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  • 春深し

    『風土記博物誌』 三浦 佑之著 現存する『風土記』はすべて写本。不完全なものを入れて五カ国と、後世の書物に引用された逸文が少し。されど「八世紀以前の日本列島のあちこちのすがたを窺い知ることのできる文学記録」であると、三浦さん。 その『風土記』をいくつかの視点で丁寧に読み解いてみようとされたのが、この本だ。 まず興味深いのは「なゐふる」(地震)の話。豊後国風土記には、天武天皇の時代に「大きな地震があり、山や丘は裂け崩れた。」温泉が噴き出し、神秘的な間歇泉の湧出もあったという。 どうも天武帝の時代は、地震の大活動期だったらしく、『日本書紀』には頻繁な地震の記述があり、今憂うる「南海トラフ地震」の最…

  • 牡丹

    映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 』を観る 2019年に公開されたアメリカ映画。次女のジョーが昔を振り返るかたちで話が進み、過去と今が激しく交差する。もとの展開がわかっているからいいが、初めてなら、かなり混乱するにちがいない。つまり何度もリメイクされた話ならではの描き方。そしてこれはその最新版だ。 『若草物語』は何度観ても、何度読んでも、私にとっては楽しめる物語のひとつ。そういえば『赤毛のアン』などもそのうちのひとつだが、どちらも似たような展開である。貧乏で苦労しながら、明るさを失わず、ものを書き、自立を目指し、教師になる。そんなことをTに話したら、斎藤美奈子さんの本を紹介…

  • 遅き日

    『猫を棄てる』 村上 春樹著 上手い文体だというので、Tから回してもらう。かかりつけ医の待合室ですらすらと読めた詩のような小冊。 過日読んだのが娘たちが書いた父親なら、これは息子の書く、父親との和解の話。父親から受け取った命の連鎖を確かめるもので、誰にとっても、親たちの出会いがなければ、生を受けることもなかった自分を振り返る話でもある。 あたりまえの因縁だが、しみじみ考えると不思議な思いにさせられるもので、反発した親の歴史もまた、「意識の内側で、あるいはまた無意識の内側で、温もりを持つ生きた血となって流れ、次の世代へと否応なく持ち運ばれていくもの」にちがいない。 当代人気の村上春樹だが、『ノル…

  • 春の雨

    『Nさんの机で』 佐伯 一麦著 作家生活三十年めにしてオーダーメイドで机をこしらえられたという。楢材の堅牢な机らしい。その机に向かい、物にからめながら来し方を振り返ったエッセイ。 世間の不条理にハリネズミのように挑みながら、自分の生き方を模索していた『ア・ルース・ボーイ』の青年。彼の行く末を見守らんと密かに応援をしてきたが、今や押しも押されもせぬ大家となられた。取り上げられるもののいくつかは、大家らしいこだわりもある。 私小説の作家が私生活に満足したとき、何を書くのだろう。『山海記』以来、作品を読んでいない。 Nさんの机で作者:佐伯 一麦田畑書店Amazon 書を膝に舟漕ぐばかり春の雨 ムスカ…

  • 花は葉に

    映画『家族を想うとき』 ケン・ローチ監督 雨なので外仕事もできず、この冬11回目のマーマレード作りをする。ひとさまに押し付けたり、冷凍にしたりと作りに作ったが、多分これが最後。もう木にはいくつもなっていない。1回ごとに大ぶりを4個ずつ使ったのだが、それでもなった何分の一か、今になると甘味も増して美味しいのだが、皮をむくのが大変で敬遠される。うちの辺りには結構甘夏があるのだが、落ちるに任せているか、ダンボールに「お好きなだけどうぞ」と出してあるかにしても、はけるようにはみえない。 さて映画だが、社会派監督らしく最後まで救いがなくて、辛かった。 主人公のリッキーはマイホームの夢をかなえるために個人…

  • 春うらら

    『この父ありて 娘たちの歳月』 梯 久美子著 著名な女流作家たちに、父は何を残したか。彼女たちの筆で書き残された、父親たちの姿を紹介した一冊である。登場するのは、渡辺和子、斎藤史、島尾ミホ、石垣りん、茨木のり子、田辺聖子、辺見じゅん、萩原葉子、石牟礼道子。 総じて比較的長命だった娘たちで、(どうしてか母親とは早くに別れた人が多い)父との死別後も長く生き、「書くことによってその関係を更新し続けた」人たちだ。 父親像を浮き彫りにするには、短すぎるところがあるし、父親像というより娘たちの生き方そのものが興味深かった人もある。この何人かのうちで、良いにしろ悪いにしろ、特に父親の影が大きいと思ったのは、…

  • 飛花落花

    花にかまけて うちの桜 うちの桜も満開となり、ときに、はらはらと散り始めた。 一昨日には娘一家と花見に出かけた。といってもこの辺りの桜の名所をぐるりと廻っただけだが。木曽川堤、境川堤といづれも「桜百選」のひとつで、見事な桜並木だ。 友人は自ら「さくら狂い」と称し、毎日のように花巡りをし、昨日は「淡墨桜」まででかけたらしい。平地より遅いと思ったがすでに満開だったとのこと。今年はどこも早い。 飛花落花ものを忘れていく話 Amazonのセールでipadminiを購入。今までの古い型と比べると、いろいろ利点があるようだが、まだ使いこなせていない。広告を遮断するアプリでYouTubeで音楽を聴くのがいち…

  • あさり飯

    丹後への旅 一日目 陽気に誘われれ、今年一回目の旅をする。コロナはまだ終わったわけではなく、まずは車で出かけられる所をと、丹波への旅。いつものようにオバアの勝手な興味に付きあわせて「神社・仏閣+古代史」の旅である。 丹波といえば「天橋立」、オバアはすでに三回目であるが、同行者たちは初めてだ。オバアが最初に訪れたのは、花も恥じらう大学一年生の夏。おバカ女子大生の典型だと連れ合いには腐されたが、ハチャメチャ旅であったような遥かな記憶。その当時と比べれば、お店も人出も多く、何より外国語が耳に入る。 知恩寺山門 知恩寺 多宝塔 まず取り付きの「知恩寺」。日本三大文殊菩薩の寺らしいが、秘仏で拝観はできぬ…

  • うぐいす

    『倭人伝を読みなおす』 森 浩一著 森さん最晩年、渾身の力が入った書である。「八一歳になって倭人伝の問題点を自分なりにまとめられたのは人生の幸運といってよかろう。」と書いておられる。 陳寿の倭人伝は、ほぼ同時代史料で史料的価値は高い。「倭国伝」でなく「倭人伝」であるのはなぜか。陳寿は分裂状態にある倭国を書いたので,それは「倭国伝」ではなく「倭人伝」になった。 この本で森さんははっきりと邪馬台国九州説を表明されている。誤解のないようにいえば、九州邪馬台国東遷説である。道程表の矛盾などについてはどう説明がされたか気になる人は読んでいただくといい。 女王国と隣接する狗奴国の争いに苦慮した魏は、帯方郡…

  • 椿

    『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえりお母さん』 信友 直子著 先にU-NEXTで観た映画の続編である。すでに去年劇場公開はされているようだが、U-NEXTでは観られないので、本を借りた。 介護サービスを利用されて二年、時に問題が発生しても家族の愛とプロの熱意で、自宅で過ごしておられたお母さん、猛暑の脱水状態がたたったのか脳梗塞を発症される。左半身が完全麻痺となられたが、逆に認知症の自覚は軽減されたという。家に帰りたい一心で懸命にリハビリをされ、お父さんも毎日一時間をかけて通院、献身的に介護された。この頃を、筆者は「神様からの贈り物」と名付けたほど、穏やかな時間だったようだ。 しかし…

  • 紅梅

    『語っておきたい古代史』 森 浩一著 読書に気が乗らないということがあり、季節外れで始めた編み物に夢中になったりしている。編み物も根を詰めると倦みてくるから、養老先生ではないが。身体を動かすことが一番と(養老さんは煮詰まったときは身体を使うがよいと)草取りに精を出す。ところが、この季節である。酷い花粉症でどうしようもなく、また逼塞する次第。 こんなときには好きな「古代史」関連をと、古い既読本を出してくる。講演を書籍化したものでわかりやすいが、二十年も前の刊行本である。最近の知見からみるとどうであろうか。森さんや佐原さんのように、わかりやすく解説される最近の考古学者を知らないので、なんとも言えな…

  • 卒業期

    『死の壁』 養老 孟司著 壁シリーズというのは6編もあるらしい。総計660万部突発とうたってあるので、売れに売れているということか。一冊も読んだことがなかったが、Tの古本屋の均一本、積読棚にあったので引き出してくる。あとがきを読むと、このシリーズは養老さんの話を書籍化したものらしい。そのせいか、わかりやすい。養老さんの思いを大雑把に纏めたものといったらいいだろう。 「まる、ときどき養老先生」で、思いつきのように発せられた言葉の詳しい解説を聞いた感じだ。恬淡とした姿勢はいつも同じ。 現代人は「死」を遠ざけてきたが、「死」は確実にくる。しかし、一人称の「死」(自分の死)はわからないのだから問題はな…

