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  • 夢のあと

    自分が死んだら、柩の中に何を入れて欲しいだろうか。若い頃は、結構真剣に考えて耳かき棒と酒をリクエストしていたが、今はどうでもよくなっている。浮世の金品も、アノ世には関わりのない物と思うから。どんなに高価な物でも、灰になってしまえば同じこと。どんなに偉い人でも灰になってしまえば同じこと。人は何も持たずに生まれてくる。そして、何も持てないまま死んでいく。現金も、株券も、豪邸も、高級車も、ブランド品も(私の場合はコノ世でも持ってない物ばかりだけど)。私を含めて、どうして人はこうまで物を欲しがるのだろうか。生活がある程度便利で快適であれば、それでいいような気もするのに。命は有限なのに欲は無限と言うことか・・・何となくバランスが悪いような気がする。では、目に見えないものはどうなのだろうか。例えば、愛・名誉・徳・善行...夢のあと

  • タイムリミット

    日本人の死亡原因の一位は悪性新生物(癌)。癌を煩ったことがある人、煩っている人、そして癌で亡くなった人を知人に持つ人はかなり多いと思う。「自分自身がそう」という人もいるだろう。数えてみると、私の身の回りにも、そんな人がたくさんいる。世の中は今、空気も水も食べ物も、発癌性物質を避けては生活できないような残念な状況にある。癌は人類の自業自得か?それとも宿命か?人の力では癌細胞の発生を防ぐことはできないのだろうか。私が扱ってきた遺体にも癌で死んだ人がかなりの人数いる。科学的なデータとは異なるかもしれないが、それらの遺体は痩せ細っている上、腐敗速度が速いように思える。余命宣告を受けた上での闘病生活は、どんなものなのだろうか。一件一件の遺族と一人一人の遺体からは、それぞれの闘病生活が垣間見える。故人は30代前半の男...タイムリミット

  • ラブレター

    別れの柩に手紙を入れる人は多い。故人に宛てたものがほとんどだろうが、アノ世に先立った人へ言葉を託けたものもあるかもしれない。生前は照れ臭かったり、日々の生活で見過ごされたりしてきた当人(故人)への想いが、純粋なかたちでてくる場面でもある。「できることなら、生きているうちにそういう想いを伝えられればよかったのに・・・」そう感じることが多い。共に生きていられる時間は限られている。照れている場合じゃないと思う。日本人にとっては「臭い」と思われるセリフを平気で吐けるアメリカ人が羨ましい。私は、葬式にはイヤというほど関わっているが、結婚式には縁がない。何年かに一度、誰かの結婚式に招かれることがあるくらい。葬式ばかり経験していると、結婚式がとても新鮮だ。他人の幸せを嫉みがちな私でも、結婚式の幸せに満ち溢れた雰囲気は好...ラブレター

  • ちょっと待った!

    この記事を載せるか否か、迷いは残る。無責任な思いであることも承知している。薄っぺらい自論しか吐けない私には、他人の人生相談に乗れるほどの人格もなければ度量もない。自分の人生に対する答も見つけられない私だし。しかし、スルーできない性格の私は深く考えるのはやめて載せることにした。世の中には、何故にここまで鬱の人や自殺を志願する人が多いのだろうか。鬱病を明かす書き込み、自殺願望を示す書き込みが絶えない現実を見て、そう思う。それでも、書き込んでくれるだけマシなのかもしれない。私ごときでも、わずかながら反応できるから。生命(寿命)に対しては誰だって無力。自分の力で生命(寿命)を伸ばすことはできない。人が自分の力でできることと言えば、せいぜい日常の健康管理をシッカリやっておくことくらい。悲しいかな、人の力って所詮はそ...ちょっと待った!

