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油屋種吉の独り言
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種吉が今と昔のお話をいろいろに語ります。
更新頻度(1年)

111回 / 365日(平均2.1回/週)

ブログ村参加:2013/08/16

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油屋種吉さん
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油屋種吉の独り言

油屋種吉さんの新着記事

1件〜30件

  • MAY  その78

    ここは火星、地球防衛軍の秘密基地。地球防衛軍は、その戦いの途中で、ポリドンをふくむ惑星エックスの勇士たちと合流することに成功し、共同で作戦を実施しているのだった。通常兵器を積載した宇宙船が、基地の大半をおおい尽くしている。だが、しかし……。今まさに、最新鋭の武器が搭載された宇宙船が一台一台、大型のエレベーターに乗せられ、地下深くの工場から上がってくるところである。ポリドンと将軍たちが、一番さきに上がってきた宇宙船のわきに寄り集まり、何やら話し込みはじめた。時折、ふいに野太い声があがる。いざ出陣となってまで、見解の相違が尾を引いているようだ。敵の戦意を失くしてしまい、冷静さをとりもどさせる。今までの武器とはまったく違った性質を持つ宇宙船だけに、保守的な将軍のなかには、「とんでもない。敵意に満ちた敵のこころなど、和...MAYその78

  • そうは、言っても。  (9)

    滋賀県に入った。(もうすぐ琵琶湖が見えるはず、その湖畔には彦根のお城も……)そう思うだけで、種吉のこころは、真綿のつまったふとんの上で寝ころんでいる気分になった。異郷の地に長く居続けてきたせいだろう。種吉はいつだって、ふるさとに近づけば近づくほど胸がわくわくした。「おとう、このパーキングに寄って行くからね。もうすぐお昼だし」一瞬の沈黙のあとで、「ああ、いいね」種吉の返事がはずんだ。「ねえ、あんた、なんだかうれしそうじゃないの。久しぶりに見たよ。そんな顔」種吉の真うしろに陣取っていた彼の妻は、ぐっと上体を前に倒すようにしていった。「ひぇ、ああ、びっくりした。でっかいトラの首が、立派なひげをたくわえた大きな口が……」「なんだって、もう一回いってごらん。あんたはいつだって、わたしのこと、そんなふうにわるく言うんだね。...そうは、言っても。(9)

  • MAY  その77

    「じゃあ、メイ。またあとでね。わたしはケイのためにやることがまだ残ってるの。さあ、ケイ、行きましょう。決してわるいようにはしないわ。わたしたちを信頼して」そういって、アステミルはケイを連れ、洞窟の奥に消えた。メイとニッキは一言も発せない。ただ黙って、うなずくしかなかった。「お母さん、ケイをお願いします」「ええ」ケイの肩を抱くようにして、アステミルが突き出た岩を曲がってしまうと、あたりは急速に暗くなった。「ああ、真っ暗になっちゃった。どうするニッキ?困ったわ」メイが窮状を訴えるのと、洞窟が再び明るさを取り戻すのがほぼ同時だった。「まあ、あなたって。すごいわ。そんなライト持ってるなんて。まるで真昼の太陽のようね。うちにあるのは、ほんの少ししか照らせないのに」「そりゃそうさ。世界で一番、よくできてるんだから当り前さ」...MAYその77

  • そうは、言っても。  (8)

    数百キロも離れている実家と婿入り先との間の往来。当然ながら、新幹線をはじめとする交通機関を利用するのが一番楽だった。「万一途中で事故にでもあったら、しょうがないやろ。孫がおる。お金はなんぼかかってもええ。絶対、新幹線で帰ってくるんやで。車で来るっていうんやったら来んでもええ」三年前に亡くなったおふくろの、若い頃からの言い草だった。私はよく働いた。「よう働くむこさんやなあ」そうおっしゃるひとがいるほどだった。さいわいにも私を見込んで仕事を与えてくださる、徳のある方にも恵まれた。働いただけ、それに見合うだけの収入があったから、種吉は子どもにひかり号に乗せてやることもできた。子どもは大喜びだった。ところが、今は晩年。七十歳に達し、身体があちこち痛みはじめた。それなのに、自ら運転して帰郷するはめになっている。自らの運命...そうは、言っても。(8)

