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眠れない夜の言葉遊び https://blog.goo.ne.jp/junsora

折句、短歌、アクロスティック 詩、小説、妄想、言葉遊び、クリスマス詩、ショートショート、マナティ、夢小説、散文詩

クジラうえ リクエストした 水族館 マダイがうたう スローバラート

ロボモフ
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2008/12/07

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  • 振ってこそ命

    あいつが振れば俺も振る。あいつが振らなければ、勿論俺の方が振るまでだ。棒銀でも穴熊でも左美濃でもミレニアムでも、何だって俺は振ると決めている。鬼殺しでも、筋違い角でも躊躇わない。条件に左右されるようでは本物のアーティストにはなれないし、例外を作る暇があるなら美濃囲いを築きたいと思う。銀冠の小部屋を用意して敵玉を寄せきるビジョンを描いていきたい。俺はこの四間飛車道場できっと成り上がってみせる。雨の日も、嵐の日も、お祭りの日も、マラソンの日も、花火の日も、どんな日も俺は動じない。世間の浮き沈みに惑わされることなく、俺は常にノーマルな四間飛車の姿勢を貫くと決めていた。(四間飛車のない人生に意味などない)きっとあいつだって同じハートを持っているに違いない。約束を2時間過ぎて、あいつはまだ道場に現れない。俺は封じら...振ってこそ命

  • 今日いち-2025年4月4日

    コツコツ続けてるのね今日いち-2025年4月4日

  • 旅人の道

    本当のゴールはどこかわからない。目的地は小刻みに設定されていた。「おいで」ここまでおいで。曲がり角が旅人を吸い寄せる。もう少し行ってみようか。数時間歩いて体力は限界に近づいていた。疲れに打ち勝つのは強い好奇心だった。歩いているという自覚もなく旅人は歩いた。天から伸びた糸に操られているようでもあった。角まで来ると視界がパッと開けた。似ているような今までとはすべて違うような……。「おいで」ずっと先の見えないところから、また新しいささやきが聞こえる。(未知が好きだった)旅人はまだ歩みを止められない。・改行が彼方へ送るミステリー一行先は白鷺の国(折句「鏡石」短歌)旅人の道

  • 家族電話

    睡魔へ接続される道を歩いている内に迷ってしまった。道は激しく渦巻きながら、知恵をたずねているようだった。鍵は街の風の中にありげだった。手を貸してくれたのは行くあてのない猫、猫が猫を呼んでまた猫を呼んだ。雪だるま式に厄介なことになって、20グラムだった知恵の輪は、1キロを超えた。彼らは助ける振りをしながら、適当な輪を足していったのだ。鍵のレスキューに頼ると特急料は2万にもなるという。その時、僕が惹かれていたのは、むしろ石焼き芋の節の方だった。猫のおせっかいを振り切ると、繰り返されるしゃがれ声の方に近づいていった。「熱いよ」鍋づかみはあるかとおじいさんは言いながら、石の中に潜ったきり見えなくなった。運転席の電話が鳴る。どういうわけか僕の家族からだった。皆で一人暮らしの心配をしている様子だ。「風呂はあるか」ある...家族電話

  • 気まぐれ全集のち猫のターン

    おじいさんが本を閉じるとドーンと大きな音が鳴って、猫が反転した。母は小松菜を切っていた手を止めた。トラックの真ん中でアスリートは足を止めた。役者はお芝居を止めて台詞を呑み込んだ。芸人はボケを止めて固まった。陣が割れて戦は止まった。すべてが中断し、一貫性が失われる。世の中の動きに構わず、おじいさんは本を読んでいた。しばらくすると気まぐれに本を閉じた。(ドーン!)おじいさんが集中しないから、世界が返る。母はピアノを弾いている陸上選手は水をかいて泳いでいる役者は本格的に厨房に入った芸人は小説を書いているある者は敵に寝返って戦争は終わった1つの仕草で世界を変えてしまう、おじいさんの本ときたら、なんて重いの!猫は反転した今にこっちに向かってくる・かみさまのカートがかけた三日月の一夜にかかる書のギアチェンジ(折句「鏡...気まぐれ全集のち猫のターン

  • 桃船長の贈り物

    昔々、案外なところにおじいさんとおばあさんがいました。こんなところにはおられんわい。そう言っておじいさんは山に芝刈りに行きました。何かと理由をつけては芝刈りに行くおじいさんでした。ずっと二人ではいられないわね。おばあさんはそう言って川に洗濯に行きました。それは尤もな理由でした。川に着いてからおばあさんは、大事なものを忘れてきたことに気がつきました。今この瞬間に、世界で一番大事なものと言えるのは何か。それは洗濯板でした!いったいこの世界で洗濯板以上に大事なものと言えるものがあったでしょうか。(今という時間に限って言えば)どんぶらこ♪どんぶらこ♪その時でした。上流から洗濯板に桃が乗ってやってきたのです。「これは幸いだ!」おばあさんは、心の底から天に感謝しました。桃船長を脇に置いて休ませると、おばあさんは洗濯板...桃船長の贈り物

  • 明るい芝刈りスクール

    昔々、あるところにおじいさんがいました。おじいさんはやたらと山に芝刈りに行きました。暇さえあれば芝刈りに行くのでぐんぐんと芝刈りが上達して、気がつくと芝刈り達人になっていました。「また来たか」ある日のこと、犬はおじいさんを見つけて駆け寄りました。「どうか弟子にしてください!」「よかろう!」そうしておじいさんの教育が始まりました。「馬鹿もんが!芝はこっちじゃ!」「わん!」「それじゃ100年かかるわい」おじいさんは慣れない教育に手こずりながらも、どこかうれしげでした。「わん!」「よし、その調子!」そうしてよい子だった褒美にタコボールを与えました。ある日のこと、今度は猿がおじいさんに寄ってきました。「どうか弟子にしてください!」「よかろう!」おじいさんはまた快く迎え入れました。「馬鹿もん!芝はこっちじゃ!」「ひ...明るい芝刈りスクール

  • バランスの崩れた夜

    空腹のあまり眠れずに僕は家を飛び出した。開いているのはもはやうどん屋だけだったが、うどん職人が不在のために食べられるのはカレーだけだった。カレーは一瞬で食べた。食後のコーヒーのためにコンビニに立ち寄ったが、運悪くメンテナンス中だった。マシンの上にパンダが乗ってアイスクリームを食べている。自分の家がわからなくなったので外泊することにした。宿ではチェックイン待ちの列ができていた。もう真夜中だ。スタッフの多くは交通違反で捕まって厳しい人手不足だという。僕は勝手に採用が決まり、フロントでしばらく働くことになるという。眠れない夜がまだ続きそうだった。バランスの崩れた夜

  • つじつま合わせのよっちゃん

    昔々、あるところにつじつまを合わせるのが上手な若者がいました。人々は彼のことを、つじつま合わせのよっちゃんと呼んで、頼りにしました。ある日、街で難事件が発生してたちまち大混乱に。どんな名探偵も手に負えないという事件でした。手がかりは1つとしてみつからないのに、容疑者ばかりが多すぎるのです。そこによっちゃんが駆けつけると、ぴたりとつじつまが合いました。「さすがはよっちゃんだね!」「よっちゃんが来た途端につじつまが合うんだから」「よっちゃんがいてくれてよかった」よっちゃんにしてみれば、そんなことは朝飯前でした。ある日、街で大喧嘩があった時のことです。どんな力自慢の男がいたとしても、まるで喧嘩を止めることができません。発端がわかってないことに加え、あまりに声が大きすぎて近寄ることも困難だったのです。そこによっち...つじつま合わせのよっちゃん

  • 今日いち-2025年2月16日

    今から懐かしいの歌っちゃうよ今日いち-2025年2月16日

  • 道の明かり

    昔々、あるところに道を行く若者がいました。若者は来る日も来る日も道を探して歩き続けていました。ある日のこと、若者は歩いている道の途中でふと立ち止まり思いました。「この道はいつか誰かが来た道では?」歩き始めた朝には感じられなかった思いが、若者の足を重くしてしまいます。もっと別の道がなかったのか。初めの一歩を間違えたのではないか。様々な疑念が渦巻くともう真っ直ぐな目で道を見つめることもできませんでした。明日は新しい道を行こう。若者は自分に言い聞かせます。ある日のこと、若者は歩いてきた道の途中でまた立ち止まり思うのでした。「この道はいつか誰かが来た道じゃない?」またいつかの思いが道の前に立ち上がりました。それは若者に前進することの意義をたずね苦しめます。本当の自分の道はどこかにあるのだろうか。(ないとは死んでも...道の明かり

  • 小さな裏切り

    海苔としては最高級君の旨さはよく知っている随分高値になったけれどたまにはいいさああなんてことだ!君って前より縮んでるじゃないか!流石に気づくよ(きっと5、6ミリ小さくなってる)値上がりしたのはわかった上で手に取ったのだけどこっちは……どういうこと?・安定と権利の上を床にして裏金を得るふしだら先生(折句/短歌揚げ豆腐)小さな裏切り

  • 最後の一口

    最後の一口を楽しみにしていた。それは希望そのものだった。つまりは力の源ということだ。おじいさんはお椀に顔を寄せた。そして、豚汁の中に残った最後の一切れの豚肉を、箸でつまんだ。その瞬間、おじいさんは受け入れ難い現実に直面した。そうだ。すべてはおじいさんの夢だった。耐え難い裏切りにおじいさんは我を忘れてしまうほどだった。「こりゃ玉葱じゃないかーい!」叫びながらおじいさんはちゃぶ台をひっくり返した。希望が大きかっただけに、自らをコントロールできなくなっていたのだ。何事かと周囲の人々がかけつけた。それ以来、おじいさんは大層危険だとされ、国家機関の厳しい監視の目が向けられることになった。最後の一口