  • 草を焼く

    『人物で学ぶ日本古代史 2』 新古代史の会[編] 既読「古墳・飛鳥時代編」に続く「奈良時代編」である。著名なところでは、藤原不比等から光仁天皇まで、奈良時代の「歴史をつくりあげてきた人びと」が取り上げられている。 それらの人はおおよそ知るところで、それほど興味はもてなかったが、「山上憶良」だけはもう少し知りたいと思った。学識が高く、仏教思想への造詣も深いことから、学僧として研鑽後に還俗した可能性も指摘されている。以前は帰化人とみる説もあったが、今は支持されないとのこと。万葉学者の方の本もあるので、さらに読んでみようと思う。 さて、「笠麻呂」という八世紀初頭、美濃の地方官として活躍した人物がいた…

  • 春疾風

    講演会「木曽川・前渡の戦い」を聴く 講師 丸山幸太郎氏 当地は「承久の乱」の激戦地である。大豆渡(まめど 現在地名は前渡)の地に、木曽川を挟んで上皇側一万、幕府側は泰時、義村の主力部隊が対峙した。ところが、去年の大河ドラマではナレーションの説明だけ、合戦場面はスルーで、地元民としては残念なことひとかたならず。講演会は、もう少し詳しい状況をという思いに応えたものにちがいない。 合戦になった訳から、合戦の状況、乱後の処置、意義評価、などが話された。おおむねは既知のことが多かったが、初めて知ったこともある。 まず、朝廷方に、美濃や尾張の武士が動員されたということである。著名なところでは美濃源氏の土岐…

  • 下萌え

    映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』 信友 直子監督・撮影・語り 85歳で認知症の症状がでだした母を、95歳の父が面倒をみる。それをひとり娘が記録した家族のものがたりである。 新潮社のウエブサイト「考える人」で村井理子さんが絶賛していたので、U-NEXTで観る。 哀しいけれど温かい作品。 お母さんの不調に慌てず騒がずいつもにこにことされてるお父さんが素晴らしい。95歳だから腰も曲がり足取りも覚束ないのに、買い物に出かけ、洗濯や掃除もこなし、妻の布団の襟カバーもつけかえてやる。それがちっとも押し付けがましくない。見かねて「帰ってこようか」という娘に、「わしがやる。あんたはあんたの仕事をし…

  • 春寒し

    『日本史を暴く』 磯田 道史著 毎週水曜日、BSPの「英雄たちの選択」を見ている。(もっとも半分くらいは居眠りしているのだが)司会の磯田さんの視点がいいなあと、思うことが多い。そう思う人が多いのか、磯田さんは今や相当の売れっ子らしい。新書も次々に出て、とても売れているようだ。 『武士の家計簿』やら、『天災から日本史を読みなおす』はよかったが、これはいただけなかった。磯田さんは新聞を読むスピードで古文書が読めるという。様々な古文書を読み込んで、興味ぶかそうな細切れ情報を集めたというのが、この本だ。惹句は魅力的だが、中身があるわけではない。右から左へと読み捨てるだけで終わってしまった。 日本史を暴…

  • NHKBS1「大阪・西成ばあちゃんコレクション❗〜人生最後の服づくり」を見る たまたま見た番組で元気をもらった。見たのは「ばあちゃんたちの服づくり」の再放送である。番組の紹介から転用すると 「大阪・西成に世界も注目するファションブランドがある。手がけるのは地元で暮らすおばあちゃんたち。地域の人々の人生が沁みついた古着を革新的なファションへと生まれ変わらせていく。家族と死別し、社会から孤立していた者も少なくないが、服作りと出会って人生が変わった。そこに忍び寄る老い、そして病。そんなメンバーに『人生最後の服』という新作のテーマが課される。果たしてどんな服を生み出すのか。」 あるおばあちゃんは亡くな…

  • NHKBS1「大阪・西成ばあちゃんコレクション❗〜人生最後の服づくり」を見る たまたま見た番組で元気をもらった。見たのは「ばあちゃんたちの服づくり」の再放送である。番組の紹介から転用すると 「大阪・西成に世界も注目するファションブランドがある。手がけるのは地元で暮らすおばあちゃんたち。地域の人々の人生が沁みついた古着を革新的なファションへと生まれ変わらせていく。家族と死別し、社会から孤立していた者も少なくないが、服作りと出会って人生が変わった。そこに忍び寄る老い、そして病。そんなメンバーに『人生最後の服』という新作のテーマが課される。果たしてどんな服を生み出すのか。」 あるおばあちゃんは亡くな…

  • 梅ふふむ

    『嫌われた監督』 鈴木 忠平著 華々しい落合時代をまざまざと思い出した。8年間で4度のリーグ優勝と日本一1度。ファンにとって、ことに忘れられないのは、2007年の日本一。末席ファンでも興奮覚めやらず、勢いに任せて、勝手な優勝記念としてマッサージ機を購入した。 「一番のファンサービスは勝つことだ」と公言した落合さんの言葉通り、10年間でAクラスは一度しかない今のチームには、ほとんど興味がわかない。 優勝監督を解任したのはなぜか。オレ流という監督のやり方への不満なのか、一体なんだと世間も騒ぎ、ファンも気をもんだ、それがやっと判明した。 球団経営上の金銭問題だという。つまり勝ち続けることで、選手や監…

  • 冬芽

    映画『阿弥陀堂だより』を観る 南木圭士さんの同名小説の映画である。2002年制作で、主演の樋口さんんも寺尾さんもまだ若い。 都会の激務でパニック障害を病んだ女医美智子(樋口)、夫孝夫(寺尾)の故郷である山村に移り住むことから話は始まる。彼女は診療所に勤め、小説家だという夫は、妻を支え村人の世話を引き受ける。阿弥陀堂に住む老婆おうめ(北林)や言葉を失った若い女性小百合、夫の恩師幸田夫妻との交流。折々に挟まれる美しい山村の風景。 自然に囲まれて徐々に自信を取り戻していく美智子。病を得ていた幸田は亡くなるが、彼の意志と刀を受け継いだ演武は、孝夫によりみごとに継承された。 病からの再生は南木さんのいつ…

  • 梅開く

    『お墓、どうしてます?』 北大路公子著 軽いエッセイである。いつもちっとも読む気がおきない本ばかりの新聞の読書案内にあった。全く意外や意外で、藤田香織さんの紹介である。 お父さんが亡くなって、お墓をどうするかという話である。どうするどうすると逡巡しているうちにコロナのまん延。ともかく市営墓地の抽選には当たったものの、最後までお墓は買わずじまい。飼ったのは猫ちゃんでしたという結末。面白くて笑っちゃった。 お墓がないのも困るかもしれないが、あるのもねぇ。うちは父の造った墓があるが、Tの先で途絶えそうなのでどうなるのだろう。心配したら、「あんたの考えることでない」と叱られた。確かにそうで、死んでから…

  • 春しぐれ

    「川瀬巴水展」を観る 三重県菰野 パラミタミュージアムに於いて 川瀬巴水は大正期から昭和にかけて活躍した版画作家。「旅情詩人」と称されたように旅心を誘う美しい風景画をものにした。 初期作品から晩年作品まで279枚の展示である。驚くほど多作である。制作日が近いのをみると、旅に出れば、一気に描きあげたらしい。 夜の風景も水辺の景色もよいが、一番気に入ったのは影しるき真昼の少路を描いた「金沢下本多町」。連れ合いの評によれば、印象派の絵のようだ。あとは朱色をふんだんに取り込んだ「芝増上寺山門」や「増上寺の雪」など。Tは構図が現代的で青の発色が素晴らしいといっていた。 戦後は海外での評判が高く、アップル…

  • いぬふぐり

    『人物で学ぶ日本古代史』 新古代史の会[編] 奈良の冨雄丸山古墳から楯形銅鏡と蛇行剣が発見された。どちらも過去に例のない大きさらしい。それにも興味しんしんだが、この古墳は4c後半の築造だというではないか。4世紀といえば、当時の権力者すらはっきりとしない「謎の4世紀」である。発掘物からみれば、かなりの権力者の墳墓と思われるが、誰に比定されるのであろうか。 この本で4c後半ごろの人物として出てきたのは、「葛城襲津彦」である。さまざまな伝説があり、実在性を疑う意見もあるが、日本書紀や百済の記録にも名前があり、実在の人物とする考えが強いらしい。主に外交にたずさわり、娘は大王の妃になっている。 4cごろ…

  • 冬深し

    『偽りだらけの歴史の闇』 佐藤 洋次郎著 少し寒気が緩んできた気配だが、昨日は寒かった。当地は最高気温が3・3℃、おそらくこの冬二番目の寒さだった。閉じこもって居る日は台所しごとにかぎると、この冬四回目のマーマレイド作り。この前の強風でかなり落ちてしまい、落ちたもののうち大きいのを拾ってストックしたのだが、どれだけ活用できるかしらん。まずは、お鍋いっぱいに作って冷凍の一回目。 さて、午後は上記の本。最近拝読している方のブログに、かなり好意的に取り上げられていた一冊。興味をそそられて珍しく購入する。著者は作家で歴史家ではない。 惹句に「正史より稗史偽史のほうに真実の歴史が隠れているのかもしれない…

  • 霜柱

    映画『ぼくらが本気で編むときは』 厳しい寒さが続いている。昨日は終日みぞれ混じりの雪で、閉じこもるしか仕方がなかった。午前中はこんな時にと、豆を煮る。滋賀の道の駅で買ってきた「花豆」である。部屋中に立ち込める豆のかおりは、気持ちを豊かにしてくれる。 午後もこんな時にと、u-nextで映画を観ることに。好きな荻上直子さんの映画である。荻上さんのは『かもめ食堂』から観始め、『めがね』『トイレット』『レンタネコ』と観てきたが、何か心に響くものがある。ただし、『レンタネコ』はイマイチだったが。 『ほくらが本気で編むときは』は2017年の作品で、トランスジェンダーとネグレクトが大きなテーマである。暗い話…

