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眠れない夜の言葉遊び https://blog.goo.ne.jp/junsora

折句、短歌、アクロスティック 詩、小説、妄想、言葉遊び、クリスマス詩、ショートショート、マナティ、夢小説、散文詩

クジラうえ リクエストした 水族館 マダイがうたう スローバラート

ロボモフ
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2008/12/07

  • 窓の向こうに

    お決まりの17音を抜け出して散文はレベル1の歩み空白に満たされたまま動かない僕の1日400字詰相槌の行き先不明対岸のソファーに伸びたスマホの男チロルチョコレートをとってレジへ行きピッ♪と4回通し会計後からの列車が先に到着とホームに響くイソップ童話適当な言葉を探し60分あるわけないが正しい答えチャットから愛と正義を導いて生き残るのはゲーム感覚窓の向こうに

  • 大臣パズル

    言ったとか言ってないとか人間の記憶はいつもうそつきだけど罪ならば秘書の鞄に詰め込んで私は道義上を払おう不都合なものなら順次差し替える手馴れた君の大臣パズル問題を起こさぬように選びなさい1問目から超難問だ腐っても腐っても切り替えられる予備登録に絶対多数大臣の顔に睡魔を覚えたら次のカードは総とっかえだつきだしたうそをとことんつき通す人こそ真の大臣マスター大臣パズル

  • つまらない歌

    つまらない大人になった200歳ここから僕の逆転はあるつまらない大人になった昨日から肉をつまんで酒を飲んでるつまらない大人になった昨日から道行く人をただ眺めてるつまらない大人になった僕なりに少しはわかるコーヒーの味つまらない大人になった窓辺から素敵な詩など降りてはこないつまらない大人の口に住み着いた愚痴と駄洒落が時の支配者つまらないつまらないなと繰り返す時間だけあるつまらない人つまらないことで落ち込む未熟さに贈ろう僕のつまらない歌つまらない歌

  • またぎ掃除機の最期

    一部だけエレベーターに呑み込まれ掃除機を壊したのは僕不完全移動の掃除機を引いてエレベーターを止めたのは僕あるいはと無事の帰還を期待した扉が開いて剥き出しコード全体を把握するには長すぎるコードのやばい掃除機さらば鳴り止まぬ点検ブザー15時に業者を煩わせたのは僕2つしかないエレベーターを1つ止め大渋滞にさせたのは僕落ち着いてさぼるがベターがむしゃらにフロアをかけすぎるはリスキー「どうせもう捨てる奴だよ」そうなんだ僕は全く何もしてないまたぎ掃除機の最期

  • 誰もいない指定席

    風穴を僕に残して過ぎ去った転校生は初恋の人「指定席?」当惑しつつ去って行くここは特急おき1号車創作が指と脳との競争に変わる夕暮れサイバーパンク共感に一番遠い場所にある読点きみのため息で飛ぶ琴線に触れる言葉をたずねればいつもの空に浮かぶ広告つかれたとあなたがいった教室の窓に風船どこからきたの「空いてます?」鞄を置いて去って行くカフェは1つの椅子取りゲーム誰もいない指定席

  • 誰がために心を鬼に

    仕方なく心を鬼にしましょうか傷つく人のことはみないでコンプライアンスをギリで飛び越えて上司が推した解約新規一番にノルマが大事ねじ伏せた倫理の上の業務命令法に触れない程度にはたぶらかし組織のために推奨の鬼コンプラをノルマのために封じれば罪悪感に勝ってこそ鬼よく言えば詐欺ほどじゃないやり口は上も認める悪しき慣習鬼となり人を苦しめましたから私は首を洗い待ってる誰がために心を鬼に

  • 心離れ

    流行り廃りが振り回す人心にプッシュクローズアップ現代最大で大層お得かもしれん僕はだいたい最小の人この令和世界の部屋にブラウン管あるかのような君の集金不都合な真実だけを映さないテレビに学ぶ不条理がある神様が総合的な判断で僕を選んでくれましたとさ「重要」に思えなかった封筒がチラシと埋もれ紙屑となる人々の心にいたい今夜一粒の共感だけを求めて心離れ

  • 終盤の覚醒(自陣二枚飛車の失敗)

    振り飛車党の人には、美濃囲いを心から愛する人が多いのではないか。囲いの長所や弱点、勝ちパターンも経験を積むことで理解している。最も大事なのは、49の金だろう。囲いの要の金が無事なのかどうかで勝率は大きく変わってしまうように思う。それをはがされて勝つことは容易でなく、逆に言うと達人レベルの人はそうした窮地でさえも何とか凌いで勝ち切ってしまうのだ。その時、僕の美濃は49の金を既に失っていた。そして、銀の腹から48金と張りつかれた。中飛車の59飛車に当たっていて痛そうだ。相手は持ち駒に角を持っている。まず考えたことは飛車取りをどうしようかということ。そして、この金を放置しておくのは気持ちが悪いということだ。そこで僕は持ち駒の飛車を自陣に投入して、49飛車!?と打ちつけた。言わば金の代用として飛車を使ったのだ。受...終盤の覚醒(自陣二枚飛車の失敗)

  • 魔女ばかり

    異世界には魔女が住む。異世界の数だけ魔女は存在した。岩を登る魔女、シチューを煮込む魔女、カードを切る魔女、人をさばく魔女、アルバムを編む魔女、蝶を操る魔女、飴をまく魔女、荷物を運ぶ魔女……。「どんな魔女がお好みか?」無数にみえる魔女の間を泳ぎながら、ドラゴンは自身に問いかけていた。炎に触れて行間が激しく燃えている。「アルデンテとカルボナーラの魔女?」わからない、わからない、わからない……ドラゴンの気はうつろいやすい。・エルメスの温情を持つ魔女が住む異世界を読みあさるドラゴン(折句「エオマイア」短歌)魔女ばかり

  • 消え去った後に

    効率よく作りたかったら他に作るものはありますよ小説を書くことはほとんど非生産的なもんや書くことの半分以上は捨てることや考えたこと、浮かんだこと、悩んだことほとんどは実を結びません書いては消し、書いては消しみんな消えてばかりやアホらしいと思わへん?出て行ってもええんやで帰れる内に帰るのが賢いでしょ捨てて捨てて捨てて捨てることばっかりそうしてぽつんと残ったものが小説家なんよ捨てていく覚悟はありますかテレビを捨て情を捨て地位を捨て恋を捨て……みんな捨てたら異世界へ旅立つんや「空っぽは空想の始まりです」余計なものはいらないのよ夢は素敵か?目標は大事?ほんまにそうやろかええですか。思い込みは足を引っ張りますよ先入観ほど余計なもんはあらへん夢や目標は変わっていくよなぜならば自身が変わっていくからです自分は自分と思って...消え去った後に

  • 今日と明日のルーティン

    「お急ぎの方、お先にどうぞ!」「お次の方、ちょっとお待ちください。只今、大急ぎの方がいらっしゃいました。大急ぎの方、お先にどうぞ!」この店は行列のできる大繁盛店。私はいつも列の後方に並んでおとなしく順番を待っている。どれだけ早く来て列に並んだところで、必ず自分の番が訪れるとは限らない。なぜなら、世の中には急いでいる人が多すぎるからだ。「無茶苦茶お急ぎの方、真っ先にどうぞ!少々お待ち。大至急の方がお見えになりました。大至急の方、お先にどうぞ!」私の番はなかなか巡ってこない。この列に大した意味なんかない。ただ少し有り難がって並んでいるようなものだ。昨日みた夢の話をしよう。私はゴールを決めたはずだが、異議を唱える者がいた。「ちゃんと両手を使った?」「使っただろ!」ボールを額にくっつけて押しつければゴールだ。ゴー...今日と明日のルーティン

  • 窓の女(ダイナミック・ウィンドウ)

    「すみません。ラッキーストライクください」「ごめんよ。うちはうまい棒と消しゴムの店だよ。何味がいい?」ランドセルを背負った少年は何も買わずに帰っていった。「はい、いらっしゃい」青年は酷く調子が悪そうだ。「夕べから熱っぽくて……」「食前に1錠、朝夕2回2週間分出しとくよお大事に」薬を受け取ると青年はせき込みながら帰って行った。「いらっしゃい」次々と客が押し寄せる。この街の窓はここしかないのか。女は酷く寒そうで唇が紫がかっていた。「大根と厚揚げと牛すじください」「辛子はつけとくかい。ありがとうね」客によっては出せぬものはない。「はい、いらっしゃい」窓の前にスーツケースが止まった。「福岡まで大人1枚お願いします」「ご旅行ですか。うまい棒共通クーポン付ねお気をつけて」「いらっしゃい」次は帽子の紳士だ。「ラークマイ...窓の女(ダイナミック・ウィンドウ)

  • 相談将棋 ~純粋に水をさすもの

    儚い1分をつないで永遠をつくることだってできる。許されるならずっとそうしているのかもしれない。読み耽っている間は歳を取らず、風邪を引くこともない。徐々に棋士の縦揺れが速くなっていく。前のめりとなり勝ち筋を追求しているに違いない。遠目には何もしていないように見えて、実際には壊れるほどに動いている。脳内を占めているのは、玉を中心に存在する世界。そこには蠅1匹として入り込むことはできないのだ。純粋であることはこの上なく心地よく、その世界を見守るものを幸せな気持ちにさせることができるのも、純粋さの力に他ならなかった。「ちょっとご相談がありますので……」玉と玉の間に世界の外から声が割って入った。大駒も小駒も、口を挟むことはままならない。人と駒との世界がはっきりと分断される。・時が止まる。要の金も、駒台の曲者も、自陣...相談将棋~純粋に水をさすもの

  • ライブ(真夜中の肉食獣)

    人の数だけ理想の形はあるのではないか。ある人は音楽などなくても何も困らない。だが、ある人はロックがなければ息もできない。ある人にがらくたであるものが、ある人には不可欠だ。しわわせとは、飢えを満たすことではないだろうか。俺の飢えは、あなたの飢えとは違う。俺は俺であなたはあなたであるということだろう。俺は真夜中の肉食獣。今夜も満たされる瞬間を求めて街をさまよっている。「テクニカルチキンとトロピカルチーズバーガーとアンダルシアオレンジシェイクね」「ご注文内容を繰り返します……。ただいま満席いただいております」「そうなん?」「お待ちいただけますでしょうか」飢えが満たされるまで、引き下がるわけにはいかない。待たされている間、ネットニュースからやらかし人たちの失言でも拾うとしよう。俺は失敗から学ぶ人間だ。他人の失敗を...ライブ(真夜中の肉食獣)

