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雨椎
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2022/10/11

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  • 頭痛薬

    愚鈍の気配をまとって頭痛はやってくる。頭が痛い。それは低気圧を引き起こし空気を対流させ空に滝をつくる。頭が痛い。冬なのに蝉が、鈴虫が、蛙が同時に騒ぎ出し私の鼓膜を刺激する。頭が痛い。透明なくせに一丁前に体重を持った背後霊が私の肩を圧迫する。頭が痛い。分厚い空気の壁が私の肺を挟んで押し潰そうとしている。頭が痛い。文字をなぞる指は震え未知の言語を描いている。頭が痛い。 白い錠剤を2粒、私は大量の水とともに胃に流し込む。それは私の体内で溶け血液に混じり痛みとともに蝉と鈴虫と背後霊を追い払い空気を柔らかくし未知の言語を訳してくれる。頭が痛い。それは世界と共振しているから。私は世界の一部になど、なりたく…

  • エナジードリンク

    エナジードリンクには誰かの元気がつまっている。誰かが飲めば誰かが元気を失う。元気は循環している。魂のように。水のように。空気のように。私の隣の人が飲んだ。私の斜め向かいの人が眠った。隣の人は元気に電車の扉をくぐり、斜め向かいの人は二駅後で慌てて降りていった。 エナジードリンクには誰かの元気がつまっている。誰かが飲めば誰かが元気を失う。元気は循環している。魂のように。水のように。空気のように。私の隣の人が飲んだ。私の斜め向かいの人が眠った。隣の人は元気に電車の扉をくぐり、斜め向かいの人は二駅後で慌てて降りていった。 もし無理になったときはエナジードリンクには頼らずに友達に頼むよ。傍にいてくれる人…

  • 匂い

    太陽の日差しの色は熱された樹木から滲み出る樹液のようなもので、それを必要とする虫達のように私達はそれを食べなければいけない。舌にのせた瞬間に広がる灯の味はどうも鼻について好きじゃない。目から皮膚から入ってくるねっとりとしたその感触がどうにも居心地が悪くてしょうがない。 曇の日はまだましだ。薄暗さが醸し出す安心感とそれに付随する無味無臭。まるで虚無のような風が吹き抜ける一番体が軽い日。でもそれは紙一重に雨という重い日になる可能性を持っていて、アスファルトの焦げる匂いや草木の維管束の匂いがしてきたらそこは空から無数に放たれる鏡に占拠される。 小さな雨粒は鏡像を映している。 水滴に映り込む無数の私。…

  • 基底現実

    基底現実を基底足らしめるものは多分皆が思っているより多いけど少ない。そこに含まれるのは天気。でも仮想現実にも存在する。そこに存在するのは猫。でも拡張現実にも存在する。そこに存在するのは電柱。でも代替現実にも存在する。そこに存在するのは声。でも複合現実にも存在する。 拡張現実にも存在するものが基底現実なのだからそれは基底なのだ。それがなければ何もない。現実に続く現実でない場所にはなにもない。いや元からないのだそんなもの。現実はひとつしかない。ただそれが、人によって細かく分類されているだけで。 だからそこにない味や匂いを求めるのだ。そこにあるのはただの空気のような何か。虚無に近しい物体X。それはつ…

  • 青信号

    歩行者信号の青色は勿忘草の香りがする。けれど雨の日のそれは遅れた葉桜の色。点滅は雨音に合わせて手を叩き、メロディとは違うテンポを刻む。私はその中を歩いていく。傘はどこかへ流れ行ってしまった。雨は私の血液になりたがっているかのように私に張り付いてくる。 雨の温度。それは黒い雨雲の体温であり世界のなみだ。今もどこかで誰かは泣いている。必ず。雨は代わりには泣いてくれない。共振して世界のどこかになみだの代わりの濁った水滴を落とし、その水滴は人体になりたがる。透明な雫である涙に憧れて。 草木野花と地層で濾過され限りなく透明に近づいてやっと彼らは人に近づける。だから私は体にこびりついた雨粒を乱暴に払い落と…

  • 足音

    どこからともなく聞こえるのです私を追いかけてくる足音が私が歩けば歩いてくるし私が走れば走ってくる必ず追いつかれそうなのにそれは私に追いつきはしない後ろを振り返っても誰もいないそれはもしかしたら私なのかもしれないと気付いたのは昨日のことでした (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • たそがれどき

    黄昏時は誰そ彼ときあそこにいるのは誰だろか夕立のあとの曇った視界にゆらりゆらりと人の影さ迷っている幽霊だろか宵の淵で揺らぐのは自分の輪郭おぼろげにきっと忘れていくのだろうそして向こうへ行くのだろうあれは一体誰だったかくるりと振り向くその顔は随分私に似ているな (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 未完の物語

    世の中には未完の物語の方が多いのだ物語を紡ぐことに疲れてしまった人諦めてしまった人やめざるを得なかった人そんな人たちの物語が無数に存在する中で完成させるばかりが良いわけじゃないその道を辿ろうと思った軌跡物語がはじめられたことそのことはきっと誇れることだろう (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 終極