  • 惑星観察

    我々は宇宙の片隅で一つの惑星を発見した。求めていたのは水と光があること。そして、知的生命が存在することだ。幸いそこは水の惑星と呼べるほどに青かったし、光るものも認められた。残る一つは……。我々は彼らに気づかれないように細心の注意を払いつつ、近くのテーブルに着いた。彼らの食事を観察するためだ。「あれは何?」「曲がっているぞ」「頭か?」「尾か?」「脱いだ」「引き裂くぞ!」「生死不明…生死不明」「動いたぞ!」「口に入れた!」「エイリアンの食事だ!」我々は身震いしながら恐ろしく奇怪な光景を見つめていた。向き合っているが、食べる以外はとても静かだった。どうやら彼らの間に言葉は存在しないようだ。「恐ろしい惑星よ!」「友好診断…ダーク、友好診断…ダーク」「推奨…回避、緊急、緊急、緊急……」「隊長!この星は危険です」・海...惑星観察

  • ネズミの商店街

    うとうとしかけると決まってネズミが出た。尻尾をつかもとすると手をすりぬけてしまう。もう許せない。頼りの猫はいない。ネズミを追って夜の街に出た。信号を無視して急行するパトカーが追っているのは、どんな凶悪犯だろう。ネズミは足跡を残しながら夜を通過する。商店街。自転車屋さん、花屋さん、パン屋さん、寿司屋さん。それぞれ深夜営業には求められる価値があるから。ネズミは寄り道もせずに寿司屋さんに駆け込んだ。「ネズミを追って来ました」「こんな顔ですかい?」振り返った男は、ネズミそのものだった。「そいつはこんな顔でしたかい?」どいつもこいつもこういうことか。常連客を取り仕切っているのは、もはやネズミそのものなのだ。まな板の上に輝くあれは?何でもいい。それより包丁を持つあれの方が問題だろう。「お客さん、枕はいるかい?」ああ、...ネズミの商店街

  • 今日いち-2025年2月5日

    「素敵なセーターね」「そう?ずっと着てるからね。自分では何とも思わないな。君だっていい毛並みじゃない」「だから、君が好きなの」「僕もさ」今日いち-2025年2月5日

  • ミルクの重さ

    軽い気持ちで手にできたわけではなく大事に大事にと取ってあったあれからどれほど経ったのかハッとして我にかえるもうそんなに……真夜中にみつけた期限切れのミルクをココアの上に注ぎ入れる・暗黒の計算式に特化して裏金を得る不断の努め(折句/短歌揚げ豆腐)ミルクの重さ

  • 熱造刑事

    「不思議ですよね。どんなコンピュータが作った写真よりも先輩の描いた絵の方が効果的だなんて」「不思議なもんか。ありのままじゃないから伝わるんだよ」「そんなもんっすかね」先輩に描かれて逃げ延びた犯人はいなかった。風の便り、猫の横顔、鴉のうわさ、ばあさんの小言、車輪の軋む音、時代のうねり、落ち葉のくしゃみ……。一度先輩が筆を手に取った時、どんな些細な情報からでも完璧と言える似顔絵が完成する。そのタッチの自然な運びは、何度見ても惚れ惚れとする。ひとかけらの手がかりをかき集めることからすべてが始まる。最も重要なのは、刑事としての聞く力に違いない。だからこそどんなに可能性の低そうな場所でも、私は先輩の後について歩いて行く。この街の治安を守るため、いかなる妥協も許さない。私は心より先輩のことを尊敬していた。世界が外出自...熱造刑事

  • メイド・イン・ヒューマン

    私の前でうそは通用しない。すべては可視化されているということだ。何も語らなくていい。私はあなたの脳波を直接読みとることができる。あなたの望みを聞くのに言葉なんかは必要ない。そう。ただ見つめてくれれば、私はすべてを理解できる。「おかえりなさい」会話モードは一応オンのままになっている。(それはまだ昔の名残と言えるだろう)「ただいま」わかってる。人間はまだ言葉が恋しいのだ。・AIがおかえりなさい待ってたの今からお風呂?熱いのが好き?(折句「エオマイア」短歌)メイド・イン・ヒューマン

  • 急激なターン

    昔々、あるところに時間を持て余したおじいさんとおばあさんがいました。仕方ない、山に芝刈りにでも行くか。そう言っておじいさんは山に芝刈りに行きました。何を隠そうおじいさんは芝刈りの達人。知る人ぞ知る芝刈り名人だったのです。おじいさんと同等の実力を持つ者は、その辺の街にはいないとされていました。仕方ない、川に洗濯にでも行くか。そう言っておばあさんは川に洗濯に出かけました。おばあさんは山よりは川の方を愛していました。どんぶらこ♪どんぶらこ♪おばあさんが一休みしていると、小舟に乗って桃が流れてきました。ペッ♪おばあさんは、川につばを吐いて不満を表しました。桃はそのまま下の方に流れていきました。どんぶらこ♪どんぶらこ♪続いて小舟に乗ってキャベツが流れてきました。ペッ♪おばあさんは、またもやつばを吐きました。キャベツ...急激なターン

  • 川辺の紙芝居

    昔々、まだテクノロージーが発達する以前の惑星には、おじいさんとおばあさんがいました。宇宙がはじまってまもなくすると、おじいさんは山に芝刈りに行きました。そこは昔らしく機械に頼らない手作業が必要で、大層体力を必要としていました。その頃、おばあさんは清く正しく川に洗濯に出かけていました。川辺にはおばあさんよりも先輩のおばあさんがいて、紙芝居の最中でした。周りにはたくさんの子供たちが集まって、紙芝居ばばあの声に耳を傾けていました。おばあさんは、紙芝居の邪魔にならないように、少し離れたところで洗濯を始めました。「カメは真っ先に動き始めました。他の誰よりも早く動き出さないと勝負にならないとわかっていたからでした。ウサギは慌てることなくまずは準備運動から始めました。自分の力を出しさえすれば勝てるのだけれど、そのために...川辺の紙芝居

  • オートマチック(引き裂かれる前に)

    「3人になれ!」リーダーの声が響く。遠くにあったものが歩み寄ってくる。離れたところにいたものがつながる。もしも策もなく突き進めばすぐに壁にぶち当たって、意図せぬところでバラバラになってしまうだろう。(誰だって独りにはなりたくない)「5人でまとまれ!」数がどうであれ集合する力は変わらない。衝突と交錯の過程を潜り抜けて共感性が融合を始める。見えないところにあったものが打ち解け合って縁を構築する。リーダーはどこからともなく発生して、その声の基にミッションは完遂される。彼らはずっとそのような訓練を積んできたのだ。・改行を重ね伸び行く見せ物に意味はないのと主張する歌(折句「鏡石」短歌)オートマチック(引き裂かれる前に)

  • アンチエイジング・スクール

    お年玉を使うのは今ではない。それは頭上高く持ち上げて膨らませていくものだ。いざという瞬間がきたら、その時に一気に爆発させてみせるのだ。(何かを成すためには壮大な準備が必要だろう)賢さ、野心、向上心。そういったものは微塵も感じさせてはならない。大切なのは、秘めたまま生き延びること。合い言葉は「大丈夫です」。失敗しても、あやまちを犯しても、責任を持つことはずっと先だ。世間は未熟なものにはやさしい。「仕方ないね」若い人だから……・お年玉2千万円貯め込んで生き抜く知恵は少年のまま(折句「鬼退治」短歌)アンチエイジング・スクール

  • マウスタンゴ

    部屋の中にまで容赦のない冬が押し寄せていた。頼りのエアコンを動かす手段は、リモコンしかない。しかし、どうしたことかリモコンの中は空っぽだった。ちょうど引出に残っていた電池を入れ込もうとして、おじいさんは顔を曇らせた。「4じゃないのか?」(ならば5ということか)心配はいるまい。電池なら引出の中に腐るほど蓄えがあったはずだ。単2、単3、そして鬼のように蓄えてあるのが4だった。まんべんなく揃っていなければ意味がない。多様性が確保されてないじゃないか。この役立たずの引出めが!おじいさんは激情に駆られてちゃぶ台をひっくり返そうとした。その時、ちゃぶ台の下に黒く走る影のようなものを、おじいさんは見た。小さな勇者がおじいさんのピンチを救うために、駆けつけたのだった。マウスは自らのお腹の中を割って見せた。「僕のを使いなよ...マウスタンゴ

  • 今日いち-2025年1月23日

    ごめんばたばたしてんのよね今日いち-2025年1月23日

  • 今日いち-2025年1月21日

    あったまってきたかい?今日いち-2025年1月21日

  • 出汁の匂い

    眠れない夜、出汁の匂いに誘われて家を出た。こんなところに蕎麦屋ができたのか。こんな店の扉が開いている。準備中。おばあさんは、一生懸命蕎麦を打っていた。心得はなかったが、芯は熱く燃えるところがあった。僕は厨房に押し掛けて手伝いを申し出た。「今終わる」おばあさんは、気遣い無用と断った。終わるのはうそだ。作業はきっと始まったばかりだし、人手は足りていない。(自分の世界に入れたくなかった)というのが、本音ではないか。頑固者だな……。おばあさんは、ずっと蕎麦を打っている。だから、今日も眠れそうになかった。出汁の匂い

