッセイを多数書かれている方。 代表作は朝日新聞デジタルに連載されている「東京の台所」シリーズだろうか。 序文の「十年前は想像していなかったいまの自分」を読む限りでは、2011年に大平一枝が上梓した『もう、ビニール傘は買わない。』に対しての、10年後のアンサー本的な側面があるみたい。 もう、ビニール傘は買わない。 作者:大平 一枝 平凡社 Amazon 本書はWebメディアの「北欧、暮らしの道具店」「朝日新聞デジタルマガジン&w」や、婦人之友社の雑誌「かぞく…

  • 『陸の深海生物 日本の地下に住む生き物』小松貴 知られざる地下生物140種を紹介した魅惑の生物図鑑

    2023年刊行。筆者の小松貴(こまつたかし)は1982年生まれ。信州大学大学院博士課程修了、国立科学博物館協力研究員のキャリアを経て、現在は在野の昆虫学者として活躍している人物。 現在までに、以下の著作がある。 裏山の奇人:野にたゆたう博物学(2014年) 虫のすみか:生きざまは巣にあらわれる(2016年) 絶滅危惧の地味な虫たち(2018年) 昆虫学者はやめられない(2018年) ハカセは見た!!学校では教えてくれない生きもののひみつ(2018年) 陸の深海生物 日本の地下に住む生き物(2023年) また、昆虫イラストの描き手として知られる、じゅえき太郎による見開きマンガが四編収録されている…

  • 『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』三宅香帆 「言葉の発信力」を上げたい人へ

    バズったことがないあなたに お恥ずかしい話だが、Twitterを10数年、ブログを20年近くやっているが、バズりを体験したことがない。扱うテーマが地味なのか、文体や見出しの問題なのか、それとも書き手のキャラクターのせいなのか。 あなたは、Twitterやブログを書いていてバズりを体験したことがあるだろうか?増え続けるアクセス、コメントの嵐、鳴りやまない通知、わらわらと現れるアンチ(これは嫌だなあ)。アンチは勘弁してほしいけど、バズりそのものには憧れを抱く方も多いだろう。 さて、このバズりを狙うための「文章の書き方」があるとしたらどうだろう?本日ご紹介する『文芸オタクの私が教える バズる文章教室…

  • 『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』川本静子 生計のために住み込みの家庭教師となった女性たち

    中公新書版が再刊されたみすず版を読んだ 筆者の川本静子(かわもとしずこ)は1933年生まれの英文学者。津田塾大学の教授職を務め、2004年に退官。2010年に逝去されている。専門は19世紀~20世紀のイギリス文学。 『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』は1994年の刊行。最初は中公新書からの登場だった。 ガヴァネス(女家庭教師)―ヴィクトリア時代の「余った女」たち (中公新書) 作者:川本 静子 中央公論社 Amazon その後2007年にみすず書房版が刊行された。 みすず書房版の表紙に掲載されているのは、イギリスの画家リチャード・レッドグレイヴ(Richard Redgrav…

  • 『千葉からほとんど出ないひきこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』済東鉄腸 情熱と生存戦略と他者からの承認

    タイトルが長い! 2023年刊行。筆者の済東鉄腸(さいとうてっちょう)は1992年生まれの映画ライター、作家。本書の題名にある通り、ルーマニアへの渡航歴がないにもかかわらず、日本国内にてルーマニア語の小説を書き、ルーマニア人向けに発表し続けている稀有なキャリアを持つ人物だ。 文字数にして51文字。タイトル長っ。タイトルがあまりに長いので、作者的には「千葉ルー」と略している。ちなみに、表紙イラストは横山裕一(よこやまひろかず)によるもの。 刊行から三か月で一万部を突破! 2023年の3月に刊行された本作は、その内容の特異さで注目を集め、マニアックなテーマにもかかわらず、じわじわと売上を増やし。6…

  • 『インターネットというリアル』岡嶋裕史 「みんな違ってみんないい」に人は耐えられない

    現実と融合したネット社会を読み解く 2021年刊行。筆者の岡嶋裕史(おかじま ゆうし)は1972年生まれの情報学研究者で、現在は中央大学国際情報学部の教授職にある人物である。 本書は講談社のオンライン誌「クーリエ・ジャポン」、光文社のウェブメディア「本がすき」、中央大学出版部の『アジア的融和共生思想の可能性』などに掲載されていた作品をまとめたもの。 情報学についての著作が数多くあるが、『ジオン軍の失敗』のようなサブカルチャー方面の著作も上梓しており、オタク方面の知識も相応に備えた人物であることが伺える。 機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜 ジオン軍の失敗 U.C.0079 (角川コミックス…

