【書評】平熱のまま、この世界に熱狂したい|弱き者の握る、櫂の力強さ【宮崎智之】
F・スコット・フィッツジェラルドは失われた世代を代表する黄金の作家だった。 彼の代表作である「グレート・ギャツビー」は世代を超えて愛され、何度も映画化されている。その名はある種のダンディズムの象徴とされ、日本では男性整髪料の名として広く知られている。 ギャツビーは哀れなほど愛に生きた男だった。その絢爛豪華な日々と、それとは対照的な寂しい最期を、私はフィッツジェラルド本人に重ねざるを得ない(或いはフィッツジェラルドの死を、ギャツビーに重ねると言うべきか)。 フィッツジェラルドの好んだ死というのは、どうしようもなく致命的で、自己破壊的で、ロマンチックだった。どの本で読んだのだったか、彼を捉えた最期…
2024/10/25 14:32