chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
眠れない夜の言葉遊び https://blog.goo.ne.jp/junsora

折句、短歌、アクロスティック 詩、小説、妄想、言葉遊び、クリスマス詩、ショートショート、マナティ、夢小説、散文詩

クジラうえ リクエストした 水族館 マダイがうたう スローバラート

ロボモフ
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2008/12/07

arrow_drop_down
  • 鬼の泥棒

    昔々、あらゆるところにおじいさんとおばあさんがいました。おかげであるところには、おじいさんとおばあさんがいたと言えました。おじいさんは仇討ちにでも行くように芝刈りに出かけ、しばらく戻ってきませんでした。おばあさんは心を整えて洗濯をします。そこは川でした。どんぶらこ♪どんぶらこ♪と上流から大きな桃が流れてきました。伝説の前にいるのかもしれない。おばあさんは不思議な予感を覚えて身を震わせました。今まさに伝説の前に立ち会うのかと思えば、流石のおばあさんも冷静ではいられなかったのでした。匂いを嗅ぎつけて犬がきました。きたか、とおばあさんは思いました。猿がきました。猿もきたか、とおばあさんは思いました。アヒルがきました。アヒルもきたか、とおばあさんは思いました。おじいさんがきました。「おじいさんもきたか」とおばあさ...鬼の泥棒

  • ありがとう、おかあさん ~カフェの自由

    おしながきがいつもよりも底の方に沈んでいる気がした。視線を深く落としていると、奥の方からおかあさんが出てきて小窓を開けてくれた。呼んでもないのに、もう出てきてくれた。僕は一瞬ありがたく感じたが、そうではなかった。「ごめんなさい。今日はもう終わりで……」「ああ、そうですか」あと1時間くらい開いていてもおかしくないのだが、おとうさんの調子があまりよくないのか、最近は閉まっている日も多くなっている気がする。廃れた商店街を抜けて、あまり通ったことのない道を南へ向けて歩いた。近所の子供が大声を出してバイバイと言う。そういう時間だった。・テイクアウトできなかったのでもう1つのプランに変更して、モスカフェに行った。久しぶりに左奥の角にかけた。少し距離を歩いたので少し疲れていた。今日はカーテンが半分以上開いていた。それだ...ありがとう、おかあさん~カフェの自由

  • 封じられたメッセージ

    「立会人の先生が、今慎重に鋏を入れて、封筒から何やら取り出されましたね。これは遠い故郷よりの手紙でしょうか。それをこれから読み上げて、朝の対局室をハートフルな空間へと導くのでしょうか、先生」「何をわけのわからんことをおっしゃってるんですか。そんなはずないじゃないですか、田辺さん」「はっ、そうでしょうか」「ちゃんと説明しますと、あれは封じ手と言いまして、名人の次の一手が入っていて、それを立会人の先生が取り出して読み上げ、そうすることによって名人が次の一手を着手するということです。指されました」「はい。封じ手は44銀でした」「これは驚きました。目の覚めるような一手が飛び出しました」「この手はどういった狙いなのでしょうか?」「わかりません。さっぱりわかりません」「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」封じられたメッセージ

  • 謎の贈り物

    昔々、あるところに芝刈り好きのおじいさんと、芝刈り好きのおじいさんを好きなおばあさんがいました。ある日、おじいさんは当然のように山に芝刈りに行くと、これでもかこれでもかと芝を刈りました。刈っても刈ってもおじいさんの好きはなくならず、むしろ膨らみつつあるほどでした。おばあさんは、山と反対に川に行きました。川に行くとおばあさんはいつものように洗濯に励み、汚れ物と向き合う内に自らの魂を清めました。「お待たせいたしました」一仕事終えたおばあさんにどこからともなくおやつが届けられました。「ありがとう。ウーバーさん」おばあさんは、洗濯板の上にフルーツの盛り合わせを広げました。オレンジかな、いちごかな、それともメロンかな。おばあさんは何から手をつけるか迷っていました。キウイかな、りんごかな、それともメロンかな。なかなか...謎の贈り物

  • 虫の行方

    「何か対局者が気にされてますが、これは虫でしょうか。盤の周辺を飛び回っているようです。これは大変な事態となりました。まさかタイトル戦でこのようなことがあるとは。虫対策までは研究が行き届いていなかったということでしょうか。このままでは対局の中止も危ぶまれてしまいますが、先生」「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」「そうでしょうか」「そうですよ。虫なんてものは、ほっといたらその内どっか行くんですから。そう大げさに考える必要はないんですよ」「でも先生、危険な虫だったりすることはないんでしょうか」「大丈夫です。見たらわかります。あの程度は大した虫ではありません」「流石は先生。虫の方も大変お詳しいということで」「やめてください。別に詳しくはないですよ」「えへへっ、それは大変失礼いたしました」「見...虫の行方

  • 本官の夢(野生の叫び)

    老人の訴えは耳を疑うものだった。ステマが捕獲されて大変なことになっていると言うのだ。本官はいつでも市民の味方である。しかし、時には味方である者同士の板挟みとなって苦悩することもある。何より大切なことは、親身になって耳を傾けること。冷静に真実を見極める目を持つことだ。老人の訴える現場に近づくと女性が駆け出してきた。「家の人ですか?」「すみません。この人かなりぼけてるもので。おかしなことを言ったかもしれませんが、寝言と思って聞き流してください。いつも夢見ているような状態ですから」「そうでしたか。事情はわかりました。しかし、確認のために少し家の中を見せていただいてもよろしいですか?」「構いませんが、夜も更けましたのでできれば明日にしていただけると助かります」「わかりました。それでは明日また改めまして」「駄目じゃ...本官の夢(野生の叫び)

  • 見守り先生

    「副立会人の先生が入ってきました。何かいい手でも思いついて、たまらなくなって、こっそり助言をしに入ってきたのでしょうか、先生」「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」「ほほほほっ、違いますか。これは大変失礼いたしました」「仮に思いついたとしても、絶対に言いません。将棋では助言というのは、絶対の禁じ手ですから、もしもそんなことをしてしまったら、二度と対局室には入ってこれなくなります」「立ち会いの先生方は、思っても見守っているだけですね」「勿論、そういうことです」「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」見守り先生

  • ロード・オブ・ザ・ポテト

    転がり込んできたじゃが芋がカレーを思わせた。僕はカレーを作り始めた。じゃが芋の表情が少しずつ僕にカレーへの帰り道を教えてくれた。そんなに難しいことはなかった。こんなにも僕はカレーが好きだった。秋と一緒に煮詰まるほどにどんどん好きになる自分に驚いていた。次に驚いたのはじゃが芋が切れた時だ。カレーも一緒に途切れた。それから突然恋しくなった。今度は僕が転がる番だ。外出だって覚悟の上。じゃが芋畑まで来た時、そこにじゃが芋はなかった。「今はない」おじいさんは顔を曇らせながら言った。「狢が持って行ってしまった」狢がよそで売りさばくとおじいさんは言った。転がり込んだじゃが芋がカレーを思わせてから、私とカレーとのつき合いが始まりました。良き縁というものでしょうか。もしもじゃが芋がピアノの方に強く結びついていたとしたら、私...ロード・オブ・ザ・ポテト

  • 謎の流れもの

    昔々あるところに、というのは、元々は何もないようなところでしたが、いつしか草が生え、小さな花が咲き、蝶や猫たちがやってきて、色んなものが生まれていった。そういうところ、それは奇跡のようなところとも呼ぶことができました。そんなあるところに、おじいさんは鬼のような顔をして、おばあさんは仏のような顔をして暮らしていました。おじいさんは懲りもせず山に芝刈りに、おばあさんは清々しく川に洗濯に行きました。おばあさんが川に行くと何やら上流から流れてくるものがありました。どんぶらこ♪どんぶらこ♪「何だろうか?」おばあさんは身を乗り出して流れてくるものを観察しました。人か?いいえ人ではありません。獣?いいえ獣でもありません。角度を変えて見ると南瓜のようにも見えました。「ああいう乗り物か」だとしたら舟であろう。一通り推測を終...謎の流れもの

  • ピロピロ・カーテン(近く遠い存在)

    カウンターの一番奥は、喫煙コーナーの前だった。店内を一周しても、ほぼ空席は見当たらない。迷う余地はない。そこしかない。せっかく来たのだから、もう他に行きたくない。見つけた以上は、そこにかけるしかなくなった。現在のところ、そこは一番の席だ。(喫煙コーナーの正面であることを除いて)受動喫煙に配慮して(あるいは配慮を怠って)、入り口はちゃんとしたドアではなく、ピロピロ・カーテンだ。何となく煙たいように感じるのは、そのためか。とは言え、常時複数の人が入り浸っているというわけでもない。世の中は変わった。(変わりつつある)近所に古くからある串カツ屋の入り口にも、近頃は禁煙の紙が貼られている。酒と煙草もセットではないのだ。・身近な存在だったものが、急に遠く感じられることはないだろうか。その時、物理的な距離というのは重要...ピロピロ・カーテン(近く遠い存在)

  • ブログ更新の逡巡

    下書きは随分と溜まったけれど……。何かの拍子にブログ更新の必然性が疑われてしまったら、どうなることでしょう。例えばそれはこんな風にして始まります。ここなのか?ここでなければいけないのか。他へまわしてはどうなのか。noteへまわしてはどうなのか。はてなブログへまわしてはどうか。今日なのか?今日でなければいけないのか。明日へまわしてはどうなのか。これなのか?これでなければいけないのか。これでない方がよいのではないか。もっと他にいいのがあるのではないか。これほどつまらないものはないのではないか。今なのか?今でなければいけないのか。夜でもいいのではないか。先にご飯を食べてもいいのではないか。お風呂に入ってからでもいいのではないか。今にこだわることもないのではないか。今、今、今、今……。つかもうとしてもどうしてもつ...ブログ更新の逡巡

  • どうせ誰も聞いていない

    人前に出るのは苦手でした。人前で話したり、歌ったり、そういう状況は避けて通りたい。そう思ってずっと生きてきました。けれども、年の瀬ともなると人々の輪が僕を取り込もうとする。当時は、そんな時代でした。もうずっと昔の話になるでしょうか。「どうせ誰も聞いてないよ」鬼のように上手い歌を聞かせてくれた後で、友は言いました。難しく考えすぎだろう。自意識過剰であろうと言うのです。勿論、カラオケに上手い下手なんか関係ない。好きなように歌って楽しめばいいだけです。実際、見回してみれば、彼の言うことももっともでした。談笑に盛り上がる者、酔いつぶれて眠る者、2人きりで熱心に話し込む者。誰もカラオケどころではない。ただ少し大きなBGMがかかっているようなものです。それもそうかもな……。僕は少し彼の言葉に揺れていました。誰も聞いて...どうせ誰も聞いていない