  • スープ・カレーを召し上がれ

    「誠に申し訳ございません。ご注文いただきましたスープ・カレーでございますが、私の不注意により少々スープをあふれさせてしまいました。お届けできる状態でないと判断できるため、ご注文をキャンセルさせていただき、こちらの方で引き取らせていただきます。この度は誠に申し訳ございませんでした」「大丈夫です。構いませんのでそのまま届けてください!」「恐れ入ります。せっかくご注文していただいた商品を、完全な形でお届けできずに心苦しく思います。やはり、こちらで引き取らせていただくことといたします。この度は誠に申し訳ございませんでした」「いえいえ。そう気になさらなくても大丈夫ですよ。私の方は全然構いませんので、どうかそのまま届けてください!」「いえいえ。そういうわけには参りません。私どもの仕事は、ご注文いただいた料理をできあが...スープ・カレーを召し上がれ

  • アウトサイド・レストラン(キツネ・ドリーム)

    よい時には何も考えずに決めることができた。カレーライス?オムライス?何でもこい!あふれ出るケチャップのように、とめどなくゴールを量産することができた。夢を見ている時でさえ、寝返りとともに反転してゴールすることができた。例えばこんな夢を見ている最中にも……。・くわえ煙草のキツネが吐いたため息に巻かれて、僕はグランドにいた。キツネ色の友情とキツネ目の少年が交錯している間に、ボールは冬の夜のキツネのようにグラブを通過した。落球かと思えた瞬間、スローモーションとなってボールを回収する。キツネの先生と師匠が集まっておやつを食べるけれど、キツネ腹を責めるには理由が欠けている。ランナーはセカンドベースを回ったところでアウトとなる。流石はウッチーだ。レフトに飛んできませんように。平凡な外野フライを捕球できない自信があった...アウトサイド・レストラン(キツネ・ドリーム)

  • ロング・ファイト(2000ラウンド)

    ノックアウトの予感を越えて、私は50ラウンドのリングに立っている。激しいパンチを交えながら、試合の中でさえも成長する。私は自分ののびしろに驚かされる。そんな私を前にガードを固め、フットワークを駆使しながら向かってくる相手も大したものだ。倒れない限り、ファイトは続く。ゴングとゴングの間に注がれるお湯。一息つく間、私は青コーナーでたぬきを食べた。ちょうどいい補給。そして、また立ち上がる。眠っているのか。100ラウンド辺りの私は半分夢の中にいるようだった。ダメージはかなり蓄積されている。時に相手のパンチがスローモーションのように見える。私は余裕で避けてカウンターを繰り出す。しかし、ダメージは与えられない。時は巡り、相手は赤コーナーできつねを食べている。向こうの方も美味そうだ。七味を注ぐ余裕も見えた。魔の時間帯を...ロング・ファイト(2000ラウンド)

  • プライド旋回

    「リクエストを申請して着陸許可を待て」「こちら機長。飯の友は辛子明太子。リクエストが通り次第着陸態勢に入る」551機の機長は迷わず晩ご飯の飯の友申請を終えた。既に空腹のピークを過ぎて半ば痛いほどだった。しかし、フライトは最後の最後まで気を抜くことが許されない。それは誰よりも機長自身が知っておかねばならぬことだった。「こちら管制塔。申請中の辛子明太子は売り切れ。繰り返す。辛子明太子は売り切れ。リクエストを却下する。至急代案を立て再度申請せよ」機長は操縦桿を持ったまま顔をしかめた。「却下は認められない。飯の友は辛子明太子。代案はない。以上」「こちら管制塔。状況を報告せよ。こちら申請待ち」「こちら機長。既に申請済み。対処願う。以上」「こちら管制塔。辛子明太子は現在売り切れ。繰り返す。辛子明太子は現在売り切れ。代...プライド旋回

  • 魔法のお茶

    素敵なnoteですね!さて本題に入らせていただきます。私は九州の方で美味しいお茶を作っております。読ませてもらったお礼と言っては何ですが、今なら通常価格不明のところを特別限定価格初回に限り最大で0円にてご提供させていただけることになりましたので、いますぐご注文してください!なお、翌月からは前金で最小で2万、他に別途サービス料(時価)、翌々月からは更新料として総額最小で1000円(時勢によって変動の可能性あり)をお支払いいただくものとする。(なお、これには一切の例外は認められない)・素晴らしい提案に乗って僕は迷いなくお茶を注文した。お茶は美味しいことは言うまでもなく、飲むだけで体が軽くなるようだった。一日の始まりから食事の友から、お茶のない日常は考えられなくなった。辛いことがあって落ち込んでしまいそうな時で...魔法のお茶

  • VARスタジアム

    塁審の旗が上がっています。1イニングに投げられる変化球の数を超えたかですね。非常に微妙なところでした。主審がVARのジェスチャーに入ります。オールドファッションだ。ドーナツのアングルからリプレイを注視しています。映像を見てみましょう。これは……。未知の変化球。自然界には存在しない曲がりだ!ストライクの判定が覆ります。アウトになった選手たちが、地下鉄の階段を引き返してきます。コツコツと響く足音が、リベンジに燃えながら上がってきます。おっとこれは判定に納得がいかないか。グラブをマウンドに叩きつけるとパンドラの箱が開いた。これはまずいぞ。駆けつけた警備隊が反逆者をマウンドから引きずり下ろそうとします。それを阻止すべく集まってきた、選手、スタッフ、応援団。更に空からは風船に乗って謎の援軍も合流しました。場内はさな...VARスタジアム

  • アウェイ&ホーム

    なんやお疲れの様子やね急にやりすぎたんちゃう何でもすぎたらあかんねん前にも言うてますよ自分の限界を知らなあかん猫見てみなさいあいつら普段どうしてる?そう蓄えてはるやろ力を溜めてはるんやそれが跳躍力を生むんですわええですか集中力には限界があるよ野球やったら9回サッカーやったら90分だいたいそんなもんや人間やもんロボットとかAIやないんやからやる方もみる方もそこら辺がだいたい限界ずっとしっぱなしは無理なんや楽しいことはずっと続いたらええずっとずっと続いて欲しいそれは人間のわがままや言い換えたら幻想やなだって人間やもん終わらなあかんからええねんそやからみんな必死やねん限界超えよう思って必死や元から限界なかったらどう?もう頑張ることあらへんそうでしょう?野球やったら3つアウト取ったらベンチに帰って休憩やサッカーや...アウェイ&ホーム

  • サポート・メンバー(盤外戦術)

    どんなアウェーでもホームに作り替えることはできる。そのために周到な準備をして、多くの物を持ち込む。座布団の周りの手の届く所に私は慎重にそれを配置する。懐中時計、ハンカチ、扇子、メモ帳、鉛筆、水筒、消しゴム、クランキー、カロリーメイト、コーヒーカップ、エコバッグ。その1つ1つが私の味方である。対局室の空気が厳しいアウェーだとしても、視野を狭くして盤上に集中することができれば、ここは見慣れた風景。自分の部屋に近い場所と思い込むこともできる。温めていた新構想が全く通用しない。今までの相手とは次元が異なっているように思える。一手一手に一切の妥協なき強い意志のようなものが感じられる。逆にこちらの手は、遙か先まで見透かされているように思えるのだ。(手合い違い)自身の脳内で聞きたくもない言葉が生成される。ここに来るのは...サポート・メンバー(盤外戦術)

  • 丼マインド

    我々の丼が中毒的な旨さを持っていたことは疑いようもなかった。客離れを起こしているのは、急激な物価の上昇とそれに伴うマインドの低下だった。秋が深まろうとしている頃、店長は思い切った手を打った。なんと最初の1杯に限りすべての注文を無料としたのだ!但し、おかわりは有料である。店長は強い自信を持っていた。その根拠は人間の心理だ。「我々はこの難局を何としても乗り越えなければならない。そのためにはあらゆる先入観を排除して新しい試みに挑戦する態度が必要だ。我々には他にはない絶対的な武器がある。それはこの中毒性の高い丼の旨さに他ならない。多少強引にでも我々はそこを前面に押し出して、何としてもこの業界での勝利を手に入れる。人間は人の恩に報いようとするもの。親切は必ず返ってくる。それを信じて笑顔で出して行こう。最後に笑うのは...丼マインド

  • さよなら劇場

    「鉛筆ならいいのか?」「駄目だ」「マドラーなら?」「観念しろ」「火ついてるか?」「現行犯だ。わかってるな」くわえ煙草の詩人が容赦なく拘束される。くわえた先の煙からどのような詩情があふれたのか。それが街の空気をどのようなものに変えるのか。何もわかっちゃいない。手錠をかけられ引きずられていく日常の光景。助けたい。だけど、仲間でもないので助ける理由がない。ちょっとした仕草で簡単に自由がなくなる。この街はどうかしている。少しだけずれているマッチング・アプリ。いつも半分は壊れていて、アップデートの度にエラーが出る。ミネストローネはいいものだ。しゃきしゃき玉葱と豚バラ肉のコンソメスープも素晴らしいだろう。だけど、求めるものとは少し違う。体内に留まる時間が、ほんの少し短いのだ。ポタージュスープだけが、冷え切った体を温め...さよなら劇場

  • 【コラム・エッセイ】楽しみは先にあるとうれしくないですか?

    好きなものはいつ食べるか。メインを真っ先に食べてしまうと、その先はどうなるか不安になる。だから、最も好きなものと割と距離をとることがある。好きと嫌いは、一見紛らわしく見えることがあるのではないか。一番遠ざけているものが、実は一番好きなものであることもある。これは食べ物だけではなく、一般的にも言える話だろう。・連ドラをみていて不安なのは、主人公が不在の回だ。これには考えられるパターンがある。大きなスポーツ・イベントや季節的な特番などで、差し替えられている場合。曜日やチャンネルを完全に間違えている場合。役者さんが出張などの理由につき、脚本に普段と違う変更が加えられている場合などだ。その場合、それはそれとして楽しめることもある。・好きな準チョコレート菓子をみつけた時には、一気には食べないようにしている。一旦口だ...【コラム・エッセイ】楽しみは先にあるとうれしくないですか?

