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2020/05/25

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  • 『平安貴族の仕事と昇進』井上幸治 熾烈な任官争いとブラックな環境

    貴族の仕事について知りたい方に 2023年刊行。筆者の井上幸治(いのうえこうじ)は1971年生まれ。佛教大学歴史学部の非常勤講師。京都市歴史資料館館員。その他の著作として2016年の『古代中世の文書管理と官人』がある。 ちなみに歴史文化ライブラリーは、創業安政4(1857)年!の老舗出版社、吉川弘文館(よしかわこうぶんかん)による、日本史を中心とした専門書レーベル。本書のナンバリングを見ると「570」となっており歴史の長さを感じさせる。 内容はこんな感じ 平安貴族は雅やかに恋愛を謳歌し、和歌を吟じてのんびりと過ごしていたわけではない。任官をめぐる熾烈な競争。年に二回の除目をめぐる悲喜劇。宮中で…

  • 『不安のしずめ方40のヒント』加藤諦三 人生や仕事の不安を解消する考えかた

    『テレフォン人生相談』のパーソナリティが書いた不安のしずめ方 私事で恐縮だが、コロナ対応によるテレワーク生活がかれこれ一年半になろうとしている。当初は出社しなくてよい気軽さを喜んでいたものだが、これがいざ仕事をしてみるとさまざまな問題が出てくる。 とにかくコミュニケーションがうまくいかないのだ。相手の顔が見えない、空気感がわからないから、意思の疎通が食い違っていく。誤解から相手を怒らせてしまうようなこともあった。すっかり、気が滅入ってしまい、不安になったときに出会ったのが本書である。 本書は2016年刊行。筆者の加藤諦三(かとうたいぞう)は1938年生まれ。東大卒の社会学者で、早稲田大学の名誉…

  • 『機会不平等』斎藤貴男 格差を意図的に広げていこうとする層が存在する

    「機会」の不平等を描く 2000年刊行。筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれのジャーナリスト。 機会不平等 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2004年に登場。わたしが読んだのはこちら。文庫化にあたり加筆が施されている。 機会不平等 (文春文庫 さ 31-2) 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon その後、なんと2016年に岩波現代文庫版が刊行されている。ずいぶん息の長い作品となったものである。こちらでは、経年によって変化があった部分の加筆修正に加えて、森永卓郎との対談が巻末に収録されている。 内容はこんな感じ グローバリゼーションの名の下に人知れず進行し…

  • 『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない』三宅香帆 好きなことを自分のコトバで発信しよう!

    自分のコトバでつくるオタク文章術 2023年刊行。筆者の三宅香帆(みやけかほ)は1994年生まれの書評家、作家。京都大学文学部、同大大学院修士課程、博士前期課程修了。現在は京都市立芸術大学の非常勤講師も務めている人物。 古典や文章術についての著作を多数上梓しており、本ブログでは以前に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』をご紹介している。 内容はこんな感じ アニメ、マンガ、小説、アイドル、バンド、舞台。あなたの「推し」は何ですか?SNSや、ブログで、推しについて、大好きな対象についてその愛を語りたい!でも、いざ文字にしてみると哀しいくらい何も書けない。その理由はどこにあるのか?どうすれば書…

  • 『椿井文書(つばいもんじょ)』馬部隆弘 日本最大級の偽文書の正体

    偽史が発生するメカニズムを知る 2020年刊行。筆者の馬部隆弘(ばべたかひろ)は1976年生まれの歴史学者。大阪大谷大学の准教授で、戦国期権力論、城郭史、偽文書研究で知られる人物。本書で一気に知名度があがった。やはり中公新書で出てくると影響力が大きい。 お名前は、馬「部」隆弘であって、馬「場」隆弘ではないので注意が必要である(ずっと間違って覚えてたごめんなさい)。 内容はこんな感じ 江戸時代末期、近畿一円に流布した偽文書が存在した。制作者の名は椿井政孝。系図、由来書、境内図。数百点を超える膨大な偽文書は、地域のニーズに合致したことから正史として継承され、現代にも大きな影響を与えている。椿井政孝…

  • 『中流危機』NHKスペシャル取材班 中流層没落の原因と再生のための処方箋は?

    NHKスペシャルを書籍化 2023年刊行。2022年9月に放映された「NHKスペシャル”中流危機”を超えて」をベースに、書籍としてまとめたもの。最近はこの手の、テレビで放映した内容を本にしました!的なものが多くなってきた気がする。 映像はNHKオンデマンドで現在でもみられるみたい。 “中流危機”を越えて 「第1回 企業依存を抜け出せるか」 Amazon 内容はこんな感じ 結婚できない、正社員になれない、車が買えない、趣味にお金をかける余裕がない、持ち家に住めない、旅行にも行けない。かつて「一億総中流社会」と呼ばれたのも過去の話。バブル崩壊から30年を経て、日本の中流層は見る影もなくやせ細ってし…

  • 『カルト資本主義』斎藤貴男 オカルトにハマった日本の大企業

    オカルトが支配する日本の企業社会 筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれの、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。 本書はまず、1997年に文藝春秋から単行本として上梓された。その後、2000年に文春文庫化版が刊行されている。 カルト資本主義 (文春文庫) 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon 更に、2019年に入り、ちくま文庫版が登場している。こちらは、新たに序章と最終章が新章として追加されている。 内容はこんな感じ ソニーのエスパー研究室。「永久機関」。科学技術庁のオカルト研究。「万能」微生物EM。オカルトビジネスのドン「船井幸雄」。米国政府が徹底して擁護するアムウェイ商法…

  • 『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』後藤宗明 今すぐはじめられるリスキリングの実践術

    「リスキリング」本の第二弾が登場 2023年刊行。一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事を務める後藤宗明(ごとうむねあき)二冊目の著作となる。 2002年に上梓され「読者が選ぶビジネス書グランプリ」2023年版の総合部門で第4位、更に部門賞である「イノベーション部門」を受賞した『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』の続篇とも言える内容となっている。 内容はこんな感じ リスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」である。昨今、この言葉の知名度が上がっているが、果たして個人として出来ることは何なのか?リスキリ…

  • 『勘定奉行の江戸時代』藤田覚 勘定奉行で学ぶ江戸幕府の財政史

    勘定奉行から江戸時代を読み解く 2018年刊行。筆者の藤田覚は1946年生まれ。東京大学の史料編纂所の教授を2010年に定年で退官し、現在は同大の名誉教授。専門は日本近世史。江戸時代に関する著作が20冊ほど刊行されている。 内容はこんな感じ 江戸時代に活躍した勘定奉行は、財政だけでなく、農政、交通、司法など幕府の幅広い業務を主管する重要な役職であった。求められる能力の高さから、勘定奉行は旗本だけでは人材がまかなえなかった。御家人でも実力さえあれば、たたき上げで勘定奉行に昇進できるシステムが存在していた。江戸時代の著名な勘定奉行らを紹介しつつ、時代時代における幕府の財政事情を読み解いていく一冊。…

  • 『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり 平安の格差社会を生き抜いた紫式部が『源氏物語』に込めた想い

    大塚ひかりの「源氏本」が出た! 2023年刊行。筆者の大塚ひかりは1961年生まれの古典エッセイスト。 わたしが初めて大塚作品を読んだのは草思社の『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』から。新潮新書の『女系図でみる驚きの日本史』はこのブログでも紹介している。 得意分野は平安時代、特に『源氏物語』であるようで、本書以前にも『『源氏物語』の身体測定』『源氏物語愛の渇き』『カラダで感じる源氏物語』『源氏の男はみんなサイテー 親子小説としての源氏物語』など、『源氏物語』に関する著作をいくつも書いている。 内容はこんな感じ 『源氏物語』には作者紫式部の、強い嫉妬と階級意識が反映されている。祖先は…

  • 『イスラムと仲よくなれる本』森田ルクレール優子 学校で、職場で、もし隣の席にイスラム教徒がいたら?

    小学生でも読めるイスラムの入門書 2023年刊行。筆者の森田ルクレール優子(もりた Leclerl ゆうこ)は1980年生まれ。20年程前にイスラム教に改宗。2年前(本書刊行時点)にSNSで知り合ったフランス人男性と交際ゼロ日で結婚。渡仏。夫と先妻との間に出来た子四人に加えて、自身でも四人を出産。現在は八人の子の母として多忙な日々を送りつつ、イスラム教のシンプルライフを広める専門家として活動されている方。波乱万丈すぎる。 内容はこんな感じ 日本人にはちょっと縁が遠い存在だったイスラム教。しかし近年、日本国内にも、イスラム教を信仰する外国人が居住するようになってきている。イスラム教はどんな宗教で…

  • 『大津絵』クリストフ・マルケ 江戸時代の人々に愛された庶民画の世界

    フランス人研究者による「大津絵」ガイドブック 2016年刊行。筆者のクリストフ・マルケ(Christophe Marquet)は1965年生まれ。フランス人で、日本近世・近代美術史と、出版文化史の研究者である。 オリジナルのフランス版は2015年に刊行されている。フランスで書かれたガイドブックが日本に逆輸入されているわけである。 Otsu-e : Imagerie populaire du Japon Amazon 内容はこんな感じ 江戸時代、東海道の宿場町大津で売られていた「大津絵」。無名の絵師たちによって描かれた庶民画は、旅の土産として庶民に絶大な人気を博していた。神々や仏の姿、鬼、動物、…

  • 2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

    既に2024年の1月も後半に入っている状況で、遅きに失した感が無きにしもあらずだが、恒例の〇〇年に読んで面白かった本企画をお届けしたい。 なお、あくまでも2023年に読んだ本が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご容赦を。 では、今回のラインナップは以下の10冊。 歴史編 足利将軍たちの戦国乱世(山田康弘) 「民都」大阪対「帝都」東京(原武史) 日本民俗学概論(福田アジオ・宮田登/編) ミュージック・ヒストリオグラフィー(松本直美) ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち(川本静子) ノンフィクション編 荒野へ(ジョン・クラカワー) 千葉からほとんど出ないひきこ…

