ことばを食する
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出身
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くーさん
ブログタイトル
ことばを食する
ブログURL
https://www.whitepapers.blog/
ブログ紹介文
私の主観による書評、ブックレビューです。小説のほか美術書、ノンフィクションなど幅広く扱います。ベストセラーランキングもチェックします。
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69回 / 112日(平均4.3回/週)

ブログ村参加:2019/05/27

くーさんの人気ランキング

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くーさんのブログ記事

1件〜30件

  • 一つの声が届くまでの時間について 〜「ノルウェイの森」(村上春樹)

    なぜ今ごろこの小説を...と言われそうですが、きっかけは9月11日が「公衆電話の日」だったからです。これに引っかけて、翌12日のある新聞に減り続ける公衆電話の記事が載っていました。1900年(明治33)に、日本で初めての公衆電話が上野駅ー新橋駅間に設置されたのが9月11日なのだそうです(それって、あのSL広場のSLが現役のころの話だろうか?)。知っていました?。 もしあなたが「そんなの常識で、付け加えるなら当時は〝自動電話〟と言われていて、自動電話のくせに交換手を呼び出してからお金を入れて、ようやく相手に繋いでもらえたんだ。まあ、知っていることに意味はないけどね」と言ってわたしを見つめ、「やれ…

  • 湊かなえさん「落日」がランクイン 〜2019.9.10 週間ランキング

    4位に湊かなえさんの「落日」が入ってきました。文芸書は、4週間ぶりのベスト10入りです。「おしりたんてい ラッキーキャットは だれの て に!」が相変わらずの強さでトップを譲りません。2位の「大家さんと僕 これから」も、7月末からずっと売れ続けているようです。 6、7、8位は初登場です。「上級国民/下級国民」は先週ベスト10に再登場し、今週も9位に粘っています。では、ベストセラーと関係ありませんが先日行ってきた谷川俊太郎展の写真など添えつつ... 谷川俊太郎展 2019 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年9月10日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位「おしりたん…

  • 人はどこに帰るのか 〜「山中静夫氏の尊厳死」南木佳士

    流し読みできない作品、読み始めて思わず背筋を伸ばす作品というものがあり、わたしにとって「山中静夫氏の尊厳死」(南木佳士、文春文庫)は、そんな1冊でした。南木(なぎ)さんは「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞を受賞。「医学生」「阿弥陀堂だより」(いずれも文春文庫)など、内科医の視点からいのちを見つめた短編を主に発表し、派手さはないけれど、深く心に残る作家です。 内科医として多くの死を看取った南木さんは、小説を書きながらやがて自らも心を病み、うつ病になって現場を離れました。快復後は、確か死と直接かかわることのない病理医として復帰したはずです。「山中静夫氏の尊厳死」は、南木さんが内科医として苦し…

  • ロマンとリアルの対峙 〜「三島由紀夫と司馬遼太郎」松本健一

    特定の作家を取り上げ、批評して1冊にすると、自ずから読者をかなり限定してしまいます。「三島由紀夫と司馬遼太郎」(松本健一、新潮選書)で言うなら、三島や司馬の読者でない人がこの本を開こうとするだろうか...と考え、しかしまた、はたと自分の考えを恥じることになります。「本が売れるかどうか」。収支計算とマーケティング戦略が、いつに間にか自分にこびりついていることに気づくからです。 真逆の立場にあり、交わることのなかった三島と司馬が、どちらも同じように嘆き、ただそうとした「空虚な大国・日本」は、まさにわたしのような、経済至上主義の発想に縛られた輩で溢れてしまった国でしょう。 さて「三島由紀夫と司馬遼太…

  • 道草(掌編)

    ケンイチが初めて文庫本に出合ったのは、中学校に入学した日でした。排気ガスをまき散らして車が行き来する国道8号線を挟み、向かいに住む「鷲本先生の奥さん」から、入学祝いにと岩波文庫の芥川竜之介をもらったのです。小学校を卒業したばかりの子どもにとって、パラフィン紙にカバーされた文庫本は、大人の世界そのものでした。 パラフィン紙の感触を確かめ、落ち着いた茶色の、小さな本のページをめくりながら、ケンイチは1ページごとに大人の世界に踏み込んでいくような手応えを、胸に刻んでいったのでした。 だからといって、ケンイチが一気に文学少年になったわけではありません。 中学には部活というものがあり、バレーボール部に入…

