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2022/10/11

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  • 近況。

    いつも当ブログにお越しいただきありがとうございます。長い間更新出来ず、お話の続きを楽しみにお待ちいただいてる皆様には申し訳ないと思っています。私の体調に関しては、ご心配おかけしているのが心苦しいくらいに元気です。すこぶる元気です。すみません。なかなか更新できない理由はありますが、いろいろありすぎて言い訳にしかならないので控えます。本当に申し訳ございません。ただ、最近末っ子が幼稚園の三歳児クラスに入...

  • Re: notitle 58

    Re: notitle 58牧野つくしという女は、こんなに感情を表に出す女ではなかった。出会った頃から従順で、常に笑みを絶やさず、さり気ない気遣いが出来る女。初めはそれが何とも居心地が良かったが、一年経ちお互いの部屋を行き来するようになると段々それが当たり前になり、まるで空気のような存在になっていった。終わりの始まりは些細なことで、その穏やかな日常が次第に退屈になり、何か刺激が欲しいと思ったことがきっかけだった...

  • Re: notitle 57

    Re: notitle 57早くクシマに会いたい。そのことに嘘はない。なのに何であいつは俺と会う前だというのに、婚活パーティーになんか出てるんだ!クシマと会う約束をした土曜日は、いつもと同じように仕事へ行く支度をして、いつも通り西田が迎えに来た。行き先はメープルホテル東京。総支配人とホテル内の各責任者たちと話をして、あとは俺がオーナーをしているイタリアンレストラン「リチェロ」での婚活パーティーの様子を見るだけ。...

  • Re: notitle 56

    Re: notitle 56ここはメープルホテル東京の最上階。最上階から下三階分は吹き抜けになっていて、すぐ下の階はいくつかの宴会場とチャペルがあり、更にその下の階にはブライダルサロンとドレスショップ、あとは美容室に写真館がある。そして各階を、この吹き抜け部分で行き来が出来るようエスカレーターで繋がっていたはず。なぜ知っているのかと言えば、このメープルホテルには数ヶ月前に優紀とデザートビュッフェを食べに来たこと...

  • Re: notitle 55

    Re: notitle 55そして迎えた土曜日。11月に入って朝晩が冷え込むようになってきた今日この頃。公園やご近所さんの庭のモミジは紅く、街路樹のイチョウの葉も日の当たるところから黄色くなり始めていた。それでも今日は、まさに小春日和と言っても良いような陽気で、絵に描いたような青空が朝から広がっていた。メープルホテルに行く途中、一駅手前で電車を降りて大きな公園を通って行くことにしたあたし。茶色くなった芝生が一面に...

  • Re: notitle 54

    Re: notitle 54「絶対に嫌だ。ふざけんなクソが」「代表、口が悪過ぎます」「うるせぇ西田!土曜日は休みにしろって言っただろうが!俺は絶対に仕事なんてしねぇからな!」「そんな二週間前になって急に休みにしろと言われても無理だと申し上げたはずです。それでも休みたい理由は存じ上げておりますからね、無理矢理に何とかして午後のお約束の時間までにはと調整をしたではないですか。約束は午後からなんですから、その前の午前...

  • Re: notitle 53

    Re: notitle 53「絶っっっ対に嫌!だからね!」「姉ちゃん!頼む!俺を助けると思って!」いくら弟の頼みとはいえ、嫌なものは嫌。「い、や!」やっと決心してミドウさんにメールをした。彼も話があるから必ず約束の時間に喫茶店へ行く、と返事をもらった。まさかメールを送って数分後に来た返信にもびっくりしたけど。こんなに長い期間、会わないなんてことはなかったし、彼の友人とのことがあるまでは彼から会いたいとメールが来...

  • Re: notitle 52

    Re: notitle 52見守る。信頼があれば、出来ること。自分を信じてくれる人がいると、思えること。「彼はもう何も知らない、こわがるだけの子どもじゃないんです。大人で、責任を持って自分のことは自分で決めて実行出来るんです。親として、職場の上司としても心配するのは分かります。でも、その人が何歳であっても、自分のことは自分で決める権利があるんです。だからと言って、何でもかんでも一人で決めて良いわけでもないですけ...

  • Re: notitle 51

    Re: notitle 51「メープルホテル& DJリゾートグループ」代表取締役社長。これが、道明寺 司の肩書き。日本に限らず、世界各国で「メープルホテル」を経営し、そのリゾート開発については環境を第一に、開発に伴う環境破壊問題にも真摯に取り組んでおり、「環境共生型リゾート」を主軸とした開発を行っている。自然をそのまま出来る限り残し、地元に根付いた文化的特徴を大切に尊重しつつ、滞在を通してその土地に合った様々な...

  • Re: notitle 50

    Re: notitle 50手を繋ぐ。それは、性別に関わらず幼稚園児にだって簡単に出来るだろう接触。初めはそれすらも出来なかったミドウさん。「そ、れは、牧野さんから?それとも、司から……?」「前回お会いした時は彼からでしたけど……」こうして会いに来るからには、ある程度は、あたしのことを調べているだろうと思っていたけど、流石に会っている間のことを調べるなり何かしなかったのだろうか。あの喫茶店では、会うたびに手に触れる...

  • Re: notitle 49

    Re: notitle 49その料亭「楓」は門構えから凄かった。語彙力を失うほどに、圧倒的。この料亭はHPがあり、外観も内装も料理の一例もギャラリーで見ることは出来る。でも写真と実際に見るのとではこんなにも違う。夜の暗さと、それを照らす明かりが更に陰影を深く見せ、その荘厳とした佇まいに圧倒される。会長とお姉さんのあとに続いて、その門を潜って石畳の道を進んだその先にあったのは木造二階建て寄棟造りの建物。これは、築何...

  • Re: notitle 48

    Re: notitle 48ミドウさんは、道明寺 司。分かってた。あの素顔を見た時から、この人はあたしと違う世界を生きてきた人だと、だから、いつかの未来なんて夢を見たらいけないと。突然訪ねてきた、道明寺財閥の会長に用件を問えば。「あなたが、アプリを通じて会っていた男性のことで」こんな小物相手に神妙な顔で話し始めた会長だけど、やはり身構えてしまう。だって、大財閥の会長が一介の会社員に畏まって、わざわざ息子の話...

  • Re: notitle 47

    Re: notitle 47今日も一日、何事もなく恙無く。いやいやいや。なにごとがあったし、つつがないとか、ありえないでしょ。仕事だけはキチンと熟す。仕事とあたしのプライベートは関係ないし、それが自分の人生を揺るがしかねないようなことだったとしても、上司や同僚たちにはどうでもいい話。そう思ってたのに、今週は小さなミスの連続で。情けない。全然キチンとなんて出来やしない。ふとした瞬間にぼぅっとしてしまうことが増えた...