  • 『心の傷を癒すということ』安克昌 阪神淡路大震災ではどのような心のケアが行われたのか

    阪神大震災で自らも罹災した精神科医 1996年刊行。筆者の安克昌(あんかつまさ)は1960年生まれの精神科医。残念ながら2000年に、肝細胞癌のため、39歳の若さで他界されている。神戸大学医学部精神神経科で助手として勤務していた1995年に阪神淡路大震災に罹災。自身も被災者でありながら、避難所等での精神医療に従事し多くの実績を残した。本書はその当時の記録を書籍化したもの。本作は第18回のサントリー学芸賞の社会・風俗部門を受賞している。 心の傷を癒すということ―神戸…365日 作者:安 克昌 作品社 Amazon 角川ソフィア文庫版は2001年に刊行されている。解説は産経新聞記者の河村直哉が書い…

  • 『50代からの人生戦略』佐藤優 いまある武器をどう生かすか

    50代をどうすごすかで人生は決まる! 2020年刊行。筆者の佐藤優(さとうまさる)は1960年生まれ。元外務省勤務で主任分析官。ロシア事情に精通し、鈴木宗男に関する一連の事件で逮捕、起訴。有罪判決を受け退職。その後作家業に転身し、多くのヒット作を生み出す。 名前だけ聞くと誰だっけ?と思われる方も多いかと思うが、書籍帯の筆者ビジュアルを見て頂ければ、インパクトの強い顔立ちなだけに「ああ、この人か」と記憶が甦ってこないだろうか。 内容はこんな感じ 焦らない、無理しない。でもあきらめない。これからの生き方は「残り時間」から考える。50代に入ってから出来ることは何があるのか。そしてすべきではないことは…

  • 『ただしい暮らし、なんてなかった』大平一枝 時間の経過で考え方も生き方も変わっていい

    暮らしを見つめ直す一冊 2021年刊行。筆者の大平一枝(おおだいらかずえ)は長野県出身の作家、ライター。「市井の生活者を独自の目線で描く」エッセイを多数書かれている方。 代表作は朝日新聞デジタルに連載されている「東京の台所」シリーズだろうか。 序文の「十年前は想像していなかったいまの自分」を読む限りでは、2011年に大平一枝が上梓した『もう、ビニール傘は買わない。』に対しての、10年後のアンサー本的な側面があるみたい。 もう、ビニール傘は買わない。 作者:大平 一枝 平凡社 Amazon 本書はWebメディアの「北欧、暮らしの道具店」「朝日新聞デジタルマガジン&w」や、婦人之友社の雑誌「かぞく…

  • 『陸の深海生物 日本の地下に住む生き物』小松貴 知られざる地下生物140種を紹介した魅惑の生物図鑑

    2023年刊行。筆者の小松貴(こまつたかし)は1982年生まれ。信州大学大学院博士課程修了、国立科学博物館協力研究員のキャリアを経て、現在は在野の昆虫学者として活躍している人物。 現在までに、以下の著作がある。 裏山の奇人:野にたゆたう博物学(2014年) 虫のすみか:生きざまは巣にあらわれる(2016年) 絶滅危惧の地味な虫たち(2018年) 昆虫学者はやめられない(2018年) ハカセは見た!!学校では教えてくれない生きもののひみつ(2018年) 陸の深海生物 日本の地下に住む生き物(2023年) また、昆虫イラストの描き手として知られる、じゅえき太郎による見開きマンガが四編収録されている…

  • 『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』三宅香帆 「言葉の発信力」を上げたい人へ

    バズったことがないあなたに お恥ずかしい話だが、Twitterを10数年、ブログを20年近くやっているが、バズりを体験したことがない。扱うテーマが地味なのか、文体や見出しの問題なのか、それとも書き手のキャラクターのせいなのか。 あなたは、Twitterやブログを書いていてバズりを体験したことがあるだろうか?増え続けるアクセス、コメントの嵐、鳴りやまない通知、わらわらと現れるアンチ(これは嫌だなあ)。アンチは勘弁してほしいけど、バズりそのものには憧れを抱く方も多いだろう。 さて、このバズりを狙うための「文章の書き方」があるとしたらどうだろう?本日ご紹介する『文芸オタクの私が教える バズる文章教室…

  • 『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』川本静子 生計のために住み込みの家庭教師となった女性たち

    中公新書版が再刊されたみすず版を読んだ 筆者の川本静子(かわもとしずこ)は1933年生まれの英文学者。津田塾大学の教授職を務め、2004年に退官。2010年に逝去されている。専門は19世紀~20世紀のイギリス文学。 『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』は1994年の刊行。最初は中公新書からの登場だった。 ガヴァネス(女家庭教師)―ヴィクトリア時代の「余った女」たち (中公新書) 作者:川本 静子 中央公論社 Amazon その後2007年にみすず書房版が刊行された。 みすず書房版の表紙に掲載されているのは、イギリスの画家リチャード・レッドグレイヴ(Richard Redgrav…

  • 『千葉からほとんど出ないひきこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』済東鉄腸 情熱と生存戦略と他者からの承認

    タイトルが長い! 2023年刊行。筆者の済東鉄腸(さいとうてっちょう)は1992年生まれの映画ライター、作家。本書の題名にある通り、ルーマニアへの渡航歴がないにもかかわらず、日本国内にてルーマニア語の小説を書き、ルーマニア人向けに発表し続けている稀有なキャリアを持つ人物だ。 文字数にして51文字。タイトル長っ。タイトルがあまりに長いので、作者的には「千葉ルー」と略している。ちなみに、表紙イラストは横山裕一(よこやまひろかず)によるもの。 刊行から三か月で一万部を突破! 2023年の3月に刊行された本作は、その内容の特異さで注目を集め、マニアックなテーマにもかかわらず、じわじわと売上を増やし。6…

  • 『インターネットというリアル』岡嶋裕史 「みんな違ってみんないい」に人は耐えられない

    現実と融合したネット社会を読み解く 2021年刊行。筆者の岡嶋裕史(おかじま ゆうし)は1972年生まれの情報学研究者で、現在は中央大学国際情報学部の教授職にある人物である。 本書は講談社のオンライン誌「クーリエ・ジャポン」、光文社のウェブメディア「本がすき」、中央大学出版部の『アジア的融和共生思想の可能性』などに掲載されていた作品をまとめたもの。 情報学についての著作が数多くあるが、『ジオン軍の失敗』のようなサブカルチャー方面の著作も上梓しており、オタク方面の知識も相応に備えた人物であることが伺える。 機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜 ジオン軍の失敗 U.C.0079 (角川コミックス…

  • 『安いニッポン 「価格」が示す停滞』中藤玲 ディズニーもダイソーも日本が世界最安値

    日本は「安い」らしい コロナ禍のため現在では見る影もないが、2019年までの日本国内は外国人観光客であふれていた。爆買いというフレーズが話題になったのも記憶に新しい。 日本もこんなにたくさんの外国人の方に来ていただけるようになったのかと、当時は驚いたものである。しかしこれらの外国人観光客は、どうして日本に来てくれるようになったのだろうか。その最大の魅力が日本の「安さ」にあったのだとしたらどうだろうか。 ディズニーもダイソーも日本が最安 日本のディズニーランドの入場料は8,200円(2021年1月時点)。これを他地域のディズニーランドと比較してみよう。 日本:8,200円 フロリダ:約14,50…

  • 『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』高橋杉雄/編著 アイデンティティをめぐる戦いには落としどころが無い

    ウクライナ戦争の終わらせ方を考える 2023年刊行。高橋杉雄(たかはしすぎお)は1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室の室長を務める人物。ウクライナ戦争がはじまってからテレビに出ずっぱりなので、ご存じの方も多いのではないかと。 本書では、高橋杉雄が第1章、第5章、終章パートを担当。他に、三人の論者が登場する。 福田潤一(ふくだじゅんいち):笹川平和財団主任研究員。第2章を担当。 福島康仁(ふくしまやすひと):防衛省防衛研究所主任研究官。第3章を担当。 大澤淳(おおさわじゅん):中曽根康弘世界平和研究所主任研究員。第4章を担当。 タイトルは『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』とあるが…

  • 『遅いインターネット』宇野常寛 21世紀の共同幻想論

    「遅い」インターネットがなぜ必要なのか 2020年刊行。筆者の宇野常寛(うのつねひろ)は1978年生まれの作家、評論家。解説は成田悠輔(なりたゆうすけ)が書いている。 遅いインターネット(NewsPicks Book) 作者:宇野 常寛 幻冬舎 Amazon 宇野常寛のデビュー作は2008年の『ゼロ年代の想像力』。こちらはゼロ年代までのアニメやドラマ、小説などのサブカルメディアをベースにゼロ年代を読み解いた評論集。取り扱う素材がサブカル(というよりはオタク寄り)であっただけに、わたしのような現代思想に縁のない人間でも何故か読んでいた一冊。こちらは、後日改めて再読してご紹介したい。 ゼロ年代の想…

  • 『自分マーケティング』川上徹也 一点突破で「その他大勢」から抜け出す九つの戦術

    人気コピーライターが説く、自分マーケティングの勧め 2018年刊行。筆者の川上徹也(かわかみてつや)は広告代理店(アサツーディ・ケイ)出身のコピーライター、作家。現在は独立し、自身が立ち上げた湘南ストーリーブランディング研究所の代表を務めている。 コストを出来るだけかかけないで、ストーリーで差別化を図るストーリーブランディングを提唱し、関連著作多数。 川上徹也の公式サイトはこちらから。 内容はこんな感じ その他大勢の中から、凡人である自分が抜け出すには何をすればいいのか?自分の商品価値を知り、いかに「一点突破」を図るべきか。そのために必要な九つの戦術と、三種の神器を伝授。会社員、フリーランス、…

