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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

1件〜100件

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 6

    「アイ!しっかりして!」麗子は言うと強くアイの手を握る。さとみたちも麗子の背後からアイを覗き込む。アイは視点が定まっていないようで、うっすらと開いた目は虚ろだった。「アイ!ちょっとぉ!しっかりしなさいよう!」麗子は握っているアイの手を何度も揺する。アイはされるがままで反応が無い。「待ちなさい!」姫野先生が麗子の肩を押さえる。「そんなに振り回しちゃ、かえってどうにかなっちゃうわよ!」「あ……」姫野先生に言われ、麗子は我に返る。「麗子、落ち着いて」さとみは声を掛ける。「アイを心配しているのはみんなも同じだから……」「……うん……」麗子は言うと、さとみに振り返る。大粒の涙が頬を伝っている。「でも……」「でも、何?」さとみが訊く。「アイはやっと目を覚ました所なんだから、無茶させちゃダメよ」「麗子先輩は、特別に心配なんで...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪6

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 5

    昼休み、さとみは保健室にいた。さとみだけではない。朱音としのぶ、麗子、松原先生もいた。いつも昼休みに集まり合う『百合恵会』だったが、一番に来るアイが来ない。どうしたのかと皆で話している所に松原先生が来て、アイが保健室にいると知らされたのだ。一番に駈け出したのは麗子だった。保健室のベッドにはアイが寝かされていた。ベッド横の丸椅子には麗子が座り、目に涙を浮かべながら、アイの手をしっかりと握っていた。もう一つある丸椅子には、呆けた表情の友川信吾が座っていて、ぼうっと定まらない視線でアイを見ていた。「で、何があったんです?」松原先生が、保健室の姫野先生に訊く。大柄で恰幅の良い姫野先生は両手を白衣のポケットに突っこんだまま立っていた。「昼休みに屋上に上がった生徒が見つけたんですよ」パーマのきつい髪をごしゃごしゃと掻き回し...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪5

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 4

    「綾部……さとみ……」さゆりがつぶやく。「そうだ!」アイが答える。「それで、何の用なんだ?」「邪魔をするな……」さゆりはアイを睨みつける。可愛らしかった声は低くくぐもったそれに変わる。イヤな臭いが強くなってくる。「邪魔をするなぁぁぁ!」さゆりが一喝すると、さゆりの髪が逆立ち、目尻が吊り上った。アイに向かって強烈な風が吹き付けた。「……何だ、こりゃあ?」アイは戸惑い、信吾に振り返る。「おい、これはどうなってんだ!」「分かんねぇけど、ヤバいって!」信吾は叫ぶ。「とにかくよ、そこから逃げろ!」「逃がさん!」さゆりの低い声が響く。と、さゆりは両腕を高く差し上げた。それをアイに向かって勢い良く振り下ろす。「うわあっ!」アイが悲鳴を上げた。振り下ろされたさゆりの手から衝撃波が打たれた。それを胸元に受けたアイは吹き飛ばされ、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪4

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 3

    アイは屋上を見回す。信吾が言っていたベンチがある。鳥の呑気なさえずりが聞こえる。それに混じって、車の音もする。暖かな日差しと風が吹いている。「なんでぇ、何にもねぇや……」アイはつぶやく。「でも、会長の名前を口にしたとあっちゃあ、見過ごせねぇ……」アイは先頃の校長室の出来事を思い出していた。目茶苦茶になった校長室を見るのは愉快だったが、後で聞いたさとみの話に、さすがのアイもぞっとした。話だと、強力な霊が目覚めたとか……百合恵もその話にうなずいていた。霊とかを信じ切れていないアイも、会長と特別顧問の話ならば、信じる事にした。そして、今、幽霊みたいなのがさとみの名を言ったと信吾から聞いた。これは調べなきゃならないな。アイは決心していた。背後で出入りの扉が軋む。アイが振り返ると、信吾が立っていた。「どうしたんだ、信吾?...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪3

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 2

    信吾は階段を駈け下りた。何だか「ヤバいもの」と接したと感じ、一刻も早くそこを離れたかったからだ。屋上からの階段を下り、最初の踊り場を回った所で、信吾は人とぶつかった。「うわあっ!」ぶつかった信吾は声を上げ、弾き飛ばされた勢いで階段に座り込んでしまった。「てめぇ……」相手が低い声で怒りを表わしている。相手は倒れなかったようだ。信吾は顔を上げた。「……アイじゃねぇか……」信吾はつぶやく。信吾がぶつかったのはアイだった。階段に座り込んでいる信吾を仁王立ちで睨み付けている。「おい、信吾!どう言うつもりだ!危ねぇじゃねぇか!」アイと信吾は顔見知りだった。二人は百合恵のレストランでアルバイトをしていた。アイはホールでの接客係で、信吾は厨房スタッフだった。学校と学年が一緒と言う事で、休憩時間に少し話をするようになっていた。ア...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪2

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第七章 屋上のさゆりの怪 1

    「あ~あ、やってらんねぇや……」三年生の友川信吾はつぶやく。今はまだ三時間目だが、信吾は、屋上に置かれた風雨にさらされて色あせたベンチに寝転がって、空を見ていた。高い空を、時たまかあかあと烏が、足の先から頭の先へと横切る。信吾は授業を抜け出していた。三時間目と四時間目が嫌いな授業だったからだ。進学だ就職だと動き始める頃合いが近付いてきているが、信吾はまだどうするのかを決めかねていた。と言うよりも、決める気にすらなっていなかった。「本当に、つまんねぇよなぁ……」不良っぽい口調でつぶやきはするものの、信吾は不良と言う訳でもない。じゃあ、まじめな生徒かと言われれば、それほどでもない。何となく今に至ると言った感じだった。何かやりたいと言うくすぶった思いはある。しかし、その「何か」は具体的ではない。くすぶっているからと言...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪1

  • 冨美代とみつ

    ああ、素敵ですわぁ、みつ様……あなたが男子であったなら、どれほど嬉しい事でございましょうや。寸暇を惜しんでなさる剣の修行。……あ、今わたくしを熱い眼差しで見て下さった!ああ、頬が熱くなり、からだも芯から熱くなって行くのが分かりますわ……わたくしはみつ様に恋慕致しておりまする……そもそも恋慕とは異性に抱くものと心得てはおりますわ。なれど、みつ様の、凛々しいお姿、豪胆な振る舞い、真っ直ぐなご気性……どれを取りましても、日本男児そのもの。みつ様が女子である事を、わたくしはお恨み致します。いえ、女子としても、みつ様は大和撫子でございます。わたくしなど当然、足元にも及びますまい。ご器量の良さは、わたくしが会うた姫様方に比しても群を抜いておられますわ。それでも尚、みつ様が男子であったならと思うのでございます……嵩彦様と結婚...冨美代とみつ

  • 竜二と虎之助

    「ねえ、竜二ちゃん」「なんだよ、虎之助よう、改まってよう?」「竜二ちゃんって、子供の扱いが上手だったわよねぇ」「そうかぁ?ま、あの先生も一緒にあの世に逝ってくれてほっとしたよな」「わたしね、それを見ていて、決めた事があるのよ……」「決めた事……?」「ええ。わたしね、わたし……」「何だよ、勿体つけないで言えよ」「わたし、竜二ちゃんの子供を産みたいの」「はあああああ!?」「そんなに驚く事無いじゃないのよう!」「だってよう、いつも言っているけどよう、お前は、男なんだぜ?」「男だって産めるわ!」「そんな事絶対に有り得ねぇ!」「だってさ、冨美代さんだって霊体になって結婚したのよ?霊体になれば、出来ない事なんか無いわ!」「でもな、男は子供は産めねぇんだ。霊体になったからって出来ねぇ事もあるんだぜ!」「そう言うと思ったわ……...竜二と虎之助

  • 我慢の人

    我慢の人。こう言うとどんな人が思い浮かぶだろうか。艱難辛苦な人、臥薪嘗胆な人などだろうか。まあ、確かにそう言える。以前、電車に乗っていた時、時間帯もあったのだろうが、やや混雑していた。わたしは吊革につかまって、前の座席の中年の男性を見ていた。早く下りろと念を送っていたわけではなく、その男性の様子に興味を持ったからだ。いくら混んでいる電車とは言え、まだ汗ばむ季節ではない。それなのに、この男性、額に大粒の汗を浮かべているのだ。それだけでは無い、ぷるぷると小刻みに触るえている。ここでわたしは思った。我慢しているのだ、と。いったい何を?それは便だろう。小さい方なのか、大きい方なのかは分からないけれど、じっと我慢をしているのだ。次の駅で降りて、トイレに駆け込むのだろう。わたしはそう見ていた。無事に辿り着いてほしいと願って...我慢の人

  • うるさい人

    うるさい人がいる。わたしの言う「うるさい人」は、どこであっても喋り続ける人の事だ。公共の乗り物の中然り、喫茶店やレストランの中然り、公園のベンチでも然りだ。他愛もない事を延々と、しかも、比較的大きな声で喋り続ける。どうして周りに配慮できないのかと思ってしまう。まあ、そう言う人だからうるさくなれるのだろう。さらに気になるのは、うるさい人には必ず聞き役のような相手がセットになっている事だ。聞き役は言葉少なで、時にはうんうんと相槌を打つだけだったりする。うるさい人には肯定してくれる聞き役が必要なのだろう。逆に言えば、聞き役がいないとうるさく出来ないのだ。ある時、公園のベンチでくつろいでいると、良く見かける「うるさい人」が来て正面のベンチに座った。今日は一人だ。わたしは聞き役がいないから大人しいだろうと思い、目を閉じ、...うるさい人

  • 変わった人

    知り合いに一人や二人、「変わった人」がいるだろう。「変人」と言うのではなく、ちょっとした事が「変わっっている人」の事なのだが。わたしの知り合いの後田と言う男は、わたしからすれば「変わった人」なのだ。後田の名誉のために言っておくが、彼は、名の知られた会社に勤め、そこそこの役職に付き、良き夫で三人の子供の父親だ。誰もが彼を「立派な人」と言うだろう。わたしもそう言う。しかし、ある事だけが「変わっている人」なのだ。それ以外は文句のつけようがない。それとは、食事の仕方だ。後田は、汁物を一番最初に平らげる。それは和洋中、どれであっても同じだった。「他の食べ物と共になんて無理だ。汁とそれらが口の中で混ざるんだぞ?想像してみろよ。ぐちゃぐちゃのべちゃべちゃになった得体のしれないものが口の中で作られるんだぞ?それを飲み込むなんて...変わった人

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 34

    さとみは呆然としていた。重く陰湿で殺伐とした空気は消えた。今さらのように窓から射し込む陽光が温かい。しかし、さとみの心は暗く、凍りついていた。表情も固まったままだ。アイの手を掃い、さとみは立ち上がる。床に落ちていたみつの刀と冨美代の薙刀がすうっと消えた。さとみは百合恵を見る。百合恵はさとみの視線に気がついた。「さとみちゃん……」百合恵はつぶやく。さとみはぼろぼろと大粒の涙を流し、百合恵の胸に飛び込んだ。「わあああああああっっっ!」さとみは百合恵の胸で泣いた。百合恵はさとみを抱きしめる。「みんな、みんな居なくなっちゃったぁぁ!」さとみはわんわんと泣き続ける。「みんな、わたしのせいで!」「違うわよ、さとみちゃん!」百合恵はさとみの背を優しく撫で続ける。「みんな、さとみちゃんを信じていたからよ!だから、自分を責めちゃ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪34

