現在なろうで投稿中の作家です。 内容は自作のエッセイ・詩・小説。 新しい事をしていく中で得た知識を紹介して頑張る人を応援するエッセイ・詩。 異世界物と児童文学系の小説です。
「オハヨウとオヤスミ」2 今住んでいる場所からはそれほど遠くはないし、子供との仲も悪くはない。 時々預けている事を思えば自分は良いんじゃないかと思ったが、君にはそう思えなかったらしい。 「子供を転校させたくないから」そう言って断る君の考えは何よりも子供優先で、否定なんて出来る訳もなく。 「子供達の為にも先の事も考えないと……」 気持ちばかりが先走り、言いきれない言葉に会話は途切れる。 「それならせめてお見合いはどう……」 最初から準備していたであろう言葉に、心配する気持ちが解るからか会うのは断れなかった。 知らない男性と会う事なんか勿論嬉しくはない。 だが真剣に悩むのが自分に対する想いからだと…
「オハヨウとオヤスミ」1 もう伝わる事の無いおやすみとおはようを何度繰り返しただろう。 恋の始まりが興味で愛が分かち合う理解だとすれば、会話をないがしろに出来ないのは自分だけではない。 朝から交わす事の出来ない会話が、いやが上にも身体の無い自分を再認識させる。 これから先どんな疑問が在っても、もう何も聞く事は出来ない。 其れは生きていた時に聞けなかった自分と一緒になって幸せだったのかとか、 自分のどんな所を好きになったのかなんかも同様で。 君にも聞きたかった事が、まだ沢山有ったのかも知れない。 君の朝は忙しいので一人分の支度が減ったとも言えるが、そんなのは居ない自分に対する気休めなのだろう。 …
「新しい玩具と箱」2 何か善からぬ事に巻き込まれやしないかと、胸一杯の不安を抑え込み兄の住むマンションに向かう。 何処にでも在るようなワンルームの一室に入り、室内には兄と兄の兄貴がそれぞれ彼女付きで迎えてくれた。 やっぱり兄弟やから似てるななんて会話を笑顔で交わす兄の兄貴は、聞いていたとおりの物腰で怖くは無く。 予想していたような見るからに悪人とは違い、少しばかり強面な三十代位の人だった。 挨拶程度の雑談を終えると五人で飯を食いに行き、繁華街をふらつき買い物。 大して金も無い自分は何も買わなかったが、兄は値札も見ずに服や時計を買っていた。 高リスクな職業なりに羽振りが良いのか、兄の長財布には二…
「新しい玩具と箱」1 形在るものは全て壊れる。 誰もが知っている事で其れは疑いようも無い事実だろう。 其れでも何か残してあげたかったと想うのは、今の自分がこんな姿だからかもしれない。 思い返せば高級な玩具も買ってあげた事は無いし、特別にお金の掛かるような所にも行ってはいない。 自分が子供の時と同じように考えるからなのかも知れないが、染み込んだ貧乏性は簡単には抜けず。 多くを与えて沢山捨てるようになるよりは、少なく与えた中から楽しみを見付けてほしいと思っていた。 手に入れたボール一つでプロ選手を夢見るような、そんな爽やかな少年に。 やはり子供は思い通りには育たないし、親の思うようにはならない。 …
「教室と青空」2 自分が中学生なったばかりの頃に知り合った先輩達は怖い人ばかりだったが、 お調子者な其の先輩は怖いというよりは軽い感じの人で在り。 グループの中でもどちらかと言えば弱く、馬鹿にされているようなタイプだった。 其れよりも馬鹿な自分は相手の本質を理解せず、利用されていた事に全く気付いていなかった。 「お前の家見に行こうや、見てみたいわ」 「家に来ても遊ぶ物無いから何も面白く無いッスよ」 「ええやん、ええやん。やる事ないし」 半ば強引なやり取りで行き先を決められ我が家に向かう事になったが、 どうせ飽きて直ぐに出掛けるだろうと思っていた。 親の財布から幾ら盗んだなんて自慢するような手癖…