  • 『日本民俗学概論』福田アジオ・宮田登/編 民俗学について学びたい初学者は読んでおきたい一冊

    民俗学に興味を持ったら読みたい一冊 1983年刊行。編者は日本民俗学の権威、福田(ふくた)アジオ、宮田登(みやたのぼる)の両名。福田アジオは1941年生まれ、そして宮田登は1936年生まれの民俗学者(2000年に物故)。 1983年と40年も前に刊行された著作だが、わたしが購入したのは2010年の第25刷と、長期に渡って読まれていることがわかる。序文を読む限り、大学の教科書として多くの方が手にして来たのだろう。 かくいうわたしも、2023年に受講した放送大学の面接授業のサブテキストとして本書を手に入れている。この世界では定番の一冊なのかもしれない。 内容はこんな感じ 柳田国男から始まる日本民俗…

  • 『悪魔の布 縞模様の歴史』ミシェル・パストゥロー ストライプをめぐる文化論

    縞模様好き必読の一冊 1993年刊行。オリジナルのフランス版の原題は『L' étoffe du diable』で1991年刊行。筆者のミシェル・パストゥローは1947年生まれのフランス人研究者。紋章学を主要な研究ジャンルとしているが、幅広い分野で活躍をしている人物である。 その後、白水社の新書レーベルである、白水uブックス版が2004年に刊行されている。この際にタイトルが『縞模様の歴史 悪魔の布』と主題と副題が入れ替わっている。 単行本版にしても、uブックス版にしても少し前の書籍なので、現在は古本で手に入れるしかないかもしれない。 縞模様の歴史―悪魔の布 (白水uブックス) 作者:ミシェル パ…

  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故 ディアトロフ峠事件の真相』ドニー・アイカー

    文庫化されたのでちょっとリライトしました。 謎に満ちたディアトロフ峠事件を描く 2018年刊行作品。オリジナルの米国版は2013年刊行。原題は「dead mountain」。筆者のドニー・アイカー(Donnie Eichar)はアメリカ人の映画プロデューサー、作家。 死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 作者:ドニー・アイカー 河出書房新社 Amazon 施川ユウキの『バーナード嬢曰く。』の五巻で、神林さんが読んでいて面白そうだったので確保してみた一冊である。 バーナード嬢曰く。: 5【イラスト特典付】 (REXコミックス) 作者:施川 ユウキ 一迅社 Amazon 河出…

  • 『デジタル・ポピュリズム』福田直子 SNSが加速する衆愚制への道

    SNS全盛時代の世論操作術 2018年刊行。筆者の福田直子はドイツ在住のジャーナリスト。 本書では、ネットが当たり前になった時代、特にSNS全盛時代のポピュリズムの危険性を指摘している。 ポピュリズムとは聞きなれない言葉かもしれないが、wikipediaから当該項目を引用してみるとこんな感じ。 ポピュリズム(英: populism)とは、一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治思想、または政治姿勢のことである。日本語では大衆主義(たいしゅうしゅぎ)や人民主義(じんみんしゅぎ)などのほか、否定的な意味を込…

  • 『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』伊東穣一 生成系AIをツールとして役立てる

    生成系AIで何が出来るのか教えてくれる 2023年刊行。筆者の伊東穣一(いとうじょういち)は1966年生まれのベンチャーキャピタリスト、起業家、作家、学者。マサチューセッツ工科大学教授、MITメディアラボ所長、ハーバード・ロースクール客員教授などを経て、現在は千葉工業大学の学長。と、非常に華々しい経歴の人物。 その他の著作としては2018年の『教養としてのテクノロジー』(書影は2023年の講談社文庫版) 〈増補版〉 教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン (講談社文庫) 作者:伊藤 穰一 講談社 Amazon 2022年の『テクノロジーが 予測する未来』がある。 テクノロジ…

  • 『足利将軍たちの戦国乱世』山田康弘 室町幕府は何故存続し、何故滅びたのか?

    応仁の乱後、七人の将軍はどう生きたか? 2023年刊行。筆者の山田康弘(やまだやすひろ)は1966年生まれの歴史学者。専門は日本中性子。現在は東京大学史料編纂所の学術専門職員。ちなみに考古学者の山田康弘(東京都立大教授)とは同姓同名の別人みたい。 その他の著作はこんな感じ。いずれも本書と同じ、室町幕府の後期将軍を取り扱っている。 戦国期室町幕府と将軍(吉川弘文館:2000年) 戦国時代の足利将軍(吉川弘文館:2011年) 足利義稙(戎光祥出版:2016年) 足利義輝・義昭(ミネルヴァ書房:2019年) 戦国期足利将軍研究の最前線(山川出版社:2020年) 内容はこんな感じ 1467年の応仁の乱…

  • 『問題はロシアより、むしろアメリカだ』池上彰×エマニュエル・トッド 第三次世界大戦に突入した世界

    対談形式でウクライナ戦争を語る 2023年刊行。日本人ジャーナリスト池上彰(いけがみあきら)と、フランス人の歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)による対談本。 対談はオンラインで行われ、三日間、計八時間に及んだとのこと。ネット上の対談で本が一冊出来てしまうのだから昨今は凄いな。基本的には池上彰が聴き手にまわり、エマニュエル・トッドが自らの思想を語る構成となっている。 内容はこんな感じ 2022年2月24日にはじまる、ロシアのウクライナ侵攻は世界を震撼させ一変させた。この戦争を我々はどうとらえるべきなのか。エマニュエル・トッドは語る。「この世界からアメリ…

  • 『これで死ぬ』羽根田治 53のアウトドア死亡事例を収録。人間は意外に簡単に死んでしまう!

    アウトドアに出る前に知って起きたい死亡事例集 2023年刊行。筆者の羽根田治(はねだおさむ)は1961年生まれのフリーライター。アウトドア関連、特に登山時の遭難をテーマとした著作を何作も上梓している。有名なのは全六作にもなる「遭難」シリーズだろう。 表紙及び、本文中のイラストは秋山貴世(あきやまたかよ)が担当している。すべての事例にイラストがセットで付いてくるのでイメージが湧きやすいのは本書の利点だと思う。 山と渓谷社の特設ページはこちら。 PR TIMESに掲載された本書のリリースはこちら。 産経新聞にレビューが掲載されていたのでこちらも紹介しておこう。 内容はこんな感じ 転倒する。滑落する…

  • 『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』服部正也 46歳で超赤字国家の経済を再建した日本人がいた

    50年売れ続けているロングセラー オリジナル版の『ルワンダ中央銀行総裁日記』は1972年刊行。同年の毎日出版文化賞の文学・芸術部門を受賞している。およそ、半世紀前。かなり昔に刊行された中公新書である。 2009年に新章が追加された「増補版」が登場し、2021年時点で13版まで売れているという人気の一冊である。NHKの記事によると累計14万部のロングセラーになっている。 この本で得られること 組織を生かすも殺すも、結局は「人」次第 途上国支援の在り方について学ぶことが出来る 内容はこんな感じ 1965年。46歳の服部正也はアフリカ、ルワンダの中央銀行総裁に任命され現地へと赴く。世界最貧国。超赤字…

  • 『ミュージック・ヒストリオグラフィー』松本直美 変わり続ける「音楽史」の謎をひも解く

    「まつもと(な)」さんが本を出した! 2023年刊行。筆者の松本直美はイギリス、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ音楽学部で上級講師を務めている人物。専門は歴史的音楽学。特にオペラ分野の研究で多くの実績を残されている方。 Twitter(現X)をされている、クラシック音楽好きの方なら「まつもと(な)」さんと書いた方がピンと来るかな。 5月30日に「ミュージックヒストリオグラフィー」と題する本を出版しました。固い本ではなく笑えるトピックをたくさん盛り込んだ「音楽史」「音楽そのもの」を斬る本です。クラシック音楽の話も多いですがクラシックなんか興味ない方に是非読んで頂きたいです。https://t.…

  • 『くもをさがす』西加奈子 コロナ禍のバンクーバーでがんになった

    西加奈子、初のノンフィクション作品 筆者の西加奈子(にしかなこ)は1977年生まれの小説家。2004年の『あおい』がデビュー作。2006年の第三作『きいろいゾウ』は2013年に映画化。2015年の『サラバ!』では直木賞を受賞し、この年の本屋大賞では第2位にランクインしている。 本日ご紹介する『くもをさがす』は2023年4月の刊行作品。西加奈子としては初のノンフィクション作品ということになる。本作は発売後6日間で10万部の重版が決定。累計20万部を突破している。ということは初版の時点で既に10万部なの?すごい!さすがは直木賞作家というところだろうか。 河出書房新社による特設サイトはこちら。各メデ…

  • 『「民都」大阪対「帝都」東京』原武史 どうして関西では私鉄王国が築かれたのか?

