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  • 『ミルクマン』/アンナ・バーンズ

    独特な文体が魅力的な、アンナ・バーンズのブッカー賞受賞作。北アイルランドとおぼしき名前のない町を舞台に、主人公である18歳の「私」(趣味は歩きながら19世紀の小説を読むこと)が反体制派の有力者たる「ミルクマン」なる男にストーカーされたり、「メイビーBF」との関係に悩んだり、「義兄その3」とランニングしたり、「毒盛りガール」に毒を盛られて死にかけたり、「サムバディ・マクサムバディ」に殺されかけたりする物語。 とにかく語りのグルーヴがなかなかに独特で、それこそが本作の最大の魅力になっている。全編通してものすごくシリアスなことが起こりまくっているはずなのだけれど、語りの面白さのせいで、どうにも笑えてしょうがない、という、なかなか他にはない雰囲気の作品になっている。

  • 『職業としての政治』/マックス・ヴェーバー

    第一次世界大戦後の1919年、ヴェーバーがミュンヘンの学生団体向けに行った講演をまとめたもの。まずヴェーバーは、トロツキーの言葉を引いて、「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」と言う。 近代国家は、この暴力行使の権力を独占するべく、その手段を国家の指導者の手に集めている。そのため、政治家は、不断に「闘争」を行うことで、権力を追求し続けなくてはならない。 だから、政治家とは、常に特別な倫理的要求にさらされている存在であり、また、本質的に、自らの権力行為を倫理的に免責することのできない存在である、ということになる。 だからこそ政治家は、心情倫理ではなく、責任倫理に根ざす存在でなくてはならない、とヴェーバーは語っている。

  • 『あるノルウェーの大工の日記』/オーレ・トシュテンセン

    現役のノルウェー人大工であるトシュテンセンによる日記本。オスロ市内に暮らすペータセン一家から、「屋根裏を居住用にリフォームしたい」という依頼の電話を受けるところから始まる、半年あまりにわたる仕事のあれこれが綴られている。全編通してほとんど仕事のことしか書かれていないので、いわゆる日記というより業務日誌的な趣もあるし、文章もごく淡々としているのだけれど、これが存外おもしろい。 彼の日記からは、「寒さとは何か、埃とは何かを知っている」大工であることの矜持がしっかりと感じられ、やっぱ職人ってこういう人だよね!という気持ちにさせてくれるのだ。

  • 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』/川上未映子

    ひたすら饒舌というか自意識をそのまま垂れ流しにしたような、大阪弁と丁寧語が混じった、どろっとした文体が特徴的な中編だ。語り手の「わたし」は、人の思考は脳ではなく奥歯でなされているとかんがえている不思議ちゃんで、生まれる予定のない自らの子供に宛てて手紙を書いてみたり、中学の同級生だった男子との架空の恋愛関係を妄想してみたり、歯医者でアルバイトを始めてみたりする。彼女の思考の中心にあるのは、「わたし」が「私」という自我として存在している、ということの奇妙さ、であり、その「わたし」がこの残酷な世界に否応なしに含まれており、そこから逃がれることができない、ということの過酷さ、だと言っていいだろう。

  • 『ミッテランの帽子』/アントワーヌ・ローラン

    神秘的な力を持った帽子を中心に、さまざまな登場人物たちの人生模様を描いていく連作短編的な構成の小説だ。料理、ワイン、ファッション、香水、音楽、絵画、テレビ番組などなど、80年代中盤のフランスのカルチャーがたっぷりと盛り込まれているところがたのしいし、作品全体に通底する、軽やかに人生の美しさをたのしもうというムードも心地よい。エスプリが効いていて、ちょっと謎めいていて、決してヘヴィにはならない。なんというかもう、いかにもフランスっぽいお洒落な作品になっているのだ。

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