searchカテゴリー選択
chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

カテゴリーのご意見・ご要望はこちら
cancel
Fish On The Boat https://blog.goo.ne.jp/mask555

本や映画のレビューや、いろいろな考え事の切れ端を記事にしています。

本や映画のレビュー中心。「生きやすい世の中へ」をメインテーマとして、いろいろな考察、考え事を不定期記事しています。

mask555
フォロー
住所
北海道
出身
北海道
ブログ村参加

2014/07/08

1件〜100件

  • 「たら」「れば」「もしも」との付き合い。

    僕はどちらかというと、「たら」「れば」を言うタイプではない。それは生きていく上でのある種の強みではあります。だけれど、そういった「たら」「れば」「もしも」は創作や工夫の種なんです。もっというと、後ろ向きの「たら」「れば」「もしも」こそが物語を生んだりもする。人の、切っても切れない「弱さ」だからなのかなあ。会話の中で「~~だったらよかったね」「そうだねえ」なんて言いあうとき、表面上は同調しても本気の部分ではそうは思わないで割り切っているタイプです。十代の頃に後悔と格闘したひとつの結論としてのものなのかもしれません。「決定」するということについて、じっくり考えたんだと思います。生半可に決定するものじゃない、というように。それでも、割り切っているようでいて、他者に「~~だったらよかったのに」なんて言われると腹が...「たら」「れば」「もしも」との付き合い。

  • 曲解していたこと

    量子コンピュータに関する量子アニーリングについての本を読んだとき、内容をよく理解できませんでした。その流れで、量子コンピュータの0と1の重ね合わせの理論を、0と1の間の組み合わせのようなものを無限に解析できるということを混ぜてしまっていたなあと、気づきました。0と1の重ね合わせは重ね合わせであって、0と1の間のグラデーションではないんですね。量子アニーリングはアナログ的だとあったので、曲解したようです。いろいろと間違ったまま話をすすめたことがあったはずですが、間違いのタネをばらまいてしまい申し訳ありません。曲解していたこと

  • 『日本人のための世界史入門』

    読書。『日本人のための世界史入門』小谷野敦を読んだ。西洋では古代ギリシャ、東洋では三皇五帝、といった紀元前の時代から現代までを一気呵成に通貫した世界史読本。著者の印象は、いわゆる「むずかしい人」とされるタイプなのではないのかなあ、と読み始めからちょっと感じました。これはダメ、あれは良い、と端々で仕訳が始まるのですが、その判断基準の統一性がよくわからず「むずかしい」のでした。それでも歴史の要約の仕方が巧みで、語り口もおもしろいので、著者のクセさえ認められたならばあれよあれよと読めてしまうでしょう。世界史のアウトラインを辿っていくような感覚です。270ページに世界史を詰めこんでいるぶん、かなりのスピードで一時代が過ぎ去っていきます。でも要諦をつかんで書かれていますし、生煮えの知識を出してくるわけではありませんから、...『日本人のための世界史入門』

  • 『饗宴』

    読書。『饗宴』プラトン中澤務訳を読んだ。古代ギリシャの哲学者・プラトンによる、師匠であるソクラテスの物語のひとつで、エロス論です。舞台となるのは詩人・アガトン邸での饗宴(飲み会の一種)の席。アガトンが大勢の大衆を前に見事な詩を披露して優勝したお祝いの饗宴です。そこに出席した者たちが順々にエロスについて語っていきます。途中、演説の順番が来たアリストファネスのしゃっくりがとまらず、次の順番をひとつ飛ばしてもらうアクシデントがありますが、これはこの哲学議論物語にユーモアで彩ったアクセントなのかもしれません。まずはじめのパイドロスの話からもうおもしろかった。「自分がなにか恥ずべき状態に置かれている状態を愛する者に見られるとき、最も恥ずかしいと感じるのです」つまり、臆病な振る舞い、醜いふるまい、そういったことをしなくなる...『饗宴』

  • 『王国』

    読書。『王国』中村文則を読んだ。『掏摸(スリ)』の兄妹編に位置する犯罪小説で、今回の主人公・ユリカもまたあの「巨大な悪」である木崎と対峙することになります。哲学的だったり思想的だったりする部分では十分に考え抜かれているし、そういった思弁的色合い一色にならないように、参考文献を用いて補強した知識を咀嚼してちりばめてあるし、ストーリーの起伏・緩急は巧みでぐいぐい読ませるエンタメ性もあるし、背後にはいくつかのテーマが配してあるようですし(木崎が自ら語る部分以外、僕には拾えていないと思います)、著者一流の馬力をフルに発揮して作り上げた作品といった感じは、『掏摸』と同じくらいあります。ただ、ここまで野蛮で、強烈な悪の領域に踏み込んで書いていて、著者はその執筆中にまともな生活を送れていたのだろうかが気になる、というのはあり...『王国』

  • 『小説の読み方、書き方、訳し方』

    読書。『小説の読み方、書き方、訳し方』柴田元幸高橋源一郎を読んだ。翻訳家・柴田元幸さんと作家・高橋源一郎さんの対談本です。柴田元幸さんの翻訳のお仕事に触れたのは、オースターのニューヨーク三部作とミルハウザーをひとつ、といったくらいです。印象としては、「透明な触媒」としての翻訳、です。翻訳者の癖というか、翻訳者自体の声や匂い色、もっというと人となりって、どうしても翻訳された作品からかすかにではあっても感じられがちだと僕は思っていて。それが柴田さんの翻訳だと、翻訳者は薄いフィルターとしてだけあって、外国人の作者のほうを大きく、そして近く感じるんです。翻訳者の存在が、無色無臭っぽい。柴田さんは翻訳を、原文が自分の中を通り抜けていく通過時間がゼロに近ければ近いほどいい、という考え方を本書で明らかにします。なるほど、体現...『小説の読み方、書き方、訳し方』

  • 『小倉昌男 祈りと経営』

    読書。『小倉昌男祈りと経営』森健を読んだ。クロネコヤマトが有名なヤマト運輸の二代目経営者・小倉昌男。彼は「サービスが先、収益(利益)が後」などの経営哲学でビジネスの分野で著名だった人です。「宅急便」をスタートし、当時、無意味だったり非合理だったりした各規制に異を唱え、行政と激しく闘った人でもあります。また、ヤマトを退職した後には福祉財団を立ち上げ、福祉の世界に経営の手法を持ち込んでいきます。そして、当時一万円がやっとだった障がい者賃金を十万円にまであげていくという目標を掲げ、実際に財団の力でパン屋を立ち上げてその目標を実現させて、モデルケースを作った人でもあります。ただ本書では、そういったビジネス面での小倉昌男を追う分量よりも、妻の玲子、娘の真理、晩年に親密だった遠野久子(仮名)といった女性たちとの関係の内実を...『小倉昌男祈りと経営』

  • 『ハーモニー』

    読書。『ハーモニー』伊藤計劃を読んだ。「大災禍」を経た21世紀後半。成人した大人たちは、WatchMeという微小な医療分子機械を体内にインストールすることが義務付けられている。それが、大多数の国家が政府ならぬ生府という統治機構へと移行した未来世界のシステム。WatchMeによって健康状態を管理されることで、人類は病の大半を克服した。人間存在は社会のリソースとして、この上なく尊重されるものとされる。究極の健康ファーストの価値観が共有され、健康に悪い食物や嗜好品は忌避されている。健康倫理のセミナーも盛んで、人々の健康意識や人命尊重意識はこのうえなく高く、安定している。そんな管理社会に、自らの死をもって自らを尊重しよう、自分は自分なのだからとする考えで自死を試みた3人の少女。イデオローグ的な存在としてその行動を先導し...『ハーモニー』

  • 「note創作大賞2022」結果報告

    「note創作大賞2022」に短編『春の妻』を応募していました。3/25の中間発表にて、この賞へ16,848作品の応募があり212名が一次選考を通過したことが発表されました。誇らしいことに、僕の短編もそのなかに入っていました。倍率でいえば80倍ほどの門をくぐり抜けたのです。それで今夜、最終結果発表がありました。ちょっと期待はあったのですが、残念ながら選ばれませんでした。まあ、次作、そしてさらに次、と力のある作品を書き上げていきたいです。もっと良い結果を得るために。まだまだ、なのです。応援の気持ちで見守ってくださっていた方、ありがとうございました。これからも坂を上っていきます。「note創作大賞2022」結果報告

  • 『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる

    読書。『NATUREFIX自然が最高の脳をつくる』フローレンス・ウィリアムズ栗木さつき・森嶋マリ訳を読んだ。タイトルの「NATUREFIX」を訳すと、「自然が回復させる」「自然が治す」となります。本書は、人が自然に触れたり自然を体験することによって、日々のストレスから回復することがどうやらできるようだ、ということを解説しています。そればかりか、アメリカ、日本、韓国、イギリス、フィンランド、スウェーデン、シンガポールなどの自然と人間の研究やそれらを踏まえた実践的取り組みを取材した著者の経験をまじえながら、おおよそがドキュメンタリータッチで、認知力や創造性などの向上にまで自然の効果が認められることを教えてくれるのです。近年、都市部に人口が集中し、2008年には世界人口の半分が都市生活者となりました。自然と疎遠になっ...『NATUREFIX自然が最高の脳をつくる

  • 『乃木坂46 与田祐希 2nd写真集 無口な時間』

    読書。『乃木坂46与田祐希2nd写真集無口な時間』与田祐希撮影:菊地泰久を眺めた。乃木坂46三期生・与田祐希さんの2nd写真集。崖から海へとジャンプする、思い切りと度胸のいい与田さんの写真を皮切りに、イタリアでの10代最後の旅の模様が伝えられます。故郷の島でヤギを飼っていたことはファンであれば誰もが知っていることなのですが、この写真集のロケ地のイタリアでも、どこぞのヤギのリードを引っ張る与田さんの写真があり、見るなり一瞬で笑ってしまいました。これ、たまたまそうなったネタですよね。ミラノを歩く与田さんの眼鏡姿が新鮮でかわいい。与田さんって距離感を保つのが上手そうに見える人ですが、もしも眼鏡姿の与田さんと知り合いになったならば、強引にでも距離を縮めたくなるに違いない愛らしさでした。与田祐希さんは大自然が似合う人だと...『乃木坂46与田祐希2nd写真集無口な時間』

  • 『納得の老後 日欧在宅ケア探訪』

    読書。『納得の老後日欧在宅ケア探訪』村上紀美子を読んだ。僕の母が精神の病気で要介護4です。在宅介護をしています。訪問介護やヘルパーなどを入れるともっとうまくいくのでしょう。でも、父も母も他者を入れるのを嫌がり、訪問リハビリと歯科の訪問診療以外は家族だけで介護をしています。もっと介護保険が適用される制度を活用すれば、僕も外に稼ぎに出られたのでしょうけれども、もうそういうのはほとんど諦めています。自宅でできる仕事をつきつめて、技術を磨いていくしかないなあと。本書は、ドイツ、オランダ、デンマーク、英国、そして日本の在宅ケア等の現場や事情をルポとともに解説する本。どちらかというと成功事例に焦点を当てて紹介しています。ヨーロッパでは、子供が高齢の親の面倒を見ることはほぼないみたいです。親との同居もあまりない。そのような背...『納得の老後日欧在宅ケア探訪』