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 33

    金色の光を噴き昇らせているさとみは、みつと冨美代の間をすり抜け、前に出た。いきなり前へ出てきたさとみに、みつと冨美代は驚いている。影から放たれた青白い光はさとみを直撃した。しかし、影の放つ光は霧散した。さとみは向きを変え、自分の生身に飛び込む。生身に戻ったさとみは片岡と共にじゅうたんの上へ転がった。飛んで来たキャビネットはそのまま壁に激突した。浮き上がっていた楯や額が操り糸が切れた様に、じゅうたんの上に散らばった。「会長!」アイの声がドアの外からする。ノブをがちゃがちゃと回している。「どうしたんです?今の音は何です?」「アイちゃん!やるわよ!」百合恵の声だ。「返事を待ってはいられないわ!」しばらくして、ドアに何かが当たる音が繰り返された。「……さとみさん」片岡は自分の上になっているさとみに言う。「何と危ない事を...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪33

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 32

    影の赤い縁取りが揺れる。次にどう出て来るのかと、みつと冨美代は険しい表情で身構える。さとみもじっと影を見つめる。豆蔵と虎之助が影によって消されてしまった。これ以上の犠牲は出したくはない。しかし、みつの冨美代も自分を賭してさとみを守ろうとしている。……おばあちゃん、みんなを守って!さとみは心からそう願う。「むっ!」声がした。片岡だった。楯や額だけではなく、それらを飾ってあった壁際にある重々しいキャビネットが不安定に揺れながらで浮き上がり始めていた。「片岡さん!」さとみは叫ぶ。「このままだと片岡さんが危ないです!逃げて下さい!」「そうは行きませんよ」片岡は相変わらず穏やかな笑みを浮かべ、霊体のさとみを見る。「わたしが逃げると、さとみさんの生身がどうなってしまうか」「その時はその時です!」さとみはきっぱりと言う。「今...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪32

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 31

    「来やすぜ……」闇の中で豆蔵の声がする。邪悪な気が部屋の中央に集まっている気配がする。さとみはそこをじっと見つめる。しばらくすると赤くて細い炎のような縁取りが宙に現われた。それは絶えずゆらゆらと揺れて、一つの形として定まらない。「影……」さとみはつぶやく。「ようやく姿を現わしたわね」「……綾部、……さとみ」影から低い押し殺した声が聞こえる。「邪魔を……邪魔をするな……」影が憎しみと呪詛に満ちた声で言う。「邪魔をするな……」「邪魔?」さとみが小馬鹿にしたように言う。「ふざけた事言わないで!あなたの方こそ、わたしたちの日常を邪魔しているのよ!」強い口調で言うさとみだったが、膝ががくがくと震え、鼓動が早い。影から発散する邪気はとにかく凄まじい。さとみは自分を奮い立たせるためにも、敢えて強い口調になっていた。「姿を現わ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪31

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 30

    「片岡さん!」さとみは叫び、目を閉じる。が、ぶつかったような音はしない。片岡の苦悶の声も聞こえない。さとみは片目を開けて様子を見る。片岡が伸ばして広げた右手の手前でトロフィーが止まったままで浮いている。片岡の並々ならぬ霊力がトロフィーの動きを封じたのだ。「片岡さん、凄い!」さとみは思わず声を上げる。片岡は微笑むと右手を下げる。それに合わせるようにトロフィーが床へと下がって行く。片岡が右手を軽く握ると、トロフィーはじゅうたんの上の転がった。「これで終わりではないでしょうからね。気を引き締めましょう」片岡は言うと、散らかっている楯や額を見る。「操る者がいるのは分かりますが、姿は感じられませんね」「そうなんですよね」さとみはうなずく。「だから、厄介で……」「お仲間の皆さんも苦慮なさるわけだ……」片岡は言うと豆蔵たちを...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪30

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 29

    「では、行きますか」片岡は言うとさとみを見る。「はい、頑張ります」さとみは右手を顔の近くで握って片岡を見る。「では、開けますよ……」坂本教頭は言うと喉をごくりと鳴らし、ドアを開ける。「これは……」開いたドアから室内を見た片岡は険しい表情になる。「これはかなり危険ですな……」「やっぱり、そうですか」さとみは片岡を見る。「わたしみたいなのが言うのも変ですけど、無理はしないでください」「ははは、さとみさんは優しいですね」片岡は優しく笑う。「大丈夫ですよ。わたしの事より、ご自身をしっかりと守りなさい」「でも……」「ここにいる者は、強力です。気を抜くような事があったら、やられますよ」片岡は真顔になる。「さあ、気を強く!」片岡が先になって校長室へと入って行った。さとみが後に続く。それに豆蔵たちが続く。さとみは振り返る。豆蔵...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪29

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 28

    「あっ、そうだ!」さとみは踵を返し、しのぶの所に向かう。「どうしたんですか、会長?」しのぶが怪訝な顔をする。「これから乗り込むってところじゃないですか!」「そうなんだけどね」さとみは真剣な面持ちで言う。「しのぶちゃんって、この手に知識って豊富じゃない?だから、何か良い手が無いかなぁって思って」「良い手、ですか?」「ほら、何かのお守りだとか、呪文だとか、手で印を組むとか……」「印は組むじゃなくて、結ぶです」しのぶは冷静に訂正する。「でも、どうしてそんな事を?」「だって、物を飛ばして来るから、危険じゃない?」「そうですねぇ……」しのぶは腕組みをして考え込む。「たしかに当たったら痛いですもんねぇ……」「じゃあ、わたしが一緒に行きます!」そう言って割り込んできたのはアイだ。「わたしが会長の楯になります!ですから、その間...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪28

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 27

    現われたのは、痩せた長身の老人だった。ぶかぶかの紺色のダブルのスーツを着込み、広い額に肩まで伸びた白髪、青白い細面に存在感を示す鷲鼻、鋭い眼光を少しでも弱めようと言うのか、青みがかった薄い色のサングラスをしている。そして、後ろには助手なのか、同じようなスーツを着た若い男性が付いている。「これは、これは、片岡先生ぃ!」谷山先生は片岡に小走りで駈け寄り、何度も頭を下げている。「急なお呼び出しにもかかわらず、良くいらして下さいましたわぁ!」「ああ、いえいえ……」片岡は笑顔で応える。太くて優しい声だ。「ちょうど時間もありましてな……」「……ふん!」アイは谷山先生の様子を見ながら小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。「何なんだよ、あの媚び媚びな態度はよう!あんな爺いによう!」「でもアイ先輩……」しのぶが「心霊モード」のままのきら...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪27

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 26

    百合恵は黒い革製のライダースーツを着込んでいた。アイと朱音としのぶは百合恵の傍まで駈けて行き、からだを直角に曲げて「おはようございますぅぅぅぅ!」と大きな声で挨拶をした。からだのラインがしっかりと出ていて、坂本教頭が呆けた顔で百合恵を見ている。それに気付いた谷山先生がずかずかと百合恵に近づいた。「ちょっと、何ですのぉ、あなたはぁ?ここは学校、神聖な場所ですのよぉ?そこに、そんな……」谷山先生はおぞましい物を見るように眉間に縦皺を作り、震える右手で百合恵の谷間の見える少し開いている胸元を指差す。「破廉恥な姿でぇ!学校には、年頃の男子生徒や男性教員もいるのですよぉ!」「うるせぇな……」アイが低く言って、谷山先生を睨む。「姐さんがどんな格好をしようと、関係ねぇじゃん」しかし、百合恵は壁を見つめている。さとみには見えて...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪26

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 25

    豆蔵は言うと、黙ってしまった。さとみも黙り込む。竜二はどうして良いのか分からず、さとみと豆蔵を交互に見ながら落ち着かない。「……とにかく、良からぬ事の前触れって事ね……」さとみがつぶやく。「イヤだなぁ……」「へい……」豆蔵も大きくうなずく。「あっしらには手を出せねぇのが、癪でやすよ……」「でも、何とかしなきゃ……」さとみは言うが、肩を落とす。「出来ないかも……」「おい、さとみちゃん」竜二が声をかけてきた。さとみはじろっと竜二を睨む。竜二は慣れているのか、平気な顔だ。「ほら、生身に話しかけられてるぜ」見ると、朱音としのぶがさとみの生身に話しかけていた。ぽうっとしたさとみを見て、しのぶが「心霊モード」全開の表情で、さとみの頬を右の人差し指で突ついている。「さあ、戻って下せぇ」豆蔵が言う。「あっしは、もう少し調べてみ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪25

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 24

    谷山先生は、生徒たちと松原先生を無視して、坂本教頭の前に立つ。「教頭先生ぃ!」きんきん声がさらに高くなる。「校長先生のお部屋の件は、もう解決したも同然ですわぁ!」「おお!」坂本教頭は満面に笑みを浮かべ、流れ落ちる額の汗を拭う。「で、どうやるのかね?」「実はぁ……」谷山先生は、薄い胸を張る。「わたくしの知り合いに霊媒師が居りますのぉ。先程、準備室へ戻る途中で思いついて電話してみましたのぉ……」「ほう、それで?」坂本教頭は関心を示す。松原先生はため息をつく。アイは「勿体つけてんじゃねぇや!」と毒づいている。しのぶと朱音は「心霊モード」の眼差しで谷山先生を見ている。特にしのぶは「霊媒師」の言葉に瞳をきらきらさせている。さとみは皆とは反対方向に顔を向けている。豆蔵と竜二が立っていたからだ。さとみは霊体を抜け出せる。「あ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪24

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 23

    皆で校長室を飛び出すと、坂本教頭は大慌てでドアを閉めた。不意に静かになった。「……これは、一体どう言う事だ……」坂本教頭は額の汗をぬぐいながらつぶやく。「ですから、これはポルターガイスト現象です!」しのぶが言う。さっき怖い目に遭ったと言うのに、もう立ち直っている。と言うより、「心霊モード」が抜けていないのだ。「わたしも初めて見たわ!」朱音も興奮し始め、「心霊モード」に入ったようだ。「わたしも近くで見ればよかった」「馬鹿野郎!」アイが二人を怒鳴る。「お前たち、そんな事を言っていると、会長に心配をおかけする事になるんだぞ!」アイに叱られて、朱音としのぶは我に返った。二人はさとみに向かい、上半身を直角に曲げて「すみませんでしたぁぁぁ!」と、頭を下げた。さとみは苦笑する。「さて……」松原先生はため息をつく。「どうしたも...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 22

    豆蔵から聞いて想像していたよりもひどかった。棚からは全ての物が落ちて床に散らばっていた。校長の机の上もぐちゃぐちゃになっている。壁はもとより、天井にまで物が激しくぶつかった跡が幾つもあった。窓ガラスの一部が割れている。ここから竜二が逃げ出したのだ。「わたしが校長先生から預かった鍵で入って見ると、この状況だったんだ……」坂本教頭はため息をつく。それで、谷山先生にも見てもらったんだが、救急車を呼んだ時には、きちんとしていたそうなんだ」「ボクがいた時もそうでしたよ」松原先生が言う。「どうして、こんなにごてごてに飾っているんだかって、思いましたけどね」「校長先生は、我が校の名誉を重んじておられるのだよ」坂本教頭は言いながらうなずく。「だから、どんな小さな楯だって飾っておくのだ」「単なる見栄っ張りじゃねぇの?」アイが小馬...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 21

    松原先生を先頭に校長室へと向かうと、坂本教頭と谷山先生とが、校長室前に居た。「やあ、来てくれたかね」坂本教頭は笑む。どう見ても作り笑いだ。その横で、谷山先生は不機嫌そうな顔をしている。「それで、何があったんですか?」しのぶがきらきらした瞳で坂本教頭に訊く。しのぶは「心霊モード」に入っているようだ。声が大きくなる。「校長室に、何か出たとか?」「えええっ!」朱音は声を上げると「心霊モード」になった。「そうなんですか?そこの所、詳しく!」「あなたたちぃ、静かになさいぃ!」谷山先生がしのぶと朱音を叱る。「……全く、今時の娘たちってのはぁ……」「でも、何かあったから呼んだんだろ?」アイが谷山先生の前に立ち、じろりと睨みつけて言う。「呼んどいて文句を言うってのは、どう言う事なんだよ?」「……わたくしが、呼んだんじゃないわよ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 20