  • 寒波来る

    『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ著 黄色の同名本の続編である。前編ほど話題になっていなかったか、パート2が出たのを知らなかった。 この本では当然ながら「ぼく」も大きくなって12歳から13歳ぐらいと思われる。イギリスの中等教育の歳だ。経験からいえば、厄介な年頃で口を開けば「うるせぇ」と「うざい」しか言わないか、不機嫌に黙りこんでいる時期。ともかく扱いにくい時期だが、「ぼく」は素直で親ともよく話す。なによりも、ものをよく考えているのに驚く。どうしたらこんないい子ができるのか。親の姿勢がいいのか。学校教育がいいのか。恐らく常に弱者にエンパシイを持っておられる親の姿勢…

  • 底冷え

    『土を喰ふ日々 わが精進十二ヶ月』 水上 勉著 今、沢田研二主演で映画化されているというので、手にとってみた。映画はどんなものか知らぬが、なかなか滋味あふれた一冊だ。文章が味わい深いというのもさりながら、紹介される食べ物が食欲をそそるのだ。 若い頃というより、幼いともいえる頃、水上さんは、禅寺で老師に隠侍(いんじ)として仕えた。その体験が、後の精進料理を楽しむ土台になっているらしい。「精進」とは先徳の料理をさらによく知るということで、昔の舌を思い出し、工夫を加えて十二ヶ月の旬の味わいをまとめられた。「旬を喰うとは土を喰うことだろう」とある。 どんな食材や料理が挙げられているのかといえば、 一月…

  • 日脚伸ぶ

    『オホーツク街道 街道をゆく38』 司馬 遼太郎著 歴史書で森浩一さんの文章を拾い読みしていたら、司馬さんの話が出てきた。司馬さんの『街道をゆく』シリーズに触れて、最晩年の『オホーツク街道』が膨大な『街道をゆく』シリーズの中でも最高傑作ではないか、と人も言うし、自分もそう思うと書いておられた。 『オホーツク街道』は昔読んだ覚えがあるが、すっかり忘れていたので、再読をおもいたった。三十年前の本である。読むと司馬さんの豊かな知識とわかりやすい筆致にぐんぐんと惹き込まれて、久しぶりに充実した読後感を味わった。 大筋でオホーツク海沿岸に栄えたオホーツク文化の痕跡を尋ねる話である。オホーツク文化というの…

  • 寒九

    『老いの身じたく』 幸田文著 青木奈緒編 家事の途中、喉が渇いたからとごくごく水を飲んで、ああ美味しいとおもったのは久しぶり。今日はやや暖かく、水の冷たさが気にならぬ。飲んでいるうちに「寒九の雨」という言葉を思い出し、カレンダーで確かめれば、「寒九」は昨日だ。この雨は昨日から降り出したから、まさに「寒九の雨」と思えば何となく嬉しく、カメラを持って雨しずくなどを撮る。「寒九の雨」は吉兆のしるしでその年は豊作だと昔がたりにいうことだ。 昨日は半年に一回の総合医療センターでの診察日。問題はなく「大きな手術をされたのにお元気でなによりです」と言われる。五回もすったもんだしてから三年半。「もう少し追いか…

  • 『失踪願望 コロナふらふら格闘編』 椎名 誠著 ワイルドでマッチョのイメージがあった椎名さんも、お年を召されたなあというのが一番。連れ合いと同じ78歳という。テレビか何かでお顔を見て、失礼ながら驚いた。コロナに感染して酷く重篤だったり、圧迫骨折やら不眠症だったりと、老いは誰にも紛れなく訪れるもののようだ。相変わらずガンガン飲んでおられるが、ほどほどになさったほうがいいような。あの岳さんに介護保険認定の一次手続きをしてもらったとは・・・いやはや時の流れは容赦ない。 毎年年賀状が届いていたKさんから今年はこない。三年ほど前、こちらから賀状の交換はよしましょうといっても、それでもきちんと来ていたのに…

  • 裸木

    『ウクライナ戦争日記』 いち早く戦時下のウクライナからの報告。報道でも耳にするキーウ・ハルキウ・マリウポリ・ヘルソンなどの都市に生きる24人の声である。 突然の爆音で始まった戦争。一瞬にして崩れ落ちた日常。不安で眠られぬ夜。恐怖の脱出。私に戦争体験そのものはないが、私たちがよく知っている戦争体験と同じだ。 今日時点でロシアはクリスマス停戦をするというが、ウクライナはまやかしだという。終結への先行きはまだ見えない。 「近ごろは、今までだとありきたり過ぎて気にも留めなかったようなしごく単純な言葉に喜びを見出すようになった。愛する人と一緒にいるほんの数分程度の時間や、眠る彼の手を握ること、熱いお湯で…

  • 初春

    明けましておめでとうございます。本年も埒もない覚書を続けます。よろしかったらご訪問ください。 『マイホーム山谷』 末並 俊司著 さて、上記の本は「今年の三冊」にも挙げていた人がいた本で、昨年末から読み継いでいたもの。「山谷」でホスピスを立ち上げ、「山谷」でどん底を味わい、「山谷」に助けられている、ひとりの男を追ったドキュメンタリーである。 男の名前は「山本雅基」。若い頃から生きづらさを感じていた彼が、たどり着いた目標は「ホームレスのためにホスピスを作るということ」。困難な大きな問題だったが、美恵さんという協力者も得て、彼の理想は実現する。テレビや映画にも取り上げられ、順風満帆のように思えたのだ…

  • 年詰る

    スマホで宛名印刷ができた 以前と比べたらほんの少しの年賀状だが、どうするか悩んだ。ブラウザがLinuxなので去年までは郵便局の「はがきデザインキット」を使わせてもらっていた。が、今年は宛名面の印刷サービスは取りやめたというではないか。裏面だけ作って宛名は手書きでいくかと思っていたら、スマホでできる方法があるというではないか。アプリを入れて、ポチポチ住所録を打ち込んで、出来た出来た。Tに泣きつかずに一人で出来た。トシヨリいはスマホもパソコンも、もうちょっと日本語で解説がほしい。 黒豆を浸し、「松風焼」を作る だんだん少ないおせち料理も負担になってきたので少しずつ仕込む。みんなが美味しいって言って…

  • 『年寄は本気だ』 養老 孟司・池田 清彦著 今年初の本格的降雪だ。報道では「岐阜市は10センチの積雪」。わが家辺りも概ねその程度と思われる。本格的な降りだったから、昔のように仕事に出かけなければならないのなら大変だ。こういう日は、無職の老人でよかったと思うことしきり。 ゆっくりと朝食を取り、新聞を読む。年末で読書欄は恒例の「書評委員が選ぶ『今年の3点』」。最近は全く既読本と重ならない。唯一一冊。ルシア・ベルリン『すべての月、すべての年』だけ。その他今借りているのが二冊。『マイホーム山谷』と『ウクライナ戦争日記』で、近いうちにこれは読むつもり。この他何冊か気になったものをチエックしたら、岐阜県図…

  • 着ぶくれ

    『ヘルシンキ生活の練習』 朴 沙羅著 ずいぶん前に新聞の読書欄で気になり、メモをしておいたものだ。県の図書館で見つけて借りてきてもらう。 多少困難があっても、積極的によその国にでていこうという若い人の話を読むのは楽しい。この本の朴さんも二人の子連れ(二歳と六歳)であり、理解のありそうな旦那さまもいらっしゃる。だから、なにも無理をしなくてもと思いがちなのだが、いやいやどうしてチャンスがあれば、よその国では働いてみよう、よその国を面白がってみようというのは、いいですねぇ。 フィンランドって幸福度世界一なんですって。まあ、それもさまざまな数値の総合で、日本語の「幸福」というのとは少し違うようだ。ただ…

  • 枯葉

    『ソ連兵に差し出された娘たち』 平井 美帆著 2021年開高健ノンフィクション賞受賞の重苦しい実話である。表題からおよその内容は想像が付くと思われるが、表紙見返しの惹句を引用しよう。 1945年の夏ー日本の敗戦は満州開拓団にとって、地獄の日々の始まりだった。崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)は日本への引揚船出るまで入植地の陶頼昭に留まることを決断し、集団難民生活に入った。しかし、暴徒化した現地民による襲撃は日ごとに激しさを増していく。団幹部らは駅に進駐していたソ連軍司令部に助けをもとめたが・・・(以下略) ソ連軍との密約がどちらの側からの提案だったのかはわからない。が、恐…

  • 年詰る

    「頚椎症」との診断 骨骨体操は効果あり 一時軽症化していた首と肩の痛みが再燃したので、いつまでも素人判断ではと整形外科を受診する。首のレントゲンと身体の骨密度を検査される。頚椎の方は、「かなり傷んでますなあ」との判断。「老化ですか」と聞いたら、「長年重い頭をのせてますからなあ。リハビリをして注射をしましょう」と言われる。何でも炎症を抑える注射らしい。これが相当に痛い注射だったのには参ったが、リハビリはたいしたことはなく、温湿布とマッサージだけ。どちらも家でもできそうなので湿布薬と痛み止めを出してもらってすんだ。 今回の診断で嬉しかったことがある。骨密度の検査で良好の結果がでたことだ。腰椎では同…