  • MAY  その76

    東の空に太陽がのぼる。陽射しが次第に強まると、あたりが明るく、冷え込んだ空気がぬくもる。洞窟の奥から来るらしい、見知らぬものはまるでもうひとつの太陽だった。だが、逆に、ケイの体調はわるくなった。「あっ、あたし、どうしよう。なんだか寒い。急にぞくぞくしだしたわ」ケイの唇は青ざめ、歯ががちがち鳴る。毛糸のセーターの袖からとびだしたほっそりした両手で、自分の上体をいつくしむようにそうっと抱いた。「なによ、ケイ。今ごろになって。今まで外にいたんだから、当たり前でしょ、寒く感じるのって。わたしなんか、あったまってきたわよ、信じらんないくらい」「そうね、そうよね。メイの言うとおりだわ。けど、ぞくぞくするのよ。あたしってばかみたいね」「ほら、ケイ。もっとわたしのそばに寄って、まだまだわたしの身体、さっきの燃え残りがあってね」...MAYその76

  • MAY  その75

    ケイについて、一度抱いた疑念はそうやすやすと払しょくできない。ニッキは悩んだ。メイがケイを大切にしようと考えていることは明らかな以上、ニッキができることといえば、ふたりの仲をとりもちながら、ケイに監視の目を向ける。そんなむずかしい態度をとりつづけるしかなかった。これほどまでにメイに近づくケイの真意は一体どこにあるのか。メイさえ、どこかに連れ去れば問題ないはずである。深読みしすぎるきらいのあるニッキでさえ、ケイの意図を知ることは困難だった。地球防衛軍の側からすれば、ケイは敵の中枢にその居場所を確保しているのだ。このことは、確かな筋からのきちんとした情報だった。彼女の目的は明白で、われわれのつながりにくさびを打ち込むこと、そして力強い援軍となりうる鉱石を、なんとしてでも粉砕する。それがケイの狙いであることには何の異...MAYその75

  • そうは、言っても。  (7)

    取り越し苦労は害があっても、一利なし。ひとはマイナスのイメージを抱けば抱くほど、精神的に負担がかかる。まるで一種の不幸を呼び込んでしまうようである。「いいんだね。具合がわるいことが起きちゃったって」潜在能力の入っている容器のふたの番人をしているのは幼子らしいという。素直に、そのひとの望む現象が飽きるように物事をとりはからう。放っておくと、潜在能力は具合の悪い方向に働いてしまう。どうやら、それはマイナス方向に進むのが好きらしい。具合の良い方向に設定するのは、ちょっとした工夫がいる。おもてに現れた能力を、うまく駆使することである。それは言葉だろう。ひとは言葉による物語を生きていると言っても差し支えないくらいだからである。そうすると、要は、言葉を、正しく使えさえすればいいことになる。いやだと思っても、これからやろうと...そうは、言っても。(7)

  • MAY  その74

    洞窟の外からまい戻って来ても、メイのからだはまだじゅうぶんに温かく、まるで太陽のように明るく四方を照らし出した。洞窟内部のあちこちが、夜空の星のようにきらきらと輝く。「とうとうやったわ、わたし。ねえ、ニッキ。こんな力があったなんて、もう仰天しちゃうよね。誰だってさ」はあはあ息を切らしながらも、メイは片方の手の指にからみついている土を、もう一方の手で、すばやく落とした。彼女の爪の内側は、どれもこれも、泥が詰まっている。ああ、と簡単に答えてから、ニッキは少し間を置き、「そりゃあもうなんていうか、メイの突飛な行動には、びっくりしたっていうしかないや。ほんと、スーパーガールだ。メイは、初め、何をしでかすか、まったくわからなかったぜ。ガラガラドンドンと、穴を大きくしていくんだから」ニッキは、まるでお芝居を演じているふうな...MAYその74

  • そうは、言っても。  (6)  