「教室と青空」1 もう伝えられないからかもしれないが、もっと真面目な話しをしておけばよかったと思う。 自分が生きていた頃は親の言う事なんて聞かないと思っていたから、 言わなければいけない事も口にはしなかった。 自分が知っている限りでは子供は親とは違うように育つ傾向にあり。 ずぼらな親だと子供は真面目で几帳面に成り。 真面目で教育熱心な親だと子供は自由奔放に成りたがる。 必ずしも当てはまる訳ではないとは思うが、やはり周りの人達を見ているとそう思う事が多い。 だからこそ言わずに教えたい事を伝える方法を考える必要が有り、 自分が考えたのはマンガやアニメの影響を利用する方法で。 良い影響を与えそうな作…
「入学式とビデオ」2 面会には一度も行っていない。 母親と姉は会いに行ったらしいが、自分には会って話す事も思い付かない。 兄貴自体がそんな事を求めるような人間ではないと思っていたし、其の時の自分には必要性を感じられなかった。 だが出所してから笑い話として聞いたのは、夜の長さが辛く。 就寝時に流れる歌を聴いて泣けたらしい。 実戦としての強さに拘る彼等と、自分の考える強さは異なり。 横暴で強いと言われている者程どこか足りない部分を無理に埋めようとしている気がして、 自分は同じようにはなりたくなかった。 そんな彼等の一員にも力ではない優しき強さを持った人が一人だけいて、 いつも其の人だけは片付けを手…
「入学式とビデオ」1 一体何から卒業したいのか解らないのに速く大人になりたかったのは、 きっと環境から抑圧されている事に幼いながらも気づいていたからだと思う。 他人はどうか知らないが自分が子供の頃は間違いなくそうで、 其れは自分よりも先に生まれた兄弟達も同じだった。 兄貴がグレ始めた中学生の頃に自分は小学生高学年で、我が家は兄貴の悪友達の溜まり場と化していた。 バスケやサッカーの漫画が流行っている時と同じように、 ヤンキーの漫画や映画が流行っていたというのもあったし。 其のおかげか多少モテるという、需要と供給が成立していたのも一因だろう。 遠慮なんて知らない兄貴の悪友達は我が物顔で我が家の物を…
「告白とアルバム」2 偶然という意味では多少はそうなのかもしれないと思えるのは、 互いに地元ではなく知らない土地に出た先で出会ったという事位で。 付き合っている人が仲間の一人だという時点で、恋愛対象とは考えられない。 だからこそ君には何でも話せた気がする、不必要な意識をせずに好きなだけ遠慮なく。 友人がバイトを辞め、二人で話す事が多くなっても其れは変わらなかった。 いつしか自分は君と話す為の話題をTVで探すようになり、其の気持ちがすでに恋とは気付かないまま繰り返す。 其れが互いに同じ気持ちだった事にも気付かず。 先に其の気持ちが恋だと気付いたのは君だった。 好きな人が出来たからと彼に別れを告げ…
「告白とアルバム」1 君と二人で写った写真は少ない。 思い出というのは心に残すものだと思っていたし、互いに手を繋ぐ事すら恥ずかしがるような人だから。 照れた写真写りを気にして、まあ良いかと気にもしていなかった。 君と初めて出逢ったのは17才の時だった。 其の出逢いに特別な思い出なんて無い。 それこそドラマのように衝撃的な展開もなければ、映画のように感動的な偶然も無く。 何処にでも有るような話しで、バイト先の仕事仲間だった。 仕事姿を美しいなと思った事は有るし今まで出会ったどんな女性よりも話しが合うとは思っていたが、 其の気持ちを恋だと思える程に自分は直情的ではなく。 働いていた中華料理店は誰も…
「宿題と一歩」2 行き先を告げられないまま児童相談所という聞き馴染みのない場所に連れて行かれたのは、 家出から帰って数日後の事だった。 警察署に行方不明の届け出を取り下げに行った後の事だが、母さんは理由も聞かず全く自分を攻めなかった。 もちろん反省はしていたから逆らう気にはなれなかったが、何をしていたかは言う気は無い。 其れを警察から聞かれなかったのは、せめてもの救いだろう。 もちろん不安は有った。 新しい事なんて何もしたがらない自分が素直に母親についていけるのも少しは強くなったからか、 助けてくれた人達の影響に依るものだろう。 家出する前の自分は母親に「今のあんたは死んだ魚のような目をしてる…
