【連載】藤原雄介のちょっと寄り道(51)かくも怪しきロシアン・サウナヘルシンキ(フィンランド)、モスクワ(ロシア)1973年、まだ春浅いヘルシンキ。古惚けた建物の半地下にあるヘルシンキ最古の公衆サウナ「コティハルユサウナ」に行ったのだが、残念ながら内部の情景など鮮明は覚えていない。おぼろげな記憶を辿ると――湯気の充満した洗い場に差し込む太陽光がきれいな放射線を描いていた。石造りのひな壇が5段ほど設えられた、ほの明るいサウナ。その中では、常連客とおぼしき地元の人たちが、穏やかな様子で、白樺の枝葉を束ねた作ったヴィヒタ(英語ではウィスク)でお互いの身体をさすったり、叩いたりする音がリズミカルに響いていた情景が浮かぶ。他に覚えていることといったら、洗い場の石の床がヌルヌルしていて、部屋の隅っこにはコケが生えてい...かくも怪しきロシアン・サウナ【連載】藤原雄介のちょっと寄り道(51)