  • Re: notitle 46

    Re: notitle 46「……は?お前ら、いま何て言った?」「クシマ ツキノと、会って話をした。彼女は、お前の本当のことを知っていた。そう、言ったよ」彼女の部屋で過ごしたあの日から、ニヶ月は過ぎているのに一度も会えていない。今まで仕事だったり体調が悪かったりで一ヶ月会えないこともあった。でも今回は違う。明らかに避けられているような、そんな気がする。心当たりがないわけではない。あの日に彼女の住む部屋で、彼女...

  • Re: notitle 45

    Re: notitle 45部長には全てを話した。あたしのプライベートな話ではあったけど、やはり誰かに聞いてもらいたかった。出会ったきっかけから、進にも優紀にも話せなかったミドウさんの本当の姿を知ってから、あたしの部屋で一緒に過ごしたあの日のことまで。「はぁ~、なるほどね……」「本当に何でこんなことになったのか、私もまだ全部を受け入れられなくて。でもまさか部長まで巻き込むことになるとは思わなかったので、本当に迷惑...

  • Re: notitle 44

    Re: notitle 44白と黒の部屋に、あたしと花沢さんの会話だけが音だった。そして心臓と血液の流れるようなドクドクとした音は、動揺しているあたしの中だけで聞こえるものだと分かっていても、この状況に逃げ出したくて震えそうになる足にグッと力を入れて踏ん張った。例え部長がいたとしても、この人たちの目的が分からない以上、弱みは見せない。動揺も見せたらいけない。あたしは、ミドウさんの本当の名前も、何も知らない。大丈...

  • Re: notitle 43

    Re: notitle 43今日も一日、何事もなく恙無く。あれから、何かと理由を付けてミドウさんと会うことを断り続けている。仕事が忙しいとか、親戚の法事がとか、友達との約束がずらせなくてとかとかとか。でも、それもそろそろ、限界かもしれない。もう最後にあった日から、二ヶ月以上経っている。他愛無く送られてくるメールも少しずつ、さりげなく返信を遅らせて、内容も当たり障りないものへと変え、返信する回数も減らしていった。...

  • Re: notitle 42

    Re: notitle 42ピンポン、とオートロックのチャイムが鳴る。がんばれ、あたし。大丈夫。いつもと同じで、会う場所が違うだけ。そして、それが今日で終わるだけ。何でもないふりをして、何も知らないふりをして。がんばれ、あたし!そして、玄関のチャイムが鳴る。がんばれ。がんばれ、あたし。あたしは、何も知らない。今まで会って話していたミドウさんしか知らない。ミドウさんの本当の姿を知っていると、思わせたらいけない。大...

  • Re: notitle 41

    Re: notitle 41車に乗る前に見た、メガネを外したミドウさんの素顔。その顔を見た瞬間に、なんで今まで自分は気が付かなかったのか、馬鹿にも程があると思った。知っている名前だけでもと調べてみたら簡単だった。道明寺 司と花沢類。この二人でウェブ検索してみれば、まず出てきたのは「F4」という単語。そこから辿れば辿るほどに、容易く出てくる情報。SNSが発達した今、余程のことでない限り、ある程度は情報として出てく...

  • 「春雷」

    総つくです。 少し摺れちゃったつくしちゃんと、やや重めな総二郎のお話なので、純なつくしちゃんが好きな方は読むことをお勧めしません。 「春雷」「『月が綺麗ですね』も、『死んでもいいわ』も、今のあたしには、綺麗、すぎる……」 「……なに、突然」 「どういう恋愛したら、こういう言葉が、出てくるのかなっ、て。……この言葉たちは、愛の最中か、終わりの、どっちかな……」 「……さぁな、どっちだろうなぁ」 「西門さんはさ...

  • Re: notitle 40

    Re: notitle 40テーブルに顔を突っ伏したまま、なかなか顔を上げない彼女の肩を揺すりながら話しかけた。「おい、まさかまた風邪がぶり返して熱があるんじゃないのか?大丈夫か?すげぇ顔が赤いぞ」すると彼女はガバッと顔を上げるから、肩に置いていた手も自然と離れた。風邪じゃないから大丈夫と、なんとも弱々しい声で話す彼女の顔は、まだ赤い。彼女はグラスに入ってるアイスカフェオレをストローで忙しなく動かして氷をカラカ...

  • Killed by your gaze. 後書き

    Killed by your gaze. 後書き「Killed by your gaze.」をお読みいただきありがとうございました。クソ忙しい中、ぽわっと湧いて出たお話を書き殴っただけで、今回は特にテーマも何もないです。ただ、「君の視線に殺される」という言葉を使って、壁の中に二人きりというイメージで、R18が書きたい!で書きました。そして、最後の最後にぽろりと言うまで「好き」という言葉を使わないで表現できないかなぁなんて、またド素人が無謀な...

  • Killed by your gaze. 3 (類つく)

    花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

  • Killed by your gaze. 2 (類つく)

    Killed by your gaze. 2 (類つく)「それ」がいつからと問われれば、始まりは高校生の頃だったと言える。でも一度は諦めて、ただ幸せでいてくれるならと見守ることにした。だから付かず離れずの距離を保って接していたけど、そのことに一番に気が付いたのは俺だったと思う。二人がその結論を出した時、さして驚かなかったのは、それこそずっと見守っていたからに他ならない。そのことに一番に気付いた時、あいつが本当に彼女の手を...

  • Killed by your gaze. 1 (類つく)

    Killed by your gaze. 1 (類つく)それは、ふとした時。高校生の頃から続いていたらしい「それ」に、あたしが気が付いたのは社会人になる前だったと思う。ジェットコースターのような恋は最後、緩やかにスピードを落として終わりを告げた。お互い特に遺恨があったわけでもなく納得の上で終わりにしたその恋は、高校生の頃から見ていた友人たちには、あまりにも呆気ない幕切れのように見えたらしく、それはもう多大に心配された。確...

  • Re: notitle 39

    Re: notitle 39カランカランと、いつもの喫茶店の扉を開くと鳴る音に、もう流石に手を離すだろうと思ったけど、ミドウさんはずっと手を繋いだままだった。いつもカウンターの向こうにいるマスターらしき年配の男性と、いつもの若いアルバイトの子が、ミドウさんとあたしと繋がれた手を見て、おや?と言うような顔をした。ですよね!いつもと違うパターンですよね!あたしもびっくりしてるんです!なんて言えるはずもなく、ミドウさ...