  • ハイキック・プレゼント

    昔々、あるところに長い靴下のおじいさんがいました。おじいさんの靴下は、おじいさんの足の付け根から街角のコンビニまでありました。ある日、おじいさんは出かけました。部屋から一歩出るとそこはコンビニでした。おじいさんはおでんをイートインして楽しみました。コンビニの外の駐車場ではスマホを手にして遠くのものから金を巻き上げる集団がとぐろを巻いていました。可哀想な若者めが。おじいさんは華麗なハイキックを見舞いました。「メリークリスマス!」おじいさんが見知らぬものたちを助けたあと、一帯には主を失ったスマホと道を誤った人形たちが転がっていました。午前0時をまわった頃、店長が出てきて出汁を注ぐと蘇生が始まりました。「聖夜に死体は似合わない」おでんを好む猫たちが、目を輝かせて近づいてきました。ハイキック・プレゼント

  • 元気ないんですけど

    青葱が安かった。どれも同じように見えるが、鮮度にばらつきがあるかもしれない。僕は2、3回やり直して、これという青葱を取ってカートに入れた。自己満足か。葱を取るというちっぽけな選択さえも、本当は最初からすべてが決まっていたのかもしれない。自由な意思に自信が持てなくなる瞬間があるのだ。レジはあみだくじのようだ。空いていれば空いているところに行く。どこもかしこも空いている時は、どこに決めればいいのか。ふらふらと一番端のレジに行き着く。あるいは、それも最初から決まっているのか。レジの人はどこか元気がないようだった。いつもの人かはわからないが、いつもよりも声が出ていない気がした。何かあった?それともそれが普通だろうか。どうせ会計のところはセルフなのだし。薄切り肉のパックがいつの間にか小袋の中に入れられていた。僕は何...元気ないんですけど

  • 再会の時(コーヒー・タイム)

    ちょっとした親切にほろっときてしまう。髪を切ればどこかリセットされた気分になる。それはどこまで続くだろう。傷ついているのか、傷つきやすくなっているのか。ただ単に疲れてしまったのかもしれない。人の声が懐かしくて仕方ないのか、完全に無視することができない。新築マンションの勧誘か。金がないと笑ってもあきらめずにアンケートを持ちかけてくる。「20秒だけ……」だけど、交差点は1秒を争う場所なのだ。時間がない。モスバーガーでね……。「早くコーヒーを飲んでゆっくりしたいんです」ゆっくりするのを急いでいる。口にしてみて恥ずかしくなった。何という矛盾!時間は散々捨ててきたようなものなのに、くれと言われると急に惜しくなるのだ。・隣人は夢中になれるものを持っていた。大胆に広げたり、折り返したりしながら、食い入るように新聞を見つ...再会の時(コーヒー・タイム)

  • ファッション・リーダー(スーパー・パーカー)

    「どうです。ちょうどいいゆったり感でしょ」「わるくないですね」「こちらのフードは特殊な素材でできていて銃弾を弾きます。タイムシフト機能によって3分前に遡って弾くこともできます」「へー」「因みに私も持ってます」「使うかな」「あると安心ですよ」「まあねえ。ちょっと重いかな。他にありますか」チャカチャンチャンチャン♪「こちらは胸のメッセージ・プリントが特徴的です」(胸いっぱいの愛を)「おっ!」(誰よりも私をわかってくれる)「メッセージを変えられるんです」「無限に?」「クラウドでつながってますので」(ありがとう。色々と)(次世代ヒューマン参上)(明日からの物語)「何か前向きな気持ちになれますね」(豚まん3つ買ってきて)「心を内側から引っ張ってってくれます」(傷つきながら前へ)「いいな」「AIも内蔵されてます」「中...ファッション・リーダー(スーパー・パーカー)

  • スマホ戦争

    前方不注意主義者のスマホ男が、道を完全に人任せにして歩いてくる。俯く姿勢から無言の圧力を発しながら、ゆっくりとこちらの方へ。わかってるな。お前が変えろよ。俺は今この手の中の方でいっぱいだから。俺の進路をちゃんと読んで、お前が変えろよ。忙しい俺を煩わせるなよ。男は一瞬も視線を上げようとはしない。力に屈した日のことを思い出す。口の中に手を突っ込まれて、歯を全部抜かれてしまいそうになった日。抗うことのできない力で頭を捕まれて床に押しつけられた手。力がそんなに偉いのか。より強い力の前には簡単に屈するくせに。僕は手の中に収まる光の中から復讐の方法を探している。思い出すと怒りが腹の底からこみ上げてきて、すっかり見えなくなった。生憎夢中なのは、あんただけじゃないんだよ。僕の方が、ずっとずっと夢中なのだ。この街は命知らず...スマホ戦争

  • 家庭訪問美術館

    「繰り返し問題が起きたため50年先のnoteを表示しています」サイトに生じた度重なる問題のために先が見えた。未来の私は小説から離れてパラパラ漫画を熱心に描いている。新しい知らせが届く。ベルをタップすると問題が起きた。もう一度タップ。画面が真っ白になってサイトがリロードされる。私は次の漫画を投稿しようとしていた。熟成下書きのお題が受け付けられない。「まだ熟成されていません」フォトギャラリーがクラッシュして、部屋の明かりが消えた。窓がガタガタと震えている。私の体が何にも触れられずに持ち上がった。(運ばれる)私は美術館の中を歩いていた。順路を示す矢印がかすれてよく見えなかった。誰の足音も聞こえない。立ち止まったのは、虎の絵の前だった。「子の虎をここから出してください」絵の中の虎が口を開いた。テクノロジーを使えば...家庭訪問美術館

  • モーニング・サービス

    宿題をすべて片づけて、安心して眠りたいと思う。けれども、片づいたと思ったら現れる。片づけるほどに散らかっていく。根本的には、何が宿題なのかがわかっていない。問題がわからないのだから、解決困難だ。物心ついてから、ずっと仮眠しか取れていないように思える。本当に安らかに眠れるのは、死んだ後かもしれない。眠りと死は、似ているようで真逆だとも思う。決して死を望んでいるわけでもないし、憧れるものでもない。死は生きているものにとって、あまりにも未知だ。・自転車を置くスペースがないと到着してから気がついた。細い道で人とすれ違うのに時間を取られすぎた。発車の時刻まであと5分しかなかった。さよならを言ったのだ。今更戻るわけにはいかない。落ち着け。自転車は案外小さくて軽いじゃないか。ポケットに入るじゃないか。ぱっと開けた空もす...モーニング・サービス

  • ファースト・テイク

    カウンターの上に見えたバーガーを食べた。パサパサしているけどわるくない。横にあふれたポテトを食べていると、店員さんが駆け寄ってきた。何か驚いたような様子だった。「そちらは……」必死に適当な言葉を探しているように見えた。「別の人のですか?」店員さんの表情から、僕は察した。バイキングみたいなところだと思っていたが、どうやらやってしまったか。だけど、食べ始めてしまったものは、もうどうしようもない。(今回だけ)「今後は、番号をご確認の上で……」親切な店員さんの前向きな言葉に救われる。僕はこの街が好きになりそうだ。ファースト・テイク

  • 夜明けの護送

    包囲された空間にいることが、大人であることの証明だった。折れ曲がった矢印が進むべき道を迷わせる。タクシーの刺客が交差点で牙を剥いて襲いかかってくる。プールの中に飛び込んで必死で腕を回した。クロールは間違った学習だったと思わせる。かいでもかいでも前に進むことができない。ターンする壁をずっと探している。「ランウェイか」課長はそう言って電話を切る。アピールできるチャンスだ。「自分行きます」あった!『ランウェイ』はすぐに見つかった。こっちにも!本棚は50音順ではなかった。同名多数。マンガ版はずらりと並んでいた。今必要なのは小説だった。違う作者のもある。タイトルだけ聞いて来たから、結局は手こずってしまう。どれが本当の正解かわからない。最初に見つけた一冊にかけるか、あるいは……。「おいおい!いつまでかかってる」課長が...夜明けの護送

  • 金がないから望みが叶う ~「うっかり王」からの脱却

    詰将棋は空想と同じだ。自分の脳だけあればどこでも考えることができる。何も道具がいらないので、お金もかからない。いつでもどこでも考えようと思った時にできる。野球ならばバットやグローブが必要だ。サッカーだったらボールやゴールやスペースが必要だ。卓球だったらネットやラケットやピンポン球が必要だ。将棋だったら盤や駒が必要だ。ゲームとなれば対戦相手も必要だろう。空想/詰将棋は、自分と時間さえあれば自由に楽しむことができる。例えば、信号を待つちょっとした隙間にも。(ただ待つことを意識して待つという姿勢は退屈で苦になることは多い)例えば、病院の待合室でボールもグローブも何もないという時に、頭の中の空想/詰将棋は、誰にも邪魔されることなく可能である。頭の中で金や銀が輝いていても、竜や馬が暴れていても、誰がそれを咎めたりす...金がないから望みが叶う~「うっかり王」からの脱却

  • 金がないから勝てる/金しかないから勝てる

    「そうか、金がないのか」もしも相手に金があったら、手も足も出ないところだ。あきらめて負けを認めるしかない。当然のように、金はあるのだと思い込んでいたとしたらどうだろう?相手に金があるという想定、金があるというイメージが、自分の中に強く存在したとしたら、既に頭から負けに傾いているのかもしれない。金はそれほどに重要だ。最も重要と言ってもいい。生死を分かつもの。それが金なのだ!どうして相手に金があると思ってしまうのか。それは「残り駒全部」(盤上にない駒)を受け方が持っているという、詰将棋ならではのルールからきている面が大きい。詰将棋にたくさん取り組んだ人ほど、陥りやすい傾向とも言える。実戦では、当然駒台にない駒は使うことができない。詰将棋の合駒問題とは、すべての合駒について考えることが通常だが、詰めチャレは実戦...金がないから勝てる/金しかないから勝てる

  • 【コラム・エッセイ】金はあるほどよい?

    味方がボールを持てばフォローに行くのが当然だ。フォローは多いほどよい?フォローは近いほどよい?実はそんなことはなく、時にはまるでフォローしない方がよい。例えば、三苫さんがドリブルで持ち上がった時は、下手に寄っていかない方がよい。そうすることで三苫さんの使うスペースが失われてしまうからだ。場合によっては離れていくような動きが正解となる。三苫さんが縦に突破して、クロスを上げられるというタイミングでゴール前に飛び込む。三苫さんが中に切れ込んで、シュートも打てるよというタイミングで裏に抜ける。そうした動きが有効になる。前線に数が集まるほど攻撃力は増すようだが、決してそんなことはない。むしろ味方同士が重なることによってスペースを潰し、上手く攻撃が機能しないことが多い。攻撃というのは、数と同様に効率がとても大事なので...【コラム・エッセイ】金はあるほどよい?