  • 9月、読書の秋到来....なのですが 〜2019.9.3 週間ランキング

    気づけば9月、旧暦なら「長月」です。今年の中秋の名月は9月13日。中秋の名月は旧暦8月15日の月を指し、これを愛でる習慣は平安時代に中国から伝わったそうです。ちなみに天文学的な満月は、翌14日になるとか。 秋の到来です。読書の秋はもちろんですが、新米が出て、魚が美味しくなり始め、収穫に感謝するまつりがあり、春にシーズンが始まったスポーツはクライマックスが近づき....。こんな関係のない前ふりを引っ張っているのは、どうも今週のベストセラーランキングについて、なにか書く気がしないのです。さて 「ふたり」 1999年 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年9月3日調べ TOH…

  • 本を愛した5人の男 〜「古本屋奇人伝」青木正美

    書物、雑誌、新聞と、出版物を取り巻く環境は1990年代半ば以降、劇的に変化し続けています。「紙の活字文化」という視点でまとめるなら、「衰退」という2文字があらゆる数字から浮かび上がります。衰退する世界の、日々印刷されて店頭に並ぶまでがメーンストリートなら、古書の世界は紙の活字文化が内包したセカンドストーリーです。派手さはないけれど、午後のひととき、ページをめくると立ち上がってくる人たちの姿に、不思議な懐かしさを覚えました。 「古本屋奇人伝」(青木正美、東京堂出版)は1993年初版。再版されたかどうか不明ですが、入手しようとすれば古本で探すしかないと思います。わたしは地元の古本屋さんでたまたま目…

  • 年に1度の逢瀬 幻の3日間 〜「風の盆恋歌」高橋治

    9月1日から3昼夜続く、富山市・八尾の「おわら風の盆」が始まりました。指先1本1本まで芯が通って乱れない、踊りの美しさ。胡弓と三味線が鳴らす、緩やかで切ない地方(じかた)の調べ。歌い手が息長く、高い声で歌い上げる正調おわら。おわらの歌詞はたくさんあるのですが、男と女の情を歌ったものが多くあります。そして編み笠で顔を隠して踊る女性たちがみんな、魅力的な美人に見えるから不思議です。 風の盆を小説の舞台にし、「死んでもいい」という大人の恋愛を描いたのが「風の盆恋歌」(高橋治、新潮文庫)です。恋愛は、今ふうに具体的に言えばW不倫。小説より、石川さゆりさんの演歌「風の盆恋歌」のほうが知られているかな。こ…

  • 東アジアの外交戦略 昔のことですが.. 〜「新版 古代天皇の誕生」(吉村武彦)

    4日かけて、昔習った日本史のおさらいをしていました。歴史に詳しい方には今さらと笑われそうですが、日本から中国の都・洛陽にまで使者が行き、後漢の光武帝からあの有名な金印「漢委奴国王」(漢の委わの奴なの国王)を授かったのは、西暦57年でした。これって、単に気まぐれな旅人が海を渡ったわけではなく、東アジアの政治地図の中で、後漢へ派遣された国としての使節団です。 (中国の史書における倭の記述だけならさらに時代を遡ります) 使節団が送られた西暦57年といえば、考古学的には立派な弥生時代。邪馬台国の卑弥呼は、その1世紀後です。さらにその後が古墳時代。もちろん、当時の日本は現在のような姿の統一国家ではなく、…

  • 切なく、冷たく 〜「雪国」川端康成

    50歳を過ぎて「雪国」(川端康成、新潮文庫)を再読したとき、男と女を描いてこれほどまでに艶(なまめか)しい小説だったのかと、唖然としました。つんと底冷えする雪国だからよけい、一途に織り上げられていく「女」が切ないのですね。 逗留する越後湯沢の温泉宿で、島村と駒子が一夜をともにした翌朝、駒子は人目を恐れて逃げるように宿を抜け出します。島村もその日東京に帰り、前触れもなく再び戻ってきたのは半年後。駒子が島村の部屋にやってきます。 その顔は眩しげに含み笑いを浮かべていたが、そうするうちにも「あの時」を思い出すのか、まるで島村の言葉が彼女の体をだんだん染めて行くかのようだった。女はむっとしてうなだれる…

