『ミルクマン』/アンナ・バーンズ
独特な文体が魅力的な、アンナ・バーンズのブッカー賞受賞作。北アイルランドとおぼしき名前のない町を舞台に、主人公である18歳の「私」(趣味は歩きながら19世紀の小説を読むこと)が反体制派の有力者たる「ミルクマン」なる男にストーカーされたり、「メイビーBF」との関係に悩んだり、「義兄その3」とランニングしたり、「毒盛りガール」に毒を盛られて死にかけたり、「サムバディ・マクサムバディ」に殺されかけたりする物語。 とにかく語りのグルーヴがなかなかに独特で、それこそが本作の最大の魅力になっている。全編通してものすごくシリアスなことが起こりまくっているはずなのだけれど、語りの面白さのせいで、どうにも笑えてしょうがない、という、なかなか他にはない雰囲気の作品になっている。
2022/05/31 21:58