  • 暮早し

    生姜シロップを作る 連れ合いが「根生姜」を収穫した。思ったよりたくさんあったので、一部で「生姜シロップ」を作ってみた。「きょうの料理」の栗原さんのレシピである。 生姜 100g 三温糖 200g 水 2カップで煮出したものである。 いい香りして寒い日にお湯割りのドリンクにしたら良さそう。煮出した生姜もまだ充分辛いので牛肉の「しぐれ煮」にでもしようかなあと思案している。 『ソ連兵へ差し出された娘たち』平井美帆著を読み始めた。八月に読むつもりで予約したのが半年を経てやっと廻ってきた。重い話である。 片付けをしていたらYの大事にしていたリカちゃんが出てきた。もう捨てるかと思い、Yに電話したら、写真を…

  • 開戦日

    『イリノイ遠景近景』 藤本 和子著 今月に入っていっぺんに寒くなり、すっかり縮こまった暮らしになってしまった。半日はそれなりにすべきこともあって動き廻るのだが、午後はほとんど固まっている。テレビを見る習慣がないので、大抵は読書なのだが、これといって感覚に響く本との出会いがない。 上記の本はTが出してくれたもので、未知の筆者だったが、文章のうまさで読ませられた。聞き書きと言うか、聞かれている人の語りの部分がうまい。 かって中国からアメリカに移住してきた人々が、迫害されたこと、大陸横断鉄道敷設労働に携わったことなどは、この本で初めて知った。先住アメリカ人のインディアンの話などもやはり初めて知ること…

  • 十二月

    『レールの向こう』 大城 立裕著 『老年文学傑作選』 駒田 信二編 どちらも私小説風の老人文学である。したがって読後もいっこうに意気があがらぬ。上記は過日読んだ『あなた』と同じ作者。川端賞の表題作は、脳梗塞を患った妻に付きそう日々と亡き友への気持ちを書いたもの。もうひとつ私小説として自身の入院中の話。あとはフィクションで沖縄色の濃いもの。 下記は以前半分読んで取り上げたことのある本で、(以前は多田尋子の『凪』について書いた)今回は耕治人『そうかもしれない』。 さて、同じ老人の闘病記でも、受け取る重苦しさは随分と違う。大城さんは経済的に余裕もあり、何よりも親身に世話をされるお子さんに恵まれている…

  • 綿虫

    ノラっちの思い出 毎年この時期になると、岩合さんの猫カレンダーを買うのが恒例になっている。今年も昨日届いた。驚いて、ついで嬉しかったのは表紙の「のら」がわが家のノラっちにそっくりだったことだ。わが家のといっても、行方不明になってもう十三年、未だに時々話題にあがる猫である。 わが家に居付いたのはちょうど今頃の季節で、おでんのだしを取った鰹節を与えたのが最初だった。それから七年いたが、野良ぐらしの抜けぬ猫で玄関の土間までは入るが、玄関を閉めると泣いて不安がるのである。仕方がないので犬小屋ならぬ猫小屋を用意して、冬は湯たんぽをいれてやるという過保護さ。困ったのは台風の時で、ビュンビュンと吹きつのって…

  • 一葉忌

    『長いお別れ』 中島 京子著 この本は、認知症の父を廻る家族模様を描いた物語である。読んで初めて知ったことだが、認知症の人の最期を看取ることは「長いお別れ」と言うらしい。少しずつ記憶を失くし、ゆっくりと遠ざかっていくからだとあったが、まさに言い得ている。この話の父親も十年にわたる「ロンググッドバイ」であった。 さて、この手の話は、つい自分の身に引き換えて読まざるをえない。介護する側としても、される側としても、いつ降り掛かってくるかもしれぬ問題なのだ。厄介なものだなあと思う。長生きがあたりまえになったから、人生をうまく閉じるということは、最大の難事かもしれぬ。 長いお別れ作者:中島 京子文藝春秋…

  • 冬ぬくし

    『縄文聖地巡礼』 坂本 龍一・中沢 新一著 昨日、五回目のワウチンを受けてきた。感染拡大が意識されだしたのは三年前の1月、入院中のことだったから今にまるっと三年である。まだ鎮静化する気配なく、第八派かとも言われている。先日髪をカットしてくれた美容師さんは、一度感染したし、もう注射はいいかなあと。今回は初めてかかりつけ医で個別接種を受けた。ファイザーだったせいか腕の痛みがより軽いような気がする。 さて上記の本である。縄文好きの身だから表題に惹かれてTの本棚から拝借してきた。確かに聖地の写真も多いが、あんに反して二人の対談は難解。私ごときには手に余る。どこもここも魅力的で訪問したこともあり、最後ま…

  • 帰り花

    湖北に紅葉を見にいく。 そろそろ平地の紅葉も見頃のうえ、気持ちよく出かけられる暖かな日も残り少ないかなと、急遽紅葉狩りに出かける。できるだけ人の少ない穴場と思って出かけたのだが、正解。静かな紅葉狩りで堪能した。 目的地は近江の孤篷庵。小堀遠州ゆかりの寺である。北近江の山懐にある小さなお寺。小堀家の菩提寺である。ひつじ田が黄金色に輝き、美しい。参道から寺内へ既に落葉も多いが、まだまだ見られる。 陽をあびて風なき風に散るもみぢ お寺を辞して道の駅「浅井三姉妹の里」で昼食。この辺りの特産か、自然薯のお蕎麦。 昼食後、せっかく来たのだからと渡岸寺の十一面観音さまにお会いしようということになる。この観音…

  • 冬田道

    『絹の家 シャーロック・ホームズ』 アンソニー・ホロヴィッツ著 駒月雅子訳 働き過ぎて(?)首から肩を痛め、初めて鍼灸院にかかっている。先週の土曜日に冬に向けての庭の片付けに奮闘しすぎたらしい。全く年甲斐もなく無理をすると、こんな始末だ。日曜日の夜はどうやっても枕がかえぬほど首が痛くて、辛かった。いつもの散歩の途中に鍼灸院があるのを考えて、月曜早々にみてもらった。寝違えのようなものだが、炎症があるからと鍼をしてもらう。初めての体験だ。その後お灸。マッサージ、鍼、お灸と今日で三回目。かなり軽減。明日もう一度行くつもりだが、これですっきりするといいのだが。 近くの整形外科で長い間待たされ(トシヨリ…

  • 小六月

    『あなた』 大城 立裕著 表題作他自伝的五つの短編。亡き妻に語りかける表題作がいい。筆者は沖縄県出身の初めての芥川賞作家。すでに一昨年九十五歳で逝去された。この作品は最晩年の作品で、作者自身の妻への想いを語ったものだ。 二人が共に乗り越えてきた年月、賢明だった妻に助けられたこと、思い出深い出来事、そして晩年、何もかも忘れたように先に行ってしまった妻。 歳を重ねた今、この作品から受け取るのは「平穏はつかの間」という思いである。冬の前の小春日和のようなこの穏やかな日々は、すでに期間限定である。 さて、他のいずれの作品も最晩年のものだけに幼い頃の思い出や、来し方交流のあった人々の消息に触れたものが多…

  • 冬に入る

    五回目のワクチン接種を予約 五回目の接種券が届いたので予約に出かける。一体いつまで接種を続けなければいけないのだろう。国もほとほと重荷になったのか、接種費用は自前でと言い出した。打たない選択肢もあるかもしれないが、感染者数はまだまだ増えている。 前回まで集団接種だったが、今回は規模が縮小されたのでかかりつけ医にたのむことに。接種券が、一斉にトシヨリに届いたので、医院の受付は大変な混雑だ。名前を記入して待つこと小一時間。やっと予約が出来た。 かかりつけ医までは徒歩で3000歩弱。真っ青な空と色づいてきた野山が美しい。 今日は休日ではないのに公園に子どもたちを見かけた。バスケットゴールを相手にシュ…

  • 秋深む

    『その裁きは死』 アンソニー・ホロヴィッツ著 山田 蘭訳 気持ちのいい陽気が続く。半日は家事で奮闘するのだが、午後は陽だまりの安楽椅子でミステリー三昧。「バアサンだなあ」と家人に言われる。何とでも言ってくれい。これは至福の時間でござんす。 さて、ホロヴィッツのホーソーン&ホロヴィッツシリーズの二冊目。(すでにもう一冊でているようだが、図書館にはまだ入っていない。)先の『メインテーマは殺人』は、最後まで緊張感に満ちた面白い話だったが、これも期待させる書き出しだ。 被害者はセレブを相手にする離婚調停専門の弁護士。殺害現場にのこされた「182」という数字は何を意味するか。登場人物の一人に日本名を持つ…

  • とんぼ

    一乗谷朝倉氏遺跡を訪ねる 申し分ない陽気にうながされ、かねて見たいと思っていた日本のポンペイ「一乗谷朝倉氏遺跡」を訪ねる。隣県まで車で2時間半の道程である。 一乗谷朝倉氏遺跡は、室町期から戦国期まで五代百年にわたり朝倉家が居を構えた城下町跡である。それは信長によって灰じんに帰し、400年も地中に埋もれ、昭和になっての発掘で全貌が明らかになった。 まず、遺跡入り口で先月オープンしたばかりの一乗谷朝倉氏遺跡博物館に出迎えられる。実に立派な施設である。朝倉氏の歴史から発掘された品物や川湊の遺構、復元御殿などが見られる。入場はWeb事前予約制で、前もって予約をして出かけた。新しいせいか平日にもかかわら…