「宿題と一歩」1 知らない間に出来ることが増え成長していく子供達にとって自分の影響力なんて些細なもので、 君にとっても其れは同じようなものだったのかもしれない。 自分が生きていた頃は家事を手伝う事なんて殆ど無かった。 稀に君から用事を頼まれるような時も思うようにいかない事が多い、 きっと他の男性ならもっと上手くこなすのだろう。 我が家の洗面台が水漏れした時もそうだった。 ポトポトと蛇口から滴る水滴を見て君は「壊れたのかな……?」と困っていたが「冬だから温度差でじゃない」と検討違いな言葉を返す俺は全く的を得ていない。 そんな状態で数日ほったらかしていると、 もったいないと思ったであろう君は其の水…
「アイデンティティー」3 数日後。 いつものように夕方迄働き、仕事を辞めた俺は先輩夫婦に給料袋を手渡し今日迄のお礼を告げた。 「あんたが働いて得たお金なんやから、そんな気使わんでいいのに」 「他の仕事探して、そのままおればええやん」と先輩夫婦は引き止めるが、そんな気にはなれなかった。 格好つけたかったというのも有ったし、何より大人の世界に脚を踏み入れ自分も強くなったと思いあがっていた。 此所でやっていけたのだから、もう何処に行って何をしてもやっていけるだろうと。 渡した金額は給料の末払い分も含めると二十万近くだったので自分にとっても大きかったが、 だからこそ恩返しとしての価値が有ると思えた。 …
「アイデンティティー」2 何一つ関わりたくない状況だが、これはチャンスだと思った。 先輩の家を出た自分は言われたとおりの場所に迎えに行き、其の子に洗いざらい打ち明けた。 そんな事を本当にするかどうか解らない事も付け加えて。 どんな説明をしても最後に選ぶのは彼女なので、初めて会った自分の言った事を信用するかは解らない。 其れでも彼女が選んだのは自宅に帰るだったので、少しは安心出来た。 残る問題は裏切り者となった自分だけ、家に隠れて居る事は出来ないし特にいく宛も無い。 親の助けを借りる気の無い自分に選択肢は無いに等しい、そんな自分が選んだ答えは家出だった。 悪く言えば逃げだが良く言えば旅立ちなのだ…
「アイデンティティー」1 ことわざこそが其の国のアイデンティティーで在り、歴史そのものだと思う。 可愛い子には旅させよとか若い頃の苦労は買ってでもしろとか言うが、 同じ経験をしても同じように学び感じるとは限らない。 だが其れでも言い伝えられる大切さや、学ぶべき何かが其処に在るから影響されるのだろう。 自分だけではないだろうが、街で只すれ違うだけの他人に影響を受けたりする事は無い。 もちろん人は誰しもが、誰かや何かの影響を受けて生きていると思う。 其れが個人なのかメディアなのか、はたまた別の何かなのかは問題ではないが。 其の間、人は成長過程にいるという事は間違いないだろう。 いつの事だかは忘れた…
「親不孝とライオン」2 そんな後ろ向きな気持ちを書き消すように、 せめて今まで出来なかった事をしようと保育園に娘の様子を見に行った。 生きていた頃に行った保育園の参観日では、子供達が普段は仲良く出来ているのか。 其れを知りたくてわざと遠巻きに眺めていたが、そんな事をしている親は自分だけで。 他の親達は寄り添うようにして眺めているので、娘を怒らせたのを覚えている。 「お父さんの前ではいつもあんな感じなのですか?」 誰が見ても解る位のしかめっ面でふてくされていたので、心配した保育士は探るように自分に訊ねる。 少しばかりの弁解と苦笑いを返すしかなかった。 そんなつもりじゃなかったのにと多少の反省はす…
