chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • リンパ管は骨組織傷害後の回復に重要である

    リンパ系は体液の恒常性、老廃物の除去、免疫応答などの調節を行うことが知られていますが、最近まで脳、目、骨などの組織にはリンパ管がないと考えられていました。最近の研究から脊椎にリンパ管が存在することが報告されていますが(Jacobetal.,NatCommun.2019Oct9;10(1):4594)、リンパ管の異常増殖が著明な骨融解を示すGorham-Stout病の原因であることから、骨組織においてリンパ管は有害な作用を有すると考えられていました。本論文で著者らは光シート顕微鏡プラットフォームで高解像度で無傷の骨を免疫標識して3D可視化する方法を開発し、骨組織のリンパ管の動態を詳細に明らかにしました。その結果、ほぼ全ての骨組織にリンパ管が存在し、特に皮質骨に豊富であることが明らかになりました。骨組織に放射...リンパ管は骨組織傷害後の回復に重要である

  • 硬度と耐久性に優れた人工エナメル質の作成

    歯のエナメル質は最も高い硬度および優れた耐久性を示す物質であり、我々が一生モノが食べられるのはそのおかげです。しかしエナメル質を作る細胞は、歯が萌出するとすぐに死んでしまうため、ヒトの体内ではエナメル質を再生することができません。これまで人工的なエナメル質をの作成が試みられてきましたが、生体のエナメル質に匹敵するようなマテリアルの作成には成功しませんでした。本論文ではハイドロキシアパタイトの結晶ワイヤーを極端な温度を使って規則正しく配列させ、これを可鍛性金属ベースでコーティングすることで強度が生体のエナメル質を超える人工エナメル質の作成に成功しました。臨床応用はまだ先かもしれませんが、歯科領域以外にも地震の被害に耐えられる建材の作成などにも応用可能ではないかとしています。ZhaoHetal.,Multiscal...硬度と耐久性に優れた人工エナメル質の作成

  • 大腿骨頚部骨折に対するセメント型 vs ノンセメント型人工骨頭置換術を比較したRCT

    大腿骨頚部骨折(関節包内骨折)に対するセメントタイプとノンセメントタイプの人工骨頭置換術を比較したRCT。セメントタイプはノンセメントタイプよりもEQ-5Dutilityscore(0.371vs0.315,adjusteddifference,0.055;95%confidenceinterval[CI],0.009to0.101;P=0.02)、12カ月までの死亡率(23.9%vs27.8%,0.80;95%CI,0.62to1.05)、人工関節周囲骨折(0.5%vs2.1%,oddsratio[uncementedvs.cemented],4.37;95%CI,1.19to24.00)いずれも優れていた。その他の有害事象に差はなかった。 FernandezMA,etal.CementedorUncemen...大腿骨頚部骨折に対するセメント型vsノンセメント型人工骨頭置換術を比較したRCT

  • 肺内細菌叢は自己免疫性脊髄炎の発症に関与する

    腸内細菌叢が様々な自己免疫疾患に関与することに関しては多くの研究がなされています。一方肺内細菌叢についてはほとんど研究が進んでいません。この論文で著者らは、ラット自己免疫性脊髄炎モデル(EAEモデル)を用いて、Prevotellamelaninogenicaなどの肺内細菌が肺内のeffectorTcellを活性化⇒EffectorTcellが中枢神経に移動し、microgliaを活性化⇒炎症性サイトカイン産生という経路で脊髄炎を増悪させること、neomycinの肺胞内投与⇒肺内におけるLPS濃度上昇⇒I型インターフェロン反応⇑⇒肺内のeffectorTcell活性化⇓⇒中枢神経におけるmicroglia活性化⇓という経路で脊髄炎を改善させることを報告しました。Neomycinの肺胞内投与は腸内細菌叢を変化させま...肺内細菌叢は自己免疫性脊髄炎の発症に関与する

  • 高齢者の睡眠の質が悪い原因

    高齢者においては睡眠の質が悪いことが知られていますが、加齢に伴うKCNQ2/3チャネルのダウンレギュレーションによる再分極の低下が、hypocretin/orexin(Hcrt/OX)ニューロンの過興奮を引き起こし、それが睡眠の不安定性をもたらす可能性が示されました。LinS-Betal.,Hyperexcitablearousalcircuitsdrivesleepinstabilityduringaging.Science.2022Feb25;375(6583):eabh3021.高齢者の睡眠の質が悪い原因

  • 人間の脳は莫大なカロリーを消費している

    人間は他の類人猿よりもはるかに多くのカロリーを日々消費しており、その多くは脳の働きによるものだそうです。また加齢によって消費カロリーは減少していきますが、一日中走り回っている狩猟民族と、オフィスで事務仕事をしているヒトでほとんど一日の消費カロリーは変わらず、運動はカロリー消費(やダイエット)にはあまり寄与しないとのことです。一方運動は心理的ストレスを軽減させて健康に関与している可能性はあるようです。 Gibbons,A.THECALORIECOUNTER.Science.2022Feb18;375(6582):710-713. Thisscientistbustsmythsabouthowhumansburncalories—andwhyTheworkofevolutionaryanthropologistHe...人間の脳は莫大なカロリーを消費している

  • ハダカデバネズミの発癌抵抗性メカニズム

    ハダカデバネズミは強い発癌抵抗性があることが知られていますが、そのメカニズムとしてRIPK3とMLKL遺伝子のフレームシフト変異によるネクロプトーシス誘導機能の喪失が関与する可能性が示されました。OkaKetal.,Resistancetochemicalcarcinogenesisinductionviaadampenedinflammatoryresponseinnakedmole-rats.CommunBiol.2022Mar30;5(1):287.    ハダカデバネズミの発癌抵抗性メカニズム

  • 肉食恐竜であるスピノサウルスは水生だった

    恐竜のように現存しない生物が、どのような生活様式を持っていたかについては詳細な研究が行われていますが、骨形態のみから水生であったかどうかを確定することは困難です。この論文は骨密度の計測やマイクロCTによる解析によって恐竜のスピノサウルス科が水生生活をしていた可能性を示したものです。FabbriMetal.,Subaqueousforagingamongcarnivorousdinosaurs. Nature.2022Mar;603(7903):852-857.  肉食恐竜であるスピノサウルスは水生だった

  • メカニカルストレスによるDNA合成を介さない細胞分裂

    故黒川髙秀先生は「脚延長は骨を延ばすだけではなくあらゆる組織を延長させるのが面白いんだ」とおっしゃっていました。確かに脚が延びる時には皮膚や筋などの軟部も延長されるので、それに対する反応が必要です。この論文でChanらはcelltrackingの手法を用いて、ゼブラフィッシュの成長の際には、皮膚の表皮細胞がメカニカルストレスに反応してDNA合成を介さずに成長軸に沿って分裂する、という大変興味深い現象を報告しています。またこの張力にともなう細胞増殖にはメカノセンサーチャネルであるPiezo1が関与している可能性も示されました。このような現象が他の生物でも見られるかについては今後の検討が必要ですが、脚延長に伴って生じる組織形成メカニズムにも関係しているような気がします。 Chanetal.,Skincellsund...メカニカルストレスによるDNA合成を介さない細胞分裂

  • 肺腺癌の進展・転移の1細胞解析

    Kras;Trp53(KP)によって誘導されるマウス肺腺癌モデルを用いて、1細胞解析によって腫瘍の進展から転移までの過程を詳細に解析した研究です。結論としては、1)腫瘍の進展や転移は、"fitness-associatedtranscriptionalprograms"によって発生したsubcloneによって生じる2)腫瘍の進展は腫瘍細胞の可塑性の一時的な増加を伴う3)腫瘍はステレオタイプの軌道をたどって進化し、追加の発癌性突然変異の導入は、新しい進化の軌道を作成することによって腫瘍の進化の速度を増加させるなど興味深い知見が得られました。 Yangetal.,Lineagetracingrevealsthephylodynamics,plasticity,andpathsoftumorevolution.Cel...肺腺癌の進展・転移の1細胞解析

  • 脳の成長曲線ーbrain chartの作成ー

    学生時代教えを受けた養老孟司先生は、名著『唯脳論』の中で「ヒトのあらゆる活動は脳の刻印を帯びる」と述べておられますが、いうまでもなく脳は人間の様々な活動の根源にあります。加齢とともに様々な活動が劣化していくのもまた脳の変化に起因するところが大であると考えられます。この論文でRichardBethlehemとJakobSeidlitzが率いる大規模な研究チームは、受精後115日から100歳までの101,457人からの123,984のMRI画像に基づいて、発育や加齢とともに脳がどのように変化するかについての包括的なBrainChartの作成を報告しています。身長や体重については成長曲線によるスタンダードが定められており、この曲線から外れる場合には異常を疑うことになっていますが、BrainChartは脳について同様の...脳の成長曲線ーbrainchartの作成ー

  • 整形外科手術における抗菌薬投与時間はどのくらいが適当か?

    クリーンな整形外科手術において、抗菌薬投与を術後24時間以内に中止、24~48時間で中止が術後医療関連感染(healthcare-associatedinfection)のリスクに影響をするかをクラスターランダム化比較試験で検討した論文です。結果として両群に差はありませんでした。NagataKetal.,JAMANetwOpen.2022Apr1;5(4):e226095.https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/10.1001/jamanetworkopen.2022.6095 整形外科手術における抗菌薬投与時間はどのくらいが適当か?