  • 善と悪の間で

    自殺した女性が腐乱死体で発見された。もちろん、私には自殺の動機は不明。独り暮しだった故人の自宅は賃貸マンション、その玄関で首を吊ったらしい。身寄りはないらしく、賃貸契約の保証人も有料の保証会社が請け負っていた。依頼者である大家は、保証会社の対応に不満を漏らしていた。このままだと、大家と保証会社の間でトラブルが発生するのは明白だった。汚染は玄関と外の共有部分のみ。ウジ・ハエも玄関フロアのみ。女性らしい雰囲気の部屋はきれいに片付いており、独身女性の部屋に免疫のない私は勝手に入ることに気が引けるくらいだった。しかし、片付けるうちに故人が私と同年であること分かって、急に気持ち悪くなってきた。我ながら勝手なものだ。女性には失礼な偏見になるかもしれないけど、男性の自殺より女性の自殺の方が何だか気持ち悪い。私が遭遇して...善と悪の間で

  • 忠犬

    「なんだか臭い」「でも、何の匂いだか分からない」「見に来てほしい」そんな電話が入った。依頼者は中年女性。その口調から、死体がらみの案件ではないことがすぐ分かった。話を聞くと、ただの消臭依頼だった。特掃部には、たまにこんな依頼や相談も入ってくる。どんな問い合わせにもキチンと応対するが、電話だけで片付くケースも当たり前のようにある。できるだけ詳細な状況を聞き、できるだけ適切なアドバイスをするように心掛けている。お金にはならないけど、これも大事な仕事だ。それでもラチがあかない場合は出動となる。この案件も電話アドバイスだけでは片付かなかったので、現場まで出向いた。豪邸とまではいかなかったけど、そこそこ大きな家で築年数も浅かった。依頼者一家は、主の仕事の都合で二年間海外に行っていたらしい。社会的地位が高いことを自負...忠犬

  • 同じ空の下で

    昨日までグズついていた東京の空は、今日は快晴!また夏の猛暑が戻ってきた。夏は特掃業務にとっては過酷な季節だが、青い空を見上げると気持ちに涼風が通る。読者からの書き込みを非公開にしてから一ヶ月余りが経った。それ以前に比べれば書き込み件数が明らかに減っているが、私の気分に余計な波風が立つこともなくなり、ブログも落ち着いて書けるようになっている。そして、書き込んでくれる人自体も変わってきているように思う。今でも色んな意見や感想があるものの、冷静に読むことができている。あの当時は、「スルーすればいい」という類のアドバイスをたくさんもらったが、私の性格ではアレが限界だった。我ながら、器量不足も感じているが、どうにもならない。私はこの性格で三十数年生きてきたので、今更、大きなモデルチェンジもできないのだろう。「人間っ...同じ空の下で

  • 思いやり

    特掃業務の自殺現場には、事前に自殺と知らされる現場と知らされない現場とがある。どんな現場に対しても一定のスタンスで臨む私だが、自殺と自然死とでは若干その気持ちが違うかもしれない。しかし、どんな現場でも気持ちがほぼ一定に保てる自分が頼もしくも思え、かつ冷酷にも思えてしまい複雑な心境がする。また、私は現場の第一印象を率直にコメントすることが多い。失礼な発言に聞こえるかもしれないけど、特掃現場ではだいだい「これはヒドイですねぇ」が第一声となる。だって、本当にそうだから。何年やっても何件やっても、「ヒドイなぁ」と腐乱現場に抱く感情は変わらない。自殺と知らされないで出向いた現場。新聞紙で覆われた汚染箇所がやけに狭いうえ、それに面した壁が縦長に汚れていた。「妙な汚れ方だなぁ・・首吊りか?」と思いながら汚染箇所の真上を...思いやり

  • ホスピタル

    この仕事は、夜中に電話が鳴ることもある。寝ていても、まるでずっと起きていたかのように電話に出ることができる特技が身についた。一年を通じても夜中の出動は少ないのだが、何故だか続くときは続いてしまう。昼間は昼間で仕事があり寝ていられる訳じゃないので、あまり続くとキツイ!そんな日々が続く中で夜中に電話が鳴ると「冗談?」と思ってしまう。正直なところ、ありがた迷惑に思ってしまう時もある。遺体搬送業務の服装は、特掃業務とは違ってスーツ姿(喪服ではない)。したがって、身だしなみを整えるのに少々の時間を要する。しかし、病院へのお迎えは一分一秒を争うことが多いので、モタモタしてはいられない。「だったら、スーツを着たまま寝てりゃいいだろ」と思わないでもらいたい。それじゃ眠れないから。電話を切ったらテキパキと身支度を整えて出発...ホスピタル

