まりも(前編)
「毬藻」を知っているだろうか。子供の頃、私の家には毬藻がいた。祖父が買ってきたものらしかった。小さな容器の水の中、いつまでもジッとしている緑の球体が不思議に思えた。実際にも摩訶不思議な生物らしい。「毬藻」は知っていても、「毬藻人間」を知っている人はいないだろう。私は、不本意にも毬藻人間と遭遇してしまったことがある(本件に限らず何度も)。ある日の午後、遺体搬送の依頼が入った。遺体搬送業務の制服はスーツなので、私はスーツに着替えて出発した。到着した現場は、警察の霊安室。何人かの人が入口の前で右往左往しており、中には誰も入れない様子。どことなく、ザワついた雰囲気だった。「ヒドイよー!」「クサイよー!」と嫌悪する誰かの声が聞こえた。正直言うと、私も中に入るのはかなりの抵抗があったのだが、仕事の責任があるので仕方な...まりも(前編)
2024/11/30 05:14