  • 心地よいタッチを制御するニューロンの同定

    抱きしめる、愛撫する、撫でるなどといった心地良いタッチ(pleasanttouch)の感覚はプロキネチシン受容体2(PROKR2)またはそのリガンドPROK2を発現する脊髄興奮性介在ニューロンを介することが示されました。このようなニューロンが欠失したマウスではストレス反応と向社会的行動に深刻な障害を示すようで、「触れる」ことの重要性が示されました。医師の患者に対する「手あて」についても同様のメカニズムが介する可能性がありそうです。 LiuBetal., Science.2022Apr29;376(6592):483-491.doi:10.1126/science.abn2479.Epub2022Apr28.MolecularandneuralbasisofpleasanttouchsensationMolecu...心地よいタッチを制御するニューロンの同定

  • 修復不能な広範囲腱板損傷に対するInSpaceスペーサー挿入術の有効性・安全性

    【背景】腱板断裂に対して保存的治療が無効であった場合に手術が行われるが、断裂が広範囲で変性が高度な場合には修復不能なことも少なくない。このような例は特に高齢者に多く、疼痛が強くADL障害がある場合でも治療の選択肢が少ないことが問題である。近年このような症例に対する治療法としてInSpacesubacromialballoonspacer(Stryker,USA)が開発された。これは生理食塩水で満たされた生体分解性のバルーンスペーサーで、肩峰下に挿入することで上腕骨頭と肩峰との摩擦を減少させることで症状を緩和し、リハビリテーションを促進するというデバイスであり、欧州やアメリカで承認を受けている。今回著者らは英国の24病院が参加したランダム化比較試験によってInSpaceスペーサーとデブリードマンの成績を比較した。...修復不能な広範囲腱板損傷に対するInSpaceスペーサー挿入術の有効性・安全性

  • 現在の危機的状況を乗り切るために

    新型コロナウイルス感染症も第5波になって様相が変わってきたようです。東京都では感染拡大に歯止めがかからず、重症患者であっても入院調整に困難をきたすケースが増加しています。感染患者が増えれば、当然比例して重症患者の数も増えるのですが、重症化には発症後1-2週を要することを考えると、今後さらに重症患者は増加することが予想されます。「重症患者用の病床(コロナ患者用のICU病床)の数を増やせばよい」という議論もありますが、これは思っているほど簡単ではありません。一人の重症コロナ患者の治療には多くの人手がかかるため、重症コロナ患者の病床を増やすためには、その3倍の通常病床を削る必要がある(通常の医療をかなり制限する必要がある)、ウイルスの感染力が高いため、多くの場合個室管理が必要(個室の数によって入院患者は制約される)、...現在の危機的状況を乗り切るために

  • 高齢マウスの骨格幹細胞の骨形成低下はCSF-1高発現に起因する

    2015年に骨格幹細胞SkeletalStemCells(SSCs)の同定をCELL誌(Cell.2015Jan15;160(1-2):285-98)に発表したStanford大学のCharlesChan,MichaelTLongakerらの報告です。彼らは以前に骨芽細胞、軟骨細胞、間質細胞には分化するが、脂肪細胞には分化しない多能性細胞であるSSCsを同定しました。この細胞を免疫不全マウス(NSGマウス)に移植すると骨組織が誘導されます。このとき高齢マウス(12カ月齢)から得たSSCsを移植すると、若年マウス(2カ月齢)SSCsを移植したときよりもできる骨組織が小さくなりました。これは高齢マウスでは骨折治癒過程における仮骨形成が減弱していることと一致します。興味深いことに併体結合によって若年マウスと高齢マウス...高齢マウスの骨格幹細胞の骨形成低下はCSF-1高発現に起因する

  • 変異型ウイルスによる最後の審判

    最新号のNewsweek誌(最近dマガジンで読めるようになりました)に、"TheDoomsdayVariant(変異型ウイルスによる最後の審判)"というタイトルで、変異型コロナウイルスについての記事が載っています。現在日本でもデルタ変異型ウイルスが猛威を振るう中で、どうしてパンデミック当初は科学者の中でも変異型ウイルス登場の可能性が軽視されていたか?について、「コロナウイルス自体は遺伝子変異頻度が低いため、理論的には変異型ウイルス登場の可能性は低いものの、あまりに大規模な感染拡大のために変異型ウイルスが出現するチャンスが増えてしまったのだろう」と述べられています。またインドでは4つの変異株が登場したが、結果として「免疫回避能が最も低い」デルタ株が爆発的に増加することになった、など、大変興味深い内容が述べられてい...変異型ウイルスによる最後の審判

  • 科学否定論者と議論することは無駄ではない

    Wikipediaによればアメリカでは米国で「進化論」を信じる人は39%にとどまり、全く信じない人が25%なのだそうです。昨今の新型コロナウイルスの議論の中でも「新型コロナウイルスなんて存在しない」というような極端なsciencedeniers,sceptics(科学否定論者、懐疑論者)の意見を聞くと、絶望的な気持ちになり、「このような人々と議論しても考えを変えることはできない」と思ってしまいます。しかし筆者はそのような態度は「事実としても倫理的にも誤りである」と指摘します。ほとんどの科学否定論者は情報ではなく、信頼が不足しているのであって、忍耐、尊敬、共感を持って、信頼を築くことで考えを変えることは可能である。そのための技術として、まず彼らの話を十分に聞き、対話が始まったら説得ではなく質問を続ける。議論に反論...科学否定論者と議論することは無駄ではない

  • 可溶型VEGFR1の産生亢進が血管老化に関与する

    「血管年齢」という言葉もありますが、加齢による変化で最も目立つものの一つが動脈硬化などの血管の障害です。血管の老化と一口に言っても様々な側面がありますが、十分な微小血管密度(microvasculardensity)の維持ができなくなるのは加齢の一つの特徴です。この論文は、加齢に伴う微小血管の希薄化がVEGF(Vascularendothelialgrowthfactor;血管内皮細胞増殖因子)の機能障害に起因する可能性を報告したものです。VEGFは多くの組織で血管上皮細胞や非血管細胞において産生され、その結果VEGF受容体(VEGR)シグナルは恒常的に活性化された状態になっています。マウスにおいて全身や局所のVEGFは加齢による変化をあまり受けませんが、受容体シグナルの恒常的活性化は抑制されています。この理由...可溶型VEGFR1の産生亢進が血管老化に関与する

  • 血清中ビタミンD濃度の骨折に対する影響は季節で異なる

    「ビタミンDが骨の健康に重要」というのはビタミンDが欠乏するとクル病・骨軟化症になることを考えれば当然のように思えます。しかしある程度充足している場合にビタミンD投与が骨粗鬆症や骨折発生に予防的に作用するか?というと、これはそれほど自明なことではありません。「ビタミンDを投与したけど骨密度変わりませんでした」とか「骨折減りませんでした」という論文は山ほどあります。この理由の一つとして、血清ビタミンD濃度が季節(日照時間)や体脂肪の影響を強く受けることが挙げられます。特にスウェーデンなどの北欧の国では冬季には日照時間がきわめて短いため、季節による影響は大きいと考えられます。この研究はSwedishMammographyCohortの5000名のデータを用いてビタミンDの充足状態を反映する血清25-ヒドロキシビタミ...血清中ビタミンD濃度の骨折に対する影響は季節で異なる

  • 寄生細菌を用いたデング熱の制圧

    Wolbachiapipientisは蚊に感染する細菌ですが、この細菌に感染した蚊はデング熱ウイルスへの感染抵抗性であることが明らかになっています。Utariniらはデング熱ウイルスを媒介するネッタイシマカに感染し、蚊の寿命には影響しないWolbachia株を樹立しました。この細菌を感染させたネッタイシマカをデング熱流行地域に放出することによって、デング熱ウイルスを保持するネッタイシマカが減少し、対照群と比べてデング熱の発生が77%抑制されました。一方で殺虫剤を使用した場合にはこのような感染減少はみられませんでした。これは20年以上という長い年月にわたる根気強い研究が結実したもので、殺虫剤のように環境汚染を生じることなく感染を制御する画期的な研究成果です。NEnglJMed2021;384:2177-2186....寄生細菌を用いたデング熱の制圧

  • 老化細胞除去によってCOVID-19の重症化が抑制される可能性

    細胞老化(cellularsenescence)とはDNA損傷、がん遺伝子の活性化、ストレスなどで誘導される持続的な細胞増殖の停止を表す現象として、LeonardHayflick博士によって提唱された概念です(ちなみにHayflick博士は様々なワクチン産生に使用された正常ヒト細胞株WI-38細胞を樹立した人でもあります)。細胞老化は必ずしも生体の老化と一致するわけではありませんが、老化細胞(senescentcells,SnC)は細胞老化関連分泌形質(senescence-associatedsecretoryphenotype,SASP)を産生することで炎症慢性疾患、年齢に関連した機能不全などに関与する可能性が示唆されており、最近では東京大学医科学研究所の中西真教授らがGLS1阻害薬が選択的に老化細胞を除去...老化細胞除去によってCOVID-19の重症化が抑制される可能性

  • 人工関節感染手術後の抗菌薬投与は12週間が適切

    人工股関節または人工膝関節の(菌が検出された)感染症例に対してデブリードマン、1期的再置換、2期的再置換などの外科治療を行った後に抗菌薬投与6週間群、12週間群にランダムに割り付けて、抗菌薬投与終了後2年までフォローした非盲検無作為化対照非劣性試験。結果としては感染の持続が6週間投与群の35/193(18.1%)、12週間投与群の18/191(9.4%)(riskdifference,8.7percentagepoints;95%confidenceinterval,1.8to15.6)に認められ、非劣性は証明されなかった(12週間投与のほうが良好な成績であった)。様々なsubgroup解析の結果も12週投与群が良好な成績を示した。Bernardetal.,AntibioticTherapyfor6or12We...人工関節感染手術後の抗菌薬投与は12週間が適切

  • COVID-19患者における自己抗体

    だまだ多くの犠牲者が出ている中で不謹慎とは思いつつも、COVID-19パンデミックの中で様々なtechnologyの開発が進んでいることには感動していまいます。COVID-19患者、特に重症患者では様々な自己抗体が出現することが知られています。例えば抗リン脂質抗体症候群で見られる抗カルジオリピン抗体が出現することが報告されており、COVID-19患者における凝固異常との関係性が指摘されています。この論文で著者らはRapidExtracellularAntigenProfiline(REAP)というバーコードをつけた2770のヒト細胞外タンパを酵母の表面に発現させ、抗原-抗体反応をシーケンスデータとして定量する方法を開発し、COVID-19患者に出現する自己抗体を網羅的に解析しました。その結果、健常者と比較してC...COVID-19患者における自己抗体

  • 正常・病的組織からの線維芽細胞アトラスの作成

    近年多くの組織におけるsinglecellRNAsequencing(scRNA-seq)データが蓄積され、組織特異的な、あるいは疾患特異的な細胞clusterが明らかにされています。この論文で著者らは組織線維芽細胞(fibroblasts,FB)にもいくつかのsubsetsがあり、病的な状態において特異的に活性化されるFBclustersが存在する可能性を報告しています。著者らはまず非造血細胞のscRNA-seqdatasetsを用いて、16正常組織についてのマウスFB特異的なsingle-cellatlasを作成しました。このatlasを用いて、200以上のdifferentiallyexpressedgenes(DEGs)を同定し、10個のFBclustersに分類しました(代表的な発現遺伝子からPi16...正常・病的組織からの線維芽細胞アトラスの作成

  • アセチル化tauが脳損傷後の認知機能低下に関与する

    脳外傷(traumaticbraininjury,TBI)にともなって神経変性が進行し、Alzheimer病(AD)のリスクが高まることは以前から知られています(Johnsonetal.,Nat.Rev.Neurosci.2010;11:361-370)。またNFLプレイヤーやサッカー選手のように頭部にダメージが加わるリスクの高いスポーツ選手においても認知機能低下が見られます(Mackayetal.,NEnglJMed.2019Nov7;381(19):1801-1808)。病理組織の検討などからこのメカニズムとしてTBI後のtauタンパクのK274,K281アセチル化の関与が指摘されています(Lucke-Woldetal.,JNeurolNeurosurg.2017;4(2):140)。この論文で著者らは、T...アセチル化tauが脳損傷後の認知機能低下に関与する

  • 一流打者はスピードボールをどうやって打つか?