    とりあえずは、様子を見ようと言う事で話が付いて、百合恵と豆蔵は帰って行った。一人になったさとみはベッドに入って、暗くした部屋の天井を見ながら、あれこれと考える。……どうしよう?影って強そうだものなぁ。霊体ならおばあちゃんも助けてくれるだろうけど、生身じゃなぁ……それに霊体で挑んでも、姿を見せずに物を投げつけて来るんじゃ、どうしようも出来ないしなぁ……だからって、生身で挑んだら、色々とぶつかって来て痛いだろうしなぁ……そんな中にはアイたちを連れては行けないよなぁ……会長のためなら、たとえ火の中水の中なんて言ってはくれているけどなぁ……しのぶちゃんなら、何か良い知恵が浮かぶかなぁ……あ~あ、「さざなみ」のメロンパンが食べたいなぁ……さとみはすうすうと寝息を立てた。翌日、登校すると、校門前に松原先生が立っていた。ちょ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 19

    豆蔵は後ろ姿のままでさとみに部屋に現われた。さとみが豆蔵に気がついて霊体を抜け出させて声をかけて来るまで、この姿勢を崩さない。若い娘の部屋に現われる際の豆蔵なりの掟だった。「あら、豆蔵じゃない?」聞き覚えのある声に、思わず、豆蔵は振り返った。百合恵が、さとみのベッドの上にさとみと並んで座っていた。「……姐さんじゃねぇですかい」豆蔵は驚きの声を上げる。「どうしてこちらへ?」「豆蔵たちが校長室へ潜り込むって言っていたから、何か報告しに来るんじゃないかって思ったのよ」「さいですかい。……でも、どうして姐さんが嬢様の所に?」「豆蔵の事だから、わたしが夜のお仕事をしている時間だからって、先ずはさとみちゃんに話に来ると思ったのよ。わたし、今日はお休みにして、豆蔵たちが来るのを待っていたのよ」「何とまあ、手回しの良い事で……...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 18

    虎の助と豆蔵の声で我に返った竜二は、ドア目がけて走った。だが、ドアを通り抜けられず、じゅうたんの上に転がってしまった。「竜二さん、何やってんだ!早く出て来なせぇ!」豆蔵が言う。竜二はのろのろと起き上り、ドアを見上げる。「豆蔵さん……出られないんだよう……」「何でやす?もっと大きな声で言ってくれねぇと聞こえねぇ!」「ドアを通り抜けられないんだよう!」泣き声交じりで竜二が叫ぶ。叫びながらドアを叩く。「な?ドアを叩くしかできないんだ。ドアから出られないんだよう!」「じゃあ、他の所から出てみなせえ!」「他って……?」「壁とか、窓とかあるじゃない!」虎之助が叫ぶ。「とにかく早く出ないと!」「……分かった、やってみるよ」竜二は壁に向かって立つ。手を伸ばす。しかし、手は壁を通り抜けない。窓へ向かう。窓ガラスに手の平を当てるが...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 17

    竜二はドアに手を当て、ゆっくりと顔をドアに近づける。竜二の顔がドアを通り抜けた。竜二は校長室の中をきょろきょろと見回す。ひっそりとしていて、特に変わった様子は見られない。「……どこも変わっちゃいなさそうだぜ……」竜二は顔を戻し、後ろにいる皆に振り返って言う。「じゃあ、そう言う事で……」「竜二ちゃん……」ドアから離れようとする竜二の腕をつかんだ虎之助は、竜二の顔を見ながら頭を左右に振る。「な、何だよう……」竜二は怯えた声を出す。「離してくれよう……」「ダメよ」虎之助の手に力が加わる。「ちょっと覗いたくらいじゃ、何にも分からないわよ。ちゃんと中に入って、ちゃんと調べなきゃ」「でもよう……」「何?まさか、怖いの?」「いや、……そうなんだよう……」「大丈夫よ。豆ちゃんもいるし、おみっちゃん(みつはそう呼ばれてむっとする...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪17

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 16

    深夜……豆蔵たちは学校のグラウンドに居た。「さあて……」豆蔵はつぶやくと、不敵な笑みを浮かべる。「校長室とやらに乗り込みやすかね」「どのような手順で致しましょうか?」すでに薙刀を手にした冨美代が言う。「ただ乗り込んでも、如何なものかと存じます」「そうですね」みつがうなずく。「冨美代殿おっしゃる通りだと思います」「あらあら、そうやってまた仲良ししちゃってぇ……」虎之助が茶々を入れる。「これから、緊張の時間なのよぉ」「それは、分かっています!」みつが強い口調で言う。「それと、虎之助殿、そう言う物言いはお控えください!」「そうだぜ、言い過ぎだ」竜二が虎之助に言う。しかし、虎之助は笑みを返す。「あら、どうして?わたし、嘘偽りを言ってはいないわよ?」言い終わると、虎之助は挑発的な眼差しをみつに向ける。「わたしは何を言われ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪16

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 15

    松原先生が手を下したわけではないと、末松校長が自らが言い出し、坂本教頭も困ってしまった。「教頭先生は、松原先生が、何やら仕掛けをしたとお思いですの?」百合恵は、困惑の表情の坂本教頭に、笑顔で尋ねる。その目には意地悪そうな光が宿っている。「いや、あの……」坂本教頭は額に汗を浮かべ、ちらちらと末松校長を見る。末松校長は、呆けた顔で百合恵の後ろ姿(主にスラック過ごしの型の良いお尻)を見ている。「……ちょっと、宜しいですか?」坂本教頭は言うと、百合恵を病室の外へと連れ出した。百合恵は病室を出る前に、末松校長に振り返り、飛び切りの笑みを浮かべて見せた。末松校長もつられたのか、あまり品の良くない笑みを浮かべた。谷山先生は百合恵を見ながらむっとした顔をしている。さとみは百合恵について病室を出た。坂本教頭と百合恵はスタッフステ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪15

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 14

    百合恵が先になって廊下を歩く。さとみはてこてこと後について行く。廊下の一番奥の病室の前で百合恵の足が止まり、さとみに振り返る。「ここのようよ」百合恵が言う。さとみは出入り口についている名前表を見る。四つに仕切られた名前表から四人部屋だと知れる。しかし、少し薄くなった「末松」と言う名前しか書かれていなかった。校長しかいないようだ。この表から、校長は右の窓側にいるようだ。「さあ、行くわよ」百合恵は言うと、自分の胸元に手をやる。……百合恵さんも緊張しているんだわ。さとみは思った。「……失礼いたします」百合恵は言いながら病室に入って行く。その後にさとみが続く。右の窓側のベッドに、坂本教頭と谷山先生が並んで立っていて、こちらに顔を向けた。さとみは予想通りだと言うように、眉をひそめた。谷山先生がさとみを認めた。「あらぁ、あ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪14

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 13

    さとみはどたどたと階段を降り、玄関に向かう。百合恵は白のブラウスに黒のスラックスと言う、少々地味な姿だった。化粧もいつもより落ち着き目だ。「……百合恵さん、今日は、また、その、あの……」さとみは言葉に詰まる。百合恵はそんなさとみの様子を見て笑んでいる。「ふふふ……さとみちゃん、言いたい事はちゃんと言わなきゃ、伝わらないわよぉ」百合恵が意地悪っぽい言い方をする。「ねぇ、みんなもそう思うでしょ?」百合恵はさとみの後ろの方を見ながら言った。さとみが振り返ると、豆蔵たちが居た。皆うなずいている。さとみはぷっと頬を膨らませた。「何よう!みんなでぞろぞろ付いて来て!」「良いじゃないの」百合恵は優しく笑む。「みんな、さとみちゃんが心配なのよ」みつと豆蔵が百合恵の前に出て、何やら話をしている。百合恵は驚いたり、うなずいたり、く...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪13

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 12

    松原先生のマンションを出て、皆はそれぞれ帰宅した。「まあ、気にするなよ」と、松原先生は言っていたが、さとみは気になってしまう。さとみが帰宅すると、いつものように母親が台所ですっとんぱったんしながら夕食を作っていた。「あら。お帰り」母親がさとみに声をかける。「……何だか元気がないわねぇ?」「そんな事ないわよ」さとみは答えるが、思わずため息をついてしまう。「……やっぱり、そんな事あるのかなぁ」「まあ、良いわ。今日はさとみの好きなハンバーグよ」「それってお父さんが好きなんじゃない」さとみは言い返す。「わたしはミートボールが好きなの」「似たような物じゃないの」母親は言うと笑う。さとみは呆れた顔で階段を上り、二階の自室に向かう。着替えもせずにどっかりとベッドに腰掛けたさとみは、ぼうっとした顔で天井を見ていた。……これから...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪12

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 11

    ベッドに寝転がって、ぼうっと天井を見つめていた松原先生が起き上がったのは、玄関チャイムが鳴ったからだった。壁に取り付けてある電話の受話器の様なインターホンを取り上げた。古いマンションなので、映像が見えるタイプのものでは無かった。「……はい?」松原先生は気の無い声で応対する。「どちら様?」『あ、先生!わたしです、栗田です!』声はしのぶだった。『今、みんなと来たんです。お話があります』「みんなって、『百合恵会』か?」『そうです!』「じゃあ。百合恵さんも一緒かな?」『百合恵特別顧問はいません』「そうか……」松原先生はため息をつく。「じゃあ、今開けるから、待っていてくれ」松原先生は玄関ドアを開ける。松原先生は青いTシャツにジーンズ姿だった。教師には全然見えない。「松原先生……」先頭にいたさとみが言ってぺこりと頭を下げた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪11

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 10

    「えええええ~っ!」「そんなぁ!」「不当な処置じゃないですかぁ!」「てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!」皆は抗議の声を上げた(一人だけ抗議の声を上げなかったが)。「君たちが何を言っても、これは決まった事だ」坂本教頭はうるさそうな顔をする。「さあ、もう帰りなさい」「そうですぅ!」谷山先生が教頭の尻馬に乗って、ふんぞり返る。「校長先生に危害を加えるような先生が顧問をしているサークルなど、もうおしまいですわぁ!」「おい!」アイがずいっと谷山先生の前に出た。「今、何て言いやがった?あ?」「ひえっ!」谷山先生はアイの迫力に押されて短い悲鳴を上げると、坂本教頭の後ろに隠れた。「な、何だね、君は!」坂本教頭が言う。しかし、目が泳いでいる。「生徒の分際で、教師を脅すのかね?そうか、君があの不良のアイだな?これは問題だな!停学、いや、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪10

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 9

    「皆さん、お待ちなさいぃ!」出入りの引き戸の前に仁王立ちする谷山先生は、一人も逃すまいと言う気迫で、生徒たちを睨み回す。「なんだよ?これから用事があるんだよ!」真っ先に口を開いたのはアイだ。アイは言いながら前に出て、谷山先生のすぐ前に立つ。谷山先生より背の高いアイは、鋭い目付きで先生を見下ろす。「どけよ!もう放課後だぜ?先生が帰宅を阻止するのか?知り合いの弁護士に相談しようか?」容赦のないアイの言いっぷりに、谷山先生がひるむ。「ふむ、知り合いの弁護士か……」別の声がして、谷山先生の後ろから坂本教頭が入って来た。小馬鹿にしたような半笑い顔をしていた。「大きく出たな……」坂本教頭は言う。「白々しいはったりだ。所詮は不良娘の戯言だろうが」「はあ?」アイが教頭を睨みつける。「はったりかどうか、試してみるかい?わたしはこ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪9

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 8

    「それで、松原先生は教頭の権限で帰らされちまったって事です」アイが締め括る。「じゃあ、松原先生、自宅にいるのね」さとみが心配そうに言う。「でも、松原先生が暴力なんて……」「わたしもそう思います!」しのぶが言う。「松原先生、ちょっと変な所があるけど(「のぶに言われたくないわよ」と朱音が横やりを入れる)、決して手を上げる先生じゃないです!」「たしかに、あの先生じゃ、殴って来てもたかが知れているよなぁ……」アイは言いながらうなずく。「でも、よっぽど腹が立ったんじゃないですかね?校長野郎、陰険だから」「アイも何かあったみたいな言い方ね」麗子が言う。「ほら、何時だったか、校長に呼び出しを受けたって言ってたじゃない?」「……ああ、そんな事もあったな。でも、その時に限らず、呼び出しは食らっていたよ」アイは言うとにやりと笑う。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪8