「親不孝とライオン」1 何故自分は此所に住んでいて、自分には両親が居ないのだろう。 まだ小学生にすらならない自分が小さい頃の記憶。 一緒に暮らしていた同世代の子供が遊び飽きた三輪車に乗り、大人に怒られた時に感じた疑問だった。 其の子が親から買ってもらった三輪車だから、共有の玩具ではない。 其の大人の言い分は何となく解ったが、同時に湧いた疑問達の答えは何一つ得られない。 自分が存在するのだから親は居るはずだろう、だったら自分の両親はいったい何処に居るのか。 解らないまま其の養護施設で日々を過ごしていき、小学一年生の二学期になる頃に母親は迎えに来てくれた。 もういないものだと思っていたから手を繋ぎ…
「オバケの代償」2 そこまで話すと自分が受け止めるのを待つように、姉は何も語らない。 まるで時間が止まったかのように、車道を走る車のエンジン音や通行人が楽しそうに会話する笑い声が響く。 そんな街の喧騒なんて気にもならない程、 冷静に会話を読み取り自分が知っている事と照らし合わせ理解していく。 驚きすら表さない位に頭は冴えていた。 父親と似ていると異常に嘆く兄が、自己嫌悪に陥る理由が少しだけ解った気がする。 自分にも其の異常な血が流れているのだと、だがそんな事は自分にとって大した問題ではなかった。 親がどうであろうが自分がそうならなければ良いだけの話しで、さして気にする程の事ではないし。 自分が…
「オバケの代償」1 人は新しい何かを得ると同時に何かを失うと言う。 其れを代償というのなら、最初から無いものを失ったとは思わない。 本来其所に有るはずのものを無くしたから失ったと思うのだろう。 其れが物でも人でも同じように。 ならば身体を失った自分が得た何かを考えると、其れは価値観になるのかもしれない。 時は金なりという言葉なら誰でも知っているだろう。 自分も生きていた頃は理解していたつもりだった。 だが実際に死んで身体を無くすと、この言葉の重みはまるで違い。 部屋中の何処にでも其の無くした断片を見付ける事が出来る。 使わないので自分が片付けるはずだった棚の重い荷物や。 子供を連れていくつもり…
〈思い出〉3 数日後、そんな状況での運動会当日の朝。 車で小学校のガレージ迄送り届けると、子供は置物のように身動きせず車から降りようとはしない。 学校行事は元々苦手だったので不思議ではなかったが、数日前からの一件も有る。 解らないまま済ませられるような話しではなかった。 車の中では「絶対行かない、行きたくない」と視線も合わせない息子は駄々をこね続け。 「今日頑張ったら帰りにアイス買ってあげる」なんてそんな子供騙しな君とのやりとりでは、らちがあかず。 自分も子供に話し掛けるが、座席にうつぶせたまま聞こうともしない。 本当は理由が有って、ただ行きたくないではないのかも知れない。 そう思った俺は「行…
〈思い出〉2 授業が終わり学校から自宅に帰ると、別室に居た両親は何やらヒソヒソと難しい話しをしている。 この時間の家に父親が居るのは珍しかったので呼び掛けたかったが、 子供ながらに入りづらい雰囲気なのは理解出来た。 いつものように話し掛けられるのを子供部屋で待つ間、聞こえてくる内容が口論なのは間違いなかった。 よぎる不安から落ち着きも無く。 話し掛けたら普段のように笑い掛けてくれるかもなんて悩んでも、やはり怖くて声は掛けれない。 ただ聞き耳を立てて待つだけの重苦しく長い時間が続く。 微かに聞き取れた内容は父親が職場でケンカして仕事を辞めたのと、残りの給料を貰いに行かないという事。 長いようで短…
〈思い出〉1 がむしゃらにと決心してはみたが身体が無いという欠点は簡単に補えないのも事実で、 この姿での利点といえば働かないでいいから時間が余っている位だろう。 こんな姿になったからか今までよりも考えてしまうのは、父親の存在意義。 親父とはきちんと怒れる事と母親よりも冷静でいれる事だと思う。 一昔前は地震雷家事親父なんて言って父親は恐怖の対象だったが、やはり親父はそうあるべきだと思う。 其れは周りの大人達も同じで、自分が子供の頃は先生に殴られるなんて当たり前で。 中学生位の頃にはむしろありがたいとも思えた。 其れが今ではやれ暴力だの何だのと大袈裟に騒ぎたて、全ての善悪を子供の権利に置き換え決め…