  • お化け屋敷(後編)

    休暇をとった管理人は、身内の法事に行ってきたらしい。その割には赤く日焼けした顔が、どことなく気まずそうにも見える。人手が足りない時は特掃隊に編入しなければならない哀れな?身の上だから、まぁ、黙認した方が親切というものか。管理人を労う書き込みも多かったし。前編から話を続ける。そして、その顔が私に近づいて来るような気配を感じた私は、声にならない悲鳴をあげて家から飛び出した!全身に悪寒が走り、息を吸うことができなくなった私。霊感がないのが少ない取り柄のひとつだったのに・・・とうとう見てしまったのか!?そして、私が見てしまったモノの正体は!?さすがに気持ち悪くなった私は、再び家の中に入ることはできなくなった。本当は二階の状況も確認しなければらなかったのだか、結局、二階は想像見積。間取りと遺族の話と一階の状況を考え...お化け屋敷(後編)

  • お化け屋敷(前編)

    人それぞれに怖いもの(苦手なもの)を持っていると思う。私の場合は、高所・蛇・歯医者・お金・心霊写真・暗闇etc。当然、この中に死体は入らない。気持ち悪いことはあるけど、恐くはない。どちらかと言うと、道端に転がっている動物の轢死体の方が苦手。いつも目を背けて通り過ぎてしまう。逆に、一般の人にとって人間の死体は上位にランキングされるものらしい。その理由の中核を探ってみると面白いことが発見できるかもしれない。やはり人は、死をイメージさせたり感じさせたりするものを根本的に嫌うのである。葬儀習慣に限らず一般世間の習俗や慣習にも、それを感じさせるものが多い。その延長線上には死からの逃避願望があり、やはり死ぬことは恐くて考えたくないものなのだろう。ある日の夕方、特掃の依頼が入った。「できるかぎり早く現場を見てほしい」と...お化け屋敷(前編)

  • 線香花火

    私は夏の夜の花火が好きだ。夜空に舞う打ち上げ花火は特に。時間が合わなくて、ここ何年も花火大会には行っていないけど、綺麗な花火を思い浮かべるだけでワクワクする。ドン!と上がったかと思ったら、パッと開き、サラッと消えていく。音に迫力、火花に華、去り際に潔さ、その華麗さに魅了される。同じ一つの花火なのに、光速と音速の差から視覚と聴覚に時を異にして届いてくるのも絶妙。そんな花火には、人の生き死にが重なって見える。日本文化においては、日本男児的な「男らしさ」に通じる部分もあるのかもしれない。玉の大小、上がる高さに違いはあれど、誰の人生にも華があると思う。そういう私は、いつ頃が華だったのだろうか。それとも、華はこれから来るのだろうか。生きていること自体が華だったりして・・・ね。壮年の男性が死んだ。死因は糖尿病。どんな...線香花火

  • 苦々しい

    ある若者が、あるマンションから飛び降り自殺をした。高層階から3階天井のでっぱりに激突、その血しぶきと肉片は4階のベランダにまで飛び散っていた。乾いた血痕と肉片は落とし難い。しかも、汚染個所が高い壁だと作業もしづらい。私は仕事だから仕方ないけど、何の関係もないのに、いきなり見ず知らずの人間の血肉で自宅が汚された方は、本当に気の毒だった。こんな現場に遭遇すると、「汚すのはせめて自宅だけにして欲しいもんだな」と思ってしまう。死人を貶めるようなことを言ってしまうようだけど。その遺体の損傷も激しかった。例の納体袋に入っていたその遺体は、頭が割れ、脳がハミ出ていた。ちょうど、焼けて膨らんで破れたパンのように。髪は血のりでベッタリ、血生臭さがプ~ンと漂っていた。私が自殺の理由を知るはずもない。ただただ遺体を処置するのみ...苦々しい