    それから数時間、車は故障も事故もなく、秋色を見せはじめた山あいを淡々と走りつづけた。運転する種吉といえば、鼻歌まじり。時には、片手でハンドルをにぎっていることもあり、同乗する家族をひやひやさせた。それまで、久しぶりの帰郷だから、はめを少しは外したって、と大目に見ていた彼の妻はこらえきれず、「やめてよね、もういい加減な運転はっ。事故ってケガするのはあんたひとりじゃないの。どうすんのよ、一体?あんまり気楽に運転されると、かえって不安になってしまうじゃないのよ。いい加減にしてっ、片手運転はっ」彼女は眉間にしわを寄せ、声高に言った。「はい、わかりましたっ」と言うなり、種吉はびくりと体をふるわせ、すぐさま両手運転に切りかえた。「うれしい時はうれしいように、かなしい時はかなしいようにね。あんたって子どもの時からそんなふうだ...そうは、言っても。(6)

  • MAY  その73

    「ニッキイ、メイちゃあん。どこにいるのよお。あんたたちこんな寒空にわたしを放っておく気なの。ひどいったらありゃしないわ。とってもいいこと、教えてあげようと思ってたのにい......」両手で耳をおさえたくなるほどのケイの叫びが、ふたりが汚れるのを覚悟で通りぬけてきた穴の向こうから聞こえてくる。洞窟の内部はとても寒かった。底冷えがするような空気がメイの足もとからはいあがってきて、彼女を震え上がらせはじめた。ケイの様子が気になって、メイがのぞいてみると、荒涼とした森の地肌に積もった雪がちらりと見えた。「メイ、ちょっとそこをどいてくれる」ふりかえると、重そうな石を両手でもったニッキがメイのすぐ後ろにたたずんでいる。「それって何なの。あなた、いったい何をする気なの」メイが尋ねている間にも、ニッキは黙ったまま、足を踏みしめ...MAYその73

  • MAY  その72

    突然、空が真っ暗になった。ひゅんひゅんと弓が空を切るような音が空から降ってきて、森の中で響きはじめた。たまらず、ニッキは耳を抑えた。敵の円盤が何らかの攻撃を始めたらしい。だが、ニッキは冷静だ。そばにやっかいなケイがいる。決して、腰の拳銃から手を外したりすることはない。「ねえ、真っ暗じゃない。どうしたんでしょうね、これって。それにこの音、鼓膜が破れそうだわ。ニッキもメイも、わたしといっしょに安全な場所に移動しましょうよ」ケイはニッキにまとわりつくのをやめ、ふたりに向かってそう言った。「そうだな」ニッキはぽつりと言った。ケイの目的を見抜いていたニッキは、メイをケイから引き離そうとした。バリバリ、バリバリッ。ふいにすさまじい音がした。遠くからだと、それは光の柱が地面から突き立っているとしか見えない。青く、紅く、そして...MAYその72

  • MAY  その71

    ケイはフードをはずし、メイに近づいた。「まあ、やっぱりあなただったのね。こんなところで会うなんて、いったいどうしたことでしょう。あなたのおばあさま、ずいぶんご心配なさっていたわよ」「わかってるわ」「もう家には寄ったんでしょ」「ああ、まあ。用があって」「ほんとう?わたしにはうそついたらいやだわ」「ちょっと近くを通りかかったのよ。そしたらあなたたちったら、雪合戦なんてやってるじゃないの。驚いたわ。わたし、ふいに子どもの頃を思い出しちゃってね」ケイはなかば涙声になった。「もう今までどうしてたの、なんていわないわ。今が今良ければそれでいいわ。いっしょにやりましょう」「うん。ありがとう、メイ」久しぶりに会って、メイはケイと子供のようにたわむれ始めた。抱き合ったり、雪の上をころがったり。しかし、ニッキの胸中は穏やかではない...MAYその71

  • そうは、言っても。  (5)

    北関東から上越道へ。この道をいくどか走ったことのある運転手のМはおしゃべりしながら運転していく。だが、高速運転はとても疲れる。一般道路でも二時間が限度。高速道ならもっと短いのがいい。せいぜい一時間がいいところだと、種吉は思う。まるで計算問題をやるように、交代時期をさぐった。何事についても、浦島太郎ぎみの種吉でもある。若い人話に、容易についていけず、Мの口から飛び出す聞きなれない言葉に戸惑った。しかし、それを表に出さない。さも知っているかの如く、うんうんと首をふった。「へえ、ジャンクションっていうんだ。そうだよな。聞いたことがあるような」道が交叉して、上がり下がりしているところに、車がさしかかったところで、種吉はふいのめまいにおそわれ、思わず、目を閉じてしまう。「うん?おやじ、急にだまっちゃって。いったいどうした...そうは、言っても。(5)