  • Re: notitle 38

    Re: notitle 38待ち合わせはいつもの喫茶店。そう、いつも会って話をするのは初めて会った時に利用した喫茶店。約束の時間になると、どちらかが先に来ているパターンが定着していて、流石に半年間二週間置きに来るあたしたちを店員さんたちも認識し始めていた。ミドウさんが先に来ていれば、もう来てますよって言われるし、あたしが先に来た時はいつもの窓際の席に案内されるようになった。なのに、ミドウさんは今日は初めて会った...

  • Re: notitle 37

    Re: notitle 37「本当にさ、つくし何やってるの?」「分かってるから言わないで~!」「分かってない。分かってないから、そんな名前も素性も知らない男を好きになるんでしょ?」身も蓋もない言い方だけど、幼稚園からの幼馴染みである優紀の言う通りで、あたしの今までの恋愛事情を知っている彼女の言葉に何も言い返せない。今日はメープルホテルの中層階にあるガーデンレストランで期間限定開催のスイーツブュッフェを二人で楽し...

  • Re: notitle 36

    Re: notitle 36姉ちゃんを騙す。これが一番厄介な問題で、姉ちゃんを知ってるやつは皆、あの人を騙そうとするなんて無理だと言うだろう。特に弟の俺は姉ちゃんに絶対逆らえない。もう無意識レベルで逆らえないように刷り込まれていると言っても過言ではない。「分かってる。女と話すだけだったら仕事でも出来る。それじゃあ姉ちゃんを騙せないし、何の意味もない。だからクシマが知り合いから始めようって言ってくれたあと、姉ちゃ...

  • お知らせ。

    こんにちは。いつも当ブログにお越しいただきありがとうございます。しばらく更新出来ず、申し訳ありません。コロナに感染してから、熱はすぐに下がったし味覚も二週間ほどで戻ってきたんですが、夜な夜な激しい咳に襲われまして、さすがに二週間も続くとこれは何かおかしいと思って病院に行ったら、喘息でした。まさかこの歳で突然喘息になるとは思わず、びっくりしました。今は薬と吸引器が手放せない日々です。さらに義母が利き...

  • Re: notitle 35

    Re: notitle 35「もうマジで勘弁しろよ、お前ら」「そうだぞ。30過ぎて殴り合いの喧嘩なんてすんじゃねぇよ!ったく、久々すぎて司が凶暴なの忘れかけてたわ……」「ちょっと本気で殴り過ぎじゃない?司」俺と一番離れたソファに腰を下ろして、イテテと言いながら類は腹をさすっているが、肋骨を折るほど力は入れてないし、多少痣ができるくらいだろう。流石に顔は避けて、殴ったのは首から下だけにしてやったんだから感謝してほしい...

  • Re: notitle 34

    Re: notitle 34「おい、待てよ。類も司も何の話をしてるんだ?」「類?」あきらも総二郎も何の話をしているのか分からないということは、やはり類は誰にも彼女のことを話していないのだろう。「俺も初めはまさか司と彼女がマッチングして会ってたなんて知らなかったけどね。その話を聞いた時はびっくりした」「彼女から俺の話を聞いてるのか?」「聞いてる。だから俺は知ってるよ」「何を、知ってる?どこまで聞いた?」「お前の思...

  • Re: notitle 33

    Re: notitle 33『あなたの本当の名前は?』聞かれても話したくないことには話さなくて良い。そういう約束をした。もう彼女になら自分のことを話してもいいんじゃないかと思ったこともある。彼女には本当の自分を知ってもらいたい。でも自分が名乗ることで彼女の態度が変わってしまうことを恐れている。どうせいつかは終わる関係なんだから、そんなこと気にしなくて良いはずなのに、あきらや総二郎を見た時のような彼女の無表情で無...

  • Re: notitle 32

    Re: notitle 32「なんでお前らまでいるんだよ」「良いじゃねぇか、いても。今日は彼女と会ってたんだろ?」「今日はどんな話したの?」総二郎と類。なんでよりによって今日なんだ。こいつらの勘というか、タイミングには驚かされる。いや、それともあきらが何か言ったのか。そう思ってあきらを睨むと、「俺は何も言ってない!」と慌てて言うから、ソファで寛いでいた類と総二郎も何かあったのかと聞いてくる。「それがな、司のやつ...

  • Re: notitle 31

    Re: notitle 31「司」「なんだよ」「お前、俺が何時間待ったか知ってるか?」「んなもん知らねぇよ」あきらは、本当に待っていた。彼女の部屋で待つと決めた時にメールで帰っていいと送ったのに、勝手に残ってたのはあきらだ。それを恩着せがましく言われる筋合いはない。「ずっと彼女の部屋にいたのか?」「あ?」「彼女に荷物を渡して、そのあと」「いたら何だよ。早く車出せ。明日から出張だから早く帰りたいんだよ俺は」「ああ...

  • Re: notitle 30

    Re: notitle 30ふと目を覚したら外はもう真っ暗で、ベッド横の窓からは近くの街灯の明かりだけが、ぼんやり部屋を照らしていた。……ミドウさん、来たよね。あれ、夢じゃないよね?寝返りをうつと、ドアの隙間からリビングの明かりが差し込んでいるのが見えた。あれ?進が来たのかな?そう思って体を起こしてみたら昼間ほどのダルさはなく、熱も大分下がったように感じる。枕元のスマホを見ると、21:34の表示。「進?」部屋のドアを...

  • Re: notitle 29

    Re: notitle 29「……大丈夫か」「大丈夫、じゃない……ケホッ」「そう、だよな」「ごめんね、仕事いそがしいのに、約束だめにしちゃって」「気にすんな」「うん……」ミドウさん、怒ってない。声が、とても優しい。本当に心配してくれてるのが分かる。会えないと思ってた人に会えるって、こんなに嬉しいものだったっけ?「これ」そう言いながらミドウさんが差し出したビニール袋二つ。「こういう時どうしたらいいのか分からなくて、友人...

  • Re: notitle 28

    Re: notitle 28クシマが、風邪を引いたらしい。二週間前は彼女の都合で会えなかったから、明日は一ヶ月振りに会えると少し浮ついた気持ちになっていた。「ミドウ ジョウ」ではなく「道明寺 司」の姿で彼女と鉢合わせるアクシデントはあったものの、彼女といる時の、あの穏やかな時間は待ち遠しかった。クシマは、よく話す。俺からそんなに話題を振れないからか、それとも元々おしゃべりなのか。特に食べ物の話をしている...