  • 『安いニッポン 「価格」が示す停滞』中藤玲 ディズニーもダイソーも日本が世界最安値

    日本は「安い」らしい コロナ禍のため現在では見る影もないが、2019年までの日本国内は外国人観光客であふれていた。爆買いというフレーズが話題になったのも記憶に新しい。 日本もこんなにたくさんの外国人の方に来ていただけるようになったのかと、当時は驚いたものである。しかしこれらの外国人観光客は、どうして日本に来てくれるようになったのだろうか。その最大の魅力が日本の「安さ」にあったのだとしたらどうだろうか。 ディズニーもダイソーも日本が最安 日本のディズニーランドの入場料は8,200円(2021年1月時点)。これを他地域のディズニーランドと比較してみよう。 日本:8,200円 フロリダ:約14,50…

  • 『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』高橋杉雄/編著 アイデンティティをめぐる戦いには落としどころが無い

    ウクライナ戦争の終わらせ方を考える 2023年刊行。高橋杉雄(たかはしすぎお)は1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室の室長を務める人物。ウクライナ戦争がはじまってからテレビに出ずっぱりなので、ご存じの方も多いのではないかと。 本書では、高橋杉雄が第1章、第5章、終章パートを担当。他に、三人の論者が登場する。 福田潤一(ふくだじゅんいち):笹川平和財団主任研究員。第2章を担当。 福島康仁(ふくしまやすひと):防衛省防衛研究所主任研究官。第3章を担当。 大澤淳(おおさわじゅん):中曽根康弘世界平和研究所主任研究員。第4章を担当。 タイトルは『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』とあるが…

  • 『遅いインターネット』宇野常寛 21世紀の共同幻想論

    「遅い」インターネットがなぜ必要なのか 2020年刊行。筆者の宇野常寛(うのつねひろ)は1978年生まれの作家、評論家。解説は成田悠輔(なりたゆうすけ)が書いている。 遅いインターネット(NewsPicks Book) 作者:宇野 常寛 幻冬舎 Amazon 宇野常寛のデビュー作は2008年の『ゼロ年代の想像力』。こちらはゼロ年代までのアニメやドラマ、小説などのサブカルメディアをベースにゼロ年代を読み解いた評論集。取り扱う素材がサブカル(というよりはオタク寄り)であっただけに、わたしのような現代思想に縁のない人間でも何故か読んでいた一冊。こちらは、後日改めて再読してご紹介したい。 ゼロ年代の想…

  • 『自分マーケティング』川上徹也 一点突破で「その他大勢」から抜け出す九つの戦術

    人気コピーライターが説く、自分マーケティングの勧め 2018年刊行。筆者の川上徹也(かわかみてつや)は広告代理店(アサツーディ・ケイ)出身のコピーライター、作家。現在は独立し、自身が立ち上げた湘南ストーリーブランディング研究所の代表を務めている。 コストを出来るだけかかけないで、ストーリーで差別化を図るストーリーブランディングを提唱し、関連著作多数。 川上徹也の公式サイトはこちらから。 内容はこんな感じ その他大勢の中から、凡人である自分が抜け出すには何をすればいいのか?自分の商品価値を知り、いかに「一点突破」を図るべきか。そのために必要な九つの戦術と、三種の神器を伝授。会社員、フリーランス、…

  • 『日本民俗学概論』福田アジオ・宮田登/編 民俗学について学びたい初学者は読んでおきたい一冊

    民俗学に興味を持ったら読みたい一冊 1983年刊行。編者は日本民俗学の権威、福田(ふくた)アジオ、宮田登(みやたのぼる)の両名。福田アジオは1941年生まれ、そして宮田登は1936年生まれの民俗学者(2000年に物故)。 1983年と40年も前に刊行された著作だが、わたしが購入したのは2010年の第25刷と、長期に渡って読まれていることがわかる。序文を読む限り、大学の教科書として多くの方が手にして来たのだろう。 かくいうわたしも、2023年に受講した放送大学の面接授業のサブテキストとして本書を手に入れている。この世界では定番の一冊なのかもしれない。 内容はこんな感じ 柳田国男から始まる日本民俗…