  • MAY  その70

    それから、数日後。メイはニッキをともない、洞窟をたずねた。本格的に、キラキラ石の標本を採るためである。お天気は、サイアク。早朝から降り出したみぞれが、いつの間にか雪に変わっていた。「こんな天気だけど、メイちゃん、大丈夫かい」ニッキの声が少しうわずる。唇が真っ青だ。「ええ、わたしはだいじょうぶよ。ニッキ、あなたこそ寒くてたまんないんって感じ。声が変だし、くちびるがぶるぶるって」「ちがうよ。震えてなんかいないよ。これはね、これは、なんていうか。あっそうだよ。武者ぶるいってやつ」「へえ、ああ、そうですか。ニッキって正直じゃないのね。寒いならさむい。怖いならこわいって、はっきり言えばいいじゃないの」降雪のために、ふたりの会話は森の中で響きはしない。「それにしても、ニッキったら、着ぶくれしてさ。まるで雪だるまさんね」「ふ...MAYその70

  • MAY  その69

    あたたかいしずくがひとつ、ふいにぽたりとメイのひたいに落ちてきた。メイはあっと声をあげ、「やっぱり……、そうですか。ほんとにあたし、どんなにか、あなたに会いたかったことでしょう」幼い子がいやいやをするようにして、どうにか声をしぼりだす。「メイちゃん、ごめん、ごめんね」わきにいる女の人の声がふるえだした。彼女の眼から涙がぽたぽたと落ちてきて、メイの顔はたちまちびしょ濡れになった。ものごころついて以来、メイは周囲のこころない人々から、奇異の眼で見られた。特に子どもは残酷で、彼らからおやなしっ子とののしられ、つらい思いをかさねた。人の不幸は蜜の味とばかりに、世間にわるいうわさをたてられ、モンクおじさんやメリカおばさんを困らせた。メイはやっとの思いで、かたくなに閉じているばかりだった両目をあけた。だがどうしたことか、視...MAYその69

  • MAY  その68

    宇宙船の内部に立ち入るのは、メイにとってもちろん初めての経験である。できることなら体調のいい時に入りたかった、とメイは唇をかみしめた。(そばに男の人がいるんだ、それも煙草好きみたい。わたし、煙草を吸う人なんて大っきらいなのに。ニッキはどこにいるの。早くわたしのそばに来て。怖くてしかたないの)自分が収容されている部屋の今の様子が知りたくてたまらない。すぐさま目を開ければすむことだが、不安ばかりが高まってくる。さっきのたばこ男は、部屋から出て行ったらしく、ゴンゴンいうかたい靴音が次第に遠ざかっていき、シュウシュウッと扉が開いたり閉まったりしたあと、部屋の中はまた、静けさをとりもどした。どれほどの時が流れ去ったろう。あまりの静寂も、人を不安に追い込んでしまうもの。たまらず、メイは、足首まであるパンツの腰のベルトをすら...MAYその68

  • そうは言っても。  (4)

    あれやこれやと大小の荷物を車内に積み込んでから、うちの戸締りを確認。ようやくの出発となった。「忘れ物はないかな」種吉のことばに、しばらく、ほかの四人が沈思黙考。かみさんは何やらぼそぼそとつぶやいてから、最後に、「あんた、ちゃんと目がさめてるんだろね。居眠り運転はいやだからね。それからプータローのえさは、となりの奥さんに頼んだし」と声をあげた。「ああ、そうだった。あいつのこと、すっかり忘れていた」「あんたはいつもそんなだから。猫をかわいがるわりに、肝心なところが抜けてるんだからね。勝手なもんだ」「ああそうだね。わるいわるい」できるだけ気持ちよく出発したい。出がけにごたごたは禁物だ。「お父さん、おれが最初に運転するから」先陣を切って走ってくれようとする三男のことばに、助手席にすわった種吉のめがしらが熱くなる。栃木イ...そうは言っても。(4)

