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ことばを食する
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私の主観による書評、ブックレビューです。小説のほか美術書、ノンフィクションなど幅広く扱います。ベストセラーランキングもチェックします。
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126回 / 365日(平均2.4回/週)

ブログ村参加:2019/05/27

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くーさんの新着記事

1件〜30件

  • 斬るか斬られるか ん、女子高生が? 〜「武士道シックスティーン」誉田哲也

    ただ相手を切ることしか、今は考えていません。勝ち負け、でもなく、ただ斬るか、斬られるか....それが剣の道だと思っています。 これ、16歳の女子高生が剣道部顧問の先生に吐くセリフです。彼女がボロボロになるまで読み続けているのが新免武蔵(あの宮本武蔵)の「五輪書」。ちなみに全国中学大会2位の実績あり(本人は極めて不本意)で、父は警察官です。名前は香織。 さて、一方.... 「ドォォォーッ」 あんまりやったことなかったけど、入りそうだったから、逆ドウ打っちゃった。 「ドウ」 うっそ。いや、うそじゃない。こっちの赤、三本上がってる。 補欠から急遽、先鋒に引っ張り出され、格上と対戦したら...。あれ?…

  • 29歳で逝った棋士 病と闘い、天才・羽生と競い 〜「聖(さとし)の青春」大崎善生

    小説・つまりフィクションは、事実を超えることができないーと感じるのは、「聖の青春」(大崎善生、角川文庫 第13回新潮学芸賞受賞)のような作品を読んだときです。幼いころから重い腎臓病という宿命を背負いながら、棋士という厳しい勝負の世界に生き、最後は平成10年、29歳で進行がんに散ったいのちの軌跡を丹念に追ったノンフィクション。 村山聖(さとし)は昭和44年、広島に生まれました。4歳を前に重いネフローゼになり、子ども時代を病院のベッドで過ごしました。聖は病院に縛りつけられながら、自由に羽ばたくことができる無限の世界を獲得します。それが将棋でした。 昭和58年、まだ中学生の聖は病気を抱えたまま大阪に…

  • わがまま人間のコンサート嫌い 〜雑文

    わたしは音楽が嫌いでありません。在宅の仕事なのでバックによく音量を絞り気味にしてクラシックやジャズを鳴らしますし、時には夜一人で、飲みながらお気に入りのCDに耳を傾けます。 しかし、困ったことにコンサートというやつがどうも苦手なのです。もっとはっきり言えば、コンサートホールの座席で過ごす時間は、ときに苦痛でさえあります。 たぶん、ステージ上にベルリンフィルがフルで揃い、超一流指揮者がワグナーあたりを振っているのなら、かなりの確率で楽しめるのかもしれません。あるいはとんでもないピアニストの出現に立ち会うとか。 現実としてそんなラッキーなことは、まずありません。特に田舎住まいだと。ほとんどのコンサ…

  • パンデミック 希望と絶望とは 〜「首都感染」高嶋哲夫

    中国で出現した新型インフルエンザウイルスが、パンデミックに至って世界中に感染が拡大。日本はどのように生き残りをかけるのかー。「首都感染」(高嶋哲夫、講談社文庫)は2010年に発表された、新型コロナを予言したかのようなクライシス=危機=ノベルです。 北京で開催中のサッカー・ワールドカップ。世界中から熱狂的サポーターが集まっています。同じころ、中国南西部の雲南省で、極めて致死率が高い新型インフルエンザが発生し、村が次々と全滅。しかしワールドカップを成功させたい中国はウイルスの情報隠蔽と封じ込めを図りますが、破綻します。 ここまでがほぼプロローグで、小説の書き出しからぞくぞくさせる設定ですね。やがて…

  • 花火はなくても 天の川はある 〜「おくの細道」松尾芭蕉

    必要に迫られ、芭蕉の「おくの細道」を再読しました。再読と言っても、前に読んだのがおよそ40年前となれば、ぼぼ初読のようなものです。部屋の古典を集めた一角から引っ張り出してきたのは、昭和53年3月15日発行の講談社文庫(板坂元・白石悌三 校注・現代語訳)。 当時は大学生で英文科、サークルは仏文研だったわたしが、どうしてこの文庫本を買ったのか、今となればまったく謎です。ともあれ、本文は70ページに充たない俳句の紀行文。必要箇所以外は斜め読みすれば(多少意味は分からなくても...w)、それほど時間はかかりません。 一読者として思ったのは、2点。名作と言われるものは、書き出しがいい(ひねくれた言い方を…