  • 『悪魔の布 縞模様の歴史』ミシェル・パストゥロー ストライプをめぐる文化論

    縞模様好き必読の一冊 1993年刊行。オリジナルのフランス版の原題は『L' étoffe du diable』で1991年刊行。筆者のミシェル・パストゥローは1947年生まれのフランス人研究者。紋章学を主要な研究ジャンルとしているが、幅広い分野で活躍をしている人物である。 その後、白水社の新書レーベルである、白水uブックス版が2004年に刊行されている。この際にタイトルが『縞模様の歴史 悪魔の布』と主題と副題が入れ替わっている。 単行本版にしても、uブックス版にしても少し前の書籍なので、現在は古本で手に入れるしかないかもしれない。 縞模様の歴史―悪魔の布 (白水uブックス) 作者:ミシェル パ…

  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故 ディアトロフ峠事件の真相』ドニー・アイカー

    文庫化されたのでちょっとリライトしました。 謎に満ちたディアトロフ峠事件を描く 2018年刊行作品。オリジナルの米国版は2013年刊行。原題は「dead mountain」。筆者のドニー・アイカー(Donnie Eichar)はアメリカ人の映画プロデューサー、作家。 死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 作者:ドニー・アイカー 河出書房新社 Amazon 施川ユウキの『バーナード嬢曰く。』の五巻で、神林さんが読んでいて面白そうだったので確保してみた一冊である。 バーナード嬢曰く。: 5【イラスト特典付】 (REXコミックス) 作者:施川 ユウキ 一迅社 Amazon 河出…

  • 『デジタル・ポピュリズム』福田直子 SNSが加速する衆愚制への道

    SNS全盛時代の世論操作術 2018年刊行。筆者の福田直子はドイツ在住のジャーナリスト。 本書では、ネットが当たり前になった時代、特にSNS全盛時代のポピュリズムの危険性を指摘している。 ポピュリズムとは聞きなれない言葉かもしれないが、wikipediaから当該項目を引用してみるとこんな感じ。 ポピュリズム(英: populism)とは、一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治思想、または政治姿勢のことである。日本語では大衆主義(たいしゅうしゅぎ)や人民主義(じんみんしゅぎ)などのほか、否定的な意味を込…

  • 『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』伊東穣一 生成系AIをツールとして役立てる

    生成系AIで何が出来るのか教えてくれる 2023年刊行。筆者の伊東穣一(いとうじょういち)は1966年生まれのベンチャーキャピタリスト、起業家、作家、学者。マサチューセッツ工科大学教授、MITメディアラボ所長、ハーバード・ロースクール客員教授などを経て、現在は千葉工業大学の学長。と、非常に華々しい経歴の人物。 その他の著作としては2018年の『教養としてのテクノロジー』(書影は2023年の講談社文庫版) 〈増補版〉 教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン (講談社文庫) 作者:伊藤 穰一 講談社 Amazon 2022年の『テクノロジーが 予測する未来』がある。 テクノロジ…

  • 『足利将軍たちの戦国乱世』山田康弘 室町幕府は何故存続し、何故滅びたのか?

    応仁の乱後、七人の将軍はどう生きたか? 2023年刊行。筆者の山田康弘(やまだやすひろ)は1966年生まれの歴史学者。専門は日本中性子。現在は東京大学史料編纂所の学術専門職員。ちなみに考古学者の山田康弘(東京都立大教授)とは同姓同名の別人みたい。 その他の著作はこんな感じ。いずれも本書と同じ、室町幕府の後期将軍を取り扱っている。 戦国期室町幕府と将軍(吉川弘文館:2000年) 戦国時代の足利将軍(吉川弘文館:2011年) 足利義稙(戎光祥出版:2016年) 足利義輝・義昭(ミネルヴァ書房:2019年) 戦国期足利将軍研究の最前線(山川出版社:2020年) 内容はこんな感じ 1467年の応仁の乱…

  • 『問題はロシアより、むしろアメリカだ』池上彰×エマニュエル・トッド 第三次世界大戦に突入した世界

    対談形式でウクライナ戦争を語る 2023年刊行。日本人ジャーナリスト池上彰(いけがみあきら)と、フランス人の歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)による対談本。 対談はオンラインで行われ、三日間、計八時間に及んだとのこと。ネット上の対談で本が一冊出来てしまうのだから昨今は凄いな。基本的には池上彰が聴き手にまわり、エマニュエル・トッドが自らの思想を語る構成となっている。 内容はこんな感じ 2022年2月24日にはじまる、ロシアのウクライナ侵攻は世界を震撼させ一変させた。この戦争を我々はどうとらえるべきなのか。エマニュエル・トッドは語る。「この世界からアメリ…

  • 『これで死ぬ』羽根田治 53のアウトドア死亡事例を収録。人間は意外に簡単に死んでしまう!

