雷
空は夏から秋へと変わりつつある。少しずつ過ごしやすい季節になってきた。こんな時季は大気も不安定。夏と秋が押相撲をしているようなものか。あちこちで落雷が発生している。雷にあたって亡くなる人もいるくらい。特に、朝の雷は要注意らしい。秋が夏を寄り切るまでは、しばらくこんな空模様が続くのだろう。ある家で遺体処置をしていたときのこと。遺族の中に二十歳前後の男性が二人いた。二人は私の作業を遠巻きに、もの珍しそうに眺めながら話していた。回りが静かな分、二人の話し声は誰にも聞こえるものだった。「お前、仕事を探してんだろ?この仕事やったら?」「ふざけんなよぉ、やれる訳ねぇだろ!」「それにしても、よくやるよなぁ」「だよなぁ」私の仕事を奇異に思い、嫌悪した会話であることは誰にも明らかだった。そして、私の耳にも、他の遺族にもハッ...雷
2024/10/30 04:53