    サントリー学芸賞、社会・風俗部門受賞作 1998年刊行。講談社の人文学術書レーベル、選書メチエからの登場だった。 筆者の原武史(はらたけし)は1962年生まれの政治学者で、専攻は日本政治思想史。『「民都」大阪対「帝都」東京』は、1998年のサントリー学芸賞の社会・風俗部門を受賞している。 「民都」大阪対「帝都」東京 (講談社選書メチエ) 作者:原 武史 講談社 Amazon その後、二十余年の歳月を経て、講談社学術文庫版が登場した。わたしが今回読んだのはこちらの版。 内容はこんな感じ 国家(官)による鉄道事業が先行した東京とは対照的に、関西では私鉄(民)による積極的な事業展開が行われた。沿線に…

  • 『ぼけますから、よろしくお願いします。』信友直子 認知症を身近な問題として考える

    映画化もされたノンフィクション作品 2019年刊行作品。筆者の信友直子(のぶともなおこ)は1961年生まれのテレビディレクター、映像作家、映画監督。 ぼけますから、よろしくお願いします。 作者:信友 直子 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2022年に刊行されている。文庫化に伴い文庫版あとがき「ひとまずのお別れ」が追記されている。 内容はこんな感じ 87歳を迎える年の正月に母は「今年はぼけますから、よろしくお願いします」と言った。既に認知症の兆候があった母の症状は、それ以来加速度的に悪化していく。母を支えるのは95歳になろうとする父。実家を離れ、遠い東京で暮らす娘には何が出来るのか。老々介護。…

  • 『書くのがしんどい』竹村俊助 SNS時代の「伝わる文章」の書きかたを学ぶ

    ネットで情報発信を始めたい方へ 2020年刊行。筆者の竹村俊助(たけむらしゅんすけ)は1980年生まれの編集者。中経出版、星海社、ダイヤモンド社へ経て独立。SNS時代の「伝わる文章」の探求をモットーとしている方。 編集者として関わった書籍として、『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』『メモの魔力』がある。担当作品の累計部数が100万部を超えているヒットメーカーでもある。 内容はこんな感じ 自分も文章を書いてみたい。でも何を書けばいいのか分からない。文章を書いてみたけど、言いたいことがさっぱり伝わらない。まったく読んでもらえない。面白く…

  • 『読書する人だけがたどりつける場所』齋藤孝 わかりやすい言葉で読書の意義を教えてくれる一冊

    ネット全盛の時代に「本を読む」理由とは? 2019年刊行作品。筆者の齋藤孝は1960年生まれ。明治大学文学部の教授で、教育学者。非常に多くの著作があるが、代表作は 『声に出して読みたい日本語』あたりかな。 って、書いてて既視感あるなと思ったら、以前に紹介した『50歳からの孤独入門』を書いた人だった。どうりで、テイストが似ていると思った。 内容はこんな感じ 日本人の読書離れが叫ばれて久しい。しかし日本人は文字を読まなくなっているわけではない。インターネット、スマートフォンの普及により、むしろ日本人の「読む」時間は増えている可能性すらある。しかし、ネットの文字を追うだけでは決して得られない「学び」…

  • 『超効率勉強法』DaiGo 最短の時間で最大の成果を手に入れる

    DaiGoが教える勉強のノウハウ 2019年刊行。筆者のDaiGo(だいご)は1986年生まれの作家。メンタリスト。テレビ出演の機会も多いのでご存じの方も多いのではないだろうか。 初の著作は2011年の『DaiGoメンタリズム 誰とでも心を通わせることができる7つの法則~』。以後、ハイペースで執筆をつづけ、現在では30冊以上の著作がある。 図書館に行けば、自己啓発書の棚に「DaiGo」で分類されたコーナーがあるくらいで、その人気ぶりが伺える。 え?何?DaiGoって最早ジャンル??? pic.twitter.com/B7AvlqJJ8V — 原田たけし(作家すだち) (@kabosudachi…

  • 『知らないと後悔する定年後の働き方』木村勝 シニアからのキャリアは「事前にどれだけ準備したか」で決まる

    「稼いで生き残る」ためのキャリアデザイン術 2019年刊行。筆者の木村勝(きむらまさる)は1961年生まれ。新卒後、日産自動車に入り、関係各社へ出向。主として人事畑でキャリアを積まれ、その後独立起業し、現在はシニアキャリアのアドバイザーとして活躍されている人物。 少子高齢化社会の到来により、定年の延長化や、定年後の再雇用と、同じ会社で長く働ける環境は整備されつつある。しかし55歳で役職定年となる企業は多い。その後、会社から与えられる業務は、若手がやりたがらない、人手が確保しにくい単純作業的なノンコア業務ばかり……。ただ、こき使われるだけのシニア社員として甘んじるのか。そんな思いに駆られている方…

  • 『感染症の日本史』磯田道史 日本人はいかにパンデミックと対峙してきたか

    歴史から学ぶ、感染症の教訓 2020年刊行。筆者の磯田道史(いそだみちふみ)は1970年生まれの歴史学者。国際日本文化研究センターの准教授。NHKなど、テレビでの出演も多く、顔を見れば「ああこの人か」と思う方は多いのではないだろうか。 代表作としては、2003年に刊行された『武士の家計簿』になるだろうか。 武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―(新潮新書) 作者:磯田道史 新潮社 Amazon この作品は堺雅人主演、森田芳光監督でなんと映画化されているのだ(新書なのに!)。 武士の家計簿 堺 雅人 Amazon 内容はこんな感じ コレラ、天然痘(疱瘡)、麻疹、梅毒、スペイン風邪。日本史に…

  • 『国道16号線 「日本」を創った道』柳瀬博一 国道16号線をめぐる文明論

    日本最強の郊外道路の過去と未来 2020年刊行。筆者の柳瀬博一(やなせひろいち)は1964年生まれ。日経BP社で「日経ビジネス」の記者や、専門誌の編集、単行本の編集者として活躍。その後独立し、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教授職に就いている方である。 本書『国道16号線 「日本」を創った道』が、初めての単著となる。 国道16号線: 「日本」を創った道 作者:柳瀬 博一 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2023年に登場している。 音声朗読のオーディブル版は2022年に登場。ナレーターは声優の角田雄二郎(かくだゆうじろう)が担当している。 国道16号線: 「日本」を創った道 作者:…

  • 『暮らしも仕事も快適に テレワークのインテリア』 自宅に素敵なワークスペースをつくる方法

    コロナ禍の今だからこだわりたいテレワークのインテリア 2020年刊行。編著はパイ インターナショナルとなっており、刊行元会社のスタッフによる仕事なのだろうか。パイ インターナショナルは都内にある、デザインや、ビジュアル書などの出版を主に手掛けている会社である(わりとわたし好みの本が多い)。 内容はこんな感じ 「自宅オフィス」で生産性を向上させる!限られたスペースで集中力を高めるには?作業の効率を上げる収納やインテリアのコツ。日々の暮らしを大切にしながらも、ビジネスの場としての空間をいかにしてつくりあげるか?ちょっとした工夫でテレワークは楽しくなる。15人の実例を豊富な写真と共に紹介していく。 …

  • 『在宅HACKS!』小山龍介 自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方

    今すぐ使えるお役立ちテレワークノウハウ集! 2020年刊行。筆者の小山龍介(こやまりゅうすけ)は1975年生まれの実業家、コンセプトクリエイター。 大手代理店を経てMBA取得、松竹で新規事業の立案に関わり、その後独立。現在はブルームコンセプト代表取締役。名古屋商科大学の准教授を務めるなど、多彩な分野で活躍をされている方である。 内容はこんな感じ 在宅勤務は単なる働く場所の選択ではない。新しいキャリアの選択であり、人生のあり方の選択である。新型コロナウイルスの感染拡大により、企業のテレワーク対応が爆発的に推進された。ポスト・コロナ時代には働き方の大変革が起こる。筆者自身の経験から語られる、在宅勤…

  • 『日本の国境』山田吉彦 領土問題の歴史的経緯を学ぶ

    海洋問題の専門家が書いた日本の領土問題 2005年刊行。筆者の山田吉彦(やまだよしひこ)は1962年生まれ。本書の刊行当時は日本財団(日本船舶振興会)の海洋船舶部長を務めていた。その後、東海大学の海洋学部で、准教授、教授と順当にキャリアを積まれ、現在は東海大学静岡キャンパス長を務めておられる方。 日本の国境(新潮新書) 作者:山田吉彦 新潮社 Amazon 日本を巡る海洋問題、特に領土関連についての著作が多い。近著は2022年に刊行された扶桑社の『日本の領土と国境』である。 日本の領土と国境 尖閣・竹島・北方四島問題を解決する 作者:山田 吉彦 扶桑社 Amazon 内容はこんな感じ 北は択捉…

  • 『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』坂本貴志 「定年後の仕事」の実態は?

    60~80歳の「仕事の実態」は? 2022年刊行。筆者の坂本貴志(さかもとたかし)は1985年生まれの研究者、アナリスト。厚労省出身で、三菱総合研究所のエコノミストを経て、現在はリクルートワークス研究所に所属。 講談社BOOK倶楽部掲載、田中香織による本書レビュー。 内容はこんな感じ 定年後の暮らしはどうなるのか?70歳以降の年収は300万円以下が大半。月々の生活費は30万円程度。年金を考えれば本当に稼ぐべきは月額10万円程度。70歳以上の男性の就業率は45.7%。豊富な統計データをもとに、高齢者を取り巻く経済状況を明らかにし、地域社会に貢献する「小さな仕事」の意義を問う一冊。 目次 本書の構…

  • 『東京の地霊(ゲニウス・ロキ)』鈴木博之 歴史的因縁が土地にもたらすもの

    サントリー学芸賞受賞作品 筆者の鈴木博之(すずきひろゆき)は建築史家。東京大学や、青山大学の教授を歴任。東大の名誉教授にもなり、2014年に68歳で亡くなっている。 東京の「地霊(ゲニウス・ロキ)」 作者:鈴木 博之 文藝春秋 Amazon 本作は1990年に文芸春秋社から刊行され、サントリーが主催する学術賞、サントリー学芸賞を受賞している。文春文庫版は1998年に登場。 東京の「地霊(ゲニウス・ロキ)」 (文春文庫) 作者:鈴木 博之 文藝春秋 Amazon その後、2009年にちくま学芸文庫版が登場した。これなら最近でもまだ探せばあるかもしれない。わたしが読んだのもこちらの版である。 内容…

  • 『働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書』木村勝 シニアのための「選択」と「準備」のポイント