  • Re: notitle 27

    Re: notitle 27一年で一番忙しいと言ってもいい6月が終わった。いつも多少の残業はあるけど、年末年始と年度末に年度始め、そして6月の株主総会の時はどうしても忙しくなる。休日出勤も基本的にはないけど、この時期は新人教育に株主総会の準備にと、やることが多く雑務も後回しになってしまう。主任と言えども、管理職ではない。だから上からも下からも頼りにされていると言えば良いのかもしれないけど、要は体の良い便利な存在な...

  • Re: notitle 26

    Re: notitle 26あたしとミドウさんの知り合い以上友人未満という微妙な関係は、それからも続いている。ミドウさんの仕事が忙しいのは相変わらずで、会うのは大体二週間に一回程度。そして、その都度どこかのお土産をくれる。日本は北海道から、仙台、金沢、大阪、名古屋、京都、沖縄。日本だけじゃなく、シンガポール、イタリア、フランス、イギリス、カナダ、オーストラリア。二週間の間に二~三ヶ所まとめて各地を回ることもある...

  • Re: notitle 25

    Re: notitle 25「おい、……じゃない。クシマ」「なに?」「何か話せよ」「ミドウさんは何かないの?」「馬鹿なこと言うな。女と面と向かって話すのが二回目の人間に無茶言うなよ」「……それもそうね」そうだった。さっきの自分の言動が恥ずかしくてチーズケーキを食べて誤魔化してたけど、ミドウさんから話題が出るとは思えない。「ん~、じゃあ仕事の話でもする?」「仕事?」「うん。ミドウさんは大手企業勤務ってプロフィールにあ...

  • Re: notitle 24

    Re: notitle 24「プロフィールにはタバコを吸うって書いてあったけど、ミドウさんてタバコの匂いがしないよね」「仕事中しか吸わないからな」「ミドウさんは、何かふんわり良い香りがする」「クシマは、何の匂いもしないな。他の女は甘ったるい奇妙な香りを撒き散らしてるのに」「き、奇妙な香り?ちょっと、どんな香りか分かんないけど、私は香水とか付けないから」「なんで付けない?」「食べ物の匂いが変わっちゃうもん」ああ、...

  • Re: notitle 23

    Re: notitle 23土曜日。朝から少しソワソワしていた。今日は午後からミドウさんに会う。どんな会話をしようか、そればかり考えている。ミドウさんは女性が苦手。それなら、あんまりボディラインの出るような服はやめておこうと、緑のタートルネックのセーターに、白のざっくりしたケーブル模様の入った大きめのカーディガンを羽織った。下はグレンチェックのワイドパンツ。靴は前回と同じ黒のショートブーツ。髪はハーフアップにし...

  • Re: notitle 22

    Re: notitle 22笑ってる?俺が?「いや、笑ってねぇけど」「いや、声を出して笑ってるわけじゃなくて、微笑む?そんな感じだったよな?!」あきらに同意を求めつつ、総二郎が驚いた顔で尚も俺の顔をジッと見ている。「何を考えてた?」「いや、別に……、あいつのパンケーキ食ってる顔が面白かったなと思い出して」「おい、そいつは仮面じゃなかったのか」「あぁ、それな。クシマを初めて見た時は仮面を付けてない女もいるんだと、び...

  • お詫び。

    こんにちは、はらぺこ02です。明日から不定期更新にさせていただきます。私事で申し訳ないのですが、ついに我が家にも流行り病がやってきてしまいました。世間で流行り始めてから三年経ってますでしょうか。頑張って予防してましたが、上の子が通う小学校でもらってきたようで。5人家族のうち、3人が罹患。一番下の未就園児にうつった時点で隔離も何もなく。この一週間何とかやってきましたが、ほとんどパソコンを触る時間もなくて...

  • Re: notitle 21

    Re: notitle 21『クシマ ツキノ                  20:32 こんばんは 』日本は夜。NYは朝。時差14時間。『二週間後の土曜日、大丈夫です。 一日空いてるので、時間はミドウさんが指定してください。』クシマに会える。会って彼女に聞きたいことがある。……いや、ちょっと待て。いくら聞きたいことがあったとして、どうしてそんなことを聞くのかと彼...

  • Re: notitle 20

    Re: notitle 20四人目。ミドウさん。「あ~、うん……」急に反応が悪くなったあたしに、花沢さんと進はメモを取るのに下を向いていた顔を上げて、あたしを見た。花沢さんの整った顔で見つめられると、ちょっとだけ緊張する。笑った顔も破壊力あるけど、無表情なのも、ね。「えっ。まさか姉ちゃん、その人のこと気に入ったの?!」「違う!そうじゃなくて、いや、う~ん……」ミドウさんのこと何て説明すれば良いのか。嘘ついても仕方な...

  • Re: notitle 19

    Re: notitle 19『ミドウ ジョウ             05:48 (Notitle) 』早朝の静かな部屋に、ピロンと鳴ったメールの着信音。……なに?いつも仕事の日は6時に起きてるけど、今日は日曜日だからゆっくり寝ようと思ってたのに、こんな早朝からメール?ミドウさん、今日もお仕事なのかしら。でも昨日の今日で本当にメールが来るとは思わなかった。タイトルも何もない。昨日...

  • Re: notitle 18

    Re: notitle 18「司様」「ミドウ ジョウ」から「道明寺 司」へ戻らなければ。「お前、どこかで見てただろ」「そうですね、美作さまと一緒に拝見しておりました」あきらも一緒かよ!あとで彼女と何を話していたのかと、あれこれ聞いてくるだろうと想像するだけで、ため息が出る。それに俺が誰かと会うということは、いくら変装していたとしても何が起こるか分からないところへ行くのに、誰も付いていないなんてことはない...

  • Re: notitle 17

    Re: notitle 17こうして彼女とアドレス交換をすることになったが、プライベートでアドレス交換なんて久しくしていない。それにしても彼女のアドレス『umano-shippo-makimaki-1228@……』ってなんだ?馬の尻尾?「馬の尻尾って何だ……?」「うふふ。何で馬の尻尾なのかしらね。あなたのアドレスも面白い。『sakuramochi_t_0131@……』って、なんで桜餅なの?甘い物が苦手なのに桜餅は好きなの?」「違う。友人がふざけて設定したのを、そ...

  • Re: notitle 16

    Re: notitle 16「あなたの体はあなたのものなの。それが家族でも友達でも初めて会った人でも、人の体は許可もなく勝手に触ったりしないものでしょ?」この言葉は、この女を信用するのに十分だった。この女がアプリを使って何をしようとしていたのか目的は分からないままだが、もうアプリを辞めて誰にも、俺とも会うつもりはないと言っていたから、すでに何かの目的が達成されたか、諦めたかなのだろう。それでも全ては信用してはい...

