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  • まりも(前編)

    「毬藻」を知っているだろうか。子供の頃、私の家には毬藻がいた。祖父が買ってきたものらしかった。小さな容器の水の中、いつまでもジッとしている緑の球体が不思議に思えた。実際にも摩訶不思議な生物らしい。「毬藻」は知っていても、「毬藻人間」を知っている人はいないだろう。私は、不本意にも毬藻人間と遭遇してしまったことがある(本件に限らず何度も)。ある日の午後、遺体搬送の依頼が入った。遺体搬送業務の制服はスーツなので、私はスーツに着替えて出発した。到着した現場は、警察の霊安室。何人かの人が入口の前で右往左往しており、中には誰も入れない様子。どことなく、ザワついた雰囲気だった。「ヒドイよー!」「クサイよー!」と嫌悪する誰かの声が聞こえた。正直言うと、私も中に入るのはかなりの抵抗があったのだが、仕事の責任があるので仕方な...まりも(前編)

  • もったいない

    小さい頃の私は、モノが捨てられない子供だった。何を見ても、いつか必要な時が来るような気がしていた。そんな訳だから、私の机の引き出しや収納箱には不要な物がたくさん納まっていた。何事にも「もったいない精神」は大事だと思うが、度が過ぎると問題がでる。ある腐乱死体現場。年配の女性が依頼者で、依頼者と共に現場に入った。「かなり臭いですよ」と、申し訳なさそうに言いながら、女性は玄関ドアを開けた。そして、あちこちの窓を急いで開けて回った。少しでも悪臭を緩和させようと、私に気を使ってくれたみたいだった。「大丈夫ですよ、慣れてますから」と、言いながら私は汚染部屋に入った。汚染は、ベッドだけに見えた。やはり、他の部屋に増して濃い腐乱臭がこもり、ハエが飛んでウジが這っていた。「ヒドイでしょ?」「スイマセンねぇ」と、女性は私に優...もったいない

  • 勇気

    ある日、女性の声で電話が入った。タドタドしい喋り方と、的を射ない内容に、始めは間違い電話?イタズラ電話?と思ってしまった。しかし、話を聞いているうちに、この電話が間違いでもイタズラでもないことが分かった。話の内容はこうだった。「自分はかなりの高齢者」「自宅で独り暮しをしている」「難病にかかり、歩行も困難」「週一回、ホームヘルパーが来る」「子供はいるが、離れて暮らしている」「死期が近いものと覚悟している」「愛着のある、この家で死にたい」「孤独死したときのために備えておきたい」私は話の内容を聞いて、この女性が独り暮しを続けていることが信じらなかった。ただ、家と家族への愛着が並大抵ではないということが、すぐに理解できた。私が言うまでもなく、女性は遺言を残しており、残された人が困らないような配慮をしていた。残され...勇気

  • 女心Ⅱ(後編) ~独居女の悲哀~

    私は、仏壇の中身を丁寧に取り出しては、遺族に手渡していった。布の隙間から見えてきたものは、仏像ではなく何やら妙なモノだった。布の上から見える形は、完全に仏像。なのに、実際に見える一部は、木でも金属でもなさそう。妙な勘が働いた私は、モノが遺族から見えない死角に移動し、布を開けてみた。でてきたモノを見て、驚+笑。モノの正体はバイブ、いわゆる大人のオモチャの一種(経験不足のため、私は正式名称を知らない)。若い頃、エロ本の裏表紙とかに載っていたのは何度か(何度も?)見たことはあったが、実物を見たのは初めてだった。しかも、手に取って。私にとってはかなり珍しいモノで、ちょっと新鮮な気分だった。「結構、デカいな」「このかたちはイケてる」「意外に重いモノなんだなぁ」「この質感はヤバイそう!」「スイッチはどこだ?」「どうい...女心Ⅱ(後編)~独居女の悲哀~