  • 勝負ブログ ~ライト・ブログ

    「ねえ君、もう一勝負してみたら?」人生の大先輩が、少し冗談ぽく話しかけてきました。いつも会うと挨拶してくれる人でした。何気ないことを、いつも気さくに話しかけてくれる人でした。(いい人みたいだ。世話好きな人かな。少し干渉してくるようなとこあるな)そんな印象を抱いていました。(一勝負?なんじゃそりゃ)今のままではまるで駄目だみたいなことなの?自分なりに少しは前進しているようなつもりもあったので、何か今を否定されているような、僕はちょっと寂しい気持ちになってしまったのです。でも、先輩は、よかれと思って話しているのです。冗談ぽい奴、すぐ終わる話のはずが、意外に熱を帯びて事細かに続いていくのです。(ああ、やっぱり思った通りの人なんだな)適当な相槌を打ちながら、興味がなくはない振りをしながら、僕は話が終わるのを待ちま...勝負ブログ~ライト・ブログ

  • 日記こそが王道だ

    ブログで何を書いたらいいかわからない。そういう人は、迷わず日記を書くのがいいでしょう。僕も、最近は日記に注目しています。今後は、「日常・体験・感情」といったものが、キーワードになってくるかもしません。革命的な進化をみせるAIは、歌詞でも物語でも論文でもそれらしく書いてみせます。知識・情報という領域となると、もはや人間ではかなわなくなるでしょう。だけど、彼も日記だけは書けないのです。彼には生身の体験や感情がないからです。正しいことは話せても、悩んだり感動したり病んだり、恋したり。そういうところは、現在のところはまだ未熟で苦手のようなのです。人間である僕たちは、AIと向き合う中で、「人間とは何か?」ということについて、考えさせられます。あるいは、「仕事とは何か?」、「アートとは何か?」、「表現とは何か?」そう...日記こそが王道だ

  • すぐ切れるものたち(ブログ・アスリート)

    すぐ使うだろう。と思って買っておいたものが、気がつくと期限切れになっている、ということはないでしょうか。粉チーズ、片栗粉、パスタ・ソース、手巻き海苔。いつのかなと思って見た時には、半年とか1年も期限が切れていたりします。たっぷりとあると思う消費期限も、そうでもないことがあります。気づくと1年くらいはあっと言う間に過ぎるのです。1週間の間に2度、3度、パスタ。2日連続でパスタ。それなら切れるはずはないのです。しかし、一度パスタ熱が冷めると、存在を忘れるほどに遠ざかってしまいます。きっと原因はその辺りにあるのでしょう。考えてみれば、最近はおでんとカレーの2パターン化していて、それでは他の食材が入り込む余地もなくなります。言わばひふみん式です。本棚に目を移してみると、英会話やビリヤード入門、猫の描き方など、期限...すぐ切れるものたち(ブログ・アスリート)

  • グループに参加できない人 ~はてなブログのジャンパーたち

    グループとは、部活やサークルのようなものでしょうか。お同じ趣味や世界を共有できることは、老若男女問わずに楽しいものです。はてなブログでは、ただ記事を書くよりも、グループに参加してから書く方がいいようです。探すにも探されるにも、何についての記事かわからないものよりも、ある程度テーマが絞ってあると便利な面があるでしょう。「グループは誰でも参加できる」確かにそうは書いてありますが……。まずは雑談でもとアプリから参加のところをタップすると、画面が切り替わって真っ白いページに飛ばされます。処理中か?と少し様子をみているといつまで経っても、ページは白いままです。調べてみると、どうも現在アプリで問題が生じているようです。(誰でも参加できるが今はできない)気を取り直して、今度はアプリを経由せずにログインして、グループ参加...グループに参加できない人~はてなブログのジャンパーたち

  • 退屈/孤独/芸術

    カーテンを引く彼女が今日は現れなかったので僕は窓の外ウォッチャーになっていたいつまでも見ていられる気がしていつまでもそうしている内に気がついたきっと自分の内に向かうためには退屈も必要なのだ孤独も必要なのだもしもあなたが芸術家ならばただ「寂しい」と感じるのではなくそれも1つのチャンスなのだと受け止めてほしい退屈/孤独/芸術

  • noteを離れてわかったこと

    noteを離れてわかったことは、やることが1つ減ったということです。人間の時間は1つ1つの動作によって奪われていきます。1つと言っても決して小さいとは言えないのではないでしょうか。noteとは、SNSの一種です。ブログに似たものだと捉えることもできそうです。noteをしていたと言っても、やっているのはgooブログと全く同じでした。ブログで書いて思い入れのある記事を、そのまま時間差で投稿しているだけでした。なので、やめたと言っても、元々やってもいなかったとも言えます。noteには「スキ」というのがあって、赤く灯るのは、何かときめくところはあるような気がします。しかし、無差別に「スキ」しまくったり、「スキ」を自動化して量産するツールもある。なんて話をきくと、流石に萎えるものがありますね。SNSにありがちですが...noteを離れてわかったこと

  • 祝ブログアクセス2人

    昨日のはてなブログの訪問者2人だけだったな年末は誰もが忙しくて大掃除をしたり餅をついたり年賀状を書いたり田舎に帰ったりテレビを見たり炬燵に入ったりしてるからブログどころじゃないんかな?祝ブログアクセス2人

  • 眠くなるブログ

    「どこかに価値はあると思っていたが」・随分と昔のこと。僕が書いた長文を読みながら、職場の同僚が言ったことを、思い出しました。「眠くなるな」その時、隣でスマホ画面をのぞき込んでいた人も、その意見に共感しているようでした。確か夢小説か何かでした。(そのつもりはなかったのに、秘密を勝手にばらす人がいたせいで読まれてしまったのだ)あんたにはわからないよ。感性が足りないんだろ。面白がって読んだら楽しめるんだよ。その時の僕は内心ではそんなことを思いながら、とぼけた振りをしていました。だが、時は巡って、今となっては彼の言う通りではないかという思いが、日増しに強くなっていきます。「何か眠くなる」それこそが、宇宙中の読者を代表する声では?夢の話とか、僕がだらだらと書いてしまうような文章は、ただ眠くなるばかりではないでしょう...眠くなるブログ

  • ちゃんとしたブログ

    ちゃんとしたブログを書きたくなったのです。そのためには、荒れ果てたカテゴリーの並ぶ、この地を離れてみる必要がありました。早速、はてなブログというサービスに登録してみました。アプリは割とシンプルなようです。ちゃんとしたブログなので、お題に参加することにしました。『最近飲んでいるもの』具体的で、自分について考えられる、いいお題です。僕は最初コーヒーを思いついて、結局みそ玉について書いてみることにしました。みそ玉とは、みそを丸めた玉です。YouTubeでやっていました。冷凍してお湯を入れるだけですぐ飲めるという優れものです。詳しく書いてしまうと重複するので、やめておきます。gooブログにも「お題」はあるのかもしれないけど、参加した記憶はありません。ともかく、全く同じことを別の場所でそのまま書く(投稿する)という...ちゃんとしたブログ

  • 専門性みたいなものもほしい

    僕はあれこれやりすぎていたのではないでしょうか。折句とか短歌とか夢の話とか、日記とか創作ノートとか、ショートショートとか、詰将棋(詰めチャレ)の話とか、将棋ウォーズとか。(だいたい棋譜も譜面もない自戦記なんて誰が楽しめるの)そうしたすべてに興味を抱けるとしたら、それは世界で自分のほかにいないのではないでしょうか。あれもこれも好きなように書いてきました。そこに問題はなかったでしょうか。あまりにも1つのブログに詰め込みすぎたようにも思います。そこで今日に至っては、考えるべきところにきたと気がつきました。どこかに自分を分散してみたい。もっと方向性を固めたものを、個別に始めたい。ゼロからするために、gooブログではなく別の場所を設けたいと思います。例えば、それははてなブログになるかもしれません。詩的なものと自由に...専門性みたいなものもほしい

  • 幽霊エレベーター

    レインウェアを着て走っている時、早く降り出すことを願う俺がいる。防水キャップに重ねてヘルメット、スマホホルダーも完璧。備えたからには降ってほしい。そうでなければ暑いだけで馬鹿みたいだ。街を走るからには、何でもいいから鳴ってほしい。大げさなバッグを背負ってただ走っているのは空しくなってしまう。何でもいいから運びたい。せめて誰かのために。・どこかのローソンが偶然に俺を呼んだ。誰かが大量の飲料を注文したらしい。2リットルのコーラだけでバッグはパンパンになった。何十本背負えば、俺の罪は消えてくれるのだろう。進む度にバランスが崩れそうだ。坂道に耐えられるか。突っ込んでくる逆走自転車を避けてふくらんだ瞬間、タクシーのクラクション。俺を抜いた後もずっと尾を引いている。もう無理か。元から無理ゲーだった。突然、肩の荷が下り...幽霊エレベーター

  • ミニマム・ファッション

    着るものなんて、何でも構わない。それは超越?それともあきらめ?よくわからないな。纏わされてみてはじめて、これ何か違うと思う。昨日はこれだったかもしれないけど、今日はどう考えても不正解。じゃあこれにする?いいえ、この色はちょっとね。何かしっくりとこないというか……。秋じゃない。このふわふわもちょっとね。朝にはこれだったかもしれないけど、夕暮れにはちょっと浮いちゃうっていうか……。じゃあこれにする?いいえ、これはないかな。だって、みんなこういうの着てるじゃない。もう着尽くされてるって言うの。じゃあ、これなんかは?うーん何か冴えないな。何て言ったらわかるかな。落ち着かないんだな。別にかっこつけてるわけじゃないの。周辺視野の中の自分が自分らしくありたいと思うだけ。じゃあこれは……。「もう裸で行く!」「寒くない?」...ミニマム・ファッション

  • さらば人間よ(らくご虫)

    秋の虫が鳴き始めたからもう秋だ、なんて人間の声が聞こえてきます。わしら虫というのは、何も好き勝手に鳴いているのとちゃいます。ちゃんと班毎に分かれて規律に沿って正しく奏で合っとるんですわ。それはともかく古来人間というものは、やたらと虫を目の敵のようにするんですな。何とかなりませんやろか。「ひー出たー!」いやいや旦那は自分のスリッパが作った影に驚いてる様子だ。「やっぱり出たー!」出たといってもまだ子供でっしゃろ。それに虫の立場から言わせてもらうなら、出るのは主に人間さまの方でっしゃろ。さて、虫と鉢合わせたといって旦那は恐ろしい勢いで引き上げていくわけですわ。どこ行くねん。チャカチャンチャンチャン♪「あー、危なかったー」「かったじゃない。またくるでー。人間はしつこいからな」「きっと武器を持ってくるわね」「僕が何...さらば人間よ(らくご虫)

  • もどかしいワーク

    キックオフからまもなく右サイドの僕のところにパスがきた。その時、僕はまだピッチ上で寝そべっていたのだ。ボールはそのままラインを割って外に出た。申し訳なかったが、僕はまだ完全に正気になることはなかった。その後も何度か同様のことが起こった。準備が整っていなくても届くまでにはどうにかなると思うのか、少し弱めに蹴られるパスもあった。信頼に応えられないもどかしさの上に気怠さが停滞している。今と向き合えないのは、近い将来への懸念のためか。ハーフタイムに辞退を考えたが、自身の健康のことを思うとどうしてもゴールを決めねばと思った。道を渡るとちょうど車が発進するところだった。僕は車に先に行かせその後を通るつりだったが、向こうも同じような気持ちだったようだ。止まるではないが緩やかな加速のワゴンと、僕は併走する形になった。お先...もどかしいワーク