    定年後のキャリアが気になり始めたあなたへ 2017年刊行。筆者の木村勝(きむらまさる)は1961年生まれ。新卒後、日産自動車に入り、関係各社へ出向。主として人事畑でキャリアを積まれ、その後独立起業し、現在はシニアキャリアのアドバイザーとして活躍されている人物。 2019年には本書の続編とも言える『知らないと後悔する定年後の働き方』を上梓。こちらも実はすでに既読なので、後日感想をアップする予定。 知らないと後悔する定年後の働き方 (フォレスト2545新書) 作者:木村勝 フォレスト出版 Amazon 内容はこんな感じ 90年は生きるとされている現代人。定年後の人生もまだまだ長い。年金と貯金だけで…

  • 『幸福な監視国家・中国』梶谷懐・高口康太 最新事情から考える監視社会の行く末

    中国の最新事情から考えるこれからの監視社会 2019年刊行。本書は、梶谷懐(かじたにかい)、高口康太(たかぐちこうた)の二名体制で執筆されている。梶谷懐は1970年生まれ。神戸大学大学院の教授。現代中国経済に関する著作がいくつかある。一方の、高口康太は1976年生まれのライター、翻訳者、ジャーナリスト。中国のネット社会に詳しい人物である。 本書は全七章で構成されているが、そのうち第一章と第五~七章を梶谷懐が担当し、第二~四章を高口康太が担当している。高口パートでは、中国の最新事例が紹介され、それを元に梶谷パートで考察を深めていく形式を取っている。 内容はこんな感じ 世界屈指のIT大国として独走…

  • 『教養としてのAI講義』メラニー・ミッチェル ビジネスパーソンも知っておくべき「人工知能」の基礎知識

    知っておきたいAI(人工知能)の基礎知識 2021年刊行。オリジナルの米国版は2020年に刊行されており、原題「Artificial Intelligence: A Guide for Thinking Humans」。直訳すると「考える人間のための人工知能ガイド」といった感じか。邦訳版はずいぶんと俗なタイトルにされてしまった感がある。でも、こうした方が売れるんだろうなあ。 作者のメラニー・ミッチェル(Melanie Mitchell)はアメリカ人のコンピューター科学研究者。ポートランド州立大学教授、およびサンタフェ研究所の客員教授。認知科学者と知られる、ダグラス・ホフスタッター(Dougla…

  • 『下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち』内田樹 合理的な判断として「下流」を選ぶ

    内田樹の「下流」論 2007年刊行。2005年の6月に行われた講演をベースに、加筆修正の上で単行本に書き起こしたもの。筆者の内田樹(うちだたつる)は1950年生まれ。東大卒で専攻はフランス現代思想。映画論。武道論。現在は神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学人文学部客員教授。 下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち 作者:内田 樹 講談社 Amazon 講談社文庫版は2009年に刊行されている。 内容はこんな感じ 格差社会という言葉を日常的に聞くようになってしまった現代の日本。リスク社会は大量の弱者を生産し続ける。その中で、若者たちの学びからの逃走、労働からの逃走は深刻な社会問題となっ…

  • 『戦争とデザイン』松田行正 その企みに騙されるな

    戦争プロパガンダを読み解くシリーズの最新刊 2022年刊行。筆者の松田行正(まつだゆきまさ)は1948年生まれのグラフィックデザイナ、作家、出版経営者。 戦争とデザインについて論じてきた一連の著作の、総まとめとも言えるのが本書といえるだろうか。過去の関連作品はこちら。 『RED ヒトラーのデザイン』(2017年) 『HATE! 真実の敵は憎悪である。』(2018年) 『独裁者のデザイン ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法』(2019年) 『戦争とデザイン』(2023年) 本ブログでは、過去に同じ作者の『独裁者のデザイン』をご紹介している。 松田行正は、他にもデザインに関する多くの…

  • 『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむださんの初書籍

    社会人のたしなみとして知っておきたい「ハロー効果」 2018年刊行。人気ブログ「分裂勘違い君劇場」のふろむださんの初書籍。 美男美女に生まれるだけで人生の難易度は下がる。有名大学を卒業しているだけで「デキル男」だと思われてしまう。思考の錯覚は、知らず知らずのうちに人間の判断を歪めている。 一つの属性が優れているだけで、全体についても優良であると誤認してしまう。ハロー効果について書かれた一冊である。 Amazonのレビューをつらつら見ていると、ハロー効果を知らなかった人はみんな目から鱗が落ちまくっている反面、既知の人間からは内容が薄い、物足りないという指摘が目につく。それ故に、本書はハロー効果っ…

  • 放送大学二年目二学期、単位認定試験を受けてきました

    放送大学二年目が無事終了 既に試験期間も経過し、成績発表もされてしまったので遅きに失した感がありますが、放送大学の二年目が無事に終わったので、恒例の振り返り記事を書くことにしました。 過去のまとめはこちら(カッコ内は履修科目ね)。 一年目一学期(情報学のとびら/情報・メディアと法/日本語アカデミックライティング/小学校プログラミング教育概論) 一年目二学期(身近な統計/日本語リテラシー/初歩からの数学/社会調査の基礎/生活環境情報の表現/演習初歩からの数学/情報ネットワーク) 二年目一学期(社会統計学入門/Webのしくみと応用/AIシステムと人・社会との関係/表計算プログラミングの基礎/日本語…

  • 『放送禁止歌』森達也 規制しているのは誰なのか?

    放送を禁止されている歌がある! 2000年刊行。筆者の森達也(もりたつや)は1956年生まれ。社会派のドキュメンタリーを得意とするノンフィクション系の映像ディレクター。ノンフィクション作家でもある。 なお、本書の監修はなんとデーブ・スペクターが行っている。 放送禁止歌 作者:森 達也 解放出版社 Amazon 2003年に光文社のノンフィクション系レーベル、知恵の森文庫より文庫版が登場している。 内容はこんな感じ 世の中には放送が自主規制されている歌が存在する。岡林信康『手紙』、赤い鳥『竹田の子守唄』、泉谷しげる『戦争小唄』、高田渡『自衛隊に入ろう』。これらの楽曲はいかなる理由で放送が出来なく…

  • 『50代、家のことで困ってます』長谷川高 50代ならではの「家」の悩みを解決します

    2022年刊行。筆者の長谷川高(はせがわたかし)は1963年生まれ。リクルートコスモス出身の不動産コンサルタント。住宅購入や、不動産投資についての著作多数。 代表作である『家を買いたくなったら』は2006年刊行。その後、2011年の新版、2019年の令和版と何度も改訂版が出るほどのロングセラー書籍となっている。 家を買いたくなったら 令和版 作者:長谷川高 WAVE出版 Amazon 一方、聴き手の藤原千尋(ふじわらちひろ)は1967年生まれのライター、編集者。『ちょこボラ!―今すぐはじめられる、お手軽ボランティア』『フェアトレード@Life』『犬を飼いたくなったら』などの著作がある。 内容は…

  • 『独裁者のデザイン ヒトラー・ムッソリーニ・スターリン・毛沢東の手法』松田行正 デザインは毒にも薬にもなる

    独裁者によるデザイン、シリーズ三作目 2019年刊行。筆者の松田行正(まつだゆきまさ)は1948年生まれのグラフィックデザイナー。 独裁者のデザイン: ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法 作者:行正, 松田 平凡社 Amazon ヒトラー、スターリンなどの独裁政権によるデザインについて言及した一連のシリーズの三作目であり、本作に先立って2017年の 『RED ヒトラーのデザイン』、2018年の『HATE! 真実の敵は憎悪である。』が上梓されている。うーん、読む順番間違えたかも。 本書の小口部分は、左に広げるとスターリンが、右に広げると毛沢東の肖像画浮かび上がる凝った趣向になってい…

  • 『断片的なものの社会学』岸政彦 人生は解釈不能な断片で出来ている

    社会学者が紡ぐ「断片」の数々 2015年刊行。新潮社の文芸誌「新潮」、早稲田文学会の文芸誌「早稲田文学」、太田出版の季刊誌「atプラス」、朝日出版社のウェブサイト「朝日出版社第二編集部ブログ」などに掲載されていた作品に、書下ろしを加えて単行本化したもの。 筆者の岸政彦(きしまさひこ)は1967年生まれの社会学者で、小説家でもある。現在は立命館大学の教授職にある人物。 本書は、紀伊國屋書店が実施している、人文書の賞、「紀伊國屋じんぶん大賞」で、2016年の大賞を受賞している。 わたしとしては、発売直後に一度図書館で借りて読んで、面白かったので文庫化されたら購入しようと思っていた作品。だが全然文庫…

  • 『屋根の日本史』原田多加司 職人が教える日本伝統建築の魅力

    屋根職人のエキスパートが教えてくれる 2004年刊行。中公新書。筆者の原田多加司(はらだたかし)は1951年生まれ。地方銀行勤務から実家の檜皮葺師への道に入り十代目原田真光を襲名している。国宝、重文級の建築物の修復を数多く手がけてきた屋根職人のエキスパートである。 内容はこんな感じ 寺社仏閣や城郭、著名な日本建築を目にしたとき、まず最初に印象に残るのは巨大な屋根だろう。日本建築の屋根は世界のそれと比較して、非常に特異な形で発展を遂げてきた。縄文期の竪穴式住居に始まり、大陸からの仏教伝来を受けた古代寺院の建立。平安時代の寝殿造りから戦国期の城郭建築、そして様々なバリエーションを持つに至った江戸期…