  • 1位は、おしりたんていの新刊 〜2019.8.27 週間ランキング

    強いですね、おしりたんていシリーズ。新刊の「ラッキーキャットは だれの て に!」が出れば、たちまちベストセラーのトップ。今回も「ププッ」っと、事件を解決するのでしょう。幼児向けの、読み聞かせに適したシリーズなので、おならの音が「おしりたんてい」のトレードマーク。子どもたちに大受けするようです。 今週も文芸書はゼロで、小説家のみなさんにとって現状は厳しいですね。 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年8月27日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位「おしりたんてい ラッキーキャットは だれの て に!」 トロル 作・絵 ポプラ社 980円 2位「大家さんと僕 これから…

  • SF史に衝撃の1冊 中国現代文学から 〜「三体」劉慈欣

    書店の新刊本や文庫本コーナーをぶらぶらして、何冊か手に取り、食指は動くけれど買う決意のつかないことがよくあります。「あれ、まだ読み終わってないし」と、机の上の2、3冊を思い出したりして。「でも、どうせいつか買うなら、今買っておこうか」と思い直したり。同じ自問自答を繰り返し、気づけば店内を放浪して1時間近く。こんな馬鹿なことをやっているのは、わたしだけでしょうか? 書店で彷徨いモードに入ると、ありがちなのが、当初思いもしなかった本を買ってしまうことです。今回もそうでした。「現代中国最大の衝撃作」と帯にある、SFの大作「三体」(劉慈欣=リウ・ツーシン=、早川書房)。ところがこれが、帰宅して2日かけ…

  • 2位に「天気の子」 アニメノベライズが強い 〜2019.8.20 週間ランキング

    落ちないですね「大家さんと僕 これから」 。4週連続のトップです。9位の「劇場版 ONE PIECE STAMPEDE」は初のベスト10入り。2位「天気の子」の新海誠さんは、あの大ヒットアニメ映画『君の名は。』を制作した監督です。映画は新海さん自らノベライズして角川文庫に入っていますね。「天気の子」も同じパターンでの出版です。 では、今週のトップ10を紹介します。 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年8月20日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位「大家さんと僕 これから」 矢部太郎 新潮社 1,100円 2位「天気の子」 新海誠 作 ちーこ 絵 KADOKAWA …

  • 新しい階級社会の出現 今とは 〜「上級国民/下級国民」橘玲

    今週のベストセラー総合9位(2019.8.14集計)に入っていて、読んでみたのが「上級国民/下級国民」(橘玲=たちばな・あきら=、小学館新書)です。事前知識で興味をひかれたのですが、ちょっと参ったのが刺激的な言葉を連ねたカバー。「何だよこれ..」と、本を買って外したら、下にもう一枚普通のカバーが。アイキャッチの重要性は分かるけど、何だか読者も含めた出版文化の質について考えてしまったり。いえ、ふつうに面白い視点からの分析だったから、よけい派手な付け足しカバーが気になったのです。 上級国民、下級国民というのは、ネットスラングなのですね。知らなかった。では、昔からの上流階級、下流階級との違いは何か。…

  • だから、傷つく。血を流す。深く生々しく 〜「かんかん橋を渡ったら」あさのあつこ

    中国地方の静かな山あいにある、寂れた温泉町。流れる一本の川に、人しか通れない石の橋が架かっています。町の子どもたちはみんな、その橋を渡って川向こうの小学校に通い、昔、花嫁はその橋を越えて町へ嫁いできました。橋は、過酷で、ときに華やかに見える外の世界へと通じる出口でもあります。 「かんかん橋を渡ったら」(あさのあつこ、角川書店)は、子ども、食堂の大将、ヌードダンサー、写真館のお婆ちゃん....など、小さな町で必死に生きる人たちを描いた6編の連作集です。 物語の縦糸になってゆるく全体を繋ぐのは、元高校野球のエースだった大将が営む、食堂「ののや」。ただし、最近やたら流行っているような、一品料理や酒の…

