唇色褪せた我が人生 草の間に 甘露 ( つゆ ) を求む 悄然なりし眸で追うは 束の間の旧き 幻想 ( ゆめ ) あれは五月の春の陽の 井戸の傍に立つ男 美しき背筋向けたまま 水滴のプリズム私は練絹捧げ持つ 玉虫色の髪恥じもせずに 慄える肩と白玉の手先を 閃光 ( ひかり ) の中侍らせていた今獄中の魂もって 閻魔の罠に掛かろうと 我が舌先は珠を 弄 ( ころが ) さぬ 男とは私にとっては貴方だけだった
吟 ( うた ) うことは生きること、 奏でることは残すこと、 また舞うことは死を目指すこと。災いにも似たこの宿命が、 私と云う島を制圧し、 やがて無くなるまで躰を動かす。彼らの代わりに生きて 彼らの代わりに死んで 彼らの代わりに不滅を遺すとて、彼らとはずれている、 何から何までが。其れはきっと恩寵である。
少女は傷付き大人に成って 嘔吐し、涙に汚されて 顔を上げれば遥かに透かし見る 悲惨の上に積み上げられた幸福を『私に出来ることは何だろう?』 『ここで地獄の 顎門 ( あぎと ) に呑み込まれるのを待つ間に?』内面と外界の齟齬に蹴倒されたまま 死んでいくのだろうか?鏡が見ている 道徳が見ている 群衆も見ている 公序良俗を見ているこの世はパレードみたい 望まれやしなかった祝祭に沸く
鬱蒼とした草木の中へ身を隠したい 寝転んで視る空はどんなにか青いだろう 小鳩がやって来ても知らん顔して愛せるんだ わたしは夏を克服する溶けかけのスイカは恋しいけど 家には魔物がいるから帰りたくない 鴇 ( とき ) 色の風鈴はひび割れて仕舞ったっけ 庭に生い茂った 凌霄花 ( ノウゼンカズラ ) は綺麗だったっけああ 立入り禁止区域の やけに咲き誇った向日葵たちの方が 発電所に絆されて 夕陽に背を向けたような 畸形の彼らの方が数等美しかった暮れ行く空には悪魔が飛んでゆく 二度と戻って来るなと忠告をぶら下げて さぞかし大きな鉛の球が 彼らを呑み込み 地獄に変わったんだろう
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