  • 『音楽の危機 《第九》が歌えなくなった日』岡田暁生 コロナ後の音楽を考える

    集えない世界の衝撃を描く 2020年刊行。筆者の岡田暁生(おかだあけお)は1960年生まれの音楽学者。現在は京都大学人文科学研究所の教授。 本書は第20回の小林秀雄賞を受賞している。 内容はこんな感じ 新型コロナウイルスの蔓延は、音楽業界に大きなダメージを与えた。世界中でコンサートやライブが中止となり、音楽家たちはかつてない苦境に陥っている。近代社会の発展と共に、公共の場に集うことで成立して来たこの業界は今後どうなるのか?ネットによる動画配信はその補完となりうるのか?コロナ禍のいまだからこそ考えたい「これからの新しい音楽」とは? 目次 本書の構成は以下の通り 第1部 音楽とソーシャル・ディスタ…

  • 『世界の断崖おどろきの絶景建築』をGoogleMapで見てみる

    「どうして?」と問い質したくなる断崖建築 本日はご紹介するのは写真集。 2018年刊行。断崖絶壁に築かれた、要塞、城、教会、修道院、世界の各地から集められた驚きの建築群がとにかく圧巻なのである! まず目を引くのが表紙に使われているこの一枚だろう。 この写真は、ジョージア(グルジア)にある「カツヒの柱」と呼ばれる石灰岩の一枚岩で高さは40メートルを超える(次に挙げるMAP番号では22番)。頂上にある修道院は、恐ろしいことに現在も稼働中であるらしい。 出版社のサイトでは、少しだけ他の画像も公開されているようなので、併せて紹介しておく。 内容はこんな感じ 目の眩むような絶壁の上にどうしてこれらの建造…

  • 『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』後藤宗明 新たにスキルを獲得してDX人材に進化する

    第一人者が語るリスキリングの価値 2022年刊行。筆者の後藤宗明(ごとうむねあき)は一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事。2018年頃から日本国内でリスキリングの理念を広めるべく、活動を展開されてきた方。 筆者が主宰する一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブのサイトはこちら。 内容はこんな感じ 人生100年時代。ひとつのスキル、ひとつの業務、ひとつの仕事だけでは長い人生を勝ち抜くことは難しい。これからは時代にあった、新しいスキルを獲得し続けていくことが肝要となる。自分の市場価値を高めていくには何をすればいいのか?単なる学びなおしを超えた「リスキリング」の重要性を…

  • 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ハンス・ロスリング 世界を正しく認識するために

    もはや説明不要の話題の一冊 本書は刊行前から随分と話題になっていて、発売されるやいきなり爆売れ状態に。Amazonでは3週連続でビジネス書ランキングの1位を獲得。2019年を代表する一冊となってしまった。この年、ビジネス書の類で、こんなにあちこちでレビューされた本は無いのではないだろうか。 2021年の時点でついに100万部を突破!現在でも書店では平積みされていることが多く、長く売れるベストセラー書籍となっている。 目次 本書の構成は以下の通り イントロダクション 第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み 第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み …

  • 『「静かな人」の戦略書』ジル・チャン 内向型が静かな力を発揮する方法は?

    台湾、米国、日本でベストセラー オリジナルの台湾版『安靜是種超能力』は2018年刊行。たちまちベストセラー1位となり、20週にわたりトップ10に入る快挙を成し遂げた。 安靜是種超能力: 寫給內向者的職場進擊指南 (Traditional Chinese Edition) 作者:張瀞仁 方舟文化 Amazon その後、米国版である『Quiet is a Superpower』が2020年に刊行。こちらも話題となった。 Quiet Is a Superpower: The Secret Strengths of Introverts in the Workplace (English Editio…

  • 『本屋、はじめました 増補版』辻山良雄 「本はどこで買っても同じ」ではない

    出版不況下に個人で書店を立ち上げた方の記録 2017年刊行。筆者の辻山良雄(つじやまよしお)は1972年生まれ。大手書店チェーンのリブロで、広島店、名古屋店で店長職、池袋本店のマネージャ職を歴任。2015年に退社し、翌2016年に東京都杉並区の荻窪に新刊書店Titleを開店。個人発のこだわり書店として人気を博し、今年で8年目に入っている。 本屋、はじめました: 新刊書店Title開業の記録 作者:良雄, 辻山 苦楽堂 Amazon // ちくま文庫版は2020年に刊行されている。文庫版のオリジナル要素として「文庫版補章 その後のTitle」が追加。更に、若松英輔の解説が収録されている。一方で、…

  • 『ウクライナ戦争』小泉悠 大戦争は決して歴史の彼方に過ぎ去ってなどいなかった

    小泉悠によるウクライナ戦争本 2022年刊行。筆者の小泉悠(こいずみゆう)は1982年生まれの軍事評論家、軍事アナリスト。インターネットでのハンドル名、ユーリィ・イズムィコでも知られる、ネット界隈では以前から知る人ぞ知る著名人だった。 ロシア軍事の専門家として、第二次ウクライナ戦争が始まってからは各方面で引っ張りだことなっており、すっかりテレビでお馴染みの顔となってしまった。 小泉悠は、本書刊行以前にも、(第二次)ウクライナ戦争前史とも言える『現代ロシアの軍事戦略』、開戦直後の200日を著名人らとの対談形式で分析した『ウクライナ戦争の200日』、さらにはロシアのお国柄を紹介する『ロシア点描 ま…

  • 『中年の本棚』荻原魚雷 悩める中年世代へ送るおススメ本90冊

    魅惑の「中年」本ガイド 2020年刊行。紀伊國屋書店出版部の無料冊子「Scripta」の2013年春号~2020年冬号にかけて連載されていたものを加筆修正のうえで単行本化したもの。 筆者の荻原魚雷(おぎわらぎょらい)は1969年生まれのライター、文筆家。『古書古書話』『日常学事始』『本と怠け者』『古本暮らし』などの著作がある。 内容はこんな感じ いずれは誰にでも訪れる「中年」時代。自分の人生の限界が見えてくる。気力、体力共に衰え、職場では上司からの圧力と、部下からの突き上げで板挟みになる。親の介護、配偶者や子との人間関係。悩みは尽きない。 15年にわたって「中年」をテーマとした書籍を収集してき…

  • 『宝治合戦 北条得宗家と三浦一族の最終戦争』細川重男 その後の「鎌倉殿」と仁義なき戦い

    「鎌倉殿」のその後が知りたくて 大河ドラマの『鎌倉殿の13人』が、自分史上かつてないほどの面白さだったので(それまでのベスト大河は1991年の『太平記』だった)。「その後」を知りたくて本書をゲット。 本書は2022年刊行。筆者の細川重男(ほそかわしげお)は1962年生まれの歴史学者。専門は日本中世政治史、古文書学。東洋大学、國學院大学の非常勤講師。中世内乱研究会総裁。 筆者は、鎌倉幕府に関する著作を多数上梓している。作品リストは以下の通り。 『鎌倉政権得宗専制論』(2000年) 『鎌倉北条氏の神話と歴史 権威と権力』(2007年) 『鎌倉幕府の滅亡』(2011年) 『北条氏と鎌倉幕府』(201…

  • 『空気が支配する国』物江潤 日本社会の同調圧力の正体は?

    コロナ禍の今だから、読みたい一冊 2020年刊行。筆者の物江潤(ものえじゅん)は1985年生まれ。東北電力退社後、松下政経塾に入り、現在は地元の福島で塾経営をしつつ執筆業もされている方。 その他の近著には新潮新書の『ネトウヨとパヨク』がある。 ネトウヨとパヨク(新潮新書) 作者:物江潤 新潮社 Amazon // 内容はこんな感じ 日本人の行動を規定する「空気」。時としてそれは法よりも強く作用する。かつての大戦時や、東日本大震災、そして現在の新型コロナウイルスの蔓延。非常時に日本人の行動を縛る「空気」はいかにして生まれ、いかにして作用するのか。大事なことがなんとなく決まる社会。日本の同調圧力の…

  • G検定をカンペで突破、文系+非エンジニア+オッサンの受験対策

    書こう書こうと思っているうちに年を越してしまった……。2022年の11月にG検定(ジェネラリスト検定)を受験し、なんとか合格できたのでそのレポートをお届けしたい。 G検定合格証書 G検定とは?合格率はどれくらい? G検定とだけ聞くと何それ?と思われる方も多いだろう。G検定とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会が主催する検定だ。 G検定とは ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する試験。 日本ディープラーニング協会:G検定ご紹介資料 2023#1より[PDF] つまり昨今流行の、AI(人工知能)や、機械学習、ディープラーニ…

  • 『だれもわかってくれない』ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 人がわかりあえない理由を考える

    傷つかないための心理学 2015年刊行。米国での原著タイトルは『No One Understands You and What to Do About It』。 だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 作者:ハイディ グラント ハルヴァ―ソン,Heidi Grant Halvorson 早川書房 Amazon // ハヤカワ文庫版は2020年に登場。わたしが読んだのはこちら。 筆者のハイディ・グラント・ハルヴァーソン(Heidi Grant Halvorson)は1973年生まれの社会心理学者。コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンスセンターの副所長。『やってのけ…

  • 『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』吉川祐介 千葉県北東部に乱開発された宅地群があった

    知られざる「限界ニュータウン」の全貌が明らかに 2022年刊行。筆者の吉川祐介(よしかわゆうすけ)は1981年生まれのブロガー、Youtuber。自身も現地で暮らし、100カ所以上もの限界ニュータウンを巡り、その実情をレポートしてきたことで知られる人物である。 2017年に開設されたブログ、URBANSPRAWL(アーバンスプロール)限界ニュータウン探訪記が人気を博している。 また2022年に開設されたYoutubeチャンネル、資産価値ZERO -限界ニュータウン探訪記-も好評で、早くもチャンネル登録者数が10万人を超えている。これは凄い。 PRESIDENT OnlineなどWebメディアへ…

  • 『犯罪は「この場所」で起こる』小宮信夫 「犯罪機会論」からの防犯対策とは?