  • 【コラム・エッセイ】コーヒーとキャッチ・ボール

    「店内で」「テイクアウトで?」「いいえ、店内で」「店内で」「ブレンド・コーヒー」ジャズが大きいせいもあって、上手く伝わらなかった。40分かけて歩いてきたのはここでコーヒーを飲むためだ。けれども、世界は思うほど自分のことを知らない。今日はファースト・コンタクトに失敗したと思った。コミュニケーションは常に難しい。自分から行きすぎず、聞かれたら答えるくらいがいいのかもしれない。(はい、いいえ、コマンド式だ)一気に皆まで言うのが明快?礼儀正しい?逆に混乱することはない?「こちらはFBIのジョーカーと申しますけど、昨年のクリスマスに桜川3丁目に訪れたサンタクロースが連れていたトナカイが所持する鞄の中からあなた宛の手紙が見つかり、切手から暗黒物質が検出されましたので、今から直接お会いしたいと思いまして、船場でコーヒー...【コラム・エッセイ】コーヒーとキャッチ・ボール

  • 街中華の味方

    「お好きな席へどうぞ」言われる前におじいさんは席に着いてメニューを開いていた。カンカンと鍋が鳴る中で火をつけたショートホープをくゆらせると、たちまち煙は不愉快な輪となりカウンターに広がって、取り込み中の箸を拘束してしまう。餃子を食べる客の手が、チャンポンを食べる客の手が、冷やし中華を食べる客の手が、ニラレバ炒めを食べる客の手が、天津飯を食べる客の手が、フライ麺を食べる客の手が、すべて止まって、衰えをみせない煙は忌まわしい猫となって料理人の冠にとりついて右脳を支配し始めた。優雅にまわっていた鍋は完全に運動をやめて、じりじりとチャーハンが焦げ付いていく。ただ一人銀のリングを持つ男だけが煙の影響から逃れ、頃はよしと立ち上がった。「街中華営業妨害の現行犯で逮捕する!」街中華の味方

  • 念仏は馬の耳に

    「馬が念仏を求めて来ております」「馬が?どんな馬だ」「追い返しますか?」「いや。奇特な馬だ。少し聞かせてやれ」「わかりました。では、私が」チャカチャンチャンチャン♪「和尚、また来ました」「何また馬が来ただと?」「追い返します」「ばかもん!お前は気が短い」「すみません。あの馬がうるさいもんで」「聞かせてやれ」「はあ」「聞きたがってるんだろ。聞かせてやれよ」「では私が」「それも修行じゃ」チャカチャンチャンチャン♪「またあいつが来ました!」「ほほ、よほどここが気に入ったようじゃ」「追い返してきます」「ばかもんめが!来るもの拒まず」「はい」「修行が足りぬわ!」「肝に銘じます」「それにしても読めぬ時代だ」「確かに」「我々は動物園を回ることになるやも」「はははっ」「何をしておる。早く馬に聞かせてやれ」「では私が」「そ...念仏は馬の耳に

  • タイム・オーダー

    電車が通過することだけを待つ時間。針の上を歩いて行く時間。勝ちを読み切ろうと前傾姿勢を取っている時間。それらは同じ時間だろうか?1分ずつ正確に削り取られていく時間に、私はずっと追われている。詰めば終わりの世界を、私は生き延びるために必死だ。優勢にみえても未知の要素が消え去らない限り、恐怖もまたなくならない。それは欲望にも等しかった。守りたい。大事にしたい。生き延びたい。最善手は?答えを探し始めた時から、時間は永遠に足りないものになった。どうでもよければ、きっと何も思わないのに。自陣から敵陣、中盤から終盤、読み筋は幾重にも交錯して路上にまで広がる。スマホ男。暴走自転車。くわえ煙草男。野放しの猛獣。さまよえる詩人。悪徳警官。悪徳商法勧誘男。居眠り占い師。人食い植物。ポイ捨て男。路上の脅威に晒されて序盤にまで遡...タイム・オーダー

  • 夢であったら/夢であった

    いつものようにセルフレジでコーヒーを注文する。いつもは電子決済するのだが、それだとなぜが決済のみ対人式となる。そこで今日は小銭を用意してきた。順調に進みいざ支払いのところにきて僕は戸惑った。小銭を入れるところがぱっと見でわからなかったのだ。お札を入れるようなとこはある。お釣りが返ってくるようなところもある。しかし、硬貨は……。僕は思い切ってお札投入口に硬貨を押し込んだ。特に反応はない。続けてもう1枚。10円玉を入れると警報音が鳴り響いた。明らかに僕のせいだった。しばらくして中から鍵を持って店の人が飛び出してきた。機械を開き、中の異物を探っている。「夢であってくれ」そう思うほど、目の前に映る現実は受け入れ難いものだった。救いは僕の後ろに並んでいる人が誰もいなかったことだ。もしも時間が少しずれていたら、(ある...夢であったら/夢であった

  • 完封ドライブ賞(自転車なんて大嫌い)

    自転車なんて大嫌い。左右は少しも確認しないし、減速することも知らない。一旦停止なんてするわけがない。赤信号は平気で無視するし、横断歩道に猛スピードで突っ込んでくる。我が物顔で歩道に入り生身の人間の1ミリ横をかすめて走り抜けていく。夜というのに明かりもつけずに走っているし、スマホを片手にふらふらしている奴ばかり。それが当たり前の日常なのか、誰も文句を言うこともない。そんな自転車に乗って僕は物を運んで暮らしている。ラーメン、バーガー、丼、ラテ、ケーキ、時には乾電池1つを大きな鞄に詰めて5キロの道を進むこともある。「あべのからミナミまでゴールデン・タイムの見事な完封ドライブでしたね」「運ぶ準備はできていたけど、注文が入らない時には入りませんから」「リコから大道の方に抜けて行かれましたけど、あの辺りはどんな感じで...完封ドライブ賞(自転車なんて大嫌い)

  • レッド・マカロン

    考えてもなかったことを考えつくため、考え込んでみる価値はあると信じられる。苦心の果てにひねり出せる手を持っている。それが人間の指す将棋だ。だから将棋は時間ばかりがかかる。時間をかけた分、よい手が指せるとは限らない。かけた時間を裏切るように悪手を指すことも多い。それでも人間は、理想を実現するために時間をかけなければ気が済まない。そういう生き物だ。最善手にたどり着くためだけではない。考え続けることは、上達にも欠かせない。考えている間に考えになかったことが浮かび、それが次へつながるヒントになったりする。目先の勝負がすべてではない。まとまりそうでまとまらない読み筋が、絡まって、どこかで結びついて香車1本強くなる。それは日々の積み重ねなくして、決して起こり得ないことだ。先に歩を成り捨てるべきか、それとも単に香を出る...レッド・マカロン

  • クリスマス2022折句短歌

    靴音がリーガルでした速やかなマックの陰にスーツの男空調が理屈のように擦れ合って窓際だからスキが届かぬ9時半に理想は落ちてスーツだけまともに映るスカイプ会議クエストは竜の鱗に吸い取られまさかの時給スリーコインズ狂おしく理想を巡るスワイプの真夜中あなたステマじゃないの空想は理屈をかいた水槽にまどろみ胸をすかせる遊び口惜しくリリースされたスキだから紛れて静か砂と流れる(折句「クリスマス」短歌)クリスマス2022折句短歌

  • 逆上王(腕に覚えあり)

    春がきてランドセルの準備はできていたけど、そこに新しい教科書が詰め込まれることはなかった。精密検査の結果、入院することが決まったからだ。家から車で3時間ほどかかる病院だった。父がハンドルを握る車で病院に向かう。長くて短い別れの道だ。同じ病室の子が僕に将棋を教えた。拒むことはできなかった。1からルールを覚え込むことは、とても大変だった。金と銀は似ていてややこしい。金の方が僅かに強い。銀と角は性格が似ている。玉は金に似ていて大駒の次に強い。飛車は香の4倍の働きをする。桂馬は非人間的な動きをする。歩はとにかく多い。駒は裏返ると金になる。裏返らない選択もできる。大駒は裏返ると玉の強さを身につける。ほぼ無敵。相手の駒は利きに入ると取ることができる。取った駒は持ち駒となって好きな時に使うことができる。持ち駒になった時...逆上王(腕に覚えあり)

  • ゴースト・タッチ

    人間の半分は眠りで出来ている。「眠れないな」と思い始めた時には、だいたい本格的に寝つけないのではないだろうか。調子のよい時はほとんど何も考えずに、気づいたらもう眠っている。(気づかないから眠っているのだが)眠る前にスマホを見るのはあまりよくないとされている。しかし、スマホはあまりに近すぎる。今や親兄弟よりも遙かに近い存在だ。駄目と言われて触れずにいることができるだろうか。(スマホがあれば怖くない)あなたはそんな風に考えているかもしれない。けれども、恐怖は身近なところにも潜んでいる。トントントン♪トントントン♪誰かがドアをノックするような音がする。こんな時間に誰か来たのか。きっと空耳だろう。何もなかったことにして、スマホの中に戻った。寝つけない夜には、noteの中に潜り込んで気を紛らわしてくれる記事を探すの...ゴースト・タッチ

  • ラブリー・クッキング

    めんつゆが鍋に沸いたら私だと一番風呂に飛び込む竹輪玉葱が1つはあると信じれば抑え切れないカレーの希望グラタンをリスペクトした焼売とマフィンの溶けたポタージュスープぐつぐつと煮立ちほぐれた袋麺君はこれからヤキソバになる大根で鍋があふれるおでんにはバリエーションは期待できないおでんからカレーうどんに進化して消えぬ竹輪のバイタリティよお茶漬けはお茶とご飯でつくられる何だかんだで君が一番ラブリー・クッキング

  • 反逆のポリバレント

    ピッチの中に入った俺たちが最初にやることは、俺が中心となって1つの輪を作ることだった。腕を肩に腕を肩に腕を肩に……。密に顔をつきあわせて、俺はみんなに伝えるべきことを短くまとまった言葉で伝える。昨日監督が言ったことは、もう忘れられている可能性がある。あるいは、色々ありすぎて最も大事なことがぼけてしまっていることもあるだろう。何を置いてもなくてはならないこと、事の本質を拾い上げて、俺は至ってシンプルな言葉として言っておかなければならない。それがキャプテンとして、絶対に欠くことのできないはじまりのルーティンだと言えた。今日の俺たちにできること。戦術を正確に守ること、個性を存分に発揮すること、プロフェッショナルとしての姿勢を忘れないこと、何よりも観客を楽しませること。どれも1つとして疎かにすることは許されない。...反逆のポリバレント