    ピッチャープレートからホームベースまでの距離は18.44mなので、150km/h以上のボールを投げる投手の場合、単純に計算してもボールが届くまでの距離は0.4秒程度です。心理学者によると、人間は刺激が加わってから反応するまでに、何をするかわかっている場合でも少なくとも0.25秒かかり、どのような動きをするかを決定しなければならない場合には反応時間は2倍になるそうなので、理論的には投手の手を離れてから反応するのでは、ボールを打つのは不可能です。という訳で、一流打者は投手の体幹や腕などの動きである程度ボールが来る場所を予測してバッティング動作を始めているそうです。確かにバドミントンの国際大会などを観ていても、レシーバーはスマッシュが打たれる前に移動を始めているように見えます。最近ではバーチャルリアリティ(VR)を使...一流打者はスピードボールをどうやって打つか?

  • AIを用いた適格基準拡大の試み

    治療薬などの臨床試験では、通常厳密な組み入れ基準(適格基準eligibilitycriteria)が決められているので、その薬が実際に使われるようになっても、臨床試験の適格基準から外れた患者は治療適応にならないことがしばしばあります。例えばeGFR<30の患者は通常骨粗鬆症の臨床試験から除外されるので、実臨床でそのような患者に対してどのような治療を行うかは悩むところです。この論文では肺小細胞癌に対する過去の臨床研究データを用いて、適格基準を緩和した時にどのような効果が得られるかをAI(TrialPathfinder)を用いてシミュレートしたというものです。その結果適格とされる患者プールは平均で2倍以上になり、全生存期間のハザード比は平均0.05減少しました。適応を拡大するために臨床試験を行うことについてはお金も...AIを用いた適格基準拡大の試み

  • COVID-19の重症炎症に対する治療標的としてのTOP1

    新型コロナウイルス感染症に対して、ワクチンの有効性は間違いなさそうですが、1年以上が過ぎようとしているのに治療薬としてはステロイド、レムデシビル、トシリズマブくらいしか有効性が示されておらず、特に初期のウイルス血症後に生じる致死的な全身炎症に対しては中々有効な治療法が出てきません。血中IL-6濃度高値が予後不良因子であることから、抗IL-6受容体抗体であるアクテムラには重症化予防効果が期待されていますが、これまでの臨床試験の結果は劇的な効果とは言いがたいものです。この理由としては、IL-6pathway以外のシグナル系も重症化に関与していることが考えられます。この論文ではウイルス感染によって生じる「感染誘発遺伝子プログラムinfection-inducedgeneprogram」に注目し、クロマチン構造の変化の...COVID-19の重症炎症に対する治療標的としてのTOP1

  • 現代人はみずから家畜化を選んだ?

    会社に過度な忠誠心をもつヒトのことを社畜と呼んだり、「最近の若いもんは飼いならされている」などと言ったりしますが、実はヒトは自ら家畜化への道を選択したのかもしれません。野生の動物が家畜化されると、小さな歯と頭蓋骨などの顔貌の変化が生じますが、これはneuralcreststemcell(神経堤幹細胞)を失うことで生じる変化です。ヒトの遺伝病であるWilliams-Beurensyndromeは「妖精様顔貌」と呼ばれる親しみやすい顔貌を特徴とする遺伝性疾患で、BAZ1Bというチロシンキナーゼ遺伝子の機能障害が見られます。ミラノ大学のGiuseppeTestaらは、BAZ1Bは顔面および頭蓋の発達を制御する多くの遺伝子発現に関与しており、ネアンデルタール人やデニソワ人などと比べて現代人ではBAZ1B遺伝子の変異が蓄...現代人はみずから家畜化を選んだ?

  • ストレスによる脱毛のメカニズムが解明された

    長期間のストレスにさらされると脱毛が生じることが知られており、新型コロナウイルス感染症患者の1/4に脱毛が見られることが報告されています。この論文で著者らは、ストレスによって副腎皮質から分泌されるコルチコステロンが毛乳頭細胞(dermalpapillacell)に発現するグルココルチコイド受容体に作用し、細胞増殖因子GAS(Growtharrest-specific)6の分泌を抑制することで毛包幹細胞(hairfolliclestemcell,HFSC)の増殖を抑制するとともに休止期(telogen)のHFSCを増加させ、毛の脱落を促進させることを報告しています。アデノ随伴ウイルスベクターによるGAS6発現によってストレスによってHFSCの増殖が促進することも明らかになりました。GAS6投与がストレスによる脱毛...ストレスによる脱毛のメカニズムが解明された

  • 2030年におけるPrecision Medicineの未来像

    2015年1月20日に当時アメリカ大統領であったオバマ氏が個々の患者に対応した医療という意味で、personalizedmedicineを一歩進めたものとして”precisionmedicine”という言葉を発表し、PrecisionMedicineInitiativeという医療政策を推進することを宣言しました。Precisionmedicineについてはいまだに良い日本語訳がありませんが(精密医療とか個別化医療等とも訳されますが、きちんとしたニュアンスは伝わらないように思います)、個人のゲノム情報など様々な情報を使用することで、より進んだ個別医療を目ざすということかと思います。このCommentaryはNIHのJoshuaDenny,FrancisCollinsによる2030年におけるprecisionmed...2030年におけるPrecisionMedicineの未来像

  • ジクロフェナク・ヒアルロン酸の合剤は変形性膝関節症に対して有効

    変形性膝関節症(kneeosteoarthritis,KOA)に対する薬物療法としては、NSAIDの外用薬、NSAIDsやCOX2inhibitorの内服薬、デュロキセチン(SNRI)、ステロイド関節注射に加えてヒアルロン酸の関節注射(IAHA)が日本ではしばしば行われています。IAHAについては最新のOARSIガイドラインでは推奨していますが、ガイドラインによっては推奨していないものもあり、必ずしも評価は一定していません。この論文は生化学工業が開発したDicrofenacとHAを共有結合させた合剤(DF-HA)のKOAに対する有効性、安全性を検証した第3相臨床試験(RCT)で、筆頭著者は名古屋大学の西田佳弘先生です。KLgradeII,IIIのKOA患者に対して、プラセボあるいはDF-HAを4週ごとに6回投与...ジクロフェナク・ヒアルロン酸の合剤は変形性膝関節症に対して有効

  • リウマチ足趾に対する骨頭温存手術の成績は良好

    少し前まではリウマチ足趾の手術というと、切除関節形成術resectionarthroplastyがほとんどだったように思いますが、疾患活動性コントロール改善とともに、中足骨頭を温存した短縮骨切り術が(少なくとも日本では)主流となってきました。東京女子医科大学の矢野紘一郎先生らは、関節リウマチ53足に行った骨頭温存型手術の成績を後方視的に検討し、Self-AdministeredFootEvaluationQuestionnaire(SAFE-Q)の5subscalesいずれも有意な改善が見られ、7年後の生存率(再手術不要)は89.5%という良好な成績を示したことを報告しています。創治癒遅延(すべて治癒)が20.0%、外反母趾再発が10.5%、内反母趾変形が3.8%、lesserMTPJの脱臼再発が7.7%に見ら...リウマチ足趾に対する骨頭温存手術の成績は良好

  • Ligand-receptor interactomeを用いた疼痛誘導メカニズムの解明

    近年データベースに大量に蓄積されつつあるゲノムデータやsinglecellRNAsequencing(scRNA-seq)から得られた遺伝子発現データなどを駆使して色々と推論を進めていく、というバイオインフォ―マティクスの手法は、conventionalなcellbiologyになじんできた私には何やら具体性に欠けるような気がして、どうもとっつきにくい感が拭えないのですが、そもそもが複雑系である生体のダイナミズムを総合的に把握するにはこのようなアプローチがふさわしいのかも、と考えています。この論文は、様々な臓器や細胞と、脊髄後根神経節(DRG)の遺伝子発現プロファイルを用いたligand-receptorinteractomeから、主として疼痛の伝達に関与する分子機構を解析したものです。例えば関節リウマチ(RA...Ligand-receptorinteractomeを用いた疼痛誘導メカニズムの解明

  • TNFαの破骨細胞前駆細胞に対する作用はepigenetic statusによって変化する

    関節リウマチ(RA)におけるTNFα阻害療法の有効性、特に関節破壊抑制効果は臨床的に確立されているため、TNFαが破骨細胞分化を促進することは自明だと考えている人が多いかもしれませんし、そのような先入観に沿った結果を報告している論文は山ほどあります。しかしこれはそれほど自明のことではなく、例えばRANKLおよびM-CSF(CSF-1)による骨髄マクロファージから破骨細胞への分化系にTNFαを添加すると多くの場合は抑制的に作用します。このメカニズムについてはこれまでに多くの研究が行われています。例えばBrendanBoyceらはTNFαがTRAF3の活性化を介して細胞内のNF-kappaBp100蓄積を誘導することが破骨細胞分化を抑制する可能性を報告しています(Yaoetal.,JClinInvest.2009O...TNFαの破骨細胞前駆細胞に対する作用はepigeneticstatusによって変化する

  • 表皮プロテインC受容体が抗リン脂質抗体症候群の病態に関与する

    抗カルジオリピン抗体(aCL)や抗β2GPI抗体などの抗リン脂質抗体(aPLs)の出現を特徴とする抗リン脂質抗体症候群(APS)患者は、臨床的に動・静脈の血栓症、血小板減少症、習慣流産・死産・子宮内胎児死亡などを呈する難病で、原発性APSとともに、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患にしばしば合併することが知られています。APSにおける凝固亢進のメカニズムには不明な点が多く、aPLsがどのような抗原を認識するのかについての理解も進んでいないことが、APS治療法開発が進まない原因となっています。この論文で著者らは、endothelialproteinCreceptor(EPCR)がaPLsの標的となり、APSの病態に重要な役割を果たすことを明らかにしました。EPCRは内皮細胞、骨髄細胞、胎盤のtro...表皮プロテインC受容体が抗リン脂質抗体症候群の病態に関与する

  • 前十字靭帯急性損傷に対しては早期手術の成績が良好

    前十字靭帯(ACL)損傷は最も一般的なスポーツ外傷の一つで、その頻度は49ー75/100,000人・年とされています。過去には外科的治療と非手術療法を比較した臨床試験(KANONtrial)が行われ、運動療法と組み合わせた保存的治療が良好な成績を示すことが示されています(Frobelletal.,NEnglJMed2010;363:331-42;Frobelletal.,BMJ2013;346:f232)。しかしこの結果出てからもACL損傷に対する手術は年々増加しています。これはKANONtrialでは少なくとも半数の患者で再建術が不要であったためではないかと考えられています。今回のConservativeversusOperativeMethodsforPatientswithACLRuptureEvalua...前十字靭帯急性損傷に対しては早期手術の成績が良好