  • 秋雨

    『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ著 山田蘭訳 久しぶりに終日雨。気温が上がらずずっと暖房を入れている。暖房の部屋で手にするのは、久しぶりにホロヴィッツだ。朝から読みはじめてまだ終章にいたらずだが、面白い。既読のホロヴィッツ作品では一番ではないだろか。 著名なスターの母親が絞殺される。なんと当日彼女は自らの葬儀の契約をすましていたのだ。怨恨か物取りか、捜査に乗り出したのはロンドン警視庁を首になった変人の元警部。 今回は、作品に筆者が登場する。筆者が遭遇した「犯罪実話」の形式だ。割と最近の作品だから、イギリスの現代社会が反映されている。たとえば、「ポリティカル・コレクトネス」の重要さ…

  • 秋冷

    うちの市が将軍家の米を作っていた 講演『徳川将軍が食した御膳籾と美濃国の地域社会ー各務ヶ原市域を中心に 望月良親氏』 日曜日の午前中連れ合いと講演会に出かける。表題にもあるとおり、なかなか興味深い話だ。 御膳籾とは江戸時代将軍や大奥の女性たちが食した米のことで、それらがなんと美濃の天領で生産されていたというのである。うちの市は江戸時代には四つの領主支配に分かれており(旗本領が二件、尾張藩領、天領)、御膳籾を栽培していたのは、この内の天領である。古い確実な史料としては、元禄7年のものがあり、それによれば村ごとに請負、桑名まで木曽川を舟で下り桑名から船で江戸に出していたらしい。初期の頃は請け負う量…

  • どんぐり

    『ミシンと金魚』 永井 みみ著 カケイばあさんは、認知症の気がある。聞かれなくてものべつまくなし喋り続ける。この本はカケイばあさんの独白だ。不幸な生い立ちから、ヤクザな兄貴のこと、突然出ていった亭主のことや先妻の子どもと自分の子どもを抱えてミシンを踏んでたつきを得た日々、過ぎ去ったの記憶はどれもどれも鮮明だ。一番思い出すのは疫痢で死なせた幼な子、道子のこと。ミシンに夢中で、道子を死なせてしまったこと。不義の子だったけれど「道子が生きていた時はうんと、うんと、しあわせだった。」 わずかなお金だが、苦労しているやさしいヘルパーさんたちで分けてもらおう。やっとこさ遺言書を書いたカケイさん、ハンコを取…

  • 稲の秋

    吉備の旅 一日目 全国旅行支援を利用させてもらい、かねてから行きたかった岡山県を訪問する。四国や山陰への乗り換えターミナルである岡山は、何度も通り過ぎたことはあるが、訪問自体はほぼ初めて。60年前の修学旅行以来である 岐阜羽島駅から新幹線で1時間半、京都での乗り換えを含めても案外近い。駅前でレンタカーを借りて、まずは有名な大名庭園の「後楽園」へ。ここの大名庭園は芝の美しさを前面にした広々とした空間が売り物。爽やかに晴れ渡った空の青さと相まって気持ちがいい。それこそ60年前、級友たちと笑い転げながら歩いたことを思い出す。箸が転げても可笑しい乙女の頃である。 昼は岡山名物だという「デミかつ丼」なる…

  • 『猫だまし』 ハルノ 宵子著 おや、こんな本がと図書館の書棚で見つけてきた本である。ハルノ宵子さん、言わずとしれた吉本さんの娘さん、ばななさんのお姉さんである。漫画家でいらっしゃるという他、予備知識なし。猫の挿絵も面白いが、お話も実に面白い一冊だった。 現在還暦ちょっと過ぎだと拝察するが、まれにみる豪胆な方だ。それも若い頃からずっとだったようで、武勇伝とも言ってよいような体験の数々を、他人事だから面白く拝読。このハツノさんにしてもワガママいっぱい(?)のご両親の介護、数多な地域猫やら家猫の世話と大ストレスで、乳癌、大腿骨骨折、大腸癌、肝機能の悪化とつぎつぎに病を発症。追い詰められながらも平然と…

  • 秋桜

    サプライズの喜寿の祝 Yと連れ合い、下の孫が「ブロッコリーの苗」を取りに来るというので、何気ない気持ちで出迎える。ケーキを買ってきたというので、食事の後にお茶でもと思い、キーボードまで持参したのは、孫の演奏会(彼はなかなかの奏者なんです)付きかなぐらいに思う。 ところがサプライズ。出てきたのはホールケーキ。ロウソクが7本立てられて、やっと気づいた。明後日はワタクシめの77回めの誕生日。キーボードに合わせてやや調子外れのバーズディソングの合唱におかしいやら泣けるやら。こんなふうに祝ってもらったのは初めてだこと。長生きも悪いものではないと、みんなに感謝、感謝。 プレゼントはネコさんのバッグ(図書館…

  • 秋の雨

    『寂しい生活』 稲垣 えみ子著 昨日図書館で、これという目当てもなく書棚を見回していたら、おやおや「稲垣さん」ではないかと、借りてきた本。例の有名な(?)究極の省エネ生活実施の顛末記である。 東日本大震災の原発事故をきっかけに、底なしにエネルギーを使い続ける暮らしに疑問を感じた彼女、まずは電気代の半減を目指す。半減などという生易しいことでは、なかなか目標は達成できずとまずは掃除機を捨て、次に電子レンジを捨てる。どちらの家電もほうきと雑巾、蒸し器などで代替可能。却って作業も半減したと満足で、それなりにわかるのだが、エアコン、冷蔵庫を捨てるに至っては、常人には付いていけぬ哲学となる。しかし彼女は突…

  • 鵙猛る

    『老後とピアノ』 稲垣 えみこ著 新聞社を若年退職、究極の省エネライフを実践されている著者は、人並み以上の意志の人にちがいない。その人にしても、子供の頃嫌々ながらやらされたという経験はあるというものの、40年ぶりのピアノというのはなかなかハードな挑戦だったらしい。しかし彼女はやり遂げた。時には一日何時間も練習し、時には肉体の限界を痛感し、落ち込んだり喜んだり。そしてついには人前で演奏もし、何よりも老後に向けて音楽を楽しむ暮らしを見つけたのだ。 ところで、私自身は全くピアノに縁はない。しかし、著者の苦闘ぶりに惹き込まれて最後まで面白く拝読した。彼女が挑戦したという巻末にある何曲かのピアノ曲も、ふ…

  • 金木犀

    岐阜県博物館特別展「いにしえの岐阜」を見に 弥生から古墳時代を経て古代までの出土品などの展示である。土器やら鏡、石製品が主で、最も興味深かったのは「線刻絵画土器」である。 弥生時代末期に造られた「方形周溝墓」から出た土器には鹿や犬、高床式建物、人の顔(口辺に)などが線刻されている。写真に撮ることはできなかったが、同時代の別の遺跡から出土した絵画土器はさらに貴重で有名なものである。それには大旗をなびかせ、80本のオールで漕ぐ船が描かれているが、それで3世紀当時の航海術の進歩をうかがうことができるものだ。 岐阜にも銅鐸の出土はあるが、中でもこれは最大のものである。江戸時代に発掘されたもので、欠損は…

  • 秋の蝶

    ハンドウォーマーを編む 以前なら九月ともなれば、待ちかねたように大物を編み始めたのに、もう気力がでてこない。 どうしようもない古糸などは処分したが、新しい残り糸などは捨てがたい。たまたまYouTubeに「引き返し編みでのハンドウォーマー」の編み方がでていたので参考にさせていただく。 小物で簡単な編み方なので、サクサクと編めて楽しい。冬場の散歩に活躍しそう。指が自由だからカメラを使うのにはいいはず。 縁側から外をぼんやり見ていたら、庭の芙蓉に大きな蝶が。以前見た渡辺省亭の描画のようだとカメラを抱えて飛び出す。もっとも省亭の絵は、牡丹に蝶だったとTに言われましたが。こちらは白芙蓉にナガサキアゲハ。…

  • 草の花

    『国語教師』 ユーディット・W・タシュラー著 浅井 晶子訳 久しぶりに時間を忘れて読んだ。中国文学者故井波律子さんのお薦め本である。帯に「(2014年)ドイツ推理作家協会賞受賞作」とあるが、いわゆるミステリーではない。深い愛の物語なのだ。が、話が進むにつれて真実が明らかになっていく点では、ミステリーの要素は大きい。 同じ帯から引用すると 「かつて十数年を共にし、16年ぶりに再会した50代の男女、作家の男は語る、自分の祖父を主人公にした物語を、国語教師の女は語る、「私」が若い男性を軟禁する物語を。ふたつのフィクションはそれぞれの過去を幾重にも謎めかせ現在のふたりへと繋がっていくー」 詳細に触れる…

  • 秋夕焼

    「奇跡の戸籍『半布里戸籍』〜古代戸籍を紐解く〜」を聴く 島田宗正氏(富加町教育委員会 文化財専門官)の講演 昨日、市の歴史研究会主催で開かれた講演会に出かける。正倉院にある現存最古の戸籍、半布里(はふり)戸籍についての話である。 半布里戸籍は現在の岐阜県富加町に比定される地域の八世紀初め702年に作られた戸籍である。つまり大宝律令の戸令に基づき作られたもので、現存するのは全国で12通しかないと言われ、内7通が美濃国半布里のものである。 記載されているのは54戸1119人。家族関係や親戚等も推察できる。姓から見ると、「秦」姓が453人で全体の4割、苗字からみるに渡来系の人々と思われ、残りは在地系…