    アウトドアに出る前に知って起きたい死亡事例集 2023年刊行。筆者の羽根田治(はねだおさむ)は1961年生まれのフリーライター。アウトドア関連、特に登山時の遭難をテーマとした著作を何作も上梓している。有名なのは全六作にもなる「遭難」シリーズだろう。 表紙及び、本文中のイラストは秋山貴世(あきやまたかよ)が担当している。すべての事例にイラストがセットで付いてくるのでイメージが湧きやすいのは本書の利点だと思う。 山と渓谷社の特設ページはこちら。 PR TIMESに掲載された本書のリリースはこちら。 産経新聞にレビューが掲載されていたのでこちらも紹介しておこう。 内容はこんな感じ 転倒する。滑落する…

  • 『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』服部正也 46歳で超赤字国家の経済を再建した日本人がいた

    50年売れ続けているロングセラー オリジナル版の『ルワンダ中央銀行総裁日記』は1972年刊行。同年の毎日出版文化賞の文学・芸術部門を受賞している。およそ、半世紀前。かなり昔に刊行された中公新書である。 2009年に新章が追加された「増補版」が登場し、2021年時点で13版まで売れているという人気の一冊である。NHKの記事によると累計14万部のロングセラーになっている。 この本で得られること 組織を生かすも殺すも、結局は「人」次第 途上国支援の在り方について学ぶことが出来る 内容はこんな感じ 1965年。46歳の服部正也はアフリカ、ルワンダの中央銀行総裁に任命され現地へと赴く。世界最貧国。超赤字…

  • 『ミュージック・ヒストリオグラフィー』松本直美 変わり続ける「音楽史」の謎をひも解く

    「まつもと(な)」さんが本を出した! 2023年刊行。筆者の松本直美はイギリス、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ音楽学部で上級講師を務めている人物。専門は歴史的音楽学。特にオペラ分野の研究で多くの実績を残されている方。 Twitter(現X)をされている、クラシック音楽好きの方なら「まつもと(な)」さんと書いた方がピンと来るかな。 5月30日に「ミュージックヒストリオグラフィー」と題する本を出版しました。固い本ではなく笑えるトピックをたくさん盛り込んだ「音楽史」「音楽そのもの」を斬る本です。クラシック音楽の話も多いですがクラシックなんか興味ない方に是非読んで頂きたいです。https://t.…

  • 『くもをさがす』西加奈子 コロナ禍のバンクーバーでがんになった

    西加奈子、初のノンフィクション作品 筆者の西加奈子(にしかなこ)は1977年生まれの小説家。2004年の『あおい』がデビュー作。2006年の第三作『きいろいゾウ』は2013年に映画化。2015年の『サラバ!』では直木賞を受賞し、この年の本屋大賞では第2位にランクインしている。 本日ご紹介する『くもをさがす』は2023年4月の刊行作品。西加奈子としては初のノンフィクション作品ということになる。本作は発売後6日間で10万部の重版が決定。累計20万部を突破している。ということは初版の時点で既に10万部なの?すごい!さすがは直木賞作家というところだろうか。 河出書房新社による特設サイトはこちら。各メデ…

  • 『「民都」大阪対「帝都」東京』原武史 どうして関西では私鉄王国が築かれたのか?

    サントリー学芸賞、社会・風俗部門受賞作 1998年刊行。講談社の人文学術書レーベル、選書メチエからの登場だった。 筆者の原武史(はらたけし)は1962年生まれの政治学者で、専攻は日本政治思想史。『「民都」大阪対「帝都」東京』は、1998年のサントリー学芸賞の社会・風俗部門を受賞している。 「民都」大阪対「帝都」東京 (講談社選書メチエ) 作者:原 武史 講談社 Amazon その後、二十余年の歳月を経て、講談社学術文庫版が登場した。わたしが今回読んだのはこちらの版。 内容はこんな感じ 国家(官)による鉄道事業が先行した東京とは対照的に、関西では私鉄(民)による積極的な事業展開が行われた。沿線に…