  • 分断社会 実感していますか? 〜2019.8.14 週間ランキング

    トップの「大家さんと僕 これから」以下、4位までの順位に変動はありません。9位 に橘玲(たちばな・あきら)さんの「上級国民/下級国民」が初のランクインです。 「上級国民/下級国民」は、分断が進む日本社会を分析した小学館新書です。バブルのころ「1億総中流」と言われた日本社会は、中流層が消滅しつつあり、多数の下流層とごく一部の上流層への分断が進みつつあります。こうした新書がベストセラー入りするのは、分断社会の実感を多くの人が持っているからでしょう。 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年8月14日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位「大家さんと僕 これから」 矢部太郎 …

  • 抒情的な風景の お行儀の悪い話 〜「夕暮れまで」吉行淳之介

    「夕暮れまで」(吉行淳之介、新潮社)を再読すると、いまの時代、男と女のお伽噺のようにさえ思えます。1978年初版。野間文芸賞を受賞し、当時は中年男性と若い愛人を指す「夕暮れ族」という流行語まで生まれました。男女の1年半の関係を、7編の連作で構成した作品です。ドロドロした愛欲のストーリーを展開するわけではありません。7つの光景を切り取って短編にしてあるのですが、その何気ない切り取り方と筆致が、この作家の魅力です。 妻子ある40代の佐々と、22歳の杉子は、会えばホテルへ行く関係です。杉子は処女で、その1点だけは守りますが、そのほかはかなり大胆なことも受け入れ、佐々のほかに若い男とも付き合っています…

  • 4位に浜崎あゆみノンフィクション 〜2019.8.6 週間ランキング

    1位、2位は先週と変わらず。4位に小松成美さんの「愛すべき人がいて」が初登場です。小松さん、わたしにはサッカーを中心にしたスポーツのノンフィクションライターというイメージが強いのですが、この新作は少し気になります。 同じく初のトップ10入りした、8位の「『大家さんと僕』と僕」は、1位「大家さんと僕 これから」の番外編だそうです。作者の矢部さん、77年生まれで、お笑いコンビ・カラテカのボケ担当。又吉直樹さんもですが(ボケ担当も同じ)、芸人と二足のわらじを履く人の活躍が目立ちます。 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年8月6日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位「大家…

  • こわれていく「人」というもの 〜「百花」川村元気

    読後、最初に書く感想として適当ではありませんが、改めて本を眺め、カバー写真も含めて黄色をベースにした「いい装丁だな」と思いました。読む前は少しもそんなことを意識していませんでした。読み終わって初めて、静かにもの悲しい本の佇まいが際だって見えたのです。それは小説の力であり、装丁したデザイナーの力でもあるのでしょう。本の帯は、いらない。 作品は認知症を扱って面白いのですが、どこか映画のノベライズのようにも感じまい、そこは読む人次第で評価が分かれそうです。 認知症が進む独り暮らしの母と、働き盛りでもうすぐ第一子が生まれる息子の物語です。ピアノ教師の母が、シングルマザーとして息子を育てあげたという濃密…

  • DUOのこと、Eのこと  〜雑文

    Eが死体が見つかったのは、2月の寒い朝だったそうです。夜、大学の後輩から20年ぶりくらいにかかってきた電話が、前後の様子を伝えてくれました。後輩は淡々と話しました。学生時代、彼はEの文学観と才能に傾倒していました。だからこそ感情を抑えようと、静かな口ぶりになったのだと思います。 Eは未明まで、大学時代のサークル仲間と飲んでいました。皇居近くで、彼らは別れました。皇居のお濠に浮いているEを発見したのは、たまたま通りかかった人でした。「酔って落ちたのか、それともEさんは心臓に持病も持っていたらしいし」と、後輩は続けました。 ひと言で表せば、Eは昔の文学青年でした。大学の講義に出るより、サークルの部…