    はじまりは終わりなのですあなたが生まれたとき あなたのいない世界が終わったあなたという存在が何かを観測するたび観測前の世界が終わって新しい世界がはじまっているだから終わりははじまりなのですあなたが死ぬとき あなたがいた世界が終わった (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 棺桶

    夜は好きだ遮光カーテンを締め切り照明を全て消してこの家にアナログ時計はない秒針の音は響かずでき得る限りの静寂が用意されている暗順応した瞳が部屋の中を見回す自分の部屋のようで自分の部屋でない深呼吸をすれば浮遊感に包まれるここは大きな棺桶だ毎晩私は埋葬される そして翌朝生き返る遮光カーテンの隙間から照らされる朝日によって体には重みがのしかかる生きるということの覚悟その重さ私はまた埋葬されるのを楽しみに日々をこなすぼんやりとする時間があれば夢想する暖かい布団で暖められた私の体もし布団がなければ冷たくなるのだろうか 雨の日の雨音以外響かない静寂耳が聞こえなければ耳が痛いほどの沈黙になるのだろうか暗順応…

  • スマホ

    スマホの画面を滑る指予測変換はいつも的外れイマイチな言葉を並べながらそれでもこの情景を並べて加えて見せつけて文章を編んでは置いていくそれが私にできること生きているその証 (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 君の爪

    きらりと光る君の爪が視界に入って僕は思わず目をつぶった輝いていて眩しくて君の爪は夜空の一等星のように輝くために磨かれていた僕の視線に気づいた君がなに? と首を傾げたけれど僕は何と言っていいかわからずなんでもない と君の爪の輝きを忘れないよう焼き付けていた (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 回復薬

    あたまがいたいと彼女が言うから薬を飲んでと促したそれはいやだと彼女は言うからどうしてなんだいと問いかけた 頭の痛みは心の痛み傷口のない傷が信号を発し私に訴えかけてくる私はそれを受け止めるべきだたとえ傷口がなかろうともそれは傷だと認識すべきだこれは私の戦いなのだ目には目を 歯には歯を心には心を私に傷をつけたもの許しはしない逃しはしない地獄の果まで追い詰める 彼女は戦士のようだったじゃあ尚更と僕は返した万全の状態で、戦わないとね彼女は薬を飲んだ (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 三角定規

    三角定規は嫌いだと君は言った。どうして?と聞くと真ん中の穴から幽霊が見えてしまうからだそうだ。覗かなければいいんじゃない?そう言うとそれでもだめと言う。ノートに置いたそのときに、穴から目玉が見えるらしい。僕は穴から世界を覗いてみた。危ないと翳した彼女の手のひらの目と目があった。 (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 糸雨

    天と地が細い糸で繋がっている小さな音が編まれて世界に響いているそろそろその糸は綿になるでしょう音もなく地に落ちはじめるでしょうあるいはビーズになるでしょう硬い音を立てて落ちてくるでしょう手芸と音楽が合わさった空と大地の共同作品 (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 石になりたいのかもしれなかった道端の小石でも河川敷の水切り石でもいいでもできれば海へと続く河口の水圧で転がされたい硬く 硬く目も耳も口も閉じて陽の光と雨と風にさらされ自然というものを感じていたい (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • 仕草

    君のその仕草がきれいでいつも見とれてしまう手から指先までのしなやかなカーブ鼻から顎までのシャープなラインうなじから肩までのなだらかな下線つんと澄ました顔でするりと髪をかきあげ首を傾げる曲線美の連鎖 (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

  • しろねこ社さまから詩集が出ます

    原稿を送付したうちのひとりなのですが、出版についてお声かけいただきました……心臓がバクバク言っています……家族に詐欺を疑われましたw https://t.co/inUTfevMSB — 雨椎零◆詩集予約受付中 (@amatsui_rei) 2023年1月3日 昨年秋にしろねこ社さまが原稿を募集しておられる際、そっとお送りさせていただいたのですが、この度出版しないかとお声かけをいただきました。 友人達と通話していたのですが、びっくりしすぎて声が震えていたそうで。そりゃあびっくりしますとも。とんでもないお年玉をいただいてしまいました。 うちの家族は割とドライで、厳しい意見しか飛んでこなかったのです…

  • 新年

    子供の頃の大晦日は私にとって特別なものでしただって日付が変わるまで起きていることを許されていたから大人になって夜更かしが普通になって日付が変わるまで起きていることなど珍しくなくなったけど大晦日の夜更かしは未だ新年を待つ街の雰囲気のせいか何となく特別な気がしています 実家を離れ一人暮らしを始めた今でも大晦日の夜は夜食に年越しそばを食べのんびりとカウントダウンを数えています ほらもうすぐカウントが0になりますよ ぴょこぴょこ跳ねる兎がやっと今に到着するのです可愛らしい長い耳を揺らしながら皆に新しい気持ちと新しい風を運んでくる あけましておめでとうございますあなたのところにも兎はやってきましたか雪の…

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