  • 女心Ⅱ(前編) ~独居女の悲哀~

    統計によると、自殺者数の性別比は、だいたい男7:女3らしい。私の経験からもそれは実証されている。また、孤独死の数も男性の方が多いと思う。自殺をする人間を一概に「弱い」とするのは軽率かとも思うが、生きることの本質においては男性より女性の方が強いのだろう。平均寿命が男性より女性の方が長いこともしかり。ちなみに、街で見かける浮浪者は、圧倒的に男性が多いことにも何か共通するものがあるような気がする。中年の女性が孤独死した。離婚経験のある故人は、子供もいなかったらしかった。「オシャレな人だった」「上品な人だった」遺族の言葉通り、部屋はきれいに整理整頓されており、インテリアもオシャレにコーディネイトされていた。ただ、どんなにオシャレできれいな部屋でも、腐乱死体がだいなしにしてしまう。腐乱の程度は酷かったが、汚染状態は...女心Ⅱ(前編)~独居女の悲哀~

  • 一期一会

    30代の男性。軽自動車で出勤途中だった故人は、生きて帰宅することはなかった。残された妻子の悲しみは、いかばかりか・・・。警察の霊安室。納体袋を開けると、プ~ンと血生臭い臭気があがってきた。そして、目に飛び込んできた遺体を見て、私は絶句した。遺体は損傷が激しく、死後処置をどうこうできるレベルではなかった。腕や脚は不自然な向きに曲がり、何本かの指も引きちぎれていた。胴体は押し潰され、大きく口を開けた各所のキズから得体のしれない何かがハミ出ていた。頭も潰れ、顔も既に人間ではなくなっていた。飛び出した眼球に寒気を覚えた。言葉は悪いが、ミンチ状態。「血だらけ」と言うか「肉だらけ」と言うか、それは酷い有様だった。「せめて、顔だけでも見えるようにできないか」そう思って納体袋を開けた私だったが、手の施しようもなく黙って再...一期一会

  • 変身

    子供の頃、私の回りには多くの変身ヒーローがいた。ウルトラマン・仮面ライダー・ゴレンジャー・キカイダーetcちょっとマイナーな者を含めると、もっとある。ちなみに、私はそっち系のマニアではない。彼等は、何故か窮地に陥るまでは変身しないで戦う。そして、やっと変身したかと思うと、いきなりパワーアップ。必殺技を繰り出して大逆転。悪者を倒して一件落着。毎回、「もっと早く変身すればいいのに」と思いながらも、お決まりのストーリーにのめり込む幼い私だった。その他にも変身が得意(好き)な人達がいる。「女性」だ。女性は、持ち物や服装等によって見事に変身する。その最たるものは化粧だろう。全ての女性に当てはまる訳ではないだろうが、before.afterでは、とても同一人物とは思えないくらいの変身を遂げる人がいる。自分の顔に化粧を...変身

  • 遺志

    遺体処置と遺品処理の作業で、ある家に訪問した。亡くなったのは高齢の女性。行年は、平均寿命を越えていた。安らかな表情、身体は小さくとても痩せていた。遺族は、故人の着衣を着替えさせてほしいと要望してきた。ちょっとしたコツはいるが、作業的には簡単なもの。だだ・・・私は、死んでいようが高齢だろうが女性は女性として尊重する主義。故人の羞恥心に配慮したい旨を伝えた上で、遺族の指示を仰いだ。遺族は私の気持ちを理解してくれたものの、困った表情を見せた。そして、「これが着せ替えてほしい着物なんですけど」と言って、古ぼけた箱を私に手渡した。それを受け取った私は、神妙な気持ちになった。箱の蓋に「死んだら着せて下さい」と書いたメモが貼ってあったのだ。何かのチラシの裏に書かれた文字は、生前の故人が書いたものだった。女性の気丈さに感...遺志

  • デストロイヤー

    「デストロイヤー」と聞いて何を思い浮かべるだろう。私は、プロレスラー。白いマスクをした謎の覆面レスラーだった。・・・もう30年も前、懐かしい昔のことだ。世の中には、今でも色々なデストロイヤーがいる。特掃の依頼が入った。現場はマンションのベランダ。ベランダと言うより、ルーフバルコニーと言った感じの、広めのスペースだった。そこには、大量の血痕が広がっており、茶色く乾いていた。屋上から人が転落してきたらしい。血痕の広さから、転落した本人は死んだものと思ったが、重傷は負ったものの一命は取り留めていた。自殺を図って屋上から飛び降りたのだが、高幸か不幸か、その家のベランダに引っ掛かったらしい。驚いたのは家の人(依頼者一家)。ベランダから大きな衝撃音が聞こえたかと思ったら、人間が倒れていた・・・しかも、周囲は血まみれで...デストロイヤー