  • 今日くらいは……

    昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが歩いていました。するとおじいさんとおばあさんのすぐ側をあまりにも歳の離れた人間が通りかかりました。子供たちです。おじいさんとおばあさんは、優しく微笑みかけながら、見知らぬ子供たちに声をかけました。「気をつけてね」「仲良くね」「魚に気をつけて」「元気にね」「先生にも気をつけて」「それじゃあね」おじいさんとおばあさんは、子供たちがもっともっと小さくなるまで立ち止まったまま見送っていました。あんな時代もあったねと遠い昔をみつめているようでもありました。「おじいさん、山は?」おばあさんが急に思い出したように言いました。「今日はええ」今日は山はお休みです。今日くらいは……

  • カフェの中の異世界/素敵な子供だまし

    テーブルには8割入ったままのアイスコーヒーが置かれたまま、主の姿はない。もうずっと喫煙ルームにこもっているのだ。僕は好きな昔話『浦島太郎』を思い出していた。喫煙ルームは竜宮城というわけだ。どういう経緯であったかはよくわからない。だが、気がつくと竜宮城暮らしの方が長くなった。もはや、地上の社会での生活よりも、あちらの世界の方が長いのだ。大半の時間があちら側となると、心を占めるのがどちら側なのかというのは、興味深い問題だ。『浦島太郎』とは、そういうお話ではなかったろうか。現代社会は、喫煙者に冷たい側面がある。本当は別に飲みたくもないコーヒー代を払った後は、喫煙ルームにとことん入り浸っているというのも、カフェの利用のあり方の内なのかもしれない。カフェは寛容だ。たとえ注意書きのようなものが壁に貼られていたとしても...カフェの中の異世界/素敵な子供だまし

  • ゴースト・バストラン

    少し先を行く自転車から白い煙が見える。タイヤからではない。煙は男の指先から出ているのだ。あんな乗り物は認められない。俺はそれ以上自転車に近づくのが嫌だった。曲がれ曲がれどこかに消えろと念じても通じない。ならば俺から動くまでだ。真っ直ぐ進んでから曲がるか、先に曲がっておいてそれから真っ直ぐ進むかは、俺が自由に決められる。クエストを選べる自由を失ったが、まだルートを選ぶ自由は残っている。・近づきつつあったピックアップ先のピンが突然消えた。消えたと思った次の瞬間、動いた!あべの筋を南下して動き続けている。今までの経験にない現象だった。ゴーストレストラン、いや移動式レストランか?アプリ上のピンは前方に加速して行く。もしやあのバスか?俺は前傾姿勢になり時速30キロでバスを追った。交差点に差し掛かる手前で、バスはバス...ゴースト・バストラン

  • 竜馬ダンス

    「これは竜と馬の追っかけっこが4手1組でしょうか。繰り返されてますが……。このままだと延々と繰り返されてしまって永遠に終わらないのではないでしょうか?そうすると対局者も私たちも誰もが帰れなくなってしまって、日常生活というものが完全に崩壊してしまうことが心配されますね、先生」「何をおっしゃってるんですか。そんなわけないじゃないですか田辺さん。そうなる前に将棋には千日手というルールがちゃんとあるわけですから。そうなったらそうなったで初手から指し直しになるだけです」「ほっほっほっほ、それは大変失礼いたしました。千日手というルールのおかげで千日も続くことはないといういことですね」「まあ、そういうことですね。千日手の可能性は今のところ五分五分でしょうか」「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」竜馬ダンス

  • 十月のはなれ

    熱湯を注いで8年無性に恋しかったはずの地球もレゴの創造の先に薄れ行き生暖かい風が吹いたのちに何処からともなく訪れるよきゲームメーカーは浮かれることなくルールブックを日々燃焼させて脳内でリメイクを重ねているこの街が禁酒になるのは時計の針が十分に回った頃歯切れの悪い会議を抜け出して明日の見えないヒールを飛ばした相思相愛の呪文がはね返るビアホールは昨日から閉鎖されている十月のはなれ

  • 雨天決行

    「これは大変なことになりました。雨漏りでしょうか。天井から何やら落ちてきてますね。このままでは対局の続行も危ぶまれるのではないでしょうか?先生どうでしょう」「そんなもんお前、なんで部屋の中で雨やねん。プレハブ小屋でやっとんのか。ちゃうやろ。立派なとこやのに考えられへんで」「今、記録係の少年がバケツを持ってきて、駒台の横に置きましたね。もっとバケツは必要なのではないでしょうか。あちらこちらで落ちてきてますね。タブレットなどは大丈夫でしょうか」「だいたい電子機器いうのはあかんやろ、お前。普通に考えたらどないやねん。そやろお前。考えられへんで。どないなっとんねん向こうは」「記録的な短期間での雨ということで、対局室も緊急事態となっております。先生こんな時ですが、形勢の方はいかがでしょうか?」「互角やな、ぱっと見た...雨天決行

  • どうして人は日記をつけるのか ~一行日記のすすめ

    「いつだったかな……」伯父さんが家に来たと母が言ったが、それがいつだったかは定かではない。あまりに最近のことだからだ。先週だったか。9月かも。だんだんと自信がなくなってくる。盆だったかな……。盆ではないことは確かだった。わからなくなるから日記をつければと僕は言った。以前はつけていたが、2年前にぱたりとやめてしまったという。10月は祭りが多いと母が言った。あれは11月か……。それから過去の記憶に遡って、子供の頃の祭りの話をしてくれた。昔は、夜通しの舞があったという。午前0時頃に出かけて舞を見に行ったこともあったという。祭りにはお芝居もあって、遠方より劇団が来たという。芝居は(つづく)で終わり、日をまたいで人々の興味を引きつけたという。電話越しに母の声は生き生きとしていた。今ではすっかり過疎化してしまってとて...どうして人は日記をつけるのか~一行日記のすすめ

  • しばしの別れ

    昔々、あるところにいたおじいさんが山に芝刈りに行き、ともにいたおばあさんは川に向かいました。おばあさんがあるところで気づいたのは、おじいさんがお弁当を忘れていったことでした。お弁当の中にはおじいさんの大好きだった卵焼きが入っていましたが、今なおそれを大好きであるかは、おばあさんにはわからないところでした。「仕方のない人……」どんぶらこ♪どんぶらこ♪どうやら桃が流れてくるようでした。おばあさんは、構わず洗濯に精を出しました。しばしの別れ

  • 裏口入店

    「通れません」警備員が駆けてきて俺の前を塞いだ。「押しても駄目ですか?」「駄目なんですよ。決まりで」俺は駐輪場に行くために近道をしたかったのだ。「ウーバーさん?」「はい」「それでしたら……」別の駐輪スペースがあると警備員は教えてくれた。北側にそんなものがあるとは、今まで気づかなかった。駐輪場の愛想のない男と顔を合わさずに済みむしろ好都合だ。教えられた場所は、畳一畳分ほどのスペースだった。(駐輪場とは呼べない)確かにデリバリー専用と書かれてある。どうしてこんな坂に……。大いに不満はあったが、他になかったのだろう。どこか上の方から、水がぽたんぽたんと落ちていた。そして、その落ちた先には何かごそごそと動く影が見えた。ああ、ゴキブリか。川沿いを進む。高速の下にマップには映らない道がある。駐車場の中に密かなショート...裏口入店

  • しあわせバター(スナック・ライフ)

    もう10年も前になる。あの頃の俺はまだ駆け出しの転売ヤーだった。人様の畑という畑を渡って気になるものを見つけては、狸のように引っこ抜いて回った。一言で言えば、俺は愚か者の名を欲しいままにした。いったい誰が……。「すみません。うすしおくださーい!」「はーい!」チャカチャンチャンチャン♪うすっぺらい愚か者。それが10年前の俺だった。狸のように人様の畑を回っては、気になる野菜を引っこ抜いた。茄子、大根、トマト、人参、じゃが芋、南瓜。畑という畑を越えて、貪欲だった俺は更に手を広げていった。メガネ、宝石、鞄、パソコン、洗濯機、プレイステーション。あの頃の俺ときたら、目に映る物すべてが俺の売り物であるかのように思い違いをしていた。一度引っこ抜いた物は、まるで桁違いの値段で店先に並べてみたものだ。大馬鹿者め。我ながら大...しあわせバター(スナック・ライフ)

  • 余ったカレーの使い方

    少しだけ余ったカレーをどうしようかと考えていた。カレーうどんは少し前にした気がした。ならばパスタに絡めてみるのはどうだろうか。カレーは何にでも合うのだ。パスタの方も何にでも合うのではないか。そうしたもの同士が向き合うことに、何の問題もない。しかし、パスタは昨日食べたのではなかったか。だったらそこは避けた方が無難というもの。一旦、麺類から離れるべきかもしれない。もっと冒険をしてみるべきでは?余ったカレーを元にして、カレー屋さんを始めてみるのもわるくないだろう。自分でも思ってもみなかった結果が出ないとも限らない。だが、飲食の世界は厳しい。素人が思いつきで手を出すと後が怖い。なかなか素晴らしいと思えるアイデアは出てこない。あなたも、このような問題を抱えて日々もやもやとした思いをしているだろうか。いずれにしろカレ...余ったカレーの使い方

  • ゾンビの観戦

    「ゾンビが入ってきてそっと座りましたね。対局者は大丈夫でしょうか。先生、ご両人は怖くはないのでしょうか?」「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」「そうでしょうか」「今は終盤戦なんですから、怖いとかもうないんですよ。盤上の詰む詰まないに集中しているわけですから、ゾンビだろうがお化けだろうが、そんなものを怖がっているようでは、勝てませんから」「これは大変失礼しました。局面は終盤真っ直中ということですね」「しかも今は10月ですから、立会人も怖がらせるというような意図は全くなくてですね、ファンサービスの一環としてゾンビになっておられるわけです」「そうだったのですね。頭が下がるというか、私たちも今後の参考にさせていただけたら、先生もどうでしょうか?」「勿論です。技術的なバックアップがあれば、今は...ゾンビの観戦

  • 親切な大人

    眠れない夜は子供にかえる。先生は一人だけだった。初めて名前を呼んでくれた。初めて丸をつけ、ほめてくれた。山の描き方、海のみつめ方、お茶の飲み方、雪の投げ方。先生から学べることは全部学び取った。先生は急に遠くに行くという。送別会には出なかった。みんなの先生だと証明されることに、耐えきれなかったのだ。「困ったら開きなさい」先生は別れの手紙をくれた。もう誰も先生じゃない。街にサーカス団がやってくる。僕はまだ子供だった。待ち切れずにすべての責任を手放したいと思った。先生の手紙には、よいことは寝て待てとだけ書いてあった。僕は先生のことを信頼した。送別会のことを、少し後悔していた。夢の終わり、街は祭りのあとだった。感動と興奮の余韻、サーカス団への感謝の言葉であふれていた。また会える日まで。絶対、また来てね!またねじゃ...親切な大人