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 7

    「会長!」放課後に、しのぶがさとみの教室に来た。さとみは驚いた。まだ教室にはさとみの同級生が幾人も残っている中を入って来たからだ。それだけでは無い。どちらかと言うとぽっちゃり目のしのぶが走って教室に入って来たからだ。しのぶの様子に、既に下校の準備が出来ていて、のろのろと動いているさとみにいらいらしていた麗子も驚いていた。「あら、しのぶちゃん、どうしたの?」さとみは呑気そうな声で訊く。「なんだか、慌てているみたいだけど……?」「え?会長、知らないんですか!」額に汗を浮かべ、はあはあと息の上がっているしのぶが、目を大きく見開いた。「一大事ですよ!」「一大事?」麗子が言う。「なんだか、大袈裟っぽいけど?」「麗子先輩!」しのぶがむっとした顔で麗子を見る。「そんな事無いですよ!『百合恵会』存亡の危機なんです!」「ますます...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪7

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 6

    「そりゃ、一体、どう言う事です?」松原先生は驚き呆れている。「ボクは、校長に危害を加えてはいませんよ?」「そう言われても、校長先生がそうおしゃっておられますのでぇ……」「たしかにちょっと口論めいた事にはなりましたよ。でも、ボクは暴力は振るいませんよ。そんな事をしたらどうなるかくらい分かりますからね」「では、校長先生が嘘をおっしゃっているとぉ?」谷山先生はわざとらしいほどの驚いた顔をして見せる。生徒の何人かが「うえっ……」と吐くような声を漏らした。「それは問題発言ですわねぇ……」「じゃあ、ボクが嘘をついていると言うんですか?」松原先生は呆れた顔で言う。「ボクが校長を殴ったとか、蹴ったとか?」「あら、どうしてそう直接的な暴力の事を言うのかしらぁ?」「だって、校長が、ボクにやられたとか言ったんでしょ?」「おほほほ……...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪6

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 5

    松原先生が一年生の授業をしていると、救急車のサイレンが聞こえてきた。たまに聞こえるから気にはしていなかったが、それが段々と大きく聞こえるようになると、話は別だ。「あ、救急車、学校へ来たぞ!」外を見ていた不埒な男子生徒が言って立ち上がる。皆もつられて立ち上がり、窓の方へと集まる。松原先生も外を覗く。救急車はサイレンを止め、昇降口へと向かう。昇降口はここからは見えない。「先生、何があったんでしょうか?」女子生徒の一人が松原先生に訊く。「何か、変な人が侵入して来て暴れたとか……」「いや、違うな」松原先生は冷静に答える。「もしそうなら、もっと叫び声やら悲鳴やらが聞こえるはずだ。それに警察も来るだろうし」「先生って、落ち着き過ぎていて、つまんない」訊いて来た女子生徒が文句を言う。「だから、みんなに『クール松原』って言われ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪5

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 4

    「まったく!何てヤツだ!」末松校長は、松原先生が出て行ったドアを睨みつける。腹立ちが治まらない。「な~にが、最新のペン型ICレコーダーだ!そんなもの、恐るるに足らんぞ!」末松校長は言うが、冷や汗も流している。気にはしているようだ。権力にしがみつくものは権力を失う事を一番恐れているからだ。「……とにかく、あの生意気なヤツをぶっ潰さねば、腹の虫が治まらん!」末松校長は、机の上にあった書類をつかむと、くしゃくしゃに丸めた。それが重要書類かどうかなど見もしない。どうせ、ざっと見て判を押すだけの事しかしないのだから、関係は無かった。もし、重要書類だったら「わたしは見ていない。もらっていない」と言い張り、取り巻きの一人に責任をなすりつけ、後で「すまなかったねぇ」と猫なで声に謝り、ちょっと良い思いをさせてやれば済む事だ。末松...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪4

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 3

    末松校長は松原先生を睨みつける。しかし、松原先生は委縮はしない。嫌いな人間に嫌いだと意思表示されても、元々が嫌いなのだから、それ以上の感情も湧かない。やっぱりボクは校長が嫌いなんだ、くらいにしか思わない。末松校長は、生意気な若造め、お前のようなヤツには権力の恐ろしさを知らしむべきなのだと怒り、知っている教育委員会のお偉いさんに言って教職の剥奪してやるぞと、鼻息を荒くする。「それで?学外者を学校に入れる許可を誰に申請するんですか?」松原先生が訊く。「学年主任ですか?教頭ですか?」「むっ!」敢えて校長の名を出さない事に末松校長の怒りは高まる。それでも、威厳を保とうと落ち着いた声を出す。「……分からんのかね?学校で一番の権限を持つ者だよ」「ほう。……と言うと?」松原先生はすっとぼけた顔で訊き返す。「そんな人、居ました...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪3

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 2

    何とか校長室の前に着いた。松原先生は、ノックをしようと右手を上げたが、そのまま手を止めてしまう。……あの校長、お気に入りには薄気味悪い猫なで声を出すくせに、気に入らないとなると、ねちねちぐちぐちと嫌味の連続だものなぁ。良くあれだけの言葉が出るものだと、感心してしまうよ。きっと国語でも教えていたんだろうな。松原先生は思う。松原先生は明らかに末松校長に気に入られていない。松原先生も末松校長が嫌いだった。だったら、それでおあいこにすれば良いのだが、権力のある側はそうはさせない。明らかな優位を示し、完膚なきまでに相手を叩き潰すまで、その手を緩めない。特に末松校長はその傾向が強い。そして、松原先生はそういう相手に徹底的に逆らう傾向が強かった。……まあ、ねちねちぐちぐちが始まったら、いつものように、頭の中で円周率を暗唱して...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪2

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第六章 備品飛び交う校長室の怪 1

    重い足取りだ。一歩歩く毎に全身の力が急速に抜けて行く。これは絶対に行きたくないと言う、無意識の意識だ。そう思った『富美江会』顧問の松原先生は、廊下を歩きながら、ため息をつき、足を止める。これで何度目だろうか。目的地までは大した距離ではないが、兎に角、行きたくなかったのだ。松原先生は、次の授業が無かったので、数学準備室で一年生のしのぶ用に難しい問題を作成していた。と、内線電話が鳴った。他の先生方は授業で出払っている。やれやれと思い、受話器に手を掛けようとするが、架けて来た相手の名前を見て、手が止まる。「……校長……」松原先生はつぶやき、物凄くイヤな顔をした。校長は、末松泰三と言って、年配の男性だったが、自分の思い通りにならないと嫌味を言い続ける。教育委員会のお偉いさんとのつながりが強いらしく、逆らう先生を僻地の学...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪1

  • ヒーロー「スペシャルマン」・17

    オレは「スペシャルマン」と呼ばれる正義のヒーローだ。常人の及ばない様々な特殊能力を秘めている。この力で悪を倒し続けているのだ。さて、ヒーローの条件の一つとして認識されているものに、ヒーローが持つ、特殊能力と言うのがある。垂直の壁を上れるとか、からだがゴムのように伸びるとか、空や海中を何の装置も無く行き来できるとか、他にも色々とあるだろう。しかし、ここで気がつく事がある。それは、特殊能力と言うものは、一ヒーローに一つずつ備わっている、言ってみれば「一芸ヒーロー」だ。一人で幾つもの特殊能力を持つヒーローなんていないだろう?では、オレはどうかと言うと、残念ながら、突出した特殊能力は待っていない。どうだ、素直に言えるオレって、正直者だろう?とは言え、どの能力も平均よりは高いのだ。自己紹介で「常人の及ばない様々な特殊能力...ヒーロー「スペシャルマン」・17

  • 宇宙探検隊の冒険 78 ~宇宙船の墓場~

    宇宙探検隊は宇宙の知られざる惑星や生命体や現象を調査することが目的だ。「隊長、怪現象に遭遇しました」「宇宙に怪現象はない。原因不明なだけだ」「無数の宇宙船があります」メイン・スクリーンに、様々な異星人たちの様々な形の宇宙船が乱雑に漂っている宙域が映し出されていた。「生命反応はありませんね」隊員がパネルを見ながら言う。「何なんでしょうか?」「ここは難破した宇宙船の辿り着く、宇宙船の墓場だな」隊長がスクリーンを見ながら言う。「……おや、珍しい宇宙船だぞ」「じゃあ、回収して、持って帰りましょう」探検隊の宇宙船が近付くと、突然、停止してしまった。「何と、宇宙船が故障したのか?」「隊長!ここは宇宙蜘蛛デデダダの巣です!生き物はヤツの餌になります!」スクリーンにデデダダが大写しになった。作者註:突然の「宇宙探検隊の冒険」で...宇宙探検隊の冒険78~宇宙船の墓場~

  • 宇宙探検隊の冒険 77 ~兄弟げんか~

    宇宙探検隊は宇宙の知られざる惑星や生命体や現象を調査することが目的だ。「隊長、宇宙人と接触しました」「異星人か地球外知的生命体と言うのだ」「兄弟げんかの仲裁のお願いだそうです」「なんと。下らぬ話だが宇宙平和のためだ」相手の宇宙船に乗り込むと、からだは一つで頭が二つの異星人が立っていた。「聞いてください」一方の頭が言った。「兄は右へ行きたいと言うのです」「弟は左と言って譲らんのです」もう一方の頭が言う。「それで、けんかなのです」「ならば、間を取って正面へ進むのが良い」隊長の提案に異星人は納得し、礼を述べて出発した。「さすが隊長ですね」隊員は感心している。「……隊長、先ほどの宇宙人からで、友人の兄弟げんかも仲裁してくれと……」「構わんぞ、どうせ進行方向の問題だろう」「ですが、十人兄弟だそうです……」宇宙探検隊の冒険77~兄弟げんか~

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 34

    何度か座り込みそうになるさとみを、アイたちが支えるようにして家へと送ってくれた。「あらあら、皆さん、ありがとうございます」母親が礼を言う。「これで『さざなみ』のメロンパンでも買って食べてちょうだいませ」母親は言うと、財布からお札を取り出して、アイに手渡した。「いえ、そんな、いけませんよ。舎弟は会長第一は当然なんですから」アイは受け取りを拒む。朱音としのぶもうなずく。「どうかお戻し下さい!」「あら、その会長の母親の言う事は聞けないのかしらぁ?」母親はふざけた口調で言う。アイたちは困った表情になった。「ほほほ、良いから受け取ってちょうだい。『さざなみ』のメロンパン、さとみも好物なのよ」アイたちはお札を受け取り、礼を述べて帰って行った。その間、ぽうっとした顔で立っていたさとみだったが、皆が居なくなると三和土にしゃがみ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪34

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 33

    後の事はお任せくだせぇ、豆蔵がどんと胸を叩いて請け負ってくれ、皆もうなずいてくれたので、さとみは霊体を生身に戻した。途端に全身が重く感じた。さとみは、持った事はなかったが、鉛のような重さとは、この事を言うんだろうなと思った。午後の授業の最中だったが、起きていられなかった。机にうっ伏してしまった。左頬を開いたノートの上に乗せ、半開きにした口から、ちょっと大きめのいびきが漏れた。「綾部!いびき!」教壇から数学の高島先生が怒鳴る。生徒たちはくすくすと笑っている。しかし、さとみは反応しない。麗子がいれば、さとみを叩き起こしてくれるだろうが、今日は休んでいる(ズル休みだ)。高島先生は教壇から下りた。もうそろそろ退官が近いおじいちゃん先生だが、剣道部の顧問をやっているので、身のこなしは軽やかだ。すたすたとさとみの傍まで来る...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪33