  • 音信不通

    「メロンパンが好き」「メロンが好きなんだ」「違うよ」「苺よりは好きなんでしょ」「メロンパンはパンよ。言葉は後の方が重く意味を持つの」「まあ普通はそうかもね」「漬け物石は石よ」「みんなそうかな?」「そういうものよ」「例外はないかな」「私を信じられないの?」「あの角まで行こうよ」「何があるの?」「パン屋さんよ」「違ったみたい」似たような角はどこにでもある。だからパン屋はよく消える。コーラを買って戻ってくると彼女はいなくなっていた。こういう終わり方も夏らしい。コーラの泡が加速をつけて空に吸い込まれていく。もうすぐ雨が降るみたいだ。雨音は書店の中にまで追いかけてきた。僕は目的もなくカテゴリが交錯する通路を歩く。列車が行った後も彼女の声だけが残っている。じゃあまた近い内に……。腰が浮いてもドアまではたどり着かない。...音信不通

  • 今日いち-2025年1月16日

    君たちを心待ちにしている人がいるよ今日いち-2025年1月16日

  • 今日いち-2025年1月14日

    エスカレーターないな今日いち-2025年1月14日

  • 河童の助け

    昔々、あるところに芝刈りに熱心なおじいさんと健やかなおばあさんがいました。おじいさんはいつものように山に芝刈りに出かけなければなりませんでした。わしの他に誰が芝を刈る者がおろうか。わしの他にいったいどこの誰が刈るじゃろうか。しばしおじいさんは考えてみましたが、おじいさんはわしをおいて他にないという結論に行き着くのでした。わしが芝刈りに費やした時間や努力といったものは、その報酬に見合うものだったろうか。とおじいさんはまた別の自問自答を抱えながら芝刈りに出かけて行きました。おばあさんは清く正しく川に洗濯に出かけました。どんぶらこ♪どんぶらこ♪おばあさんが川で洗濯をしていたところ、上流から何やらかわいげなものが流れてきました。それはみるみる近づいておばあさんの足下にまでやってきます。まるで近づきたいという意志を...河童の助け

  • 今日いち-2025年1月13日

    学ぶ姿勢は美しい今日いち-2025年1月13日

  • 爆走おじいさん

    横断歩道の前に立ち止まったおじいさんを無視するように、車はスピードを落とすことなく走りすぎた。「透明人間かい」おじいさんは、自身の存在に哀れみを重ねみた。その時、おじいさんの体は無意識の内に走り出していた。エンジンは燃えるような怒りだ。目にもとまらぬ速さで車道を突き進むと交差点を4つ越えた先で、ついにその標的を捕らえた。車体にとりついたおじいさんの姿を見ると、ドライバーは驚いて窓を開けた。おじいさんは、すかさず先の横断歩道の件について問い詰めた。「渡る意思を確認できなかった」男は苦しげに答えた。元から確認する意思などなかったからだ。おじいさんは、免許証を取り上げると男の車をひっくり返した。おじいさんにとっては、それが今日のちゃぶ台だった。爆走おじいさん

  • 笑えない夜を笑い飛ばせ

    あなたが表情を崩すあなたがお腹を抱えるあなたが笑うから僕らはきっと面白い笑えない夜を笑い飛ばせ

  • 瞑想将棋

    一巡した思考が空白へと行き着いた。「下手な考え休むに似たり」そのような諺が浮かんできた。次に指す一手がそれを証明してしまうことになるのでは。そう考えると恐ろしくて震えそうだった。僕は正座から胡座へ組み直した。もう何度目かわからない。1時間を超えた辺りから集中力は途切れ始めていた。そこから先は読みの迷路に迷い込んでしまったようだ。何が本筋なのだろう……。第一感。遙か昔にそんな言葉を聞いた覚えがある。既に道を誤ってしまったのかもしれない。そう考えると更に恐ろしくなる。この道は本当に読むに値するのだろうか。冷静に形勢判断をしてみると自分に大きく劣っているところは見当たらない。最善手を指せば必ず開ける道があるはずだ。81升ほどの世界にどれだけの変化が眠っているというのだろう。それを掘り起こすことが私の仕事ではない...瞑想将棋

  • 今日いち-2024年12月26日

    しっかり食べて乗り越えなくちゃ今日いち-2024年12月26日

  • どこにもかけれない

    スピーカーの真下は嫌だ(特に12月は最悪だ)できればカウンターは嫌だ真横に電話する人がかけたら……コの字型カウンターだったらいきなり会議が始まる恐れもあるポメラを叩く振動が板から横へ伝わってしまうかもできたら窓もほしいできれば両側を挟まれるのは嫌だできるだけ角っこがいいこだわって店内を回っている内にだんだん席がなくなっていくどこでもはまれる人はいいなどこにもかけれない

  • のびしろ

    君の居場所はみつかった?のびしろ

  • ブルー&ブラック

    グラスの泡が天に昇っていく。これは時の粒だ。一気に飲み込めないから、じわりじわりと効いてくる。時給が遡って半額になり、目の前が暗くなった。シートが倒され僕は仰向けになる。焼けるようなタオルを残しておじさんはどこかへ消えてしまった。顔を蒸して何の意味があるだろう。けれども、そこには無言の圧力がかかっている。異議を挟むな。素直な子供であれ。自分の顔に被さるものに触れることができない。静かな時間が過ぎていく。皆は元気にしているだろうか。僕がいなくても世界は大した影響を受けない。おじさんは戻らない。もう僕のことなど忘れているのだろう。慣習に逆らえなかったばかりに、僕の夢は実らない。後先を考えずに払いのけたい。来世の僕はもっと大胆でありますように。呪われた理容室の中で僕は5年生になる。硝子越しにしゃっくりについて話...ブルー&ブラック

  • サイレントリバー

    昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山に山賊狩りにおばあさんは川に洗濯に行きました。かごいっぱいの洗濯物を抱えてようやくのこと川に着いたおばあさんは、せっせと洗濯に励みました。洗濯板に汚れた服をごしごしと擦り付けては、1つ1つの汚れを心を込めて落としていくと、しつこくこびりついた油汚れも、芝の上で転んでついてしまった時のしつこい緑色の汚れも、みるみる綺麗になっていくのでした。「汚れの数だけ生きてきたのだわ」どんなにしつこい汚れに対しても、おばあさんはこれっぽっちの悪意も抱きませんでした。そればかりかそれを今まで一生懸命生きてきたことの証だと思って、その1つ1つを愛おしく思いながら立ち向かっていたのでした。しつこくついた緑は、いつか芝の上で転んでしまった時の真緑でした。けれども、...サイレントリバー

  • 今日いち-2024年12月11日

    できたてを届けるよ今日いち-2024年12月11日

  • 今日いち-2024年12月9日

    体の芯からあったまるで今日いち-2024年12月9日

  • 今日いち-2024年12月7日

    これが師走の空気ね今日いち-2024年12月7日

  • 紙屑ピッチャー

    「未払い金が多数あります。このままでは明日にも通信ができなくなります。今すぐ上のURLをタップして確認してください」通信の遮断は困る。僕は疑うことなくリンクをタップしてその足で街のコンビニに向かった。コンビニには先に関係者の人たちが来ていた。「この度はどうも」「どういう意味です?」「そう深刻に構えることはありません」そこで僕の記憶は途絶えるが、肩に何らかのチップを埋め込まれて地球人サンプルとして扱われていたような気もした。「待ちなさい」あなたは騙されているんだ。コンビニ店員が僕の後を追って駆けてくる。待合室のオルゴールはどこかで聞いたようなメロディーだった。どこか……、僕は記憶のメロディーの切れ端に沿って歩いている。楽しげな犬、手をつなぐ老夫婦、ローカルなハンバーガーショップ、ランドリー、フェンスの向こう...紙屑ピッチャー

  • 今日いち-2024年12月5日

    じっくり考えてみようか今日いち-2024年12月5日

  • スローウォーカー(&かきつばた折句)

    昔々、あるところにゆっくりと歩くおじいさんがいました。おじいさんがゆっくりと道を歩いているとその隣からプールへ向かう小学生が追い抜いて行きました。「プールか」わしにもあれくらい小さかった頃があったものだ。しばし昔を振り返りながら、おじいさんはその歩みを止めることはありませんでした。おじいさんがゆっくりと道を歩いていると、後ろから来たレースへ向かう亀が追い抜いて行きました。競るものがいることは素晴らしいことだ。それは醜い争いとは違うのだからね。「がんばれ!」おじいさんは亀の背中にそっとエールを贈りました。しばらくすると後から富山の薬問屋の一行がやってきて、おじいさんを追い抜いて行きました。「お気をつけて」どれだけ追い抜かれようとも、おじいさんは少しも取り乱すことはありませんでした。それからまたおじいさんはゆ...スローウォーカー(&かきつばた折句)

  • 空席誕生

    いい席がないいつもの席とっておきの席あそこも埋まってるよそ行くかあきらめて歩き出した帰り道に空席が!さっきは埋まっていたはずなのにありがたい僕の一番好きな席が空いた!空席誕生