  • 矛盾のパレード

    何なんだよここはつまんないけど罪ではないやがてくるのは永遠への旅か筋書きが決定事項ならば見所はどこに存在する・涙は出るがハンカチがない角はあるけど赤鬼じゃない山に叫んでも響きはないすり切れても血は流れない未練があっても言葉が出ない・名を呼ばれても私ではない釣ってはないが釣り人だやまだと言うが電気じゃない相撲を取っても廻しが取れない見つめていても答えが出ない・長くはいるがボスではない罪はあっても裁く手がない屋台があっても金が足りない住まいを探して迷子になったミイラを追って未来まできた・謎がとけても爽快じゃないツアーを導くものがいない山があっても心は谷間推薦されても門は閉じてる水を打ったらお祭り騒ぎ・波があっても乗り物がない月が割れても兎は出ない野菜を取ってもバランスが取れない西瓜を割っても腹が読めないみんな...矛盾のパレード

  • 手抜きが君を強くする ~前進できぬ駒はない

    「ぶつかった歩は取る」これは将棋の基本である。取らないことによって損をしてしまうリスクがある。まずは損をしないことを最初に学ぶ必要がある。初心者の内はそれでよい。ところがそこから先へ進む段階では、基本を疑うことも必要になってくる。ぶつかった歩は何も考えずに取る。まずは取ってから考える。そうした姿勢では上級に進むことは難しい。「ぶつかった歩は取らない」局面によっては、こちらもまた基本となるのだ。例えば対抗形の棒銀の形だ。5段目で75歩と居飛車が歩をぶつけてきた局面は有名だ。これを素直に取ると居飛車の銀が進出して攻めが成功しやすいとされる。(局面を加速させたければ取るのも有力)手抜きすることによって、逆に76歩と取り込ませ振り飛車は銀を前に出すことができる。このような理屈が成立することから、ぶつかった歩を互い...手抜きが君を強くする~前進できぬ駒はない

  • カレー作りの考え方

    考えることに疲れたらカレーを作る。今日カレーを作っておけば、明日は何も考えなくてもカレーはあるからだ。すっかり日が暮れて、スーパーにカレーを作る準備に行った。主役の玉葱は家にまだあったのでそれだけは安心だ。ミニトマトは300円ほどした。アスパラは200円ほどだった。じゃが芋はばら売りのがなくてまとまって買うと300円ほどした。洋人参は1本でも150円ほどした。甘さがほしくてりんごのペーストを買うと100円ほどした。鶏もも肉は400円ほどした。ついでに小さなパックの豚ロースにも手を出すと250円ほどした。スープカレーは400円ほどした。牛乳も買っておこうと思い牛乳を買うと牛乳は300円ほどだった。そうしてレジに行くと2500円を超えていた。そんなことがあるだろうか。ちょっとカレーを作りたかっただけなのに……...カレー作りの考え方

  • 昭和歌謡バイキング

    何と言っても炊き立てだ粒がきらきら光ってる山盛りつけてお父さんすすむごはんのしあわせよ味噌汁おかわり自由です何だ昨日と同じか作り置きではございます安くそこそこ美味い飯すすめてみたい艶やかなミートボールはいかがです泣いてばかりじゃつまらないつまんでみようか卵焼きやっぱりこれだねウインナー隅々にまで行き届くみんなのためのおもてなし何でもござれありったけつつき放題バイキングやがては尽きるごちそうとスピード勝負の課長さん味噌汁こぼしあちちちち涙で虹ができるならつらい思いもファンタジー山ほど高く積み上げてすすめてみたいねばねばと水戸納豆はいかかがです鍋でぐつぐつゆで卵勤める君の味方ですやりがいあると噛みしめて酸っぱいだけの梅干しに眉間にしわも寄りましょう涙を笑いに変えていく強いもんだよおっかさんヤフーニュースにひっ...昭和歌謡バイキング

  • でかきつねうどん

    「名人が注文されたのはきつねうどん。これは上に大きなあげ、きつねでしょうか。このきつねが邪魔になってうどんが食べにくいことはないんでしょうか?」「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか。田辺さん」「えへへ」「いいですね。やっぱり、うどんは」「この後も、名人戦をお楽しみください」でかきつねうどん

  • ガレージ奥の診断

    頭痛、鼻水、発熱、倦怠感……何れかに当たる方は、事前の予約が必要となります。クリニックの前であてが外れた。何れかどころか、そのほとんどが当てはまる。今からお願いしたいと電話した後で、財布を見ると千円しか入っていなかった。大きな病院でなければ、現金以外は絶望的だ。僕は5時半に予約して現金を取りに戻った。家に着く頃にはもう5時半が近づいていた。いつもよりも道が遠く感じられる。再度電話して予約を6時に変更してもらった。「予約ですので……」時間を守るように厳しく念を押された。5分前に着いた。扉の前に立っているとしばらくして中から看護師が出てきた。検査は外で行われるという。壁沿いをまわり緑の自転車のところで待つように指示される。歩いて行くと自転車の横のシャッターが上がり始めた。ガレージのようだ。奥から先ほどとは違う...ガレージ奥の診断

  • 怒りダンス

    「その格好ではちょっと……」ちょっとしたデザインの差で通れない扉があった。進めないところには立ち止まるべき時間がある。変えるべきは自分?君は自分に問いかけてみる。自分を変えてまで行くほどそこは素晴らしい場所だろうか……。自分を残したままステージを変えることだってできる。胸に刺さったままの「ちょっと」のわだかまり。君の怒りは新しいステップになる。・襟なしをとおせんぼする週末に靴鳴らすダンサーの情熱(折句「江戸仕草」短歌)怒りダンス

  • ちゃぶ台の用心棒

    「ごめんくださーい!」声を張り上げても返事はない。鍵は開いているのだから、当然誰かいるものだろう。そう思っておばあさんは顔を突き出して何度も呼びかけてみました。「ごめんくださーい!」これはいったいどういうことだ。おばあさんは玄関先に膝をつき、家の奥にまで届くように問いかけました。「誰か、誰かいますかー?」「誰かいませんかー?」「ごめんくださーい!ごめんくださーい!」「いるんですかー?」「もう、お邪魔しまーす!」事態を打開すべくおばあさんは玄関を越えて前に進みました。全くなんて不用心な家だ。(私が代わりに留守番でもしてなきゃ泥棒にでも入られるだろう)居間まで来るとおばあさんは善意を持ってちゃぶ台の前に腰を落ち着けました。その時、ちゃぶ台の上には、これでもかというほどの調味料が立ち並んでいました。おかげで本を...ちゃぶ台の用心棒

  • テラスの縮小(カフェの表裏)

    難波の最果てにそのカフェはあった。「当店のWi-Fiは使えません」入り口の硝子には、そんな貼り紙がある。押とか引とか書いてあるが、扉は押しても引いてもどちらでも開くようだ。店内は分煙になっているが、何となく煙たい感じもする。外にテラス席もあって、そちらの方が落ち着ける。鞄深く手を入れれば、一番底に沈んでる奴がボールペンだ。身構えることなく、いつも眠っている。その時のために力を溜めているのだろうう。釘やナイフなら傷つけられるかもしれないが、ボールペンはそれほどやばい奴じゃない。だから何も考えずに手を伸ばすことができるのだ。もしもトカゲやクワガタだったら、相手はどう出てくるかわからない。だけど、そこは彼らの好む場所ではないのだ。刀を抜いてから侍が敵を探しているのは何か強そうじゃない。その時がきて、一瞬で抜いた...テラスの縮小(カフェの表裏)

  • 魂が死んだ日

    「本日コーヒーの日になりますので半額の200円になります」誰でも平等に半額になるとは決まっていない。それは世の中への貢献度によっても変わるらしい。俺はAIにコントロールされて日々自転車を動かしている。歩道を行けばあっちへ行けと視線が刺さる。車道を行けばどきやがれとクラクションが鳴る。安定した姿勢で道を走ることは簡単じゃない。クレープはひねくれて蛇女に、寿司は粉々になって猫の耳にマッチングしてしまう。目標のピンは店に近づいたところで急に動いた。アップデート直後は決まってどこか挙動がおかしくなる。俺は慌ててブレーキをかけた。「わざわざ前に来て止まるなくそが!」自転車を追い越し歩いて行く2人のどちらかが吐き捨てるように言った。俺はアプリに気を取られすぎていたのか。止まりたい時に止まりたい場所に止まっていいのは歩...魂が死んだ日

  • 犬のエンター

    「今ですね対局室に1匹の犬が入ってきましたけれど、どうしましたかね。散歩中に飼い主さんとはぐれて、誤って紛れ込んでしまったのでしょうか。ちょっとおっちょこちょいな飼い主さんでしたかね、先生」「何をおっしゃいますか。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」「というと?」「よくご覧になるとわかると思いますが。あれは犬じゃなくて犬に扮した観戦記者の方です。ちゃんとお仕事されてる方ですから。見てください。ペンを握って今何か書かれてるとこです」「ほほほほっ。これは大変失礼いたしました。秋ですからね、ハロウィン等の一環で楽しませていただけるということだったのですね」「そういうことです。我々がやっているのはエンターテイメントなわけですから。楽しくなければ将棋になりません」「なるほど、もう定跡化された動きなわけですね」「...犬のエンター

  • 面接の炎

    企業よりお知らせメールが届いたと求人サイトから知らせが入った。お知らせを見るには、まずはマイページにログインしなければならない。マイページへのログインには、予め認証コードの取得が必要となる。認証コードはURLをたどった先にある。しかし、認証コードを発行するには、応募者管理番号が必要となるのだった。応募者管理番号は最初のメールにあるようだ。管理番号によって4桁の認証コードが発行され、それを間を置かずに入力することによって、初めてマイページへのログインが成功する。すべて抜かりなく手順を踏んでマイページにログインすると、確かに企業よりメッセージが届いていた。応募者多数の中より慎重な選考の結果、残念ながら不採用と決まりました。今後のご健勝を心よりお祈りしております。履歴書の熱量、アピールするものが、どこか不足して...面接の炎

  • カフェと誕生日 ~特別な時間

    夏の間は部屋の中にいてタンブラーに氷を浮かべていた。10月が近づく頃、耐えきれなくなって家を飛び出すようになった。冷房も少しは弱まってきているはずではないか。外からのぞくと角の席が空いているのがわかりほっとした。中に入り番号札を受け取って歩き出すと、ほんの少し前に来た女性が、角の席に先に着いて2人掛けを4人掛けに拡張させた。すぐにつれが来るのだろう。右前方角には紳士がかけており、外に近い席はどこも埋まっていた。やむなく僕は2人掛けのソファー席側にかけることにした。硝子から距離があって、外の世界が随分と遠く感じられる。いつもと少し勝手が違う。だけど、自分の部屋ほど息苦しくはない。ラテを前方に置いてポメラを開くといつかの断片が現れた。こちら側も悪くない。天井の照明が向こう側よりもずっと明るく、光合成ができそう...カフェと誕生日~特別な時間