    犯罪心理学の専門家が説く防犯論 2005年刊行。筆者の小宮信夫(こみやのぶお)は1956年生まれ。本書執筆当時は立正大の助教授。現在は教授に。専攻は犯罪心理学である。 Wikipedia先生でプロフィール部分を引用させていただくとこんな感じ。犯罪抑止、防犯についての専門家といったところだろうか。 警察庁「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」の座長、文部科学省「学校と関係機関との行動連携に関する研究会」の委員、東京都「非行防止・犯罪の被害防止教育の内容を考える委員会」の座長、東京都「地域安全マップ専科」の総合アドバイザー、広島県「子どもの安全な環境づくりアドバイザー」、青森…

  • 『荒野へ』ジョン・クラカワー アラスカの荒野で若者はなぜ死んだのか

    実話に基づくベストセラーノンフィクション 2007年刊行作品。筆者のジョン・クラカワー(Jon Krakauer)は1954年生まれの作家、登山家、ジャーナリスト。 オリジナルの米国版は1996年刊行で原題は『Into the Wild』。もともとは、米国のアウトドア雑誌「Outside」に掲載された1993年の記事を加筆修正のうえで書籍化したもの。全米でベストセラーとなり、その後30の言語に翻訳されている。 わたしが読んだ日本版は2022年7月の時点で第11刷となっていた。日本国内でも長期に渡って売れ続けている作品となっている。 この本で得られること 若さゆえのあやまちについて改めて考えるこ…

  • 2022年に読んで面白かった新書・一般書12選

    毎年恒例の〇〇年に読んで面白かった本シリーズ、2022年版をお届けしたい。しかしながら、今年は放送大学二年目ということで、学習に割かれる時間が多くて、あまり数がこなせなかったのが残念。昨年は歴史編、その他編と二回に分けてお送りするほどネタがあったのだけど、今回は一回のみ(12冊)となる。 日本史編 源氏物語の結婚(工藤重矩) 平氏(倉本一宏) 北条氏の時代(本郷和人) 世界史編 青木健(ゾロアスター教) 古代中国の24時間(柿沼陽平) 謎のチェス指し人形「ターク」(スタンデージ) 原武史の著作が面白かった レッドアローとスターハウス(原武史) 団地の空間政治学(原武史) 滝山コミューン一九七四…

  • 『87%の日本人がキャラクターを好きな理由』香山リカ 日本人とキャラクターについて考える

    香山リカが読み解く「キャラクターと日本人」論 筆者の香山リカはお馴染みの精神科医。何が本業なのかわからないくらい活動されている方だが、立教大学現代心理学部映像身体学科教授というのがいちおうメインの肩書なのかな。本作を上梓した2001年当時では、神戸芸術工科大学の助教授だったはず。専門は精神病理学だが、ゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。 改めてWikipediaを見てみたけど、著作数スゲー。凄まじい量である。 共著である、バンダイキャラクター研究所は読んで字の通り、キャラクターを扱わせたら日本一の玩具メーカー、バンダイが2000年5月に設立した研究所。って、これまだあるのかな?ググっても…

  • 『キリスト教と音楽』金澤正剛 ヨーロッパ音楽の源流をたずねて

    先日、放送大学の面接授業(スクーリング)で、永原恵三先生の「カトリック教会と音楽」を受講してきた。その際に、多少なりとも事前学習ができないか?ということで、本書『キリスト教と音楽』を再読してみた。ということで、本稿もちょっとだけ加筆して再投稿してみる。 キリスト教と音楽の関係を知る 2007年刊行。筆者の金澤正剛(かなざわ まさかた)は1934年生まれの音楽学者、音楽 史研究家。国際基督教大学名誉教授の名誉教授。ルネサンス期の音楽史を主要な研究分野とされている人物で、その筋では大御所、権威といっても良い方。 本書は金澤正剛が各媒体に発表したエッセイや解説文を元に単行本化したものである。 この本…

  • 『逃げる技術 ギリギリまで我慢してしまうあなたへ』根本裕幸 辛いときはいますぐ逃げていい!

    人気カウンセラーが教える「逃げる技術」 2020年刊行。筆者の根本裕幸(ねもとひろゆき)は1972年生まれの心理カウンセラー。 メンタル系の自己啓発本を多数上梓しており、代表作は2017年の『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』あたりかな。他、著作多数。 敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法 作者:根本裕幸 あさ出版 Amazon // この書籍から得られること ヤバいと思ったら「逃げて」いいことがわかる 技術としての「逃げる」について学べる 内容はこんな感じ いつまでこの辛い日々が続くのか。ずっと我慢していなくてはいけないのか。あなたの人生は自分で決めていい。過酷な…

  • 『ウクライナ戦争の200日』小泉悠 ロシアの軍事・安全保障研究家がリアルタイムで語った同時代史

    小泉悠の対談本 2022年刊行。「文藝春秋」「Foresight」「週刊文春エンタ+」「週刊文春WOMAN」などで掲載されていた対談を一冊にまとめて上梓したもの。 筆者の小泉悠(こいずみゆう)は1982年生まれの軍事評論家、軍事アナリスト。ロシアへの留学経験を持つ、軍事、安全保障の専門家である。今年はすっかり時の人となってしまった感があって、マスコミには出ずっぱりであった。 著作も今年は刊行ラッシュで、三冊も刊行されている。週末には最新刊の『ウクライナ戦争』が出るようなので、これも読まねばなるまい。 『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』:2022年4月 『ウクライナ戦争の200日…

  • 『スエイ式人生相談』末井昭 どんな悩みもピタリと解決!?

    名物編集者が人生の奇問難問に答える! 2004年刊行。筆者の末井昭(すえいあきら)は1948年生まれ。書影を見ると、何なのこの人?と思われるかもしれないが当然男性である。女装は趣味でやっているみたい。 1981年にはかつて一世を風靡した(らしい)「写真時代」を創刊。その後「パチンコ必勝本」などの創刊に関わり、1988年には「パチンコ必勝ガイド」を立ち上げ、こちらも人気雑誌にまで育て上げた。既に退任しているが、白夜書房時代は取締役にまでなっている。西原理恵子のマンガに時々出てくるので、そちらでご存じの方のほうが多いかな?いわゆる名物編集者って奴である。 末井昭の生い立ちはWikipedia先生を…

  • 『ガラスの50代』酒井順子 令和の50代のリアルを綴る

    コロナ禍の今を描く酒井順子最新作 2020年刊行。筆者の酒井順子(さかいじゅんこ)は1966年生まれのエッセイスト。第一作は1988年の『お年頃 乙女の開花前線』。出世作は何といっても2003年の『負け犬の遠吠え』であろう。 ガラスの50代 作者:酒井 順子 講談社 Amazon 講談社文庫版は2022年に刊行されている。 本作は、講談社のwebメディアmi-mollet(ミモレ)に2019年1月~2020年6月にかけて連載されていたエッセイをまとめたもの。現在でも読めるようなので、こちらで読んでいただくのも良いかと思われる。書籍化したのに全文掲載されたままとは、講談社も太っ腹だな。酒井順子ク…

  • 『書く習慣』いしかわゆき(ゆぴ) 文章による発信が「続かない」人向けの文章術指南本

    発行部数2万部超のヒット作 2021年刊行。筆者のいしかわゆき(別名義の「ゆぴ」でも活躍中)はライター、ブロガー、Youtuber、更には声優としても活躍しているマルチな人物。 本書『書く習慣』が、いしかわゆきにとっての初著作となる。2022年の9月時点で、発行部数は20,000部を超えている。 Kindle Unlimited対応本なので登録されている方はすぐ読めます(2022年11月20日現在)。 著者本人の自己紹介記事はこちら。 Youtubeチャンネルもある。 こんな人向けに書かれている 本書『書く習慣』を読むべきか悩んでいる方は、まずは冒頭の「はじめに」をチェックしよう。そこで、筆者…

  • 『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』小泉悠 ふつうのロシア人の家、食べ物、暮らし

    専門家が教えてくるロシアの素顔 2022年刊行。筆者のユーリィ・イズムィコこと、小泉悠(こいずみゆう)は1982年生まれの軍事アナリスト。ウクライナ戦争で一躍知名度が上がってしまった感がある。ロシアへの留学経験があり、ロシア人女性と結婚もしている、きわめてロシア愛の強い人物と言えるだろう。それだけに昨今のロシア情勢には複雑な思いを抱いていそう。 本書はもともと、ウクライナ戦争前から企画されていた作品。ただ、執筆途中でウクライナ戦争が始まってしまったので、紆余曲折を重ねながら、なんとか刊行にこぎつけたものらしい。戦争が現在進行形であるだけに、匙加減は難しかったであろうと想像できる。先日ご紹介した…

  • 『暴走するネット広告』知っておきたい不正広告の仕組み その広告で誰が不正に儲けてる!