  • シャッフル・バス

    アウェー・ゲームは旅から始まる。バスに揺られながら俺たちは決戦に向けてそれぞれに気持ちを高くコントロールしていく。音楽、映画、ゲーム(あいつゲームの中でもサッカーしてるよ)、読書。座席での過ごし方にはそれぞれの個性が現れる。目を閉じて静かに夢見るミッドフィルダーもいる。何をしようとも長時間同じ姿勢を続けることはコンディションに悪影響を与える。気分転換を兼ねてバスは途中休憩に入る。道の駅での楽しみはつまみ食いだ。お菓子、ソフトクリーム、たこ焼き、団子、お煎餅……。様々な誘惑が手招いている。中でも中華そば!これにはかなわない。ご当地の味が俺の舌を魅了する。それにはゲン担ぎの意味もあった。麺のような腰の強いフィジカルを保てますように。スープのような濃密な選手生活を送れますように。ふぁー、やっぱり旨かねー!小腹を...シャッフル・バス

  • 助演オーディション

    「何か特技はありますか」求めに応じて歌い出す者、踊る者、楽器を弾く者、空手の形をみせる者、剣玉をする者、物まねをしてみせる者。みんな周到に準備してきたようだ。今回のオーディションにかける意気込みが感じられる。「何か特技をみせてもらえますか」いよいよ僕の番がやってきた。「何もありません!」わからないことはわからない。できないことはできない。無理せず、背伸びせず。それが我が道というもの。「高いところから飛び降りたりできます?」「できません」猫ならみんなができると思うなよ。「おでんとか上手に食べれます?」はあ?誰に言ってんだい!「できませーん」それから似たようなリクエストが続き、正直僕は答えるのもうんざりだった。何か違うね。全然違うね。「できませーん」できません、できません、できませーん!「ああ、そうですか……...助演オーディション

  • うさぎと亀のプロローグ

    抜かれて行く刹那、亀は修行に費やした日々のことを思い出していた。石の上で目を閉じて精神性を高めた。登山家のグループの後を歩いて、粘り強さを鍛えた。氷の上のダンサーについて芸術性を学んだ。路上プロレスに飛び入って、根性を身につけた。すべては見違えるような亀になるために。それでも本番のレースでは、思惑通りにはいかないものだ。犬に抜かれた時には、地力の違いを思い知った。長年の習慣が違う。リスに抜かれた時には、フィジカルの違いを思い知った。バネが違う。馬に抜かれた時には、次元の違いを思い知った。生まれも育ちも違う。(とても追いつけない)自分だけではない。「私が伸びた分、他も伸びているのだ」大会のレベルの高さを悟りながら駆けていると、ちょうど亀の横に並んだ選手がいた。眠っているはずのうさぎだった。何としても最下位に...うさぎと亀のプロローグ

  • ドッグ・ターン

    絵に描いた餅が現実味を帯びないでいた。タッチを変えて描き続ける。餅が駄目なら対象も変えてみる。うどんを手打ち風に描いてみるが、硬すぎて食べられない。和から中華へと筆を伸ばす。基本的なチャーハンを黄金色に描いてみたが、どこまで行ってもパラパラにはならない。つまりは、食えたもんじゃない。「絵じゃ食べれないのがわかったでしょ」いや、まだまだだ。「これは僕の腕の問題だ」やることが間違っているとは思わなかった。みかん、バームクーヘン、焼きそば、エビフライ、ビーフカレー、マカロン、ペペロンチーノ、親子丼、シュークリーム……。その内に口に入る素材が現れると見込んでいたが、どうも上手くいかない。何が悪いというのやら。「まだわからんか、あんたは」すっかり分からず屋扱いだ。(はーーー)大人のため息を聞かされると切なくなる。「...ドッグ・ターン

  • ガジガジ流

    昔々、あるところに山に芝刈りにばかり行くおじいさんと、健やかなおばあさんがいました。おじいさんは、毎日のように山に芝刈りに行くと、これでもかこれでもかと芝を刈ってばかりでした。これでもかこれでもかと刈り続けられては、普通ならば音を上げるようなところですが、芝はそれでも負けずに逞しく生えてくるのでした。「ほどほどにね」とおばあさんが言うとおじいさんは少し機嫌を悪くしました。「そんなこと言わんでもええ」ぼそぼそとおじいさんは言いました。「駄目とは言ってません。ほどほどに」おじいさんは黙って山に芝刈りに行きました。おばあさんは、清く正しく川に洗濯に行きました。おばあさんは、川に着くと洗濯物を広げました。風呂敷いっぱいの汚れ物です。汚れはどれもこれも頑固なものばかりで、まるで凝り固まった大臣のようでした。おばあさ...ガジガジ流

  • 友情出場

    「あとは頼むぜ!」「任せとけ!」ピッチを去るボランチから俺はキャプテンマークを引き継ぐ。ん?留まらないぞ。ちゃんと留まらない。「ホッチキス持ってきて!」「駄目だ!手でどうにかしろ!」四苦八苦しながら、俺はどうにかキャプテンとなってピッチに駆け出して行く。リードしている試合をそのままちゃんと終わらせること。それが遅れて入ってきた俺の役目だ。若くはない。だけど、数え切れないほどの経験がある。苦い経験から学習を重ね、俺はより確実性のあるプレーを磨き込んできたのだ。「痛い!いたたたたたー!あいつにやられた。10番だ!キラーパスに刺された!」俺はピッチ中央で倒れ込む。笛が鳴ってプレーが止まり、審判が駆けつける。「VARを!しぬー!しぬー!ちゃんと見てくれ!故意だ!絶対故意だって!」判定はグレー。カードは出なかったが...友情出場

  • 対局室と最新家電

    「はっ、何か対局室に飛んできました。あれはスパイ衛星か何かでしょうか?」「何をおっしゃいますやら。そもそも何を盗めますか?」「そうでしょうか」「あれはですね、最新ロボット掃除機のドルンバくんです。彼は空気中の微細な塵を除去しつつ、畳の上もきれいにしてくれますから」「ほーっ、これはなかなか愛嬌があって、部屋の中も和みますね」「かわいくてその上で頼りにもなる優れものですね」「畳の上はきれいな方がいいですものね」「そういうわけです」「ドルンバくん、ごくろうさまです。この後も、引き続き名人戦生中継をお楽しみください」対局室と最新家電

  • ダブル・タイトル

    長年書きあぐねていた小説が、その気になって頑張ってみるとあっという間に完成した。バンザーイ!今までのあぐねは何だったんだ?アイデア、ストーリー、キャラクター、オリジナリティー……。どれも今までで一番いいと言えた。問題はただ1つ、小説のタイトルだけだった。タイトルを疎かにすることはできない。タイトルは小説の顔だ。あらゆる読者のイメージを最初に刺激し、思わず手が伸びてしまう。荷物で塞がった手も、ポケットに奥深く逃げ込んだ強情な手も、引き出してしまう。そんな強い顔が必要なのだ。A案「」B案「」見つめれば見つめるほどにわからなくなる。どちらもいい!どちらも同じように好きで、同じほどこの小説に相応しい。そんな2つの顔から私は目が放せなかった。寿司もいい、焼き肉もいい。迷っている内にチャーハンになる。そのようなことは...ダブル・タイトル

  • 鶴への恩返し

    傷ついた鶴を助けたことなどすっかり忘れていたが、美しい女が訪ねてきたので、私は快く家に入れた。「あの時の恩を返しにきました」鶴は女の体で言った。贈り物をしたいので仕事場を1つ貸してほしいという。そして、自分が仕事をしている間は絶対に扉を開けてはならないと言った。「約束してください」「わかりました」そして、鶴は女の体で食事をしたり雑談をしたりする以外の時は、仕事場にこもって作業をした。そんな日々がしばらく続き、私はもやもやした気分だった。ある日、私は誘惑に負けて扉を開け、そして見てしまった。鶴は自らの羽根を抜きながら着物を編んでいたのである。その表情はどこか恍惚としたものに見えた。約束を破ったことがばれたらえらいことになる。私は鶴に気づかれないように、そっと扉を閉めた。後日、女は完成した着物を広げ私に見せて...鶴への恩返し

  • 空も飛べるはず(マイカーライフ)

    青いドットが空を輝かせる。青はいつまでも青のままだ。車社会はどこへ行ってしまったのだろう。おじいさんは懐かしい歌を思い出すように、あの頃のことを頭に浮かべてみる。空想を遮るような奇声はいつもの侵入者だ。「しっ!」邪魔者のない駐車場を心行くまで駆け回る猫たち。時には敵と、時には友と、時には風のつくり出す魔物たちを追って。愛情をみせるでもなく、おじいさんはただ追い払うのみだ。「遊び場じゃないぞ!」猫はおじいさんの威嚇をいつも甘くみている。慌てて逃げ出すようなことはせず、駆けっこが一段落してからゆっくりと散っていくのだ。「これはどういうことだ!」ある朝、おじいさんの駐車場が高級車いっぱいに満たされていたのだった。それは奇跡のような光景にみえた。「おばあさん……。これは?」「あら、忘れたの?夕べおじいさんが描いた...空も飛べるはず(マイカーライフ)

  • 判定は喜びの後に

    (ベンチに座ったり立ったり。グラブをつけたり外したり)そんな面倒くさいことは他の奴に任せておけばいい。僕は最後に決定的な仕事をするだけだ。ここぞという時に、監督は僕の名を告げる。最大の信頼に応えるための準備は整っている。塁を埋めたランナーたちが帰る場所を求めた時、ついにその時が訪れた。軽く素振りを済ませると僕はバッター・ボックスに入った。投手はストライク・ゾーンにボールを投げ込んだ。そこで勝負ありだ。的確にミートした打球はぐんぐん伸びて軽々と外野を越えた。たった一振りで人々に最高の興奮を届けられることが証明された。ホームラン♪さよならのランナーのあとに迎え入れられた僕は、主役として胴上げされた。今日もヒーローは最後にやってきたというわけだ。スタジアムの観衆も拍手と歓声をもって僕を称えている。ありがとう、み...判定は喜びの後に