  • 頚椎症性脊髄症に対する前方手術vs後方手術

    頚椎症性脊髄症患者(cervicalmyelopathy,CSM)に対する手術療法において、前方手術が良いか?後方手術が良いか?という議論は神学論争的な趣きもあり、中々決着がつきません。これまでにいくつかの前向き研究は行われており、わが国でも東京医科歯科大学から両者を比較した優れた前向き試験が報告されていますし(Hiraietal.,Spine.2011;36(23):1940-7;Hiraietal.,JOrthopSci.2018;23(1):32-38)、海外からも本論文の著者らの報告を含めていくつかの研究が発表されています(Ghogawalaetal.,Neurosurgery.2011;68(3):622-630;Kingetal.,Neurosurgery.2009;65(6):1011-1022)...頚椎症性脊髄症に対する前方手術vs後方手術

  • 腹腔内のGATA6+が組織修復および癒着に関与する

    体腔coelomiccavityが存在する無脊椎動物(例えばウニなどの後生動物metazoansなど)では、体腔の損傷が生じると食作用を有する免疫細胞である体腔細胞coelomocytesが速やかに損傷部位に集積して損傷修復を行うことが知られています。このような細胞集積は極めて速やかに生じ、哺乳類における血小板凝集による止血反応に類似した過程です。哺乳類にも腹腔や胸腔、心嚢などの体腔が存在しますが、その損傷もやはり速やかに修復されます。一方腹腔内の手術後には約66%の患者で無菌的な癒着が生じ、これがイレウスの原因になるなど、様々な問題を起こすことが知られています。この論文で著者らは腹腔内のGATA6陽性マクロファージ(GATA6+Mφ)が、腹膜損傷の修復に関与するとともに術後の癒着にも関与することを明らかにしま...腹腔内のGATA6+が組織修復および癒着に関与する

  • TNF-αは静脈内皮細胞におけるClaudin-11低下を介して静脈からのChloride漏出を誘導する

    この論文で著者らはTNF-αが静脈特異的にChlorideイオンの漏出を促進し、その過程にはTNF-αによる細胞間tightjunctionタンパクClaudin-11の低下が関与していることを明らかにしました。TNF-αの下流ではPanx1channel活性化→TRPV4Ca++channelの活性化が生じ、これがATPの細胞外への放出を誘導します。放出されたATPはendonucleotideaseCD39によってadenosineへと加水分解を受け、A2Aadenosine受容体の活性化を誘導し、結果として静脈内皮細胞におけるClaudin-11の低下と漏出増加をきたします。著者らはこれが敗血症におけるTNF-αの病態形成メカニズムの一つではないかとしています。関節リウマチの病態においてもTNF-αによる...TNF-αは静脈内皮細胞におけるClaudin-11低下を介して静脈からのChloride漏出を誘導する

  • TNF阻害薬不応例に対するrituximab vs tocilizumab: a biopsy-driven study

    RituximabはB細胞の表面抗原であるCD20に対する抗体で、海外では関節リウマチ(RA)の治療薬として承認されています。しかしrituximabについては患者によって有効性に差が見られることが報告されています。またtocilizumabは抗sIL-6受容体抗体であり、日本でもRA治療薬として多くの患者さんに用いられています。この研究では従来型の抗リウマチ薬(conventionalsyntheticDMARD)および(rituximabおよびtocilizumabを除く)少なくとも1種類の生物学的製剤に抵抗性のRA患者に対するこれらの薬剤の有効性を検討してものですが、治療前に滑膜バイオプシーを行い、滑膜の組織型によって①B-cellrich,②B-cellpoor,さらに③germinalcenterpo...TNF阻害薬不応例に対するrituximabvstocilizumab:abiopsy-drivenstudy

  • 破骨細胞の分裂(fission)によるosteomorphs形成

    数年前のANZBMS(TheAustralianandNewZealandBoneandMineralSociety)で破骨細胞のfissionの演題発表を聴いたときに、大変美しい動画と詳細な解析に驚いた記憶があります。中々論文にならないなーと思っていたのですが、満を持してCELL誌に論文が発表されました。著者を見ると、オーストラリアの骨代謝関係者が多数名前を連ねており、オーストラリアの破骨細胞オタク(osteoclasters)が総力をあげて取り組んだ研究であることがわかります。ご存知のように破骨細胞は単球・マクロファージ系の前駆細胞に由来する骨吸収細胞です。その分化にはRANKL(およびM-CSF)の存在が必須で、RANKLは破骨細胞分化のみならず、活性化にも関与していることが明らかになっています。著者らは...破骨細胞の分裂(fission)によるosteomorphs形成

  • 骨髄Osteolectin陽性細胞は運動負荷によって増加しリンパ球造血を制御する

    Leptin受容体陽性(LepR+)細胞は、骨髄nicheにおいて造血幹細胞維持に重要な役割をすることが知られています。骨髄におけるLepR+細胞は小動脈arteriolesおよび洞様毛細血管sinusoidsという2種類の血管に隣接して存在しますが、この論文では、LepR+細胞の16%程度が著者らが報告していたC-typelectindomainを有する骨形成性増殖因子osteolectin(Clec11a)(Yueetal.,Elife.2016Dec13;5:e18782)陽性であり、小動脈周囲にのみ存在することを明らかにしました。Osteolectin陽性(Oln+)細胞は骨芽細胞へ分化しますが、脂肪細胞へは分化しないosteogenicprogenitorであることも示されました。Oln+細胞において...骨髄Osteolectin陽性細胞は運動負荷によって増加しリンパ球造血を制御する

  • COVID-19における獲得免疫の関与

    LaJollaInstituteforImmunologyのAlessandroSette博士とShaneCrotty博士によるCOVID-19における獲得免疫adaptiveimmunityの役割についてのreviewです。SARS-CoV-2の特徴として、感染細胞におけるI型interferon(IFN)が関与する自然免疫反応遅延の重要性を示しています。このため自然免疫反応によってprimingされる獲得免疫の誘導が遅延し、ウイルスの複製や拡散が持続し、これを補うために自然免疫反応の暴走が起こって炎症性サイトカインやケモカインの産生過剰が生じ、組織障害を引き起こすことがCOVID-19重症化の本質であるとしています。この仮説はCD4+T細胞の誘導不良が重症化と相関することや、抗体製剤で自然感染の100倍もの...COVID-19における獲得免疫の関与

  • 変形性膝関節症に対するhigh-intensity strength trainingの有効性(START)

    変形性膝関節症(kneeosteoarthritis,KOA)は高齢者の運動器疾患の中でも最も多いもので、日本にも2500万人以上の患者がいるとされています。重症化すれば人工膝関節全置換術などの手術が有効ですが、重症化予防のエビデンスがある薬物が存在しないことも治療を難しくしています。KOA患者に対しては運動療法が有効であることが報告されていますが、その内容や強度についての詳細な解析はこれまでありませんでした。さてOARSIのガイドラインをはじめとして、運動療法はKOAの症状を改善させることが知られています。一方で激しすぎる運動はかえって関節軟骨を傷めてOAの進行を助長させる可能性も指摘されています。この研究(TheStrengthTrainingforArthritisTrial;START)では高強度トレー...変形性膝関節症に対するhigh-intensitystrengthtrainingの有効性(START)

  • いつになったらワクチンで生活は正常に戻るのか?(How soon will COVID-19 vaccines return life to normal?)

    JonCohen氏によるこのScienceの論説については、有名な宮坂昌之先生をはじめ多くの方が取り上げておられるので、今更感満載なのですが、実に多くの情報が網羅されており、論点整理に大変有用です。Google翻訳でもよいので是非一読されることをお薦めします。Cohen氏はまず現在世界中で急速に進んでいるSARS-CoV-2ワクチン接種の状況を説明した上で、下記の3つの論点を提示しています。いずれも重要な論点です。①ワクチンによって免疫が成立したら周囲に感染を広げないのか? ②いつになれば正常な日常生活を再開できるか?③新たな変異型SARS-CoV-2はワクチンへの期待にどのような影響も有するか?①ワクチンによって免疫が成立したら周囲に感染を広げないのか? これについてはUCSanDiegoHealthにおける...いつになったらワクチンで生活は正常に戻るのか?(HowsoonwillCOVID-19vaccinesreturnlifetonormal?)

  • 新型コロナウイルス抗体製剤のFc部分の重要性

    新型コロナウイルス感染症に対して、モノクローナル抗体製剤の有効性が示されています。ほとんどはSpikeタンパクを標的とする抗体で、2種類の抗体を混合したREGN-COV2などが海外では使用されています。さて抗体は抗原認識に重要な可変領域(Fab)と定常領域であるFcの合わさった構造を取りますが、Fc部分は抗体依存性免疫増強(Antibody-DependentEnhancement:ADE)に関与する可能性があるので、ADEを避けるために可変領域だけを切り出して使用するという考え方もあるかと思います。しかしこの論文で著者らはFc領域はSARS-CoV-2ウイルスの感染予防という点では不必要だが、感染が生じた後の症状改善には重要な役割を果たすことを明らかにしています。Fc部分が存在することで炎症症状や呼吸障害の改...新型コロナウイルス抗体製剤のFc部分の重要性

  • COVID-19肺炎におけるimmune cell circuits

    医療従事者で「COVID-19はただの風邪」と考えるヒトはあまりいないとは思いますが、それではCOVID-19の病態の特殊性はどのようなところにあるのか?という点についてはまだまだ分かっていないことが沢山あります。新型コロナウイルス感染症の最も重要な病態は肺炎です。この論文で著者らはICUに入院している88人の重症COVID-19肺炎患者から経時的に肺胞洗浄(bronchoalveolarlavage,BAL)サンプルを採取し、COVID-19以外のICU入院重症肺炎患者211名のBALサンプルとの違いを検討しました。まずCOVID-19患者では、健常人や他の肺炎患者ではほとんど見られないT細胞や単球の割合が多いことが明らかになりました。また肺胞マクロファージ中にSARS-CoV-2のRNAのpositive&...COVID-19肺炎におけるimmunecellcircuits

  • RECOVERY trialでトシリズマブの有効性が示された

    Preprintではありますが、TheRandomisedEvaluationofCOVID-19therapy(RECOVERY)trialにおいてtocilizumabの有効性を示す研究結果が発表されました。RECOVERYは英国のNHShospitalsで行われている、様々な治療薬の有効性・安全性を検証する大規模なtrialで、これまでにもデキサメサゾンが有効であることを示しています。今回の論文は抗IL-6受容体抗体tocilizumabの有効性を示したものです。RECOVERYtrialではmainrandomisation(PartA:dexamethasone,lopinavir-ritonavir,hydroxychloroquine,azithromycin,colchicine,PartB:回...RECOVERYtrialでトシリズマブの有効性が示された

  • ワクチン接種をためらう理由は?(長いです)

