本の魅力を発信していくためのブログです。 小説を中心に、様々な書籍を2000字で紹介します。 「このブログを見ていれば、最近の文学界隈まる分かり」、そんな風に思ってもらえるよう、頑張ります。
関西在住の会社員。黙々と本を読んでいます。
【書評】「百年の孤独」は如何にして孤独であったか【ガルシア=マルケス】
私と弟がまだ小さかった頃、近所の田んぼでカエルを捕ったことがある。 どうしてそんなことになったのかは覚えていないけれど、とにかく捕って捕って捕りまくった。きっと子供心に狩猟本能をそそられたのだろう。だとしても、帰る間際に逃がしてやれば良いものを、私たち兄弟は虫かご一杯に持ち帰ってしまった。子どもながらに、手に入れたものを手放し難かったのかもしれない。 そしてあろうことかそれを、自宅の駐車場に置き去りにして忘れてしまったのだ。いや、正確には覚えていたが忘れた振りをしたと言うべきだろう。その大量のカエルをどのように飼育すれば良いか分からなかったし、また処理するにしてもその手段を持ち合わせなかったか…
現在、大阪の天王寺にある「あべのハルカス美術館」では、「広重 -摺の極-」という展示が催されている。広重とは無論、「東海道五十三次」で有名な、あの歌川広重である。今回はその展示に行ってきたので、簡単に感想を纏めたい。 私が美術というものに関心を持ち始めたのは数年前のことだ。友人にウィリアム・モリス展に連れていかれ、そこから徐々に美術館へと通うようになった。 美術館の良いところは、それが市民に開かれた場であるという点である。大体の美術館は手頃な値段で入館できるし、それでいて教科書でしか拝めない作家の作品を目の当たりにすることが出来る。 とは言え、美術に興味のない人から「それがどうした?」という声…
業務連絡です。ブログのアカウント名を「いこみき」とし、Xも始めました。 「自分の好きなものをもっと多くの人に愛してもらいたい」、そんな動機で私はこのブログを始めた。私は本が好きだが、残念ながら昨今、出版業は斜陽産業と言われている。私の友人でも、本を全く読んだことがないという人は多い。理由は様々だろう。仕事が忙しい。他の娯楽が溢れている。読みたい本がない。例を挙げれば幾らでもある。 けれども、矢張り本は素晴らしいものだと思う。本を読むと賢くなるとか、人の気持ちが分かるとか、そういう次元とは異なる。理屈以前に、骨組みの段階から私の生活には読書という要素が組み込まれているのだ。抜いてしまえばたちまち…
方言は、一つの武器である。 それは標準語によるテキストが溢れかえり、ともすればあらゆる表現が均一化されるなかで、ある種の本音を担保するものとして機能するからである。しかしこれをコントロールするのは難しい。 私は大阪出身なので、普段は大阪弁を用いてものを言うが、文章にするとどうにも嘘っぽくなってしまう。似非関西弁のようになってしまうのだ。そして大阪生まれの人間は、アレルギーの如く似非関西弁に過敏になる(ように思う)。 良くも悪くも、カテゴライズされた大阪人という雰囲気がが鼻につくのだろう。誰もが阪神タイガースのファンではないし、たこ焼きで白飯が食える訳でもない。そんな訳で、粛々と標準語でブログを…
高野川と鴨川に挟まれた三角地帯に位置する下鴨神社。京都に由緒正しき神社は山ほどあれど、中でも下鴨神社は平安以前から存在する屈指の大神社である。縁結びを始め様々な御神徳を得るべく、年間多くの参拝客が訪れるが、盆の時期に古本市が開かれていることはあまり知られていない……一部界隈を除いては。 という訳で、下鴨納涼古本まつりである。今年で37回を迎えるそうで、知られていないなどというのはあまりにも失礼な物言いである。私がこの古本まつりに参加したのは二度目のことだ。一度目はコロナよりも前の出来事で、そのとき購入したモーパッサンの絶版本は封を切られることがないまま箪笥の肥やしと化している。 下鴨神社へは京…
大学の頃、お世話になった教授が登山好きだった。 何かとゼミでも登山が企画され、私はそれに付き合って(半ば強制的に)山に登る経験を得た。私は理系の学部に所属していて、実験室では様々な器具を扱った。実験中にそれらの器具を破損してしまった場合、うちのゼミでは「みそぎ登山」なるものに参加しなければならなかった。そんな健全なのか不健全なのか分からない記憶が蘇った。 「バリ山行」は山が舞台の小説である。それも珍しいことに純文学である。純文学はどうしても人と人との繋がりを書くことが多い為、山を舞台とした作品は珍しいものに思える。けれど人間がそこにいる以上、電波の届かない山中であっても、どうやらそれは成り立つ…
話題になった頃に買ったものの、読むタイミングを逃し続けていた本である。先日Netflixで映画化作品の一部を見掛け、読んでみようという気になった。厚めの本であるが、読み始めるとぐんぐん吸い込まれるようにページが進んだ。 帯に書かれた販促用の文言は秀逸である。「この少女を、生きてください」。小細工なしの直球勝負、必要なのは時間と集中力だけである。付け加えるなら、少しの愛情があれば良い。しかし本当のことを言えば、後ろの二つは不要である。読み始めれば没頭せずにはいられないし、この湿地の少女を愛さずにはいられないのだから。 粗筋 ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に…
キリギリスが怖かった。 虫全般苦手であるが、大半に抱く感情は恐怖ではなく不快感である。ところが、キリギリスという昆虫は怖い。特にその顔が怖いのだ。 その顔、まずは面長である。おたふく顔のような受け口でありながら、極端に小さな目がアンバランスで、何やらエイリアンのような不気味さを湛えている。首根っこを掴むと、ぞっとするほど傾げて抗議する。発達した顎も、鯨鬚のように細い触角も、見る者を恐怖に陥れる為に進化したとしか思えない。 ところが、この記事を書くにあたって改めて調べてみたところ、現れたのはつぶらな瞳の愛嬌のある顔ばかりだった。どうやら私が嫌っていた顔は、カヤキリやクビキリギリスと言った特定の種…
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