  • 昨日は夢、明日は希望、

    我々は多くの糧を得て命を保っている。そして、糧を失った時に、または失いそうになった時に不安に襲われ、落ち込む。糧には色んなものがある。何も、お金や食べ物だけではない。人と人との繋がりや関わり、人間関係も大事な糧の一つ。あと・・・夢や希望もね。「人間は社会的動物」と言われるように、人は一人では生きていけないのだろう。生まれた時から回りに人がいる私は、厳密に一人きりになったことがない。ま、この社会にいる限りは一人きりになるなんて不可能だろう。しかし、妙な孤独感に苛まれている人や、「自分は孤独だ」と思っている人は多いのではないだろうか。以前にも書いたように、私は死体業に就く前の半年間を実家の一室に引きこもって過ごした。半年という時間は、引きこもりとしては短い方だったのだろうが、当時の私は完全に世間と人を嫌悪して...昨日は夢、明日は希望、

  • 父と息子と老朽ビル

    小さな雑居ビルに行った。「ビル」と言っても低層で、かなりの老朽ぶり。昭和30年代の建物らしく、かなりレトロな雰囲気だった。依頼者はその建物のオーナー、中年の男性。そのビルは、先代の父親から引き継いで所有・管理しているとのこと。その父親は高齢・病弱で入院中。「多分、生きては退院できないだろう」とのことだった。私が依頼されたことは、臭いを嗅ぐことだった。他の入居者から「変な臭いがする」と、大家である男性にクレームが入ったらしい。私は、人に比べて格段に嗅覚が優れているわけではないと思う。ただ、違うことと言えば、一般の人が知らない臭いを知っていることくらい。「一般の人が知らない臭い」とは、死体の悪臭と私の足の刺激臭のこと。話が脱線するが、五本指ソックスをこの前初めて買って履いてみた。足ムレ対策には効果がありそうな...父と息子と老朽ビル

  • How much?Ⅱ

    「お金で買えないものはない」少し前、こんな言葉が物議をかもしたことがあった。発言の主は、世間から異論や非難を受けることも承知したうえで、そういった言葉を吐いたのだろうと思う。発言者の真意は計りかねるが、私は、この言葉に何か深い意味を感じる。そして、否定したくても、否定できない自分がいる。私は、お金で買えないものはたくさんあると思っている。ただ、それらのほとんどは目に見えないもの。人の心であり、身体の健康であり、時間でもある。そう言いながら、目に見えないモノに対しても、金が何らかのかたちで影響を及ぼすことがあることも認めざるを得ない。私も、目に見えるモノのほとんどは金で買えると思う。そして、目に見えないモノに対しても影響する・・・お金って、それだけの力を持つものだ。「いい給料もらってるんでしょ?」色々な人と...Howmuch?Ⅱ

  • 脂肪で死亡

    世の中には、好きなだけ飲み食いしても体重が変化しない、羨ましい体質を持った人がいる。私も、若い頃はそうだった。二十歳前後の頃は、一食の御飯の量が二合位、多いときは三合の御飯をペロリとたいらげていた。それでも、体重は増えることなく、わりとスリムな体型を維持できていた。標準体重を少し下回るくらいで。ところがである。20代後半から、少しずつ何かが狂い始めた。飲み食いした分が、体重に乗ってしまうようになったのだ。みるみるうちに標準体重を突破したかと思うと、あれよあれよと言う間に「やや肥満」に。気がついた時には、「肥満!」と太鼓判を押されるような始末になっていた。私にとって、飲み食いは大事な楽しみの一つ。大袈裟なようだが、生きる喜びの一つなのである。特に、酒・肉料理・甘味には目がない。焼肉+ビール、食後にアイスクリ...脂肪で死亡