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 32

    それは眩しいものでは無く、心安らかになる輝きだった。さとみは全身を金色に光らせながら、一歩前に出る。影はそれを避けるように後退する。「……おばあちゃん……」さとみはつぶやく。……おばあちゃんがわたしを守ってくれているんだわ。そう思うと、さとみに力が湧いてくる。影が怯んだからなのだろうか、動けなかった皆が起き上がった。泣いていたまさきときりとも、さとみの光りで落ち着きを取り戻したようで、泣き止んでいた。倒れていたまきも上半身を起き上がらせ、きょろきょろと周りを見回している。春美はまきに駈け寄って、しっかりと抱きしめた。「さあ、あなたの負けよ!」さとみは影を睨みつける。「大人しく、春美さんと子供たちを解放しなさい!」影は宙を漂っている。さとみの光りのせいなのか、少し縮んだように見える。「嬢様!影野郎、弱ってきている...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪32

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 31

    みきのさとみをつかむ手が離れた。離された右手はだらりと下がり、座り込んいる床に当たった。それすら気がついていないさとみは、じっと影の真っ黒な瞳を見つめている。みきの全身から黒い霧のようなものが浸み出してきた。さとみはその様子に驚きもしない。ぽうっとした顔で成り行きを見ている。やがて霧のようなものはみきの全身を覆い、みきは見えなくなってしまった。霧の様なものはゆっくりと上って行く。霧の離れたみきは、元の幼い子供の顔に戻って立っていた。目を閉じていた。さとみは上って行く霧を目で追う。それに連れてさとみの顔は上を向く。そして、誘われるように立ち上がった。みきには全く関心を持ってはないなかった。霧はゆっくりと集まり始めた。霧は影へと姿を変えた。しかし、さとみは反応しない。相変わらず、ぽうっとした顔で影を見ている。「さと...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪31

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 30

    「おねえちゃん、たいへんだね」みきがさとみを見上げて言う。「わたしより、みんなの方が大変よ」さとみが答える。「みんな命懸けだわ……」「みんな、しんでいるんだよ?」みきが不思議そうな顔で言う。「それなのに、いのちがけ?」「あら、変な事言っちゃったかな?みんな一生懸命って意味よ」幼稚園児相手なのだが、さとみは対等なつもりで話してしまう。「おねえちゃんはしんでいないの?」みきがじっとさとみを見て唐突に言う。「え?ええ、そうなんだけど……みんなを助けたいって言うか、あの世に送ってあげたいと言うか……」「ふ~ん……」「何か変かなぁ?」「おねえちゃん、ずるいわ。しんでいないのに、しんだようなことができるなんて」さとみは返事に窮した。狡いなんて初めて言われたからだ。「……それはね、わたしの、何て言うのかなぁ……使命と言うか、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪30

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 29

    さとみたちは北校舎に向かう。最近長い時間霊体を抜け出させているせいか、霊体でいる時の方がさとみは状態が良い気がしている。つまり、生身でいる時は疲れやすくなった。これではいけないとさとみ自身も思うのだが、こう色々と出来事が続くと、気にしてはいられない。まして、今回は子供たちが絡んでいる。ますます放ってはおけない。北校舎の一階に来た。既に妖しい気配が漂っている。「こりゃあ、あっしが探りに来た時よりも、いやな感じが増してやすぜ……」豆蔵は言うと、右の手の甲で顎の下を拭く仕草をする。緊張しているのだろう。「早いとこ、上へ参ぇりやしょう」「待って、豆ちゃん」虎之助が言う。「みんなで一斉に行くとすぐに見つかっちゃうわ。そうなったら、子供たちが危ないかもしれない。だから、わたしが様子を見て来るわ」「いえ、探りならあっしの方が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪29

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 28

    昼休みが終わり、午後の授業が始まる。眠い目を擦りながらいるさとみだったが、ふと教室の外に豆蔵がいるのを見つけた。豆蔵は軽く頭を下げた。さとみは霊体を抜け出させた。「豆蔵、何か分かったのね?」「へい」豆蔵はうなずく。「あんな影野郎ごときで怖じ気づいちゃいられやせんぜ」「わあっ、頼もしい事言ってくれるわね」さとみはにこにこする。「春美さんたちを助けてあげたいけど、どうしたら良いのかって悩んでいたから、嬉しいわ」「やっぱり嬢様は逞しいでやすねぇ……」豆蔵は昨夜の百合恵との会話を思い出してしみじみと言う。「それで?」さとみは豆蔵の感慨に頓着する事無く訊く。「春美さんたち、どこにいるの?」「あちこちの伝手を巡って、見つけやした」豆蔵は険しい表情になる。「春美さんたちは、この学校の中におりやす」「え、そうなの?」さとみはほ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪28

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 27

    翌日の昼休み、いつものように『百合恵会』は、さとみの教室の外の廊下にたむろしている。麗子は体調がすぐれないとかで休んでいる(本当は昨夜の出来事を聞かされるのがイヤでズル休みをしているのだ。その事はさとみだけが知っている)。しかし、今日は皆の表情が暗く重々しい。「会長、これからどうするんですか?」しのぶが言う。「お話だと、もう、わたしたちの手に負えないような……」昨夜、帰る前に、さとみは皆に状況を話した。保母さんの春美と幼稚園児のまさきときりととまきの霊が体育館に囚われたような状態でいた事。それをあの影が行っていた事。護符の力と対決したが、影が勝った事。そして、春美と子供たちが消えた事。「わたしとしては、春美さんと子供たちを何とか助けてあの世へ行ってもらいたいわ」さとみはしのぶに答える。「でも、危険でもあるわ。あ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪27

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 26

    昼間のように明るくなった体育館だった。さとみは立ち尽くしている百合恵に駈け寄る。アイと松原先生が、それに続く。朱音としのぶは、ようやく目から手を離した所だった。「百合恵さん!」さとみは百合恵の前に立つ。しかし、百合恵は顔を上げたままだ。「……消えちゃったわね……」百合恵がぽつんと言う。「倒せたと思ったのに……」「百合恵さん……」さとみは心配そうに百合恵を見上げる。「あの保母さんと子供たちも消えちゃった……」百合恵は体育館を見回す。さとみもそれに倣った。みつたちは悔しそうにしている。「歯が立たないわ」百合恵は言うと、力の無い笑みをさとみに向ける。「見てごらんなさい……」百合恵はさとみに半紙を見せた。「あの文字列が、消えている……」さとみは愕然とする。半紙は真っ白で何も書かれていない状態になっていたからだ。「これっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪26

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 25

    「さとみちゃん!」百合恵は言うと、ぽうっと立っている生身のさとみの手から半紙を取り上げ、体育館に駈け出した。百合恵は半紙を両手に持って広げ、さとみに向かって来る。書かれている文字列が広げられた半紙の表で仁王立ちしているような姿を作った。金色の光が、さらに増して行った。その光に気圧されたのか、さとみに迫る影が止まった。「さとみちゃん!今なら動けるはずよ!」百合恵が叫ぶ。さとみは生身の戻ろうと動いた。金色に光る体育館に、半紙を持って体育館に立つ百合恵と、身構えているみつたちを見ている自分に、さとみは気がついた。「……百合恵さん」さとみはつぶやく。それから、慌てて大きな声を出した。「百合恵さん!戻れましたあ!」百合恵はさとみに振り返り、大きくうなずいてみせた。と、影がゆらりと動いて向きを変えた。みつたちへと動き始めた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪25

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 24

    春美はそのまま体育館の壁の所まで行ってしまった。壁に背凭れ、皆を見るともなく見ていると言った様子だ。「思うのですが……」そう言ってきたのは、みつだった。さとみは春美からみつに顔を向ける。「あの影の力は強力です。春美殿がここから出たいと言う気持ちだけで出られたとは思えません」「どう言う事?」さとみは首をかしげる。「でも、実際に、わたしは春美さんと、わたしの部屋で会ったのよ」「ですから、それはあの影のなせる事ではないでしょうか?」「じゃあ、影がわざとしたって事?」「わたしはそう思います」「そう言えば、部屋で会った時、わたし霊体を抜け出すことが出来なかったわ……」さとみがつぶやく。「あの時は、本当に霊能力が無くなっちゃってのかもって思ったんだけど……」「それは影がさとみ殿を押さえつけていたからではないでしょうか?」「...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪24

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 23

    「ねえ、春美先生……」さとみが声をかける。春美はさとみを見るが、また駈け出そうとするまさきときりとを押さえつけていて大変そうだ。「竜二、子供たちをお願いできる?」さとみが笑みを浮かべて竜二に言う。だが、それは取りあえずの愛想笑いだ。「春美先生とお話があるから……」「え?さとみちゃんがオレに笑いかけてくれた……」竜二の涙腺が崩壊しかかる。「いつも怒ってばかりだったさとみちゃんが……」「ほらほら、しっかりしてよ」虎之助が竜二の背中をさする。「さっきみたいに泣いていたら、さとみちゃんの御用が果たせないでしょ?」「うん……」竜二は涙を拭いながら言うと、うなずく。……なんだか竜二って大きな子供ねぇ。だからあのボクちゃんたちと相性が良いのかも。さとみは、竜二の生い立ちに同情した自分が馬鹿馬鹿しくなってしまった。結局は、竜二...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 22

    みきはまさきときりとを連れてさとみの前に立つ。まさきもきりとも、竜二に叱られた時よりも大人しくなって、みきの隣に並んでいる。「さあ、なんでもきいて」ミキは大人びた口調でさとみに言う。「このふたりって、ようちえんでもいたずらっこたちだったのよ」「そうなんだ……」さとみは言うとしゃがみ込み、子供たちと同じ目線になる。「でも、みきちゃん、わたしが話が聞きたいって、良く分かったわねぇ」「だって、ポコおねえちゃん、はるみせんせいになんかきいていて、はるみせんせいがくびをよこにふっていたから、こんどはこっちにきくのかなって」「凄い観察眼ねぇ……」さとみは感心する。「なんだか、名探偵みたいだわ」「わたし、テレビアニメで『名探偵エラリー』みているもん」みきが胸を張る。「わたしのうまれるずっとまえからやっているんだって、ママがい...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 21

    「あら、あなた……」さとみが言う。「たしか、わたしの部屋で……」「はい、そうです」その霊体は答える。「何とかここを抜け出して、彷徨っているうちに、強い力を感じたので、お邪魔したんです……」「でも、話は出来なかったわね……」「ここに連れ戻されたので……」「……どう言う事?」そこに虎之助が割り込んできた。「あなたのその格好って、保母さんみたいだけど?」「はい、そうです。わたし、春美と言います」その霊体が言う。「この子たちの通っていた幼稚園に勤務していました。帰宅途中でバスが事故に遭って……」「あら、お気の毒様な事……」虎之助が言う。「何処で事故に遭ったの?」「駅前の道路をバスが走っている時でした。猛スピードで逆走してきた乗用車があって、バスの運転手の田中さんがあわててハンドルを右に切って、そうしたら、バスの左側に居...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 20

    「竜二ちゃん!」虎之助が瞳をきらきらさせて竜二に後ろから抱きついた。竜二は思わず抱えていた子供たちを落としそうになった。子供たちは悲鳴を上げて竜二に強く抱きつく。竜二も子供たちをしっかり抱える。「おいおい、危ないじゃないかよう!」竜二は困った顔で言う。「それに、そんなに強く抱きつかれたら、あばら骨が折れちまいそうだ」「良いのよ!良いの……」虎之助の力がさらに強くなる。「あああ、わたし幸せ……」「あばら骨折るのが良いわけないだろうよ」背中に虎之助の頬擦りを感じながら竜二が言う。「それに、子供たちの前だぜ、ちょっと離れろよ」「な~にを照れてんのよう!」虎之助は離さない。「もう、好き好き、大好き!」「分かった、分かったよう」竜二は面倒くさそうに言う。それからからだを屈めて子供たちを下ろした。まさきもきりとも竜二の前か...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 19