  • 『地下鉄<メトロ>に乗って』

    読書。『地下鉄<メトロ>に乗って』浅田次郎を読んだ。いまや世界的大企業へと発展した会社の創業者・小沼佐吉。家庭でも暴君だった佐吉の次男である小沼真次は幼いころ、兄がくり返した佐吉への反発をよく目にしていた。しかし、その反発がこじれて兄が自殺を遂げてしまったことを機に、真次の父親への反感は決定的なものとなる。大人になっても親の会社を継ぐことはなく、地下通路の一角に事務所を構える小さな会社で働く真次。そんな彼は、ある日、高校時代の書道の先生だった野平と偶然出会うことになる。その出会いのときをきっかけにするように、彼は時間を超える経験を幾度として、本当の父親の人生を知ることになっていく。1994年の作品です。崩壊したバブル景気の毒々しさの名残が色濃く残る時代だったと思います。本作品で香るその時代の匂いとしては、景気が...『地下鉄<メトロ>に乗って』

  • 近況2022/3

    近況報告になります。相も変わらずよくない家庭環境に悩まされていますが、最近は夜に出歩くのを増やして家から離れる時間が持てたためか、めまいや頭痛はだいぶ減り、食道と胃の不調も9割くらい改善しました。僕にはやっぱり、リフレッシュの時間が必要だったようです。このあたりも、だましだましやらないと、親父からの母や僕への攻撃が激しくなります。さて、小説執筆は34枚で止まったまま。単純すぎるたとえではありますが、音楽のポップス曲なんかでいえば、「ブリッジまで来ました」という段階ですね。そこでなんですが、エンタメ性を増していくか純文学の方面の作品とするかで考えていました。これは、どこに応募するかで変わってくるので、この時期ならば『文學界』が視野にありますから、純文学だと思う方向へ舵を切ろうか、とあたまを整理しています。あるいは...近況2022/3

  • 『絵はがきにされた少年』

    読書。『絵はがきにされた少年』藤原章生を読んだ。南アフリカとその隣国を中心にそこに住む人たちのごく一部にアプローチしたノンフィクション集。全11話。各話とも、およそ一部から全体が見えてくるようなつくりになっています。なぜそのようなつくりになっているかと言えば、環境や背景がインタビューした人物の周囲に漂っていて、そこを省略していないからだと思います。アフリカのほとんどは植民地支配を受けていた土地柄です。もともとオランダ人やポルトガル人の家系だったのがアフリカに移住してその土地に根差すようになり代を重ねたアフリカーナーという白人や、現地人との混血、そして現地人たちがいて、複雑な人間関係や支配・差別の社会を作り、生きている。また、現地人のなかでも、その氏族によって力関係や差別がありますし、氏族ではない場合でも、ルワン...『絵はがきにされた少年』

  • 『教育の力』

    読書。『教育の力』苫野一徳を読んだ。人間がもとめる「自由」というものをぐっと深く考えた末に得られる社会の根本原理から立ちあげた教育論でした。そもそも教育はどうして必要なのか。それは各人の自由を担保するためなのだと著者は論じます。古代、農業の勃興によって蓄財が生まれたのち、人々はそれを奪い合うようになります。そのような争い、戦争は、「生きたいように生きたい」という種類の「自由」によって起きている、と二百数十年前の哲学者たちは見抜きました。つまり「自由」への欲望が、争いを生んでいるのだ、と。そこで考えられたのが公教育でした。ヘーゲルのよると、「自由」でありたければ、お互いの「自由」を認めあわなければならない。これを「自由の相互承認」といいますが、公教育によって「自由の相互承認」をできる人々を育て上げようとしたのが、...『教育の力』

  • 『かもめ食堂』

    読書。『かもめ食堂』群ようこを読んだ。フィンランドでおにぎりをだす食堂をはじめたサチコと、そこで共に働くことになったミドリとマサコ、そして常連になる日本びいきの学生・トンミくんをまじえた、ささやかであたたかな物語。サチエが宣伝もせずにひとり、飛び込みではじめた「かもめ食堂」。おにぎりはさっぱり売れないのだけれど、コーヒーやシナモンロール、パンや軽食は少しずつ注文されるようになっていく。その日々がおおらかな文体でゆったりやわらかく進められていきます。「文学」なんて硬さはありません。「小説」といったようなてらいもありません。なんのひけらかしも、頭のよいところをみせるような技巧もありません。ともすれば、そここそが本作品の心地よさを作りだしている手法となっているのかもしれません。そうなんです、読んでいて、言葉の柔らかさ...『かもめ食堂』

  • 『読む力 最新スキル大全』

    読書。『読む力最新スキル大全』佐々木俊尚を読んだ。ツイッターでの毎朝のニュースキュレーションでもおなじみのジャーナリスト・佐々木俊尚さんによる情報の扱い方や仕事術の紹介本であり指南書です。著者自身がおこなっているネットメディアやSNS、書籍などからの情報の取り入れ方や整理の仕方、活用の仕方からはじまり、最適な仕事術の方法で締めくくられています。さまざまなノウハウが開陳されるばかりか、丁寧かつシンプルに解説されている良書でした。わかりやすいこと、この上ないです。最重要と思われるテーマは、「知肉」です。情報を摂取して得た知識・視点から概念をつかみ、たくさんの概念から世界観をつかむ。そして世界観から掴んでいくのが、自分なりの「知肉」なのでした。自分のものにした「知」という意味になります。ネットメディアには、浅く広く世...『読む力最新スキル大全』

  • 『宇多田ヒカルの言葉』

    読書。『宇多田ヒカルの言葉』宇多田ヒカルを読んだ。ミュージシャン・宇多田ヒカルさんが20周年をむかえた2017年12月に発刊された全75編の日本語詞を執筆順に収録した本です。宇多田ヒカルさんの音楽史をじっくりと、そして客観的に眺めていくと、三期に分かつことができることに気付くと思います。本書はそういった分かち方をして、合い間で二度区切りながら全日本語歌詞を掲載していく体裁です。まず一期は14歳で書いた最初の歌詞からはじまり、1stアルバム『FirstLove』と2ndアルバム『Distance』までの1998-2001の期間。この時期の歌詞は、10代で書いたものにしても、未熟であるとか稚拙であるとかという言葉を安易にぶつけてしまうならばそれはまるで歌詞を読んでいないことと同義になると思います。自分の脚でしっかり...『宇多田ヒカルの言葉』

  • 『掏摸』

    読書。『掏摸』中村文則を呼んだ。2010年に大江健三郎賞を受賞した作品。『掏摸』は「スリ」と読みます。財布などを気付かれないうちに抜き取る犯罪やその犯罪者のことを言うのはみなさん御承知のことだと思います。掏摸である主人公が、裏社会の核からの風に触れてしまうがために陥る運命。そして、運命とはなんなのかを問うような場面があり、悪役である木崎が語る悪の哲学的な世界観に触れる場面がありなど、思弁的部分がありながらも読者を飽きさせず、どんどん読ませていく、力のある作品でした。エンタメの技巧をうまく取り入れた純文学というべきでしょうか。面白い。こんな質感の犯罪小説は読んだことがありません。一枚めくると透明な水を湛えた灰色の世界が静かに湿って存在しているような。こん棒を握る相手と対峙している緊張感、というと言い過ぎかもしれな...『掏摸』

  • 『「超常現象」を本気で科学する』

    読書。『「超常現象」を本気で科学する』石川幹人を読んだ。タイトルのとおり、本書では超常現象を本気で科学的に考えていきます。幽霊から始まり、超能力へと移っていきますが、とっかえひっかえするようにトピックを渡り歩くのではなくて、幽霊現象をしっかり考え抜いたうえでそこからの繋がりとして超能力現象へ移り(19世紀末にあらわれた心霊研究の流れを汲むものが20世紀アメリカの超能力研究でした)、そこで得た知見をもちいて再び幽霊現象と超能力現象を眺めるとそこに通低している原理と推測されるものがわかっていく。本書は「超常現象」と呼ばれるものを科学的に見ていくだけにとどまりません。まず、「幽霊はいるのか」ではなく「幽霊はなんの役に立つか」という実用性の視点から見ていきます。つまり、従来の超常現象観を発展的に捉えなおしているのです。...『「超常現象」を本気で科学する』

  • 『保健所の「コロナ戦記」 TOKYO 2020-2021』

    読書。『保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020-2021』関なおみを読んだ。保健所と東京都庁の感染症対策部門の課長としてCOVID-19(新型コロナ)への対策に立ち向かい、第一線で指揮を執り続けた公衆衛生医師による記録。第1波などの感染者数のボリュームがあがった時期をひとつの章とし、3月・4月・5月など月単位を節としてすすんでいきます。とはいえ、そういったまとまりには縛られない箇所は多く、その節ではじめて持ちあがった制度やHER-SYS(コロナ陽性者のデータ管理システム)などのシステムが、その後どういった経路をたどっていったか、などがある程度のまとまりとして一挙に記述されていたりします。なので、ああれもこれもと目白押しのように様々な改善や問題が押し寄せてくる中、そのどれもを覚えながらその都度また浮上してきたと...『保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020-2021』

  • 『メモリー・ウォール』

    読書。『メモリー・ウォール』アンソニー・ドーア岩本正恵訳を読んだ。6つの短篇を収録した作品。それぞれの話は独立していますが、「記憶」という糸で繋がっていたりします。アメリカでは数々の賞を得た作品であり、日本でも本屋大賞翻訳小説部門第3位にランク付けされたそうです。どの短篇も夢中に読ませられる佳作でした。なかでも、ふたつの長めの短篇がとくにおもしろかった。表題作でありトップバッターの『メモリー・ウォール』がまずひとつ。近未来の南アフリカの都市が舞台で、その世界では人間の記憶を外部にとりだしてメディアに収め、VRでビデオを見るように体験することができる。三人称多視点、つまり群像物なのですが、アルマという認知症を患う上流層の老女が中心に位置して、彼女の記憶をめぐる話からはじまって、物語は拡大し深まっていきます。文学性...『メモリー・ウォール』

  • 僕の家の話____そして地域包括支援センターの対応への不満。

    今回は、僕の家の話をします。遡ること2019年の11月。僕は市の地域包括支援センターに、父による母への暴力の件を通報しました。今もお世話になっているケアマネージャーさんを通してでした。そこにいたるまで、様々な虐待防止センター的なところに電話をしました。そこのセンターも「うちは介入できないので。」と別のところを案内されるのですが、そこに電話をするとまた同じようにたらいまわしにされました。最後に、当時契約したてだったケアマネさんの話をすると「ケアマネさんに相談してください」と言われ、父がでかけている日にケアマネさんに連絡し、二つ返事で地域包括支援センターに回されたのです。それから、父の目を盗んで地域包括センターの人たちと会い、作成した文書を読んでもらいながら事情を説明しました。精神の病気で要介護4の母に対して、びん...僕の家の話____そして地域包括支援センターの対応への不満。

