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油屋種吉
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2013/08/16

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  • 変身。 (1)

    「いつまでも、あいつめ、奥の間で何しとるんやろ、また……」土間で掃きそうじをしていた四十がらみの女が小声でそうつぶやき、唇をかんだ。右手にもった小ぶりのほうきは動かしたままで、家事仕事がしやすいのか、あちこち布切れでつぎはぎした草色のモンペをはいている。お勝手の引き戸は開け放ったままだ。七輪で焼いている川魚が、もうもうと煙を上げている。外からもろに、家の中が観えないよう、引き戸の上から暖簾がかかる。彼女はそれを引き上げては、ときどき戸外の通路を見やる動作をくりかえした。家は玄関が南向きの造作で、訪問客があれば、すぐに見つけられた。畑に植えた柿の葉が雨にぬれている。ゆうべから降っているらしく、さつまいもの葉っぱばかりでない。辺り一面、乾いたところはどこにも見られない。梅雨入りまじかだ。門扉のわきに植えたエニ...変身。(1)

  • われに恩師ありき。 (1)

    長年生かせていただいていると、実にさまざまな憂き目にあう。若い頃より恩師としてあがめた方が、ふいに身まかられた。この月の十九日のことだ。(先生も昭和八年うまれ。すでに九十才を超えられたのだからこの先何があるやもしれぬ。その時は決して驚いたりあわてたりするまい)それまではこころの底で、そう思っていた。しかし、実際にぐいとその事実を突きつけられると、あっけなかった。わたしの思いなどいとも簡単に突き破られた。「わたしの夫がなくなりました。あなた様には大変お世話になりました。葬儀の日程は…」呼び出し音四回のあとで、そう、留守電にしたためられた、恩師の奥様の言葉。丁重に話されてはいるが、感情があらわにならぬよう、必死に理性で抑え込んでおられる。電話口でわっと嘆き悲しまれる以上に、彼女の想いがひしひしと伝わってきた。...われに恩師ありき。(1)

  • わっとか、あれっとか……。

    「生まれてくれてありがとう」両腕でしっかりと体を抱えながら、わたしは縁のできた幼子に声をかけつづけた。どれくらい経ったろう。いく度目かの来訪のとき、彼女のまなざしが実に活き活きとしているのに気づいた。わたしの発する音声に意味は見いだせないだろう。だが、しっかりと聴き入っている様子。彼女の小さな頭の中で、何がどんなふうに動いているか知れない。可愛さの増したつぶらな瞳に出会ったとき「この子はおしゃべりするのが早いぞ」と思った。何事によらず、人はわっとかあっとか、びっくりするべし。以来、わたしはそう思うようになった。それがもっとも大切じゃなかろうか。そんな感情をともなわないところでは、目の前の対象を、しっかりと究明しようとする意気込みが出てこないのではあるまいか。たとえば我が家の農業課題。土の日が近づくばかりの...わっとか、あれっとか……。

  • 土に生きる。

    こんにちは。ブロ友のみなさま。この日は久しぶりに暑かったですね。まるで夏の名残のようで、このところの草刈りによる身体の疲れか、ベッドに横たわったらいつのまにか寝入ってしまい、ふと目覚めたら、おやつの時間になっていました。寝ぼけまなこで、野良に出かける用意をしようと階段を降りていく。考えだって定まらない。ええっとどこまで野良仕事をやっていたんだろう。あまりの稗(ひえ)の多さに、心底、どうしていのやらわからない。それが本当のところ。田んぼを観に行くたびに、イノシシがけもの道を作っては、ぐるぐると走り回っている様子。どうやら、嬉しがって、稗を食しているらしいことが知れる。それならそれで、彼らに食べたいだけ食べさせて、冬場に枯れた稲を燃してしまうのが、ベターと思ったことでした。のみ、しらみ、馬のしとする枕もとどな...土に生きる。

  • 十月七日(月)くもり

    このあたり、きのう、おとといと神社のお祭りでした。秋の風物詩ですね。ああ、それとね。「十三夜」が、今月十五日です。まだまだ昔からの習わしが残っています。その日は小学生たちは、教室で授業を受けていても、わらでっぽうのイベントが気がかり。どれくらいのお小遣いになるかな。わくわくどきどきです。学校がひけ、家に帰ると、さっそく持つものを持って公民館前にあつまります。それまでに、お年寄りの先生に、作り方をおそわりながら、必死に、わらを細工し、地面をたたくものを作りました。次は、面倒をみて下さる、育成会の大人の方の指示を待って、さあ出発となります。お行儀よくぞろぞろと、各家の玄関先までやってきては、「米よし、麦よし、大豆も小豆もよく当たれ」かん高い声で唄います。「ほら、やっとくれ」家の主人の言葉が合図です。その言葉を...十月七日(月)くもり

  • 十月三日(木)くもり

    こんにちは、ブロ友のみなさま。ご心配をおかけしていて、申し訳ありません。私はいたって元気にしておりますので、ご安心くださいね。朝早く起きて、野良に出かけようって気持ちになるのですもの……。「神さま、ありがとうございます」毎朝そう念じています。体調がわるければ、ベッドに一日、ふせっているしかありませんよね。いま、野良仕事でいちばんの悩みの種は、うちの一番広い田んぼ一面にひえがはびこっていることです。粟とか、ひえ。そのひえ(稗)のことです。わたしの若い頃の塾生に、稗田という生徒さんがいました。今は米が主食。昭和の三十年代には、けっこう、大麦や小麦の生産が盛んでした。小麦粉で作った母さんの手料理。それらを目の前にして、子どもが生唾をのみこんだ時代でした。食糧事情がとてもわるかった。現在のように、お店に行けば、な...十月三日(木)くもり

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