  • Re: notitle 15

    Re: notitle 15全く。話だけを聞けば、どこぞの金持ちの女嫌いのボンボンが、家族に勧められる結婚が嫌だからと友人と一緒になって、気まぐれにアプリを使ってその場しのぎの相手を見つけようとしてる感じだけど。もしかして、あの胡散臭い友人?がグルで近くで見てたりしてね。「期間限定で俺と付き合ってくれるなら、今言った店はもちろん、他にも行きたい店があるならどこでも連れて行ってやる。お前が結婚目的じゃないのにアプ...

  • Re: notitle 14

    Re: notitle 14「おい、クシマ ツキノ。俺と、付き合う気はあるか」「……はい?」急に何を言い出したの、この人。お互い何が目的か分からない状況で、あたしはアプリを辞めて二度と会うつもりはないって言ったよね?それなのに、付き合うって何?男女交際の、付き合う?「意味分かんない。お断り!」「お前に断られたら、俺はどこぞの見知らぬ女と無理矢理、結婚させられるかもしれない」ん?どういうこと?あたしと付き合えな...

  • Re: notitle 13

    Re: notitle 13この女は一体、何を考えているのか。分からない。仕事以外で女と話すことなどないから、分からない。今までの人生において「分からない」という選択肢はなかった。彼女は、俺が出会いも結婚相手も求めていないことに気が付いているから、何しに来たという質問が出たのだろう。だからといって、それを正直に話す必要もない。これは返答次第では、運営に報告されるような話だ。出会いも結婚も求めていないのに、こうし...

  • Take your time. 2 (完)

    Take your time. 2 (完)「……ん、」しばらくそのまま髪の毛を撫でながら牧野を見ていたが、それに気が付いたのか薄っすらと目を開けた牧野。初めはぼんやりとしていたけど、俺の姿を確認すると、また涙を流し始めた。やっぱり俺か。また俺が、何かをしたんだ。「……牧野」「道明寺、」「ごめんな、何が悪いのか分からないんだ。牧野を泣かせたいわけじゃないんだが、これ以上どうしたら良いのか分からなくてな」「ちが、違うの……!」...

  • Take your time. 1

    Take your time. 1昨年のクリスマスの朝にケンカをしたことから始まった別れ話。牧野が家を出て行ってしまったり、道明寺家と牧野が養子縁組することになったり、色々あった。結局、納会ではもちろん牧野の養子縁組ではなく、俺と牧野の結婚が報告されたわけだけど。牧野が妊娠していることを知ったあの日から約一ヶ月。最近、牧野が素っ気ない。当たり前の日常がいつもあるなんてことはなくて、「いつも」は誰かの支えで出来てい...

  • Re: notitle 12

    Re: notitle 12この男は一体、何を考えているのか。確かに無口で、女性が苦手だとは言っていた。だからって、置いていく?!途中であたしが隣にいないことに気が付いて戻ってきてくれたのは良いけど、ゆっくり歩いてくれって言ったのに、ほんの少ししかゆっくりにしてくれなかった。だから、あたしはほぼ小走りで彼のあとを付いていく羽目に。たまにちらりとこちらを見ているから、あたしが小走りなのに気が付いているはずなのに!...

  • Re: notitle 11

    Re: notitle 11姿見の前でくるりと回る。変なところないよね。白のざっくりニットに、紺色のタイトスカート。コートは黒にした。靴も黒のショートブーツ。アクセサリーはどうしようか悩んで、シンプルなネックレスとピアスを付けることにした。肩より長い髪の毛は後ろで束ねてポニーテールに。今日は本当にミドウさんは来るのかな。お店を予約したと言っていたから、今日は絶対来てくれるはず。もし来なくてもパンケーキだけは絶対...

  • Re: notitle 10

    Re: notitle 10あきらと総二郎に薦められて始めた婚活アプリ。俺が何かすることは一切なく、この日を迎えた。憂鬱だ。今までの人生において、こんなに憂鬱だったことはない。どれだけ厄介な仕事でも、どれだけ面倒な見合いでも、ここまで気持ちが沈んだことはなかった。午前中のNYとの会議が長引けばいいと思っていたのに、西田にきっちり時間通りに切り上げさせられた。これから付き合う予定もない、一回会っておしまいになるだろ...

  • Re: notitle 09

    Re: notitle 09進に薦められて始めた婚活アプリ。進に改善点を見つけたいと、あたしからの条件を呑み、上司を巻き込んでまで頼んできたことに出来ないと断ることは出来ず、真剣に結婚相手を探しているだろう彼らには申し訳ないと思いながら会っていた。あたしから誰かにイイねをすることはなく、イイねしてくれた人からプロフィールを見て適当に選び、数人にだけイイねを返した。そこでマッチングしてメッセージをくれた人と何回か...

  • Re: notitle 08

    Re: notitle 08「司、類がそこまで興味を持つ女、気にならねぇ?」「……ならないと言ったら嘘になるな」「だよな!その部下の姉も同じアプリ使ってるって言ってたよな?もしかしたら司とマッチングすることもあるかもな〜」総二郎がニヤニヤしながら俺を見てくるが、たとえ類が興味を持ったとしても俺はどの女にも会うつもりはないのに、馬鹿なことを言う。類は着ていたコートをダイニングのイスに掛け、カウンターのイスに座るとキ...

  • Re: notitle 07

    Re: notitle 07「姉ちゃん、今日は楽しかったね!」「進、あの人は一体何なの?」「あの人って専務のこと?」「自己紹介して食事が始まったまでは良かったのに、食べ始めてしばらくしてから、あたしと進を見て笑い転げるって何?!連れてきてもらったことには感謝してもし尽せないけど、あれはちょっと失礼じゃないかな?!」「いや、専務とご飯食べる時はいつもあんな感じだよ。今日は一段と笑ってたけど、俺も初めて専務とご飯食...

  • Re: notitle 06

    Re: notitle 06 「司、おかえり〜!」「……お前ら、どうやって部屋に入ったんだ」「ん?聞いてねぇ?西田さんから合鍵預かってるけど」また総二郎とあきら。暇ではないだろうに、こいつらも何を考えてるのか。あきらはともかく、総二郎は茶事が続く年末年始はいつも忙しくしていたはず。西田も西田だ。何でこいつらに合鍵なんて渡したんだ。合鍵と言ってもカードキーだし、指紋認証もしないと入れないはずなのに。わざわざカー...