  • 『驚きのアマゾン』

    読書。『驚きのアマゾン』高野潤を読んだ。南米のアマゾン域に魅せられ、幾度も長期滞在を繰り返してきたカメラマンの著者によるアマゾン解説と体験記。気候はもちろん、生存競争も激しくて厳しい自然の世界であるアマゾン。そこに住まう動植物たちの姿や性質には、各々が生き延びるための独自の特徴を備えているものが多いようです。川や湖のなかの魚たちにしても、鋭い歯を持つ魚はピラニアだけではないですし、硬い背びれや毒のトゲを持つ魚もいろいろといます。また、そんな魚を狙う鳥類やワニたちもいる。森のなかにはジャガーがいるし、ボア(大蛇)や毒蛇、毒蜘蛛もいる。ブヨや蚊やハチの大群がやってくることもあるし、噛まれると厄介なアリたちもいる。野営地を作ればホエザルの家族が樹上から糞尿をばらまいてきたりもするし、夜な夜な正体不明の怪音が聴こえてき...『驚きのアマゾン』

  • noteをはじめる。

    noteをはじめました。こちらです。noteでは小説を中心に更新していきます。小説はブログでもずっとアップロードしてきましたが、レイアウトとしてはnoteのほうが読みやすいです。よろしかったら、noteで僕の小説を味わって(あるいは味わい直して)みてください。また、創作大賞にも応募しました。応援して頂けるとうれしいです。それでは、次回は書評・感想での更新になります。よろしくお願いいたします。noteをはじめる。

  • 『図解 人類の進化』

    読書。『図解人類の進化』斎藤成也編・著海部陽介米田穣隅山健太を読んだ。ブクログの献本企画で当選した本です(ありがとうございました)。人類の誕生から現在まで、そして短くではありますが未来の人類にまでをも視野にいれた、人類史の概説・入門書として楽しめる本です。二部構成という形で、第一部では進化論の誕生と進歩の話、DNAの話や年代測定の話、大きなスケールでの気候変動の観測やメカニズムの話などがつづいています。各章それだけで一冊の本になるくらいのものを短くまとめているので解説なしででてくる用語に難儀する部分はあったのです。けれども、人類学の成り立ちを知るうえで、生命科学や地質学や物理学や歴史学なども大きく関係する学際的な姿を知っておくことで、人類学そのものを隠すことなくをまるごとイメージすることができますし、人類学を志...『図解人類の進化』

  • 謹賀新年2022

    あけましておめでとうございます。北海道の僕の住む街はつよい寒波に見舞われて、元日の昨晩には‐17度を記録するほどでした。掛け布団に毛布にと、もこもこになって眠ったせいで夜中に汗をかいて目覚めてしまい、初夢は見たのだろうかよくわからずで、そのまま明け方まで目が覚めたまま……。さて、昨年の今の時期の僕は、前年よりももっと本を読みたいし小説を書きたいし、と野心的に構えていたはずです。しかしながら、読書量は少なくなり、書いた小説は三十数枚の練習短篇のみ(『春の妻』がそれです)。原因は悪い家庭環境にとうとうほんとうに耐えられなくなってきたことにあります。つまりは、不定愁訴と片付けられてしまう以上の体調面での不調がはじまりました。それまでの胸の痛みはほとんど治まったのですが、入れ替わるように2月からめまいと頭痛と耳鳴りが始...謹賀新年2022

  • 『夜のピクニック』

    読書。『夜のピクニック』恩田陸を読んだ。第二回本屋大賞受賞作。修学旅行の代わりに行われる夜通し80kmを歩き続けるイベント「歩行祭」を舞台にした、男子高生・融と女子高生・貴子のふたりを主人公とした物語。二人は三年生になってから同じクラスになった。それまでお互いを避けてきたのにどうして、と困惑する二人は、実は異母兄弟なのだった。「葛藤と対立」からはじまる二日間の人間模様がどのような結末を迎えるのか、わくわくしながらずっと読み続けていられる名作でした。そして結末での「葛藤と対立」の落としどころが素晴らしかったです。しっかり活力がある作風で進んでいくのに、落としどころではさりげないくらいの柔らかさで印象的。緩急や硬軟のメリハリ、だともとることができるのではないでしょうか。読んでいると、きっと細かくきっちり、がっちりと...『夜のピクニック』

  • 「干渉」が跋扈する世の中。

    たとえば僕は、「干渉」されるのが好きではありません。親からの過干渉、友人からの干渉、そして仕事上での干渉ですら受け入れられないときがあります。今回はそんな「干渉」を見ていきます。世の中ってものは「干渉」だらけであることが改めて理解できると思います。そして、意識の底あるいは無意識に密着した「干渉」をうまく対象化できたならば(できるだけ、ということですが)、自制や自律が利いた、より生きやすい世の中に変わるではないかな、と考えます。そうなんです、「干渉」がまるで秘密裏に市民権を得て人中であぐらをかいている今の世の中は、息苦しかったり生きずらかったりしませんか。より生きやすく、ベターな居心地の世の中になればいいのにと思っての論考です。「干渉」にはさまざまな形のものがあるのですが、「干渉」というものに分別がないのが今の社...「干渉」が跋扈する世の中。

  • 『人を見捨てない国、スウェーデン』

    読書。『人を見捨てない国、スウェーデン』三瓶恵子を読んだ。幸福度調査でいつも上位にランクインする北欧の国々。スウェーデンはそんな国々のなかでも、ひと昔もふた昔も前からその高福祉社会のありかたが日本でも注目されている国です。本書は、スウェーデン在住30年以上(本書執筆時の2012年当時)の著者による、スウェーデンの子どもたちの生活を中心に紹介してくれる本です。スウェーデンはいろいろとタダなことが多いそう。それだけ多くの税金が取られてはいるのですが、国や地方の税金の使い道がはっきりしており、そのことにスウェーデン人たちが納得しているとのこと。たとえば、大学に至るまで学費や入学金がかからず、さらに返済不要な奨学金や教育手当がある。医療の分野でも日本よりもお金がかからない(しかしながらちゃんとした医師に診てもらうまで長...『人を見捨てない国、スウェーデン』

  • 『スティグリッツ教授の これから始まる「新しい世界経済」の教科書』

    読書。『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』ジョセフ・E・スティグリッツ桐谷知未訳を読んだ。台頭著しい中国とは違った意味で、世界経済のこれからを考えるうえでその動向をもっとも注視しなければいけない国がアメリカです。なぜなら、アメリカはこれまで経済のグローバル化を推し進めてきた国であり、昨今力が落ちてきたと言われつつも、まだまだ世界の中心にポジションを取り続ける国だからです。グローバル過程でアメリカは自国のルールを他国との貿易や経済のルールにおいても適用してきました。つまりグローバル化の主導権を握ってきた国であり、そのことはいわずもがなだと思います。そんなアメリカの国内では格差の拡大、それも富める1%と下位に属する層とに別れてきていて、中間層が空洞化しつつあるようです。この状況は日本の状...『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』

  • 『愛について語るときに我々の語ること』

    読書。『愛について語るときに我々の語ること』レイモンド・カーヴァー村上春樹訳を読んだ。アメリカの作家、レイモンド・カーヴァーの転換期となった80年代初頭発表の短篇集。全17作収録です。タイトルがほんとう独特で印象深い言葉の使い方で、こういう言い回しを読むと自分もやってみたくなります(でも、おそらく下手くそになってしまうんでしょうね)。バカなことをしたものだなという人物や暴力的な人物、情けない人物も、話の中央に位置するかたちでよくでてきます。また、運命やタイミングなどが、それこそ人間たちのその状況や状態などの一切に構わず、まるで「まったく空気を読まずに」やってきて、人間たちを振り回したり掻き回したりする理不尽ともいえるさまをよく描いているなあと思えました。そういったものはもうしょうがなくて、そういった瞬間以降、人...『愛について語るときに我々の語ること』

  • 『山下美月1st写真集 忘れられない人』

    読書。『山下美月1st写真集忘れられない人』山下美月撮影:須江隆治を眺めた。最近では女優のお仕事が目立つ乃木坂46の3期生でセンター経験もある山下美月さんの1st写真集。コロナ禍の直前の時期に出版されたものです。撮影場所はパリ。当時20歳の山下美月さんです。ランジェリーや水着、入浴ショットはもちろん、そのほかの写真でも露出度が高いです。たぶん、乃木坂46メンバーの写真集で一番攻めています。肌がとても白く、きめがこまかそう。茶色がかった髪はサラサラで、柔らかそうに肩のあたりでしなっているショットがあって、僕はそういうところに女性特有の繊細な美しさを感じるほうです。美月ちゃん、少女から大人へと変わったばかりのような頃といった印象で、少女の可愛いらしさと大人の艶やかさがどちらも不完全なまま共存している稀有な瞬間という...『山下美月1st写真集忘れられない人』

  • 『なつかしい時間』

    読書。『なつかしい時間』長田弘を読んだ。1995年から2012年までの17年間、NHK「視点・論点」で著者が担当した48回分と同じ時期に話した別の3篇をあわせて収録したエッセイ集です。現代において「時代の影」へと追いやられてしまった尊いものに目を向けるような問題提起のエッセイ集といったふうでした。「そこが問題なのではないですか」にいたるまでの分析や感じていることが細やかです。だから読んでいて「うん、たぶんそうなんだろうなぁ」とこちらが思えるという、理解する上での納得という土台に乗っかるような問題提起なのです。少なくない章でその具体的な答えを探し実行するのを読者に委ねていましたが、その問題提起に至るまでのなかで、近代の古典などを引いたり紹介したりしながらですから、読んでいてもなかなかおもしろみがあるのです。文学世...『なつかしい時間』

  • 『ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム』

    読書。『ピアニストの脳を科学する超絶技巧のメカニズム』古谷晋一を読んだ。クラシックのプロのピアニストは、どのように演奏をしているのか。指の動き、身体の動き、楽譜の理解とそれに沿った進行、ミスへの対応、演奏表現の仕方などなど、その脳の仕組みは素人やアマチュアとどう違いどう優れているのか、また、身体に差はあるのかなどを、MRIやPETといった近年に発達した科学技術装置での観察や各種実験での結果から解き明かしていく内容です。一言でいうと、これらは「音楽演奏科学」という学問分野にあたるのですが、この分野からの一般に向けた研究報告でもあるでしょう。たとえば「音楽教育は幼少時からしたほうが伸びる」と俗に言われますよね。それは本当なのだろうか?という問いへの解答や(これは本当なのですが、大人になってからの音楽教育によっても音...『ピアニストの脳を科学する超絶技巧のメカニズム』

  • 「ダーク」というデフォを回避するには。

    今回は、この世界に住まい世間に属する僕らの態度のなかでも、「素直に言ってしまえばダークサイドだよね」といえる地点からはじめます。せせこましくて、陰湿で、歪んでいて、汚くてっていう悪い姿勢でいたほうが足をすくわれにくいのってみんなわかってるじゃないですか?グループ内だとかの閉じた世界では特にそうだし、開かれた世界でも匿名を使ってそうしがちですよね。より狭い範囲でしか通用しない善、または自分だけの善(つまり利己かつ悪)に忠実にというふうに。人が自然とそうなってしまう世界観や人間観は、たぶん代々しぜんと継承されていく、あるいは形作られていっています。少なくともここ三代世代くらいの時代感覚で考えるとそう言えそうな気がします。そこに逡巡を経験する時期はあったとしても、とりまく社会環境に抗わずに適応するようになるからだと思...「ダーク」というデフォを回避するには。