〈がむしゃら〉2 「練習しないと乗れるようになれないよ・・・」 もっともな君の正論は相手が大人なら通じるかも知れないが、息子は子供。 「ヘルメット被るのイヤ・・・」とか「暑いからしたくない」という無理やりな理由で一向に乗ろうとはしない。 息子がやる気を出す迄待つ君との静かな押し問答で、二十分は過ぎようとしていた。 もしも自分が生きていたら「レースを始めるか!」とか言って誘い込むけど、其れが成功するとは限らない。 何故なら子供は親が思うようには育たないのは実証済みだから、待つのも一つの方法だろう。 「あそこの線の所迄で良いから一回乗ってみよう、後ろ掴んでるから」 やっと納得した息子は自転車に跨が…
「がむしゃら」1 もしも自分に子供が出来たら付けたい名前は決まっていた。 蹴人と書いてシュウト。 がむしゃらにサッカーボールを追いかけ走り回る。 そんな子供になってほしい願いを込めていた。 この事からも解るように自分がサッカー好きなのは言うまでもなく。 君が解らない外国選手の名前を連呼しては、其のプレーを詳しく熱弁したり。 毎回ワールドカップの時期は観戦で睡眠不足が続き、君から呆れられたりしている。 とはいえ子供の名前に関しては我ながら素晴らしいネーミングセンスだと思っていたが、 君には良さが伝わらなかった。 「名前が理由で絶対いじめられる!」 常識的な君の言い分は反論しづらく。 「大丈夫だろ…
〈何者?〉2 「別に何も見えないよ~」 怪訝そうに空席を見つめ君は笑って答えるが、もうテレビに集中している息子は聞いてもいない。 確かに子供からの不自然な視線を感じた事は有るが、気のせいだと思っていた。 どんな風に見えているのかは解らないが、どうやら子供には俺が見えているらしい。 きっと見える年齢も限られているのだろう。 何故なら夜出歩いている時間帯にすれ違う子供の視線で、違和感を感じた事は無いからだ。 とはいえ悪霊扱いというのも困ったものだ。 せっかく我が子が自分の存在を感じ取る事が出来ても、父親だと気付かれないのだから。 思えば自分だと認識されるような行動や特徴なんて特に無い。 もっとふざ…
海と僕 僕はあなたを抱きしめたくて あなたの海を泳いでいたんだ 抱きしめられないあなたの中 深く広い水平線に怯えている時も 本当はあなたに抱きしめられていた あなたを抱きしめる為に 深く広がる 僕も想いも やっとあなたを抱きしめたよ 僕は空になって ---------------------------------- 力なき正義 僕を睨みつける銃口 生きるか死ぬかの恐怖の中 僕らはどんな術を持つ 自由な選択権なんてない 心が戦ったとしても力なき正義でどこまでできるか 勇気と無謀が違うように従うことは恥ではない 魂は汚せないのだから
「何者?」1 生きていた頃は戯れる子供達を抱え上げると、 力持ちなヒーローに例えられたりして気恥ずかしく思っていた。 子供からしたら父親に対しての願望なのかもしれないし、最高の誉め言葉なのだろうが。 自分が子供の頃はヒーロー物なんて興味無かったし。 大人なら誰もが当然位の力だ。 其れでも子供達が望むならヒーローにでも、例え悪役にだってなれる。 君も相手役のヒロインに例えられたりして笑って聞き流していたが、きっと同じような気持ちだっただろう。 其れが今では抱き上げるどころか、触れる事すら出来ない。 悪い夢なら覚めてくれ、そう願っても此れは現実で。 もう眠る必要すらない自分。 だからといって落ち込…