  • ゼロ同期

    突発的なエラーが起きて自分の中がゼロになってしまった。もう1人の自分に会うために職場に向かうとちょうど銀行に行ったとこだという。ATMで自分を捕まえて同期を図る。「しばらくそのままでお待ちください」同期が完了したが、僕はまだゼロのままだった。キャッシュカードが返却口で悲鳴を上げている。残高は0になっていた。何かがおかしい。何者かによって自分が盗まれてしまったのかもしれない。だが、まだ保険はかけてあった。もう1人の自分を捜し、川へと急いだ。釣り人たちは水面をみつめながら夕暮れの風の中に佇んでいた。その中の1人に自分を見つけて近づいた。すぐ傍まで行っても彼は気がつかなかった。不安になってバケツをのぞき込むとやはり空っぽだった。釣り糸の先端ももはや無になっているに違いない。念のために釣り竿を伸ばして同期を図った...ゼロ同期

  • 雑談マスター

    縄跳びに入っていくのは難しい。いつどのような顔をして入るのか。自分が入ってもいいのか。それさえも謎だ。(生きている間は謎だろう)そう言えばあれだね。あの時はそうでした。あの人はまたそうではないようでした……。方向はどこにも定まっていない。テーマはパッと湧いてすぐに消える。引っ張りすぎると煙たがられる。変えすぎても疑われる。間に適度な共感と笑いが生まれることが望ましい。生まれながらの才能か、生きている内に培われるテクニックか。何もないようなところから、あまりにナチュラルな調子で、あなたは言葉を操り始めた。・鰓多きトークを捨てて詩にかけたクジラは青のサンゴマスター(折句「江戸しぐさ」短歌)雑談マスター

  • 真夜中の正着(95%の合駒カオス)

    ガタガタと窓を叩くような音ではっとして目を開けた。着信か?悪い予感がしてすぐにかけ直した。03?「折り返せないナンバーです」(アプリを起動しますか)折り返せないということは、きっとそうする必要がないということだ。直感が示す結論を強く信じた。蒸気機関車が部屋の方に近づいてくる。真夜中なのに……。雨か?いや雨降りだったのは昨日のことだ。それも違う。機関車はこの街に走っていない。存在しない機関車はたどり着く場所を持たない。触れた覚えのないリモコンがテレビをつけた。(まだ続いている!)局面はすっかり終盤戦になっていた。朝には強固な囲いの中に守られていた王は、今では草原の孤独の中にあった。それは思ってもなかったこと?あるいは読み筋の中にある遊泳か。棋士の表情には何も現れてはいない。(きっと色々とあったのだろう)追い...真夜中の正着(95%の合駒カオス)

  • カー・ナンセンス

    危険!危険!「3分後に装甲車と衝突します」「止まって!」「停止した場合、隕石の直撃を受けます」「右折だ!」「右折禁止区域です。右折できません」「いいから曲がれ!」「右折できません」「それならバックだ!」「もどれません」もどれません、もどれません、もどれません……「脱出だ!」「確認中……」「俺を脱出させろ!」「脱出のためのスペックが不足しています」危険!危険!「誰かー!誰か助けてくれー!」・AIが飛ばす倫理の焦点に車がみせる左折信号(折句「江戸しぐさ」短歌)カー・ナンセンス

  • 総括の棋士

    「私の出演はここまでとなりました」「これまでの人生を振り返ってどうでしたか?」「そうですね。自然豊かな星にたまたま生まれまして、人間としては5歳の時に初めて駒を持つことになりました。山あり谷ありでしたがどうにか棋士になることができました。我々棋士というのはですね、お互いがライバルでもあり同志でもあるというところがありまして。心強い仲間たちに支えられてここまでやってこれました。今度生まれ変わってもですね……。ちょっと待ってください。私は何を言わされてるのでしょうか。ただ単に、今日の出番が終わるというだけですから。これは振り返りすぎでしょう」「これは大変失礼いたしました。先生にはまだまだ活躍していただかなければ」「危うく引退に追い込まれるところでした。少し油断してましたね」「棋士人生はまだまだ続くということで...総括の棋士

  • 記憶の1行ノート

    「ごゆっくりどうぞ」ゆっくりするとは、寝かせておくことだ。触れ続けてはならない。ファスト・フードのようにがっついてはならないのだ。・道を変えてみると随分と早く着いて驚いた。そちらの方が近い道(近道)だったのだ。当たり前のようにいつも歩いている道が、実は回り道だった。本当は三角形なのに四角形と思い込んでいたので、ずっと気づかなかったのだ。ぬーっと行ってひゅーっと行けばいいところを、かくかくと行っていたのだ。知らない間、随分と時間を損してしまった。しかし、たくさん歩けたと解釈すると得をしたとも言える。・おはようも返ってこない。そんなことくらいで億劫になる。無力感に包まれて、情けない気持ちになる。合わないのでは?ここではなないのでは?場違いなのでは?だんだん身動きが取れなくなる。予感だけで書き出してみたノートは...記憶の1行ノート

  • 大恐竜時代

    人との距離が近すぎて疲れてしまった。私は思い切って転職を決意した。あまり人と関わらずに、人のためになる仕事。そんな仕事があるかどうかはわからない。けれども、納得がいくまで探すつもりだった。「ここには失敗した猫が多く持ち込まれます」訪れたのはリメイクの会社だった。「挫折した猫、躓いた猫、猫になれなかった猫たち。猫は好きですか」「まあ」「持ち込まれた不完全な猫を恐竜に描き直すのが仕事です」「恐竜ですか?」唐突に恐竜が現れたので驚いた。「みんな捨てられないのよ。消せないんだよね。だから、こういう受け皿が役に立っているのです」「えーと、1つきいていいですか」「はい」「猫にしたら駄目なんですか」「それでは失敗の上書きになってしまう。元の描き主に自分の無力さを思い知らせることになってしまいます」「あー」そういうものだ...大恐竜時代

  • 日だまりのライブ

    「みなさんおはようございます。本日も朝のひと時をかわいい鳥たちの映像と共にお送りしたいと思います。早速ゲストをご紹介いたしましょう。鳥観察界の重鎮、内田さんです。今日はよろしくお願いします」「どうも。よろしくお願いします」「内田さん、今日はまたさわやかな朝になりましたね」「そうですね。大変喜ばしく思っております」「だいたいこの時間ですね」「ええ」「いつもの時間、いつも決まってここに鳥たちがやってきます」「鳥たちはルーティンがしっかりしてますからね」「ちょうどこの木の下辺りが日だまりになるんですよ。画面の向こうのみなさんにも伝わってますでしょうか」「鳥たちはみんな日だまりを見つけるのが上手です」「さあ、そろそろかと思われます」「もう声が聞こえてきそうですね」「日だまりというのは、鳥たちにとってはどのような存...日だまりのライブ

  • アスリートの介入

    昔々、あるところに太っ腹のおじいさんと絵に描いたようなおばあさんがいました。おじいさんは鬼のように山に芝刈りに、そしておばあさんは清く正しく川に洗濯に行きました。おばあさんは、しばし太っ腹じいさんのことを忘れ、洗濯に没頭していました。そうしているとおばあさんは瑞々しい魚のように自分らしくあることができるのでした。どんぶらこ♪どんぶらこ♪上流から美味しげなフルーツが流れてきました。りんごかな?いいやそれにしては大きすぎる。ぶどうかな?いやいやそれにしては素朴すぎる。いちごかな?いいやそれにしては生意気すぎる?パイナップルかな?いいやそれにしては不自然すぎる。「そうだ!あれは桃だ!」おばあさんが声に出して叫ぶと驚いた小魚たちが川から飛び上がるのが見えました。一仕事を終えてちょうど小腹も空いてきたところ。こいつ...アスリートの介入

  • からくりタイム

    恐ろしくありがたいベッドが与えられたので戸惑っている。今日はここで眠ってもいい。いつもとは違い思い切り腕を広げ、足を伸ばすことができる。しかし、それはあまりに無防備な形だ。もしも今日それを許してしまったら、明日からの自分はどうなってしまうのだ。(今日くらい、一日くらいいい)その一度のために、元に戻れなくなってしまうこともあるのだ。それでもこれは1つの機会であるように思われる。少しだけなら構わないではないか。明日に憂いが及ぼうとも。「まあ、いっか!」僕はベッドにダイブする。改札があり階段があった。歩道があり人々が歩いていた。雨が降っていて明かりがあった。木に埋もれかけた信号機があり商店街があった。ベーカリー・ショップがあり、近くに住んでいた。その風景がいつか暮らしていたところなのか、夢の中につくられたものか...からくりタイム

  • ミステリー・エゴ

    エゴの実が世界を救うと強く信じられた。最初の愛を問えば、どんな生き物でも自分自身へかえるものさ。我を愛し、我の友を愛し、我の手を愛し、我の家を愛し、我の町を愛し、我の飯を愛し、我の書を愛し、我の歌を愛し、我の子を愛し、我よ我よと……。我から我へ平和への拡散がどこまでも続くように思われたが。どこかで育て方はまちがわれた。・エゴの実をおっとっとっとまき散らし一面に極悪新世界(折句「エオマイア」短歌)ミステリー・エゴ