  • 『火花』

    読書。『火花』又吉直樹を読んだ。大きな話題となった、芸人・又吉直樹さんのデビュー作にして第153回芥川賞受賞作。味の濃い小説という印象がまず先に立ったのです。しっかりと表現しながらも幅広い読者層に届くような文体がまずあって、繰り広げられるドラマも検討されていくテーマも最初一歩目から最後のゴールへの一歩までしっかり味があるといいますか。まるで茶碗の中の米粒一つ一つがおいしいと味わうような読書でした。そこには、本書のクライマックスの部分とかぶるところでもあるのですが、純文学であっても商業性(広範囲にウケる面白み)を考えて取り入れている点が基本部分にあるのだろうと思いました。主人公の若手芸人・徳永が地方の営業で出合った先輩芸人・神谷に魅せられていきながら、そのなかでの葛藤や憤りまでをも受けて止めていく話というのが、一...『火花』

  • 『ホモ・ルーデンス』

    読書。『ホモ・ルーデンス』ホイジンガ高橋秀雄訳を読んだ。若い時分から言語学に秀で、歴史学、文化史に功績を残したホイジンガの晩年の大作です。タイトルにあるホモ・ルーデンスとは「遊ぶ人」という意味です。ホイジンガの考えのなかでは、人間は遊んでこその存在。遊びの中の真面目さもよし、娯楽としての遊びもよし、命を賭けた遊びも認めます。そして本書の最後のほうでは、「すべては遊びなり」という言葉が本論を締めくくるのに「ふさわしい結語として湧きあがってくる」と書いてあります。遊びのなかに遊びとして文化が生まれる、と大きく、そして濃密に論じ始めて、それから法律、戦争、競技、詩、哲学、芸術といった相を「遊びの論」の観点から見ていくという流れです。なかなかややこしいですが、ここぞというところで肯かせられたり気付かされたりする部分は多...『ホモ・ルーデンス』

  • 『新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門』

    読書。『新訂版タモリのTOKYO坂道美学入門』タモリを読んだ。雑誌『TOKYO一週間』に連載された内容を書籍化したもので、もともと2004年発刊の本書を、そのなかで紹介するお店の情報などを新しく訂正した2011年版です。日蓮入滅の寺で、そののち勝海舟と西郷隆盛が江戸開城の話し合いをしていただとか、八百屋お七の悲恋の話だとか、東京というか本州の土地にはいろいろと歴史が眠っていますね。この本、東京の史跡に興味のある人へのガイドブックとしても最適ですし、楽しく読める良書でした。八百屋お七の話はもしかすると有名な話なのかもしれませんが、僕にとっては初めて知る話でした。江戸の大火のおりに家が焼けた十六の少女・お七は、近くの円乗寺に避難してしばらくそこで暮らします。そのうちに、その寺のイケメンの小姓に恋をする。それから一年...『新訂版タモリのTOKYO坂道美学入門』

  • 『マダム・エドワルダ / 目玉の話』

    読書。『マダム・エドワルダ/目玉の話』バタイユ中条省平訳を読んだ。20世紀前半から中ごろに活躍したフランスの作家・バタイユの代表小説二作品の新訳版です。どちらも性描写が多く、内容としても中心に性がある作品で、とくに『目玉の話』においては、ある種の極まで到達した性の感覚を扱っていて強烈な読書体験になる作品でした。分量は短いのですが、読んでは考えまた読んでは考えしながら、少しずつ嘴でつつくような読み方をして自分なりに消化してみた次第です(全消化とまではいってないでしょうけれども)。まず『マダム・エドワルダ』。娼婦との一夜の話です。娼館からも抜けだしてパリの街中にさまよい出て、快楽と危険の線上を行く物語は続いていく。暗い色味で写実的、でも幻想性を帯びた、エロスがテーマの絵画を何枚も何枚も続けざまに眺めているような読書...『マダム・エドワルダ/目玉の話』

  • 「安心」が失われているからこそ。

    ホントに「考えの切れ端」だという印象が、きっと強いだろう、今回の記事です。不安を避け続けると認知が歪んでいくといいます。認知が歪むと、本来なんでもないものに対してこれは悪いものだ、と考えるようになるのだといいます。世の中、不安に思えるものが多く、不安に思いやすい人も多いでしょう?とすると、皆が不安と真正面から対峙してひとつずつ解消する姿勢でいれば、社会環境は悪化しない?なぜって、世の中の混迷の源には、それこそ全員が持つそれぞれの認知の歪みがあるのではないかという気がすごくするからです(コロナ禍はまた大きな不安ですし、ここではコロナ禍のことを言っているのではないのですが)。失敗すると恥ずかしいものだし周囲からバカにされないとも限らないし、ずっと「あのときこんな失敗をしたな」言われ続けることもある。でも不安との対峙...「安心」が失われているからこそ。

  • 『不安の病』

    読書。『不安の病』伊豫雅臣を図書館にて。大なり小なり、誰しもが抱える「不安」というものがあります。「不安」は、「不安」だからこそいろいろ工夫してよい結果を出すこともあるものではありますが、その「不安」が高じて社会生活に支障が出てくると、それは役に立たない「不安」であり、「不安の病」として治療した方がよいものになります。本書は、パニック障害、社会恐怖(対人恐怖、社会不安障害)、強迫性障害、疼痛性障害と心気症の4つに「不安の病」を大別し、それらを解説するととともに認知行動療法と森田療法の見地から治療法の説明をするものです。不安障害全般には、認知行動療法と森田療法といった「精神療法」と、選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI・かいつまんで言うとセロトニンを増やすための薬)などによる「薬物療法」が用いられます。序盤で抑...『不安の病』

  • 『パリのアパルトマンから』

    読書。『パリのアパルトマンから』アトランさやかを読んだ。パリ在住のライターによるエッセイ集。やわらかであたたかな風が吹いている、と表現したくなるような文章。それに、風通しだっていいというような内容です。食文化、フランス人の気質やパリの文化、パリジェンヌたちについて、パリっ子たちのコミュニケーションの有りよう、etc……。どの項も4ページほどの分量なのですが、紹介されているあれやこれや、そこに挟まっているディテールがとても魅力的なのでした。ディテールってものは具体的かつマテリアルでなきゃだな!と感じ得たくらいです。たとえば、自慢のクロワッサンを買いたいと思っているそのパン屋で、持ち帰った後、自宅での味わい方を知りたくて店員と話をしていると、うしろから自分と同じお客さんであるマダムが声をかけてくる。「食べる前に、オ...『パリのアパルトマンから』

  • 『誰が音楽をタダにした?』

    読書。『誰が音楽をタダにした?』スティーブン・ウイット関美和訳を読んだ。サブタイトルは「巨大産業をぶっ潰した男たち」。2000年くらいからの同時期に、かたやインターネットは普及し発展していき、かたや音楽産業の売上は右肩下がりになっていく。その中身を解剖するように見ていくと、僕の世代なんかではよく知っているmp3圧縮技術が時流を作った要となっていたのです。本書は日本でも少なからず影響のあった違法コピー音楽の面でのインターネット史・ノンフィクションといえます。本書は三つの観点からこのインターネット・音楽違法コピー史の内実をひも解いています。インターネットが市民権を得るずっと前から、後にmp3として結実する音響技術の研究を続けていたブランデンブルク氏が中心の音響チームのストーリー、つまり音楽コピーに続いていく技術面で...『誰が音楽をタダにした?』

  • 『少女は卒業しない』

    読書。『少女は卒業しない』朝井リョウを読んだ。一般的な日取りよりも遅い3月25日の卒業式。そしてその卒業式を最後に廃校になる進学校。そんな卒業式を含めた、その前後からの短い時間の流れの中での高校生たちそれぞれの生(LIFE)を連作短編で描いた群像劇です。7つの短篇に共通する人物がいたりもするのですが、人それぞれ価値観や性格が違うように、7つの物語の主人公独自の世界が繰り広げられています。大きな世界観に登場人物たちをくるんであげるようにして群像劇を編む方法もあると思うのです。それは「閉じた詩的な方法」としてのもので、ファンタジックな方法です。この作品でいえば、東西南北の棟によって成り立っている高校の造りというものがひとつの世界観的なものとして登場人物をくるんではいるのですが、あくまでそれは無機的な舞台装置にすぎま...『少女は卒業しない』

  • 『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』

    読書。『風の帰る場所ナウシカから千尋までの軌跡』宮崎駿を読んだ。僕も大好きなジブリのアニメーション映画の数多くを手掛けている宮崎駿さんのインタビュー集。インタビュアーは音楽雑誌のほうで著名な渋谷陽一さん。1990年11月から2001年11月までのあいだの5度のインタビューを収録。最初のインタビューこそ謙虚さが勝っていてまっすぐに応えようとしている姿勢が感じられるのです。しかし、だんだんと、インタビュアーに慣れてきたのでしょうか、あけっぴろげに感じられるところもあるし、歯に衣着せぬ発言も多数あるし、気難しげなところもあるしで、もともとけれんみの無いお人柄のようではあるのですがざっくばらんに話をしてくれている印象に変わっていきました。その結果、宮崎駿さんという、一人の人間であり、アニメーション映画監督であり、アニメ...『風の帰る場所ナウシカから千尋までの軌跡』

  • 『星空の谷川俊太郎質問箱』

    読書。『星空の谷川俊太郎質問箱』谷川俊太郎を読んだ。いろいろな年代の人たちからWEBに寄せられた数々の質問に、詩人の谷川俊太郎さんが答える本。谷川さんは詩人であって聖者ではないのですが、大詩人で人生の先輩でと考えると、まるで聖者のようなひとなのではないかという先入観で見てしまう。僕の詩人観がすこし歪んでいるからです。でも、注意深く、こういった本を読むと詩人が聖者じゃないことはなんとなくわかってきます。それは僕にとって、とてもよいことです。どの答えもおもしろい、しかし、僕の読みとは必ずずれている答えになっていました。僕が野球の打者で、谷川さんがキャッチャーとしてピッチャーの投球をコントロールしていたら、僕はまったく配球を読めていないで、空ぶったり見逃したりして三振しているでしょう。それは相性のせいかもしれないです...『星空の谷川俊太郎質問箱』

  • 『世界のすべての七月』

    読書。『世界のすべての七月』ティム・オブライエン村上春樹訳を読んだ。小説が上手かどうかにかかわらず、なんだかどうしても気になってしまう作家で、だからこそ翻訳したい作家なのだ、というようなことを翻訳者の村上春樹さんが書いています。彼がいうところでは、彼の小説には「下手っぴいさ」があるのだと。でも、翻訳されたあとの本書を読んでみるとそういうところはほとんど感じられませんでした。ストーリーの展開には人生を知っているもののそれがありますし、文章やその展開にだってまっとうな誠実さがあると感じました。反対に、翻訳がもともとの文章の素顔を、慣れた感じで化粧しているかのような感覚が僕にはありました。1969年にダートン・ホール大学を卒業し、2000年に同大学で卒業31年目の同窓会が行われている模様を挟みながら、主要な11人の過...『世界のすべての七月』