    まさきときりとが、また歓声を上げた。さとみが振り返ると、薙刀を持った冨美代が立っていた。男の子たちは、新たに現われた冨美代の周りを回っている。「きものだ!それに、へんなかたな!」「わあい、くつはいてるぞ!きものなのに!」明治のハイカラ娘のスタイルは、子供たちには滑稽なものに映ったようだ。「ええい、お黙りなさい!」冨美代は騒ぐ子供たちを叱る。「どう言う躾をされたのですか!これでは野猿と変わりませんわ!」「さるだって!」まさきは言うと、鼻の下を伸ばし、下顎を前に突き出して、猿のような顔をし、猿のような声を出した。「きっきっきいぃぃ~!」「わあ、おもしろそう!」きりともまさきの真似をした。「きっきっきいぃぃ~!」「黙らっしゃい!」冨美代は言うと、薙刀の切っ先を男の子たちに向けた。「大人をからかうような子供は万死に値し...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 18

    「あっ、嬢様……」「さとみ殿……」呼びかける豆蔵とみつの間を通り抜けて、さとみは、みつと豆蔵に近づいているにやにやしている男の子たちの前に立った。「こらあ!」さとみは腰に手を当て、からだを前屈みにし、頬をぷっと膨らませて怒った顔をしながら、男の子たちを叱った。男の子たちは足を止め、驚いた顔をしてさとみを見上げた。しかし、突然笑い出した。「きゃはははは!おねえちゃん、ちっともこわくないよう!」「わはははは!おねえちゃん、ポコちゃんみたいだ!」男の子たちの笑いは止まらない。さとみはさらに頬を膨らませる。「君たち!見えていないと思っていたようだけど、もう丸見えだからね!」さとみが勝ち誇ったように言う。「もう、いたずらは出来ないわよ!」「いたずらなんかしてないよう!なあ、まさき?」「そうだよ、いたずらじゃなくってマジだ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 17

    松原先生が体育館の扉を開ける。重いドアは壁に沿って開いて行く。扉下部の滑車が軽く軋む。朱音は用意していた懐中電灯を、しのぶはデジカメを、自分のポシェットから取り出す。松原先生は壁にある電灯のスイッチに手を伸ばす。「あ、ちょっと待って、そのままで」さとみが言う。皆の動きが止まる。さとみはじっと体育館を見ている。気配はある。だが、やはり姿は見えない。百合恵は豆蔵たちとひそひそと話をしている。豆蔵がうなずき、みつと共に体育館に踏み込んだ。二人も気配を察しているようで、豆蔵は十手を帯から抜き取り、みつは鯉口を切る。「どう、さとみちゃん?」百合恵がさとみの横の並んで言う。「見えるかしら?」「……いえ、見えません」さとみは不安そうな表情で百合恵を見上げる。「百合恵さんは、見えていますか?」「わたしも見えない……でも、気配は...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪17

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 16

    百合恵の車が見えた。その脇に人が立っている。街灯から少し外れているので人影としてしか見えないが、すらっとしたシルエットだ。こちらに気がつくと頭を下げ、駈け寄ろうとして足を止めた。「アイちゃん、さとみちゃんには話してあるから、恥ずかしがらなくて良いわよ」やはり、アイなんだ。さとみは思った。アイは躊躇していたが、開き直ったのか、駈け寄って来た。オーバーオールに袖を肩まで捲り上げた黒のTシャツに、オーバーオールと同じデニム生地のキャスケット帽をやや斜めにして被っている。恥かしいのか、さとみと目を合わそうとしない。「アイ、似合っているじゃない」さとみは素直に思ったままを言った。アイは百合恵に負けないほどスタイルが良い。「その帽子、良い感じよ」「ありがとうございますぅぅぅ!」アイはいつも以上に大きな声で礼を言い、直角に上...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪16

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 15

    「さとみ、百合恵さんがお迎えに来てくれたわよ」夜に百合恵が迎えに来ることを聞いていた母親が部屋のドアを開けて言う。さとみはイチゴ柄の下着姿のまま、ベッドに座り込んで、床に並べた数種類の服を見下ろして難しい顔をしていた。母親の突然の乱入で、きゃあきゃあ言いながら慌ててタオルケットで身を覆う。真っ赤な顔で母親を睨む。「開けて良いかどうか聞いてって、いっつも言ってるじゃないのよう!」「出掛ける時間分かってんのに、何で裸でいるのよ?」「着替えをしていたんじゃない!そんな事も分かんないの!」「いつものポコちゃんで良いじゃない」「だって……」「百合恵さんもポコちゃんだったわよ」「……え?」「あんたに合わせたって言っていたけど……」母親がブランケットにくるまれているさとみを見て、小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。「当の本人が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪15

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 14

    「会長!」二時間目が終わった後の休憩時間だった。この休憩時間は他の時間よりも少し長い。教室の外の廊下に、行き交う生徒に混じって朱音としのぶが立っていた。昨夜、百合恵が帰り際に「明日、ちょっとあるかもしれないから、良く寝ておくのよ」と言っていたのを思い出したさとみだった。「どうしたの、まだお昼じゃないのに。何かあったの?」廊下に出たさとみは二人に訊く。二人は大きくうなずく。「あの、ちょっと、お耳を……」朱音は言うと、さとみの耳を指差す。内緒の話があるようだ。さとみは耳を寄せる。「松原先生からの伝言です。今夜、体育館に行きます。十時に校門集合です。特別顧問の百合恵さんも来ます……」「え?」さとみは驚いて耳を離し、朱音の顔を見る。「大丈夫なの?」「話では、昨日の夜、松原先生に百合恵さんから電話があって決まったそうです...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪14

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 13

    ジーンズの前部に挟まれた長方形に折られた青い布が半分ほど覗いて、滑らかで白い肌とコントラストを作っていた。布はお札ほどの大きさのものを丁寧に包んでいる。「……百合恵さん、それは?」驚いたさとみは布と百合恵の顔とを交互に見る。「まさか、お金を払って、なんて……」「ほほほ、面白い事を言うわねぇ」百合恵は笑いながら、布を引き出した。布は力無く、だらりと曲がる。「これはお金じゃないわ。それに、こんな薄っぺらじゃ、札束とも言えないじゃない?」「じゃあ、何なんですか?」「これはね……」百合恵はさとみに布を手渡す。さとみは怪訝な顔をしながらも受け取る。百合恵の肌の温かさが残っていた。「護符……まあ、お札ね」「お札……?」「わたしのお店のお客さんでね、亡くなったおじい様の遺品を整理していて見つけたそうなの。相当古いもののようだ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪13

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 12

    「……あら、冨美代さん、何しに来たの?」虎之助がわざとらしく言う。「別に、あなたには関わりがございませんでしょ?」冨美代は虎之助を睨む。どうやら、虎之助は、みつから冨美代へとライバル心を持ち替えたようだ。そして、冨美代もそれを受けて立っているようだ。「わたし、てっきり、愛しい愛しい嵩彦様を追いかけて行っていると思っていたわ」虎之助が言う。明らかに言い方に棘がある。「それとも、ここに愛しい愛しい嵩彦様がいらっしゃるのかしらぁ?」「教養の足りない方は、愛と言えばすぐにからだの結びつきばかりを考えますのね」冨美代が小馬鹿にしたように言う。「わたくしと嵩彦様は、あなたのようにべたべたとした破廉恥な関係ではございませんの」「あらそうなの?それはそれは、ふふふ……」虎之助は笑う。「愛の表現なんて多様にあるのよ。あなたのよう...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪12

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 11

    「さとみ様!聞いてくださいまし!」現われた冨美代はむっとした顔のままさとみに迫る。「は、はい……」さとみは冨美代の迫力に押される。「嵩彦様のは、もう、ほとほと愛想が尽きました!」「……結婚をしたんじゃなかったっけ?」「ええ、致しました」冨美代はさらに機嫌の悪い顔になる。「それが間違いだったようでございます!」「そんなぁ……」「情にほだされたのでございますわ。わたくしが浅はかでございました」「……何があったの?」「結婚すると何をするかご存知ですか?」冨美代はじっとさとみを見つめながら言う。「さとみ様ならご存知ですよね?」「え……?」「本当、あそこまで合わないとは思いませんでしたわ」「……性格の不一致……?」「左様ですわ!」さとみは困った顔を豆蔵とみつとに向ける。豆蔵はにやけながらぽりぽりと頭を掻き、みつはやや赤ら...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪11

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 10

    「豆蔵が来れない理由、知りたい?」「はい……」「じゃあ、座って」百合恵に促され、さとみとベッドに座る。その隣に百合恵が座る。ほんのりと甘い香りが漂う。……百合恵さんの香りだわ。さとみは思う。「さてっと……」百合恵はさとみに笑みを向ける。「実はね、豆蔵に限らず、みんなが顔を出さないのは、竜二が原因なのよ」「え?竜二……?」「そうなのよねぇ……」百合恵は言うと、大きなため息をついた。「ほら、女子トイレの出来事で、虎之助が流人と共に居なくなったじゃない?あれなのよ……」「……良く分からないですけど……」「あの時、わたし、きっと竜二は泣くわよ、とか言っていたじゃない?」「そう言えば……でも、竜二もイヤがっていたから、問題ないんじゃ……?」「大有りだったのよ」百合恵はもう一度大きなため息をついた。「竜二、やっぱり、虎之助...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪10

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 9

    泣くだけ泣くと、涙は涸れる。わあわあ泣いていたさとみも、終いにはすんすんと鼻を鳴らすだけになっていた。それでも、百合恵の胸から顔を上げない。百合恵は幼子をあやすかのように、ずっとさとみの背中を優しく叩いている。「……百合恵さん……」さとみは顔を伏せたままで言う。泣き続けたせいか、声が嗄れている。「わたし……」百合恵は何も言わず、さとみの背を叩いている。しばらくして、さとみを顔を上げた。乾いてしまった涙の跡が両頬に残っている。百合恵を見上げる両の目は悲しみ色になっている。半開きの唇が震えている。すんすん鼻を鳴らしながら、それに合わせてからだがぴくんぴくんと動く。そんなさとみを見ながら、百合恵は優しく微笑んでいる。「うん?」百合恵が優しく問う。さとみは顔を伏せる。「わたし……」さとみがつぶやくように言う。「わたし、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪9

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 8

    それ以降は何も起こらなかった。しばらく見ていたのだが、何も無かった。時間も時間なので、皆は帰宅した。さとみはイチゴ模様のスエット上下に着替えて食卓に着く。いつもは元気にご飯をお替りするさとみだったが、その日の夕食は一膳だけだった。母親がさとみのおでこに手を当てて熱が無いかを確認した。「……熱は無いわね」母親はぴしゃぴしゃとさとみのおでこを叩きながら言う。「帰り遅かったけど、何か食べたりしたの?」「いや、してない……」さとみはつぶやくように答える。「深刻な問題があるのよう……」「深刻な問題ねぇ……」母親はさとみの顔を覗きこむ。いつになく真剣な眼差しの母親だった。「……まさか、さとみ……」「え?」さとみは母親の真剣な表情に思わず緊張する。「な、何よう……」「あんた」母親はごくりと喉を鳴らす。「彼氏君にふられたんじゃ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪8

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 7

    しばらく数学準備室でだらだらと時を過ごし、程よい時間となったので、松原先生を先頭に、さとみたちは体育館に来た。千賀子が言っていたように、女子バスケ部の一年生たちが部活の後片付けをしている。練習が厳しかったのか、疲れた表情で黙々と作業に当たっている。「顧問の正田先生、厳しいからなぁ……」松原先生がつぶやく。「本人も女子バスケで大活躍したから、気合の入れ方が違うんだよなぁ」「それって、やり過ぎじゃないですか?」しのぶが怒ったように言う。「学校の部活なんですよね?確か、学習指導要領では『教職員の指導の下に、主に放課後などにおいて自発的・自主的に活動するもの』って定義されていたと思います。みんなへとへとになりたくて部活しているとは思えないんですけど」「まあ、そう言うな、栗田」松原先生は苦笑する。「運動部に関しては『自発...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪7