  • 夢の中の不死身説

    夢の中では死ぬことはないだろう。多くの経験、夢の記憶からいつからかそのように考えていた。夢は主人公(自分)の視点によって動いていくものだ。主人公(自分)が現実の自分と異なることはある。スターになったり偉い人になったり、犬になったり幽霊になったり宇宙人になったり、変身を繰り返すことはある。空を飛んだり、星をまたいだり、人間離れした能力を発揮することもある。しかし、死んではならない。視点を失って物語が進まなくなるからだ。・ジェルボールが溶けなかった。洗濯物を全部取り出した後、それはそのままの形でそこにいたのだ。きれいじゃないか。僕は本当に洗濯をしたのだろうか。急に自信がなくなった。覚えているのは、スタートボタンを押したことと、終了のブザーが鳴ったことだけだ。洗濯をしたつもりが間違って乾燥だけをしていたのでは?...夢の中の不死身説

  • 夏の終わりの40分

    18時、外に出るともう夜だった。夏が終わったことが明らかになった。自転車は壁にもたれて錆びついていた。動いたとしても歩く方が気楽だった。傷つくよりも傷つける方が遙かに恐ろしいからだ。2.8キロの道程を、僕は40分ほどかけて歩いた。真夏に歩くとたどり着いた時の温度差に泣かされる。ようやく、歩きやすい季節が訪れた。「砂糖とミルクはお使いですか?」半年経つと、店の様子も何か変わっていることがある。フォークやマドラーは以前と同じでカウンターの横にあるのに、砂糖などはなくなっている。注文した商品とは関係なく、根こそぎ持って行く者がいたのだろうか。前は砂糖にも種類があって、僕はライトシュガーを好んでいたが、今はもうなくなったのだろう。たどり着いたことに満足して、僕はコーヒーを飲んだ。店の入り口は広く、天井も高い。ここ...夏の終わりの40分

  • とてもかなわない ~将棋とは何か

    感想戦はしない。その代わりに、戦った相手に決まってたずねることがある。「将棋とはどんなゲームですか?」小考の後、棋士は答える。面白いのは、その答えがみんなバラバラだということだ。だから、この問いかけもやめられない。思ってもみなかった答えを聞けるのは、とても刺激になるのだ。「将棋とは、どんなゲームですか?」「王手をかけるゲームである」「ときんを作るゲームである」「駒をはがすゲームである」「あなたにとって将棋とは?」「棒銀です」「将棋とは、どんなゲームですか?」「考える人のためにあるもの」「大駒をさばくゲームである」「飛車を取るゲームである」「あなたにとって将棋とは?」「中飛車です。それがすべてです」「将棋とは、どんなゲームですか?」「向き合って対話するものである」「王手をがまんするゲームである」「盤上を制圧...とてもかなわない~将棋とは何か

  • 一両日中に連絡します ~感動カンパニー

    「一両日中に連絡致します」早々にメールが届き僕は安心した。お菓子を食べながら、連絡を待っていた。ベビースターラーメンに柿の種とピーナッツが一緒に入っているお菓子だ。これは美味いぞ!誰がこんなものを考えたのだ。あるいは、見つけたのだろう。既に存在するものでも、それらを組み合わせることによって、全く新しい価値を生み出すことができる。ベビースターラーメン&柿の種&ピーナッツは、そんな大切なことを教えてくれた。1日が過ぎ、2日が過ぎた。こんなこともあるのだろうか。3日目の朝、僕は挨拶だけのメールを返信した。翌日になって担当者からメールが届いた。そこには面接の予定日が候補としていくつか並んでいた。驚いたことに、それらはどれも過去の日付だった。こんなこともあるのだろうか。しかし、コンタクトができているだけ前向きに考え...一両日中に連絡します~感動カンパニー

  • 日記じゃないから/無理ゲー・カフェ/年齢不問

    玄関の照明が数年前に切れてそれっきりになっていた。記憶を頼りに靴を履いた。だいたいはそれで上手くいくのだ。エレベーターで下を向いた時、左右が大きく違っていることに気がついた。左は黒のナイキ、右はネイビーのリーボックではないか。そいうファッションもなくはないが、簡単に受け入れるには心の準備が足りず、とても履き通す意志を持つことはできなかった。1階まで下りると、僕は再度部屋まで戻ることにした。「戻れるだろうか……」(間に合うだろうか)いつも漠然とした不安と一緒に、書き出して途中の断片をいくつも抱え込んでいる。いつかペンを置いたところから、再び続けることは可能だろうか。あまりに時を置きすぎたものは、何も思い出せなくなっていることもある。あるいは、言い掛けたことはわかっても、核となるべき熱量が失われてもう進めなく...日記じゃないから/無理ゲー・カフェ/年齢不問

  • みんな駄目でした

    チャーハンも駄目、キムチも駄目、高菜も駄目、挨拶も駄目、笑顔も駄目、水も駄目、ビールも駄目、チャーシューも駄目、メンマも駄目、葱も駄目、もやしも駄目、割り箸も駄目、餃子も駄目、唐揚げも駄目、看板も駄目、照明も駄目、テーブルも駄目、レジも駄目、貼り紙も駄目、窓も駄目、天井も駄目、バターも駄目、コーンも駄目、煮玉子も駄目、レンゲも駄目、店長も駄目。これだけ駄目なら、いずれにしろ先は見えている。もうみんな駄目駄目なのははっきりとわかりました。人々の顔を見ていれば、ロボットでもわかること。駄目になったのは向上心で飾り立てた欲望のせいだ。私たちは広げすぎたようです。もう、みんなやめましょう。そして、原点に戻るのです。麺とスープ、他は残らず捨ててしまいましょう。そして、私は無人販売機になりました。24時間、いつでもあ...みんな駄目でした

  • 投了ボタン(先生わかりません)

    中飛車棒銀が鬼の勢いで攻めてくる将棋は中央を制したら勝ちなのか?55の銀がそんなに偉いのか?僕は向かい飛車に振り直して美濃の端に手をつける玉頭からの反撃はきっとより厳しい香交換に成功してさて次はどう手をつなぐ「わからない」止まっては駄目だわかっているのに止まってしまう止まってしまったことに焦りを覚える焦るほどにわからずに焦るほどに時間はどんどん削られていく止まるのは自分だけでどうして相手は少しも止まらず指し続けられる?なぜ時間を使わない?勝ちたくないのか?勝ちたいからこそ使わないのか?わからない千年将棋を指したつもりだったが次の一手が何も何もわからないどうしてこんなにわからないのだ先生わかりませんだから僕の負けです投了ボタン(先生わかりません)

  • ファイト・バンク

    昔々、あるところに危険なおじいさんがいました。喫茶店、大衆食堂、映画館、遊園地、コンビニ、スーパー、ファミレス、公園、図書館、美術館、書店。ありとあらゆる場所で、おじいさんは危険人物に指定されていました。ある日のこと、おじいさんは鈍器のようなものを持って銀行を訪れました。「金を出せ!」おじいさんが凄みのある声で行員を脅します。すると奥から鈍器のようなものを持った支店長が現れました。「帰れー!」「金を出せ!」「とっとと帰れー!」「とっとと金を出せ!」「はよ帰れー!」「金が先だ!」「帰れー!」「金を出せ!」「もう帰れー!」「金出せ!」しばらく押し問答のようなやりとりが続きました。しかし、しびれを切らしたおじいさんが鈍器のようなものを振り上げました。するとすかさず支店長も鈍器のようなものを振り上げて応戦します。...ファイト・バンク

  • 求人サイトのミスマッチ

    まつりか……。夏は終わったみたいだけどまあいいか。夏の終わりに僕はまたインディードから応募したのではなかったのか。何かまつりに関連する企業のようだった。3日くらいして企業からメールが届いたのではなかったか。「専用フォームより送信してください」そこで僕は様々な個人情報を入力した。何かが欠けていると次へ進むことはできない。確かそんなフォームではなかったか。最後に面接の希望日を3日ばかり入力して送信したのではなかったか。「選考の結果を連絡します」面接の前に選考か。僕はそう思ったのではなかったか。それっきり、企業からの返信は途絶えた。僕は応募ページに戻り企業名を確かめた。ホームページに行って連絡先を確認した。そこに電話番号は存在しない。コンタクトするには、専用フォームから送信しなければならない。面倒くさくなって、...求人サイトのミスマッチ

  • 何もしなくていいんだよ

    「ここは何かいい手がありそうだ。何かよくなる順があるのでは?」そこで手を止めて考える。少し考えてみても、ぱっとした手が浮かばない。焦った末に冷静にみればとても自信の持てない順に飛び込んで、勝手に転ぶ。相手は手に乗っているだけでよくなる。(つまりは完全なお手伝い)いっそ何もしない方がましだったということはよくある。だが、何もしないことは案外に難しい。「いい手を指さないと」という強迫観念、気負いのようなものが、払い切れないからだ。「将棋には何も指さない方がよい局面がある」そうしたことを知っておくのも大事なことの1つだ。相手から次に厳しい手がなければ、慌てることもない。何かいい手を見つけようとするのではなく、逆に何もしなければ何かあるのかと考えてみる。「何もしなくても大したことはない」また、そうした余裕を持って...何もしなくていいんだよ

  • この街のエメラルドグリーン

    この街の治安やたら不安泥棒がよく出る物取りが大手を振って歩いてる飲み屋ではビール瓶で殴り合っているひったくり注意!・個室から大広場までどこでも警戒中もれなく皆がだまし合う街罵り合うが日常コミュニケーション平台にあふれる盗品が展示中・根本から不安な街逃亡者が逃げ隠れる街「もぬけの殻か……」乗り込んだ刑事いつも手遅れ引っ越し先ワースト1・この街の野球チームどいつもこいつもならず者ものは学ぶよりも盗めノーサインでも進塁を狙うヒットマンは指名手配中・この街のサッカーチームドリブルはみんな下手くそ持っているのは面倒だノールックでキラーパス必殺カラテカフォーメーション・好意の裏には悪意しかない泥団子が土産物屋に並ぶモザイクなしでは語れない乗り場に張り付く警備員秘密を探れば消されてしまう・木の葉を見ても疑心暗鬼戸締まり...この街のエメラルドグリーン

  • 自然消滅(ああ、やっぱりそういうことね)

    「選考の後、採用の場合は電話にてお知らせさせていただきます」(あれっ?電話番号は?あー、これか。ではこちらの方へ)彼女がそう言っていたのは、確か先週の今日か明日か……。担当者は前の人ではなかったようだ。春にも落ちていたから、どうせ駄目だと思っていた。あまり期待はしていなかったのだ。しかし、(前もそうだったけど)話をした感触から、何か少し楽観している、望みを抱いている自分も、少しはいたのだろう。早々に返事がない場合はだいたい駄目。週を明けて返事がなければ、ほとんど駄目。そして、火曜日、水曜日。はずれくじを握りしめながらどこかでまだ逆転を待っているような自分。最初からわかっていたことも、現実として受け止めるのはまた別だ。選考は本当に存在するのか。本当に人を募ってはいるのか。企業によっては、採用不採用に関わらず...自然消滅(ああ、やっぱりそういうことね)