  • 健康保険の減免制度却下される

    コロナ禍がはじまってすぐの段階で僕は職を失いました。正確には、その年、雇ってもらえなかった。4年間の雪のないシーズンだけ同じ観光施設で働いていて、その前年には会社の人から「来年もよろしくおねがいします」なんて言われていたのでした。言うまでもなくコロナ禍は今も継続していますし、僕の失業の状態も変わっていません。母の介護をしているぶん、冬場の仕事はむずかしいのです。父か僕のどちらかが雪かきしていたら、必ずどちらかは母を見守っていなくてはいけない。夏場もそれは同じことではあるのですが、冬場はストーブを焚いているぶん危険なんですね。夢遊病者のように目をつむったまま思念かなにかにとりつかれてあちこち歩き回ることが多く、ストーブにぶつかることは珍しくなく、今年の初めには煙突に腕をくっつけて火傷しもしました。デイサービスは嫌...健康保険の減免制度却下される

  • 怒りと被害者意識。

    このあいだ読んだ『負けない技術』で気付かされたことですが、人が怒るとき、その大半には源に被害者意識があると思います。ほんとうに被害をうけて怒るときの被害者意識もあれば、これは自分への加害であると決めつけての被害者意識もあります。今回はこのことについて、すこし考えてみます。生きているとどんどん被害者意識って育っていくものでしょう。毎日、いろいろと、他者から被害を受けて生きています。ただその被害の内容の内訳は、他者にとっては悪意のない加害がほとんどです。東京の山手線で朝の満員電車に乗ったときのことを思い出します。これは容易に足を踏まれかねないし、踏んでしまいかねない、と注意する気持ちになったと思います。たとえば横に立つサラリーマンに足を踏まれてしまう。意図的ではありません、事故です。それでも、踏まれた側はしばらく踏...怒りと被害者意識。

  • ワクチン摂取二回目

    8月4日、新型コロナワクチンの二回目の摂取注射をしていただきました。ファイザー製です。二回目は副反応が一回目よりも強くでやすいとテレビやネットで見聴きしていましたから気持ちを固めていたつもりでしたが、どこか真剣ではなかったみたいでした。だから、注射を打ってすぐに腕が痛くなってきたことから判断して、「たぶん、前回よりも腕の痛みが早く強く出るのが、僕の場合の二回目での強い副反応になるんだ」なんて勝手に考えはじめていて。帰宅しても腕の痛み以外はなんでもなくて、元気にこのブログの更新までしたと思うんですが、翌朝になって頭の重みと頭痛、倦怠感がではじめました。それでも朝食を食べ、家事をし、スーパーに買い物にまでは行けたんです。それで食材を片付けてから「ちょっと休もう」と布団に横になった。暑い盛りで、室温は30度を超えてい...ワクチン摂取二回目

  • 『メールはなぜ届くのか』

    読書。『メールはなぜ届くのか』草野真一を読んだ。メールが届くまでの工程や仕組みをたどりながら、インターネットやコンピュータってどういうものなのかを学べる本。地球の裏側からでも、瞬時にメールは届きます。物理的に途方もない距離をどうやってこちらまでやってくるのか。回線の性能面、つまりどのくらいのデータ量が1秒でどのくらい進むかというような記述はありませんでしたが、コンピュータ同士でどうリレーしていくかというようなネットワークの仕組みについて知ることができます。コンピュータ同士で繋がるために必要な取り決めを「プロトコル」といい、サイトのアドレスでおなじみの「HTTP」やサイトを作るときに必要なファイル転送で使う「FTP」などの「P」の文字がそのプロトコルのことなのでした。ネットワークでは光ファイバーなどの物理的な面が...『メールはなぜ届くのか』

  • 『負けない技術』

    読書。『負けない技術』桜井章一を読んだ。裏麻雀の世界で代打ちとして20年間無敗の誇った「伝説の雀鬼」である著者による、勝負事にかんする彼なりの人生訓・人生哲学といったエッセイです。裏麻雀って何なのかと検索してわかるところでいうと、企業やヤクザなどが賭博を行うためのものだったり、地域への進出や撤退を賭けたものとして行われていたりするものだということです。そういうことで回っている世界があり、そういった世界のあれこれが表の世界に潮の満ち引きのように影響を与えてもいるのでしょう。そういう世界の裏麻雀であまりに伝説的な活躍をしたがため、こうして表の世界で「世に出る」ことになったのかもしれませんし、それこそ名を知られたほうが安全だ、みたいな論理もあったのかもしれない。表の世界のわかりやすいところでこういった話を知ることがで...『負けない技術』

  • 『JR上野駅公園口』

    読書。『JR上野駅公園口』柳美里を読んだ。2020年の全米図書賞翻訳部門に選ばれもした作品です。文庫本の裏表紙にある内容紹介の文章が、ほんとうに書き過ぎずちょうどよい濃度で伝えてくれているので、僕がここでわざわざ拙く紹介するのも野暮なのですが、とりあえずのところを知って頂くために簡単に書いていきます。多少のネタバレもあります。福島県相馬郡で暮らしていた主人公が人生の最後に上野駅周辺でホームレスとなり、その生活の中で故郷や家族、そして自分の人生を振り返っていきます。平成の天皇と同じ年齢で、皇太子(今上天皇)と同じ日に生まれた息子がいて、昭和天皇の行幸の場に居合わせたことがあり、というふうに、日本という国に住む者のいっぽうの極ともういっぽうの極の対比で見せる構図でもあります。ここで気付くのは、どちらにしても人間的な...『JR上野駅公園口』

  • 時間を節約する!と躍起にならないこと。

    僕らは他者との関わりで生きている。そのなかでいろいろとストレスはあってどこかで休憩したくなるもの。でも一日の中で、「一分でも節約して休憩に充てるぞ」と躍起になっても、たぶんそうやって溜めた時間ではよい休憩にはならない。時間の節約にエネルギーを使い過ぎているっていうのがあるし、休憩に入るときの自分の状態が穏やかでなさすぎてうまく心身が休憩に入れないだろうからです。休憩のために一分節約したばかりに、二分なければ休息できない疲労をためてしまうことになってしまいがち。反対に、時間の節約にぴりぴりせずにいたほうが、幾分短めの休憩でも休める。量ということでもないんです。つまり、普段どういう質の時間の使い方や過ごし方をするかなのだと思う。でも実際、急ぐときは急がなきゃだから、過度にならないように適度にバランスを取りながらにな...時間を節約する!と躍起にならないこと。

  • 『ゆるす 読むだけで心が晴れる仏教法話』

    読書。『ゆるす読むだけで心が晴れる仏教法話』ウ・ジョーティカ魚川祐司訳を読んだ。ミャンマーの高僧であるウ・ジョーティカ師が1997年にオーストラリアで行った法話をもとに構成された本。仏教の専門的で難しい法話ではなく、非仏教徒でもわかるような言葉と内容で、「心の科学」とも言われる仏教の視座から主に「怒り」「許し」について語っています。また、マインドフルネス(今の自分に自然と集中できている状態、でしょうか)を重視し広めようとしている方のようで、随所にその思想や瞑想の大切さを説く場面がありました。「スピリチュアル」という言葉で表現される種類の内容が重なっていますが、もともと「スピリチュアル」という言葉自体がとても曖昧なものなので、そこに神秘主義やオカルトを想像する方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、本書で語られる...『ゆるす読むだけで心が晴れる仏教法話』

  • ワクチン摂取一回目

    新型コロナワクチンの第一回目の摂取の注射を先週の水曜日にしていただきました。ファイザー製ワクチン、つまりmRNAワクチンです。mRNAワクチンは新しい技術ですから、大丈夫なのだろうか?と不安はあったのですがネット検索やSNSでいろいろ知ってみると大方の不安は解消されたのでした。抗体を作るためにウイルスの設計図を作らせるmRNAを体内に入れるのがこのワクチンの方式。そのmRNAは一週間もすれば壊れてしまうそうです。壊れてしまうということは、意味を成さなくなるということでしょう。いろいろと副反応はありますがそれはしょうがない部類といいますか、デルタ株まで流行り出した現在はなおさら受け容れるべきリスクだと判断しました。それで、摂取後どうだったか。一日目の夜から摂取した上腕部外側にこわばるような痛みがでました。僕の場合...ワクチン摂取一回目

  • 『はじめてのゲーム理論』

    読書。『はじめてのゲーム理論』川越敏司を読んだ。ゲーム理論はもともと、ジョン・フォン・ノイマンらによるポーカーについての分析から生まれ、有名になった理論です。いまでは医療の世界であたらしい医者の配属の仕方に用いられていたり、建築業界などで工事の入札を自分の会社が赤字にならない金額でうまく権利をものにするために使われる論理だったりするそうです。そうじゃなくても、有名な「囚人のジレンマ」(別々に取り調べを受けるAとBの両者のうち一人だけ自白しもうひとりが黙秘すると前者は無罪放免で後者は長期の刑期に服すことになり、ともに自白するならば刑期は免れないが情状酌量の余地がもたらされ、両者が黙秘だと両者とも軽微な罰だけで済む状況のなかで、AとBはどう行動するべきか?を考える問題)と呼ばれる状況と似たようなジレンマ・葛藤に僕た...『はじめてのゲーム理論』

  • 『推し、燃ゆ』

    読書。『推し、燃ゆ』宇佐見りんを読んだ。デビュー二作目での第164回芥川賞受賞作。推しのアイドルを夢中で追いかける主人公・あかり。そのアイドルがファンを殴った時点から物語が始まります。雑な言い方になりますし、内容とはまるで関係がないのだけど、技の繰り出すところとその種類を考えてみるのに学べるものがあるなあというふうに読みはじめました。わかりやすいところだと、最後のほうなどの誇張的表現の多用で盛り上げていく、だとか。どういうふうに書いているかな、というところから始まりましたが、読み進めるうちに興味は中身へと移っていきました。ページを繰るごとに主人公の日常の送り方やどういうふうな生き方をしているかなどの解像度がゆっくりと増していきます。おもしろさも吸引力もそれにつれてクレッシェンドする感じでした。以下、ネタバレのあ...『推し、燃ゆ』

  • 『霊と金』

    読書。『霊と金』櫻井義秀を読んだ。「宗教嫌いの神秘好き」と形容される日本人。日本社会で勢いを増しているスピリチュアルについて警鐘を鳴らす本です。副題は「スピリチュアル・ビジネスの構造」。2009年刊行の新書ではありますが、著者の目と分析力が、本書で扱われるいろいろな事件やトラブルの底の部分まで透徹しているので、今読んでも翳りのない論考として光っていました。構造的にどうなっているのかがちゃんとわかっているからこその、スピリチュアル・ビジネスに対する(そしてある部分での社会構造に対する)見抜きがあります。最初に登場するのは、宗教団体がその身を隠して作った会社が運営するヒーリングサロンに取り込まれそうになった女性の話で、そのやり口がわかる内容になっています。とにかくお金を吸い上げるために、スピリチュアルの論理を駆使し...『霊と金』