  • 新型コロナは何をあらわにしたのか 〜「疫病2020」門田隆将

    本来なら日本はいまごろ、7月24日(金曜日)に開幕する東京五輪を目前にして、日に日に空気がたかぶっているはずでした。安倍政権にとっては、昨年の消費増税による景気低迷を一気に消し去る、盤石のロードマップでもありました。ところが2020年は日本にとって、世界にとって、あまりにも特別な年になったのです。 「疫病2020」(門田隆将、産経新聞出版)は、新型コロナの第1波がピークを越えたいま、中国・武漢から始まったパンデミックと日本を検証したノンフィクションです。2波、3波がほぼ確実にやってくると専門家たちが予想するからこそ、備えるためにこの半年を仔細に振り返ることは欠かせません。 14章で構成。今年1…

  • 生きる人間のリアル 驚くべき<真実> 〜「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

    「小説」と「文学」の違いは何なのでしょう。文学の1ジャンルが小説である、というのは分かりやすい解釈ですが、読者として作品に接する皮膚感覚で言えば、いい小説が必ずしも優れた文学ではありません。つい、おかしなことから書き始めてしまいました。 「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ、ハヤカワepi文庫)を読んで、わたしの感覚がとらえたのは「久しぶりに文学を読んだ」でした。カズオ・イシグロさんの作品は初読です。 生まれ育った施設のこと、施設を出てからの生活や介護人としての仕事。キャシー・Hという女性の日常と内面が、きめ細かく描かれていきます。緻密で冷静な筆致が、一人の人間のリアルを切実に浮かび上がら…

  • 七夕とアルゲリッチ 〜雑文

    7月7日、七夕。外から聞こえてくるのは、激しい雨の音ばかり。九州では洪水被害が甚大で、織姫と彦星が出会う天の川は厚い雲の向こうです。七夕伝説は中国から伝わり、古代からあったお祭りでした。 だから7月7日というのは本来は旧暦の日付で、明治になって新暦(グレゴリオ暦)になったので、本当なら8月に昔からの七夕の日がやってきます。私の地元でも、地区によって七夕祭りを7月に行ったり、8月だったりするのはそのせいです。 それにしても1年に1度きりの逢瀬。スマホでラインやメッセンジャーその他がイライラするほど鳴る現代から見ると、まさに伝説の世界です。いや、いくら好きになってもスマホで無視されたら、年に1度も…

  • 我、CDプレーヤーを物色す 〜雑文

    引き受けた仕事が進まず、本が読めないと前回の稿でぼやいたばかりですが、今度はCDプレーヤーが壊れました。あー、最悪!。在宅ワークなので、昔買ったステレオ・コンポでCDを流しながら、胃袋には何杯もコーヒーを流し込みつつ、仕事をするのが習慣になっています。 FM放送では人の声が聞こえるので、書き言葉を扱う仕事の集中力の邪魔になります。やはりクラシックのCDに限るというのが、個人的な好み。それも、オペラなど人の声が入るやつは理解不能な外国語であってもNG。 でもこのCDプレーヤー、世の中がLPからCDになって間もないころ買った約40年前の代物なので、長きにわたってよく頑張ってくれました。これまでCD…

  • タマネギを炒める 〜雑文

    このところ、腰を据えて本を読む時間がありません。ある長い原稿のアンカー(最終的な編集、点検役)を頼まれて、片手間ではできないと分かりながら断りきれなかったのです。原稿用紙に換算すると300枚ほど。やはり一筋縄ではいきません。まだ1、2週間はかかりそうです。 気分転換にタマネギを炒めました。台所に立って、久しぶりにハンバーグを作ったのです。 料理を趣味にしていたのは、20代後半から40代の終わりころまででした。仕事がもっとも忙しい時期でもありました。今は「ブラック企業」という言葉がありますが、振り返れば当時の環境はブラックそのものだったのです。 台所に立てるのは週1回もなかったにせよ、どうやって…