  • Re: notitle 05

    Re: notitle 05「姉ちゃん、おかえり〜」「……あんたね、来るなら来るでメールの一つくらいしなさいよ」もうすぐ年末。年末は通常業務に加え雑務が多くなるし、週末にある納会の準備で残業になってしまった。クタクタに疲れて、今日のお夕飯はカップ麺で済ませちゃおうかな、なんて思いながら帰ってきた。アパートの玄関横の窓から漏れる光に、ため息をついて鍵を開けて中に入れば、また合鍵で勝手に人の家に上がり込み、こたつに埋...

  • Re: notitle 04

    Re: notitle 04「ほら司。ニックネーム何にする?」「んなもん知るか!お前らで勝手にやってろ」本人確認が取れたのか、プロフィール登録まで始めた三人。「ミドウ ジョウ」「ん?何か言ったか、類」「アナグラムだよ。「道明寺」をバラして、組み替える」「お〜!さすが類くん!それっぽい!それでいこう」いつも無表情の類も、心なしかウキウキしたような顔をしている。まぁ自分が責任者なら、それなりに改善点を洗い出した...

  • Re: notitle 03

    Re: notitle 03「ほら姉ちゃん。アプリ、ダウンロードしたから写真撮らせて」「写真?!載せるの?!」「違うよ、本人確認で必要なんだ。姉ちゃんパスポート持ってるよね?」「めんどくさ!」「プロフィールに載せる写真とは違うから。正面から撮るよ」「えっ」戸惑っている間に写真を撮られ、パスポートを出すように催促される。これで顔認証システム?でパスポートの写真と、いま撮った写真が同一人物だと確認されればオッケーな...

  • Re: notitle 02

    Re: notitle 02「絶対に嫌だ。ふざけんなクソが」「まぁ、そう言うなよ司」「司も来月には30歳だろ?流石にそろそろ考えないと」幼稚舎からの幼馴染み、西門総二郎と美作あきら、それに花沢類と俺の四人は、幼い頃からいつも一緒にいた。楽しいことも、悪いことも、ほとんどがこいつらとの記憶ばかりだ。お互いの生まれた環境が似ていたから、理解し合える部分も多かったんだろう。四人ともそれなりの年齢になり家業を継ぐべく、あ...

  • Re: notitle 01

    Re: notitle 01「絶っっっ対に嫌!だからね!」「姉ちゃん!頼む!俺を助けると思って!」いくら弟の頼みとはいえ、嫌なものは嫌。「い、や!」三歳下の弟の進は、花沢物産にSEとして勤めている。そこのアプリケーション開発コンペで最終選考まで残り、遂には採用されたのだという。進の提案したそのアプリは既に開発されテストも終わり、運用が始まっているらしい。花沢物産が運用しているアプリと言うことで信頼性はあり、認知度...

  • 次のお話のお話。(2023.01.19)

    次のお話のお話。(2023.01.19)こんにちは。当ブログにお越しくださりまして、ありがとうございます。みなさまからの拍手やコメントに励まされて生きています。次のお話ですが、予約投稿日を間違えまして。本当は昨日から始める予定でしたが、うっかりでした。楽しみにしていただいた方には、大変申し訳ないことをしました。すみませんでした。ということで、本日から新しいお話を始めます。またつかつくです。「類つく」にするか「...

  • Take a look at me now. 〜 Live,love,laugh and be happy!2 〜

    Take a look at me now. 〜 Live,love,laugh and be happy!2 〜桜子と滋さんとランチビッフェに来たはずのあたし。なのにアイマスクをされ、服を剥ぎ取られエステをしたあと、アイマスクを付けたままで桜子と滋さんに手を引かれて歩いていた。「ねぇ、これさ、今あたし何を着てるの?」エステで着るようなバスローブでもないし、もちろん着てきた服でもないと思う。なんだか動くたびにガサゴソと音がするし、歩きにくい...

  • Take a look at me now. 〜 Live,love,laugh and be happy!1 〜

    Take a look at me now. 〜 Live,love,laugh and be happy!1 〜お見合いの二週間後から道明寺の秘書を始めたのと同時に、道明寺からの強い要望により一緒に暮らすことになったんだけど。本当に意外だったのは、道明寺が思ったより身の回りのことを自分ですることだった。ご飯はそんなに作らないようだけど、洗濯に掃除、コーヒーを淹れるくらいはする。ずっとお邸で生活していた人だし、NYでも日本でもペントハウスにハ...

  • Take a look at me now. 〜 After story within the company. 2 〜

    Take a look at me now. 〜After story within the company. 2 〜「社長、社員さんたちの前で何を言うつもりですかっ」食堂横のエレベーターホールで待ってる間も小声で道明寺に注意を促すけど、たまにキレると手が付けられない時があるから困ったもので。社員さんたちの前ではキレることは滅多になかったんだけどなぁ。「うるせぇ!断ってんのに、どいつもこいつもしつこいんだよ!しかも勝手に体に触るやつがあるか!...

  • Take a look at me now. 〜After story within the company. 1 〜

    Take a look at me now. 〜After story within the company. 1 〜お見合いをした後に、一週間で引継ぎをして日本へ戻れと言われたけど、実際には二週間かかった。会長秘書だから、生活拠点はもちろん会長と同じくNY。会長と社長のスケジュールも上手く噛み合わず、時差もあって西田さんとなかなか引継ぎ作業が出来なかった。今まで道明寺はずっと西田さんをメインに男性秘書を連れていて、一度も女性を秘書にすることは...

  • Take a look at me now. 〜After story with makino family. 〜

    Take a look at me now. 〜After story with makino family. 〜あのお見合いの日から約一ヶ月後のある日。道明寺は一度決めたら、実行するまでが本当に早い。それが財閥の社長なんて仕事をやっていられる所以なのだろうけど。今は、道明寺と二人で牧野家に来たところで。あたしの家族には、お見合いをしたこと、そのお見合い相手の人と結婚することにしたから、一度会ってほしいと時間を作ってもらった。普通は予め相手...

  • Take a look at me now. 後書き

    Take a look at me now. 後書き「Take a look at me now. 」を最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。「今の私を見て」ってことで、テーマとしては「存在意義と幸せ」でした。もう、最後のほうは本当に鬱々としながら書いてました。だってなんか道明寺が道明寺らしくないじゃん。書いてる本人が言うなよって話なんですけどね、本当に。どうしてこの話を思いついたのか忘れたんですけど、存在意義を調べて...