78<月明かり> 洞穴内に入ると同時に、頭に機械的な声が響く。キラーアントもどきを倒し、LV15に上がりました。予想はしていたが、やはり魔物が隠れていやがったか。こうなると前回の洞穴もウスロスの罠だった可能性が有るが、問い詰めても笑われるだけだろう。迷宮だと思っていた前回の洞穴と同じなら、今回も中は迷路という事になる。トウの炎を明かり替わりに洞穴を進んで行くと、広場に差し掛かり。広場内では麻痺して動けないキラーアントもどき達が、所狭しと倒れていた。壁伝いに次の通路を探すと、案の定通路は複数。奥へと繋がる三本の通路を前に、俺達は立ち止まりエミリが訊ねる。「……マオーさんどうしましょう?」洞穴内の…
77<無駄足> 近くの領主が魔王城を攻める噂を聞いた俺達は、魔王城へと向かい急いでいた。 戦闘狂のガオンや妖しいウスロスが居るのだから、俺が止めなければ皆殺しは確実だろう。 不安は大きいが、思っていたよりもクーガーの移動は速く。 魔王城に着いたのは、陽も落ちきった夜。 「なんとか着いたな…… 」 俺の言葉にエミリが頷く。 外から観ると不気味な雰囲気なのは変わらずだが、戦闘跡や人の気配も無く。 どうやら間に合ったのか、まだ領主とやらは来てないようだ。 噂自体がデマで、無駄足の可能性は有るが油断は出来ない。 そのまま進み城門から城内に入ろうとすると、一人の人影がこちらに近付いて来ている。 「ククク…
世紀末の歌・発想変換 世紀末の歌 あまりの退屈さに 優しい気持ちを忘れかけていた あまりにも刺激的な箱の中の演出で 優しい気持ちを忘れかけていた どうにもならない苛立ちに 予測もできない事故や罠に 世紀末というこんな時代に 社会が人を変えるように 人が社会を変えれる為に優しい気持ちを忘れないんだ 発想変換 人は生まれながらに罪か 人はなぜ生きていくのか 問題が違う それはマイナス思考だ これからどう生きていくか 生きていく中でどれが罪か これがプラス思考だ
76<アクビ> 買い物を済ませた翌日の朝。 クーガーに小さな貨車を粘糸で繋ぎ、昨日約束した出店に向かう。 あまり重い物はクーガーでは運べないので、馬車に比べると半分以下の量になってしまう。 だが苦労して気に入られたクーガーを、誰かに預けるのは嫌だし。 そういう意味でクーガーは、もう家族みたいなものなのだ。 取り敢えず貨車を付けた状態で、走り出したクーガー達の様子を確認。 速度は抑えたが、予想していた程には嫌がってもいなく。 いつもと変わらず、二匹は快調に走っている。 約束の出店に着くと、店主が笑顔で迎えてくれている。 「農場やるには少ないだろうけど、頼まれた品物はコレで全部だ」 そう言って貨車…
数え歌・夢の羽 数え歌 ひとつ 広島 爆弾落ちた ふたつ ふるさと 失った みっつ みんな 亡くなった よっつ 夜通し 泣き崩れ いつつ いつかは 幸せにと むっつ 昔を 忘れずに ななつ 涙を 拭い去り やっつ 優しき 心持ち ここのつ この地に 平和が満ちた とう 遠い過去に ならぬよう --------------------------------- 夢の羽 電車に乗っても線路の端まで 車に乗っても道の端まで 飛行機乗っても星の中まで 宇宙船乗っても銀河系まで 僕の言葉は風に乗れるか できれば異国の遠い地まで できればはるか向こうの星まで できれば未来千年先まで
75<候補> 毒霧が広場に撒かれた日から二日が経ち、すっかり街は平和を取り戻し。 犯人である、サイコパス野郎も現れてはいない。 ただ少し変わった事と云えば、街の住人を救った噂が広まり。 街の至るところで住人に話し掛けられ、ちょっとした英雄扱いになってしまったのと。 親方の俺に対する扱いが優しくなった位だ。 だが引き受けていたレンガ運びの仕事も、無事に終わり。 金も入ったので、俺達は街から出て行く準備を始めていた。 少し名残惜しいが、元々は街に長居するつもりではなかったし。 住む城が有るのに、宿屋で泊まり続ける金も勿体無いので仕方ない。 「マオーさん、ここの野菜どうですか?」 エミリが呼び寄せる…
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