  • 雨を見上げてそのまま 唇が欲し 〜「サラダ記念日」俵万智

    おいおい、なんで今ごろ「サラダ記念日」(俵万智、河出書房新社)なんだよ。と、わたしがこの稿のタイトルを見たら思うでしょう。いや、若い世代はそもそもこの本を知らなくて、新作のライトな恋愛小説か何かだと思うのかも。 小説ではなくて、歌集です。舞台裏を明かせば、来週締め切りが来るコラム(貴重な書籍代&酒代稼ぎ)のネタを探して、ネットで『今日は何の日』と言うページを見ていたら出てきたのです。 <7月4日=梨の日、5日=みたらし団子の日、6日=サラダ記念日....>。えっ。本物の記念日になってたの? 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 初版は1987年5月8日。わたしの手元にあるの…

  • ホタル狩り 〜雑文

    梅雨に入り、ホタルが舞い始めました。さすがに近所で見ることができる人はごく少ないにしても、探せば結構あちこちに観賞スポットがあって、わたしが暮らす街は車で30分も走れば行けるのです。東京、大阪のような都市部にお住まいの方は、そうもいかないのでしょうけれど。 新型コロナによる自粛もひと息ついた先日、久しぶりに夜は外食にして、暗闇に包まれるころ、里山が迫る農村地区を訪ねました。ホタルを見ようと。そんな来訪者のために公民館の駐車場が開放されていて、地元の人たちの配慮がうれしい。 青白い明滅の中に立てば、しばし俗世の心配事を忘れます。沢沿いの繁みのあちこちに光り、木立の葉にも。舞うホタルは、農道を挟ん…

  • 老いを描いて容赦なく 〜「家族じまい」桜木紫乃

    <老い>や<死>と、どのように向き合うか。そもそも、人は覚悟を決めてから老いるものではなく、生きることに追われているうち、気づいた時には既に、老いに伴うさまざまな現実が降りかかっているのでしょう。 普通の人間にとって、飛び抜けた成功や栄光は別の世界の物語で、喜怒哀楽の=しかも「喜」と「楽」の比率が極めて低い=積み重ねが、一生なのかもしれません。「家族じまい」(桜木紫乃、集英社)には、そんな大人の諦観が静かに流れていて、読むほどに心に染みてきます。感傷はかけらもなく、日々の細部の厳しい現実とともに。 親とそれぞれ家族を持つ姉妹を軸に、互いに関係する5人の女性を各章の主人公にした連作のような構成。…

  • 静かに読み浸る 修羅 〜「あちらにいる鬼」井上荒野

    本猿さんのブログ「書に耽る猿たち」に「しとしとと雨の降る午後に、雨音だけが響く中、静かに読み浸っていたいような作品」と紹介されているのを読み、無性に読みたくなった小説です。そして「あちらにいる鬼」(井上荒野、朝日新聞出版)は、まさにそんな1冊でした。 本猿さんの落ち着いた文が魅力を伝え、実際に読めば、小説は書評が伝える通りの世界で迫ってきます。わたしが読み終えたのは、梅雨入りした翌日の昼下がりでしたが。 honzaru.hatenablog.com 作家の故・井上光晴と瀬戸内寂聴さん(当時は瀬戸内晴美)の不倫が始まった1966年、光晴の娘は5歳でした。その娘が、著者の井上荒野さんです。 小説は…

  • <断捨離>を試みた<真逆>の結果について 〜雑文

    <断捨離>は、比較的新しい言葉ですが、あらゆる年代の人にすっかり定着した感があります。 <真逆=まぎゃく=>という新語も、20年ほど前から若い世代を中心に使われ続けているようです。実はこの言いよう、わたしのような「気持ちだけ若い」人間には、いささか抵抗感があるのではないでしょうか。白を「真っ白」、新しいを「真新しい」と強調する用法と同じなのに、なぜ引っかかるのか自分でも不思議です。 <断捨離>に戻れば、わたしはかなり自信があります。日常生活で、捨てるのは苦手ではない。ただし、本という唯一の例外があり、これがなかなか曲者なのです。おかげで年々狭まっていく物理的と言うか、3次元のと言うか、とにもか…