  • MAY  その67

    あまりに緊張したせいか、メイは前に進めない。(フリーズって、きっと、こんな感覚なんだわ)ニッキに自分の体調のわるさを知らせようにも、メイの口から出てくるのは、まるで発語を始めた赤子のよう。うう、ううっと言ったきり、メイはその場に倒れこみそうになった。メイの様子がおかしいことに気づいたニッキがあわててそばに寄り、かろうじて、その太い両腕で彼女のからだを支えた。「ごめんね。きみがこんなことになるのも、ぼくの配慮が足りなかったんだ。こんな場合緊張しないでという方がむりというもの。夜だし、足もともわるいし。どうにかなんないほうがおかしい。でもね、メイさん。いいですね。気をしっかりもって。宇宙船のなかでしばらく休みますから」「ええ、ええっ?あっ、はい」ニッキにからだをあずけた状態で、メイは宇宙船の内部に入った。休む、とい...MAYその67

  • そうは言っても。  (3) 

    たとえ数日といえども、種吉くらいの歳になるといつもと異なる日々を生きるのは、どうにもしんどいらしい。この三連休の初日。種吉は早朝から、かなり浮足立った気分でいた。家族ともども、西へ西へと、車で片道十数時間かかる彼の実家まで行く必要に迫られたからである。種吉は、ゆうべは遅くまで旅の準備に時間をさいたせいで寝不足きわまりない。頭がぼんやりしている。家族は全員で五名。しかし主だった運転手は、たったふたり。種吉自身と彼の三男である。ほかに長男、次男そして種吉のかみさんがいるが、彼らは、高速道を運転した経験がほとんどないときている。ペーパードライバーだ。だから、いざというとき、彼らに、それじゃ頼むとは言えない。運転はきびしい仕事である。乗員全員の生命がかかっているといってもいいくらいだ。ひとつハンドルをきりそこねたらと思...そうは言っても。(3)

  • MAY  その66

    敵に異変を知られてはまずい、という配慮からだろう。地球防衛軍による自然への関与が、いつの間にか完全に停止されている。森は、再び、敵に荒らされたままの、荒涼とした景色にもどった。メイにとっては、天国と地獄をいちどきに味わったようなものである。洞窟の付近にいるに違いない父、ものごころついて以来、ずっとずっと顔を合わせたくてしょうがなかった父。大切な彼と、こんな殺風景な場所で合わなくてはならないのかと思うと、メイのからだの奥からじわりと暑いものがこみあげてくる。(自分から、天からの授かりものとしか思えないような能力が、離れていってしまったのはいつからだろう。自分ほどでないにしても、この星の住人の中にも、自分に類似した能力を有している人がちらほらいて、成長するにつれて、彼らはしだいに、そんな力を弱めてくるのだ、と、この...MAYその66

  • MAY  その65

    洞窟に向かう道すがら、メイのこころの中は、もうすぐ会えるかもしれない、両親のことでいっぱいになっていた。敵に察知されるのを恐れてか、辺りはいつの間にかもとの暗さにもどっていたが、メイの行く手だけは、ニッキの持つ懐中電灯によってしっかり照らされていた。メイはふと空を見あげた。苦しい時、悲しい時、彼女はよく夜空を見上げたものだった。雲の切れ目で、星がきらめいている。何か温かいものが、メイのこころの中にすうっと入りこんでくる。「メイ、ほら、気をつけて。ぼんやりしてると転んでしまう。この小道さ、腐葉土でできててね。雪を溶かしただけじゃ、靴がどろんこになる道だったし。いやなに、それは心配ないんだ。ぼくたちの力で、しっかり固めておいたから。急なことだったし、どこからどこまでもかんぺきというわけにはいかなかったからね。わかる...MAYその65