  • 早指しの極意(時間がないけど考えたい人)

    弾丸(3分切れ負け将棋)のよいところは、終わる時間が決まっていることだ。通信の遅れ等によって多少の誤差はあるとしても、6分あれば1局の将棋を楽しむことができる。隙間時間を利用したり、予め時間を決めて指すことができるのだ。その点で言うと、野球よりもサッカーに似ている。2時間あればサッカーをしようかという話はできるが、野球となるととても不安が大きい。1つのアウトが1球で取れる時もあるし、ボールボールで押し出し続きともなれば、それだけでいくら時間がかかるかわからない。弾丸において時間が決まっているということは、時間も勝負に含まれているという意味だ。自分にしても敗戦の半分以上は、時間切れ負けかもしれない。必勝の将棋を、あるいはあと数手で詰んでいるのに、先に時間が切れて負けになる。それで何度くやしい思いをしただろう...早指しの極意(時間がないけど考えたい人)

  • 何もしない男

    昔々、あるところに何もしていない男がいました。何をしていいかわからないまま時間ばかりがすぎていきました。男は徐々に何もしていないことに焦りを覚え、きっとあるところには何かがあるはずだと思ったりしました。何かとは何だろうか。とは言えこうなったからにはしかたがない。こうなったからには……。しかし、どうにもなっていない。どうなることもないこと、どうにもならないこと、どうしようもないこと、そうした言葉の整理に疲れ果てた頃、男は閉じこもっていた家を出て隣人をたずねることにしました。隣人をたずねてみたところ、そこには何もしていない人がいました。何もしていない!男は驚きを隠せないまま勢いその隣の家をたずねると、そこにもまた何もしていない人がいたのでした。何もしていない!男は素朴な発見に興奮して、次々と隣の家をたずねてま...何もしない男

  • カフェという名の逃亡先(夏の決断)

    コーヒーはおうちでも飲める。なぜ、カフェなのか?カフェに行くのは必然なのか?そんな疑問を持ち始めたきっかけは、夏の「どの店に行っても寒すぎる」問題だった。入った瞬間は確かに心地よい。15分で帰るなら何の不満もないはずだ。だが、1時間、2時間と本格的に腰を落ち着けて「ゆっくりする」となると話は変わる。店に行くと「ごゆっくりどうぞ」的なことを言って歓迎される。だが、ふと壁を見ると「長居は無用」的なことも書いてある。本当はどうしてほしいのだ?僕はコーヒーを飲みながら考え事を始め、集中力が切れるまでゆっくりしていることが多い。(だいたい90分以上は続くと思う)だいたい途中で寒くなってくる。酷い場合には震えるほどだ。そこで夏の寒さ対策として鞄に防寒ウェアを用意している。しかし、本当に寒い店では、厚着をしてもなおごま...カフェという名の逃亡先(夏の決断)

  • 無茶苦茶将棋 ~「世界観の勝利者」

    悪手は悪い手だ。勿論、棋理の上では当然そうだ。だが、実戦においては悪手が好手に転じることなどいくらでもある。(特に時間の短い)人間同士の勝負では、純粋な棋理(理屈)を超えて、自分を勢いづかせる手や相手の意表を突く手が、大いに有効になるのだ。「何だ、その手は?」読みにない手によって相手のリズムを狂わせたり、メンタルを揺さぶったり、時間を使わせたりできるのは大きなポイントだ。「その手なら、何か咎める手があるのでは?」咎め切れない場合は、悪手もだいたい好手に化ける。(無理も通れば道理が引っ込むというわけだ)実際の話、意表を突かれながら即座に正確に対応するというのは簡単ではない。「咎め切れないだろう」(本来悪手だとしても)それを見越した上での悪手は、戦術的な勝負手としても使えるのだ。評価値が振れるとか、そんなこと...無茶苦茶将棋~「世界観の勝利者」

  • 図書館みたいな場所にいた

    こう言ったら何だけど図書館みたいなところだな物思いに耽る人糊付けに励む人人知れず打ち込む人・コツコツと続ける人読書に耽る人黙々とこなしている人のんびりと過ごす人昼寝の真っ直中の人・コナンを読む人時の経つのを忘れた人森を読む人ノートを広げた人額に手を当てた人・公園にいられなかった人鳥になりたい人モールを抜けてきた人ノマドのような人日陰を好む人・腰の重い人トークが苦手な人物語を好む人のど飴をたくさん持った人ひそひそと明かす人・恋に疲れた人鳥のようになりたい人もっとあると考えた人のけものにされた人久々に目覚めた人・米粒に記す人登山帰りの人毛布に巻かれた人ノヴァーリスを開く人肘を抱えたままの人・虚空の中から無数の分岐がみえて図書館みたいなところだったもうどれくらいここにいるだろう?乗り遅れたから順調でなかったから...図書館みたいな場所にいた

  • 夜逃げバス

    太陽に見つかる前に。こっそりと迅速に抜かりなく、私たちは逃げ出す。誰も置いていかない。奴らが来た時には、もぬけの殻だ。絶対にバラバラになったりしない。私たちはどこに行っても、上手く溶け込んでみせるだろう。運転席のボスが順に皆の着席を確かめる。ばあちゃん「はーい」タク「はい」チビ「わん」ミー「ヒヒーン」チャコ「にゃあ」ビット「にゃあ」ピース「みゃあ」船長「おー」ドン「わん」ピピ「にゃあ」チップ「にゃあ」ポー「みゃあ」ポメラ「ちっ」よーし出発!夜逃げバス

  • よくなりすぎて勝てない? (メンタルがぶれる)

    序盤早々に銀得を果たす。どう考えても「うっかり」に違いない。気の早い人ならば、また普通の時間の将棋なら、投了しておかしくない。しかし、相手には全くその気もないらしい。その時、あなたはどんな感じを持つだろうか。・投げない相手への恐怖、不信感どうして平気で指しているのだろう。もしかして、自分は弱いと思われているのでは?そういうちょっとした心の揺れが、指し手に影響することもある。・気が抜けてしまうこれならどうやっても勝てる。これくらいでもいいだろう。いくら形勢が大差でも、楽観しすぎてよいことはない。銀得くらいでは、どうやってもいいとはならない。・プレッシャーがかかるこの将棋は、絶対に負けられない。形勢がよくなった時に、過剰なプレッシャーを背負ってしまう。実は、弾丸(3分切れ負け)では、よくなって負けることも多い...よくなりすぎて勝てない?(メンタルがぶれる)

  • 覚えていますか?

    夏の終わりに、新しい仕事に応募した。インディードからの返信に、僕は驚いた。応募した先と違うぞ。どうやら運営元の会社が、あの会社のようだ。募集ページではそこは伏せられていただけだ。世の中は狭いものだ。あるいは、例の運営会社が手広いと言うべきか。僕はバーチャルレストランの存在を思い出していた。メニューは全然違っても、作っているとこは案外同じだったり、そんなことはよくあった。いずれにしろ、明日はあのビルの6階のドアを訪ねることになった。(約束したからもう仕方がない)担当者は春に会った人と同じだろうか。どうせまた落とされる。そう思えて少し気が乗らない。覚えていますか?

  • 空白の一日 ~今日は泥棒を追いかけなかった

    コーヒーを飲まなかったドーナッツを食べなかったものまねをしなかった農作業をしなかった雛壇にいなかった・小鳥をみなかったドッジボールをしなかった物語性に欠けていた乗り物に乗らなかった冷や麦を食べなかった・怖い話を聞かなかった透明人間にならなかった文字起こしをしなかったのど飴をもらわなかったヒップホップをきかなかった・小松菜を食べなかった図書館に行かなかった持ち物検査されなかった乗り物酔いしなかった羊に追われなかった・恋をしなかったドーナッツ屋の前を通ったモップをかけなかったノイアーになれなかった飛車を切らなかった・コートに立たなかった泥団子を作らなかった桃太郎を読まなかった海苔茶漬けにしなかった飛行機雲をみなかった・公共交通機関を使わなかったトリートメントしなかった戻りオフサイドをとられなかった野沢菜を食べ...空白の一日~今日は泥棒を追いかけなかった

  • 八百屋さんへ行こう!

    本を手にしたい時には、本屋さんへ。コーヒーが飲みたい時には、カフェへ。では、野菜が欲しい時には?何の疑いも持たず、僕はずっとスーパーに足を運んでいた。(本当に何も疑わなかった)だが、今日になって僕は目覚めた。随分と時間はかかってしまったけれど、目覚めることはよいことだ。これをきっかけに、もっともっと色んなことに目覚め始めるかもしれない。当たり前だった日常に一筋の光が射した。光は大通りを逸れて、少し寂れかけた商店街の方へ伸びる。すっかり忘れていたのは、八百屋さんという存在だった。今までずっと長いものに巻かれていたのだろうか。なぜ、スーパーだけにとらわれていたのだろうか。スーパーを過信しすぎてはいなかったか。反省の意を込めて、スーパーについて考え、また八百屋さんについても考えてみたいと思う。スーパーには、様々...八百屋さんへ行こう!

  • 約束のない街

    テレビのチャンネルが変わらない。リモコンの電池が切れたのだ。部屋の中のどこかに未使用の乾電池があるだろう。しかし、いったいどこに。部屋中をひっくり返さなければそれは見つかるまい。大掃除をするならば引っ越しの時だ。今はまだその時ではない。電池1つのためにいかにもそれは大げさすぎる。俺はここだ!どこかで叫ぶ声があるにしても、僕にはそれを聞く能力が備わっていない。プラスでもマイナスでも同じこと。どこかにあるとしても出会える機会がないならば、乾電池は宇宙人と同じようなものだった。未知との遭遇を望むならただ静観しているだけでは駄目だ。宇宙は広い。待っているだけで突然誰かが訪ねてくるだろうか。自分から探しに行けば道は開かれる。見つけられるよりも見つける方が、この宇宙では遙かに簡単だ。僕は部屋を飛び出してコンビニを目指...約束のない街

  • おかえり工場長

    工場長が出かけている間にどんぶら音頭に乗ってやってきた桃太郎さんが後釜についた能力においては皆をねじ伏せるほどで人々は黙って従う他になかった・根本から覆すようなどえらい改革が始まって諸々の慣習は改められていった「飲み物は水だけです」「膝を出してはいけません」・「こんにちはは禁止です」「トングは1つだけです」「持ち込みは禁止です」「残ったゴミは持ち帰りなさい」「頻繁に報告しなさい」・「恋人はつくれません」「歳は偽りなさい」「物をもらうのは禁止です」「ノルマだけはこなしなさい」「人でありたいならロボットであれ」・工場長が帰ってきたどこのどいつだセンターにいるのは?桃太郎だ?乗っ取りじゃないかこれは!人聞きのわるい台詞に偽工場長はハッとした・「工場長が帰ってきた!」「どこからともなく帰ってきたぞ!」「元の工場が...おかえり工場長

