蜥蜴
『作家の老い方』 草思社 小説家、詩人、歌人、俳人、評論家などなど人生の先達たちの「老い」に関する文章を集めたものだ。 心に残った歌がある。 冬茜褪せて澄みゆく水浅黄 老いの寒さは唇(くち)に乗するな 齋藤 史 このアンソロジーのなかで二度も出てきた歌である。 ひとつは山田太一さんのエッセイ、彼は座右の銘のようにこの歌を掲げて、ときどき老いのボヤキを反省されているらしい。 もうひとつは中村稔さんのエッセイ、俳人と歌人と詩人の老いの作品を比べての話だ。齋藤史さんの作品には、「心身の衰えを嘆いた作」も「自己を憐愍する作」も見出すことはないと感動しておられる。史さん九十歳という年齢においておやである…
2023/07/26 17:22