読書『ヘヴン』川上未映子を読んだ。著者としては初の長編作品だったのが本作でした。いじめや嫌がらせを受けている主人公「ロンパリ」と、女子のコジマ。ふたりの物語です。斜視のことを俗に「ロンパリ」という人があるそうで、ロンドンとパリという離れたところを同時に見ているみたいな意味のよくない言葉だったりします。さて。第6章がすごかったです。あそこで書かれている善悪については僕も以前、自作短編執筆中に同じような考えを進めたことがありましたし、その短編に痕跡を残したものですけど、本書のほうはじっくりと分量を割いて書いていました。心から血を流すぐらい真剣に、対峙している。ひとつの気付きにとどまらずにいました。僕がこのような善悪観(本書で百瀬という少年によって語られているのは、物事や行為に善や悪はなく、それ以前に欲求がある...『ヘヴン』