  • Take a look at me now. 37 (完)

    Take a look at me now. 37 (完)「道明寺、あなただってこの五年間、何もしなかったわけじゃないでしょ?」「……牧野が、言ったから。何から始めたら良いのか分からなかったけど、牧野が俺なら出来るって、言ってくれた。だからそれを信じて、今まで出来なかったことを、人を大切にすることから始めてみようと、ただそれだけで、俺の言動一つで誰かを笑顔に、幸せに出来るんだって、牧野が教えてくれたから」「誰かを大事に大切にす...

  • Take a look at me now. 36

    Take a look at me now. 36一頻り食べて満足したらしい牧野は、ソファに移って食後のコーヒーにミルクと砂糖をたっぷり入れて飲んでいたが、さっきから隣に座る俺をチラチラと見てくる。「さっきから何だよ」「あ、あのね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、でも、あのー、話したくなければ話さなくても良いんだけど、えっと」「何だよ、聞いてみないと分かんないだろ。なに?」「あの……、赤札、のことなんだけど」ドッと一瞬...

  • Take a look at me now. 35

    Take a look at me now. 35ふと目が覚めると、目の前には道明寺のきれいな寝顔があった。起きてすぐに道明寺の顔って!心臓に悪い!ドキドキしつつも初めて見る寝顔に嬉しさが込み上げてきて、まじまじと見てしまう。長い睫毛に、高めの鼻は鼻筋も真っ直ぐで、薄めの唇も触れると意外と柔らかいことを知った。同じ人間なのに、こうも作りが違うものかと感心してしまう。その唇に、ほんの少し指先で触りながら、その柔らかさを確か...

  • Take a look at me now. 34

    Take a look at me now. 34ついさっきまで、あたしが道明寺に今までのことを怒って言っていたはずなのに。いつの間にあたしが責任を取るなんて話になってるの?365日24時間秘書ってなに?どういうこと?それに、この人は、本当に道明寺?今までちょっと乱暴だったり強引だったりすることはあったけど、ここまで口を挟ませないほどに事を運ばれたのは初めてで、だからって、まだ何も話してないのに!「ちょ、ちょっと待って!」「お...

  • Take a look at me now. 33

    Take a look at me now. 33「これから一生俺の側から放してやれなくて、ごめんな」「は?」「は?って何だよ、そのままだろ。俺は一度もお前を忘れたなんて言ってねぇよ。諦めたとも言ってないし、俺の中から牧野がいなくなったこともない。だが、そうだな。一つ言うなら、類とのことを勘違いして連絡しなかったのは、悪かった」「え?」「え?じゃねぇよ。そもそもにあんな写真撮らせたのが悪いんだろ。お前も簡単に類に騙されて...

  • Take a look at me now. 32

    Take a look at me now. 32「愛してる」なんて、酷い人。この五年間、何が起こってもあたしの気持ちは一つもブレなかった。ただ、ただ道明寺が好きなで、愛していただけ。なのに、この人は。噂や信憑性のない雑誌に惑わされ、勝手に結論付けて連絡を断ち、あたしを忘れようとした。何も言わずに、黙って。あたしに対する気持ちは、そんなものだった?あたしだけが、いつまでも。他に想う人が出来たなら、言えばいい。それでもあた...

  • Take a look at me now. 31

    Take a look at me now. 31「それで?俺と牧野が結婚するって勘違いした司は、牧野を忘れようと仕事ばっかりしてたわけ?」「……別に忘れようとしてたわけじゃねぇよ。だから今回も相手が牧野と知る前に断りを入れただろ」「知らないでお見合いを受けたのには変わりないでしょうよ」牧野がぎろりと俺を一睨みするから、どうも居たたまれない。俺も多少は悪いのは分かっているが、分が悪過ぎる。気まずくて、手元の会席料理に視線を...

  • Take a look at me now. 30

    Take a look at me now. 30 「牧野。あなたが司さんを動かしたのね」「……私ですか?」 「やめろって言ってんだろ。牧野は関係ねぇ!」 テーブルを思い切り叩きたい衝動に駆られる。こんな時に話さなくても良いことだ。あんな赤札を貼って面白がっていたなんてことは人生で一番の後悔だ。他人に、改めて話されたくもない。 「あの……、その中学の同級生と同窓会で会ったのは、道明寺が謝罪に来た後だと思います…...

  • Take a look at me now. 29

    Take a look at me now. 29「やっぱり、バカ男じゃないの!」「牧野!」「美作さんは黙っててよ!お見合い相手があたしだって知ってていきなり断るなんて酷いと思ったけど、本当はあたしだって知らないで、あたし以外の女とお見合いして結婚するつもりで、ここまで来たってことでしょ?!こんなことされたら、いくら自分の為の五年間だったとしても、何でここまでやってきたのか分かんなくなるわよ!それなのに、なんであたしが類...

  • Can we get back together? 後書き&お知らせ

    Can we get back together? 後書き&お知らせ「Can we  get back together?」をお読みいただきまして、ありがとうございます。題字の通り、「私達やり直せる?」でした。流石に誕生日は忘れてないと思います。笑1話から3話まで司くんはとにかく「いつも」を言い続けてますが、それは司くんが仕事を頑張っているからこその「いつも」が送れているとは思います。でも、その仕事も「いつも」誰かが支えてるんだよって...

  • Take a look at me now. 28

    Take a look at me now. 28「……牧野?」牧野が、いる。何年振りだ?二年?三年か?めちゃくちゃ怒っている顔をしているが、一目見て改めて牧野に惚れたままだと自覚する。牧野は淡い青色のふわふわとしたワンピースに白いカーディガンを羽織っていて、今まで一度も染めたことのないだろう艷やかな黒髪は最後に見たときより長くなっていた。小さなパールのイヤリングが牧野が動く度に耳の下でゆらゆらと揺れている。やはり忘れるこ...

  • Can we get back together? 4 (完)

    Can we get back together? 4つくしちゃん、元気な赤ちゃんを、産みましょうね?「……あ?」待て。誰が?赤ちゃんを?産むって?つくしちゃんって、牧野だよな?つくしちゃんが子どもを?誰の、子どもを?俺か?俺しかいないよな?俺の、子ども?「……牧野!」牧野はどこに行った?!ぽかんとしていた俺を置いて女三人はとっくに書斎を出て行ったらしく、あたりを見回しても、もう誰もいない。慌ててババアの書斎を出る。そこら辺に...

  • Take a look at me now. 27

    Take a look at me now. 27社長就任が発表されてからの一ヶ月は特に忙しかった。連日、取引先への挨拶回りにパーティーへの出席。パーティーでは、どうしてもと頼まれて取引先の令嬢をパートナーにすることもあったが、基本的には日本に来てから秘書になった西田を連れて行く。牧野以外の女は、触るだけでも鳥肌が立つ。気持ち悪い。あきらたちも会社に挨拶に来たが、挨拶だけで余計な話はせずに終わった。本当に忙しかったし、牧...