  • 在宅介護の現状への意見

    母を、父とともに在宅介護している者としてひとこと意見を書こうと思います。介護は、要支援・要介護などを受ける人たちに主眼をおくのはもっともです。だけれど、実は介護をするほうの負担がとても大きい。だって、ぶっちゃければ、僕らみんな人間的にちゃんとしてない人たちでしょう?そんな人たちが人間的に成熟しないままいきなり介護の現場に放りこまれるんです。DV(ドメスティック・バイオレンス)だってたぶん、在宅介護の現場では少なくないと思います。だから介護者がそこまで追い込まれないように、介護者のほうも支援・ケアする仕組みは大切なのでちゃんと作ってほしいのです。認知症の人を介護しているんだったら、ユマニチュードを教えてもらえる仕組みがあれば違います。ユマニチュードは認知症の人たちとのよりよい関係性を考えて、認知症の人をちゃんと一...在宅介護の現状への意見

  • 『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』

    読書。『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』マイケ・ファン・デン・ボーム畔上司訳を読んだ。オランダ系ドイツ人で40代の女性ジャーナリストが、幸せとはなんなのかを探るために世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅し、およそ300人のインタビューをもとに幸せについて考えた本です。13ヵ国をそれぞれ訪れた時の様子を語る章と、テーマ別に各国の人びとのインタビューを構成して幸せの様々な面のひとつひとつを考察した章とを交互に織り交ぜた仕様になっています。世界幸福度ランキング上位13ヵ国とは、アイスランド、ノルウェー、コスタリカ、デンマーク、スウェーデン、スイス、フィンランド、カナダ、オーストラリア、パナマ、ルクセンブルク、メキシコ、コロンビアの各国がそうです。手厚い福祉政策が特徴的なスカンジナビア諸国が軒並み...『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』

  • 『ジャイロスコープ』

    読書。『ジャイロスコープ』伊坂幸太郎を読んだ。2015年出版の、人気作家・伊坂幸太郎さんの作家生活15周年記念短篇集。書き下ろし作品が本書のまとめやくとしてトリを飾るかたちで、それぞれに書かれた時代の違う全7作品を楽しめます。どの作品も、作家自身が自分の型を破るためにトライしているかのように感じました。作品への踏み込み方が深いですね。アイデアも洒脱な会話も、短篇だからだとかトライしているからだとかで力を抜くところもなく、エネルギーをしっかり傾注しているところがやっぱりプロです。そして、傾注できるだけのたくましい筋力というか、鍛えられた実力があるなあという感じ。本書を手に取ってみることで、伊坂幸太郎という売れっ子作家を卓越したひとりのクリエイターと見て、その内燃機関の秘密、つまりはエネルギーを注ぐことと実力をつけ...『ジャイロスコープ』

  • 『「空気」の研究』

    読書。『「空気」の研究』山本七平を読んだ。日本人がつよく拘束されている「空気」を論じた1977年発刊の名著。「空気」へと決定打をあびせた本書の論考をもってしても、現在において「空気」という現象はしぶとくつよく僕らのあいだに根付いてしまっています。でも、ちょっと難しいながらも、本書の内容をある程度咀嚼できる人が増えたならば、「空気」を覆すチャンスも増えていくし、本書が読まれ続けることで、「空気」に抵抗するためのファイティングポーズは継承されていく、つまり覆すチャンスが潰えずつないでいけるのだと思うのです。本書は、具体例を多く引きながらだけれど、でも中心は本格の抽象的論考で進めていく形ですから、言外でイメージするところでけっこう苦労しました(というか、この本で僕は、読書中にその内容を言葉を離れて考えていがちなことに...『「空気」の研究』

  • 『戦いの日本史』

    読書。『戦いの日本史』本郷和人を読んだ。武士が誕生し台頭していくあたりから徳川幕府樹立までの、その時代時代を代表する一対の対立軸から、相対する二人を一組として合計八組とりあげて歴史を解読していく本です。武家がどのように力を得ていって覇者になっていくかがわかります。ご承知のように、古い武家は新しい武家に取って代わられながら時代は進んでいきますが、その都度、力を増して、最後には(徳川氏の時代には)日本全国を支配するほどのものとなる。それがどういった流れだったのか。資料に乏しいところや資料を疑うべきところを歴史学者の著者の推察や推測で構築しながら、ひとつの仮説的に解いていく体裁でした。義務教育から高校まで、歴史といえばもう決定した過去を暗記する学問、というふうに捉えている方は多いかもしれません。かくいう僕はほとんどそ...『戦いの日本史』

  • 『永い言い訳』

    読書。『永い言い訳』西川美和を読んだ。映画監督で作家の西川美和さんの長編です。著者自らの手によって映画にもなっていますが、本書はノベライズなのか、この作品を原作として映画化したのかはちょっとわかりません。いや、単行本ででているくらいだから、たぶん原作なのでしょう。深夜バスの事故によって妻を失くした小説家と、その妻とと共に亡くなった妻の友人の残された夫と二人の小さな子ども。ふとしたことから、小説家と彼の友人の家族との交流が生まれます。小説家の衣笠幸夫を主人公としながらも、章ごとに視点や人称が入れ替わる体裁で書かれているので、群像劇のような印象も受けます。また、一人称で語れる章は、ぐっと人物にズームアップするように感じられるので、そうじゃないところとの関係に緩急が生じていて、作品がより柔軟なつくりになっていました。...『永い言い訳』

  • 『乃木撮 VOL.02』

    読書。『乃木撮VOL.02』乃木坂46を眺めた。乃木坂46がメンバー同士でオフショットを撮り合った写真集の第二弾。『VOL.01』撮影後から4期生の後期組加入前までの期間が対象。1期生から4期生まで、魅力的なメンバーしかいない乃木坂46。そのあかるい空気感、オフ時のメンバーの愛らしい表情と、ときに眺めていて吹きだしてしまう抜群のおもしろショットなどなど、629枚が撮影メンバーの短評付きで収録されています。僕は生田絵梨花さんが大好きなのですが、メンバーみなさんがそれぞれとっても素敵な方々だと感じていますし、言うまでもないかもしれないですがすごくかわいいですし、この厚い一冊で至福をぞんぶんに得ることができました。また居眠りのショットだ!という与田ちゃん、放っておけなけない感じの美月ちゃん(#626にて動画を撮り始め...『乃木撮VOL.02』

  • 『馬はなぜ走るのか』

    読書。『馬はなぜ走るのか』辻谷秋人を読んだ。JRA(日本中央競馬会)で発行している月刊誌『優駿』の編集に携わっていた著者による「やさしいサラブレッド学」。タイトルにあるように、馬はなぜ走るのか?という問いを持ったことのある方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。馬は古代より人を乗せるよう手なづけられ、すごいスピードで走ってくれます。戦に駆り出され、運搬や耕作の使役馬とされ、スポーツやレジャーとして乗馬の役割を与えられ、そしてサラブレッドというより速く強く走るための品種に改良され続けて競馬があります。性格面でも体質面でも人を乗せることに適い、まるでそうやって走ることに特化して誕生したような動物にさえ感じますが、著者の見解は、「馬は走ることが好きではない」なのでした。野生状態を考えてみると、肉食動物に狙われる...『馬はなぜ走るのか』

  • 『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン』

    読書。『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン』中島美鈴を読んだ。副題は「「認知行動療法」入門」です。セラピーに認知療法と行動療法という別々の療法があり、それらをケースバイケースで組み合わせたり使い分けたりするのが、認知行動療法だと言ってよいと思います。数年前に職場で雑談の途中にふと気付いたことなのですが、「社会や世間、つまり自分が住んでいる世界をどう捉えているかと、そういった世界を構成している人間という存在をどのように理解しているか。それが、その人の態度や姿勢、コミュニケーションのとり方、ひいては生き方の根本になっている。要するに、各個人にはそれぞれの世界観や人間観があり、それがどのようなものであるかで、その人がどのような人かが決まっているのだ」というのがありました。本書のはじめで、このことが取り上げられていて...『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン』

  • 『無関係な死・時の崖』

    読書。『無関係な死・時の崖』安部公房を読んだ。代表作『砂の女』を書いていた時期に並行して書かれたいくつかの短篇作品を収録したものです。『砂の女』を思わせる、黴臭いくらいの和のテイストを感じる作品もありますし、初期の作品から続くテイストであろう想像力がぶっとんでいるおもしろい作品もあります。『なわ』なんていう残酷なものもあり、読み手をひとつところに停滞させず、そればかりか揺さぶってくる短篇集になっていると思いました。とくに「人魚伝」という作品に夢中になれました。沈没船の探索中にであった緑色した人魚に恋する話ですが、一筋縄では終わらない。この作品もそうなのですけれども、既視感を覚えることなく、「いままさに知らない物語のなかにいる!」ということのわくわく感がとてもよいです。自分の知らないものや、自分にとって新しいもの...『無関係な死・時の崖』

  • 『天才たちの日課』

    読書。『天才たちの日課』メイソン・カリー金原瑞人/石田文子訳を読んだ。作家、音楽家、画家、学者、映画監督etc...161人の生活習慣を紹介するエッセイ集。各々1ページから4ページくらいの分量です。アジア人からは唯一、村上春樹さんが取り上げられていました。そうそうたる天才たちのルーティンが明らかになっていくなか「おい!いったいなにをやってるんだよ!」と言いたくなる人だらけです。一人の空間や時間をもてないだと大変な環境や境遇にいながら仕事をしている人は珍しくないし、自分の仕事をうまくやるために不器用な生活習慣を決めていたりする人がとても多い。作家のケースならば、執筆を最優先事項として、その他の生活のあれこれは執筆に従属するものごととして処理している感じがつよい。執筆に支配された毎日です、それも自分のみならず家族も...『天才たちの日課』

  • マウント考察→分解→破壊

    録画していたNHKの「マウンティング会話講座」がおもしろかった。「うわ!」とか「なにやってんの!」とか、見てるだけでも離脱したくなる、捨ておきたくなるドラマ仕立てのマウンティング例が秀逸といった感じでした。以下はそこから触発されてのマウンティング考察です。僕の場合だったら、知り合った人が本を読む人か知りたくなって探りたくなるんだけど、そうやって、本好きなんだなって知った人に自分の小説の意見が欲しくて「読んでもらいたいんですけど」と原稿を渡せばマウントととられるんでしょうね。というかか、本が好きなんだなぁって知った相手に「実は僕、小説書いてます」と言っただけでもマウントだととられるんですよ(めんどくさ)。マウンティングって、世の中が勝ちか負けかしかないとの前提からきますよね。これって強迫観念ぽいです。なんでもマウ...マウント考察→分解→破壊

  • 『マーケット感覚を身につけよう』

    読書。『マーケット感覚を身につけよう』ちきりんを読んだ。サブタイトルは『「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』です。帯には「論理思考と対になる力を教えます!」とあります。有名ブロガーである著者には、本書発刊の前に論理思考についての著書があったということでした。これだけの情報だと、現在の「グローバル化」し「情報化」が進み20世紀とは様変わりした世界で商売をばりばり行って、一頭地を抜く存在になるための教本のように思えるかもしれないです。ですが、読んでみると、そのための知識をつける本というものともちょっと違います。より根本の、「やわらかな頭を持つための、やわらかな頭とは何なのかそしてなぜ大切なのかの解説とやわらかな頭のための体操の仕方」を教えてくれる本といったほうが的の中心に近そうです。ここで登場する...『マーケット感覚を身につけよう』

