『森林通信』 伊藤 比呂美著 久しぶりの比呂美さんの本。コロナ禍の2022年の夏、比呂美さんはドイツに3ヶ月ほど滞在されたのだが、これはその報告書ともいうものだ。比呂美節ともいうべきか、つらつらとした文章に加え、今回は横書きである。横文字の引用があるからだろうが、思ったほど読みにくくはない。 何のためにドイツに行かれたのか。「鴎外」の足跡をたずねるということのようにも思えるのだが、鴎外についての考察は当方の理解には荷が重すぎる。それよりも原始人派で自然派の比呂美さんのドイツ発草木事情ともいうのが、面白かった。 街路樹の根っこで歩道の石畳が不揃いに盛り上がっている。「歩くのに気をつけて」と言われ…