  • 突然カフェ

    その周辺だけ極端に明るく輝いていた。祭りかと思って近づくと、新しくカフェができていた。昨日前を通った時には、何もなかったはず。カフェは突然できたのだ。店の前には、大きな花が並んでいる。どうして花なのか?たぶん、花でなくてもいいのだ。何でもいいのではないか。けれども、何でもいいというのは、最も難しい。定番のものを出しておくのが、無難だろう。例えば、ドラマがそうだ。医者か弁護士かを出しておけば、大きく外れもしないだろう。壁がきれいだ。走り書きの線も傷も、全くない。(ヨーグルトに何を足そうか?)僕はぼんやりと考えていた。頭上に載せるのは、リボン?鳩?皿?ボール?それによって世界観は変わる。そのような問題に似ていると思った。グミ、アイス、はちみつ、ジャム、バナナ、グラノーラ、ナッツ、バナナチップ、グランベリー、カ...突然カフェ

  • 眠れない夜にワンルームで小説を

    立っていられないほどに眠い。バックグラウンドで何かが鳴っている。赤いギターを抱いた謎の集団が夜明けのように浮かび上がっている。何の証拠を隠し持っているのだと言って犬が執拗にお腹をつっついてくる。違うんだ。これは本当の時じゃない。どれだけ努力してもパスコードはまだ認知されない。心細い待受画面が辛うじて入力を受け付けている。次は、まだ何かありますか?はっとして目を開く。ちゃんとしなきゃ。歯を磨いて安心してベッドに潜り込む。途端に目が冴えてくる。今度はどう頑張っても眠ることができない。眠れない夜がまた目を覚ましてしまった。ずっと立っていたがバスは止まらなかった。何かを引きつけるには僕の声はまだ小さすぎた。朽ち果てた椅子の上で優しい訪れを待つ間に、見知らぬ者たちの足音と冷たい季節が通り過ぎて行った。「また春だね」...眠れない夜にワンルームで小説を

  • 考えさせるカフェ ~1/2カーテンの謎

    どうして薄緑のカーテンは、今日も半分下がっているのだろうか。コーヒーを口にした瞬間から、疑問が湧いてくる。コーヒーの中に含まれる成分が、考えさせるのだろう。陽射しが強い時間に誰かがカーテンを引いて、そのままになっているのか。極端にプライバシーに配慮した結果なのか。それとも逃亡者が逃げ込んで、自らカーテンを下げたのか。理由は何もないということはないか。理由はなく、誰もそれを指摘もしない。カーテンが及ばない下の隙間から、僕は外の世界をぼんやりと眺めていた。大人か子供か。先生か薬剤師か。業者か一般人か。自転車かバイクか。旅人か仕事人か。猫かプラスティックバックか。落ち葉か蝶か。半分になった世界は不確かでいて、想像を刺激する。全部見せないことによって、こちらに投げかけているようだ。シマウマか横断歩道か……。夕べは...考えさせるカフェ~1/2カーテンの謎

  • ラッシュ

    何度目覚めても完全に自分を取り戻すことはできない。いつだって半分は夢の世界に置き忘れている。だから完全に正気な人と仲良くすることは難しい。目覚めは春だ。輪郭、影、記憶、窓の外、光、電車の音、重力、歌、好きなもの、好きになれないもの、痛み。少しずつみんな戻ってくる。お前はいいよと拒むことはできない。順路は変えることができない。僕はぽかんと上を向いている。ボールはまだ落ちてこない。ホームラン?隣で見上げていた猫が慌てて逃げ出して行く。雨?ドームじゃない。野球じゃない。何か妙だ。つかみ切れない空気。何かが間違っている。いや、何もかも変じゃないか。お茶と畳の匂いがする。ゆっくりと空から落ちてくるのはと金だった。今、振り駒をしたところだった。ここは駒犬の間だ!「それでは時間となりました」三間にまで行った飛車が1秒で...ラッシュ

  • 2.8キロ・コーヒー

    ストローの抜け殻が落ちている。誰も拾いに来ないのだ。ずっと気になってしまうくらいなら、気づかなければよかった。どうして誰も拾おうとしないのだ?面倒くさいのか、業務に含まれていないのか。見て見ぬ振りをできる人の集まりなのか。あるいは、上を見ている人の視界には入らないものなのかもしれない。(まあいいじゃないか)もしもそういうスタンスの店なら、信頼性に欠ける。汚れのついたカップでも、落ちた豆でも、平気で使っているかもしれない。「僕のかな?」誰も気にとめないということは、そういうことではないのか。この先のどこかで落としたものが、遡って現在の僕の傍に落ちているのではないか。(お前が拾えよ)そういう目で、誰かが僕を見ている気がした。どうしてここまで来たのだろう。僕は2.8キロの道程を歩いて来たのだった。歩くとどんどん...2.8キロ・コーヒー

  • クラウド・リュック

    生きることは背筋を鍛えることだ。物心ついた時から歩き始めた。思い出いっぱいをリュックに詰めて。いいことばかりじゃない。中にはあってはならないこと、死にたくなるようなこともあった。だけど、みんな捨てられなかった。(苦みも古傷も私の一部だから)傷心も、裏切りもみんな詰め込んで歩く内にだんだん重くなっていく。ロングコートの上にリュックを背負って歩いたある冬の夕暮れ、強く背中を引っ張られたようだった。まるで過去という名の魔物がそうしているように。駄目だ!もう歩けない!僕はそのまま道端にひっくり返りそうになった。「そんなあなたにクラウド・リュック!」「誰だ、あなたは?」「エア・コーディネーターの風です。これを」誘いにのって荷物を新しいリュックに詰め込んだ。今までのとはまるで感じが違う。ああ、軽い!「小学生に戻ったみ...クラウド・リュック

  • 鏡の老婆

    昔々、鏡の前におばあさんがいました。おばあさんが鏡をのぞくと鏡の向こうには老婆がいました。おばあさんがじっと見つめていると、突然老婆は口を開きました。「風邪か?」「風邪じゃない」おばあさんはすぐに返します。「病院行ったかね」「病院は人が多い」「行った方がええでね」「行くことはない」「行きなさいな」「風邪くらいで行くことはない」「歯はどうかね」「どうもない」あまりしつこいとおばあさんは鏡の前を離れることにしていました。老婆は鏡から抜け出してまで追いかけてくることはできません。あまりしつこいのは好きではありませんでした。けれども、おばあさんは一日に一度は、気が向いた時には何度でも鏡の前に戻らなければなりません。なぜなら、他に特別に向かうべき所はどこにもなかったからでした。鏡の前に座ると鏡の向こうのおしゃべりな...鏡の老婆

  • わんちゃんパトロール

    「あーっ、これはかわいいわんちゃんが乱入してきました。大変ですよ!先生、これは立会人が何とかしなければ」「まあ、落ち着いてください」「しかし、落ち着いている場合でしょうか」「大丈夫です。よく見てください。縫いぐるみのわんちゃんです。立会人の縫いぐるみですから」「しかし、動いてますよ。あんなにリアルに。まるで生きているようにしか見えませんが」「勿論、普通の縫いぐるみではなくてですね、あの中には最新のAIが組み込まれていて、それによって動いています」「いったいどうなっているのでしょうか。何が何やら」「解説しますと、あのAIわんちゃんは、現行のルールに沿って定期的に対局者の周辺を巡回して、ルールがちゃんと守られているかどうかをチェックしているわけです」「そうだったのですね。かわいいと言っていいのか、厳しいと言う...わんちゃんパトロール

  • ラフにコーヒーを

    「ごゆっくりどうぞ」そんなことが可能だろうか。人生は思うより短い気がする。気を抜いたら一瞬で過ぎ去っていくのではないか。1年毎に生きたりしたらすぐにまとめて失われる。1日を大事にすればどうか。1秒を惜しんで生きたとしたら、結果的に長くなって、ゆっくりできるのかもしれない。コーヒーを飲んで長居するにはどうすればよいか?カップのサイズは、命の大きさだ。あびるように飲んでしまっては、すぐに尽きてしまう。そうではなく舐めるように飲む。ちょびちょびと大事にしていけば、1杯のコーヒーを長く持たせることもできるのではないか。「そんな飲み方じゃ美味しくない!」(さっと来てさっと飲んで帰る)勿論、そういう選択/飲み方/生き方だってあるだろう。それはそれでいいではないか。・漬け物もいい。いいと思うことは口に出して言っておくの...ラフにコーヒーを

  • メルヘン・ショット・バー

    人の視線に対しては敏感だった。鴉に見られているとしても別に気にならない。猫だとしたら強く見つめ返すこともできる。猫が動かないなら、ずっと気が済むまで目を逸らさないでいるかもしれない。問題は人の場合だ。人の視線に限定した場合、なぜか急に嫌な感じ。心穏やかではいられなくなる。男の視線を感じて私は歩道を横断することをやめた。「何か?ずっと見てますよね」「お急ぎですか?」「いいえ。そんなことはないですが」「今日は早く帰らない方がいい。あなたのマンション、エレベーターが爆発しますよ。だから……」「そういうのはよくないですね。やるならちゃんとアプローチした方がいい」「ごもっともです。軽く1杯どうですか?新しくできたばかりの店で、ワンコインでメルヘンつきですよ!」黒服の男はあっさりと非を認めた。誘うにしてもハッタリやデ...メルヘン・ショット・バー

  • 我々はぶっ通しで働く仕様なのか?