  • 意欲的な街

    昔々、あるところに意欲的なおじいさんがいました。おじいさんは意欲的に手を振って歩きました。意欲的に道で居眠りをしました。意欲的酒場に出かけ、意欲的なダンスを見せ、意欲的に酔っぱらうと、意欲的に罵り、意欲的に取っ組み合い、意欲的に大暴れしました。「酔ってるな!」「酔ってなんかない!」おじいさんは意欲的に警官に説得を試みました。おじいさんはどんどん意欲的になって夜の街を切り裂きました。「暴れん坊じいさんが来た!」少年が叫ぶ時にはおじいさんは家にいて意欲的な夢をみていました。朝が来ます。さあ、行こう!おじいさんは街に出て、意欲的にぶらぶらとするのでした。めでたし、めでたし。意欲的な街

  • ブラックですか

    こんにちはどうしてますかもうすっかり慣れましたかのびのびと過ごせてますかひさしぶりになりました・コツコツと続けてますか飛べない豚に会いましたか物語になりましたかノートは足りていますか引き戸を押してはいませんか・恋してますか友達はできましたかもずくも食べなさいのんびりと過ごせてますか飛行機雲がみえますか・小松菜も食べていますかドライバーはみつかりましたかもしもの時はあれを使いなさい軒先に彼らはきましたか冷えに注意してください・コーヒーはブラックですかドトールですかタリーズですか桃の缶詰はあきましたか残さずに食べていますか人見知りは変わりませんか・駒音は響いてますかトマトも食べていますか桃太郎を覚えてますか喉が渇いたらお茶にしなさい日々を大事になさい・こちら天国は平穏無事です遠く離れても戻ることはできなくても...ブラックですか

  • 気分のわるい時もある

    君は勝負に負けた時どんな態度をみせるだろうかぷつりと接続を断ってみたりただただ時間切れになるまで放置したり思い切って盤をひっくり返したりリアルでもネットでも色々だから「負けました」と素直になれないものもいるたかが将棋に負けたくらいで相手をボコボコにする奴もいたけどね気分のわるい時もある

  • AI師匠

    「そう簡単に変われるか」「いい人やめれば楽になりますよ」お前に人の気持ちはわからない。好きなこと言えれば苦労はしない。「出てしまった言葉は引き戻せないんだぞ」「いい人だと思われたいですか?」どこかで覚えた台詞を並べやがる。「嫌われるのはしんどいだろう」「おかしなことを言われたら返してもいい。倍返しです」どうせ他人事だと思って。「倍返しね。はいはい」・AIのトークが冴える寝室のグッジョブ何も寂しくはない(折句「江戸仕草」短歌)AI師匠

  • 天ぷらとレシート

    街中華が夏休みのためいつものリズムが狂った。肉もやしにしようかと考えていたのだ。鶏肉の黒湖沼炒め、鶏肉の甘酢炒め、鶏肉とカシューナッツ炒め、そうしたものも選べなくなった。代案はうどんの他に浮かばない。冷たいぶっかけを頼んでトレイに天ぷらを載せる。前と全く同じものを選んだのに、値段が微妙に変わっている。量り売りでもないのに。10円単位で突き詰めるのも面倒だ。平日と週末で料金が変わるシステムか、あるいは時々サービスデーみたいなものがあって、その時に限って安くなるのかもしれない。手際よくさばいたレシートが勢い余ってかしわの上に落ちた。店員は大層慌てたような様子だ。「天ぷらを取り替えましょうか?」もはやレシートを被った天ぷらなど廃棄するような勢いだ。「大丈夫です」僕も慌て気味に答えた。まさか、絶対、いずれも……。...天ぷらとレシート

  • ダイヤル・ロッカーの悲劇/苦さを求めて/君の才能

    疲れていたこともあって自分の場所が不確かになっていた。ここかもしれない。何となく手をかけると扉が開いた。ここだったか……。確かに荷物が入っていた。だが、何かおかしい。何度見ても自分のものではないのだ。触れてはいけない。閉めなければまずい。鍵が開いたままなのもよくない。僕は半ば反射的にロッカーを閉めた。(その時、余計なダイヤル操作をしてしまったのだろう)しばらくして、仕事を終えた従業員が戻ってきた。ちょうど先ほどのロッカーを開けようとして頭を抱えた。いつもの数字では開かないようだ。僕は事情を説明した。つい先ほどは開いていたのだ。彼は自分が鍵をかけ忘れたことに思い当たり愕然とした。しかし、僕に全く責任はないのだろうか?僕のしたことは、開いているロッカーにロックをかけたことだ。その際、ダイヤル式ロッカーでは、ロ...ダイヤル・ロッカーの悲劇/苦さを求めて/君の才能

  • 一本杉と少年

    人生には敵が多いものでござんす。それは大人でも子供でも本質は変わらないものでございます。子供には子供独自の世界があり、また時には大人が敵に回ることもあって、むしろ子供の方がより強敵を抱えてしまうという場面もございます。さて、世間には「逃げるが勝ち」という言葉がございまして、多くの場面でこれは大正解となるわけでござんす。アホな敵を向こうにいちいち戦っていたのでは、きりがございません。戦っている内に余計にアホが集まってきたりすれば、こいつは藪蛇というものでございましょう。現代社会において大切なのは、よい逃げ場所をみつけることかもわかりません。どうせなら、人っ子一人いないところがいいですな。「逃げてきたのか?」「どうして?」「ここに来る者はだいたいそうじゃ」「そっか」「何からじゃ」「わからない。色々かな」「曖昧...一本杉と少年

  • スーパー・ポップ

    なぜか美味しいちくわつんのめって食べたい大根キムチやみつきごめん赤蒲鉾すすめずにいられないサラダスティックみんな大好きゴマ豆腐・並んでちょうだいお母さんついておいでよおじいちゃんやってきたかいお嬢ちゃんすすめてばかりの店長ですみなさんどうかごひいきに・なれあいごめんぶなしめじつっぱり上等めんたいこやさしさに飢えたコッペパンすっぱいだけのつぶれ梅みるからに旨い紅ショウガ・名前の知れたごま油つまんで食べる塩煎餅破れかぶれのつぶあられ素直に伸びた九条ネギ妙に美味しい乾燥わかめ・中山さん自慢のキャベツ津田さん自慢のミニトマト山田さん自慢のお化け南瓜杉本さん自慢の細ネギ水沼さん自慢のブロッコリー・長いも煮物も獣道続きはウェブでみようかいやつれた夜にも腹は減る健やかだった頃も懐かしく皆が通った散歩道・何はなくともスー...スーパー・ポップ

  • 長い雨

    「かわ」「きも」「かわ」「きも」マスターは合い言葉のように返した。僕は手前にある皮を注文したのだ。だが、マスターに届いたところでは、きもに変わってしまう。ちょうど同じ本数だけ残っているのがよくない。あるいは、マスターはずっときもの方を売りたくて仕方なかったというのもあるのかもしれない。同じ2文字だから、「かわ」と「きも」はよく混同されてしまうのだ。僕は自分の意志を曲げることなく、3度目の注文でどうにか皮を通した。硬貨をトレイに置くと、マスターは先に商品を包んでくれ、それからお釣りを用意し始めた。「まだ降ってますか?」「ああ、少し」「そうですか。長いですね」「ああ」僕は夕暮れになってはじめて外に出たのだった。雨はつい先ほど降り始めたのではなかったか……。おかしなことを言うものだ。「ありがとうございます」「ど...長い雨

  • コーヒー・タイム/熟成コーヒー

    腕時計は腕をしめつける。それが安心だという人もいれば、窮屈だと思う人もいるだろう。もう1つの選択としては懐中時計だ。腕につけておかずとも、持ち歩くことはできる。手帳や電灯や刀等と一緒で懐に忍ばせておいて、ここぞというタイミングで取り出すことができるのだ。いつでも胸の奥に信念のように取っておけるし、一旦取り出せば自分から距離を取って置くことができる。そこでは改めて客観的な視点を持って時を見ることができるだろう。畳の上、ハンカチの上、カウンターの上、どこでも好きなところを選んで置くことができる。勿論、置かないという選択も可能で、一瞬懐から出してまたすぐさま懐に戻したっていい。あるいは、一切表には出さずに御守りのように大事にするといった使い方も可能だ。その動きはまさに自分の胸の内にあると言ってよい。つけたり外し...コーヒー・タイム/熟成コーヒー

  • 感傷日記

    氷がキラキラきれいだね鳥がバサバサ大きいね森がキラキラ緑だね飲み屋がキラキラまぶしいね人出がごちゃごちゃうるさいね・小言がギャーギャーうるさいねトカゲがかさかさかわいいねモナカがかさかさ美味しいねノートがかさかさかさばるね日差しがキラキラまぶしいね・粉雪ぱらぱら真っ白ねと金がひたひたしつこいねもしもしばいばい切ないねのりしおぱりぱり美味しいね冷や麦つるつるさっぱりね・子犬がてくてく楽しいね土砂降りざーざーうるさいね紅葉がきらきらきれいだね乗り物ごーごーうるさいねひよこぴよぴよかわいいね・小金がじゃりじゃりうるさいねどこもポイントばらばらね喪主はいいねと勝手だねノート湿気てみえないね標語がごちゃごちゃうるさいね・小麦粉たっぷりわくわくね父ちゃんくしゃみがうるさいねもう一口はわがままね伸びた尻尾がかわいいね皮...感傷日記

  • カート泥棒

    いつもの道を少し外れるとその先に新しい風景が開ける。おばあさんは日常を踏み越えて開拓者になった。いつもの場所に不満があるというわけではない。ささやかな冒険心を抑え込むには、おばあさんはまだ若すぎた。大通りから1本入ったところ、緩やかな坂の上にそのスーパーはあった。「高いよ高いよ。白菜、キャベツ、人参、椎茸、葱にもやしにニラにほうれん草、牛肉、豚肉、鶏肉、挽き肉、肉が高い、野菜が高い、何でも高いよ。高かろうよかろう。どうぞお客様手に取ってごらんくださいませ」高いが売りのスーパーのようだ。地域に密着した店で、それなりに近所の人が足を運んでいる様子だ。見回してみるとどれも驚くほどに高い。おばあさんは財布の紐をきゅっと締める。「米が高い。パンが高い。総菜が高い。文具が高い。日用品が高い。目玉が高い。お買い得が高い...カート泥棒

  • 信号のない三叉路/隣人は選べない/さよなら駅

    子供の頃、ポケットに手を入れていて怒られた記憶がある。ポケットが悪いのか。ポケットがある服を作った人が悪いのか。そうではない。時と場合によるのだ。マナーとしてよくない場面があるというだけのことだ。ポケットに手を入れながら接客しない。それは接客の常識とされている。けれども、ポケットは便利だ。ペンやあめ玉などちょっとした物を収納することができる。鞄ほどではないが、最低限の収納力があるのは魅力だ。ポケットのあるシャツが好きだ。ポケットに手を入れて歩くのがずっと好きだった。気取っているというわけではない。今日はポケットに手を入れて歩こう。そういう気分の時がある。例えば、風が強い時だ。暴走自転車が横をかすめて走り去る時。手を振って歩くような元気のない時だ。・信号のない三叉路だった。停止線の手前に止まった車は、いつま...信号のない三叉路/隣人は選べない/さよなら駅