  • 敬老日

    『猫に教わる』 南木 佳士著 多分、最新のエッセイ集である。文体に惹かれるものがあって、エッセイがでれば借りて読んできたが、小説は読んだ覚えがない。そういうあまりいい読者ではないのだから、とやかく言えたものではないが、話はいつも同じような話になる。 若い頃、医師と文筆家の二足の草鞋を履いていたこと、死を看取る癌病棟のでの日々に疲れてパニック障害となりうつ病を患ったこと、受験に失敗し都落ちをしたこと。 毎回出されるこれらの話題に、僭越ながら人はここまで過去に拘るものなのかとさえ思ってしまう。 「こんな安楽な時を過ごせるのは期間限定であることが日に日に明らかになってくる」とおっしゃるが、まだ我が身…

  • つくつくし

    『新・木綿以前のこと』 永原 慶二著 昔の人は何を着てたんだろう。そう思ったのは、少し前に読んだ上野誠さんの『万葉人の奈良』で、「調」の麻織物に苦労する東国の女たちの歌を読んだからだ。ともかく麻(苧麻)の茎から繊維を取り出し、糸により、織り上げるまでは相当の手間だったようなのだ。しかも麻布と絹織物しかなかった当時は、当然庶民の着衣は年中麻だったようで、家族用と租税用とを用意するのは、並大抵ではなかったらしい。 この本の冒頭にも『おあん物語』のおあん婆の昔ばなしとして 「おれが十三の時、手作りのはなぞめの帷子一つあるよりほかには、なかりし。そのひとつのかたびらを、十七の年まで着たるによりて、すね…

  • 秋風

    散歩ができるようになった。 夕方、本当に久しぶりに近くのドラックストアまで歩く。もうすっかり秋の気配。 ゆきあいの空で、高い所は秋の雲、低い所には夏の入道雲が共存している。 今日は「中秋の名月」とかや。家のありあわせの花でお月様をお迎えすることにしよう。 秋風の掃いてゐる空ゆきあいの空

  • 昼の虫

    亀が出てきた。 昼過ぎ縁側の椅子でぼんやりとしていたら、ゴソゴソと物音。何と亀さんではないか。川の隣のわが家では何年かに一度はこんなことも有りだ。連れ合いは「石亀」だというが、色合いから見ると、多分「クサガメ」だろう。随分大きいからメスかな。騒いで写真を撮ったが、少し目を離したすきに消えてしまった。 ちょっと不眠が続いてNHKプラスで夜ふかしをした。 ETV特集「消滅集落の家族」というドキュメンタリー番組を観た。秋田の消滅した集落跡で暮らす家族の話である。東日本大震災をきっかけに、ひとりの若者が自給自足の暮らしを理想として消滅集落の跡地で暮らし始める。理想に賛同する女性が現れ、やがて彼等は子ど…

  • 秋ひざし

    『隻手の音なき声』 リース・グレーニング著 上田 真面子訳 Tに回してもらった一冊。副題に「ドイツ人女性の参禅記」とある。そのとおり戦後間もない頃、ドイツからはるばる来日。京都相国寺で参禅に励まれた真摯な記録である。 禅的なものから受ける印象、つまり簡素で穏やかな暮らしぶりというものには、あこがれがある。しかし、「禅」がどういうものか全く知らない。この本で坐禅と参禅の違いも初めて知ったくらいだ。 筆者がなぜ「禅」を体験してみようと思ったのか。そこのところはわからないが、「禅」に精神の安定を求めたのかもしれぬ。相国寺は臨済宗で坐禅とともに公案が与えられる。自分が向き合う「問い」である。これが実に…

  • 休暇果つ

    『仰天●俳句噺』 夢枕 獏著 表題に「俳句」とあったので図書館の新刊コーナーから借りてくる。著者の作品は手に取ったこともなかったが、いやいや実に面白かった。文脈などというものがあるのかどうか、(よく読めばあるのですが)噺はあっちに跳びこっちに逸れ、文体も劇画的であれば、真面目体(?)にもなり。ともかく多彩なる作家魂に驚嘆。 昨年の早春、筆者は血液の癌を患われた。NHKテレビで二月堂修二会の生中継にゲスト出演をされていたのを覚えているが、宣告はその前後だったらしい。今にして思えば、ややお元気がなかったようにも思えた。それから半年以上にわたる抗癌剤治療に苦闘されたわけだが、これはその間に書かれた噺…

  • 露けし

    『日本の歴史7 鎌倉幕府』 石井 進著 夕べは酷い雨だった。八月としては初めて、一時間78ミリという豪雨と雷で、「緊急避難警報」がけたたましく鳴った。これは隣の岐阜市からの情報で、わが家の隣の川は岐阜市との境である。見ればあと10センチほどで溢水状態であったが、たいていはそれですむ。ただ下流の地区はいつも氾濫となり、昨夜も道路が冠水したようだ。それにしても滔々と流れる濁った水は気味が悪く、すぐに窓を閉めた。「避難」と言ったところで、あの降りでは避難などできないと連れ合いと話したことだ。 さて、上記の本である。テレビドラマに触発されたといってよい。昔購入して、拾い読みをした本を出してくる。ドラマ…

  • 秋の雨

    『屍の街』 大田 洋子著 大田洋子という人は、戦前ある程度の評価を受けた作家であったらしいが、全く知らなかった。この本も、新聞の読書欄の斎藤美奈子さんの紹介で、初めて知った。 著者39歳、広島市内で被爆。当事者だけに凄惨で残酷な被爆体験記録である。地獄と化した被爆直後の様子もさることながら、ひと月もたって外傷がないのに死んでいく人々。まるで死刑の宣告を待つような日々の重苦しさが心に響く。 「破壊されなくては進歩しない人類の悲劇のうえに、いまはすでに革命のときが来ている。破壊されなくても進歩するよりほか道はないと思える。今度の敗北こそは、日本をほんとうの平和にするためのものであってほしい。」 悲…

  • 敗戦日

    『街道をゆく四十二 三浦半島』 司馬 遼太郎著 BSで「新 街道をゆく 三浦半島」というのを見た。古いシリーズが再放送されていたのは知っていたが、これには「新」が付く。「鎌倉殿の十三人」に合わせた企画かもしれない。「街道をゆく」はどれも昔読んだはずだが、すっかり忘れているので再読をした。 三分の二ほどが鎌倉幕府関連、残りが横須賀の海軍関連の内容である。鎌倉関連は、非常にタイムリーで、興味深く読んだ。司馬さんも三谷さんもおそらく『吾妻鏡』を参照にされているのであろう。話も人物描写も大きくは違わない。ただ比企能員の謀殺(昨夜の放映)のあたりは、少し違った。 頼朝の存念というものが、「大きくは武士団…

  • おしろい花

    『庄野 潤三の本 山の上の家』 庄野 潤三著 新聞の土曜版に「夏葉社」が取り上げられていたので、図書館の在庫本を検索して、この本を見つける。 一時期庄野さんを片っ端から読んでいた。庄野さんの書かれる暖かく穏やかな家族像が好きだった。同じようなコアなファンは多いようで、このような「山の上の家」の写真集も人気があるのだろう。なんでも年二回住宅開放もあり、ファンの集いも続いているようだ。 主も亡くなり、奥様もご次男も鬼籍に入られたという。まさに作家自身が思い巡らしておられたように、亡くなってしまわれた今、いくつかの作品は「生きていることは、やっぱり懐かしいことだな!」という切ない思いを胸に起こさせる…

  • 秋立つ

    『古代史おさらい帖』 森 浩一著 森さんが亡くなられてすでに九年になる。調べると、はからずも一昨日が祥月命日だったようだ。森さんも佐原真さんも素人にもわかりやすい言葉で語りかけてくださり、すきな学者さんであった。いずれも故人になってしまわれて、佐原さんは没後すでに二十年と知れば、年月の過ぎゆく速さに、愕然とするしかない。 この本は、森さん晩年の本である。「おさらい帖」とあるように、「一見学問の成果のようにみえる事柄についても、その問題点を列挙しておさらいする」方法で、考古学や古代史の入門書を目指したものである。 「土地」「年代」「人」とおおきく章立てをし、個々について学問的成果や問題点が整理し…

  • 熱帯夜

    『万葉びとの奈良』 上野 誠著 筆者の言葉によれば、この本は「万葉集に、平城京とその時代を語らせる本」である。 飛鳥・藤原京の地からの遷都、初めての中国風の大都に暮らす人々の「みやこのてぶり」という都ぶりの感覚、多くの官人たちの日常、それを支えた地方の労働力、そして今に繋がる住まいとガーデニング、同時代に来日された鑑真の話などである。 引用の歌の数々は、よく見聞きする著名な万葉集秀歌と違って、親しみやすい庶民のつぶやきそのものである。取り上げられたものから、初めて知ったことだけを少し触れたい。 秋田刈る 仮廬(かりほ)を作り 我が居れば 衣手寒く 露そ置きにける ここでカリホという言葉の説明が…

  • 草を掻く

    『ラスト・ワルツ』 井波 律子著 井波 陵一編 全く同時代の、この中国文学者のことを今まで知らなかった。知っていたからと言ってどうということはないのだが、それでもすでに昨年秋に亡くなったと知れば、残念というか遅れたという気持ちが湧く。 1944年生まれ、ひとつ上だがまったくの同時代人である。ご主人の編集後記によれば、大学闘争にシンパシーがあり、時に「茶目っ気たっぷりに、『あたいは死ぬまで全共闘だ!』と言って笑って」おられたらしい。学生運動に関わった人たちの「組織もへったくれもなく、ひたすら阿修羅のように突っ走る」姿が、中国文学の「侠の精神」の読み取りに結実、『三国志演義』や『水滸伝』の好漢たち…