  • 巨匠たちのつぶやき、そして肉声 〜「世界素描体系」I〜Ⅳ、別巻2

    素描、つまりデッサン(フランス語)、ドローイング(英語)の魅力は何かと自問すれば、「画家の素顔に出会えること」だと思います。油彩の完成作品は、画面の四隅にまで画家の神経が行き届き、満を持して発表する<華やかな舞台>のようなもの。 対して素描は、完成前の<舞台稽古>でしょうか。そこからはしばしば、完成形からは聞こえない画家たちの肉声が漏れ聞こえてきます。絵画の<舞台稽古>と言っても、素描にしかない芸術のきらめきがあふれています。 「世界素描体系」(講談社、別巻含め全6巻。監修 小林秀雄、東山魁夷、山田智三郎)は、中世から20世紀中ごろまでの、美術史に残る膨大な素描を厳選(それでも1000点以上)…

  • 文化を担った人々の熱い舞台裏 〜「神楽坂ホン書き旅館」黒川鍾信

    ひと昔前まで、脚本家や小説家はどんなところで、どんなふうにして原稿を書いたのでしょうか。「神楽坂ホン書き旅館」(黒川鍾信、NHK出版)を再読して、不覚にもところどころ涙しそうになりました。昭和の物書きたちと、彼らを支えた無名の人びとの息遣いが、温かくほろ苦く、胸に染み通ってくるからです。 それにしても文章が伝えるこの静かな力は、いったい何なのだろう。読みながら不思議でした。 昭和50年代の東京で大学生活を送ったわたしにとって、地下鉄東西線の高田馬場、早稲田、神楽坂、飯田橋の間は、さまざまな思い出が散らばった土地です。当時のわたしは知る由もなかったのですが、神楽坂のとある路地を入ったところに旅館…

  • 朝に人を殺し 昼に子を助ける 〜「異端者の快楽」見城徹

    幻冬舎代表取締役社長、そしてカリスマ編集者である見城徹さんが、対談を通して自らを語っているのが「異端者の快楽」(幻冬舎文庫)です。見城徹という一人の編集者・人間がくっきり浮かび上がるとともに、対談相手の中上健次、石原慎太郎、さだまさしさんらのふだん見えない生の声が聞けた(読めた)のも楽しかった。 対談9本にエッセイ、「発言」と題したインタビューや講演が収録されています。 2008年に太田出版から刊行された単行本に、新たな序章を加えた文庫版です。収録されている中上健次との対談は1987年ですが、当時の中上はどんな壁にぶつかっていて、IT時代の黎明期に文学のそんなあり方を考えていたのか....と、…

  • ときに劇薬 使用法にご注意を 〜「逃亡者」中村文則

    仕事が首尾よく終わって、仲間と握手。仲間は魅力的な女性で、顔には出さないけれど本当は強く惹かれています。ごく短い時間重なり合った、彼女の冷たい皮膚の感触、薄い掌と指の儚げな、しかし芯の通った強さと体温に触れ、彼女という<特別な存在>が掌からあなたの心に染み込んできます。 ところが、これがもし憎み、恐れている相手との握手だったらどうでしょうか。 手というパーツは骨、複雑な関節類、筋の構造、そして体温にだれも大差はありません。しかし握手という単純な行いにさえ、人それぞれ天と地ほど異なる現実の感触があり、みんな自分だけの現実のパーツを積み上げて日常を生きています。 世界を作り上げているのは、実は膨大…

  • レース編みと、一人称小説について 〜雑文

    「今週は絵よりも読書をメーンにしよう!」と思っていたのですが、いやはや、やはりスケッチブックを開いて鉛筆でコツコツやる時間が多くなっています。鉛筆でレース編みを描いてみよう、などと考えたのが(いま思えば大それた考え!)そもそものまちがいでした。 どんでもない苦行に自らを追い込んだようなもので、すでに寿命を3日ほど縮めた気がします。首周りの片方のレースはもう、描き込む気力なし....。現代の写実画家さんの作品には、レースの服などが当たり前のようにう描かれてあって、そそられてしまったのが身の程知らずでした。でもプロの凄さを改めて感じることはできました。 前回も書きましたが、中村文則さんの「逃亡者」…