    天然痘やポリオの例を見ても、ワクチンが人類の感染症との戦いにおいて強力な武器であることは間違いありません。今回の新型コロナウイルス感染症においても優れたワクチンの開発をうけて、「感染の拡大を抑え込んで日常生活を取り戻したい」と考えている人々にとっては、ワクチンへの反対や拒否は「けしからん」ことなわけです。しかし私の周囲にも「接種するつもりだけど怖い」という声もきかれます。医学・科学リテラシーが高い方でもそうなのですから、一般の方々にとって不安はもっと強いのだと思います。この記事中のDeborahJones先生のように”Butwhatstrikesmeishowmanypeoplearestillhesitating.Vaccinehesitancywillslowdownourreturntonormal.(訳...ワクチン接種をためらう理由は?(長いです)

  • COVID-19における抗リン脂質抗体の重要性

    重症なCOVID-19患者では血栓形成が促進しており、重症化と関連していることが知られています。またこのような患者で抗リン脂質抗体(aPL抗体,anti-phospholipidantibodies)が出現する頻度が高く、抗リン脂質抗体症候群と共通した病態が存在するのではないかとされていました。この論文で著者らは入院COVID-19患者において8種類の抗リン脂質抗体(aPL抗体,anti-phospholipidantibodies)の存在を検討し、52%の患者で少なくとも1つのaPL抗体が存在することを明らかにしました。aPL抗体の中ではaPS/PTIgGが24%と最も多く、aCLIgM23%,aPS/PTIgM18%の順でした。高いaPL抗体を有する患者では好中球の過活性化が生じており、感染制御や血栓形成に...COVID-19における抗リン脂質抗体の重要性

  • この国のあり方?

    「この国のあり方?」プラセボを対照としたランダム化比較試験(RCT)は、新薬開発はもちろん臨床研究のゴールドスタンダードといわれており、その重要性は多くの医療者が認識しているところです。とはいえ実際にRCTをやろうとすると、手間がかかるということにも増して、「自分の患者さんにプラセボを投与するのはしのびない」とか「明らかにこちらの手術の方が良いと思っているのに別なことはできない」というような反対意見が現場から聞こえてきます。このような意見は「サイエンティフィックじゃないな~」とも思うのですが、何となく彼らの気持ちもわかる気がします。簡単に言うと「自分の家族が病気になったときに、RCTに参加して、プラセボを投与されて病気が悪化したら後悔するでしょ」ということではないかと思います(そうでしょ、○○先生?)。日常診療...この国のあり方?

  • 電気刺激によって脊髄損傷による起立性低血圧を改善させる

    臥位から座位や立位に体位変更する際、重力によって下半身に血流が集中し、このため心臓に貯留する血液量が低下してしまうと立ちくらみやめまいを生じてしまうという現象が生じることがありますが、これは起立性低血圧(orthostatichypotension,OH)と呼ばれます。この時正常人では安静時に活性化している圧受容体(baroreceptor,)が血圧や大静脈・心腔における血液貯留低下によって不活化し、圧反射(baroreflex)を生じることで交感神経が活性化されて血管抵抗と心血流増加によって血圧が回復します。一方で脊髄損傷患者においては圧受容体と下位脳幹部との連絡が絶たれているため、圧反射が生じないことがOHの原因となっており、患者のQOLを著しく低下させることが知られています。現在OHの治療はライフスタイル...電気刺激によって脊髄損傷による起立性低血圧を改善させる

  • ハダカデバネズミは大阪弁を話すか?

    ハダカデバネズミ(nakedmole-rat;Heterocephalusglaber)は女王が君臨する階層社会に暮らす極めて社会的な動物ですが、長鎖ヒアルロン酸を産生することで癌に抵抗性であり(Tianetal.,Nature499,346–349,2013)、老化の兆候をほとんど示さないことも知られており、ルックスはアレですが「生まれ変わったらハダカデバネズミになりたい」と常々思っておりました。ハダカデバネズミは“chirp”という鳴き声によって仲間に情報を伝えることが知られていますが、この論文で著者らはchirpの中でも一般的であり、仲間の確認に使用されているsoftchirpには方言(dialect)があり、この方言は女王によって決定されており、女王が変わるとsoftchirpの方言も変わっていくことを...ハダカデバネズミは大阪弁を話すか?

  • 滑膜肉腫治療法開発に対する新たなアプローチ

    骨軟部悪性腫瘍は癌と比べればきわめて頻度が少ないため、癌で行われているようなゲノム情報の蓄積を困難にしています。滑膜肉腫は悪性軟部肉腫の10~20%を占める腫瘍ですが、化学療法やチェックポイント阻害薬などの免疫療法に抵抗性を示すことが多く、予後が悪いことが知られています。またcancer-testisantigens(CTAs)の発現がみられ、これは患者のT細胞によって認識されるのですが、腫瘍自体にはT細胞の浸潤がきわめて低いことが知られています。このことが免疫療法が無効である原因と考えられていますが、そのメカニズムはよくわかっていません。ほとんどの症例で18番染色体上のSS18(synovialsarcomatranslocation,chromosome18)遺伝子とX染色体上のSSX(synovialsa...滑膜肉腫治療法開発に対する新たなアプローチ

  • ALSになるか?癌になるか?それが問題だ

    大学生時代に、飲み屋の与太話で究極の選択と銘打って「カレー味のウ◯コとウン◯味のカレー、食べるならどっち?」というようなアホな話題で盛り上がったことがあります。レベルは大違いですが、この論文を読んでそのような昔話を思い出してしまいました。。(;^ω^)筋萎縮性側索硬化症amyotraphiclateralsclerosis(ALS)および前頭側頭型認知症frontotemporaldementia(FTD)は病態は異なりますが、いずれも神経細胞の障害が生じ、重篤な症状を示す難病です。多くのALSおよびFTD患者の神経細胞内にはRNA結合タンパクTPD-43の封入体が見られることが報告されています。また2011年にはこれらの疾患患者でC9orf72という遺伝子の翻訳領域の5’側にGGGGCCリピート配列の著しい延...ALSになるか?癌になるか?それが問題だ

  • WALANT techniqueの足関節骨折手術への応用

    WALANT(WideAwakeLocalAnesthesiawithNoTourniquet)techniqueはターニケットを使わず血腫内局所麻酔注入などによってターニケットなしで手術を行う手法で、手外科領域で用いられる手技です。この論文はWALANTtechniqueを足関節骨折に応用したというパキスタンからの報告です。骨折型としてはtype-44Bおよびtype-44Cに限定して58例に行い(44B1:4例、44B2:11例,44C1:7例,44C2:36例)、良好な成績であったことを示しています。まず血腫内に3-5mLのリドカイン注射を行い整復し、シーネ固定。WALANTtenchiqueに同意した患者に対して手術を行いました。腫脹がない場合は24時間以内に手術を行いますが、平均すると受傷から5日目に...WALANTtechniqueの足関節骨折手術への応用

  • 新型コロナウイルスに対する抗体製剤カクテル(REGN-COV2)の有効性

    新型コロナウイルスに対する抗体製剤カクテル(REGN-COV2)の有効性Weinreichetal.REGN-COV2,aNeutralizingAntibodyCocktail,inOutpatientswithCovid-19.NEnglJMed.2021Jan21;384(3):238-251.doi:10.1056/NEJMoa2035002.Epub2020Dec17.新型コロナウイルス感染症対策の切札としてワクチンに期待が集まっており、現在接種する順番や段取りなど具体的な流れをどうするかが懸案になっています。一方で感染した患者に対する治療薬としてはステロイド、レムデシビルなどが正式に使用可能ですが(英国では抗IL-6受容体抗体も)、中々決め手に欠ける感は拭えません。ウイルスを排除するという点では中和...新型コロナウイルスに対する抗体製剤カクテル(REGN-COV2)の有効性

  • ACE阻害薬、ARBはCOVID-19患者で中止すべきか?

    SARS-CoV-2が細胞への侵入にACEIIを受容体として利用することから、ACE阻害薬やARBを使用している患者が感染した場合にはこれらを中止すべきかどうかという議論は、感染拡大の当初から話題になっていました。この論文は入院前にACE阻害薬あるいはARBを内服していた軽症から中等症のCOVID-19患者に対して、これらの薬剤を中止(n=334)あるいは継続(n=325)の2群にランダムに割り付けて入院後の予後を調べたブラジルの研究です。生存患者の入院日数(21.9日vs22.9日)、死亡率(2.7%vs2.8%)、心血管障害死(0.6%vs0.3%)、COVID-19の悪化(38.3%vs32.4%)に有意差は無かったという結果です。Lopesetal.,JAMA.2021;325(3):254-264.d...ACE阻害薬、ARBはCOVID-19患者で中止すべきか?

  • 進化医学からみた遺伝子の選択と疾患

    進化医学(evolutionarymedicine)に関するこの総説は、進化の過程がいかにしてヒトの形質や疾患に関与するかを解説しています。ダーウィンが「種の起原」の中で述べた自然淘汰(naturalselection)という有名な概念があります。これは様々な形質を有する多くの個体の中で、環境に最も適した形質を有するものが選択されてdominantになっていくということで、どのような形質がdominantになるかは環境に大きく左右されます(従って「優れたヤツが残る」という事ではありません)。形質の差は主として遺伝子によって規定されているので、「形質の選択」とはすなわち「遺伝子の選択」ということになります。ヒトは進化の過程で様々な遺伝子を選択してきましたが、このような遺伝子選択にはtrade-offが存在すること...進化医学からみた遺伝子の選択と疾患

  • AIを用いた変形性膝関節症疼痛の検出法開発

    米国OsteoarthritisInitiative(OAI)のパブリックデータベースに登録されている変形性膝関節症25,049例のXpおよりKOOSpainscoreをを用いてconvolutionalneuralnetworkを利用したディープラーニングを行い、疼痛と関連するXp上の領域を可視化するとともに痛みと関連するXp画像上の特徴の要約統計量algorithmicpainprediction(ALG-P)を算出するシステムを構築した。ALG-PのほうがKellgren-Lawrence分類よりも疼痛の予見に有用であることを示しました。人種格差や経済格差についてもこのアルゴリズムを使用するとある程度補正できることも示しており、専門医でなくてもXp画像のみから治療が必要な症例の抽出が可能であるとしています...AIを用いた変形性膝関節症疼痛の検出法開発

  • 切除不能な叢状神経線維種に対するcabozantinibの有効性

    切除不能な叢状神経線維種(plexiformneurofibroma)を有するNeurofibromatosistype1小児患者に対してMEK阻害薬Selumetinibが有効であるという報告が昨年のNEJMに出ましたが(Grossetal.,NEnglJMed.2020Apr9;382(15):1430-1442)、この論文では多種チロシンキナーゼに対する阻害効果を有するcabozantinibのマウスモデルでの有効性、そして第2相臨床試験の結果を示しています。外科切除不能な叢状神経線維種を有する16歳以上の患者にたいしてcabozantinibを投与したところ、19人中8人(42%)でpartialresponseを示し、腫瘍サイズの縮小は中央値で15.2%(range,+2.2%to−36.9%)で、進...切除不能な叢状神経線維種に対するcabozantinibの有効性