  • MAY  その64

    わたしの家くらい、調べればどこにあるかすぐにわかるはずなのに、と、メイはいらいらしながらニッキからの連絡を待った。降り出した雪は、夕方になってもやむ気配がなかった。ジェーンと彼女の妹たちは、疲れてしまったのか、すでに床についている。ジェーンとともにやって来た猫は、暖炉のそばで丸まって離れようとしない。「メイや、めずらしいわね。そんなに熱心に本なんて読んで。ごはんも済んだんだしね。さっさとお風呂に入って、休んだらどうなの」ロッキングチェエアに深々とすわり、毛糸のマフラーを編んでいたメリカが、ぶあついめがねの奥のひとみを、ふいにメイに向けた。メリカのまなざしは優しかった。さっきから何も話そうとしない、メイを心の底から気づかっていた。「ううん、そうよね。ありがとう、メリカおばさん。もうちょっとね。そしたら言うとおりに...MAYその64

  • MAY  その63

    もうじき父に会えるかもしれないと思うと、メイはうれしくてしかたがない。しかし、怖い気もする。むりもない。父との想い出がひとつもないからである。(わたしのお父さんって、一体どんな人なんだろう。もしもおっかない人だったら、わたし、どうしよう。いや、そんなはずないわ。だって、わたしのことを守るようにニッキが頼まれたって言った)メイはまだ生まれて間もないのに、宇宙船にひとり乗せられ、複数のAIに世話されながら地球にやって来た。そんな大事なことさえも、お前もそんなに大きくなったんだから、と、ようやくモンクおじさんが教えてくれたばかりだった。AIがいくら優れていたって、母親の役割なんてできるはずがない。そう思い、メイは自分の両親の仕打ちをうらんだことも一度や二度じゃなかった。(その時わたしの親はよほどせっぱつまっていたのだ...MAYその63

  • そうは言っても。 (2)

    お盆を過ぎてからも、厳しい暑さが和らぐ気配がない。エアコンがあるにはある。だが、それは一階の奥の間に設置されていて、ほとんど客のために使われる。種吉の書斎は、二階にある。朝八時をすぎると、彼の書斎のなかは、まるでサウナのようになってしまう。だから彼がパソコンで物語をつむいだりするのは、早朝か夜更けにかぎられる。「ああ、暑い、暑い」上半身、はだか、半ズボン一丁のかっこうで、彼は階段をおりてきた。ちょうどその時、玄関のすりガラスの向こうに人影があらわれたので、彼はあわてて階段をかけあがった。ピンポーン、ピンポーン。呼び出し音が二度鳴った。しかし、誰もそれに応じない。(今頃、どなただろう。かみさんがいるわけなんだが。ひょっとして、もうどこかに出かけてしまったのだろうか)種吉は、板張りの廊下に、ごろりと横になると、だん...そうは言っても。(2)

  • MAY  その62

    数日後、メイの住む森にニッキが乗った宇宙船が再び到着した。そのことを最初にメイに知らせてくれたのは、ジェーンだった。久しぶりに会った二人は、思わず互いの無事を喜びあった。「ジェーン。帰って来てくれたのね。わたしとっても嬉しい」メイの目がしらがたちまちうるんだ。「そんなに喜んでくれるなんて。わたしなんだか恥ずかしいわ。きょうだい姉妹まであなたの家でやっかいになってしまい、わたしとっても肩身がせまかったし、それに世間があなたの家庭の誰かが敵と通じているんじゃないかって。ことさらにわるくいいだしたからわたしまで……。メイちゃん、うたぐってわるかったわ」ジェーンの声がうわずり、もう少しで彼女は泣き出してしまうところだった。ジェーンのスカートのすそを、右と左で引っぱっているふたりの妹ジルとミルも泣き顔になった。ふいに、み...MAYその62

  • 会津・鬼怒川街道を行く  (5)

    今回の旅の目的のひとつだった鶴ヶ城見学をひととおり済ませ、展望台から四方をながめた。まことにすばらしい城だった。昭和四十年に再建されたらしい。官軍の大筒に見るもむざんに破壊された城の面影を残すものは、基礎となっている切り石のみである。わたしの背中が、ぴりぴりしているのに気づいたのか、わたしに声をかけてくるものは誰もいなかった。偏屈で、誤解されやすいたちである。わたしの眼には、会津の街が、おそい春の華やいだ空気のなかで、ちょっと恥ずかし気にちじこまっているようにみえた。「お父さん、会津のおみやげ、うちのきょうだいや親せきにも買っていかなきゃね」わたしの気むずかしい性質などものともしないのは一人しかいない。かみさんがわたしの背後から、うわずった声を浴びせた。思わず、わたしは苦み走った顔をくずしてしまい、ああ、そうだ...会津・鬼怒川街道を行く(5)