  • <スマホ>というツール そして手 〜雑文

    この1週間、本(「逃亡者」中村文則)のページをめくるより、はるかに多くの時間、鉛筆を持ってスケッチブックを開いていました。「逃亡者」については、とても面白いので読了後に書きます。さすが中村さん、という感じで読み進めています。 デッサンは、<スマホ>についてとりとめなく思いをめぐらしながら描いていました。<手>を描くのが最初のテーマだったのですが、スマホを操作する手を描き込むにつれ、現代において手の持つ表情とスマホは切っても切れない関係に見えてきたのです。 <メッセージ> 鉛筆、4B〜4H 例えば人と人の出会いと別れに、スマホはなくてはならないツールです。さまざまな個人のドラマと喜怒哀楽の<通路…

  • 深すぎる断絶 そして再生の物語 〜「流浪の月」凪良ゆう

    読み終えて浮かんだのが「ずっしり残る、不思議な作品」という、何を伝えたいのか自分でもよく分からない言葉でした。「流浪の月」(凪良ゆう、東京創元社)は2020年の本屋大賞受賞作。本屋大賞は読者の期待をほぼ裏切らないので、実は芥川賞や直木賞より楽しみにしていて、今年も<当たり>でした。 ページをめくると、心の動きや状況描写が丁寧かつ的確なので(センスいいなあ!)、<読む>という行い自体を楽しめました。ストーリーはときどきハラハラもさせてくれますが、基本的には落ち着いた作品です。では、いったい何が<ずっしり>で<不思議>だったのかー。 9歳の更紗(さらさ)は叔母の家に引き取られ、息を詰め、ある不幸に…

  • 心に持ち帰る 本の言葉 〜 「日本の文学論」竹西寛子

    読み終えていない本について書くのはどうなのかーと思いますが、幾つもはっとさせられる文章が出てきて、しかも途中から飲みながら読んでいるので、気づけばほろ酔い状態、となると読む集中力は途切れがちで、むしろ気ままに自分の思いを書く方が適当なのだと思い至りました。以上、つまらない前置き。さて 「日本の文学論」(竹西寛子、講談社)は、平成5年から6年にかけて「群像」に掲載された論考11編を集めた、クロス装の上品で落ちついた装丁の本。単行本は絶版ですが、文庫があるようです。日本の古典、主に歌論と俳論を軸にして、竹西さんの思考が綴られています。 わたし、短歌や俳句はてんで門外漢ですが、読み進むほどに「おお!…

  • 一気読みのハードボイルド 〜「蒼の悔恨」「青の懺悔」堂場瞬一

    <ハードボイルド小説>に明確な定義があるのかどうか知りませんが、個人的には「生き方に極めて強いこだわりを持つ男が主人公で、試練を乗り越えた後に深い心の傷を負っても、決して生き方を変えることができないことを静かに記述した物語」ということになるでしょうか。 「蒼の悔恨」「青の懺悔」(堂場瞬一、PHP文庫)は、そんなわたしのハードボイルド観のど真ん中にはまる2作でした。 「蒼の悔恨」の主人公は、連続殺人犯を追う神奈川県警捜査一課刑事。犯人に刺されて瀕死の傷を負い、操作から外されます。コンビを組んだ若い女性刑事も傷を負った右手が麻痺したまま。ところが県警内で<猟犬>と呼ばれる彼は、入院中の病院から逃げ…

  • 絵について 新しい寄り道 〜雑文

    4月に入ってから、自由に使える時間は本より絵の方に傾いています。現代日本の写実絵画について、このブログでも2回取り上げてきました。昨年、諏訪敦さんの絵画作品集「どうせ何もみえない」(求龍堂)について書き、今月に入って別冊太陽「写実絵画の新世紀」(平凡社)を取り上げました。 こうした個人的な流れが、困ったことに、わたしの中に「描いてみたい」という気持ちを生み出したようなのです。あー、ホントに年寄りの冷や水だあ、と痛切に思いつつ、最近は読書より、鉛筆を持ってしこしこスケッチブックを黒くしていく作業に熱中しています。 全く描いた経験がなかったわけではなく、高校時代は美大進学も<ちらり>とだけ考えまし…