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 6

    楽しい事に費やす時間は全然足りないと思うのに、イヤな事に費やす時間は一向に進まない。朱音とさとみは、数学準備室の休憩用の古びた二人掛けのソファに並んで座って、前に置かれた古びたテーブルで問題集を広げ、もらった紙に色々と書き込んでは、頻繁に壁掛け時計を見上げながら、ため息をついている。体育館の部活が終わるまで、まだ時間があった。しのぶは松原先生と何だか数学の難しい話をしているようだ。「……会長……」朱音が隣のさとみに小声で話しかける。「まだまだ時間がありますねぇ……」「そうねぇ……」さとみはため息をつく。「松原先生、良い先生だとは思うけど、数学の先生じゃあねぇ……」「会長、今何問目を解いているんですか?」「ふふふ……」さとみは力なく笑う。「まだ、三問目よ……」「凄いじゃないですかぁ」朱音が羨ましそうに言う。「わた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪6

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 5

    「う~ん、そうかぁ……」数学準備室にしのぶと朱音、さとみがいる。三人を前に、自分の椅子をきいきいと軋らせている松原先生は、ぽりぽりと頭を掻いてる。千賀子の話を聞いて、放課後に「百合恵会」の顧問である松原先生を数学準備室に訪ねた三人だった。麗子は用事があると言ってアイを強引に連れて帰ってしまった。さとみは「用事があるんなら仕方がないわね」と言いつつも、心の中で「弱虫麗子」と馬鹿にした。数学準備室は他の先生方は居なかった。「で、どうでしょうか?今夜とか?」勢い込んで話すのはしのぶだ。「駈け回る体育館なんて、凄くないですか?」「まあ、凄いねぇ……」「それに、ちかがかわいそうです」朱音も掩護する。「あの子、本当にバスケが好きなんです。それなのに、部活に参加できないなんて……体育の授業でも、体育館の時はおどおどそわそわっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪5

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 4

    「……と言う事があったんです……」千賀子は話し終えると顔を青くさせている。「それで、タオルはどうなったの?」さとみが訊く。「近づくと、また浮き上がったりとか……?」「やめてよ!」そう言ったのは麗子だ。話をしていた千賀子以上に顔が青い。「アイ、話は終わったようだから、屋上に行こう!」麗子は強引にアイの腕を引っ張る。アイは困惑した顔をさとみに向ける。さとみはうなずいてみせる。アイは一礼して、麗子に引っ張られて行った。「……麗子先輩、どうしちゃったのかしら?」朱音が急ぎ足で去って行く麗子の後ろ姿を見てつぶやく。「……まさか、怖がり、だったりして……」「そんな事無いわよ」しのぶが言う。「だって、会長と幼馴染って言ってたじゃない?それに、あのアイ先輩と仲良しなのよ?そんな人に怖い物なんかないわよ」「そうか、そうだよね……...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪4

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 3

    タオルの置き忘れた場所の見当はついている。一緒に行くと言ってくれた友人の真奈美には「大丈夫よ」と言って、先に帰ってもらった。いくら同性でも、汗まみれタオルは見られたくない。それに、内緒にしている事だが、千賀子は結構汗っかきだった。それが分かるのも恥ずかしい。帰り支度を終え(とは言っても、部活のジャージ姿に、大きめのスポーツバッグを肩にかけた、いかにも運動部と言った姿ではあったが)、千賀子は体育館に向かった。体育館の一番高い天井部分に、ぼんやりした薄緑色の水銀灯が三つ、常夜灯として間隔を置いて並んでいる。いつの間にか外も薄暗くなっている。普段はこんな様子の体育館を見た事が無かったが、なんだか薄気味が悪い。「さあ、とっととタオルを回収、回収!」千賀子はわざと明るい声を出して、自分に言う。タオルは思った通り、壁の傍の...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪3

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 2

    「わたし、バスケ部なんですけど……」千賀子が話し始める。一年生は練習の後、用具の片付けがある。この学校のバスケ部は、特に女子は強いので人気がある。なので、新入部員が多い。一年生だけで充分に片付けが出来る。「わたし、体育館のモップ掛け担当なんですけど……」何人かで床のモップ掛けを行なっている。「その体育館で……」千賀子はそこまで言うと口をつぐんでしまった。「何だよ、いきなり黙っちゃ、分かんねぇじゃねぇかよう!」アイがいらいらした声を出す。「わざわざ会長が訊いてくださっているんだぞ!」「わっ!」千賀子が悲鳴を上げる。「すみません!」「ダメよ、アイ。そんな言い方しちゃ」さとみがぷっと頬を膨らませる。「ちかちゃん、怖がっているじゃないの」「すみませんでしたぁ!」アイがさとみに上半身を直角に曲げて頭を下げる。「でも、黙っ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪2

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第五章 駈け回る体育館の怪 1

    「ねえ、かねぇ、のぶぅ……」学校の昼休み、いつものようにさとみ会長の居るクラスへ向かおうとする朱音としのぶは、クラスメイトの田所千賀子に呼び止められた。「なあに?ちか?」朱音が振り返る。「急ぎ?そうじゃなかったら後にして欲しいんだけど」「集合に遅れると、アイ先輩が怒るのよ」しのぶもうなずきながら言う。「そのくせ、ちょくちょくアイ先輩は遅れるんだけどね」「……じゃあ、後で良いわ」千賀子がため息をつく。「でも、気になっちゃって……」「そう言われちゃうと、気になるなぁ」朱音がしのぶを見る。「……どうする?」「何についての話なの?」しのぶが千賀子に訊く。「それによっては優先順位が変わるわ」「うん……」千賀子はそう言うと黙ってしまった。しのぶは千賀子の次の言葉を待っているが、朱音は明らかにそわそわしている。アイの怒った顔...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第五章駈け回る体育館の怪1

  • 荒木田みつ殺法帳 9

    「もう良かろう……」低い声が言う。「一斉に攻めて肌を晒しものにしてやるが良い」「承知!」四人の女は一斉に言うと、各々の得物を構えた。みつは前を押さえたまましゃがみ込む。「ははは!無駄だ!我らは肌を傷つけずに着ている物だけをずたずたに裂くことが出来る!ご自慢の胸当ても床に落ちてしまうだろうさ!」ゆめが嘲笑う。「せいぜい恥辱に塗れるが良い!」四方から得物が飛び交う。みつは頭を低くしたまま動かない。幾度も女たちの得物が交錯する。その度にみつの着物の背が裂かれ、散り散りになった布切れが舞う。「ほうら、巻いた晒も裂けるぞ!」「ほほほ!女侍などこの程度のものよ!」「恥ずかしいか?ならば舌でも噛み切れ!」「刀が無ければただの女さ!」女たちは口々にみつを嘲りながら得物を繰り出している。着物の背が割れ、晒も裂かれた。女たちの手が...荒木田みつ殺法帳9

  • 荒木田みつ殺法帳 8

    一人、道場に座るみつだった。父の三衛門が出掛けて、しんとなった家にみつ一人だった。父の心は分かっている。余計な者がいては存分に腕が揮えないと察したからだ。事実、父が出掛ける際に「存分にな」と言葉を残した。みつは「心得ております」と返した。「はたして、どのような技の輩がいるのやら……」みつはつぶやく。知らずに笑みが浮かぶ。強敵を前にしての武者震いのようなものだった。昼天を過ぎた陽が射し込んでいる。降った雨を蒸し上げている。気の早い蝉が短く鳴いた。昼下がりののどかな一時に見える。しかし、みつは複数の気配を感じていた。「来るか……」みつは立ち上がる。大小の刀を左腰に落とす。用意は出来た。「……ふっ、さすが、噂に聞く女侍、荒木田みつよの……」低い声が道場に響く。姿は見えない。どこからの声かも分からない。しかし、みつは動...荒木田みつ殺法帳8

  • 荒木田みつ殺法帳 7

    「なっ……!」驚愕の声を上げた女は、素早くみつから離れた。切っ先の折れた懐剣を手にし、呆然とした表情で立っている。折れ飛んだ切っ先は床板に突き刺さっている。「何も驚く事はない」みつは言うと、木刀を持たぬ左手で己が胸元を広げて見せた。腹から胸へときっちりと晒が幾重にも巻かれている。「今日は出稽古だった。そのような時には得に晒をきつく巻く。どうも胸が揺れて落ち着かんのでな。それでもまだ胸元は女の弱点。なので、腹から胸へと特に誂えた鉄の板を着けているのだ」みつは言うと、木刀で胸元を叩いて見せた。こんこんと金属を打つ音がする。女はがくりとその場に膝を突く。完敗を認めたのだ。「お前、名は?」みつが木刀の切っ先を女に向けて訊く。女は顔をそむける。「わたしは負けを認めた者に追い打ちを掛けるような事はしない。ただ、名を知りたい...荒木田みつ殺法帳7

  • 荒木田みつ殺法帳 6

    三衛門がみおを連れ、さらに面倒くさがるおためを従えて、篠田の屋敷へと出掛けた。家が襲われた際、おためを巻き込まないための配慮だ。皆が出掛け、一人となったみつは、手拭いを使って庭に落ちた鉄の棒を拾い上げる。「……毒は無しだな」みつはつぶやく。「と言う事は、これを撃ち込んで命を狙うと言う事か……変わった技を使うな。裏の世界とか言うヤツか……」裏の世界では、斯様な特殊と言うべき得物や技を持っての暗殺を生業とする者たちがいると言う。仕える主を定めず、金に応じて動く、そう言う輩だと聞く。みつの口元がほころぶ。ぞっとするほどの美しい笑みだ。しかし、この笑みは未知の敵に対しての溢れかえるまでの闘争心がさせていた。みつは道場に移り、壁に掛けてある木刀を一本手にする。軽く一振りするが、風切音が鋭い。それから素振りを始めた。「……...荒木田みつ殺法帳6

  • 荒木田みつ殺法帳 5

    涼やかな淡い藍色の絣を着て、正座した腿の上に盆を乗せたみおは、湯呑を口へと運ぶ三衛門とみつを、嬉しそうな顔で見ている。みつがおため婆さんに話をすると、たちどころにこの絣の着物を用意してきた。後はこちらでと言うおため婆さんにみおを預けて、みつは父三衛門の部屋へと戻って来た。しばらくして斯様に着替えたみおが茶を淹れた湯呑を持って来たのだった。「これはみおさんが淹れてくれたお茶かい?」三衛門が訊く。みおはうなずく。「そうかい。いつもと味が違っているんでね。いや、美味いよ。いつもと同じ茶葉とは思えんな」「父上、お茶に感心しておらず、早々にお支度をなされませ」みつは言うと湯呑を口へと運ぶ。その仕草にみおが熱っぽい眼差しを注ぐ。「みお殿も斯様に着替えておりまするぞ」「分かっておるわ!茶くらいゆっくりと呑ませろ」「その詰まら...荒木田みつ殺法帳5

  • 荒木田みつ殺法帳 4

    篠田頼母は三衛門とは囲碁仲間だった。今は隠居した身だが、かつては幕閣に居た者で、未だにその力は及んでいる。「だがの、みつ」三衛門が諭すように言う。「篠田様とはそのようなしがらみを抜きにした間柄じゃ。そのような話をいたせば、たちどころに嫌われ、二度とお邪魔は出来なくなるであろうな」「しかし、此度はそんな事を言ってはおられません」みつは厳しい表情をする。「白昼堂々と町の娘を拉致する藩があるのです。さっさと見つかって潰れればよろしいのです。それに同じ女として許せません」「相変わらず、口さがないのう、お前は……」三衛門は呆れる。「それはともかく、みおさんをどうしたものかのう。長屋に帰すわけにもいくまいて」「それならば……」みおがおずおずと言う。「こちらに置いては頂けませんでしょうか?お家の事は何でも致します故……」「そ...荒木田みつ殺法帳4