  • ブラックホール

    便所の話。そこは「お手洗い」とか「トイレ」という呼称は似合わない、いかにも「便所!」という感じの現場だった。発見が早かったためか、汚染は軽いもの済んでいた。悪臭も腐乱臭なのか便所臭なのか分からないくらい。それよりも、私はその便所の形態に驚いた!水洗式ではなく、いわゆるボットン便所。しかも、私が知るボットン便所よりはるかにハイグレードで古風なモノだった。ほとんどの人が「ん?どんな便所だろう?」と、その便所の形態を理解できないと思うので、詳しく説明しておこう。地面に深さ1.5~2.0m、直径1.5~2.0mくらいの穴を掘る。その上に床板を敷き、屋根と囲いをつける。床板に直径20~30cmの穴を開ける。床板に和式便器をくっつけて完成。あまりにシンプル過ぎて、これ以上詳しく説明できない。大きな口を開けた和式便器を...ブラックホール

  • 毎度ありー!

    「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」「またヨロシクお願いします」etc、何気ないこのセリフは、色々な店や仕事で当り前に使われている言葉。しかし、私の仕事にこのセリフはない。「ご愁傷様です」に始まり「お疲れ様でした」で終わる。何かを得ようと、何年か前、知人に頼んで飲食店で働かせてもらったことがある。夜の時間だけ、無償で。誰にも遠慮しないで済む笑顔と、「いらっしゃいませ!」「ありがとうございます!」「またヨロシクお願いします!」と堂々と言える仕事が新鮮だった。新しい自分を発見できて爽快感みたいなものを覚えた。かったるそうに働いているバイト学生に反して、私は楽しさすら覚えた。そのバイト学生に私の本職を話したら、「ウェーッ!その手で食い物を触って大丈夫ですか?」とストレートに嫌悪された。私とは随分と年下の...毎度ありー!

  • カレンダー

    今日で7月も終わり、今年の夏も後半に入る。今年の梅雨は、前半が空梅雨で後半は長雨。東京では、昨日やっと梅雨明けしたらしい。毎月末には過ぎたカレンダーを破り捨てるのが私の習慣。このひと月を思い返してみると、特掃業務に追われる毎日だった。しかも、インパクトのある内容のものが多かった(だいたい、いつもインパクトはあるけど)。早速にでもブログに書きたい案件もあったが、現場が特定されないような配慮が必要なため、ネタとしてはしばらく寝かせておかざるを得ない。と言う訳で、私の書く現場ネタは、しばらく寝かせておいたものがほとんど。鮮度は落ちているかもしれないけど、腐敗ネタには鮮度も何も関係ないか(笑)。きっちりと自分の中で線を引いている訳ではないけど、死人は人間の形をとどめているモノとそうでないモノでは気持ちが全く違う。...カレンダー

  • 苦悶

    死ぬ瞬間って、どういう感覚を憶えるものなのだろうか。「脳内アドレナリンが大量に発生して、快感の絶頂に到る」と説いた本を読んだことがあるが、誰もその実態を知ることはできない。私は、三十数年間の人生で一度だけ人が死ぬ瞬間を目の当たりにしたことがある。時は幼少の頃、祖父が死んだときのことだ。内臓疾患で闘病生活を送っていた祖父は、しばらくの闘病生活の後、意識不明の危篤に陥った。急いで病院に駆けつけたときは、意識不明で荒い息をしていた。皆が見守る中、最期の息をゆっくり吐いたかと思うと、もう次の息を吸うことはなくそのまま臨終した。何分にも幼かったため、人が死ぬということがよく理解できなかったけど、祖父の最期の様子は今でも鮮明に記憶している。黄疸で黄色く変色した身体、腕には無数の内出血の痕、柩に入った祖父の身体の冷たさ...苦悶

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特殊清掃「戦う男たち」
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