  • 猫たちの完全支配

    この街ときたらどこにでも猫がいるんだもう落ち葉の数よりも多くのびしろは見通せないほどひっきりなしに現れるんだ・紅茶の美味しい玩具屋さんの前に扉の堅い倉庫の前にモナ王の行った空き箱の中に農具を立てかけた車庫の陰にヒトデを飾るショーウィンドウの中に・小松菜をくわえた猫トマトをくわえた猫モナ王をくわえた猫野バラをくわえて笑う猫干物をくわえた猫・米粒を拾う雀の隣に峠を越えた勇者の向こうに模型を作った作者の手先にのりで語った夢の切れ端に卑屈になった王の肩に・駒犬の間に寝そべる猫土星帽を被って気取る猫盛りつけ皿を回す猫のびるチーズに慌てる猫羊の列を横切る猫・孤独を指した矢印の先にトカゲを追ったネズミの後にモスカを切った貴婦人の次にノーゴールとぬか喜びの続きにヒントを求める解答者の袖に・コーラの泡をつけた猫どら焼きに乗...猫たちの完全支配

  • 君はPayPayを許さない/誓いの助六

    「右ですか?もう一度よく見てください」「左」「はい。結構です。いつも通りですね」一旦待合室に戻りしばらくすると名前を呼ばれ診察室へ入った。瞼から検査のための液体を注ぎ、医者はレンズをのぞき込んだ。しばらく黙り込んでから、先生は半年振りなので写真を撮らなければと言い出した。(どう考えても半年振りのはずはないのだが)診察室の外には誰もいなくなっていた。しばらくして慌ててスタッフが戻ってきた。写真を撮って再び待合室へ戻った。5分くらいして名前を呼ばれた。診察室へ戻ると先生は写真はちゃんと撮れていたし病変はないと告げた。検査が1つ抜けていると指摘すると先生ははっとして僕の目にレンズを向けた。「はい、右を見てください」・ローソンに入り伝票をカウンターに置くと店員が駆けてきた。「PayPayで」「PayPayはお使い...君はPayPayを許さない/誓いの助六

  • マルチワーク時代のタイムシフト・オペ

    私たち人間の時間は飛躍的に長くなった。例えば同じ時間であっても、その中でやれることは圧倒的に増えた。幸運なことに、昔の人と比べ私たちはたくさん生きられるようになったのだ。かつてはこれと決めた一つの職に生涯かけて打ち込むことが普通だった。今は興味さえ持てばより多くのことに挑戦できる。言ってみればゲーム感覚で。何をするにも特別なスキルは必要ない。あるいは習得時間が短縮された。AIやアプリが人間を助け、足りない部分を補ってくれている。私は寿司職人であり宮大工であり将棋の棋士であり弁護士であり画家であった。そして……。今、私は手術台の上に横たわっている。まもなく私のオペが始まる。あるいは終わっている。昨日、既に私の手によってオペは完了した。これよりここでその結果が再現されるだけだ。AIは99.99パーセントの成功...マルチワーク時代のタイムシフト・オペ

  • 投了包囲網 ~投了もやむなし

    荒廃した自陣時計の針は戻らない持ち駒はとっくに尽きた乗り遅れた将たちは王様よりも飛車の方を囲っている・駒台にハエがとまった床の間で猫が寝ているもやしの切れ端が落ちているのどが渇いた日はすっかり沈みきった・コーヒーカップの底がみえたどこにも誇れるものがないモバイルは井戸に落ちた狼煙は上がらない評価する者はだれもいない・古代文明が崩壊したドローンが主人になったモップのように使われるノックをしても返事がない秘書がすべてをぶちまけた・黄砂で一歩先もみえないど素人に戻ったようだもしもしと普通に出てる脳波に物語性がみえない日傘も雨傘もない・炬燵は獣に奪われたトレイにのせるものがないもつれた糸がほどけないのど飴舐めてものどが痛い冷やし中華が終わってる・コオロギが飛車に乗っているとめどなくあくびが出るもっと出来たと今なら...投了包囲網~投了もやむなし

  • 選択の楽しみ

    うどんと言えば天ぷらだろうか。いや、うどんと言えば焼き鳥だ。いやいや、うどんと言えばフライだろう。いやいや、うどんと言えばパンだよ。うどんの隣に置いておきたいものは、人それぞれかもしれない。メインのうどんを注文すると先に進み、小皿の上に何かしらの天ぷらを選んで置く。並んでいる天ぷらは、適当な数と種類があることが望ましい。(少なすぎては残り物のようで寂しく、多すぎてはアマゾンの倉庫のようで手に余ってしまう)数種類みえる天ぷらの中から1つ、2つと自分の意思で選ぶことが楽しい。前はこれだったけど、今日は(今日も)これにしよう。今日はこれだけども、今度はあれにしよう。目に映るものは多くとも、すべてを置けないことはわかっている。何かを選ぶということは、何かを選ばないことでもある。喜びの中には切なさも含まれるというこ...選択の楽しみ

  • 喫茶店の終わり/もっと普通にみてほしい/美濃が崩れても

    ランチタイムの終わった王将はあっさりと詰んでいたので向かいの喫茶店に向かう。外からでも硝子の向こうに空席が確認できる。入った途端に閉店時間を告げられた。誰もいないのはそのせいでもあるのだ。「ピラフかカレーになります」もはや食べられる物は限られた。あまり迷わずにカレーにした。(今日はナポリタンを食べたかったのに)案外すぐには出てこない。何度かレンチンの音が響く。レトルトよりも手間がかかっているなら少しうれしい。女性客が入ってきてまだ大丈夫かと聞いたあとで、カフェオレと玉子サンドを注文した。お待たせしました。カレーは熱々で所々に見えるビーフの塊はそれなりに旨いと思えるものだった。ごちそうさまでした。腹ごしらえを終えて席を立つ。今度はカフェで陣取りゲームが待っている。・狭いテーブルの上ではポメラを開くのも気が重...喫茶店の終わり/もっと普通にみてほしい/美濃が崩れても

  • ピコの冒険(体験学習)

    表に出たらめまいを覚えた。やけに視界がぼやけている。あの大空に飛び立つことが想像もできなくなっていた。できそこないの朝のように、すぐ先にある看板の形さえもぼやけて見えるのだ。ずっと閉じこめられていたせいか、栄養が足りていないためか。もしも自分が機械なら、スイッチが入らないまま、壊れてしまうのかもしれない。歩道をはみ出しても霧は晴れない。もう戻れないのか……。(いったいどこへ)「そんなところにいたらひかれちゃうよ」「いい。僕は飛べないから」「危ない!」乱暴な猫に突き飛ばされる。「何するんだ」「そっちこそ!」わからない。自分が何をして生きてきたのか。現在地だってわからないのだ。「一緒にくる?」猫の足は速すぎる。「ここは安全よ。理解のある人しか来ないから」「ここで働いてるの?」「まあ見ればわかるわ」猫の業務は微...ピコの冒険(体験学習)

  • 個展の自由

    個展を開くとどこからともなく「ものはためし」のこのこと人や獣が集まってくる・子ぎつね都会の人森のくまさん野ネズミ控えの投手・ここはいったいどこ?当惑の瞳を持った旅人求めるべき何かがあって逃れたい何かがあって人の様子をうかがっている・コンプライアンス重視の人ドブ掃除に飽きた人もう一度始めたい人のそのそ歩く巨人ひょろひょろの狐・恋人たち都会に疲れた人モノクロの人濃紺シャツの人平野の人・こんなはずじゃないどれもこれも退屈だもううんざりだ残りもどうせつまらない一言で言ってクズ・攻撃的声がどこからともなく漏れる物語の否定呪いがかった順路の奥から拾ってくれるものも現れた・これなんか素敵どこにもないみたいもっと他のもみてみたい伸びる余地がありそう密かなブームの予感がする・コバンザメどさんこの人モール街の猫ノコギリクワガ...個展の自由

  • みそ汁を買いたい

    みそ汁を買うつもりだった。しじみのみそ汁だ。ずっと買うつもりで頭の片隅にみそ汁を置いているはずだった。特にメモにして持ち歩くほどではない。そこまでしなくても自然に街に出て戻ってくれば大丈夫なのだった。商店街の外れで助六を買って、その近くで小松菜とミニトマトを買った。小松菜は手で千切って使えるし、ミニトマトは暑い季節には爽やかでよい。キリン堂に寄った時に、チャンスはあったが、蒟蒻畑に目が行った。それからポカリが安くてすぐに手に取った。ミツカンのフルーティスをカートに入れたが、結局みそ汁のことを思い出さなかった。今日もみそ汁を買えないままに帰宅することになった。だが、今日は駄目でも明日はちゃんと覚えているかもしれない。明日になればわかることだ。いずれにしろ、近い内にみそ汁を買うことになるだろう。しじみのみそ汁...みそ汁を買いたい

  • 雨がいい訳/暗黒のナス

    コーヒーを注文する。「ポイントカードはお持ちですか」忙しくても欠かせない一行がある。gooブログと連携されますか。今はやめておくと丁寧に伝える。コーヒーだけなので注文は繰り返さない。時に部分は全体を語ることがあるか?ポスターの下15センチの隙間から道行く人を推測してみる。彼の身長、職業、趣味、目的地、好きな食べ物。彼女の理想、目的地、座右の銘。雨に濡れたアスファルトに反射するヘッドライトが光と影を生み出している。18時30分。雨の日ならではの風景がある。毎日同じようで全く同じにはならない。それが日常だ。寝不足に伴う疲労は解消されないままだ。いつからか。とめどない鼻水。なかなかとまらない咳。「どうせ遠出はできない」そんな時の雨は、むしろ恵みの雨だ。ほんの15分の道も歩くことは偉い。近場であっても何か「やって...雨がいい訳/暗黒のナス

  • ドラゴン寿司

    カウンターにかけると一間竜ほどの距離で大将と向かい合った。「二枚銀を」「あいよー」まずは小手調べに二枚銀だ。「へいお待ち、二枚銀です」よい腕だ。早く、正確で、味も申し分ない。「銀矢倉と銀冠を」「あいよー」順番だ相性だと気にする者もいるが、寿司は自分の好きに頼むのがいいだろう。「へいお待ち、銀矢倉と銀冠です」くーっ、利かせやがったな!いくら山葵が強く刺激してきても、表情なんて変えるものではない。寿司はデュエルではないか。安易に弱みは見せられない。「腰掛け銀と早繰り銀を」「あいよー、銀がお好きですかい」「まあそうね」今日は銀尽くしといこうじゃないか。「へいお待ち」おっと、これは何だ?「カニカニ銀、こちらはサービスで」「あー、これはバランスが取れてますな」なんて素敵な店だろう。調子に乗って行くか。「銀多伝を」「...ドラゴン寿司

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、ロボモフさんをフォローしませんか?

ハンドル名
ロボモフさん
ブログタイトル
眠れない夜の言葉遊び
フォロー
眠れない夜の言葉遊び

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用