  • ふつうを書いて、味わいあり 〜「田舎の紳士服店のモデルの妻」宮下奈都

    数日前に手をつけたわが部屋の本の整理、まだ終わりそうにありません。とりあえず四方の壁面を複数エリアに区切り、1エリア限定で進めています。もし該当エリアの本を、全く別エリアに存在する(はずの)本と一緒にしたいと思っても、涙を飲んで無視。処分する本も渋々ですが、選別しています。 今日も例によって、たまたまページをめくってしまい、わたしの作業を中断させる困った1冊が「田舎の紳士服店のモデルの妻」(宮下奈都、文春文庫)です。初読がいつだったか明確な記憶がなく、奥付を見ると<2016年4月10日 2刷>なので、4、5年前ですね。 ところが、漠然とした読後感がイメージとしてあるだけで、中身の具体的な記憶が…

  • 切なく悲しい ハッピーエンド 〜「金魚姫」荻原浩

    ハッピーエンドは心軽くなるけれど、たいていすぐに忘れる。悲劇だったら、心に刺さるけれど辛い。「金魚姫」(荻原浩 角川文庫)は、そのどちらでもなく、どちらでもあるような、絶妙のストーリーでため息つかせてくれます。 恋人にふられ、ブラック企業に人間性を奪われ、アルコールと睡眠導入剤で生きながらえている青年・潤。祭りの金魚すくいで1匹の琉金を掬った夜、赤い衣をまとった美女が部屋に現れて.....。 現代日本をベースに、1700年前の中国、昔の琉球や長崎へと時空が飛ぶ夢幻譚です。現れた美女は金魚の化身ですが、そもそも金魚はかつて悲劇的な死を迎えた美女の化身。それにしても、読み進みにつれて人に化身した金…

  • 心地よいウイット 〜「ニューヨーカー・ノンフィクション」常盤新平 編・訳

    最近は<巣ごもり>気味なので、このさい難破船のごとき部屋の本を整理しようと思い立ったのが昨日。開始15分で早くもどう収拾をつけるか茫然とし始め、手にとった昔の本をちょっと開いてみたら、現実逃避という悪癖が即座に作動して読みふけってしました。で、この部屋、どうしよう...。 「ニューヨーカー・ノンフィクション」(常盤新平編・訳、新書館 たぶん絶版)は1982年刊。ニューヨークの週刊誌「ニューヨーカー」に掲載されたノンフィクションから、英米文学者で抜群のセンスを有する常盤さんが、気に入った作品を選んで訳した1冊です。 日本のスポーツ総合誌といえば、なんと言っても「Number」ですが、ライターたち…

  • 大きな試練と小さな幸せ 新型コロナ 〜雑文

    土曜日は本来なら大型書店に出かけ、本を物色してから、店内にあるタリーズコーヒーでのんびりなのですが、新型コロナ蔓延とともにそんな生活習慣を失ってしまいました。ただ、できる範囲での<巣ごもり>を心がけても100パーセントの<引きこもり>生活は不可能です。 先日、仕事上の必要が生じてかつて所属していた新聞社に足を運びました。過去記事を検索するためです。調べたごく一部を紹介します。 2020年の今からちょうど100年前、大正9年(1920年)1月14日に発行された富山新報の記事です。富山新報は富山県で発行されていた日刊紙で、現在の北日本新聞。 社会面に「流感の死亡者続出」の見出しに続いて、「元日から…

  • 謎解きは運命の軌跡 〜「草花たちの静かな誓い」宮本輝

    「遺体はどうするんです?」 伊豆・修禅寺温泉の高級旅館で急死した63歳の女性。遺体と遺品を引き取りに来た甥の青年、弦矢(げんや)を、五十過ぎの警官が地味な警察車に乗せて案内し、そう問いかけます。太陽の光が優しい、4月半ばの若葉の季節。一人の女性の死の手続きが淡々と描かれる、どこか波乱含みの導入部です。 亡くなった女性はアメリカで結婚して日本の親兄弟と絶縁し、夫に先立たれ、久しぶりの一時帰国でした。叔母の遺骨を持ってアメリカに渡った弦矢は、40数億円の遺産が自分に遺してあると弁護士から伝えられます。ただ、彼女には27年前にショッピングセンターで忽然と姿を消した幼い娘がいて、今も行方不明....。…

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