    「クローズアップ現代+」の放映内容を書籍化 2019年刊行。本書はNHK「クローズアップ現代+」にて放映された三つの番組、「追跡! 脅威の“海賊版”漫画サイト」「追跡! ネット広告の“闇”」「追跡! “フェイク”ネット広告の闇」の取材内容をまとめて書籍化したものである。 この書籍から得られること インターネットの広告の仕組みがわかる 怪しげなネット広告がどうして生まれるのかがわかる 内容はこんな感じ 新聞やラジオ、テレビすらも超える勢いで、ネット広告市場が拡大を続けている。巨大市場の裏では、怪しげな業者が不正な広告をバラまいている。膨大な広告費はいかにして使われ、どのように視聴されているのか。…

  • 『22世紀の民主主義』成田悠輔 政治家も選挙もいらない「無意識民主主義」のすすめ

    20万部突破のベストセラー 2022年刊行。筆者の成田悠輔(なりたゆうすけ)は1986年生まれの経済学者、実業家。アメリカのイェール大学助教授(本人プロフィールにそう書いてある。准教授じゃないの?)を努めつつ、日本では自身で起業もしているという人物。中高が麻布高校で、大学は東京大学の経済学部(首席)。マサチューセッツ工科大学(MIT)ではPh.D.取得と、経歴が輝かし過ぎて直視できない(笑)。 メガネはよく見ると右目が〇フレーム、左目が□いフレームになっていて、なんかもう普通の人じゃない気配が濃厚に漂ってきている。 とにかくめちゃめちゃ頭のいい人が書いた、22世紀の民主主義を考えてみよう!とい…

  • 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子 読解力がない人間はAIに職を奪われる

    2019年ビジネス書大賞、大賞受賞作 2018年刊行。筆者の新井紀子(あらいのりこ)は1962年生まれの数学者。一橋大学では法学部に入学しながら、在学中に数学の魅力に取りつかれイリノイ大学の数学科に留学。数学の研究者になってしまった人物。現在は国立情報学研究所社会共有知研究センター長、教授職を務めている。 本日ご紹介する『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は2019年のビジネス書大賞で大賞を受賞した一冊。帯を読む限り28万部突破と、この類の書籍としては異例の売れ行きを達成している。 続篇的な作品として2019年には『AIに負けない子どもを育てる』が刊行されている。 AIに負けない子ども…

  • 『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史 コンテンツは鑑賞物から消費するものに変わっていく

    ウェブメディア発、コンテンツ消費の現在形 2022年刊行。筆者の稲田豊史(いなだとよし)は1974年生まれのライター、編集者、コラムニスト。映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)出身で、その後、キネマ旬報社を経て独立。映画評論からジェンダー論、ポップカルチャーまで幅広い分野を得意ジャンルとして活躍している人物。 もともとは講談社のWebメディア「現代ビジネス」に連載されていた記事がベースになっている。元記事はこれかな。 この記事には900を超えるブックマークが集まっており、大きな反響があったことが伺える。 この書籍から得られること 映画が早送り視聴されている理由がわかる 現代の…

  • 『団地の空間政治学』原武史 団地黄金時代に芽生えた自治の意識と政治活動

    原先生の団地本だ! 2012年刊行。筆者の原武史(はらたけし)は1962年生まれの政治学者。 天皇制をめぐる数々の著作で知られるが、鉄道分野にも造詣が深く、本業の政治思想研究と絡めた『「民都」大阪対「帝都」東京』ではサントリー学芸賞を受賞している。 さいきん原作品にハマっていて、著作を紹介するのは『レッドアローとスターハウス』『滝山コミューン一九七四』に続いて三冊目となる。 この書籍から得られること 都市郊外の団地が果たした政治的役割がわかる 団地という特異な空間になぜ独自の政治運動が根付いたのかがわかる 1950年代後半~1970年代の前半の団地の暮らしがわかる 内容はこんな感じ 戦後の住宅…

  • 『50歳からの孤独入門』齋藤孝 満たされない承認欲求にどう向き合う?

    アラフィフになったら読んでみよう 2018年刊行作品。筆者の齋藤孝(さいとうたかし)は明治大学文学部の教授で、作家、教育学者。著作としては『声に出して読みたい日本語』が有名かな。 昔は四十にして惑わずなどと言ったものだったが、現代では四十代はまだまだ働き盛り。平均寿命が伸び、「人生100年時代」と言われる昨今では五十代に入ってからの方が不惑という心境に近いのではないだろうか。 職場での先が見えてきて、心身ともに明確な衰えを感じ始めるのが五十代である。その意味で、これから備えるべきは何なのか。わたしとしてもアラフィフ年代に入っているので、本書を手に取って見た次第。 この書籍から得られること アラ…

  • 『人口減少時代の土地問題』吉原祥子 面倒でも土地の登記はしっかりと!

    全国の土地の2割は所有者がわからない 2017年刊行の中公新書。筆者の吉原祥子(よしはらさちこ)は1971年生まれ。民間のシンクタンク東京財団の研究員。 帯の惹句にもあるとおり、「持ち主がわからない土地が九州の面積(国土の2割)を越えている」。日本では2011年以降、少子高齢化に伴う人口減少時代に突入している。日本各地に空き家が増え、相続放棄された土地が激増している。本書では、土地制度の側面からその原因と対策について論じている。 この書籍から得られること 土地登記制度の構造的問題がわかる 人口減少社会で、土地所有にどんな課題があるのかがわかる 目次 本書の構成は以下の通り 第1章 「誰の土地か…

  • 『滝山コミューン一九七四』原武史 1970年代、学校現場を覆った集団主義の背景

    講談社ノンフィクション賞、受賞作品 2007年刊行。講談社の文芸誌「群像」の2006年11月号~2007年1月号にかけて連載されていた作品をまとめたもの。筆者の原武史(はらたけし)は1962年生まれの政治学者。先日エントリを書いた、『レッドアローとスターハウス』に続いて二冊目の著作紹介となる。 『滝山コミューン一九七四』は、第30回の講談社ノンフィクション賞を受賞している。同時受賞作に、西岡研介『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』、城戸久枝『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』がある。 滝山コミューン一九七四 作者:原 武史 講談社 Amazon 講談社文…

  • 『ノスタルジックアイドル 二宮金次郎』井上章一 誰が二宮金次郎像を作ったのか?

    『京都ぎらい』筆者が調べた二宮金次郎像の秘密 1989年刊行。筆者の井上章一(いのうえしょういち)は1955年生まれの建築史家、作家、風俗史研究家。現在は国際日本文化研究センターの所長、教授職を務めている方である。1980年代から現在に至るまで多くの著作があるが、「新書大賞2016」で第一位を獲得した『京都ぎらい』であろうか。 この書籍から得られること かつて日本中に二宮金次郎の像があった理由がわかる 二宮金次郎の像が同じようなポーズをしている理由がわかる 内容はこんな感じ かつてはどこの小中学校でも見かけることが出来た二宮金次郎の像。石像、ブロンズタイプ、陶器製、さまざまな材質によって形作ら…

  • 『レッドアローとスターハウス』原武史 西武鉄道と団地が東京の郊外に何をもたらしたのか

    今週のお題「最近おもしろかった本」に参加します! 西武鉄道と団地に着目した戦後思想史 2012年刊行。筆者の原武史(はらたけし)は1962年生まれの政治学者。専攻は日本の政治思想史。明治学院大学の教授職を経て、現在は放送大学の教授。 レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 作者:原 武史 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2015年に登場。速水健朗による「新潮文庫版への解説」が追加収録されている。 レッドアローとスターハウス―もうひとつの戦後思想史―(新潮文庫) 作者:原 武史 新潮社 Amazon 2019年には増補新版となる新潮選書版が刊行された。その後の追加取材を反映した「…

  • 『人工知能は人類を超えるか』松尾豊 AI(人工知能)についてサクッと学びたい方へ

    2015年刊行。筆者の松尾豊(まつおゆたか)は1975年生まれ。東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター、技術経営戦略学専攻の教授。日本ディープラーニング協会の理事長も務めている。日本のAI(人工知能)研究では、よく名前が出てくる人物で、マスコミへの露出も多いので、ご存じの方も多いのでは? 本日ご紹介する『人工知能は人類を超えるか』は、一般人向けに書かれたAI入門書として異例のヒット作となっており、2021年1月の時点で35刷136,000部発行となっている。書店の理工学書コーナーに行けば、かなりの確率で平積みされているはずだ。 この書籍から得られること AI(人工知能)研究の歴史がわ…

  • 『ブロックチェーンがひらく「あたらしい経済」』 文系でもわかるブロックチェーン

    ブロックチェーンの専門家が教えてくれる 2020年刊行。福岡を拠点としてブロックチェーン関連の技術開発を行っている株式会社Chaintope(チェーントープ)関係者による著作。CEOの正田英樹(しょうだひでき)をはじめとして、田中貴規(たなかたかのり)、村上照明(むらかみてるあき)、中城元臣(なかじょうゆきしげ)、安土茂亨(あづちしげゆき)の五名による共著となっている。 この書籍から得られること ブロックチェーン技術の基礎を学べる(文系でもわかる!) ブロックチェーン技術の問題点がわかる 内容はこんな感じ 暗号通貨ビットコインの隆盛と共に知られるようになったブロックチェーン技術。全世界が注目し…

  • 『ヤンキーと地元』打越正行 解体屋、風俗経営、ヤミ業者として生きる沖縄の若者たち

    社会学者の参与観察から生まれた一冊 2019年刊行。筆者の打越正行(うちこしまさゆき)は1979年生まれの社会学者。現在は、和光大学現代人間学部の専任講師、社会理論・動態研究所の研究員を務めている人物。 『ヤンキーと地元』は初めての単著で、社会学系の書籍としては異例のヒット作となった。第六回の沖縄書店大賞の沖縄部門で大賞を受賞している。 本書がきっかけとなり、筆者は2022年5月16日(月)のテレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に出演。更に知名度を高めることになる(わたしもこれで知った)。 この書籍から得られること 沖縄社会の実情について知ることが出来る 地元社会ならではの人間関係の濃さ、…

  • 『帝都東京・隠された地下網の秘密』全二作が胡散臭いけど面白い

    本日ご紹介するのはこちらの二冊。ややもするとトンデモ系に分類されてしまいそうな作品だが、素材としては面白い。普段は見ることが出来ない地下の世界だけに、妄想は深まるのである。 この書籍から得られること 東京の地下鉄について詳しくなれる 東京の地下にまつわる陰謀論をネタとして楽しむことが出来る 帝都東京の地下には秘密がある! 2002年刊行作品。筆者の秋葉俊(あきばしゅん)は1956年生まれ。テレビ朝日の元記者で海外特派員としてよくニュースでは登場していたらしい。大麻所持がバレて退社。以後はフリーで執筆活動を行っている。 新潮文庫版は2006年に登場している 帝都東京・隠された地下網の秘密 (新潮…

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