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  • 蜥蜴

    『作家の老い方』 草思社 小説家、詩人、歌人、俳人、評論家などなど人生の先達たちの「老い」に関する文章を集めたものだ。 心に残った歌がある。 冬茜褪せて澄みゆく水浅黄 老いの寒さは唇(くち)に乗するな 齋藤 史 このアンソロジーのなかで二度も出てきた歌である。 ひとつは山田太一さんのエッセイ、彼は座右の銘のようにこの歌を掲げて、ときどき老いのボヤキを反省されているらしい。 もうひとつは中村稔さんのエッセイ、俳人と歌人と詩人の老いの作品を比べての話だ。齋藤史さんの作品には、「心身の衰えを嘆いた作」も「自己を憐愍する作」も見出すことはないと感動しておられる。史さん九十歳という年齢においておやである…

  • 蝉しぐれ

    『石垣りんエッセイ集 朝のあかり』 石垣 りん著 一四歳で働きに出て、一生自分の足だけで立ってきた人らしい矜持、確固とした意志と深い思慮に貫かれたエッセイ集である。仮借のない鋭い観察とアイロニー、辛辣な眼差し、一方日の当たらぬ者への優しさ、どちらも彼女の詩にも共通する姿勢である。 長年勤めつづけてきた職場の機関紙にさえ、彼女ははっきりとものを言う。 「私たちの銀行の人たちは大へん良い顔をしている。」「ことにわが子息たちはまことに良い顔をしている。」自分たちのエリート性があからさまな職場新聞内のこういう一文に対して、「いい顔をしている人間の集まりであるという銀行という村落の幸福、というのは一体ど…

  • 熱帯夜

    小津映画を観る 連日の猛暑である。連休を利用して下の孫が受験勉強に来宅、冷房のリビングは終日勉強室である。トシヨリは奥の和室に閉じこもり、暑さで半ボケの頭で映画を観ることに。 小津作品は「東京物語」しか観てなかったが、先日「彼岸花」を観る。この作品はよさがわからず、不遜にも小津作品とはこんなものかと落胆したのだが、今日観た「麦秋」は秀作であった。 「東京物語」と同じように、老夫婦からの視点で描かれた脚本で、トシヨリだけに余計に共感できるところがあったのかもしれぬ。 戦争の災禍を含め、いろいろあったが、自分たちの人生もそこそこ良かったのではないかと二人でうなずき合う述懐は、どちらの作品にもあって…

  • 梅雨深し

    『縄文文化と日本人』 佐々木 高明著 その2 「成熟した採集社会」の東日本に比べ、何かと見劣りしていた西日本に、縄文晩期水田稲作農耕が伝来した。初期は畑作物の渡来で、やや遅れて本格的な水田稲作農耕が伝わったらしい。 もともと雑穀やイモ類を主作物とする焼畑農耕が行われていた照葉樹林文化圏では、水田稲作農耕を受け入れる基盤が形成されていた。北九州からから始まって、二三世代のうちに一気に伊勢湾西岸にまで広がったという。 最初は陸稲的性質と水稲的性質が分化していない種類だったが、後に早生のジャポニカの種類、ウルチ種よりモチ種が伝わったらしい。伝来ルートはいくつか考えられるが、淮河流域や山東半島付近から…

  • 初蝉

    『縄文文化と日本人』 佐々木 高明著 その1 また、縄文である。私には手強い本だが興味深い内容なので、ここで大雑把な紹介を試みてみようと思う。 問題は「日本文化はどのようにして成立したのか」ということである。筆者は「日本文化は単一の稲作文化である」(柳田国男など)という立場には立たない。稲作伝来以前、つまり縄文時代に「すでにいくつかの文化の波がアジア大陸から日本列島に波及し、それらの異質な文化が複合して日本文化を構成した」というのである。 筆者は日本列島の東西の文化的違いに注目する。昔から言われる東日本と西日本の違いである。例えばそれは東日本での囲炉裏での煮炊きや西日本での竈での煮炊き、言語的…

  • 梅雨晴間

    『口訳 古事記』 町田 康訳 町田康による大阪弁(?)の『古事記』である。面白いのなんのって、破天荒な古事記である。例えば、因幡の白兎とオオクニヌシノミコトのやりとりは 「あいつら、騙して渡ったろ、と思ったんですよ。あいつらアホなんで」 「騙す、ってどうすんの」 「まず、海辺に行ってね、『おーい、サメ』って言うんです」 中略 「するとね、サメが怒って、『アホンダラ、わしらの方が多いわい』と言った、そこで僕が、『じゃあ、比べてみようじゃないか。仲間を集め給えよ。』と言うと、アホなんで熱くなって、『集めたら、ぼけ』と言って仲間を集めたんでね、・・・」 この結果がどうなったかは、ご存知のところ。まあ…

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