  • 大変だったね

    病んでいる時ほど夢を見る夢を持ち帰れた時には眠りも無駄ではなかったと飛び跳ねたくなる(覚えてなければ見なかったも同然だ)夢の中では僕が主人公だ日記の中の僕とも小説の中の僕とも違う半オリジナルな僕は追われたり消されかけたり浮いていたりもするけれど主人公であることだけは不変で理不尽なことをしていてもところどころは気持ちがわかる大変だったね(よく帰ってきたね)夢から戻ったばかりの僕を労わずにはいられないそして僕も始めないとね大変だったね

  • コーヒーに詩を

    芸人の誰かに似てるマスターは売り出し中の感じいい人マドラーがくるくるとなる夕暮れは終わりなき創作の始まり一口の深い余韻に感謝して一編の詩をここに捧げるコーヒーに湯気立ち上がるケルベロス、グリフォン次はユニコーンかなポスターが窓を覆った隙間からのぞいた街のジグソーパズルコーヒーと僕の間に割り込んだポメラは世界観を求める初めだけ温かいのが世の常と姿を消した湯気が伝えるコーヒーに詩を

  • 催眠将棋 ~負けました

    ものわかりの悪い人にはかなわない。普通の人なら潔く負けを認めるはず。10手も前に「負けました」と言いながら頭を下げているだろう。なのに、あなたは平然と前を向いている。負けず嫌いというだけならまだいいが、まさか私の間違いを期待してのことではあるまいな。だとすれば余計に腹立たしい。形勢は素人目にも大差。玉形、戦力、数字にするまでもない。あなたは手番を生かしてまだ何か言ってくる。どうあがいたとしても、無から有が生まれることはない。「何?この歩は?取ったらどうする?」こちらから厳しく主張すれば敵玉を追いつめることは可能だ。微かなリスクはあるとは言え、それはいつでもできることだった。だが、そこまでしなくても、あきらめてもらうのが一番手っ取り早い。何しろ有効な手段は1つもないのだから。あなたはあれやこれやと私の飛車に...催眠将棋~負けました

  • ミナミのゴースト・キング

    「選ばずによくなりました!」善行を装う君の改悪に泣く同じだけマーラータンを運んでも自転車だから300たこ焼きは歌の店でも焼いているミナミは言わばゴーストの街「ココイチよ鳴ってくれんか」人波を縫うだけサウスロードを過ぎる船場へと渡ったとこで引き返すタッカンマリはすぐ曲がり角タクシーが果てなく続く堺筋第2が君の第1レーン「島之内碁盤街には気をつけて。左右も見ずにチャリが飛び出す」オタロード越えて道具屋筋を行く松屋の先が吉兵衛さんだあと5分かけて待ちーとお母さん去年の暮れは水をくれたね「他店から同時に取って運べます!」「いや冷めてまう。誰得やねん!」AIがダイスを振って振り分ける同一労働適当賃金タコキンの向こうにチキンピンよりも信頼できる人間の声吉野家が23時に呼んでいるサンキューここは眠らない街春雨がよく売れ...ミナミのゴースト・キング

  • スパイシー・カルテット

    「いっぱいか……」テーブル・バジルがたずねてきた時、誰かが席を譲るのだという雰囲気になっていた。「ここは当然私が」最初に立ち上がろうとしたのは、塩コショーその人だった。そこに待ったをかけたのは、意外にも塩と胡椒の二人だった。「いいえ。混じり気のない私たちが行かせていただきましょう」塩コショーは驚きを隠せなかった。一旦は引き留めはしたものの、二人の堅い決意に押し切られて腰を落ち着かせた。「どうも」二人に感謝の気持ちを示し、テーブル・バジルは空いた席の1つにかけた。「あいつら算数できないんじゃない?」成り行きを見守っていた七味唐辛子が、ようやく口を開いた。何か二人に不満がありげだった。一瞬、塩コショーは七味唐辛子の方に鋭い視線を送った。テーブル・バジルは空いた席の方をまっすぐ見つめている。しばらく遅れてブラッ...スパイシー・カルテット

  • カテゴリの神さま

    後悔の渦の先に新しいチャンスがやってきた。飛び込む以外の選択はない。「さあ!」優しい顔をしたおじさんは大きく両手を広げていた。その場所こそが僕が目指すべき着地点だ。優しい顔をした存在こそが邪魔者だなんて。「チケットは持ったか?」自分に問題はないという顔をしていた。同じ座標に共存することはできない。世界の掟に背いて僕は飛ぶ。誰かを傷つけたとしても逃せないチャンスがあるからだ。階段から踏み切った瞬間、おじさんは消えて僕は温泉に浸かっていた。「ああ芯からあったまりますね」「ふん、ロボットの奴が何言ってる」中には心ない人間も浸かっているようだ。湯船のすぐ外では、かき氷を食べている人や卓球を楽しんでいる人たちがいるようだ。賑やかな音楽はジャズの生演奏だった。「何になさいます?」近づいてきたウェイターがきいた。「これ...カテゴリの神さま

  • カセットテープベイビー

    怪獣の汗セロリのスーツ釣り人のコント当惑の初手天体のホーププッチンプリンの調べベーグルの戦い異星人のお忍びビル風の証人カセットテープベイビー

  • 純粋振り飛車党の試練

    端角に浮き飛車玉は中住まい久々君のアヒル戦法こいなぎの猛者がのぞいた端角に一か八かの端攻め決行!筋違い角に対して飛車を振る純粋振り飛車党の覚悟中飛車を離れて振った向かい飛車こいなぎ流の弱点はどこ?嬉野の攻撃陣を軽くみて頼るは美濃の一路の深さ厚みから押し潰されてさばけない振り飛車党の歯痒き未熟ミレニアムかと思いきや怪しげな動きをみせて地下鉄飛車だ!ごきげんに微笑み返し飛車を振る君も純粋振り飛車党か戦法に名があるなんてすごくない?君は飯島流の使い手純粋振り飛車党の試練

  • 眠れない夜の呪縛

    眠れない夜に僕がすること人を恨んだり時計の針を眺めたりペンを取って詩を書いたり見知らぬ人の日記に共感を寄せたりそんなことは何一つしないそれは本当の望みじゃない旅の計画を立てたりほうきに跨がって指輪を集めたり魔法を覚えてドラゴンを倒したりキーボードに触れてミスを重ねたり永遠をたずねて気を病んだりおやつを集めてリュックに詰めたり音符を集めてメロディーにしたり運命を責めてグラスを傾けたりバイクに跨がって夜を切り裂いたりコーヒーを交ぜて待ち人をたずねたりみんなみんな違うんだ眠れない夜の本分から遠くかけ離れたものたち今の僕にできないものが山ほどある(これからもっと増えていく)眠れない夜に僕が許されることは何もない鴉の声に沿って歌ったり猫の舞踏に飛び入りしたり終わらないシネマに飛び込んだり負けず嫌いの公園で球を蹴った...眠れない夜の呪縛

  • もう熱々じゃない!

    A店で商品を受け取った配達員Uは、すぐにAさん宅には向かわず、一旦B店へと向かう。Bさんが注文した商品を受け取るためだ。Aさんから見れば、配達員Uの動きは寄り道と言える。もしもB店で調理の待ち時間が発生した場合、Aさんは自分の注文とは関係のない分も一緒に待たねばならない。Bさんが注文した商品を受け取ると、配達員UはBさん宅へは向かわず、最初の注文者であるAさん宅へと向かう。Bさんから見れば、配達員Uの動きは寄り道と言える。もしもAさん宅で居眠り等による何らかの受け渡しトラブルが起きた場合、Bさんは自分の注文とは関係のない睡眠事情も含めて(恐らく10分は余計に)待たねばならない。Aさん宅への配達を無事に終えると、配達員Uは残りの商品を届けるためBさん宅へ向かい始める。寄り道型デリバリー(PPDD)だ。AIの...もう熱々じゃない!

  • 折句の秋 コツコツと例えて過ぎる秋短歌

    アザラシとキノコで遊ぶ宿を借り涼めば空にミサイルの影(折句「秋休み」短歌)飽くほどに棋士が頼んだ山かけも雀が指せば美濃の好形(折句「秋休み」短歌)「あいてます?」希望を秘めてやってきたスリムシュガーは未知の形状(折句「秋休み」短歌)悪党と金で結んだ約束も過ぎれば彼方都の話(折句「秋休み」短歌)あたたかなきつねが欲しいやまがよりスリー唱えてみえるおうどん(折句「秋休み」短歌)愛憎の記憶を追って矢を射れば過ぎた昨日にみぞれが当たる(折句「秋休み」短歌)悪法に棋譜とまとめて破られた筋書きを追う観る将の夜(折句「秋休み」短歌)折句の秋コツコツと例えて過ぎる秋短歌

  • 【コラム・エッセイ】マタギの美学

    よく晴れた風のよい日には、公園に行ってボールを蹴りたくなる。しかし、どんな公園でもボールを蹴らせてもらえるとは限らない。禁止、禁止禁止、禁止!今はあれも禁止、これも禁止という公園も多いらしい。もしも自分がいっぱいいたら、一人の自分は毎日のようにキャプテン翼スタジアムに通わせたい。しかし、現代の常識では、人間は同時に複数のスペースに身を置くことができないとされている。そのことを僕は時々とても残念に思うが、だからこそかけがえのない存在としての個を愛することができたり、決断を巡るドラマが生まれることも事実だろう。サッカーのプレーにはパスとドリブルとがある。パスは仲間がいなければできないが、ドリブルは自分とボールだけでできる。それはドリブルの魅力ではないだろうか。ゲームの中でドリブルをすれば、敵はドリブルを阻止す...【コラム・エッセイ】マタギの美学

  • 眠れない夜のビート

    眠れない夜は無数のビートに追われていく秋が冬に近づく感じコーヒーが通り抜ける感じ椅子が雨を吸って傾く感じ即興が明日を追い越す感じガチャが詰まってあり得ぬ感じ空き地に広く迷える感じ境界線に忍んだ感じ生きてる生きてる眠れない夜に支配されてだんだん研ぎ澄まされて行く感じ誰かにそっと生かされている感じ信号がいつまでも変わらない感じ空に羊が流れる感じ犬が並んで競う感じポメラが秋に恋する感じプリンに猫がダイブする感じ主審がコインを投げ出す感じスキにハートがしびれる感じ路面に雨がキスする感じハンカチに星が落ちる感じ詩的に冬が集まる感じ陽気に落ち葉が触れ合う感じ波間に竜が輝く感じドアノブに夜がこぼれる感じ真理が行間をさまよう感じ指がためらい震える感じコルクが飛んで転げる感じ皆が前列を避けて行く感じ冷たい視線に燃える感じあ...眠れない夜のビート