    留学生が、「勝手に休憩をとるな」と注意を受けている。何を言われているか、彼らに飲み込めるだろうか。正社員と呼ばれる人たちは、勤務時間中に談笑したり、喫煙したり、適当にのんびりと過ごす時間もあるように見える。雇用形態が異なると、事情は全く異なるのだろうか。「我々は水1滴さえ自由に飲めないのか?」使う側の立場としては、時給で働く形態だから1分も無駄にさせては損と思っているのだろうか。理屈はわからなくもないが、いくつか疑問な点もある。人間というものを理解できていれば、そんな単純な考えはできないのではないか。逆の立場で考えてもまるで平気なのだろうか。(中にはそんな想像とは無縁の人もいるかもしれない)法律上は問題ない。5時間の労働に休憩などなくてもいいと言う人もいるかもしれない。しかし、人間の集中できる時間には限り...我々はぶっ通しで働く仕様なのか?

  • もう君のことしか考えられない

    人間とは、考える生き物である。お昼は何を食べようかな。食べ物について考える。それは基本的な考えの1つだろう。美味しい肉ないかな。食べるについての考えが基本なら、美味しさを追求するのも人間の本能だろう。おやつタイムはコーヒーでも飲もうかな。コーヒー飲みながら、何食べようかな。夕方からビール飲もうかな。ビール飲みながら、何食べようかな。一日を通して、人間が考えを止める時間はほとんどないに等しい。人間の頭は大変だ。「あの人、あんなこと言ってたけど、あれってどういう意味なんだ?」僕は、その時ぼんやりとそんなことを考えていた。その考えに割って入ったのは、女の声だった。「そうなのよ。こっちももっと早くに伝えたかったけどね……」姿の見えない相手と話す女の声は、だんだん大きくなっていく。テラスならいいのか?(別にどこでも...もう君のことしか考えられない

  • 暴走端末のメルヘン

    小銭を数えるなんて面倒なことだ。手と手が触れ合うことは、リスキーではないだろうか。それよりも間違いのない、現代に相応しい方法というものがある。「お支払いは?」「ストイック・ペイで」私は常に最先端のやり方を好むのだ。「少々お待ちください。そちらの方ですと端末が変わりましたので担当を代わります」端末が変わった……。流石はできた店だ。より処理のスピーディーなものに進化しているのだろう。・「いらっしゃいませ」新しい端末を扱うのは、専属のロボットだった。「専用のアプリをダウンロードしますので、それまでの間、誠に僭越ながら創作メルヘンをお聞かせさせていただきます」すぐに終わると思っていたのでこれには少し意表を突かれた。ロボットは、低い男性の声でゆっくりと話し始めた。・『バッドじいさん』昔々、あるところにバッドをつけて...暴走端末のメルヘン

  • 惜しむコーヒー ~それでもあなたはカフェに行くのか

    生まれたてのコーヒーはたっぷりと器を満たしており、そこからは際限なく湯気が立ち上がっている。最初の一口のためにカップに口をつける瞬間は、この上なく幸福ではないだろうか。そこから先はゆっくりと冷めていくばかりだ。一口毎にやがては底をつくであろうことを恐れながら、口を近づける。せつない。コーヒーを飲むということは、ただただせつなさを感じることに等しいのではないだろうか。たっぷりとあったように思えても、本当はこれっぽっちだったと気づくまでにそう時間はかからない。コーヒーは、なぜ不変の熱量と無限の器をもって提供されないのか。そして、人々はなぞそうした不満を口々に叫ばないのか。そんなサービスをしたら商売が成り立たない。器のサイズは好みで選ばれるのが慣習だ。そもそも物理的に不可能ではないか。空間に落ち着きが損なわれて...惜しむコーヒー~それでもあなたはカフェに行くのか

  • どうしようもない行き止まり

    昔々、あるところにどうしようもない行き止まりがありました。そこから先へ進むことはどうしよもなく不可能に近く、何人もそこを越えていくことができませんでした。「ここを突破できた者にはぱりんこ200年分を与えよう!」王様は言いました。ぱりんこ200年分。それは途方もない贈り物。詩人は言葉を持って王様の前に現れました。美しい単語、キャッチーな比喩、心地よい修辞、謎めいた暗喩を駆使して突破を試みました。けれども、そこにあるのはどうしようもない行き止まり。言葉やなんかで突き抜けることはかないません。替わって子供が現れて、無邪気な心だけで突破を図りました。大人にとっては多く見える壁も、手に負えない理屈も、変え難い慣習だって、子供の心にかかればなきも同然。澄んだ瞳を持った子供なら行けるかもしれない。人々の期待が一瞬大きく...どうしようもない行き止まり

  • シングル・コーヒー

    熊が出たと言って母が裏庭から戻ってきた。「そんなもんじゃない」1頭や2頭どころではない。1メートルを超えるのが20頭以上、うじゃうじゃ熊が現れているらしい。クローゼットの奥から棍棒を持ち出した。久しく使う機会がなかった。思っていた以上に手にずっしりとくる。使いこなせるかどうか半信半疑だ。棍棒を脇に置いて通報だ。110番につながらないのは、非通知設定になっているせいだ。「頭に166をつけないとかからないぞ」父の言う通りにやってもつながらなかった。何度やっても話し中だ。今日に限って父の言うことが間違っているのか。その間に両親は父の運転する軽トラに乗って家を脱出した。留守番は破滅を意味する。実家を見限って自立する時が来たようだった。起き上がると男の背中が見えた。うそだと思って目を閉じた。もう一度開けてみるとより...シングル・コーヒー

  • 伝言ゲーム(声がかれるまで)

    昔々から繰り返し伝えるおばあさんがいました。あるところにある人とあの人と喜び出て行く犬喜び帰ってくる犬絶対に開けないではいはい繰り返しかわされる約束繰り返し破られる約束秘密の宝箱行っては帰る行っては戻るめでたしめでたしおばあさんは町から町へと昔話を繰り返しながら渡り歩きました。威勢のいい町もあれば、廃れたような町もありました。落ち着いた町もあれば、見かけ倒しの町もありました。町長のいない町もあれば、町長しかいないような町もありました。あるところでは聞き手がすべて犬でした。犬たちは起承転結に渡り辛抱強くおばあさんの話に耳を傾け、めでたしめでたしとなるとご褒美を受け取って帰って行きました。「もう一度聞かせてよ」あるところでは子供たちに囲まれて人気者となり、おばあさんは何度でも同じ話を求められました。「おしまい...伝言ゲーム(声がかれるまで)

  • 曲芸的現代将棋

    「おっと、挑戦者が座布団を一段高く積み上げました。先生これはいったいどういう動きになるのでしょうか?」「解説しますと、角度を変えて読み直そうという狙いになりますね」「座布団1枚2枚でそんなに変わってくるものなのでしょうか?」「全く異なりますね。高段者の視点というのは、非常に繊細なものですから。今、直前に名人の指した手が新手でして、今までの常識からはない手なのですね。そういった手に対しては、同じ角度からの読みでは超えていけない部分もありますから」「しかし、少し心配なことが。あまり高く積み過ぎると、うっかりバランスを崩して転倒したりという恐れはないのでしょうか?」「何をおっしゃいます。そんなことあるわけないじゃないですか、田辺さん」「そうでしょうか」「現代将棋に精通している棋士が、座布団の1枚や2枚のことでお...曲芸的現代将棋

  • 棋士の危険なおやつタイム

    「あれっ?これは目の錯覚でなければ、挑戦者の駒台の上にシュークリームが置かれているように見えますが、先生あれは」「錯覚ではございません。おっしゃる通りです」「駒台にシュークリーム。ということは、いよいよ手段が尽きたということになるのでしょうか?」「それもないわけではないですが、全くその逆もあり得ますね」「逆ですか?手段があふれているのでしょうか」「解説しますと、棋士あるあるになるのですが。ついつい読みに夢中になるあまり、他のことを忘れてしまうことがありまして。現状では、食べている途中でシュークリームの存在を忘れた可能性がありますね」「そんなことがあるのでしょうか?私などは何があっても絶対に忘れない自信がありますが」「局面の切迫度から言って、十分あり得る話です」「それだけ難解な局面ということなのですね」「そ...棋士の危険なおやつタイム

  • 君の肩を少し借りよう

    「はっ!挑戦者の肩に。鳥がとまっています。先生、これはペットの鳥なのでしょうか。挑戦者を応援しているのでしょうか?」「何をおっしゃいますやら。そんなことあるわけないじゃないですか、田辺さん」「そうでしょうか。しかしあれはどう考えれば」「ペットの鳥なわけないじゃないですか。挑戦者はそんな常識のない人間ではありません。解説しますと、あの鳥は好手を呼ぶ鳥とされておりまして、時折開いている窓から入ってくる観る鳥の一種です」「そうだったのですね。まさかそういう鳥がいるとは」「この地方では割と有名です。ですから、対局室の誰も全く驚いたりする様子がないわけです」「流石ですね」「研究済みということですね」「評価値はやや苦しめですけど、この後いい手が出そうだということですね」「そういうわけです」「楽しみですね。この後も、引...君の肩を少し借りよう