  • 『月の上の観覧車』

    読書。『月の上の観覧車』荻原浩を読んだ。全8篇の短篇集。そのどれにも別れや死などの「喪失」があります。そしてそのすべてに中高年以上の人物が主人公だったり重要人物だったりして、彼らが過去を振り返りながら(あるいは、彼らの過去を振り返りながら)喪失と彼らの関係を自身や関係者が確かめたり受けとめたりしていきます。現実と過去との交錯の仕方が特徴的な短篇集でした。過去の社会状況。それも田舎町や地方都市、都会、それぞれによって違いがあります。さらに、人それぞれにその状況下での個人的な体験や経験がありますし、関わってきた大勢の人たちからの影響を受けたり、逆に彼らに善い影響や悪い影響を与えたりして生きている(そんな個人の集まりが社会をつくり、その社会がまた個人をつくります)。ひとりの人間を形作っているのは、そういった個別の経験...『月の上の観覧車』

  • 『人生論ノート』

    読書。『人生論ノート』三木清を読んだ。戦前から戦中期の哲学者・三木清による23章の哲学エッセー。「不確実なものが根源であり、確実なものは目的である。」(「懐疑について」より)。やっぱり、人の基本部分って「ゆらぎ」であるということを言っていると思いましたた。僕もずっとそう考えています。どこかひとつの位置に安住するものではない。できるだけ物事をしっかり見つめ、捉えていたいのならば、そうなのです。懐疑には節度が必要である、と三木清は言う。手順を踏まず、工程を飛ばした懐疑は節度がない、といえると思います。節度のない懐疑は、独断であり、宗教化に陥り、そして情念に基づいて働く、と著者は続ける。また「真の懐疑家は論理を追求する。しかるに独断家はまったく論証しないか、ただ形式的に論証するのみである。」とあります。こういう、ある...『人生論ノート』

  • 『アサーション入門』

    読書。『アサーション入門』平木典子を読んだ。副題は「自分も相手も大切にする自己表現法」です。そういったコミュニケーションの取り方を解説する入門書なのでした。本書では、「アサーション」「アサーティブ」という聞き慣れない言葉が随所にでてきます。著者による翻訳では「自他尊重の自己表現」となっていました。この、心理学ヒントに行われるコミュニケーションのやり方を実践すれば、日常のやり取りに変化と充実感が得られるでしょう、とあります。さらに、人のこころの奥深さを知り、自分らしい生き方の道を拓くもするのだ、と。まず、自己表現の三つのパターンを解説する章から始まります。三つとは、「非主張的自己表現」「攻撃的自己表現」「アサーティブな自己表現」。「非主張的自己表現」は、自分の意見や気持ちを言わない・言い損なう・言っても伝わりにく...『アサーション入門』

  • 『朝が来る』

    読書。『朝が来る』辻村深月を読んだ。特別養子縁組によって男の子を授かった40代の夫婦。その男の子が6歳のときのできごとにいたる、その夫婦(主に妻の視点)と生みの母親の物語。不妊治療も特別養子縁組も、初潮を迎える前の妊娠も僕は知らなかったです。それらのことを知りながらでも、ちゃんとリアリティを持って読むことができました。著者の幅の広い創作能力によって、登場人物それぞれの人生や人格に説得力がありました。高層マンションの高層階にすむ、お金に余裕がある層の夫婦の物語も、お金に困りながら、底辺といっていいところで懸命に生きる少女の物語も、ともにしっかり描けている。そして夫婦が少女の生きる世界を想像することも、少女が夫婦の生きる世界を想像することも、おそらくないだろう、と思える分断された生活圏が、この物語のなかでしっかり同...『朝が来る』

  • 『サピエンス全史 上・下』

    読書。『サピエンス全史上・下』ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之訳を読んだ。本書では、人類つまりホモ・サピエンスが経験してきた三つの躍進を、それぞれ「認知革命」「農業革命」「科学革命」と大別します。人類史の構造部分(といっても抽象的というよりも具体的に話は進んでいきます)をしっかり読み解いて、人間ひいては社会はなんぞやということを解き明かす大著でした。読みどころの多い本です。序盤こそ、さまざまな研究を寄せ集めただけなのではないか?と舐めてかかっていました。ですが、寄せ集めにしてはその量は膨大でしたしそのすべてを十分に咀嚼して自分のものとしたうえで執筆しているのがわかるくらい中身があり読みやすい文章なのでした。人類学や考古学や経済学やいろいろな学問分野を横断的に、そしてコンセプトに合わせてくっつけたものを掘り進んでい...『サピエンス全史上・下』

  • 執筆の近況を。

    エンタメ短篇の新人賞が無くなったことを受けて、エンタメ長篇を書くか純文学短篇~中篇を書くかどちらにしようか考えていました。新人賞を目指すにはそのどちらかになりますから。それで、エンタメか純文学かの方向性のどちらを選ぶかのほうについて言えば、そこについては自分の中でそれほどネックになるものはないことに気付きました。でもまあ、言ったら、エンタメのほうが裾野が広いですし、多くの人に楽しんでもらったりちょっとしたシンプルな気付きを読む人たちにもたらすことができたりできるのだと思いますので、好きなのはエンタメのほうかもしれない。肩の凝らない読書、ハッピーな読書、カタルシスを得られる落涙の読書などの時間をつくれる仕事には大きな魅力があります。執筆の能力的にどうかっていうこと以前に、ということですが。ですが、書きあげる原稿の...執筆の近況を。

  • 自律と他律と資本論。

    先日、録画していた1月のEテレ100分de名著・資本論のシリーズを見ていました。資本論は言わずと知れたカール・マルクスの名著で、経済学で扱われますし、社会主義や共産主義へひとびとを動かしていった力があった本です。だからかえって「社会主義か~」「共産主義か~」と斜に構えてしまってこの録画を再生したのですが、資本論への距離間や読み解いていくための立ち位置が上手で、おもしろく視聴しました。そんななか、ハッとする考え方が出てきました。資本主義は、仕事を「企画や計画をたてる側」と「実際に身体を動かして製作したりなど遂行する仕事の側」とのふたつに分けたとあった。昔だったら、たとえば家を建てるにしても、設計から大工作業まで同じ人たちが全般を通して働いたことが多かったはずです。まあ、家を建てる場合はちょっとおおがかりなので、と...自律と他律と資本論。

  • 『こちらあみ子』

    読書。『こちらあみ子』今村夏子を読んだ。太宰治賞と三島由紀夫賞をW受賞した、今村夏子さんのデビュー作。解説で町田康さんが書かれているとおり、いろいろな読み方のできる作品だと思いました。さらにいえば、その解釈の仕方によって、それぞれの人の持ち味があからさまになるのではないか。そういう、優れた試薬のような性質を隠しもっていそうな作品で、こうやって感想を書いていくと僕という人間が底の方からバレてしまうだろうなあと思われるのですが、まあ気にせず書いていきます。僕にはそこまで降りていけていなかったようなところまで作者は降りていっていて、さらにそんな地点にいる人物と同じ目線でモノを見ている。混沌や混濁を飲みこみながら、ある種の特別な明晰さで表現しているし、巧みなギミックも用いてもいる(はじめて書いた小説がこれだなんてすごい...『こちらあみ子』

  • 『第1感』

    読書。『第1感』マルコム・グラッドウェル沢田博・阿部尚美訳を読んだ。副題は、<「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい>です。はじめての人と出合ったり、本物なのか贋作なのかわからない美術品とでくわしたり、そういったとき人は、無意識のうちに瞬時に正しい判断を下せるものなのだ、というのが、本書の大きなテーマです。逆に、情報過多になるくらいの情報をふまえて判断していくほうがよっぽど間違えるものだ、ということも明らかにしていました。様々な事例や研究から論立てしていく構成になっています。誰しも第一印象が正しかったケースを経験していると思います。同様に、第一印象で間違ってしまった経験もあるでしょう。それは偶然の産物ではない、と著者は論じていくわけです。最初の2秒での判断を、本書では「輪切り」と呼びます。その瞬間の輪切りから情...『第1感』

  • 関係性の自律。

    ユマニチュードの本にでてきた言葉である「関係性の自律」についてずっと考えていてですね、つまりどういうことかわからなかったんです。それで今回、まずこの場合の「関係性」ってなんだろうというところに注目しました。たぶんこれは、「少しずつお互いがお互いに合わせること」、もうちょっとニュアンスを変えれば「少しずつお互いがお互いに合わせあうこと」なんです。すると「関係性の自律」の意味もすっと解けてくる。お互いがお互いを尊重し、合わせる(合わせあう)範囲内で自律していくことだろう、と。「関係性の自律」と言う言葉に込められたもの、つまりこの言葉の大切な部分は、自分で何も考えずに他者から言われた通りのことをやらないこと、無批判・無批評といった体で行動しないこと、なのではないかな。自律する部分は保っていこう、というような。これには...関係性の自律。

  • 『超入門! 現代文学理論講座』

    読書。『超入門!現代文学理論講座』亀井秀雄監修蓼沼正美著を読んだ。高校生向けのシリーズ「ちくまプリマー新書」からの一冊です。さまざまな現代文学理論のなかでも、とりわけ主要な四つの文学理論を解説する内容です。その四つとは、「ロシアフォルマリズム」「言語行為論」「読書行為論」「昔話形態学」。国語教育でよくあるのが、作品の「読み」そのものに必ず作者自身の性格や環境、書かれた時代背景などを加えるパターンです。そうやって読解することが深い「読み」であるとされる。また、受験の現代文で問われるのは、言葉の使い方のロジックの部分や正確で客観的なテクニカルな文章の読み方だったりします。前者も後者も、授業を聞いたり勉強したりしていると、まさにこれこそ学業ってやつだなあと、あまり良い意味合いではなく思えてしまいます。いくらか、不必要...『超入門!現代文学理論講座』

  • カクヨム投稿版『忘れられた祈り』

    小説投稿サイト・カクヨムに2013年作の短篇『忘れられた祈り(2021年直し入り)』をアップロードしました。ここです。https://kakuyomu.jp/works/16816452218600288859最近書くものはあとで読みかえすと難解すぎたりして、要はへたくそなんですが、この頃の作品はほどよい緊張感と自由さと執筆環境面の比較的良好さが好結果をもたらしている作品だと自分では思います。さながら青い鳥を探しに行ったかのように、幸せを求めて消えたミチル。彼女を愛するシュウの物語です。消えたミチルを探しだすべく、北の森へ向かうことになるシュウ。そしてペンダントの意味は?といった作品です。ご覧あれ。カクヨム投稿版『忘れられた祈り』

  • 『小さな黒い箱――ディック短篇傑作選』

    読書。『小さな黒い箱――ディック短篇傑作選』フィリップ・K・ディック大森望・編を読んだ。『ブレードランナー』として映画化された『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が有名なフィリップ・K・ディックの短篇傑作選の第5集。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の元(創作のきっかけ)となった作品が表題の「小さな黒い箱」です。全11作品。今回はじめて読んだフィリップ・K・ディックなのですが、彼の作品には映画『ブレードランナー』しか触れたことがなく、ゆえにディックはもっとハードボイルドなSF作家かとイメージしていました。どっこい、その作風にはユーモアとウイットがふんだんに感じられました。SF作家をプレコグ(予知能力者)とみなす短編があって、舞台となる未来世界から時間旅行をした未来人が1950年代のSF作家の集まりにまじる...『小さな黒い箱――ディック短篇傑作選』