  • 死体市場

    東京で最も有名な市場は、築地の魚市場だろう。テレビの食べ物番組でも、よく放映されている。私は、中には入ったことはないけど、たまに市場前の通りを車で走る。朝早くから、たくさんの人が働き、たくさんの車が出入りしている。そして、場外には、おいしそうな店が軒を連ねている。機会があったら立ち寄って、食してみたいものだ・・・あ!ここに行けば、美味しいウニ丼があるかもね。食べ物を扱っているせいもあるのだろうが、活気あふれる魚市場からは人が生きるエネルギーを感じる。身内や知人の葬式で、一度くらいは火葬場に行ったことがある人は多いと思う。仕事柄、私は首都圏の火葬場は一通り行っている。火葬場には色々な施設がある中で、私が縁のある部屋はやはり霊安室。霊安室には、柩に納まった状態の遺体が、保管されている。また、納棺作業をその場で...死体市場

  • 寝込んだネコ!!

    猫という動物は、好む人と嫌う人がわりとハッキリ分かれる動物ではないだろうか。私は、猫より犬の方が好きだ。もっとも、犬猫より牛(Beef)・豚(Pork)・鶏(Chicken)の方が好きだけど。8月21日「飼猫とサラリーマン」の続編。私は猫の死骸を片付けるため、再び現場に行った。依頼者は、「気持ち悪くて、とてもネコの死骸を見ることができなかった」と言う。ただ、私が伝えたその場所に近づくと異臭がするので、死骸の存在を感じたらしかった。家の裏、陽当たりの悪い狭いスペースにネコの死骸はあった。私が初めに発見したままの状態で残っていた。そして、その腐乱臭は人のそれと酷似していた。ただ、それが屋外だったことと、ネコの身体は小さいことが幸いして、そんなにキツい臭いではなかった。ネコは、骨だけ残して完全に溶けていた。これ...寝込んだネコ!!

  • 社会的動物

    「赤信号、みんなで渡れば恐くない」「青信号、誰も渡らず渡れない」個性より協調性、単独行動より団体行動が重んじられる世の中。「出る杭は打たれる」「郷に入らば郷に従え」言うまでもなく、日本は議会制民主主義の国。何事も多数決で決まる。多少のストレスがかかっても、大多数の意見や考え方に埋もれていた方が安全である。学校教育も、通り一辺倒の人間を作ることを最優先しているようにしか思えない。そして、よくも悪くも、大多数に合わせられない人間は、つまハジキにされる。小さな老朽一戸建。狭い間取りの奥の部屋に腐乱痕があった。部屋の戸を開けると、もぁ~っといつもの腐乱臭が覆ってきた。「まったく、この臭いはいつ嗅いでもかなわねぇなぁ」マスクをしていなかった私は、服の袖口で鼻と口を押さえた。通常は、最もヒドイ汚染物を先に撤去するのだ...社会的動物

  • きのこ狩り(後編)

    この表題と前編からの流れで、後編の話がだいたい想像できると思う。わざわざ書くまでもないような展開だが、秋らしい話題?として書き残しておこうか。数日後、現場を確認した依頼者から電話が入った。契約に沿った仕事をしたので、依頼者からは「問題なし」「ありがとう」の声が聞けるものとばかり思っていた。しかし、依頼者は私の思いとは逆に、「部屋に何かがいる!」と興奮状態。ちょっとパニックっていた。それを聞いた私は、「何言ってんだ?」と、依頼者の言っていることが理解できなかった。「何かがいる!」と言われても、私は何も心当たりがない。「作業を終えて退室したときは、間違いなく部屋は空っぽになっていたはず・・・なのに、何かがいる・・・?「野良犬が野良猫が入り込んだか?」「それとも、虫の類か?」とりあえず、その正体を知りたくて、依...きのこ狩り(後編)

  • きのこ狩り(前編)

    秋がやってきた。食欲の秋、行楽の秋、勉強の秋、人によって色んな秋があるだろう。私にとっては、やっぱ「食欲の秋」かな。・・・食欲については一年中だが。意地汚い私は、年柄年中、食い物のことばかり考えている。若い頃はいくら飲み食いしても体重に響かなかったのに、歳を重ねると少しの飲み食いでも体重が増える。身体の基礎代謝が落ちているからしい。んー、悩ましい。でも、食欲と食物があることだけでも感謝した方がよさそうだな。老朽アパートの特掃依頼が入った。木造1R、かなり古いアパートだった。長い間、掃除や片付けをしていなかったらしく、中はゴミだらけ。そして、この部屋の主は病院で亡くなって間もなかった。玄関から中に入り、目に飛び込んできた部屋の光景に溜息がでた。例によって、「こりゃヒドイなぁ」暗~い部屋には家財道具・生活用品...きのこ狩り(前編)