  • Can we get back together? 3

    Can we get back together? 3「副社長」 朝イチ西田。 寝起き早々から牧野がいない事実に打ちのめされる。 やはり夢ではない。 牧野はいない。 「さすがに起こすところからとは思いませんでしたが」 「朝からうるせぇな!」 「朝一人で起きられないようでは牧野さんに捨てられても仕方ありませんね」 「捨てられたとか言うな!まだ捨てられたか分かんねぇだろ!」 「おやおや。まるで子どもですね、司坊っちゃんは」 西...

  • Take a look at me now. 26

    Take a look at me now. 26牧野とはNYの道明寺邸で再会したあと、またパッタリと会えなくなった。同じNYにいるのに、意味が分かんねぇ。メールはまた毎日来るようになったけど、添付されてる写真に写ってる、牧野の隣に並んで顔を寄せて肩組んでる金髪野郎は誰だ。牧野は翌年の五月に留学を終えて日本へ帰って行った。結局牧野は、大学三年生の一年間をほぼアメリカ留学で過ごしたことになる。なのに、会えたのがあの一回だけって...

  • Can we get back together? 2

    Can we get back together? 2ジュエリーチェストの上に置かれていたモノ。それは、土星のネックレスとミラノで渡したダイヤの指輪だった。本気だ。牧野は本気で俺と別れるつもりで、この家を出て行った。でも待て。喧嘩したのは昨日の朝だ。なのに翌日から有給?いくらなんでも俺の秘書をやってる限り、突然の有給は取れない。前から有給申請をしていたことになる。でも、荷物はどうした。仕事中に業者に運ばせた?一緒に暮らして...

  • Take a look at me now. 25

    Take a look at me now. 25「と言うことでね、去年の夏から日本の道明寺邸で過ごしてたの」あっけらかんと言う牧野。そんなことを考えていたとも知らなかった。俺と、俺の側にいたくて?それなのに待たないと決めて、ババアに啖呵切って何やってんだコイツ。約束をしてないとはいえ、四年間どうするのかと思えば、まさか牧野からこっちに飛び込んでくるとは。そこまで想われていることを知って顔がニヤける。「それからすぐに道明...

  • Can we get back together? 1

    Can we get back together? 1朝、喧嘩をした。いつものことだけど、いつもと違うことがあったとすれば、一つ。「もういい、別れる!」牧野にそう言われたことだった。今まで数え切れないほど何度も喧嘩をしてきた。それでも、この言葉だけは言わなかったのに、初めて出た言葉。その時は俺も激昂してたから気にも止めなかったし、なんなら、「そうかよ!じゃあ別れるか!」なんて言い返した。そう、売り言葉に買い言葉のように。牧...

  • Take a look at me now. 24

    Take a look at me now. 24「会長、奨学金の話は辞退させてください。五千万もいりません」「あら?金額が少なすぎたのかしら?大人しい顔をして随分と欲張りなのね」なんで、この人は道明寺の母親なんだろう。どうしてこんなことが言えるのだろうか。大企業の偉い人にでもなると、こうなってしまうの?道明寺。あなたの母親がこんな人だなんて、かわいそうだと思うし、あなたにはこんな人になって欲しくない。「会長。私は家族が...

  • Take a look at me now. 23

    Take a look at me now. 23牧野はテーブルに二人分のコーヒーを置くと、また当然のように俺の隣に座る。コーヒーを一口飲んでみれば、懐かしいタマの淹れたコーヒーと同じ味がした。やはり牧野は日本の道明寺邸にもいたのだろう。でなければ、この味は出せない。「もう早く話してくれ。この二年で牧野に何があったのか」「うん、二年前に道明寺がアメリカに行って日本にいなくなってからなんだけど……」ーーーーーー二年前。道明寺...

  • Take a look at me now. 22

    Take a look at me now. 22「ということで、おばさまが話しても良いって。そのつもりなら言ってくれれば良いのにね」あのババアと普通に話してたぞコイツ。今日は休もうと思って邸に来たのに、休めそうな気がしない。ただでさえ疲れているのに、この意味の分からない状況に思考回路も止まりそうだ。「その前にご飯食べようよ。お腹空いたよ。ほら、腹が減っては戦はできぬって言うじゃん」飯に戦だと?牧野はこれから戦うつもりな...

  • Take a look at me now. 21

    Take a look at me now. 21全てを食べ尽くされそうな程の、深いキス。口の中を余すところなく、味わされる。あたしは食べ物じゃないんだけど!なんて、あとになって冷静になった時に思ったけど。この猛獣のように噛み付いてくる男に、恋愛経験のないあたしは為す術など何もなく。とにかく、あたしも道明寺を感じたかったし、道明寺もあたしを求めてくれている。付き合ってないとか、付き合ってるとか、今はそんなの関係なくて、た...

  • Take a look at me now. 20

    Take a look at me now. 20クソッ!あのババア、めんどくさそうな案件を持ってきやがって!最近、牧野に全く連絡が出来ない。牧野からも毎日のように来ていたメールが半年ほど前から、ほとんど来なくなった。牧野から来るメールには、その日の天気だったり、弁当の中身だったり、友達の話、家族の話。日本にいた頃と変わらない日常。それが毎日の楽しみだった。俺は大学を一年スキップしてMBA取得の為に昼間はNY支社で仕事をしつつ...

  • Take a look at me now. 19

    Take a look at me now. 19それからの一ヶ月は、あっという間だった。あたしの誕生日には、またみんながパーティーと称してどんちゃん騒ぎ。誕生日を祝う名目で騒ぎたいだけだった気もするけど。年末年始も結局みんなで集まって賑やかに年越しをして、初詣に行ったりして過ごした。あれからの道明寺とあたしは、友達以上恋人未満って言葉がピッタリな関係だと思った。お互い好きなのに、付き合わないとか意味わかんない!って滋さ...

  • Take a look at me now. 18

    Take a look at me now. 18 結婚。 その言葉に涙も引っ込む。 「……それは、ちょっと」 「ああ?!お前、俺が好きだけど結婚出来ねぇって、そんな軽い気持ちだったのか?!」 「な、そう、そうじゃない!そうじゃないけど、いきなり結婚って、」 「俺はずっとそのつもりはあった」 「……自分だって、つもりなんじゃん」 「ごめんな」「何のごめんなのよ。こんな勢いで結婚なんて出来ないよ」「おう。四年後な」「もう!待た...

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