  • ダンサー乱入

    「これは突然何事でしょうか?ダンサーの方たちが入ってきて踊り始めました。部屋を間違えられたのでしょうか、先生これは」「いえいえ間違いではなく演出ですよ。今、盤上にダンスの歩という手筋が出たところですから、それに合わせて踊られているわけです」「これはびっくりサプライズですね!」「ちゃんと立会人の許可を得て入室されているわけですから、ここは見守るところでしょうか」「一昔前ではとても考えられないことではなかったでしょうか、先生」「将棋界も前に前に進んでいるわけですから」「現代将棋ならではということでしょうか」「そういうわけです」「それにしても、ダンスの歩というのは、なかなかお目にかかれないものではないでしょうかね」「手筋の中でもまさにダンスの舞のように華麗な手筋ですね」「今日は観る将の方も、とてもラッキーだとい...ダンサー乱入

  • 宇宙対局

    「いよいよ両者秒読みとなりましたね。あれほど時間があったのに、もっと大事にできなかったのでしょうか?」「何をおっしゃいます。大事にした結果として、今こうして秒を読まれておるわけです」「50秒から、1、2、と読まれてますけど、もしもそのまま10まで行ってしまった場合、先生その時は、対局者は打ち上げられてそのまま宇宙へと飛び立ってしまうというようなことがございますでしょうか?」「何をおっしゃいます。そんなことあるわけないじゃないですか、田辺さん」「そうでしょうか。大丈夫でしょうか」「ドリフのコントじゃないんですから。そんなことは起こり得ません」「では、もしも10まで読まれたとしたらその時は……」「その時はほぼ訪れないと言っても過言ではありません」「ほー、どうしてでしょうか?」「9まで読まれた段階で、指が自動的...宇宙対局

  • マジック・ストライカー

    ある人にとっては1杯のコーヒーが必要だ。それは絶対に欠かせないもので、人生の支えそのもの。言ってみれば「主食」だ。同じものがある人には「不要不急」に当たる。言い換えるなら「取るに足りないもの」だ。言葉なんて簡単に入れ替わる。そのようにして俺はベンチからエースストライカーに成り上がった。俺は利き足という概念を持たず、どこからでもシュートを打てた。おまけにヘディングの滞空時間は浮き世離れしていた。ありふれたマークでは手に負えず、日を追う毎に敵チームの対策はクレイジーなものになっていった。後半30分、俺はピッチの中で雁字搦めにされた。手錠をかけられた上に体中を縄で縛られ、箱の中に閉じ込められたのだ。すべては審判の目を盗んで行われたため、カードは出なかった。味方選手も静観するしかなく、時間だけがすぎていった。存在...マジック・ストライカー

  • 鬼の対局室

    「今、ねじり鉢巻をした人が入室されて席に着きましたが、桃太郎でしょうか?」「何をおっしゃいます。桃太郎がねじり鉢巻してましたか?」「はっ!だとすると祭り男でしょうか、先生」「桃太郎でも祭り男でもございません。あれは観戦記者の方ですよ」「それは大変失礼いたしました。ねじり鉢巻がとても印象的で……」「いいじゃないですか。そこは別に。共に戦っているという証左に他なりません。真剣勝負の場ですから。盤の前でも机の前でも、そこは何1つ変わらないというわけです」「そうですね。私も見習わなければなりませんね」「読むか書くかの違いだけですから」「誰もが戦っていらっしゃるのですね」「そういうことです」「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」鬼の対局室

  • 浦島太郎

    何も目指さなくていいところに到達した。経緯は偶然と気まぐれが入り交じったようなものだったけれど、おかげで人と違う幸福を手に入れたというわけだ。大好きなものたち、変わらない美しさに囲まれて、私はずっとここにいたいと願う。いらないものは何一つなく、必要なものはすべて揃っているのだ。「何かになりたい」と願ったのはずっと遠い昔の自分。(今となっては他人に等しかった)どんな人生よりも深い場所に生きて、これ以上何を望むことがあるだろう。「そろそろ行かねばならないようです」脱出の時が迫っていると姫に告げられた。それはあまりにも突然の出来事だった。もう海が青くないことが主な理由だという。本当かどうかわからない。しばらく海を見たことがない。私が海の中にずっといたからだ。「縁の切れ目がきたようです」これほど長い時間一緒に暮ら...浦島太郎

  • 対局室の野生

    「ただいま対局室に狸が入ってきたようです。ご両人は全く動揺する様子がありませんが、先生これは流石に保護した方がよろしいですよね」「何をおっしゃいます。そんなことをしたら駄目ですよ、田辺さん」「先生、どうして駄目なのでしょう?」「保護するも何もあれは見届け狸ですから」「見届け狸?これは大変失礼いたしました。てっきり道に迷ってどこかから紛れ込んだものと思ってしまいました」「ちょっと迷ったくらいでたどり着けるような場所ではございません」「ほほほほっ、おっしゃる通りですね」「応募者多数の中から厳正なる抽選の結果、見事にその座を射止められまして、こちらまで来ていただいているということです。指し手の善悪はともかく、一生懸命見届けて帰られます」「それだけこちらは自然が豊かな場所にあるということですね。将棋を愛するのは、...対局室の野生

  • 歩切れに泣いた人

    「歩切れに泣いているのでしょうか。挑戦者の視線が下の方に落ちていますね。そう言えば先生、駒箱の中には確か歩が数枚余っていたと思うのですが、これを使えば問題は解決するのではないでしょうか?」「何をおっしゃいます。そんなことできるわけないじゃないですか、田辺さん」「そうだったでしょうか」「それはあからさまな反則行為です。即失格の上に次戦より3試合出場停止になってしまいます」「では先生、駒箱の中にあったあの歩は何だったのでしょう?」「余り歩といって駒箱の中で休んでる駒ですね」「余っているのに使えないというのは何か不思議な気もしますが」「歩というのは将棋の駒の中でも一番酷使されて疲れが溜まるわけです。ですから順番に箱の中で休んでもらって、言わば充電されているわけですね」「ということは出てくるのは次の対局以降という...歩切れに泣いた人

  • 雑草のストライカー(コロコロ・シュート)

    生まれながらにタトゥーを持った俺は、常に蚊帳の外に置かれていた。様々な偏見からチームに加わることはできず、遠くで眺める他はなかった。不満を叫ぶよりも俺にはもっとやりたいことがあった。自分のスキルを磨くこと。そして、いつかその先に自分の夢も開けているのだと根拠もなく信じていた。俺のホームグラウンドは近所にある荒れ果てた公園だった。練習パートナーは猫で、サポーターは草の茂みに潜む虫たちだった。猫は常に守備しかしなかった。それは攻撃しか頭にない俺にとってはかえって好都合だった。最初の頃は猫の俊敏性についていけず、ボールを奪われてばかりだった。徐々にフェイントを覚える内に猫の目を欺くことができるようになった。いくつかのフェイントを組み合わせ上手く成功した時には、猫を完全に置き去りにすることもあった。そんな時、猫は...雑草のストライカー(コロコロ・シュート)

  • 終局の空気

    張り詰めていた9時40分の空気を私は懐かしく振り返っている。まだ駒に手をかけない先生の背中は両者ともに自分の勝利を信じて真っ直ぐに伸びていたものだ。昼食後の幾つかの疑問手を経て形勢は徐々に差がつき始めた。よい将棋を正しく勝ちきることができるなら、半数の将棋は勝てるだろう。一日の勝負は長い。冷静な目と朝の気合いを保ち続けることは、私のような人間にはとても難しいことだった。最善手を探究する心は尊い。だが、私の目は指し手のみに集中することはできず、先生の横顔に、背中の角度に、ペットボトルの数に、中継のカメラへ……、カオスとなって散って行く。夕休が明けてしばらくすると部屋の中からネガティブな空気が読み取れるようになっていた。すっかりと落ちた棋士の肩が座布団に着いていた。脇息の上の足首がぶらんぶらんとして、ゴミ箱の...終局の空気

  • ムービー・スター

    美しくありたいと願ったことはないか。願いは罪にはならない。けれども、ある一点の美学のために破滅へと向かって行くこともある。ありのままを描くより少しだけずれた世界を創造したい。俺は路上の似顔絵師。人々の顔を描いてはささやかな収入を得ている。スパイスに飢えたシェフ、記憶をたどる秘書、明日へと向かう夢追い人。俺のキャンバスの前で足を止める人は様々だが、みんなどこかで未知の自分を探しているのではないだろうか。「できました」一心不乱に描いて手を止めた。改めて自分の描いた顔を見てみるとどこかで見覚えがあった。日常の中ではない。そうだ……。「あなたは!」昨日観た映画の中に出てきたチンピラだ。「ちょっと撮影の合間でして」言葉遣いのしっかりとした実に感じのいい青年ではないか。俺はずっと俳優という職業に強い憧れを持っていた。...ムービー・スター

  • スクリーン・テスト

    映画はだいたい2時間。人間が集中していられる時間もだいたい同じ。2時間あれば人生を知るには十分だろう。君との距離15センチ。適切な間隔を置いて、君は僕の周辺視野の中にいた。どこで笑い、どこで泣き、どこを気にとめないのか。同じ方向を見つめながら、密かに横顔を探っている。全く同じではつまらない。全く違うのも寂しすぎる。ちょうどいい君が、この世界のどこかにいるはずだ。・……文字盤の上のカタツムリ。長く留まれば指の運動に制約を受ける。もしも歩みが重なればミスタッチになる。どうしてここに?痛みは雨のようなものだ。自分の意思でコントロールすることはできない。けれども、雨を知っていればきっと乗り越えられる。「どうしてここに?」互いに理由を答えられない。きっとそんなものはないのだろう。運命という響きはここに似合わなかった...スクリーン・テスト

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