  • 過敏性腸症候群における腸内免疫の役割

    過敏性腸症候群(irritablebowensyndrome,IBS)は比較的よく見られる病態ですが、17%程度は胃腸感染症の後に生じることが知られています。その病態メカニズムを明らかにするために、著者らはマウスにCitrobacterrodentiumを感染させ、その後にovalbumin(OVA)を摂取させるというモデルを作成しました。正常なマウスにOVAを摂取させても問題はないのですが、感染から回復したマウスはOVA摂取によって下痢を生じ、IBS様症状を呈していると考えられました。IgE欠損マウスや抗IgE抗体を投与するとIBS様症状は改善し、逆に正常マウスにOVA特異的IgEを投与するとOVA摂取によってIBS様症状が出現しました。つまりこのような病態は、感染によって腸管上皮のバリアが消失し、OVAに対...過敏性腸症候群における腸内免疫の役割

  • 「医療崩壊の真実」を読んで

    「医療崩壊の真実」というタイトルはアレなのですが、内容はDPCデータなどを参考にして、主として2020年春の新型コロナウイルス感染症第1波で医療崩壊の危機が叫ばれた原因を分析しており、大変腑に落ちるものです。繰り返しが多いことや、最後の鼎談は蛇足気味だったりという欠点もあるのですが、わが国の医療体制が包含する重要な問題点を指摘しています。特に下記のような指摘は興味深いものです。①東京都のデータでは医療逼迫が叫ばれていた4月、5月において一般病床およびICUの稼働率は低下していた。②一般病床稼働率低下の原因は、うがいや手洗い、マスクなどの衛生要因による感染症減少、コロナによる受診控え、不急の手術延期、検診控えによる癌などの発見減少などが考えられる。元々日本は急性期病床が諸外国と比べて突出して多く、コロナのために不...「医療崩壊の真実」を読んで

  • 頭部神経堤細胞におけるBMPシグナル活性化はautophagy抑制を介して軟骨分化を促進する

    進行性に異所性骨化が進行する進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasiaossificansprogressiva,FOP)はBMP受容体であるALK2/ACVR1の変異が病因であることが明らかになっており、変異型受容体はBMPのみならずActivinAによっても活性化されることが疾患進行に重要であるとされています。京都大学の戸口田先生らはFOPの疾患特異的iPS細胞を用いた研究から、mTOR阻害薬であるrapamycinが骨化の進行に有効であることを報告されていますが(Hinoetal.,JClinInvest.2017Sep1;127(9):3339-3352)、rapamycinがどのようにしてACVR1シグナルに影響するのかという作用機序については不明な点も残っています。さてFOP患者では下顎...頭部神経堤細胞におけるBMPシグナル活性化はautophagy抑制を介して軟骨分化を促進する

  • 英国でTocilizumab, SarilumabがCOVID-19に承認された

    最近のニュースで少し意外だったのはtocilizumab,sarilumabという抗IL-6受容体抗体がCOVID-19患者の死亡率を低下させ、英国治療薬として承認されそうだ(された)というニュースです(1)。これまで、色々な観察研究では有効性を示す結果が報告されていたのですが、Bostonの7病院で行われたRCT(BACCBayTocilizumabtrial)では挿管または死亡率に差はなく(入院28日後までのhazardratioは0.83,95%CI0.38to1.81;P=0.64)(2)、それ以外にもCOVACTAtrial(3),RCT-TCZ-COVID-19trial(4),CORIMUNO-TOCI-1trial(5)などのRCTで、やはり死亡率や重症化率に有意差がないことが報告されていました...英国でTocilizumab,SarilumabがCOVID-19に承認された

  • 頭蓋縫合早期癒合症モデルにおけるGli1+細胞移植

    頭蓋縫合早期癒合症はまれな先天性疾患ですが、FGF受容体シグナルの恒常活性化が見られるCrouzon病やApert病などが有名です。放置すると早期癒合の結果として頭蓋内圧が上昇し、脳の発達障害による精神発達遅延を生じることが知られています。Saethre-Chotzen症候群は頭蓋骨縫合早期癒合を示す疾患ですが、ヘリックス-ループ-ヘリックス型の転写因子であるTWIST1遺伝子に変異があることが報告されています。この論文で著者らはTwist1のヘテロ欠損マウス(Twist+/-マウス)が頭蓋縫合早期癒合を示し、頭蓋内圧上昇および認知障害を示し、Saethre-Chotzen症候群モデルとなることを示しています。またこのマウスの頭蓋骨縫合部を外科的に切離し、切離部にGli1+mesenchymalstemcell...頭蓋縫合早期癒合症モデルにおけるGli1+細胞移植

  • リウマチ性疾患を有するCOVID-19患者の予後の時間的変化

    リウマチ性疾患および筋骨格系疾患を有しているCOVID-19患者について、その予後が時期によって変化しているかを米国データベースを用いて検討した論文です。Earlycohortを2020年1月20日から4月19日までの90日間、latecohortとしては4月20日から7月19日までの90日間と設定し、それぞれの期間にICD-10でCOVID-19と診断された患者が対象です。Earlycohortには2811人、latecohortには5729人が含まれ、PCR検査で診断された患者の割合はearlycohortで43.3%、latecohortで39.5%です。解析に含まれる疾患としては関節リウマチ、脊椎関節炎、SLE、全身性強皮症、皮膚筋炎、多発筋炎、Sjögren症候群、その他の全身性結合織疾患、全身性の血...リウマチ性疾患を有するCOVID-19患者の予後の時間的変化

  • 新型コロナウイルスワクチン投与によるアナフィラキシー反応

    ワクチンによって天然痘が根絶されたという歴史的な成功例を考えれば、ワクチンは集団レベルでは疾患予防において切り札ともなりうる存在であり、有効なワクチンがあるのにそれを拒否する人々に対して、医療従事者としては「科学リテラシーに欠ける」と批判したい気持ちはよくわかります。しかし最近日本語訳が出版された「ワクチンレース(MeredithWadman著羊土社)」を読むと、かつての狂犬病ワクチンのように、かなりな高頻度で致死的な副作用が出た例や、逆にワクチンに疾患予防効果が見られないケースがしばしばあったことも記されています。有効なワクチンであっても100%の有効性を示すことはありませんし、少ないとはいえ重篤な有害事象が出現した本人にとってみれば「ワクチンを投与していなければ」と悔やむのはやむを得ないでしょう。少なくとも...新型コロナウイルスワクチン投与によるアナフィラキシー反応

  • 分断の疾患

    2020年は新型コロナウイルスに翻弄された1年でした。無症状・未発症者から感染が広がるというこの感染症の特徴は、疾患の危険度の何倍もの恐怖を社会に与え、人と人の繋がりをズタズタに引き裂きました。また報道のみならずインターネットやSNSを介した不確実な情報の拡散は、国によってはそれを利用しようとする政治力学も働いて、社会の分断に輪をかけることになりました。過去に経験のない未知の感染症の登場は、科学者や医療関係者の間にも戸惑いや不安を広げ、専門家の中にさえも分断を引き起こしました。このコラムのタイトル"Adivisivedisease(分断の疾患)"は、このような新型コロナウイルス感染症の特徴を過不足なく表しています。しかしその一方でウイルスゲノムの解読、感染の分子機構や免疫反応、ウイルスタンパクの構造解明、そして...分断の疾患

  • 侵害受容器によるリンパ節機能制御

    患者さんに関節リウマチの発症時のことを伺うと、身内が亡くなった後など、何らかのストレスを感じたエピソードを語ってくださる方が時々います。またストレスを感じると風邪をひきやすくなる、なんて嘘か眞かの話もあります。このように神経系による免疫の制御というのはよく知られており、一部はコルチコステロイドの分泌が関与するのだと思いますが、この論文ではリンパ節に神経ペプチド産生侵害受容性ニューロンを主とした感覚神経の特異的な支配が見られることを明らかにしています。これらの神経をoptogeneticな手法で活性化するとリンパ球の遺伝子発現が誘導されることも明らかになり、感覚神経による直接的な免疫制御の可能性を示唆する大変興味深い現象です。 Huangetal.,Lymphnodesareinnervatedbyaunique...侵害受容器によるリンパ節機能制御

  • 侵害受容器によるリンパ節機能制御

    患者さんに関節リウマチの発症時のことを伺うと、身内が亡くなった後など、何らかのストレスを感じたエピソードを語ってくださる方が時々います。またストレスを感じると風邪をひきやすくなる、なんて嘘か眞かの話もあります。このように神経系による免疫の制御というのはよく知られており、一部はコルチコステロイドの分泌が関与するのだと思いますが、この論文ではリンパ節に神経ペプチド産生侵害受容性ニューロンを主とした感覚神経の特異的な支配が見られることを明らかにしています。これらの神経をoptogeneticな手法で活性化するとリンパ球の遺伝子発現が誘導されることも明らかになり、感覚神経による直接的な免疫制御の可能性を示唆する大変興味深い現象です。 Huangetal.,Lymphnodesareinnervatedbyaunique...侵害受容器によるリンパ節機能制御

  • 高齢者ではどうしてCOVID-19が重症化するか?

    新型コロナウイルス感染症の重症化リスク因子として確実なものが糖尿病などの併存症および高齢です。高齢者で重症化するメカニズムとしては元々の併存症が多いこと、気道の分泌が少ないためウイルスの喀出が不十分であり、また誤嚥もしやすいため、より多量のウイルスに肺が曝露されること、血管の脆弱性や凝固能の異常のため血栓症が生じやすいことに加えて加齢に伴う免疫系機能の変化(自然免疫や獲得免疫の低下、inflammagingと呼ばれる慢性炎症状態など)が関与すると考えられています。この総説は季節型コロナウイルス、SARS,MARS,COVID-19などを対比させながら、加齢と免疫機能について簡潔にまとめられています。サルの感染モデルやACE2トランスジェニックマウスなど、動物モデルから明らかになってきたことも多い一方で、実際の臨...高齢者ではどうしてCOVID-19が重症化するか?

  • CKD患者に対するビスホスホネート製剤投与の安全性

    骨粗鬆症の講演を行った際にしばしば質問されるのは「腎機能低下した患者さんの治療をどうれば良いか?」という点です。特にビスホスホネート(BP)製剤は腎障害を生じるために、腎障害の程度によって禁忌、あるいは慎重投与とされています。この論文で著者らはイギリスのCPRDGOLD(1997-2016)およびSIDIAP(2007-2015)2つのコホートにおいて、eGFR<45ml/min/1.73m2で40歳超という条件を満たすCKD3bー5のBPuserとnon-userを抽出し、その電子カルテ情報の解析から腎機能の変化を検討しています。PropensityscoreによってCRPDからは2,447人のBPuserおよび8,931人のnon-user、SIDIAPからは1,399人のuser、6,547人のnon-u...CKD患者に対するビスホスホネート製剤投与の安全性

  • 唐辛子を食べると末梢血造血幹細胞が増えるかも?