  • 『すべての月、すべての年』 ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 『掃除婦ための手引書』につづくルシア・ベルリンの短編集である。訳も前書同様に岸本佐知子さん。 確かに面白いのだが、半分ほどで疲れた。筆者の分身らしき語り手や主人公に何か思い入れがあるわけではない。およそ共感も想像もできぬ世界である。では、何が読ませるのか。それは、畳み掛けるような文章力だと思う。少しも無駄のない、時には省略しすぎだと思うほど緊張した筆致。これしか考えられない。 残り半分は少し間をおいて読もう。返却するまでの時間があればの話しだが。 すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集作者:ルシア・ベルリン講談社Amazon…

  • 戻り梅雨

    『日本神話の世界』 中西 進著 図書館で予約した本がなかなか入らず、Tの本棚を渉猟することが続いている。これも発掘してきた一冊だが、それほど古いものではない。 中西さんによる日本神話の読み解きだ。イザナギ、イザナミ二神の国産みから始まって天孫三神の国創りまで。大筋はよく知っている内容だが、詳細な部分は初耳のこともある。 たとえば、岐阜の美濃市にある「喪山」についての、こんな伝承である。オオクニヌシに国譲りを強制するため天上世界から遣わされた第二の使者は、アメノワカヒコであった。「天上の若きプリンス」(中西さん)ともいう名前のこの神は、地上の娘に魅せられて天命を忘れてしまう。更にあろうことか、様…

  • 夏あかつき

    診察の梯子で血圧が200超え 総合医療センターの診察日であった。まず一昨年移植手術を受けた「形成外科」。皮膚の痙れや痛みは残るが、これは仕方がないこと。まる二年の経過観察は今回で終了となる。随分と手間のかかった手術であったから、最後まででいねいに見てくださったと感謝してお礼を言う。 次は先週受けたPET検査の結果などを聞きに外科へ。10時の予約だが相当混んでおり呼ばれたのは11時半過ぎ。「はあーお待たせしました。今日は大変ですわ。」と先生も弱音が出る。結果は問題なしでひと安心。かかりつけ医から連絡のあった膵臓の数値異常については、一応消化器内科で見てもらいことになる。消化器内科で受診の予約を取…

  • 初蝉

    『梁塵秘抄』 西郷 信綱著 『梁塵秘抄』と名付けられた訳は、美声のひびきが梁に積もった塵を動かした故事に由来するとは、不明であった。編んだのは、かの大天狗、後白河法皇。今様狂いとまで言われ、歌い過ぎて生涯に三度も喉を潰したという。残存するのは、ごく一部で、当然ながら歌い方はわからない。 今様といわれ、遊女や傀儡子などの口の端にかかっただけに、当時の庶民の暮らしぶりや思いも垣間見られて、和歌とは違う面白味がある。例えば有名な 遊びをせんとや生れけむ 戯(たはぶ)れせんとや生(むま)れけん 遊ぶ子供の声聞けば 我が身さへこそゆるがるれ 恐らく遊女の感慨であろうが、筆者はこの歌の解釈を否定的には捉え…

  • 夏出水

    『女たちの壬申の乱』 水谷 千秋著 壬申の乱についての著書はいろいろあるが、この本はこの乱に巻き込まれた女性たちに特化した一冊である。書記や万葉集を史料にして、筆者自身の新しい知見もあり、興味深い内容であった。 多くの女性たちの中でも、一番の対象者は大海人皇子(天武天皇)の皇后であったう野皇女(持統天皇)であろう。彼女は近江から吉野脱出へと夫に従い、戦いの渦中に身を投じた。父の成した政権を倒し、父の葬儀にも出なかった。夫と共に新政権の樹立に力を尽くし、夫亡き後は息子のために姉の子(大津皇子)をも誅した。そこまでした息子に先立たれた後は、自ら即位、天皇になり、さまざまな制度をものにした。。確固た…

  • 水無月

    奥飛騨旅行 一日目 県民割と旅コインの制度を使わせてもらって、小旅行をしようと思い立つ。制度利用の期限も間近く、天気の安定期間も考え、急遽宿の予約をする。二・三日前だったので空きも少なかったが、障害者の当方でも気兼ねなく温泉につかれそうで、お値段も手頃な宿が見つかる。 一日の朝、8時出発。すでに相当に暑い。目的地は「新穂高ロープウェイ」。半世紀も前、職場の親睦旅行で訪ねて以来である。高速道路と一般道で約3時間。180キロの道のりである。乗っている分には緑の美しい車窓で申し分がないが、アップダウンが激しく運転手は相当緊張した模様。 目的地11時到着。混んではいないが、ここでも暑い。昔は一段目のロ…

  • 梅雨明

    『戦争は女の顔をしていない』 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ著 三浦みどり訳 第二次世界大戦でのソビエットの戦死者は1450万人とも言われ、桁外れに多い。そして、この本によれば、100万人を越える女性も兵士として戦ったそうだ。十代の後半から二十代、若いみそらの女の子たちである。筆者はそうした女性たちの膨大な肉声を拾い集めた。 過酷な戦いから、辛うじて生きて帰ってきた女たちの声は、長い間顧みられなかったばかりか、その身すら白眼視された。筆者の労苦で集められた証言集も、ソビエト時代には出版もかなわなかった。それは決して英雄譚ではなかったから。 500ページ近く、びっしりと書かれた重苦しい証言で…

  • 明易し

    『生きて帰ってきた男』 小熊 英二著 これは、著者が自身の父親(謙二さん)の聞き手になって編んだ、オーラルヒストリーである。 大正末年に生まれた彼は、当時の庶民的な暮らしの中で成長、満19歳で招集された。1944年のことで、すでに日本には満足な軍装備品すらなかった。満州に送られ、そこで敗戦日を迎え、シベリア送りとなる。 厳寒の地((チタ)で四年間、体力的にひ弱だった彼だが、それでも生きて帰ってきた。 帰国後、結核に罹患、30歳まで療養所暮らし。30を過ぎ、懸命に働いて家庭を持ち、暮らしの安定を得る。しかし、その間に息子の一人を事故で失ったりもした。 彼が彼らしく特異な活動に力を入れたのは、老年…

  • ビール

    昔がたりをする。 地方版に「戦争を語る」というコラムが不定期で掲載されている。先日、隣町の95歳の男性の体験談を読んでいて、名前に聞き覚えのあるような気がした。戦後、高校教師になったというくだりを読んで、はたと思い出し、旧友にメールをする。 その日の午後、彼女から電話があって、当然ながら昔話となる。そして、くだんの人はやはり国語の先生だったということになった。 「あの当時の先生というのは随分個性派ぞろいだったわね」 と彼女。確かにいい意味で個性的でリベラルだった。それで一年生の担任だったS先生の話となる。入学して、いきなり推薦図書と黒板に書かれたのが、『鋼鉄はいかに鍛えられたか』だ。『車輪の下…

  • 『ウマし』 伊藤 比呂美著 伊藤さん好きのTから回ってきた。こちらも好きだからすぐ読む。難しいことはなんにもない。好きな食い物、懐かしい食い物、嫌いな食い物にまつわるエッセイ。別の本で、検診の結果「食べすぎ」と一刀両断にされて落ち込でおられたが、なんのなんのなかなかのこだわりだ。 こちらの食欲を刺激されたのは、「おにぎり」と「ホットケーキ」。どっちも最近食べてない。外での「ホットケーキ」なんて、半世紀以上も前の高校生の頃の思い出。パーラーという高校生も入れそうな店では、「ホットケーキ」か「クリーム蜜豆」が定番だった。そう、郷愁のホットケーキ。 おにぎりならコンビニのパリパリ海苔ではなくて、時間…

  • 夏の空

    弥生遺跡と木曽三川公園へ 本格的な暑さになる前にと、近場へ。 まずは愛知県清須市にある「あいち朝日遺跡ミュージアム」。紀元前6世紀から紀元後4世紀まで営まれた大規模な集落跡である。清須のインターチェンジの建設で発掘された遺跡で、日本でも有数の規模を誇るという。主要な出土品2028点が重要文化財である。 昔むかし考古学に詳しかった姉から勧められていたのだが、近すぎてなかなか機会がなかった。やっとの訪問である。 遺跡内の復元住宅。貝殻山貝塚などもある。 尾張地方特有の穴のある土器。用途は不明だが祭祀に関係するらしい。 ベンガラで彩色された土器。側面に線刻の模様。 銅鐸も出ている。この他巴型銅器、装…

  • 片かげり

    『評伝 石牟礼道子』米本 浩二著 良かったからとTに回してもらう。確かに興味深い中身であった。そして、ただただ石牟礼道子というただならぬ精神に圧倒された。 あとがきで著者は「石牟礼道子の場合は底が見えない。」と書き、解説で池澤夏樹は著者の努力に敬意を払いつつ「それでも石牟礼道子はこの本からはみ出している」と書いた。その計り知れない魂に、並の人間が何おかいわんや。 渡辺京二さんによれば、「『苦海浄土』は石牟礼道子の私小説だ」ということだ。まずは、ノンフィクションと読み間違えていたところへ、読み戻らねばならない。 評伝 石牟礼道子 :渚に立つひと (新潮文庫 よ)作者:米本 浩二新潮社Amazon…