  • 『ぼけますから、よろしくお願いします。』信友直子 認知症を身近な問題として考える

    映画化もされたノンフィクション作品 2019年刊行作品。筆者の信友直子(のぶともなおこ)は1961年生まれのテレビディレクター、映像作家、映画監督。 ぼけますから、よろしくお願いします。 作者:信友 直子 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2022年に刊行されている。文庫化に伴い文庫版あとがき「ひとまずのお別れ」が追記されている。 内容はこんな感じ 87歳を迎える年の正月に母は「今年はぼけますから、よろしくお願いします」と言った。既に認知症の兆候があった母の症状は、それ以来加速度的に悪化していく。母を支えるのは95歳になろうとする父。実家を離れ、遠い東京で暮らす娘には何が出来るのか。老々介護。…

  • 『書くのがしんどい』竹村俊助 SNS時代の「伝わる文章」の書きかたを学ぶ

    ネットで情報発信を始めたい方へ 2020年刊行。筆者の竹村俊助(たけむらしゅんすけ)は1980年生まれの編集者。中経出版、星海社、ダイヤモンド社へ経て独立。SNS時代の「伝わる文章」の探求をモットーとしている方。 編集者として関わった書籍として、『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』『メモの魔力』がある。担当作品の累計部数が100万部を超えているヒットメーカーでもある。 内容はこんな感じ 自分も文章を書いてみたい。でも何を書けばいいのか分からない。文章を書いてみたけど、言いたいことがさっぱり伝わらない。まったく読んでもらえない。面白く…

  • 『読書する人だけがたどりつける場所』齋藤孝 わかりやすい言葉で読書の意義を教えてくれる一冊

    ネット全盛の時代に「本を読む」理由とは? 2019年刊行作品。筆者の齋藤孝は1960年生まれ。明治大学文学部の教授で、教育学者。非常に多くの著作があるが、代表作は 『声に出して読みたい日本語』あたりかな。 って、書いてて既視感あるなと思ったら、以前に紹介した『50歳からの孤独入門』を書いた人だった。どうりで、テイストが似ていると思った。 内容はこんな感じ 日本人の読書離れが叫ばれて久しい。しかし日本人は文字を読まなくなっているわけではない。インターネット、スマートフォンの普及により、むしろ日本人の「読む」時間は増えている可能性すらある。しかし、ネットの文字を追うだけでは決して得られない「学び」…

  • 『超効率勉強法』DaiGo 最短の時間で最大の成果を手に入れる

    DaiGoが教える勉強のノウハウ 2019年刊行。筆者のDaiGo(だいご)は1986年生まれの作家。メンタリスト。テレビ出演の機会も多いのでご存じの方も多いのではないだろうか。 初の著作は2011年の『DaiGoメンタリズム 誰とでも心を通わせることができる7つの法則~』。以後、ハイペースで執筆をつづけ、現在では30冊以上の著作がある。 図書館に行けば、自己啓発書の棚に「DaiGo」で分類されたコーナーがあるくらいで、その人気ぶりが伺える。 え?何?DaiGoって最早ジャンル??? pic.twitter.com/B7AvlqJJ8V — 原田たけし(作家すだち) (@kabosudachi…

  • 『知らないと後悔する定年後の働き方』木村勝 シニアからのキャリアは「事前にどれだけ準備したか」で決まる

    「稼いで生き残る」ためのキャリアデザイン術 2019年刊行。筆者の木村勝(きむらまさる)は1961年生まれ。新卒後、日産自動車に入り、関係各社へ出向。主として人事畑でキャリアを積まれ、その後独立起業し、現在はシニアキャリアのアドバイザーとして活躍されている人物。 少子高齢化社会の到来により、定年の延長化や、定年後の再雇用と、同じ会社で長く働ける環境は整備されつつある。しかし55歳で役職定年となる企業は多い。その後、会社から与えられる業務は、若手がやりたがらない、人手が確保しにくい単純作業的なノンコア業務ばかり……。ただ、こき使われるだけのシニア社員として甘んじるのか。そんな思いに駆られている方…

  • 『感染症の日本史』磯田道史 日本人はいかにパンデミックと対峙してきたか

    歴史から学ぶ、感染症の教訓 2020年刊行。筆者の磯田道史(いそだみちふみ)は1970年生まれの歴史学者。国際日本文化研究センターの准教授。NHKなど、テレビでの出演も多く、顔を見れば「ああこの人か」と思う方は多いのではないだろうか。 代表作としては、2003年に刊行された『武士の家計簿』になるだろうか。 武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―(新潮新書) 作者:磯田道史 新潮社 Amazon この作品は堺雅人主演、森田芳光監督でなんと映画化されているのだ(新書なのに!)。 武士の家計簿 堺 雅人 Amazon 内容はこんな感じ コレラ、天然痘(疱瘡)、麻疹、梅毒、スペイン風邪。日本史に…