  • 悩めるカフェ

    「気がつくと巡回しちゃってるんです。同じことばかり。うそと憶測ばかりが乱れてる。知りたいことより知らなくていいことの方が前に出てくる。ニュースっていったい何なんでしょうね。だけど終わりがない。スクロールには終わりがなくて、気がつくと小刻みに時間を盗まれっちゃってる。消しても消しても立ち上がるリンクが疎ましい。何だか時間がもったいなくて……」「何かに恋することですよ」迷宮カフェには悩み多き人が集まってくる。それと同じほどに優秀な聞き手もいて、話し手と聞き手は自然とマッチングする。心を開いてつぶやいてさえいれば、その声の隣には親身になって聞いてくれる人が必ず現れるのだ。「私はいつも間違われてばかりだ。私にマイクを向けてどうするの。期待されるような人間じゃないのに……」「食べ終わった食器は速やかに返却なさい。だ...悩めるカフェ

  • みそ汁と朝

    みそ汁3杯。それは朝に湧いた諺だった。1杯で終わらせるには、愛が強すぎる。おかずがなさすぎる。きりが悪すぎる。シンプルなみそ汁が好きだ。カレーやおでんを作る時のように、鍋にどんどん詰め込めば、いくらでも具を増やせないことはない。けれども、それでは主題がぼやけて朝がすっきりとしないのではないか。みそ汁の軸はあくまで汁にあるはず。豆腐とわかめ。それくらいで十分だった。みそ汁3杯で私は完全に目覚めることができた。ここに3つの感謝を捧げさせていただく。「まずはみそ汁そのものへ。みそ汁のある星に生まれたことに感謝を!」「続いてこの平和な朝に。明日もミサイルが飛んできませんように!」「そして、おかん。あなたへ!」「誰がおかんやねん!」みそ汁と朝

  • 霊能将棋(ウーバー杯)

    夏の終わりに女神は現れた。いつものように棋譜並べをしているといつの間にか彼女が盤の向こうに座っていたのだ。中盤の難所で最善手を求めて道を見失いかけていた時、すっと彼女の指が伸びて思わぬ駒を前に進めた。それは棋譜には現れない妙手と言えた。一手の意味をたずねると彼女はゆっくりと棋理の深淵について語り始めた。「私が見えますか?ついに覚醒しましたね」ほとんどの時間、彼女はただ座っているだけだった。けれども、ここぞという局面で指が伸びて、斬新な一手を指してくる。(決まって人間には浮かばないような手だ)その一手が私にとってどれだけ衝撃的だっただろう。暑かった夏は終わり、一雨毎に私は強くなっていくことを感じた。並の棋士と比べ私は一手深く読める(みえる)ようになっていた。十分な成長を実感すると独りの時間を取り戻したくなっ...霊能将棋(ウーバー杯)

  • 迷いの中に見つける一手

    理想は初手がぱっと閃いて終点まで見えること。逆に終点がぱっと見えて初手が閃いてもいい。瞬時に見えて読み切れることがベストだが、閃かない時もある。そういう時に多いのが、初手にふらふらと指して(時にはとんでもない手を)、そのままそれが敗着となってしまうことだ。詰めチャレは詰将棋とは違うので、初手や正解が1つと決まっているものではない。だが、実戦と同様に「この手だけはない」という手は当然あり得る。正しい終点が見えなくても、完全に間違った終点/方向が見えることも、実は重要なヒントになるのだ。「こうすると王手が続かない」「この形だけは駄目」そこに気づけば、その逆を選ぶこともできる。選択を迷っているならチャンスはあり、本当にわからない時には迷うこともできないのだ。不詰になる筋を切って正解に近づくことができれば、たどり...迷いの中に見つける一手

  • 眠れない夜/伝わらない君

    眠れないというだけで苦しいやや苦しいとても苦しいただ苦しいやたら苦しいひたすら苦しい苦しみは形を変えてどうしてここから逃げ出せよう「わからない」わかってる2秒で眠れる君には謎めいたことだよ眠れない夜/伝わらない君

  • ドラゴンの呼び方

    窓の向こうに少年はいた。大地につながれた自転車にまたがって、ひたすら体を動かしていた。音もなく車輪は空回りしている。誰かを待っているように少年は動かない。だんだんだんだん速くなる。やがて、目を閉じると少年は見知らぬ町にいる。鎖から解き放たれたように、少年の体は軽くなっている。興味深い噂を拾い集めて洞穴に向かう。松明一つの光を頼りに地下深いところまで下りていくとドラゴンが待っている。「今度は誰だ?またこれがお望みか?」ドラゴンは大事に宝箱を守っている「誰の差し金だ?名もなき勇者?知らないねということは私の敵ではない!」少年はドラゴンの炎の中で世界の大きさを知る「またおいでよ強くなってからくるといい助っ人も一緒につれておいでそのくらいがちょうどいいんだ私はここで待っているから」(年も取らずにね)目を開けるとド...ドラゴンの呼び方

  • 終わらない詰将棋

    眠れない夜にチャレンジが始まる初手は?軽いのがいい?厚いのがいい?基本は数の攻めだ焦りから数が数えられない3手詰を誤った21手詰を詰めたのに初手は?第一感が何もない焦りから空っぽだ玉は下段に?包むように寄せよ?実戦はセオリーのない世界単純すぎて見逃すことがある1手詰を見落とした眠れない夜にチャレンジは続く落ち込んでいる時間はない僕は2300?また下がった歩か利くの?合駒がない?先に銀を捨てる桂を捨てて空間を作る竜を切る追っていく大海に出て玉はつかまらない負けました詰将棋にも投了がある一間竜はまずまず竜は引っ張っても止めを刺せる馬の力をまだ操り切れないライバルは遙かに高い2700?あり得ぬ数値700問解いた?どんな次元?眠ってる?終わらない詰将棋

  • からくりカラアゲ

    注文が入り、レジを開けて唐揚げを作った。その横から別のお客さんが入り込んできた。「お金が2枚飛んでいったんです」レジの中を探るとおかしなところに4枚の札があった。「4枚ありましたよ」札を手早く引き取ると女は笑顔もなく足早に去っていった。(しまった!)彼女は自分のとは言わなかった。なのに僕は思い込みから札を彼女に手渡してしまったのだ。これはすっかりやられてしまったぞ。だが、冷静に考えてみると自分を責めるよりも、このシステムを疑うべきではないだろうか。そうだ!システムがわるい!レジの中で作るシステム!横から入れるシステム!なんじゃこりゃー!「帰らないのですか?」「専務が今日あげると言ってます」そんな無茶苦茶な……。「徹夜したんだから帰るべきですよ」みんな疲れ切った顔をしていた。帰ろうよ。帰ろうよ。僕は社内を訴...からくりカラアゲ

  • 表現者たちの角不成 ~似て非なるもの

    76歩34歩22角不成!その瞬間、あなたは何を思うだろうか。(あるいは思わないだろうか)対局が進むとわかってくる。ああ、この棋士は不成の人なのだ。恐らくは完全に必要不可欠でない限り、角を飛び込む時(ほぼ同何かの時)には不成だということがわかってくる。成っても成らなくても取る一手ならばほぼ(結果は)同じ。一方で駒は強く使うことが通常だ。角と馬ではその差は歩とと金ほどではない。たとえ取る一手だとしても、歩を不成で使うケースは希だろう。また、銀、桂、香の場合は成れば必ず強くなるとも限らない。不成が現れて何か自然でないと感じるとすれば、圧倒的に角なのだ。たった3手目で実現できるのも角のみだ。ソフトの桂不成などはおなじみだ。どう考えても成った方がいいと思える場面でも、不成を選択する場面がある。(取り返す一手ならば同...表現者たちの角不成~似て非なるもの

  • アート・オークション

    「40万!」「45万!」「250万!」「3万!」「80万!」「90万!」「32万!」「落札!」その辺のおばさん作『値引きを待つ三毛猫』を落札したのは、ビジネスマン風の男だった。オークションはすぐに再開される。「100万!」「150万!」「2000万!」「3000万!」流石は人気アーティストの作品だ。価格があっという間に跳ね上がった。「5000万!」「800万!」「300万!」「260万!」「落札!」一時は夢のように跳ねたが、結局は落ち着くところに落ち着いた。神出鬼没の近代画家ウェルチェ・ジョンソンの作品『通り雨と壁際の魔術師』は260万で取引が成立した。「15万!」「落札!」謎のモダン・アーティストとして人気のトミー作『ジャズピアニストの覚醒』が即決した。いよいよ僕の作品の出番だ。「200万!」「250万...アート・オークション

  • 友達対局

    決勝戦はたっちゃんとの対局になった。大優勢を築いてからのたっちゃんの指し回しの緩さときたら目を覆うばかりだ。彼女ができてから棋風が変わりすぎじゃないか。あんなに尖っていたのがうそみたい。まあそれでたっちゃんが幸せならば別にいいんだけどさ。厚みは崩壊、攻撃は空回り、あれよあれよという間におかしくなって、大駒4枚は僕のものになっていた。控えめに言って必勝形。だけど、よすぎると逆にどうしていいかわからない。決め手がみえないとだんだんと焦ってくる。(本当に必勝?)遡って形勢判断、自分の棋力に疑いの目が向かい始めるともう相当に危うい。たっちゃんは盤上に無造作にボールペンを置いた。盤の周辺が急にざわついたような気がした。ボールペンが盤上に新たな角度を生んで錯覚を生み出しやすくなっていた。筋違いにいたはずの角が今は55...友達対局

  • 夏の忘れ物

    Aメロでドキュンとなった詞を抱く9月の君とサンボマスター(折句「江戸仕草」短歌)夏の忘れ物

  • 名プロデューサー

    価値観の相違を突いて赤と黒はぶつかっていた。ゆるゆるとした論客たちに握られて緑は折れそうだった。現代詩の歪みに引かれて青は迷子になりかけていた。ミミズの散歩と揶揄されることも日常だった。「1つになろうよ」右脳に現れたコンダクター。あなたは透明なケースを用いて分解寸前だったものを見事に束ねてみせた。それは単なる喧噪を未知の創作へと変えるほどの一撃だった。あなたを父と呼ぶことにしよう。父の功績は語り尽くせぬほどあった。見て見ぬ振りをして過ごす奴。知らんぷりをして笑っている奴。人の振りを真似て自分の手柄にする奴。死んだ振りをしてすべての野生をやり過ごそうとする奴。寝た振りをして自分だけ指名を逃れようとする奴。わかった振りをして何もわかってない奴。そのすべてを見過ごすような父ではなかった。「1つになろうよ」厄介な...名プロデューサー

