オリジナル恋愛小説を掲載しています。
■伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい(完結) 伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
「お待たせしてごめんなさい」 玄関で待っていると、桔梗があわてたように階段を駆け降りてきて謝罪した。 だが、待ったといってもほんの数分程度のことだし、そもそも創真がすこし早く来てしまったのがいけないのだ。いまがちょうど約束の時間くらいだろう。「いえ……」 むしろ焦らせてしまったことを申し訳なく思いながら返事をすると、それだけで桔梗は安堵したように表情をゆるめた。そしてあらためて創真と目を合わせてにっ...
三月十四日、放課後の教室はいつもよりこころなしか賑やかだった。 しかしそれも落ち着き、残っている生徒たちがだいぶ少なくなってきたころ、他クラスまで出かけていた東條が畳んだ紙袋を片手に戻ってきた。そのいかにも疲れたと言わんばかりの表情を見て、翼は軽く笑う。「お疲れ」「ああ」 ホワイトデーということで律儀にも全員にお返しを用意したらしく、今日一日、東條は休み時間になるたびに方々へ渡しに行っていたのだ...
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