  • 荒木田みつ殺法帳 3

    「わたくし、みおと申します……」娘、みおは語り出した。京橋の大店に奉公していた下働きの女中に若旦那が手を付けて産まれたのが、このみおだった。身籠ったと知れると、怖気づいた若旦那によって、わずかな金を握らされて追い出された。「何と言う身勝手な男だ!」みつが腹を立てる。「今からその店に行って天誅を加えてやろう!」「いいえ、それには及びません」みおが笑む。「若旦那に代替わりして、あっと言う間に店を畳む事になりましたので……元々が商才の無い人だったようです。今頃どこでどうしているのやら」「自業自得だな」みつはうなずく。そして、三衛門に向き直る。「父上、お分かりでございましょう。悪を為す者は悪を刈り取るのです。このみおを襲った者たちも、その咎を刈り取るのです」「それを言うなら、お前の峰討ちも刈り取らねばなるまいて……」「...荒木田みつ殺法帳3

  • 荒木田みつ殺法帳 2

    「……と言う訳でございます」朝、出稽古の帰りに遭遇した一件を、父、自身も剣術道場を営む荒木田三衛門に話すみつは、両拳を畳に付き、頭を軽く下げている。その傍らには先程の娘が座って、深々と頭を下げている。みつの雨に濡れた着物はすでに生乾きとなり、娘の跳ね上げた泥は乾いて白くなっていた。「全く、お前と言う娘は……」三衛門はため息をつく。「で、相手はどこの藩の者だ?」「さあ……?」起き上がったみつは腕組みをする。「向こうが名乗らなかったので訊いておりません」「お前は名乗ったのか?」「それは当然でございます、父上」みつは平然と答える。「何も隠す事など致しておりませぬ故」「何と言う……」三衛門はぴしゃりと己が額を叩く。「それでは、相手がこちらへと来るではないか!そこの娘を取り返そうとして!」言われた娘は全身をびくっとさせて...荒木田みつ殺法帳2

  • 荒木田みつ殺法帳 1

    朝から雨が降っていた。傘を目深にかぶった侍が黙々と歩いている。左の腰に大小を下げ、茶色の袴姿で大股で歩いている。傘を左手に持っているのは、いつでも抜刀できる気構えの現われか。昼時と言うのに人気の少ない郊外の道は、雨もあって益々淋しい。しかし、その侍は気にする事無く歩いている。と、背後が何やら騒がしい。侍は足を止める。「お助け下さいまし!」女の切迫した声がする。それに被るように男たちの怒号がする。振り返った侍の胸に娘が飛び込んできた。雨具も無く、全身が濡れそぼった娘は、その身形から町人と見えた。着物は背中まで泥で汚れている。相当の距離を走ったものと見える。息も絶え絶えだった。追いついた男たちは、これもどこぞの藩の者たちの様だ。皆、深胴笠を被っている。胸に与かった女をそのままにした侍をぐるりと遠まわしに囲んだ。中の...荒木田みつ殺法帳1

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 31

    トイレのドアが開いた。さとみが廊下に出てきた。「会長!」しのぶが真っ先にさとみに駈け寄る。「どうなったんですか?終わったんですか?まだ何かあるんですか?」矢継ぎ早の質問攻めに、さとみは力無い笑みを返す。「ほらほら、しのぶちゃん、さとみちゃんはちょっと疲れているようよ」百合恵がしのぶに軽く注意する。それからさとみを見る。「この様子だと、無事に終わったようだわね……」「……はい、何とか……」さとみは答えると足元が覚束なくなり倒れかけた。素早く百合恵がさとみを抱きしめる。「さとみちゃん、大丈夫なの?ちゃんと歩けてない様だけど……?」百合恵が抱きしめたまま、さとみの顔を覗き込む。「大丈夫です」さとみは幾度か口をぱくぱくさせて答える。「本当、大丈夫ですから……」しのぶは百合恵の隣で心配そうな顔をしている。「しのぶちゃん…...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪31

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 30

    「うわっ!」そう叫んだのは葉亜富だった。金色のさとみに突き入れた脇差が、何か硬いものに当たったかのように弾かれたのだ。その反動で葉亜富は大きく仰け反った。「天誅!」「覚悟!」みつと冨美代が同時に声を上げ、刀と薙刀を葉亜富に討ち込んだ。「うっ……」葉亜富はよろよろと後ずさる。「やりやがったなぁ……」「卑怯な真似をしたのはお前だろう!」みつが刀を正眼に構え直す。「さとみ様の優しさにつけ入るとは、言語道断!自業自得と思いませ!」冨美代も薙刀を八相に構える。「おい、もう良いだろう……」流人が言う。声が弱々しい。「葉亜富を許してやってくれ……」流人の声に只ならぬものを感じた二人は構えを解いた。「流人……」葉亜富が流人に振り返る。「……わたし、綺麗なままか?」「ああ、最高だよ」流人が笑む。「今までで最高に綺麗だ。こりゃあ、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪30

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 29

    「え?何で?」さとみ自身が驚く。「これも、おばあちゃん?」葉亜富に青白い光を放たれたさとみだったが、生身と同様に全身が金色の光で包まれたのだ。そして、生身同様、青白い光は霧散した。さとみは自身の生身を見ると、まだ金色の光に包まれている。「おばあちゃんの力って、凄いんだぁ……」さとみは呆気にとられたように感心している。葉亜富は地団太を踏んで悔しがっている。「はあっ!」冨美代の気合いが響き、流人の放った脇差は床に払い落された。太刀はみつの顔に目がけて飛んだ。「ふむっ!」みつの静かな気合がし、両手の平を顔の前で合わせた。みつが白刃取りをしたのだ。切っ先が額すれすれで止まっている。素早く柄を持ち、切っ先を流人たちに向ける。「ふん、女侍だ明治女だと、散々な事を言ってくれたな!」みつが流人を睨みつける。「お前たちには天誅が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪29

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 28

    「あっ!」さとみは思わず声を上げる。「むっ!」みつも殺気に満ちた眼差しを影に向ける。「……何ですの?」冨美代は怪訝な表情でさとみたちと影とを見比べている。「あれは、全ての元凶です……」みつが言い、そっと冨美代の前に立つ。「あれのせいで、冨美代殿も嵩彦殿も……」「左様でございましたか……」冨美代がみつの背中越しに影を見つめる。「この破廉恥な者たちも、以前のミツルなる男装の女性も……許せませぬ!」冨美代は声を強める。そのままみつの背後から出た。すでにその両手に薙刀が握られていた。それを上段に構える。「冨美代殿、あれには武器は通じない」みつが冨美代の肩に手を置く。「わたしも斬りかかりましたが、影は刀を捕え、宙高く上がってしまいました」「なっ……みつ様の剣が通じないとは……」冨美代は驚愕する。上段の構えを解く。「あれが...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪28

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 27

    葉亜富の嘲笑を無視し、冨美代はじっと嵩彦を見つめている。嵩彦は足を止めた。そして、顔を上げ冨美代を見つめる。「ははは、最期のお別れかい?」葉亜富がさらに笑う。「さっさと済ませて下僕の中に戻っちまいな!」と、嵩彦は勢いを付けて障壁へと突進した。大きな激突音がして、嵩彦は床に転がった。「嵩彦さん!」そう叫んだのはさとみだった。さとみは障壁を叩く。「何をやっているのよう!そんな事をしていたら、力尽きて、消えちゃうわ!」嵩彦はゆらゆらと立ち上がった。そして、再び後ろへと下がる。大きく深呼吸をすると、冨美代を見つめ、再び突進してきた。しかし、やはり、激突音がして嵩彦は転がった。「冨美代さん!嵩彦さんを止めないと!」さとみは冨美代の肩を掴む。「どうしたのよう!どうして黙っているのよう!」「ははは、それは呆れ果てているからさ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪27

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 26

    「……冨美代さん……」そうつぶやいたのは、絶え絶えの息の嵩彦だった。両手を床に付き、震える腕を伸ばす。なんとか上半身を起き上がらせると、顔を冨美代に向けた。やつれた顔に笑みを浮かべる。しかし、その唇は震えている。「……冨美代さん……無事だったのだね……」嵩彦は力ない声で言うと涙を流す。「良かった、良かった……」「嵩彦様!」冨美代は嵩彦の前に座り込むと、見えない障壁に両手の平を押し当てる。頬を涙が伝う。「……殿方が泣いてはいけませんわ」「はは……相変わらず、厳しいね」嵩彦は笑む。「でも、そんな冨美代さんが僕の支えだよ……」「わたくしもあの時は言い過ぎました。嵩彦様はわたくしの事を慮っておっしゃって下さったのに、わたくしったら、嵩彦様を……」「いや、僕は基本的に軟弱者だったよ。田舎では腕力のある者が上に立っていた。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪26

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 25

    ふらふらな嵩彦が姿を見せた。力尽きたように倒れ込んでくる。冨美代は支えようと手を伸ばす。しかし、嵩彦はガラスの壁のようなものに全身がぶつかった。そして、そのままずるずると壁を擦るように倒れ込んだ。差し出した冨美代の手の平はガラスの壁に押し当てられている。「嵩彦様!」冨美代は言うと、葉亜富に振り返る。その瞳は怒りに燃えている。「貴女、何と言う事をなさるの!」「ふん、うるさいなぁ!」葉亜富がうんざりした顔で言う。「全部わたしのものなんだ。だから外へ出ないように囲っているんだよ!散々いたぶって苦しませてやるのが目的だけどね。まあ、飽きたら放り出してやろうとは思っていたけどさ、……あんたの愛しい嵩彦は、絶対出してやらないよ!」「ひどい!」冨美代は唇をわなわなと震わせる。それから、うつ伏せて倒れ背を大きく上下させて苦しん...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪25

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 24

    「さとみ様……」冨美代はさとみに振り返る。その頬は涙で濡れていた。「わたくし……」「おい!無視すんのかよう!」葉亜富は立ち上がる。怒りで顔が真っ赤だ。「人にぶつかっておいて、詫びもしないのかよう!」「あ……」冨美代は葉亜富を見る。流れる涙をどこからか取り出した絹のハンカチーフで拭うと、両手で袴を摘まんで少し左右に拡げ腰を落とす仕草をする。「これは失礼をいたしました。急いでいたものですから」「何を気取っていやがるんだ!」葉亜富が怒鳴る。「それになんだい、そのへんちくりんな格好はよう!」「へんちくりん……?」冨美代は意味が分からないと言う顔をする。「それって、どちらの方言ですの?」「お前、ふざけてんのか!」「ふざけているには、そちらではないのですか?」冨美代は眉間に皺を寄せ、嫌悪感を隠さない表情で続ける。「何ですの...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪24

  • 霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 23

    「さあて……」葉亜富がにやりと笑む。「もうお前だけだよ。どうしてやろうかねぇ……」「女侍に期待しているのかい?」流人が笑いながら両手を広げる。床に落ちていたみつの刀が流人の手元まで浮かび漂ってきた。「残念だけど、刀はここだ」「おのれ、卑怯な!」みつが語気を荒げる。「だが、素手でもお前たちを相手に出来るのだぞ!」「そんな事をしたら、この刀、お嬢ちゃんを貫くぞ」流人が笑う。切っ先がさとみに向いた。「斬れ味が良さそうな刀だからな。貫いたら、あっと言う間に消えて無くなるんじゃないかな?」「むっ……」みつは握りしめた拳をさらに強く握る。腕が怒りで震えている。「それに、さっきも言っただろう?君は全裸と同じだってさ」「そんな世迷言はもう効かない!」みつが言う。「それに、その刀で貫きたいのなら、わたしにするんだな。もし、さとみ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第四章女子トイレのすすり泣きの怪23

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