【書評】カフカ断片集【カフカ】
フランツ・カフカについて 私が初めてフランツ・カフカに触れたのは、高校時代の話である。当時軽音楽部に所属していた私は、自分のバンドメンバーのベース担当がカフカに似ていたので、興味を持ってかの「変身」に眼を通した。 もっとも、それまでもカフカ自体はぼんやりと知っていた。中島敦の「山月記」は教科書に載っていたし(中島敦はカフカに影響を受けたと言われている)、阿部公房の「砂の女」を読んだ際には後書きでその作品とカフカとの関連が指摘されていた。 とは言え、当時の私としては、「カフカは暗い作家」くらいの認識しか持ち合わせていなかった。後味の悪いものばかりを書いている、そういうイメージである。それは当たら…
2024/07/12 15:52