  • 広義のエンタメ短編新人賞が消滅

    エンタメ短編の唯一の新人賞だった『オール讀物新人賞』が、次回より『オール讀物歴史時代小説新人賞』へと生まれ変わってしまいました。僕にとってこれは大きな出来事です。なぜかといえば、エンタメ短編を突破口にすることを目標に、小説造形力を磨いていくその道程にありましたので。よりおもしろいエンタメ短編をつくっていくために歩いてきた道が右か左かの丁字路にさしかかってしまったようなものです。まあでも、途方に暮れるようなことでもありません。それならそれで、丁字路の右か左かに振り切ってみるのも、逆に楽しくなるかもしれないし、あらたな自分が開拓できるかもしれないですから。そうなってしまったことは仕方がない、そこにこだわっているのは無駄に過ぎます。なので、まずは、A:エンタメの長編に挑むB:純文学の短編(から短めの中編)に挑むのどち...広義のエンタメ短編新人賞が消滅

  • 『もっと知りたい 葛飾北斎 改訂版』

    読書。『もっと知りたい葛飾北斎改訂版』永田生慈監修を読んだ。江戸後期の絵師・葛飾北斎の生涯と作品をたくさんの画像を使いながら紹介する本です。葛飾北斎は幼少の頃から絵を描くのが好きで、19歳の頃には浮世絵師の勝川春章に弟子入りします。以後、プロの絵師として、90歳で亡くなるまで現役をまっとうし、たくさんの絵をこの世に生みだしてきました。作風も様々で、ひとつのところに納まっていません。また、筆名は「葛飾北斎」の名が一般的ですが、実際は何度も改名していて、最終の筆名なぞは「画狂老人卍」という、なんともとがった名前でした。借金がかさんだりし、始終お金に困った生涯だったようですが、そんななか、絵の腕があがっていくことが一番の喜びだったそうです。「北斎漫画」や「富嶽三十六景」が有名ですが、面白みも芸術性も備えた、なんとも心...『もっと知りたい葛飾北斎改訂版』

  • 『世界はデザインでできている』

    読書。『世界はデザインでできている』秋山具義を読んだ。「デザインする」という言葉(概念)で考えることを、これまでしてきた経験がほとんど僕にはありません。「アイデアを考える」「アイデアを実行する」だとか違う言葉で似たようなことをしてはきました。でもそれって局所的で断片的な頭の使い方だったなあと本書から思いました。「デザインする」と考えた方がより包括的で、広い視野でモノを考えることができる。そして「デザインする」には主観も客観も含まれている。かといって「デザインする」は抽象的な言葉かといえばそうだとは言いきれません。具体部分に論点が移ったときにも、どうやら「デザインする」は同じ具体性で機能してしまうからです。そのような、便利な上に実用的な「デザインする」という言葉とその行為を、実際に使えるようになるために本書は役立...『世界はデザインでできている』

  • 「モラハラ」と「マイルドヤンキー」の関係。

    モラルハラスメントって、家庭、学校、会社など社会のいたるところに根深く巣食っていて習慣みたいになっているものだと思うんですよ。まあ、大なり小なりはあるでしょう。で、モラハラへの防御や回避(それらは加害者に回るという戦術も含めてですが)としてマイルドヤンキーが登場したのでは。マイルドヤンキーと言われるあり方は、ヤンキーのようにケンカばかりしたり、逸脱した髪形にしたり、授業をさぼったり、反社会的な行動をよくとったり、というようなハードなものではないですよね。ヤンキーのパッケージを「マイルド」に取り込んだあり方です。言葉遣いや態度にヤンキーのあり方を取りいれて生きている人たちが、いわばマイルドヤンキー。そんなマイルドヤンキーの精神性をまとうことでモラハラの直撃から免れることができやすくなる。正面からのコミュニケーショ...「モラハラ」と「マイルドヤンキー」の関係。

  • 『10歳でもわかる問題解決の授業』

    読書。『10歳でもわかる問題解決の授業』苅野進を読んだ。「問題解決」の手法についての本。読みものとしての楽しさがありつつ、でもどのカテゴリに分類されるかと考えてみるとどうも教科書の部類に入るなあというタイプですね。『10歳でもわかる』と銘打たれているとおり、シンプルかつ明快で言葉遣いも平易。著者が主催している塾が子どもたちに教えているのがこの「問題解決」についてなので、納得のわかりやすいさです。トライアンドエラーが問題解決実行の肝ですけども、本書もその繰り返しで相当きたえられたゆえにこの形にまでぜい肉が落ちた感があります。ただ、取り扱っている中身は子ども用のイージーなものではありません。パッケージこそ簡素でやわらかいですが、内容は大人だってウンウン頭を絞ってもなかなかスマートにいかないような骨太さ。仕事にしろ私...『10歳でもわかる問題解決の授業』

  • 『かわいい結婚』

    読書。『かわいい結婚』山内マリコを読んだ。表題作をふくむ全3篇収録の短篇集。どの作品もとってもおもしろいです。どちらかといえば、女性向けなのかもしれませんが、オトコの僕が読んでもすごく楽しめました(まあ、僕はオトコとしてのマジョリティであろう「性欲原理で女性を見てばかりのタイプ」や「男尊女卑タイプ」では、どちらかといえばないからかもしれません)。頭にも胸にも特に響いたのが『悪夢じゃなかった?』という作品。カフカの『変身』のパロディから始まります。ある朝目覚めると、主人公の男が若くグラマラスな女に変身している。この主人公は、たとえば「女性専用車両に乗るのは本当の女じゃない、ブスとババアだけで、彼女らは女ではない」というような考え方をしている。そればかりか平然と、恋人にもそう言ってしまう。性欲でしか女性を見れていな...『かわいい結婚』

  • 『書きたい人のためのミステリ入門』

    読書。『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸を読んだ。新人賞の下読みを担当してきた現編集長職の著者が、特にミステリ作家を志す人に向けて基本を解説した本。謎をつくり伏線を張り回収し解決する、というような「ミステリを書く」という行為を順を追って解説するばかりではありません。キャラクター(人間)の書き方、世界観についてなど、エンタテイメントや純文学など小説一般に通ずる「基本」についてにもプロの編集者の視点で話をしてくれています。素人が気づいていないような重要なポイントをあまさず目に触れさせてくれる内容で、「ミステリを書く行為って、そういうところにまで気を使い心を配るものなんだ」といくつもの驚きがもたらされること必至です。プロの書き手を志す人ばかりでなく、読み専門の人にとっても、ミステリをより深く理解するきっかけに...『書きたい人のためのミステリ入門』

  • 『大学で大人気の先生が語る<恋愛>と<結婚>の人間学』

    読書。『大学で大人気の先生が語る<恋愛>と<結婚>の人間学』佐藤剛史を読んだ。九州大学で「婚学」という講義を開講した著者による、結婚についての現実をあらゆる角度で見ていく本。小学校高学年くらいからでも読めるはず。少子超高齢社会となった現代において、結婚率向上、出産率向上は国策でもあります。年金問題や医療保険問題の緩和にしても、経済発展にしても、少子化が和らげば状況が変わってくるからです。だからといって、国のために結婚しようと思う人はなかなかいないはずです。著者も、国のために結婚なんてのはおかしいと書いています。そうはいいながら、でも結婚はほんとうに素晴らしいのだ、と結婚することを強く奨めています。性別と年齢別の未婚率のデータや出産適齢期の生理学的なデータ、結婚への障壁となる経済的理由・女性の社会進出機会の向上・...『大学で大人気の先生が語る<恋愛>と<結婚>の人間学』

  • 『望郷』

    読書。『望郷』湊かなえを読んだ。瀬戸内海の架空の島、白綱島を舞台にした6つの作品を収録した短編集です。なかでも、「海の星」は日本推理作家協会賞受賞作。しかし推理小説といえども、これまでほとんどミステリーを読んでこなかった僕の、ミステリーに対するイメージ(いささかコテコテのイメージなのでしょうが)に合う作品はひとつもありませんでした。これがミステリーに分類されるのか、と驚くくらいの「普通の小説の顔」をした6編です。強いて言えば、最後に謎が明かされて、見えてきたものがひっくり返ってしまうところがミステリーです。伏線など、知的な操作はもちろんなされているわけですけども、感情に訴えてくるテーマは「よくぞ現実から抽出してくれました」と義憤が心に湧きたち胸が熱くなるようなものばかり。それだけではなく、涙がこみ上げてくるもの...『望郷』

  • 『それどんな商品だよ!』

    読書。『それどんな商品だよ!』友利昴を読んだ。企業などがブランド名や商品名を独占するために取得申請するのが「商標」です。知的財産の一種にあたる。商標が登録されると、他の企業や個人などがその名称を営利目的で使用できなくなります。無理に使用すると訴えられて賠償金を支払うハメになることも。本書はそんな「商標」のなかから珍名なものを集め、「それってどんな商品なんだ!」と想像力逞しくあれこれ書きたてている本です。名称をみるたびに「いやいや、またなんでこんな……」という可笑しい気持ちになり、続く短い小見出しが絶妙に笑いへと繋げる文言で「ぶっ!」吹いてしまうことが何度もありました。たびたび添えられる漫画家・和田ラヂヲ先生のシュールな挿絵の効果もあって、娯楽のB面街道のど真ん中を闊歩する感じで楽しく読めました。「コードレスコー...『それどんな商品だよ!』

  • 『エンタテイメントの作り方』

    読書。『エンタテイメントの作り方』貴志祐介を読んだ。ホラーやミステリーなどのジャンルで活躍するエンタテイメント作家・貴志祐介さん。彼によるエンタテイメント小説でプロを目指す人たちに向けた「書き方入門」です。アイデア、プロット、キャラクター、文章作法、推敲、技巧、とひととおり全て網羅されています。小説作法を広く眺めながらも、要所を衝いて、端的に短くアドバイスをくれる体裁です。そこは、何作か小説を書いたことがある方ならばピンとくる中身だと感じられるでしょう。さらりと軽い解説文の中に、抑えるべきポイントを教える箇所が一文だけ輝いている感じなのが多いのですけども、それで十分察することができるような上手い解説ですし、逆に無駄なく理解も進むと思います。僕はまさにそうで、「そうか、これはこういうことだよな」と瞬時に考えが改ま...『エンタテイメントの作り方』

  • 謹賀新年2021

    あけましておめでとうございます。本年も当ブログを贔屓にして頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。今年も読書感想・書評が中心になりますが、訪問していただいた皆様一人ひとりとなにかしら化学反応が起きるような内容になっていたらいいのですが。たとえば、僕の書いた記事がきっかけでその本を手に取って頂けたなら、これはもうほんとうに感激モノで、達成感も得られます。でも、そうじゃなくても、インスパイアが起こったり発見につながったり気が楽になったりしていただけたなら、書き手としてはまた別の達成感が得られます。まあそうはいっても実際はなかなか、僕にはどんな反応が生じたか知る由もなかったりするんですけども(なので、自己満足と利他の二面待ちみたいな、重なった気持ちで構えています)。コロナはまだまだ収束が見えてきませんが、...謹賀新年2021

ブログリーダー」を活用して、mask555さんをフォローしませんか?

ハンドル名
mask555さん
ブログタイトル
Fish On The Boat
フォロー
Fish On The Boat

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用