  • はつ夏

    此の時期の厨仕事をする。 お店に青梅が出ている。青々とした可愛らしさで買いたくなるが、買ってどうするか。うちは梅干しはほとんど食べないから、梅干しは漬けない。欲しいのは底をついた梅醤油だが、梅一キロは多い。「焼酎に漬けたら飲むから、作ってくれ」と連れ合いが言う。まだ古焼酎漬けがひと瓶はあるのだが、半分梅醤油にして、半分梅酒にする。 庭に枇杷の実生の木がある。どんな鳥の落とし物だろう。随分大きくしてしまった。この時期小さい実をいっぱい成らす。面倒だがコンポートにする。灰汁で指が染まるのだが、美味しさに変えられない。Tに手伝ってもらい、まず一回目。 はつ夏の厨しごとの硝子瓶

  • 明易し

    『芭蕉の風景 下』 小澤 實著 いよいよ芭蕉の最晩年である。 元禄七年春、芭蕉五十一歳。最後となる春を江戸で過ごし、初夏、西を目指して旅立つ。同行は身辺の手助けをする少年次郎兵衛のみ。途中名古屋に足を止め、古い門人の荷兮らと歌仙を巻くが、どうもしっくりこない。かつて共に『冬の日』を巻いてから十年。芭蕉の新しい試み「かるみ」を彼は理解できなかった。実際に読んでいないので何とも言えないが、小澤さんによれば、この時の歌仙は雑でちぐはぐ、駄作だということだ。 世を旅にしろかく小田の行戻り 「この世を旅に過ごしている私の生涯は、農夫が代掻きをして、田を行きつ戻りつしているのと、変わりません」(小澤訳) …

  • 柿若葉

    『芭蕉の風景 下』 小澤 實著 やっと下巻の三分の二あたりまで読了。 「おくのほそ道」から帰った芭蕉は、その後郷里伊賀や大津、京都と関西で暮らす。関西から江戸に帰って五十歳までの五年間、小澤さんはこの間を「上方漂白の頃」と名付けて一章とされている。 「行春を近江の人とをしみけり」 「木のもとに汁もなますも桜かな」 芭蕉にとっては上方の親しい人々と交流、「かるみ」という新しい境地も見出した時期である。「かるみ」とは何か。「『かるみ』とは日常の世界を日常のことばを用いて、詠むこと」と小澤さん。古典主義を廃し、日常を詠む今の俳句に繋がる境地である。ところが、今にすれば当たり前のことだが、芭蕉の時代に…

  • 風薫る

    『芭蕉の風景 下』 小澤 實著 下巻の前半分弱は『おくのほそ道』の句を辿る話である。 芭蕉が陸奥へ旅立ったのは「更科紀行」から帰りて半年後、春三月のことである。四十六歳、百五十五日、2400キロの長旅である。同行者は曽良。彼が後に幕府の巡見使として壱岐で亡くなったことから、この旅にも幕府隠密説などもある。小澤さんも読み進むうちにそんな気もしてきたと書いておられる。もっともそれでこの文学作品の価値が損なわれるものではないとされているが、全くそのとおり。 単なる紀行日記でもない。推敲に推敲を重ねた文学作品であることは、初稿の句と推敲後の句の大きな違いでも明らかだ。 例えば、 「閑さや岩にしみ入る蝉…

  • 若葉雨

    『芭蕉の風景 上』 小澤 實著 上巻の残りを読む。紀行文『笈の小文』の部分である。芭蕉四十四歳、伊賀上野から伊勢に参り、吉野、和歌浦、奈良、明石須磨と巡る旅。米取引で罪を得て逼塞中の杜国を誘っての旅でもある。 折々の俳句が先人たちの古歌を踏まえているのに驚く。そういう教養の乏しい身はいつも底の浅い解釈で読んできた。 芭蕉の句の中で一番気に入っている句がこの部分に出てくる。 「蛸壺やはかなき夢を夏の月」 明石の浦での句である。「砂地に沈められている蛸壺に身を入れて、ゆうゆうと眠る蛸。その肌にあわあわと差している月の光を幻視しているのである。」と小澤さん。明日をも知れぬ命を知らず月の光を受けて眠る…

  • 夏草

    『芭蕉の風景 上』 小澤 實著 前々から気にかかっていた本を読み始める。まずは上巻の半分、芭蕉四十代初めのころまでである。伊賀上野から江戸に出てきて日本橋辺りから深川に住み替え、野ざらし紀行に出かけるまで(芭蕉四十一歳から四十四歳)。この間の俳句を味わい、その背景の地を訪ねるというのがこの本の趣向だ。 小澤さんの解説によれば、この時期の芭蕉は、初期の談林俳句の言葉遊びを抜け出し、俳句に自分を詠み始め、取り合わせ俳句を発明し、さらに一瞬の感動を詠んだ。これが今につながる大きな試みにもなった。さらに名古屋の門人と五歌仙を巻きあげ、新風を興したのもこの旅のこと。 芭蕉の句で一番人口に膾炙している「古…

  • 走り梅雨

    『やさしい猫』 中島 京子著 たまたまこの本の名前が出てきた時、旧友は「たいした本じゃないけど」と言ったのだ。予約を入れていた私はそのまま借りたが、期待しないで読み始めた。だが、実に面白かった。複雑な心理描写もなく読みやすかった。最後がハッピエンドだということも勿論いい。(三島はハッピエンドでないと騙された気分になるといったらしいが。)逆に旧友が好評価をしなかったのはそのあたりかもしれないとも思った。 スリランカ人のウィシュマさんが名古屋出入国在留管理局で収容中に亡くなったというニュースは、確か去年のことであった。この問題はいまでも裁判で係争中と思うが、以前から日本の非人権的入管行政は問題視さ…

  • 植田

    蒲生野と近江八幡 「こころ旅」を見ていて、近江行きを思い立つ。近江は何度も訪れてはいるが、まだまだ見たいところは多い。今回は「近江の国宝建築巡り」と称してプランをつくる。 まずは名神高速の蒲生ICで下りて苗村神社へ。延喜式神名帳にも名のある古い神社である。 道路を隔て西と東に分かれており、西本殿が国宝、東本殿が重文である。もともとの産土神は東に鎮座されている由。ナムラとはもとはアナムラで日本書紀の新羅神アメノヒボコ伝承と関係があるという。かってこの地方に多く移り住んだという渡来系の人々の祖神であろうか。西本殿の御祀神は勧請した神である。 重文の楼門。 室町期のもの 門前の神田 伝承の雨乞いの掛…

  • みどり

    『スットン経』 諏訪 哲史著 「ちっとも読めない」と愚痴っていたら、古友達が「面白かったよ」と薦めてくれた一冊。連休があったり、気がのらなかったりと何日もかかって読了。たまにはなにか書かないとお客さんが皆無になりそうで、意味もない感想を少し。 諏訪さんは芥川作家だがこてこての名古屋人。以前朝日新聞で名古屋弁のバアサンたちの話に大笑いした記憶がある。(ちゃんと『アサッテの人』も読んでます)このエッセイ集も中日新聞と毎日新聞・東海版に掲載中のもので、昨秋までのまとめらしい。 話は、諏訪さん自身が躁鬱病と公言しておられる病の辛さに触れたもの、名古屋弁やらローカルな話題、不寛容な差別な社会や地球温暖化…

  • 桜海老

    『NHKスペシャル 見えた 何が 永遠が 立花隆最後の旅』 この4月30日は立花さんの一周忌に当たるらしく、親交のあったデレクターによる追悼番組である。死の半年後、知の巣窟ともいう「猫ハウス」の書棚が、きれいに空になっていた。それに驚いたところから話は始まる。 「知の巨人」といわれた立花さんは、生涯をかけて何を知ろうとしていたのか。ある人はそれは「見当識」だという。つまり我々人間はどこからきて、今どこにいて、どこに行こうとしているのか。この問いを追究するために彼は宇宙を対象とし、人間と猿を、生と死を、文明と非文明を対象とした。「ビックバンから始まる歴史を全部書きたい」そう語る姿も紹介されている…

  • 春惜しむ

    不調の原因判明 昨年は三回、今年になって二回、突然の高熱と胃腸障害の原因と思われるものが判明した。血液検査の結果、ある病気の初期症状とわかったのだ。またまた厄介なものを抱え込んだという気持ちである。一度大病を患うとストレスで別の病を引きずるということだろうか。ともかく今は処方された薬を飲み、生活習慣に気をつけるしかない。ちょっとだけ飲んでいたワインもきっぱりとやめたが、これは淋しい。 鬱々と晴れぬ気持ちで昨日は古友達と電話で話した。彼女も難治の皮膚病で今日にも大きい病院を受診するという。パソコンも調子が悪く、今やトシヨリには如何ともしがたいことが多すぎると嘆いていた。昔二人でつるんでいた頃、お…

  • 静岡紀行 一日目 コロナの収束はおぼつかないが、ワクチンを三回接種したこともあり最大限人密を避けることにして出かける。従って今回は車での移動中心。 朝8時前に自宅出発。東名高速で、まずは昼食予定の焼津を目指す。途中上郷SAと浜名湖SAで休息。今回の外出は二回目の大手術後の初めての遠出であり、慎重に休み休みである。 浜名湖SA。晴れてはいるが霞んだ景色である。 吉田IC辺りでこの近くがお宅だというふきのとうさんに想いをはせる。いつもご利用だという吉田の高速バス停留所を捜すが見落としたらしい。大井川を越えて直に焼津。ここまで休息を入れて約三時間。ネットで調べた「小川港魚河岸食堂」でまぐろを食す。さ…

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