  • 荒天(~銀冠の復活)

    天の気まぐれに対抗しようとしてさした折り畳み傘は15センチしか伸びなかった。叩いてみても無理に力を込めても、どうしても駄目だった。どこかにのびしろを置いてきたのだろうか。気が動転した時は、あり得ないような記憶も掘り下げてしまう。「もう捨てれば?」代わりの傘をさして帰れと女は言った。置き傘はいくつもあったけれど、僕は気がすすまなかった。(させないことはない)委縮した傘を突き上げて帰り道を歩き出した。普段と同じように普通に雨は凌げそうな気がした。すれ違う人の視線にも特に違和感は感じなかった。少し歩いたところで腕が痛くなった。ずっとまっすぐにさしているからだ。寝かせたり傾かせたりすることができない。やはりいつもとは違って、さし方のバリエーションがなさすぎた。突然、天空からの攻撃が激しさを増した。とんとんと歩が上...荒天(~銀冠の復活)

  • ライン虫(夜明けの詩)

    悪夢から醒めた時、太陽はなく真っ暗な倉庫の中だった。交信はなく、さほど空腹でもなかった。覚えがないというだけで、きっと長い罰の中にいるのだろう。闇を見続けている内に、徐々に目が慣れてきた。「思ったほどじゃない」来た瞬間はそう思えただけだった。真っ暗でもなければ、倉庫でもないのかもしれない。あらゆるものに輪郭があることがわかると、生きている世界に手触りがあるように思えた。少し歩き回る内に、すぐに本は見つかった。手にした時には恐る恐るだったが、開くと少し心地よかった。覚えることには戸惑ったが、覚え始めるとくせになった。ラインを引くとパッと明るくなった。光の周りで何かが舞った。虫だ。ラインを引く度に虫たちがついてくる。まるで指揮者になったようだ。覚えることが多すぎる。大事なことがあふれている。記憶に定着させるた...ライン虫(夜明けの詩)

  • ずっと隣に

    昔々、あるところにおじいさんが住んでいました。角には食堂があり、その隣には郵便局、その隣にはセブン、その向こうにはローソン、その隣にはファミマ、その隣には駄菓子屋、その隣にはローソン、そのまた向こうにはファミマ、その隣には銀行、その隣には歯科医、その隣にはヤマザキ、その隣にはローソン、その角には食堂があって、その隣にはファミマ、その隣には喫茶店、その隣には家具屋、その隣にはミニストップ、その隣にはスーパー、その隣には書店、その隣にはローソン、そのまた向こうには商業施設、その中にはケンタッキー、その隣には理髪店、その隣には珈琲館、その隣にはローソン、その向こうにはフードコート、その向こうには100円ショップ、その向こうにはエスカレーター、その向こうには駐車場、その向こうにはクリーニング屋、その隣にはローソン...ずっと隣に

  • 4色ペン人格

    ブラックではライトな自分が動き出す・辺境の星までたどり着いた意味を見失って絶望しかけた時にホンダ・カーブは肩と肩が激しくぶつかる音を聞いた。サッカーだと?(あるいはここでは球蹴りとも呼ばれていた)それは紛れもなくフットボールの一形態だった。あるじゃないか!出場機会を求めるカーブの前にデュエルの王が立ちふさがる。しかし、ようやく希望を目にしたカーブの前では子犬同然だった。「エンドゥーを3回抜くとは!」登録期限まであと3日の出来事だった。・インクがかすれ文字が出なくなる。(カチカチ♪)やむなく私は次のカラーに移ることにする。レッドでは恋愛感情に傾く・魔女の呪いによって蛙にされた王女は刺さるような視線を感じていた。好きなの?思われても思わない。種が違うの生まれた時から私はハイブリッド死のようにしつこい瞳その思い...4色ペン人格

  • チープ・ノベル

    おじいさんは短いお話を書いた。書いては投じ、マネタイズされたサイトでささやかな収入を得ては柿の種を食べ、日々を生きていた。おじいさんのお話は、冬休みのようだった。あるいは、花火のようだった。「それにしても高い」肉が魚が野菜がお菓子が、スーパーに買い物に行く度に、おじいさんは物が高くなっていくことに驚きながら、逆に値崩れが止まらない自分の小説のことを思った。前回は1万字のお話だったが、どうにも納得できず問い合わせるとすぐに答えが返ってきた。「再計算した結果301円は正しく計算されていることが判明しました。最初の見積もりはあくまでも目安とお考えください。実際の報酬はその時々の需要と供給のバランスによって変化いたします。この度はご期待に沿うことができずに申し訳ございません」正しいのなら仕方ない。おじいさんは気に...チープ・ノベル

  • 優しい人

    線路が細いから電車も細かった。前に座る男の投げ出した脚が僕のお腹を蹴った。僕は遠くに飛ばされた。閉ざされたポメラの上は村の外だった。魔物たちがうろついている。心強いのは勇者の顔が見えたから。魔物が雄叫びをあげる。勇者が剣を振り下ろす。血は流れない。勇者は独特の振りによって人間離れした愛情を植え付ける。憎しみはない。仲間仲間仲間。あるのは何よりも強い仲間意識。それは伝説にある和解の剣に違いない。仲間がいっぱい増えていく。勇者は広く仲間を募っている。魔物たちは減りはしないが誰がそれを気にするだろう。性質も関係性も日々光ある方に導かれていく。成長は望まない。それは優者のほんの小さな寄り道だった。優しい人

  • 魔法の壷

    「ぶん殴ってやりたい」私はT氏への不満を漏らさずぶちまけました。「ことある毎に嫌みばかり言ってくるのです。しかも私にだけ目の敵のように言ってきます。他の人に対しては善人顔でどうやらいい人で通っていうようです。それが余計に腹立たしい。顔を見るのも嫌になってきて何かの拍子にかーっとなって殺してしまうかもしれません」「それはよくないですね。そういう不可解な人というのは、どこに行ってもいるものです。遅かれ早かれそういう人は消えていきます。あなたが直接手を下せば、新たな悲しみとまた別の恨みを買うことになります。それは損というものです。何もしなくともいずれ消えていくのだから、あなたがすべきことは関わらないようにすることです」女は親身になって私の相談に乗ってくれました。そして、私の前に1つの壷を置きました。見た感じは何...魔法の壷

  • 超速の銀/一局の将棋

    (この銀が間に合うだろうか)次の一手を求めるために先の先を読まなければならない。無数の物語の中から今の自分に必要なものを読み分け、最善を上書きしていく。読みには何より速度が重要だ。湧き出るイメージを束ねて取捨選択するには、速度がなくては。ゆっくり読んでいては脳波に隙が生じる。後悔、奢り、丼、うどん。様々な邪念が介入することを防ぎ切れない。最悪の場合、睡魔に襲われてしまうだろう。厄介な追っ手を振り切るためにも、読みは速度なのだ。ヒョウよりも速く私は銀の周辺を読み耽っている。物語が途切れた時、読みは記号になる。時に意味を失い、曖昧になり、未知そのものとなり、不安に打ち勝つ意志を問いかける。必ずしも、読むほどに勝利に近づくというわけでもない。ならば、読みは楽しみでもあるのだ。人間に読める範囲は限られているのでは...超速の銀/一局の将棋

  • 風の旅人(アドベンチャー・マインド)

    「隊長、この風では無理です」もの凄い風だった。進もうとしても押し戻される。どんな屈強な脚を持っていても前進を阻まれる。希にみる手強い風が辺り一帯に吹き荒れていた。「それでも行こう。先が待っている」賢明なリーダーなら立ち止まるところかもしれない。隊長は足止めを好まなかった。他の隊員も進めるものなら進みたいと思う心は一つだった。「駄目です。強すぎる!」想像を絶する風は、今までの敵のレベルとは次元が異なっていた。歩いても歩いても進まない道がある。未来の風景を開こうとしているのに、時間はまるで止まっているようだ。「でも楽しいね」抵抗に逆らって進もうとするのは、楽しいことだった。生の感覚がこの瞬間に研ぎ澄まされている。私たちの冒険とは、そういうものだ。「下がってる!」進んでいないどころではなかった。歩くほどに押し戻...風の旅人(アドベンチャー・マインド)

  • 橋の下の釣り人

    教室を離れて町へ出た。吸い込まれるように橋の下へ降りた。釣り竿の前に釣り人は座っていた。「いつから釣っているの?」「生まれる前からじゃ」老人は生まれる前から釣り人だった。前世で釣り残した獲物があるのだと言う。執念が輪廻して川の前に導いた。生まれるよりも早く、生まれてからもずっと、釣り人は釣り人だった。「何が釣れるの?」「何も……」老人のバケツは空っぽだった。「ここは駄目なんじゃないの」「そうかもしれん」「他にもスペースあるのに」老人は朝からずっとその場所にいる。「自分から動く方がずっと楽じゃ」「だよね」「本当なら自分から川の中に飛び込んで網を振った方がずっと話が早い」「だったら、なぜそうしないの?」老人は長い竿を指しながら答えた。「わしが釣り人だからじゃ」「ダイバーじゃないんだね」「そうとも。あんたは何を...橋の下の釣り人

  • センター・サークル

    審判が高々と投げたコインを追って見上げた。ボールかピッチかその選択を大事とみるか、些細なこととみるかは人それぞれだろう。公正を期すためかあまりに高く投げたために、すぐには落ちてこない。芝よりも青い夜空に吸い込まれそうになる。この時間はただ待つだけの時間だろうか。何かを学ぶにはとても足りないように思える。だけど、学びは時を引き延ばしてもくれるはずだ。何をするにも僕は人よりもずっと時間がかかる。本を手元に置いて一度も開くことなく寝かせてしまう。楽しみは先にあると思えれば、少し気が楽になる。新しい楽しみの候補が先に現れた時、ようやく手元にあるものに触れることができる。今かどうかがいつも定かではない。問題は解くよりも前にずっと時間をかけて読み込まなければならない。問題の本質を見極めて、密かに隠されたテーマがそこに...センター・サークル

