美しくありたいと願ったことはないか。願いは罪にはならない。けれども、ある一点の美学のために破滅へと向かって行くこともある。ありのままを描くより少しだけずれた世界を創造したい。俺は路上の似顔絵師。人々の顔を描いてはささやかな収入を得ている。スパイスに飢えたシェフ、記憶をたどる秘書、明日へと向かう夢追い人。俺のキャンバスの前で足を止める人は様々だが、みんなどこかで未知の自分を探しているのではないだろうか。「できました」一心不乱に描いて手を止めた。改めて自分の描いた顔を見てみるとどこかで見覚えがあった。日常の中ではない。そうだ……。「あなたは!」昨日観た映画の中に出てきたチンピラだ。「ちょっと撮影の合間でして」言葉遣いのしっかりとした実に感じのいい青年ではないか。俺はずっと俳優という職業に強い憧れを持っていた。...ムービー・スター