  • そうは言っても。

    長かった梅雨が終わった。白い雲の間から久しぶりに太陽が顔をだし、これまでのうっ憤を解消するかのように、がんがんぎらぎらと輝きだした。「暑いわ。ほんま久しぶりや」うれしくてしょうがない種吉は、子どもみたいにはしゃぎながら、縁側にすわりこんだ。「ああ、よっこらしょっと。ほんまこんなときこそ、誰かさんにリーダーシップを発揮してもらわんと困りますねんわ。こんな狭い街でもあっちでコロナ、こっちでコロナ。こないだのときより、なんやひどいのんとちがうやろか」あたりに聞こえるくらいの大きさで、ぼそぼそ言った。ぼんやりしてるようでも、新聞やテレビはよく見ている種吉である。目の前の庭を隅から隅まで見渡して、あっと声をあげた。後ろ向きにしゃがみこんだ自分の奥さんの姿に気づいたからである。かわいそうによく眠れなかったんだろう。蚊取り線...そうは言っても。

  • MAY  その61

    生徒だった頃のように、メイは平気でニッキとならんで歩けない。なんとなく体がぎくしゃくしてしまう。そんなばかなことが、ひょっとして自分はどうかしたんじゃ、と、そうっとこころの奥底をのぞいてみようとした。しかし、すぐにやめた。「でもどうしてだろね。敵はこの森あたり全体を、くまなく、何かを求めて飛びまわっていたんだ。だから、われわれもずうっと気をつけていたんだけど」「うん。わたしだって、白髭のおじいさんに聞くまではぜんぜんわかんなかった。あんな、どこにでもあるような洞穴にすごいパワーをもった石があるなんてこと」「そうだったんだ。きみの一言で、ようやく僕らも合点がいったよ。敵がそんな石のことを熟知しているなんて。早速、本部に帰って、きみのお父さんに報告するから」「ええ、とう、さん、にね……」メイにとっては、久しぶりにニ...MAYその61

  • 会津・鬼怒川街道を行く  (4)

    若松城の敷地はとても広く、複雑に入り組んでいて、駐車場のひとつから城門にいたるのにずいぶん時間がかった。もちろん満開に近いさくら花が、はるばるやってきたわたしたちの歩調をゆっくりしたものにしたのは言うまでもない。「まあ、きれい」かみさんは驚嘆の声をあげ、じっと掘わりの土手に咲く花を見つめた。幹がかなり太く、うろをかかえている木も。植えてからの年月の長さがしのばれた。時折、ちらほら、ピンク色の花弁が彼女の顔にかかる。わたしは先を急ぎたかった。だが下手に声をかけると、逆ねじを食らってしまう。どうしたものかと、せがれふたりともども、あっちへ行ったり、こっちへ来たり。しばらくひまがかかるとふんで、わたしは甘いものを求めて、掘割の界隈を歩くことにした。出店のひとつにみたらし団子が並んでいるのを見つけると、焼き立てをひとつ...会津・鬼怒川街道を行く(4)

  • MAY  その60

    あたま隠して、しり隠さず。メイはふとそんな言葉を思い出した。洞窟の内部が気がかりだから、なんとかして狭い穴から中に入りこもう。男のそんな意図をおかまいなしで、彼の姿だけを見るなら、それは十七歳の少女をじゅうぶんに笑わせただろう。しかし、その行動は、本来、メイがやるべきことである。メイはおかしさをぐっとこらえ、男の腰のまわりのベルトを、外しにかかった。変わった形をしている。筒先から弾丸が飛び出すようなピストルじゃなさそうである。「どうしたんだい、メイ。早くベルトはずしてよ。じゃないと、おれ、息が苦しくて」穴のすき間からもれる男の悲鳴に似た声を聞いて、メイは我に返った。「ごめん、ごめん。今すぐね」(ここまでしてくれるのは、あの子しかいない。そう、いつもわたしをかばってくれたニッキくん……。彼が言うことが正しいならわ...MAYその60

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