  • 夏はまだ終わっていない

    夏が終わったなんてうそだフェスはまで弦を弾いてもいない花火はまだ打ち上がってもいないかき氷はまだ固まってもいないお化けはまだ顔もみせていない盆踊りはまだ振り付けてもいない海はまだ満ちてもいない証拠はいっぱいそろってるだから夏はまだ終わっていないんだ!「終わりましたよ。あなたが詩を書いている間に」「うそだ!詩なんて一日で書ける」「いいえ。あなたは躊躇っていた」「すぐにでも書けるんだ」「いいえ。あなたは夢ばかりみてた」「ここでも書けるぞ」「いいえ。あなたは書き出せなかった」「まだ終わってない!」「いいえ。あなたが終わらせたのよ」「これから始まるんだ!」「みんなあなたの自作なのです」夏はまだ終わっていない

  • 君しかいない

    AIの弾いた弦に泣かされた僕の涙を返してほしい偽りで升目を埋めて歩き出す放課後僕が薄れ行く道夢すぎて押しつぶされてしまうなら小さく刻み刻み叶える現実に退屈したらもう一度みたいよドリフもしもシリーズ「好きでした」遠い昔に過ぎ去った僕らの愛はもはやメルヘン廃れても廃れ切らずにそこにあるフードコートが僕の所在地新聞を読み耽るのがマスターか「いらっしゃい」ほら君しかいない君しかいない

  • ミッドフィルダーの活躍

    手についていたはずの職は時代と共にかすれ、気づいた時には何もなかった。職場は予告もなく消滅し、貯金はあっという間に底をついた。こうなることがわかっていれば、もう少し何とかならなかったか。後悔している場合ではない。困り果てた私の目にネットの広告が飛び込んできた。「あなたにもできる!簡単な仕事です」もはや深く考える余裕はなかった。顔写真と電話番号を送信すると契約が終わり、翌日私は現場についた。仕事内容は簡単なものだった。指定された場所で待っていて届いた荷物を足で蹴って箱に入れるだけだ。私は言われた通りの業務を淡々とこなした。数時間やれば、それなりの額になる。なかなかいい時代ではないか。夕ご飯のことについて想像しながら、私は目の前に届いた荷物を蹴飛ばした。荷物は順調に箱の中に入る。ピピー♪笛が鳴って、現場のセン...ミッドフィルダーの活躍

  • 背中の眠り人

    眠れない夜を越えたらたどり着く夜明けは夢にすがってみたいカテゴリーどこへ向かうか定まらぬ君のポメラがうとうとタッチ眠れない夜のnoteに瞬いた詩情あなたは今を生きてる「つまらない」100分過ぎて気がついた映画ラストは背を向けてみる覚醒は遠い夜明けか閉ざされた君のnoteにとまるカナブン幻の読者にあてた歌を編む波打ち際に夜明けの歌人眠れない夜が朝まで伸びる頃詩の神さまとチキンラーメン背中の眠り人

  • 普通の味

    部屋にいると先生が何をしているのかとたずねてきた。僕はタオルの用意やお菓子の整理をしているのだと答えた。切符はまだ買っていなかった。切符などいつでも買えるからだ。「今行け!」先生は今すぐ切符を買いに行くように言った。窓口に行くと半分明かりが消えて閉まりかけていた。自販機はまだ大丈夫だ。切符を買おうとしたがどれを買えばいいかわからなかった。「みんなは何を?」「博多でしたよ」窓の向こうの女は答えた。券売機に戻って博多を押すと43000円だった。(うそだ!)どう考えても高すぎる。僕は食堂に駆け込んだ。同級生らしき男を捕まえて訴えた。男はとても冷静な態度だった。そんなもの高くも何ともない。僕ならいつも買っているよと言った。ぞうすいだけではすぐにお腹が空いた。僕はたこ焼き屋に駆け込んでたこ焼き6個を注文した。「味は...普通の味

  • ひまわり畑

    羊の睡魔真心の昭和ワッフルのソーダ割理解者の豆柴爆音のサンタ魂のブーケ毛玉の呪文ひまわり畑

  • レインボー・ゴール

    胸についたバッジ(俺の主治医)が黄色から激しい点滅に変わり、そのペースは徐々に速さを増していた。ついにこの日がきたか……。色が赤になった瞬間、俺の引退が確定する。ピッチ袖では交代の準備が進められていた。あの番号は。(やっぱり俺か……)遠のいていく意識の中で、俺はバイタリティ・エリアに入っていく。新しいサイドバックから最後の贈り物。トラップはできない。精一杯に伸ばした足の先が微かにボールに触れて押し出した。その瞬間、ちょうど飛び出して来たキーパーの股を抜けた。(間に合うな!)戻って来たディフェンスは追いつけず、そのままゴールに入った。奇跡か、故障か、胸のバッジの点滅は止まり、青になっていた。俺の体は弾むように軽く、頭は冴え切っていた。交代のカードは取り下げられたようだった。俺はボールを取ってセンター・サーク...レインボー・ゴール

  • 魔法の駒

    「どうしても勝ちたい」ずっとそれだけを考えて修行を積んできた。四間飛車から始め三間にまわり、他にもあらゆる振り飛車を試した。勝ち越すことは適わなかった。次は思い切って居飛車に転向した。矢倉、相掛かり、角換わり、横歩取り。あらゆる戦法を試してみたが勝ち星を積み重ねるには至らなかった。そして、今日はとっておきの雁木でも負けてしまった。今更振り飛車党に戻るわけにもいかないし……。万策尽きるとはこのことだ。もう戦法のせいにすることはできない。「師匠。僕はもう田舎に帰ります」(僕は将棋が弱いんだ)「ちょっと待った!」師匠は即座に待ったをかけ、「この駒を使って研究しなさい」と助言をくれた。無駄とは思ったが気がつくと『大山全集』を並べていた。指先が今までにないほど軽かった。これはいったい……一度並べただけで棋譜が脳裏に...魔法の駒

  • コンビニ消失

    歩くことの目的は、自分を自分から引き離すことだ。知識を吸収したいわけでも、歩数を稼ぎたいわけでもない。いっそあらゆる意味から解放されたかった。(テロップをつけて意味を押しつけられるのはうんざり)喧噪は言葉から意味を奪い去ってくれる。意識はゆっくりと薄れ、歩いているのではなく大地に運ばれていく感覚に切り替わると、懐かしい揺りかごの中にいる。口の中を魚が泳ぎ始めた瞬間は、猫になることもあった。箱の中に手を差し入れた瞬間、恐怖が感情の上に立っている。初めての瞬間は、最も警戒を要する。不測の事態に備えて、進むよりも引き上げることを主に考えて、ゆっくり、ゆっくり……。何もしてこない。どうやら敵対するものではないらしい。警戒が薄れるにつれて徐々に大胆に深く広く、触れる。これはきっといつかの。指先の運動が輪郭をとらえ始...コンビニ消失

  • ゲリラ役員会の分解

    「急に1000万カットなんて生活が成り立たんよ」「そうだ!そうだ!」「ビール1杯いくらすると思ってんだ!」「ビールなんて飲まなくていい」「そうだ。ワインにしなさい!」役員会は荒れに荒れた。「ワインの方が高いだろうが」「それはものによるんじゃないの?」「そうだ!そうだ!」「パチスロ1日いくらになると思ってんだ?」「ギャンブルじゃないか。いくらでも足りませんよ」「1000万も突然すぎるでしょう!」「そうだ!そうだ!」役員会は大荒れとなった。1000万の不満が会議室全体を揺るがしている。意見をまとめることは至難の業である。「ハンバーガー1ついくらだと思ってるんだ!」「食パン食べてる方が健康的ではないですか」「そういう問題じゃない!」「あいつら牛丼食わせとけよ」「そうだ!職員のボーナスカットしろ!」「そうだ!バイ...ゲリラ役員会の分解

  • 猫ばばファミリー

    発注はセブンスターが1だった。1とは、1箱を指すのかそれとも1カートンを指すのか。1箱ではあまりにも軽すぎるが、切羽詰まって1箱に焦がれるという事情も想像はできる。結論は出ないまま僕は河川敷に行った。「セブンスター」「620円」煙草売りの青年はぶっきらぼうに言った。1についての常識をたずねようとしたが、疎ましげな顔に思えやめてしまった。煙草を手にしたので安心して、草むらの上で仮眠をとった。しばらく休んでいたが、突然土砂降りに見舞われたので慌てて逃げ出した。勢いで上がった坂はほとんど直角だったと後でわかった。上ることはできても下りることはかなわない。自転車という乗り物の矛盾を知って悲しくなった。これを上ったの……。真下をみれば恐ろしいほどに遠い。他に道もない。レスキュー隊を呼べばどれだけ取られるか。どれほど...猫ばばファミリー

  • プロローグ1

    「背中をかいていると腕は伸びていくものさ。書き続けていくことが大事なんだよ」老人が手を伸ばすと雲を軽々と突き抜けた。「ほら、月の石だよ」プロローグ1

  • ワン・ウィーク、ワン・ドリブル

    ジレンマのブランコに乗ったまま僕はボールを運んでいる。ゴールしたい自分。ゴールを忘れるほど遠くへ行きたい自分。ずっといたい自分。(何も不自由はない。だけど満足しているわけではない。恐ろしいほどに心地よい瞬間がある。例えようもなく空っぽになる瞬間がある。ここではないと思える自分がいる内に、動き出さなければならないのではないか)離れなければならない自分。もっとゆっくりしたい自分。ゆっくりしてられない自分。捕らわれた時の中で引き裂かれていく自分。触れていなくてもいい。意識の片隅に見えるゴールが、自分を強く引き留めようとしている。ボールは疲れない。コーチが高らかにパスの尊さを説いていた。いいかパスはな、ヒョウの背中だって越えられるんだ。瞬時に100メートル先へ届けることもできる。パスは空を飛ぶことだってできる。い...ワン・ウィーク、ワン・ドリブル

  • 帽子の男

    「帽子のツバが好きでね」シャッターの下りた店先で男は言った。「ツバのない帽子ってのもあるんですかね?」「ツバは影を作り出す。俯いて見れば子猫をお菓子を恐竜を昆虫を復讐を昨日を夏を……。光の加減と自分の立ち位置次第で作り出せない影はない」それはイマジンだと男は言った。「ツバはサインを作り出す。触れたり離したり。また、その触れ方。触れる回数。他に触れる場所との組み合わせによって、高度なサインを作り出すことができる」それは送信だと男は言った。「ツバは涙や感情を隠す。だから、ツバは私のような弱い人間にはなくてはならない。また、あらゆる創作活動を営む者にとっても欠かせない存在だろう」それは護身だと男は言った。男は帽子のツバが日々の暮らしにどれほど役立つかを力説した。「理想の長さってあるんですかね」「右手中指よりも長...帽子の男

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