取り引きのある不動産会社から相談が入った。その内容は、「社有マンションで自殺が発生」「発見が遅れたため、部屋は相当に汚れているはず」「故人は大学生で、両親を交えて協議することになっている」「事前に現地調査を済ませたうえで、その協議に加わってほしい」といったもの。自殺案件は話がスムーズにまとまらないことも少なくなく、依頼の内容は心情的にやや難儀なもの。ただ、懇意にしている担当者からの頼みでもあり、無碍な対応はできない。まずは依頼通りに動くことにし、“あとは、野となれ山となれ”と思考をチェンジ。“野”でも“山”でも“ハイキング”の経験は豊富なので、「なんとかなる」と半分開き直って、「伺います」と返答した。訪れた街は、「住みたい街ランキング」で常に上位にある東京の某市。目的の現場は、人気駅の近くに建つ賃貸マンシ...夢の跡(後編)