  • 桁外れなダイナミズム 〜「絶影 チンギス紀五」北方謙三

    史上最大規模の世界帝国・モンゴル帝国の基礎を築いた、チンギス・ハンの生涯を描く北方謙三さんのライフワークが、最初の節目の第5巻まできました。といっても「絶影(ぜつえい) チンギス紀五」(集英社)で、将来のチンギス・ハンであるテムジンは、まだモンゴル遊牧民の部族統一さえ道筋が見えていません。この調子だと、北方さんが存命中に作品は完結するのでしょうか。いや、北方さんには長生きしてもらい、ぜひ最後の「完」の一文字を愛用の万年筆で書いてもらわないと困りますが。 「この1冊だけでも十分に楽しめます」と、ふつうは言いたいところですが、こればっかりは、う〜ん。少なくとも1巻目から順番に。可能なら、チンギス紀…

  • 懐かしい風 アール・ヌーヴォーの華 〜アルフォンス・ミュシャ展図録

    ミュシャのポスターや絵画の魅力は、最初に出会って以来、わたしにとって不思議な「何か」であり続けています。その曲線と色彩、女性たちの表情。作品の前に立つと、パリでさまざまな文化が花開いたベル・エポック、叶うことなら行ってみたかったその時代の空気を呼吸している気がするのです。 演劇の告知であったり、たばこ会社のPRであったり、多くは1世紀も前の商業ポスター。デザインは当時でも懐古的な意匠だったと想像しますが、同時に斬新。一見矛盾する言葉の組み合わせですが「懐古的な斬新さ」があって、いまなお古びていないのを感じます。わたしは美術史は詳しくありませんが、デザインをアートとして認めさせた最初の人ではない…

  • 別れの言葉は? 8つのSF短編集 〜「さよならの儀式」宮部みゆき

    「さよならの儀式」(宮部みゆき、河出書房新社)は、8編で構成されたSFの短編集です。連作ではなく、完結するそれぞれの語りを、1話ずつ楽しむ1冊になっています。宮部さんには江戸時代を舞台にした「あんじゅう」のような怪奇談シリーズがありますが、「舞台を現代や未来に設定すれば、こんな作品になるわけか..」と思いながら読みました。 分裂していく親子や家族のあり方が行き着いた未来社会の「母の法律」、現代が舞台なら過去から訪れた自分と出会うタイムスリップもの「わたしとワタシ」、隕石衝突のあと知能を持つ宇宙人が人に入り込む「星に願いを」など、宮部さんの語りはどんな話も自然に楽しませてくれ、そしてちょっと考え…

  • 初登場2冊がワンツー・フィニッシュ 〜2019.7.30 週間ランキング

    1位、2位はいきなりの初登場で、ワンツー・フィニッシュです。先週は文芸書のランクインだ目立って「この夏は小説か」と思った矢先の、やや驚きの展開でした。「大家さんと僕 これから」はベストセラーになった前作の続編。ほっこり系の感動マンガは、これが完結編のようです。 2位の「時間の花束 Bouquet du temps」は一瞬、首をかしげたのですが、著者を見て納得。なんと、百恵ちゃんかあ...。キルト作品を集めた本ということですが、うーん、ぼくも立ち読みくらいはしたいかも。 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年7月30日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位「大家さんと僕…

  • 2005年(平成17年) ベストセラー回顧

    2005年は、振り返ってみれば「小泉劇場」に代表される政治の年だったのでしょうか。郵政民営化法案の参院否決で、小泉首相がいわゆる郵政解散に打って出ました。自民分裂を恐れず、「改革」を打ち上げて反対議員の選挙区に「刺客」を立てるなど、見えやすい政治手法とパフォーマンスが、見事にはまりました。 107人が亡くなった、JR福知山線の事故も衝撃的でした。車両故障やシステム異常ではなく、スピードの出し過ぎという単純な人為的操作が原因。つぶれた車両に最初に入ったのは救助隊員でした。ある新聞が救助隊員の体験をルポしていました。 <壊れて、物が散乱した車両のあちこちで、携帯の呼び出し音だけが鳴っていた。安否を…