  • 『国道16号線 「日本」を創った道』柳瀬博一 国道16号線をめぐる文明論

    日本最強の郊外道路の過去と未来 2020年刊行。筆者の柳瀬博一(やなせひろいち)は1964年生まれ。日経BP社で「日経ビジネス」の記者や、専門誌の編集、単行本の編集者として活躍。その後独立し、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教授職に就いている方である。 本書『国道16号線 「日本」を創った道』が、初めての単著となる。 国道16号線: 「日本」を創った道 作者:柳瀬 博一 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2023年に登場している。 音声朗読のオーディブル版は2022年に登場。ナレーターは声優の角田雄二郎(かくだゆうじろう)が担当している。 国道16号線: 「日本」を創った道 作者:…

  • 『暮らしも仕事も快適に テレワークのインテリア』 自宅に素敵なワークスペースをつくる方法

    コロナ禍の今だからこだわりたいテレワークのインテリア 2020年刊行。編著はパイ インターナショナルとなっており、刊行元会社のスタッフによる仕事なのだろうか。パイ インターナショナルは都内にある、デザインや、ビジュアル書などの出版を主に手掛けている会社である(わりとわたし好みの本が多い)。 内容はこんな感じ 「自宅オフィス」で生産性を向上させる!限られたスペースで集中力を高めるには?作業の効率を上げる収納やインテリアのコツ。日々の暮らしを大切にしながらも、ビジネスの場としての空間をいかにしてつくりあげるか?ちょっとした工夫でテレワークは楽しくなる。15人の実例を豊富な写真と共に紹介していく。 …

  • 『在宅HACKS!』小山龍介 自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方

    今すぐ使えるお役立ちテレワークノウハウ集! 2020年刊行。筆者の小山龍介(こやまりゅうすけ)は1975年生まれの実業家、コンセプトクリエイター。 大手代理店を経てMBA取得、松竹で新規事業の立案に関わり、その後独立。現在はブルームコンセプト代表取締役。名古屋商科大学の准教授を務めるなど、多彩な分野で活躍をされている方である。 内容はこんな感じ 在宅勤務は単なる働く場所の選択ではない。新しいキャリアの選択であり、人生のあり方の選択である。新型コロナウイルスの感染拡大により、企業のテレワーク対応が爆発的に推進された。ポスト・コロナ時代には働き方の大変革が起こる。筆者自身の経験から語られる、在宅勤…

  • 『日本の国境』山田吉彦 領土問題の歴史的経緯を学ぶ

    海洋問題の専門家が書いた日本の領土問題 2005年刊行。筆者の山田吉彦(やまだよしひこ)は1962年生まれ。本書の刊行当時は日本財団(日本船舶振興会)の海洋船舶部長を務めていた。その後、東海大学の海洋学部で、准教授、教授と順当にキャリアを積まれ、現在は東海大学静岡キャンパス長を務めておられる方。 日本の国境(新潮新書) 作者:山田吉彦 新潮社 Amazon 日本を巡る海洋問題、特に領土関連についての著作が多い。近著は2022年に刊行された扶桑社の『日本の領土と国境』である。 日本の領土と国境 尖閣・竹島・北方四島問題を解決する 作者:山田 吉彦 扶桑社 Amazon 内容はこんな感じ 北は択捉…

  • 『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』坂本貴志 「定年後の仕事」の実態は?

    60~80歳の「仕事の実態」は? 2022年刊行。筆者の坂本貴志(さかもとたかし)は1985年生まれの研究者、アナリスト。厚労省出身で、三菱総合研究所のエコノミストを経て、現在はリクルートワークス研究所に所属。 講談社BOOK倶楽部掲載、田中香織による本書レビュー。 内容はこんな感じ 定年後の暮らしはどうなるのか?70歳以降の年収は300万円以下が大半。月々の生活費は30万円程度。年金を考えれば本当に稼ぐべきは月額10万円程度。70歳以上の男性の就業率は45.7%。豊富な統計データをもとに、高齢者を取り巻く経済状況を明らかにし、地域社会に貢献する「小さな仕事」の意義を問う一冊。 目次 本書の構…

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