    悪性腫瘍に対する化学療法による造血障害対策として、一般的に自己末梢血幹細胞移植が行われます。これはあらかじめ自らの造血幹細胞(hematopoieticstemcell,HSC)を採取しておいて、化学療法後にこれを移植するというものです。HSCの採取においてHSCを骨髄から末梢血へと動員することが重要で、このために顆粒球増殖因子(granulocytecolony-stimulatingfactor,G-CSF)やplerixaforなどが用いられます。しかしこれらのみでは十分なHSCが確保できないこともあります。AlbertEinsteinCollegeofMedicineのParulFrenetteらのグループが発表したこの論文は、HSCの末梢への動員における侵害受容器(nociceptor)の重要性を明ら...唐辛子を食べると末梢血造血幹細胞が増えるかも?

  • 健康の定義

    私も講演で「健康寿命の延伸を!」などと話すことはあるのですが、それでは「健康とは?」とつっこまれると、「病気じゃない状態(?)」というような回答しかできません。さらに、病気でなければ健康なのか?老化は病気か?ときかれると、また答えに窮することになります。ある分子が発現していたら健康、というわけではありませんし、健康の定義というのはわかっているようでわかっていません。CarlosLópez-OtínとGuidoKroemerによるこの総説では、健康とは「生物の全体としての”organization”(theoverall"organization"oforganisms)によって規定されるもの」であるとしています。このような観点から、彼らは健康を「健康的」な状態に付随し、そのかく乱(pertubation)が極め...健康の定義

  • ダウン症候群ではCOVID-19は重症化する

    ダウン症候群の方はCOVID-19による入院のリスクが一般の方の5倍、死亡リスクが10倍高いそうです。その原因としては、巨舌、小顎、大きな扁桃およびアデノイドの存在、嚥下筋の弛緩などの解剖学的な要因に加えて、SARS-CoV-2感染に関与するTMPRSS2遺伝子を3コピー有しているためにTMPRSS2発現が通常の1.6倍高いこと、またT細胞分化に異常があり、インターフェロンシグナルのhyperactivationが生じることもCOVID-19が重症化しやすい一因ではないかと考えられています。このようなことから、ダウン症候群の方に対するワクチン投与の重要性とともに、JAK阻害薬baricitinibによるインターフェロンシグナルの抑制が重症化予防に有用な可能性があるとしています。COVID-19is10times...ダウン症候群ではCOVID-19は重症化する

  • 腱板損傷に対するplatelet-rich plasmaの有効性

    腱板損傷に対するステロイド注射とplatelet-richplasma(PRP)の有効性についてのRCTの結果が報告されました。6カ月後の疼痛は変わらないものの、DASH(DisabilitiesoftheArm,ShoulderandHand)scoreおよびoverallfunctionそして外旋角度はPRPで優れていたという結果です。ステロイドは即効性があるもののその後の改善はあまり見られず、一方でPRPは徐々に改善が見られるという結果です。ChrisHyunchulJoetal.,llogeneicPlatelet-RichPlasmaVersusCorticosteroidInjectionfortheTreatmentofRotatorCuffDisease:ARandomizedControlle...腱板損傷に対するplatelet-richplasmaの有効性

  • ACPA陽性RA患者は低骨密度を示す

    ACPA(anti-cycliccitrullinatedpeptideantibody)を始めとした自己抗体の存在は関節リウマチ(RA)患者の診断に重要であるだけではなく、予後不良因子としても知られています。この論文ではオランダ(IMPROVEDstudy)とスウェーデンのRA患者コホートにおいて、自己抗体の存在と骨密度(BMD)との関係を調べています。いずれのコホートも早期未治療RA患者が中心であり、オランダのIMPROVEDstudyではDAS<1.6という厳格なゴールを目指しています。(結果)ベースラインの疾患活動性は、オランダのコホートではDAS3.3vs3.6とACPA陰性群でやや高く、スウェーデンでは3.3vs3.2と有意差はありませんでした。オランダのコホートではACPA陽性患者ではベースライン...ACPA陽性RA患者は低骨密度を示す

  • 季節性コロナウイルス感染は新型コロナウイルスの免疫を高めるか?

    季節性のコロナウイルス(seasonalhumancoronaviruses,HCoVs)に感染した人はSARS-CoV-2に対しても免疫を有するのではないかという話は以前からありましたが、最近実際に非感染者においてSARS-CoV-2に対する抗体がみられることが報告されました(Ngetal.,Science370,1339,2020;Shrockeetal.,Science370,eabd4250,2020)。非感染者に見られる抗体はSpikeタンパクのうちウイルスとホスト細胞との融合に重要なS2に対する中和抗体が多いことが明らかになりました。これはS2領域が様々なコロナウイルスの間で保存されているためで、このような抗体を有するヒトがSARS-CoV-2に感染するとback-boostingという現象が生じ、...季節性コロナウイルス感染は新型コロナウイルスの免疫を高めるか?

  • ダニの有する抗菌酵素dae2

    ダニの研究者でもなければダニが大好きという人は多くないと思います。刺されて痒いのも困りますが、病原体の媒介になるというのはもっと困ります。つつが虫病リケッチアもダニによって媒介されますし、リウマチ性疾患の領域だとBorreliaburgdorferiによって生じるライム病もダニが媒介する疾患として知られています。ダニの種類によってはヒトの皮膚に食い込んで1週間以上も血を吸い続ける強者もおり、本当にカイカイ・・いや不愉快です。自然免疫に作用する分子として、マダニなどはdomesticatedamidaseeffector2(dae2)という酵素を有しており、これは元々は細菌のtypeVIsecretion(T6S)amidaseeffector2(tae2)という遺伝子を4000万年前くらいに取り込んだもののよう...ダニの有する抗菌酵素dae2

  • 手術中にヒーリングメッセージを流すことで術後疼痛が改善する

    全身麻酔の導入前から術中、覚醒までイヤホンで20分のメッセージ(+10分の静寂)を繰り返し流すことによって術後24時間までの鎮痛薬(オピオイド)投与量を減少させることができるというRCTの結果です。メッセージの内容は"youcanrelaxandrest,recoveranddrawstrength,becauseyouaresafenow,well-protected."とか"Thesurgeryisgoingwell.Surgeonandanesthetistareverysatisfied.Everythingisgoingaccordingtoplan,veryprofessional,organized,andsmooth."などと言ったようなもので、静かな音楽とともに手術の間ずっと流すそうです。外科...手術中にヒーリングメッセージを流すことで術後疼痛が改善する

  • 新型コロナウイルスワクチンBNT162b2の安全性、有効性

    Pfeizer社が開発中のSERS-CoV-2に対するmRNAワクチンBNT162b2の安全性、有効性についての結果が発表されました。すでにニュースなどで皆さんご存知のことと思いますが、95%という驚くほど高い有効性です。NewEnglandJournalofMedicine誌に論文が発表されましたので、内容を詳細に見てみました。------対象となったのは確定したCOVID-19感染の既往がない被検者36,523人、これに既往のある人を加えた40,137人です。投与はBNT162b230µgあるいはプラセボを21日あけて2回筋注です。エンドポイントとしてはfirstprimaryがA群、secondprimaryendpointがB群における2回目投与後7日以降のCOVID-19発症です。またmajorsec...新型コロナウイルスワクチンBNT162b2の安全性、有効性

  • ヒト癌株細胞の転移臓器マッピング

    悪性腫瘍の転移臓器は腫瘍の種類によって特異的なパターンがあることが知られています。例えば骨転移の頻度が高いものとしては前立腺癌、乳癌、腎癌、甲状腺癌、肺癌などが有名です(鉛のヤカン=PBKTL;P:prostate,B:breast,K:kidney,T:thyroid,L:lungと覚えました)。この論文で著者らは遺伝子バーコードでラベルした様々なヒト株細胞をNOD-SCID-gamman(NSG)マウスの心臓に投与するという転移モデルを用いて、500もの腫瘍株細胞の転移部位(脳、肺、肝、腎、骨)マップMetMap500を作成しました。また臨床データベースからこのMapが臨床的な観察とも合致することを示しています。様々な転移部位から脳転移に着目し、脂肪酸代謝が重要な役割を果たしており、脂肪酸代謝を制御するst...ヒト癌株細胞の転移臓器マッピング

  • リハビリテーション医療の重要性ーGlobal Burden of Disease Study 2019よりー

    GlobalBurdenofDiseaseStudy2019から、リハビリテーション医療の重要性を指摘した論文がでました。24億1千万人(95%UI2·34–2·50billion)において疾患に対してリハビリテーションが有益な効果を有し、障害生存年数(yearslivedwithdisability:YLD)にして310million(235–392)YLDsの効果があること、疾患の中では筋骨格系疾患に対する寄与が最も大きく17億1千万人、149millionYLDsの効果があること、中でも腰痛は最も重要な疾患であることを明らかにしています。リハビリテーション医療の定義をどのようにしているのか(日本でよくあるような腰痛に対して「電気をあてる」ような治療も含むのか)については疑問が残りますが、リハビリテーション...リハビリテーション医療の重要性ーGlobalBurdenofDiseaseStudy2019よりー

  • 腱板損傷の治療についてのRCT

    腱板損傷(rotatorcuffdisease,RCD)は高齢者に多い疾患で、保存療法が奏功しない場合には、しばしば外科的治療が行われます。この論文では実臨床に即した方法で保存療法と外科療法を比較するRCTを行っています。著者らは3カ月以上の保存療法に抵抗性であったRCD患者に対して腱板の損傷程度を明らかにするために造影MRI(MRIarthrography,MRA)を撮像した後、保存療法群と外科療法群にランダムに振り分けて治療による差を検討しました。Primaryoutcomeはランダム化2年後のVASscoreで調べた疼痛の変化、Constantscore(CS)で調べた肩関節機能の変化です。SecondaryoutcomeとしてはRAND36-ItemHealthSurveyで測定した健康関連QOLを調べ...腱板損傷の治療についてのRCT

  • サイトカインストームって何?