  • 言葉の論理 感性の論理 〜「石原吉郎全詩集」(花神社、1976年)

    「詩」とは、どんな表現形式なのでしょう。そもそも「詩」というものを、どのように定義すればいいのでしょうか。 散文に対して、韻文があります。しかし韻律に則った言葉のつながりだけが詩かというと、そうではありません。極端な話、散文詩もあるわけですから。言葉の形式から詩を定義することは不可能です。かといって、書かれた中身で詩を定義することも乱暴でしょう。叙情的な詩もあれば散文もあります。 私がもっとも詩の定義に近いと思うのは、大岡信さんの文章に出てくる、次の一文です。 詩はもともと、他の言葉で言いかえ、パラフレーズすることのできないものとしてあるからこそ詩だ。 つまり解釈や解読ができず、書かれてただそ…

  • 日常生活の裂け目 現れるものは 〜「木曜日の子ども」重松清

    書店に行くと、新人や未読作家になかなか手を出せない自分がいて、理由は幾つかあります。がっかりするか、がっかりはしないまでも、「次も読みたい」とまで思えない経験をたくさんしてきたから。とにかく何でもがつがつ読みたい、という心の若々しいエネルギーを失った苦い自覚もあります。 そうなると得てして、自分にとって「外れの少ない」作家の本ばかりをつい選んでしまいます。一方で夢中になれる未知の才能に出会いたい、という欲望は根強く生き残っているから、満たされない欠乏感がまた募ることになって始末が悪い。 「木曜日の子どもたち」(重松清、角川書店)は、いろいろな本を手にとってページをめくった末に、レジに持っていっ…

  • 人としての傷、の痛み 〜「凍結捜査」堂場瞬一

    犯罪は、人の「負の真理」の発露です。犯罪を追いかけるとは、だれもが持つ、あるいは状況次第で持つかも知れない陰の貌を明るみに出していくことです。一方で犯罪には被害者がいて、殺人事件などは当人や家族にとってどんな理屈でも埋めることのできない不条理です。 すぐれた警察小説の面白さは、そうした抜き差しならない事実の上に、フィクションを成立させていることです。犯人を追いかける刑事も生身の人間ですから、捜査の進展に従って傷を負います。逆にスーパーヒーローのような刑事が登場する小説は、個人的につまらないですね。 「凍結捜査」(堂場瞬一、集英社文庫のための書き下ろし)は、国際化する現代社会を背景に、最後まで一…

  • 文芸書が熱くなってきた 〜2019.7.23週間ランキング

    「もっとざんねんないきもの事典」が2週間ぶりにトップを奪回し、「希望の糸」とのせめぎ合いが続いています。4位の「夏の騎士」百田尚樹 さん、9位 「てんげんつう」 畠中恵さん、そして 10位の「さよならの儀式」 宮部みゆきさんは初のベスト10入りです。 どれも本屋さんで平積みの新刊、ネームバリューを考えれば「くるだろうな〜」と予想していました。盛夏を目前に、文芸書が熱くなってきました。 ************* 週間ベストセラー<総合>2019年7月23日調べ TOHAN (価格は税抜き) 1位 「おもしろい!進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典」 今泉忠明監修 高橋書店 980円 2位…

  • 本屋さんへのレクイエム 〜 雑文

    仕事や個人的な旅行で、けっこう日本のあちこちを訪れました。旅先でぽっかり空いた時間が出来たとき、楽しみなのが、当てもなく街中を歩き回ることです。スマホで美味しい店とか安い飲み屋とか、観光スポットを探すわけでもなく、ただぶらぶら。 賑やかな街も、寂れた街も、歩く速さに合わせて移り変わる光景の中に自分を置いて、土地の人とすれ違い、様々な音や声を響かせる空気に洗われるのが好きです。 こんな性癖をもっているので、知らない土地に行くときは一人が望ましい。同行者がいると気遣わざるを得ません。その場合は、残念ながらわたしの楽しみを封印します。 当てもなく歩き回ると書きましたが、見つければ立ち寄るのが街中の本…