  • 遺骨と自分

    自分が死んだ後、その骨をどうしてほしいか、考えたことがあるだろうか。火葬された後に残される自分の骨の行く末をだ。私なりの自論なのだが・・・骨になった状態は既に自分であって自分でないようなもの。したがって、骨がどこでどうなろうと、知ったことではない・・・と思う。しかし現実には、そう思いながら、なかなかそう割り切れないものがある。やはり、遺骨の状態でも、自分の肉体であることの感覚は捨てにくいものだ。生きている今は、自分の身体を自分そのものとしている訳なので、なかなか自分と別物とは考えにくい。アノ世というものがあるなら、そこはコノ世の理解を超越した異次元の世界なのだろう。それを考えると、「自分の骨をどうするか」なんてたいして大事なこととは思えなくなる。集合墓地の「永代供養」だって「永久に面倒みます」ということで...遺骨と自分

  • ダメ男

    どんな仕事にも共通することだろうが、私は仕事を通じて色んな人と出会う。そして、出会う人(正確に言うと死人)の一人一人にドラマがある。言うまでもなく、腐乱した本人は独居者であることがほとんど。独り暮しをしていた理由も色々ある。連れ合いと死別・離婚、生涯独身etcある腐乱現場。狭い路地を入った古いマンションの一室。電話をしてきたのは年配の男性だった。そして、現場に現れたのは初老の男女だった。てっきり夫婦だと思ったが、そんなことは私には関係ないので、あえて尋ねたりもしなかった。汚染現場はトイレから脱衣場へまたがった入り組んだスペース。床はビニールクロス。半分乾きかけたチョコレート色の腐敗液の回りに、透明の脂が広がっていた。そして、腐敗液に混ざった頭髪にウジが這い回っていた。ウジって、身体を波うたせながら前に進む...ダメ男

  • 死者への使者

    よく、死がやって来ることを「お迎えが来る」とか、死を覚悟することを「お迎えを待つ」等と言う。その「お迎え」とは、一体何を指しているのだろう。もともとの語源は、何かの宗教や思想にありそうだが、私は、たまに耳にするこの言葉に苦笑いすることが多い。ちなみに・・・業界では(首都圏だけかもしれないが)、亡くなった人を病院から搬出することを、「病院下げ」「遺体下げ」「下げに行く」等と、「下げる」という言葉で表す。「運ぶ」とか「引き取る」等とは言わない。何故か、「下げる」と言う。その言葉からは、「いならくなったモノを片付ける」といったような意味を感じるが、正確な語意は分からない。多分、これにも語源があり、何らかの意味があるのだろう。遺体搬送で病院に行くと、ほとんど決まったパターンで作業は進む。作業的には難しい仕事ではな...死者への使者

  • 戦う日々

    「死んだ方がマシだ」「死んでもいい」「もう死にたい」「死んでしまえ」「死ぬー」etc自分の伝えたいことを強調するために、こんなセリフを使うことはないだろうか。「死」と言う言葉を織り交ぜて、感嘆詞として無意識に使っている人は案外多いと思う。そんな日常に心当たりはない?私は、この仕事を始めてから「死語」(死という言葉を混ぜた感嘆句)を軽はずみに使わなく、イヤ、使えなくなった。本当の死が、多くの死があまりに身近になったから。誰しも本当の死を考えて吐いているセリフではなく、特に深い意味もないのだろうが、私の場合は、本来そう簡単に使えるような言葉ではないことに気づかされている。以前にも書いたが、この仕事を始めて最初に出会った遺体は、おじいさんの亡骸だった(遺体処置作業)。まるで生きている人が眠っているだけのような遺...戦う日々

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芳田一弥さん
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特殊清掃「戦う男たち」
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