    「サイトカインストーム」という言葉を初めて耳にしたのは、関節リウマチ患者に対する治療薬として開発された抗CD28抗体TGN1412の第1相臨床試験において、抗体を投与された健常被験者において投与直後から全身の痛みや呼吸困難を訴え、1時間後には多臓器不全のためICUに入院し、全員が人工呼吸器をつけられ、一部はその後も重篤な状態が続いたという衝撃的な治験副作用の話を聞いたときだったかもしれません。これは抗CD28抗体がsuperagonistとして作用し、T細胞を単独で活性化されたことによって、T細胞からの無秩序なサイトカイン放出が誘導されたためとされており、この現象はサイトカイン放出症候群(cytokinereleasesyndrome,CRS)あるいはサイトカインストームと呼ばれました(http://www.i...サイトカインストームって何?

  • 低カルボキシル化オステオカルシンの割合が転倒による入院と関連する

    オステオカルシン(OC)は骨芽細胞が産生する骨基質タンパクであり、骨代謝マーカーとしては骨形成を反映するマーカーとして用いられおり、年齢とともに高骨代謝回転になった場合には血中濃度が上昇します。OCはビタミンK依存性にγ-カルボキシル(Gla)化され、これによって骨組織に対するaffinityが高まることが知られています。Gla化が低下している低カルボキシル化OC(ucOC)はビタミンKの不足状態を表すと考えられていますが、年齢とともに全OC(tOC)に対する割合が増加することが報告されており、特にDelmasらはucOC高値が大腿骨近位部骨折のリスクになることを報告して以来注目されるようになりました(Szulcetal.,JClinInvest.1993Apr;91(4):1769-74)。日本ではビタミンK...低カルボキシル化オステオカルシンの割合が転倒による入院と関連する

  • COVID-19重症肺障害の病態メカニズムを肺移植患者の肺から検討した

    重症COVID-19における肺障害に対する最終手段として、アメリカでは肺移植が行われています(https://medicalxpress.com/news/2020-12-covid-lungs-badly-transplant.html?fbclid=IwAR3CULQ1661IS4ROkV1TTO2kRyed-7oUdx3Z-rGwYw5jGmRzYlKWfNerqSA)。Northwestern大学からの下記論文では、肺移植を受けた3名の患者および呼吸不全で亡くなった患者2名の肺組織を解析し、これらの患者肺ではsinglemoleculefluorescentinsituhybridization(smFISH)でSARS-CoV-2ウイルスは検出されなかったこと、組織学的には重症な肺線維症に近い所見が認...COVID-19重症肺障害の病態メカニズムを肺移植患者の肺から検討した

  • 宇宙に行きたいですか?

    宇宙が謎に包まれており、scientificな興味をそそる理由はよくわかりますが、私自身は宇宙少年ではありませんでしたし、殊更に宇宙旅行にも興味があるわけではないので、巨額な資金を投じて火星の有人探査を行う意義はよくわかりません。という訳でいわゆる宇宙研究spacescienceに関しては耳学問で特定の分野(筋や骨に対する無重力の作用など)の知識を得る程度でしたが、CELL誌に"FundamentalBiologicalFeaturesofSpaceflight:AdvancingtheFieldtoEnableDeep-SpaceExploration"というreviewarticleが掲載されましたので、読んでみました。長期宇宙飛行の主な問題としては宇宙放射線への被曝と微小重力の影響が挙げられること、ほぼす...宇宙に行きたいですか?

  • 重症COVID-19患者に対して回復期患者血漿は有効性示せず

    回復期患者血漿(convalescentplasma)については、JAMA誌に中国から否定的なRCTの結果が報告されましたが、(https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766943)、今週のNEJM誌にも重症のCovid-19肺炎の入院中の成人患者についてのランダム化比較試験において、臨床的有効性や30日後までの死亡の抑制効果がないことが報告されました。中和抗体の存在が確認されているのですからウイルス増殖に対する有効性はありそうなものですが、抗体の種類によってはインターフェロン作用を抑制して、かえって予後を悪くする可能性もあることが報告されていますので(https://science.sciencemag.org/content/370/6515/e...重症COVID-19患者に対して回復期患者血漿は有効性示せず

  • ホヤのマイクロバイオームから新しい抗真菌薬が発見された

    長らく診ている関節リウマチの患者さんがある日手関節の腫脹を訴えて来院されました。関節外にも広がるような腫脹で、骨破壊もかなり高度でした。「滑膜炎が悪化したんですかね~」とか言いながら穿刺したところ米粒体が採取され、培養で真菌(Candidaparapsilosis)が検出されました。「カビの思ひで」のひとつです。そういえば私が子供の時には「水虫の薬ができたらノーベル賞だ」というような出所不明のうわさがありました。抗真菌薬ではないですが、抗寄生虫薬で大村先生がノーベル賞を受賞されたので、あながちいい加減な情報でもなかったのかもしれません。現在抗真菌薬もいくつか開発されていますが、真菌に対して選択的な毒性を示す薬剤は真正細菌に対して選択毒性を示す薬剤よりもバリエーションに乏しく、現在用いられている抗真菌薬は主として...ホヤのマイクロバイオームから新しい抗真菌薬が発見された

  • MTXを止めるか?etanerceptを止めるか?それが問題だ

    関節リウマチ治療において、生物学的製剤(BIO)はmethotrexate(MTX)とのコンビネーションで使用されることが多く、その方が有効性も高いとされています。それではコンビネーションによって寛解に達した場合に、どちらから止めるのが良いのでしょうか?あるいは止めてはいけないのでしょうか。StudyofEtanerceptAndMethotrexateinCombinationorasMonotherapyinSubjectswithRheumatoidArthritis(SEAM-RA)はこのような質問に答えるために計画された臨床試験です。MTX+etanerceptによってSDAI寛解(≤3.3)に達した患者を①MTXmonotherapy(N=101)②Etanerceptmonotherapy(N=1...MTXを止めるか?etanerceptを止めるか?それが問題だ

  • COVID-19ワクチンについての私見(現時点でのまとめ)

    Pfizer/BioNTech社やModerna社のCOVID-19ワクチン(ロシアのSputnikVも?)の第3相試験の中間解析の結果、90%以上の有効性が確認され、安全性にも問題はなかったことが報道されました。またLancetにはOxfordグループのワクチンについての論文発表もあり、今後続々と報告が出てきそうです。この機会に自分の知識を整理するために、これまでのワクチンについてまとめてみたいと思います。--------------------------冬が近づいてきてもCOVID-19の勢いは収まる気配を見せず、日本ではウイルス陽性者の数が増え続けています。心配なのは感染者の中に占める高齢者の割合が増加していること、入院が必要な重症者が増えていることで、「これこそが日本の第1波(欧米的な意味で)ではない...COVID-19ワクチンについての私見(現時点でのまとめ)

  • 高感度ひずみゲージの開発

    ウェアラブルデバイスなどのsoftmachineは現在進歩著しい分野ですが、このようなデバイスの開発には弾力性のあるひずみゲージや圧センサーの開発が必須です。この論文は、異方性抵抗構造(strain-mediatedcontactinanisotropicallyresistivestructures,SCARS)に基づいた、高い弾性を備えた汎用性の高い高感度ひずみ検出デバイスの開発を報告しています。医療を含め、様々な分野への応用が可能そうです。Araromietal.,Nature.2020Nov;587(7833):219-224.doi:10.1038/s41586-020-2892-6.高感度ひずみゲージの開発

  • ミンクにおけるSARS-CoV-2感染の広がり

    新型コロナウイルスに感染したミンクを殺す、殺さないというニュースに注目していますが、デンマークには人間の約3倍のミンクがいるそうですね。デンマークにおけるミンク感染の広がりは中々止めることができず、6月以来200以上の農場で感染が確認されたそうです。問題になっているのはミンクの中でSARS-CoV-2が変異していることで、これまでにヒトで確認されたウイルスのうち300の変異体がミンク由来であると考えられています。特にCluster-5と呼ばれている変異体は感染に重要なSpikeタンパクに3つのアミノ酸変異と2つの欠損を有するもので、この変異型ウイルスは抗体やワクチンに対する反応性が低い可能性が指摘されています。またY453Fという変異体はデンマークではヒトにも広がっていますが、市販のモノクローナル抗体に反応せず...ミンクにおけるSARS-CoV-2感染の広がり

  • COVID-19に対するJAK阻害薬baricitinibの効果

    COVID-19にJAK阻害薬であるbaricitinibが有効ではないかという話は以前からありましたが、この論文ではアカゲザルにSARS-CoV-2を感染させたモデルを用いてbaricitinibの有効性を検討しています。Baricitinibを投与されたサルではI型インターフェロンの抗ウイルス反応やSARS-CoV-2特異的T細胞反応は変化させないが、炎症の減少、炎症細胞の肺浸潤の減少、好中球のNETosis活性減少を示し、その背景には炎症と好中球動員の原因となるサイトカインとケモカインの肺マクロファージ産生の強力な抑制があることを示しています。IL-6の阻害薬であるトシリズマブの有効性が疑問視される中で、期待が持てる治療薬なのかもしれません。いずれにしても今後の臨床研究の結果待ちではあります。COVID-19に対するJAK阻害薬baricitinibの効果

  • 高齢者に対するビタミンD、オメガ3脂肪酸、筋力増強運動の有効性

    高齢者の6つのエンドポイント((cardiovascularhealth,bonehealth,musclehealth,brainhealth,immunity)に対するビタミンD、オメガ3脂肪酸、筋力増強運動(週3回の筋力トレーニングを柔軟体操のみと比較)の単独介入およびコンビネーションの有用性を検証したDO-HEALTH試験の結果が報告されました。2157人がランダム化され、平均年齢は74.9歳で61.7%が女性でした。そのうち1900人が研究を完遂し、平均フォローアップ期間は2.99年です。結果はいずれの介入も有効性なし(血圧、shortphysicalperformancebattery,montrealcognitiveassessmentおよび非椎体骨折について)というものです。ビタミンDのディス...高齢者に対するビタミンD、オメガ3脂肪酸、筋力増強運動の有効性

  • 高齢者転倒・骨折予防に関する運動介入および多因子転倒予防評価についてのランダム化比較試験

    高齢者の転倒と、それに付随する大腿骨近位部骨折を始めとした脆弱性骨折は、患者の生命予後に影響する重篤な疾患であることが知られています。国内外で転倒予防の取り組みは数多く行われており、運動療法は転倒予防に有用であるという研究結果が報告されています。この論文ではイギリス全土の63の一般診療から70歳以上の9803人をランダムに選択し、①3223人はメールのみによるアドバイス、②3279人は転倒リスクスクリーニングを行い、メールによるアドバイスに加えて対象を絞った運動、③3301人は転倒リスクスクリーニングを行い、メールによるアドバイスに加えて、対象を絞った多因子転倒予防multifactorialfallpreventionの3群に振り分け、その後の転倒や骨折を検討しました。Primaryoutcomeはランダム化...高齢者転倒・骨折予防に関する運動介入および多因子転倒予防評価についてのランダム化比較試験

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、sakaetanさんをフォローしませんか?

ハンドル名
sakaetanさん
ブログタイトル
とはずがたり
フォロー
とはずがたり

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用