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  • 空は夏から秋へと変わりつつある。少しずつ過ごしやすい季節になってきた。こんな時季は大気も不安定。夏と秋が押相撲をしているようなものか。あちこちで落雷が発生している。雷にあたって亡くなる人もいるくらい。特に、朝の雷は要注意らしい。秋が夏を寄り切るまでは、しばらくこんな空模様が続くのだろう。ある家で遺体処置をしていたときのこと。遺族の中に二十歳前後の男性が二人いた。二人は私の作業を遠巻きに、もの珍しそうに眺めながら話していた。回りが静かな分、二人の話し声は誰にも聞こえるものだった。「お前、仕事を探してんだろ?この仕事やったら?」「ふざけんなよぉ、やれる訳ねぇだろ!」「それにしても、よくやるよなぁ」「だよなぁ」私の仕事を奇異に思い、嫌悪した会話であることは誰にも明らかだった。そして、私の耳にも、他の遺族にもハッ...雷

  • ハイ、チーズ!

    写真を撮る時の決まり文句、「ハイ、チーズ」。ひょっとして、今は死語?とにかく、写真は笑顔がいい。葬式の時に遺影(写真)を掲げる家は多い。今や、葬式に遺影を用意するのは常識みたいになっている。ある程度の年配者になると、自分の葬式を考える人も多く、遺影にも使えるようなきれいな顔写真を撮っておく人も少なくないように思う。私が知る老人の一人は、毎年の正月に撮る写真を遺影にも使えるように撮影して家族に残している。正月は毎年キチンと和装をするから、ついでに遺影用の写真も撮っておくのだ。新年に希望を持ちながらも、自分の寿命を考えて、近いうちに来るであろう死の準備を粛々と整えておく。こういった心構えを私も見習いたいと思う。一般的に、遺影の写真は行楽などで普通に撮ったスナップ写真を使うことが多いようだ。フィルム(ネガ)がな...ハイ、チーズ!

  • 俺の靴、世の靴

    身の回りには色々な靴がある。色んな仕事に、色んな靴がある。私は、仕事用に三種類の靴を使っている。一つは遺体処置と遺体搬送用で、黒い革靴。ホワイトカラーのビジネスマンが履いているような、一般的な靴だ。もう二つは特掃用の靴だ。安全靴タイプ(紺)とスニーカータイプ(黒)の二つ。手袋と違って、靴は使い捨てにはしない。たまに消臭剤やエタノールをかけたり、そして、すご~くたまに洗ったりしながら使っている。そんな特掃靴を、私は時々可哀相に思うことがある。察してもらえる通り、特掃靴を履いて行く先は、並の場所ではないからね。見積の時も作業の時も、容赦なく腐敗液の上を歩く。ウジも潰すし、ハエも踏む。靴が腐敗粘土に埋もれてしまうことも日常茶飯事。私は、現場に行く度に思う。「うわぁ・・・靴がヤバイことになっちゃったなぁ」「この現...俺の靴、世の靴

  • 目・鼻・口

    最近でもたまに遭遇するが、私が死体業を始めた頃は口や鼻から腹水がでている遺体が多かった。私が「腹水」と呼んでいるものを分かり易く説明すると、「胃に溜まった腐敗体液」、あるいは「胃の内容物が腐敗したもの」。色は、黄色っぽいものから茶色っぽいものまである。どれも臭いのだが、色が濃いほどその臭さもキツい。特掃現場の腐乱臭とはまた違った臭さだ。腹水が溜まっている遺体は、だいたい腹部が張って口腔から異臭がしている。腐敗ガスが腹を膨脹させ、それが少しずつ口から漏れているのだ。経験を積めば、すぐにそれと分かる。そして、それが分かると未然に腹水トラブルを防ぐ死後処置が施せる。遺体と対面する時には既に口や鼻から流れ出してていることもある。または、流れ出てはいなくても、今にも吹き出そうな遺体もある。腹水トラブルの一つ。まだ経...目・鼻・口

  • 真友(後編)

    汚染部分の解体撤去から出た廃材を片付ける私に、依頼者の男性は意外なことを質問と依頼をしてきた。「そのゴミはどうするのですか?」「可燃ゴミですから、焼却処分します」「もっと別な処分方法はありませんか?」「?・・・リサイクルはできませんし・・・廃棄物ですからねぇ・・・」「この廃材も、○○さん(故人の名前)の身体の一部のような気がして、ゴミとして捨てるのは偲びなくて・・・」「んー・・・あとは、遺品の類でしたら、供養処分することがありますが・・・」「そうですか!でしたら、その供養処分をお願いします」「え!?費用が余分にかかりますよ」「大丈夫ですから、供養して下さい」故人の愛用品や人形・布団、仏壇などの供養処分を依頼されることは多いが、廃材のそれを頼まれるのは極めて珍しい。さすがに不思議に思って、そこまでやる理由を...真友(後編)

  • 真友(前編)

    初老の男性から特掃の依頼が入った。現場は古いマンション、トイレで腐乱していたらしい。故人は年配の女性で身寄りがないらしく、依頼者の男性は「生前の故人に世話になった者」ということだった。腐乱場所が風呂やトイレの場合、かなり酷い状態になっていることがほとんど。私は、今までの経験から、相応の覚悟を持って現場に向かった。依頼者の男性は、その息子と現場に現れた。息子は、そこに連れて来られた意味が分からなそうにして戸惑いの表情を浮かべていた。そして、腐乱現場にはビビっているようだった。臆せず部屋に入る私と男性、息子はその後ろを恐る恐るついて来た。男性との世間話から、故人は生涯独身・子供もなく、今で言う「キャリアウーマン」だったことが伺えた。故人が女性と分かり、急に男性との関係が気になり始めた下衆な私だった。さて、汚染...真友(前編)

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芳田一弥さん
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特殊清掃「戦う男たち」
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